以下、図面を参照して本発明のスラスト軸受を詳しく説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本発明のスラスト軸受が適用されるターボ機械の一例を模式的に示す側面図であり、図1中符号1は回転軸、2は回転軸の先端部に設けられたインペラ、3は本発明に係るスラスト軸受である。
回転軸1には、インペラ2が形成された側にスラストカラー4が固定されており、このスラストカラー4には、このスラストカラー4を挟持するようにして一対のスラスト軸受3が配置されている。
また、インペラ2は静止側となるハウジング5内に配置されており、ハウジング5との間にチップクリアランス6を有している。
また、回転軸1には、スラストカラー4より中央側に、ラジアル軸受7が設けられている。
「第1実施形態」
図2、図3、図4(a)〜(d)は、このような構成のターボ機械に適用されたスラスト軸受3の第1実施形態を示す図であり、図2はスラストカラー4を挟んだ状態の要部を断面視したスラスト軸受3の側面図である。また、図3はスラスト軸受3の平面図、図4(a)は図3のA−A線矢視断面図、図4(b)はバンプフォイル片の平面図、図4(c)はシムの平面図、図4(d)はバンプフォイル片及びシムの形状を説明するためにその平面図と側面図を対応させた説明図である。
図2に示すようにこの第1実施形態では、スラスト軸受3A(3)はスラストカラー4を挟んでその両側にそれぞれ配置されている。これら一対のスラスト軸受3A(3)は、共に同じ構成となっており、回転軸1に固定された円環板状のスラストカラー4に対向して配置された円環状(円筒状)のもので、回転軸1に外挿されて設けられている。
スラスト軸受3Aは、スラストカラー4に対向して配置されたトップフォイル10と、このトップフォイル10の、前記スラストカラー4に対向する面と反対側の面に対向して配置されたバックフォイル20と、このバックフォイル20の、前記トップフォイル10側と反対の側に配置された円環板状のベースプレート30と、を備え、さらに、バックフォイル20とベースプレート30との間に複数のシム50を有して構成されている。
本実施形態では、一対のスラスト軸受3Aのそれぞれのベースプレート30間に、二点鎖線で示す円筒状の軸受スペーサ40が挟持されており、ベースプレート30は締結ボルト41によって軸受スペーサ40を介して連結されている。また、一方のベースプレート30は、その外面が締結ボルト41によってハウジング5に固定されており、従って一対のスラスト軸受3A、3Aは、スラストカラー4を挟んだ状態で締結ボルト41によってハウジング5に固定されている。
ベースプレート30は、図3に示すように円環板状で金属製のもので、その外周部に前記締結ボルト41を挿通するための貫通孔42を複数(本実施形態では8個)形成している。このベースプレート30には、前記スラストカラー4側の面に、前記シム50やバックフォイル20、トップフォイル10を支持するための支持領域が設けられている。本実施形態では、後述するようにバックフォイル20、トップフォイル10がいずれも複数枚(6枚)のバックフォイル片21、トップフォイル片11によって形成されており、従ってベースプレート30は、その周方向を6分割(6つに等分割)して6つの支持領域31を形成している。そして、シム50も、これら6つの支持領域31に対応して6つ設けられている。ただし、本実施形態では、これら6つの支持領域31は設計上の領域であり、これら支持領域31を形成するベースプレート30の表面は単なる平面となっている。
これら各支持領域31には、図2に示したようにそれぞれシム50、バックフォイル片21、トップフォイル片11がこの順に配置され、支持されている。
図3に示すようにバックフォイル20は、ベースプレート30の周方向に配列された6枚のバックフォイル片21によって形成されている。これらバックフォイル片21は、ベースプレート30の各支持領域31上にそれぞれ配置され、これによってベースプレート30の周方向に配列されている。また、これらバックフォイル片21は、後述するトップフォイル片11より僅かに小さく形成され、従って図3に示すようにベースプレート30上にてスラストカラー4側に露出することなく、トップフォイル片11に覆われている。
これらバックフォイル片21からなるバックフォイル20は、フォイル(薄板)で形成されてトップフォイル10(トップフォイル片11)を弾性的に支持する。このようなバックフォイル20としては、例えば、バンプフォイル、特開2006−57652号公報や特開2004−270904号公報などに記載されているスプリングフォイル、特開2009−299748号公報などに記載されているバックフォイルなどが用いられる。なお、特開2006−57652号公報や特開2004−270904号公報に記載されているスプリングフォイル、特開2009−299748号公報に記載されているバックフォイルは、ラジアル軸受に用いられるフォイルであるが、これらを平面状に展開して円環板状に形成すれば、スラスト軸受に用いられるフォイルとなる。
本実施形態では、図3、図4(a)、(b)、(d)に示すようにバックフォイル20がバンプフォイルからなり、従ってバックフォイル片21はバンプフォイル片からなっている。バンプフォイル片21(バックフォイル片)は、厚さ数百μm程度のフォイル(金属製薄板)がプレス成形によって波板状に成形されたもので、図4(b)に示すように全体が扇形の頂点側を切り欠いて内周側、外周側をそれぞれ円弧状とした、略台形状に形成されている。
このように波板状に成形されたバンプフォイル片21は、図4(d)に示すようにシム50を介してベースプレート30に接する谷部22と、トップフォイル片11に接する山部23とが交互に配置されて形成されている。谷部22は、バンプフォイル片21(バックフォイル片21)の最底部を形成しており、山部23の頂部(稜線)は、バンプフォイル片21(バックフォイル片21)の最頂部を形成している。ここで、バンプフォイル片21は、図3に示す回転軸1の回転方向下流側の端辺21aが、バンプフォイル片21の固定辺(バンプフォイル固定辺)となっている。前記谷部22及び山部23は、バンプフォイル片21の固定辺21a(端辺)と直交する方向に配列されている。すなわち、谷部22、山部23の配列方向は、前記固定辺21aと直交する方向に形成されており、従って谷部22、山部23は、前記固定辺21aと平行に延在するように形成されている。
これら谷部22及び山部23は、それぞれほぼ等ピッチで形成されている。また、山部23の高さは、前記固定辺21aと反対の側から固定辺21a側に向かって、すなわち図3中に矢印で示す回転軸1(スラストカラー4)の回転方向の下流側に向かうに連れて、図4(a)、(d)に示すように所定の高さずつ高くなるように形成されている。
また、バンプフォイル片21は、図4(b)に示すようにその周方向の一方の側、本実施形態では回転軸1の回転方向下流側の端辺21aと反対の側が、径方向にて4つ(複数)に等分割され、他方の側となる端辺21a(固定辺)が径方向にて連続する連続辺とされている。このように端辺21aと反対の側が4つに分割されたことで、バンプフォイル片21は、4つの帯状のバンプフォイル分割片21b(バックフォイル分割片)と固定辺21a(連続辺)とによって構成されている。
4つの帯状のバンプフォイル分割片21b間には、それぞれスリット21cが形成されている。これらスリット21cは、本実施形態ではバンプフォイル片21の外周が形成する円と同心円の一部を形成する円弧状に形成されている。これらスリット21cの幅は、径方向に隣り合うバンプフォイル分割片21bが互いに干渉することなく、独立して動けるような寸法に設定されている。このような幅のスリット21cによってバンプフォイル片21の一方の側が4つの帯状のバンプフォイル分割片21bに分割されていることにより、これら4つの帯状のバンプフォイル分割片21bはそれぞれ独立して動くようになっている。
なお、本実施形態では、バンプフォイル片21はその4つのバンプフォイル分割片21b間において、特に内周側と外周側との間で剛性を変えることなく全てがほぼ均一な剛性に形成されている。また、同じ列上にある山部23の頂部の高さも、ほぼ同じに形成されている。これにより、バンプフォイル片21の設計や製作が容易になっている。
また、バンプフォイル片21は、その固定辺21aが、後述するシム50やトップフォイル片11における回転軸1の回転方向下流側の端辺と、平面視した状態でほぼ重なる位置に配置されている。そして、この端辺21aとなる谷部22の形成方向に沿って、後述するシム50とともにベースプレート30にスポット溶接(点付溶接)され、固定されている。
その際、バンプフォイル片21の端辺21aは、全体が連続する一つの谷部22によって形成されているため、この谷部22全体を容易に溶接することができる。従って、バンプフォイル片21は、溶接による固定が容易に行えるようになっている。
なお、ベースプレート30への端辺21a及びシム50の固定については、スポット溶接以外にも、例えばネジ止めなどによって行うことができる。
シム50は、前記したように図3に示した6つの支持領域31に対応してベースプレート30の周方向に6つ設けられており、図4(c)、(d)に示すようにバンプフォイル片21の内周側に対向することなく、外周側に対向するように形成配置されたシム片51と、このシム片51の周方向の一方の側、本実施形態では回転軸1の回転方向下流側に一体に形成されたシム固定辺52と、からなっている。
シム片51は、扇形の頂点側を切り欠いて内周側、外周側をそれぞれ円弧状とした、略台形状に形成されている。本実施形態では、前記バンプフォイル片21の内周側の2つのバンプフォイル分割片21bに対向する部位が切り欠かれて、これに対向することなく、外周側の2つのバンプフォイル分割片21bに対向してその最底部、すなわち谷部22に接して配置されている。
シム固定辺52は、本実施形態ではバンプフォイル片21の径方向の長さと同じ長さに形成されており、従ってバンプフォイル片21の固定辺21a(端辺)と同じ長さに形成されて、これと重ねられて配置されている。これにより、前記したようにシム固定辺52は、バンプフォイル片21の固定辺21aとともにベースプレート30にスポット溶接(点付溶接)され、固定されている。
これらシム50は、厚さ数十μm程度の金属製または合金製の薄板(フォイル)によって形成されている。具体的には、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属や、各種の制振合金によって形成される。このような厚さのシム50を配置したことで、シム片51はバンプフォイル片21の外周側のみをその厚さ分持ち上げて支持することにより、相対的に内周側でのバンプフォイル片21のバネ反力を弱めることができる。従って、スラストカラー4とトップフォイル10との間に形成される流体潤滑膜の、内外周間での膜厚の差を、充分に少なくすることができる。
すなわち、流体潤滑膜の圧力はトップフォイル片11の外周側で高圧となり、内周側で低圧となるため、バンプフォイル片21が外周側でトップフォイル片11を相対的に強く支持し、内周側で弱く支持することにより、トップフォイル片11にかかる力が外周側と内周側とで釣り合うようになる。従って、トップフォイル片11は外周側、内周側共に、概ね等しくバンプフォイル片21側へ押し込まれるようになり、内周端側における流体潤滑膜の膜厚が極端に薄くなることが防止される。
なお、シム50のシム片51については、図4(c)に示したようにその内周側を完全に切り欠くことなく、バンプフォイル片21の内周側領域において、少なくとも該バンプフォイル片21の最底部となる谷部22に対向しないようにすれば、その一部をバンプフォイル片21の内周側領域に残しておいてもよい。具体的には、谷部22を除いた山部23に対向する部位を櫛歯状に残しておいてもよい。このように山部23に対向する部位を残しておいても、この部位はバンプフォイル片21に直接接することなく、隙間を空けて山部23に対向するので、シム片は図4(c)に示したシム片51と同様にバンプフォイル片21の外周側のみをその厚さ分持ち上げるようになり、従ってシム片51と同様に機能する。
トップフォイル10も、図3に示すようにベースプレート30の周方向に配列された6枚のトップフォイル片11によって形成されている。これらトップフォイル片11は、厚さ数百μm程度、例えば150μm程度の金属製の薄板(フォイル)により、扇形の頂点側を切り欠いて内周側、外周側をそれぞれ円弧状とした、略台形状に形成されている。すなわち、バンプフォイル片21とほぼ同じ形状で、周方向に少し長い形状に形成されている。このような形状のトップフォイル片11は、ベースプレート30の各支持領域31上にて前記バンプフォイル片21を覆ってそれぞれ配置され、ベースプレート30の周方向に等間隔で配列されて全体として略円環板状に配置されたことにより、トップフォイル10を形成している。
なお、トップフォイル片11は支持領域31より一回り小さく形成されるとともに、バンプフォイル片21より僅かに大きく形成されている。これによってトップフォイル片11は、互いに干渉することなく、また、バンプフォイル片21やシム50をスラストカラー4側に露出させることなく、その上面を覆った状態で各支持領域31に配置されている。ただし、本発明はこれに限定されることなく、例えばトップフォイル片11をバンプフォイル片21と同じ大きさに形成してもよく、あるいは、バンプフォイル片21より小さく形成してもよい。
また、このトップフォイル片11は、回転軸1(スラストカラー4)の回転方向上流側の端辺を固定辺12としており、この固定辺12によってベースプレート30に固定されている。すなわち、この固定辺12は、図4(a)に示したようにバンプフォイル片21やシム50から離間して配置されて、スポット溶接(点付溶接)によってベースプレート30に固定されている。
また、トップフォイル片11は、その固定辺12より回転方向下流側が曲げ加工されており、これによってバンプフォイル片21の山部23の高さ分の段差を吸収できるように立ち上げられ、回転方向下流側がバンプフォイル片21の山部23上に載せられている。一方、回転方向下流側の端辺(トレーリングエッジ)側は、固定されることなく単にバンプフォイル片21の山部23上に支持された自由端となっている。
本実施形態ではバンプフォイル片21を、前記したようにその谷部22及び山部23がバンプフォイル片21の固定辺21aと直交する方向に配列するように配置している。従って、このバンプフォイル片21上に載置されることでトップフォイル片11は、前記山部23の配列方向に沿って固定辺12側からバンプフォイル片21の固定辺21a側に向かうに連れて、漸次ベースプレート30の内面から遠ざかるようにバンプフォイル片21の山部23によって設定された初期傾斜角で傾斜して配置されている。
ここで、初期傾斜角とは、荷重がゼロのときのベースプレート30に対するトップフォイル片11の傾斜角である。また、傾斜角とは、図4(d)に示すようにバンプフォイル片21の山部23の高さ増加量によって決まる角度(勾配)θである。従って、荷重が増すとバンプフォイル片21の山部23がベースプレート30側に押し込まれ、全体が平坦化することにより、傾斜角θは初期傾斜角より小さくなる。
また、トップフォイル片11には、図4(a)に示すように固定辺12の近傍部、すなわち固定辺12に対して回転軸1の回転方向下流側に位置する近傍部が、その他の部位に比べて薄肉に形成された薄肉部14となっている。薄肉部14は、固定辺12に沿って直線状に形成されたもので、トップフォイル片11を構成するその他の部位の厚さ(数百μm程度)の、50%〜70%程度の厚さに形成されている。このような薄肉部14の形成は、例えばエッチング加工によって行うことができる。
また、この薄肉部14は、図4(a)に示すバンプフォイル片21に対して、その山部23のうち固定辺12に最も近い山部23の頂点(稜線)にかからないように、形成されている。すなわち、薄肉部14は、固定辺12と該固定辺12側の山部23の頂点(稜線)との間に位置するように、その幅が設定され、形成されている。これにより、トップフォイル片11は、薄肉部14以外の箇所(その他の部位)が全ての山部23上に載ってこれらに均等に支持されるようになる。また、薄肉部14を形成したことにより、該薄肉部14より回転方向下流側がより容易に且つ円滑に傾斜できる(傾くことができる)ようになっている。さらに、このような薄肉部14を形成することにより、該薄肉部14以外の箇所の肉厚を、従来に比べて厚くすることも可能になる。
次に、このような構成からなるスラスト軸受3A(3)の作用について説明する。
本実施形態では、図2に示したようにスラスト軸受3Aをスラストカラー4の両側に設けている。このようにスラストカラー4の両側に設けることにより、スラスト方向の移動量を極力抑えることができる。すなわち、スラスト移動量を小さくすることにより、図1に示したチップクリアランス6を狭くすることができ、これによって流体性能を向上することができる。
スラスト方向の移動量を極力抑えるため、両スラスト軸受3Aはスラストカラー4に対して大きな隙間が生じないように近接して設置される。これにより、両スラスト軸受3Aのトップフォイル片11(トップフォイル10)はスラストカラー4に対して若干押し付けられた状態になる。その際、本実施形態ではトップフォイル片11に薄肉部14を形成しているので、回転方向下流側(自由端側)が傾き易く(曲がり易く)なっている。そのため、押し付け量に比して押し付け力が小さくなっており、これにより、始動トルクが小さくなっている。
すなわち、従来では荷重が増大したときにトップフォイル片の傾斜角が最適角になるように、予め最適角より大きい傾斜角が付けられている。従って、回転停止状態ではトップフォイル片はスラストカラー4を両面から挟み込み、押し付けられた状態(プリロードが掛かった状態)となる。しかしながら、従来ではトップフォイル片の肉厚も一定であることから、スラストカラー4への押し付け力(プリロード)が強く、始動トルクが大きくなっている。これに対して本実施形態では、前記したようにトップフォイル片11に薄肉部14を形成しているため、始動トルクが小さくなる。
また、回転軸1が回転してスラストカラー4が回転を始めると、スラストカラー4とトップフォイル片11は擦れ合いつつ、両者の間に形成されたくさび形の空間に周囲流体が押し込まれる。そして、スラストカラー4が一定の回転速度に達すると、両者の間に流体潤滑膜が形成される。この流体潤滑膜の圧力によってトップフォイル片11(トップフォイル10)はバンプフォイル片21(バックフォイル20)側へ押し付けられ、スラストカラー4はトップフォイル片11との接触状態を脱し、非接触で回転するようになる。
また、流体潤滑膜の圧力が高まってトップフォイル片11がバンプフォイル片21側へ押し込まれると、トップフォイル片11の外周側では周速が速く流体潤滑膜の圧力(膜圧)は高くなっており、内周側では周速が遅く膜圧が低くなっているので、トップフォイル片11の外周部はバンプフォイル片21側へ押し込まれてスラストカラー4から離れる方向へ動こうとし、内周部はスラストカラー4の側へ起き上がろうとする。
しかし、バンプフォイル片21とベースプレート30との間にはシム50が配設されているので、外周端側ではシム片51によってバンプフォイル片21がスラストカラー4側(トップフォイル片11側)に持ち上げられているのに対し、内周端側ではバンプフォイル片21が持ち上げられることなく、従ってトップフォイル片11とバンプフォイル片21との間に隙間が形成される。よって、この隙間が無くなるまではバンプフォイル片21にトップフォイル片11の内周端側をスラストカラー4側へ押し返す力が生じないため、トップフォイル片11の内周端側の起き上がりが起こらない。
また、トップフォイル片11の内周端側がバンプフォイル片21側へ押し込まれて前記の隙間が無くなったとしても、外周端側に比べれば隙間の分だけバンプフォイル片21によるバネ反力が弱くなっており、従ってトップフォイル片11の内周端側は起き上がり難くなる。よって、トップフォイル片11の下流側端辺側では、内周端側における流体潤滑膜の膜厚が極端に薄くなることが防止される。
また、バンプフォイル片21を径方向にて4つ(複数)に分割しているので、内周側のバンプフォイル分割片21bと外周側のバンプフォイル分割片21bとがそれぞれ独立して動作するため、トップフォイル片11がバンプフォイル片21側へ押し込まれたときに生じるバンプフォイル片21の変形が径方向において滑らかになり、従ってバンプフォイル片21(バックフォイル片)による支持力も内周側から外周側に向けてより滑らかに変化する。
本実施形態のスラスト軸受3A(3)にあっては、バンプフォイル片21とベースプレート30との間にシム片51(シム50)を配設しているので、トップフォイル片11の内周端側の、スラストカラー4側への起き上がりを防止することができ、従ってトップフォイル片11の下流側端辺側において、内周端側における流体潤滑膜の膜厚が極端に薄くなることを防止することができる。よって、このスラスト軸受3A(3)は、内周端側でトップフォイル片11がスラストカラー4に接触するのを防止することができるとともに、高負荷に耐え得る優れたものとなる。
また、内周端側と外周端側とでバンプフォイル片21の山の高さを変えることなく、シム片51を配設することでトップフォイル片11の内周端側の起き上がりを防止しているので、バンプフォイル片21の山の高さを変えることで起き上がりを防止する場合に比べて、トップフォイル片11に対する内外周間での支持力の違いを、容易に、且つ精度良く作り出すことができる。従って、内周端側と外周端側とでバンプフォイル片21の山の高さを変えたり、剛性を変える場合に比べ、スラスト軸受3A(3)の設計や製作を容易にすることができる。また、寸法管理が容易になるため量産化に有効となり、製造コストの低減化も可能となる。
また、バンプフォイル片21の周方向の一方の側を径方向にて複数に分割してバンプフォイル分割片21bとしているので、内周側のバンプフォイル分割片21bと外周側のバンプフォイル分割片21bとがそれぞれ独立して動作するようになり、従って、トップフォイル片11がバンプフォイル片21側へ押し込まれたときに生じるバンプフォイル片21の変形が径方向において滑らかになる。よって、バンプフォイル片21による支持力も内周側から外周側に向けてより滑らかに変化するので、トップフォイル片11がスラストカラー4に局所的に接触するのを抑制することができ、これによってトップフォイル片11の局所摩耗を防止し、軸受寿命の低下や焼き付きを防止することができる。また、バンプフォイル分割片21bが端辺21a(連続辺)によって一体化されているため、バンプフォイル片21のベースプレート30上への固定が容易になる。
また、シム固定辺52をバンプフォイル片21の径方向の長さと同じ長さに形成しているので、シム固定辺52をバンプフォイル片21の固定辺(端辺21a)と重ねてスポット溶接等によりベースプレート30に固定することができる。従って、製作を容易にして製造コストの低減化を図ることができる。
「第2実施形態」
次に、本発明のスラスト軸受3の第2実施形態について、図5(a)〜(c)を参照して説明する。なお、図5(a)はスラスト軸受の平面図、図5(b)は図5(a)のB−B線矢視断面図、図5(c)はバンプフォイル片及びシムの形状を説明するためにその平面図と側面図を対応させた説明図である。第2実施形態のスラスト軸受3B(3)が第1実施形態のスラスト軸受3A(3)と主に異なるところは、図5(a)〜(c)に示すように、ベースプレート30の前記支持領域31に傾斜面32を形成した点と、バンプフォイル片21の山部23の高さを、全て同一にした点である。
本実施形態では、図5(a)に示すように支持領域31における、前記シム50、前記バンプフォイル片21、トップフォイル片11を支持する領域全体を、トップフォイル片11の固定辺12側から下流側の端辺側に向かうに連れて高さが増加する傾斜面32としている。すなわち、傾斜面32を、図5(b)に示すようにバンプフォイル片21の固定辺21aに対して直交する方向に傾斜させて形成している。
また、バンプフォイル片21については、前記第1実施形態と同様に、シム50を介してベースプレート30に接する谷部22と、トップフォイル片11に接する山部23とを交互に配置した波板状に形成している。ただし、本実施形態では、図5(b)、(c)に示すように、山部23の高さをベースプレート30の周方向で全て同一に形成している。なお、4つのバンプフォイル分割片21bを、剛性を変えることなく、また山部23の頂部の高さを変えることなく、ほぼ同じに形成している点も、第1実施形態と同様である。
また、谷部22及び山部23については、前記第1実施形態と同様に、バンプフォイル片21の固定辺21aに対して直交する方向に配列させている。これにより、バンプフォイル片21の山部23は、その高さがベースプレート30の傾斜面32の傾斜方向に沿って、すなわち回転軸1の回転方向の下流側に向かうに連れて、所定の高さずつ高くなっている。つまり、第1実施形態と見かけ上同一になっている。従って、このバンプフォイル片21上に配置されるトップフォイル片11は、その傾斜角θが、第1実施形態と同様に形成される。本実施形態では、この傾斜角θは図5(c)に示すように傾斜面32の傾斜角θによって決まる。
本実施形態のスラスト軸受3B(3)にあっても、バンプフォイル片21とベースプレート30との間にシム片51(シム50)を配設しているので、トップフォイル片11の内周端側の、スラストカラー4側への起き上がりを防止することができ、従ってトップフォイル片11の下流側端辺側において、内周端側における流体潤滑膜の膜厚が極端に薄くなることを防止することができる。よって、このスラスト軸受3B(3)も、内周端側でトップフォイル片11がスラストカラー4に接触するのを防止することができるとともに、高負荷に耐え得る優れたものとなる。
また、ベースプレート30の各支持領域31に傾斜面32を形成し、バンプフォイル片21の山部23の高さを全て同一にするとともに、該山部23の配列方向を傾斜面32の傾斜方向に一致させているので、この傾斜面32上にシム50、バックフォイル片21を介してトップフォイル片11を配設することにより、トップフォイル片11の高さを傾斜面32に沿って精度よく変化させることができる。すなわち、トップフォイル片11に所定の傾斜角θを付与することができる。また、その際にバンプフォイル片21については、山部23の高さを周方向で変化させることなく一定の高さに作製すればよく、従ってその加工コストを抑えることができる。よって、このスラスト軸受3B(3)によれば、加工を容易にして量産性を向上し、コストの低減化を図ることができる。また、加工が容易になってバラツキが少なくなるため、設計時に予測した軸受性能(例えば軸受負荷能力)が得やすくなる。
「第3実施形態」
次に、本発明のスラスト軸受3の第3実施形態について、図6、図7(a)〜(d)を参照して説明する。なお、図6はスラスト軸受の平面図、図7(a)は図6のC−C線矢視断面図、図7(b)はバンプフォイル片の平面図、図7(c)はシムの平面図、図7(d)はバンプフォイル片及びシムの形状を説明するためにその平面図と側面図を対応させた説明図である。第3実施形態のスラスト軸受3C(3)が第1実施形態のスラスト軸受3A(3)と主に異なるところは、シム50のシム固定辺52が、回転軸1の回転方向上流側に位置している点である。
すなわち、本実施形態におけるシム50も、図6に示した6つの支持領域31に対応してベースプレート30の周方向に6つ設けられたもので、図7(c)、(d)に示すようにバンプフォイル片21の内周側に対向することなく、外周側に対向するように形成配置されたシム片51と、このシム片51の周方向の一方の側、本実施形態では回転軸1の回転方向上流側に一体に形成されたシム固定辺52とからなっている。
シム片51は、第1実施形態のシム片51と同様に、扇形の頂点側を切り欠いて内周側、外周側をそれぞれ円弧状とした、略台形状に形成されている。本実施形態でも、前記バンプフォイル片21の内周側の2つのバンプフォイル分割片21bに対向する部位が切り欠かれて、これに対向することなく、外周側の2つのバンプフォイル分割片21bに対向してその最底部、すなわち谷部22に接して配置されている。
シム固定辺52は、図6に示すように本実施形態ではトップフォイル片11の径方向の長さと同じ長さに形成されており、従ってトップフォイル片11の固定辺12と同じ長さに形成されて、これと重ねられて配置されている。これにより、本実施形態のシム固定辺52は、トップフォイル片11の固定辺12とともにベースプレート30にスポット溶接(点付溶接)され、固定されている。なお、シム片51の周方向の他方の側の端縁、すなわち回転軸1の回転方向下流側の端縁は、図7(a)、(d)に示すように、バンプフォイル片21の端辺21a(固定辺)より回転軸1の回転方向上流側に位置していて、自由端となっている。
なお、本実施形態のシム50のシム片51についても、図7(c)に示したようにその内周側を完全に切り欠くことなく、バンプフォイル片21の内周側領域において、少なくとも該バンプフォイル片21の最底部となる谷部22に対向しないようにすれば、その一部をバンプフォイル片21の内周側領域に残しておいてもよい。具体的には、谷部22を除いた山部23に対向する部位を櫛歯状に残しておいてもよい。
本実施形態のスラスト軸受3C(3)にあっても、バンプフォイル片21とベースプレート30との間にシム片51(シム50)を配設しているので、トップフォイル片11の内周端側の、スラストカラー4側への起き上がりを防止することができ、従ってトップフォイル片11の下流側端辺側において、内周端側における流体潤滑膜の膜厚が極端に薄くなることを防止することができる。よって、このスラスト軸受3C(3)も、内周端側でトップフォイル片11がスラストカラー4に接触するのを防止することができるとともに、高負荷に耐え得る優れたものとなる。
また、内周端側と外周端側とでバンプフォイル片21の山の高さを変えることなく、シム片51を配設することでトップフォイル片11の内周端側の起き上がりを防止しているので、バンプフォイル片21の山の高さを変えることで起き上がりを防止する場合に比べて、トップフォイル片11に対する内外周間での支持力の違いを、容易に、且つ精度良く作り出すことができる。従って、内周端側と外周端側とでバンプフォイル片21の山の高さを変えたり、剛性を変える場合に比べ、スラスト軸受3A(3)の設計や製作を容易にすることができる。また、寸法管理が容易になるため量産化に有効となり、製造コストの低減化も可能となる。
また、シム固定辺52をトップフォイル片11の径方向の長さと同じ長さに形成しているので、シム固定辺52をトップフォイル片11の固定辺12と重ねてスポット溶接等によりベースプレート30に固定することができる。従って、製作を容易にして製造コストの低減化を図ることができる。
なお、本実施形態の変形例として、前記第1実施形態に対する第2実施形態のように、本実施形態のベースプレート30の前記支持領域31に傾斜面32を形成するとともに、バンプフォイル片21の山部23の高さを全て同一にしてもよい。
このように各支持領域31に傾斜面32を形成し、バンプフォイル片21の山部23の高さを全て同一にするとともに、該山部23の配列方向を傾斜面32の傾斜方向に一致させれば、この傾斜面32上にシム50、バンプフォイル片21を介してトップフォイル片11を配設することにより、トップフォイル片11の高さを傾斜面32に沿って精度よく変化させることができる。すなわち、トップフォイル片11に所定の傾斜角θを付与することができる。また、その際にバンプフォイル片21については、山部23の高さを周方向で変化させることなく一定の高さに作製すればよく、従ってその加工コストを抑えることができる。
よって、この変形例のスラスト軸受によれば、第3実施形態の効果に加えて、加工を容易にして量産性を向上し、コストの低減化を図ることができるという効果も得ることができる。また、加工が容易になってバラツキが少なくなるため、設計時に予測した軸受性能(例えば軸受負荷能力)が得やすくなる。
「第4実施形態」
次に、本発明のスラスト軸受3の第4実施形態について、図8、図9(a)〜(d)を参照して説明する。なお、図8はスラスト軸受の平面図、図9(a)は図8のD−D線矢視断面図、図9(b)はバンプフォイル片の平面図、図9(c)はシムの平面図、図9(d)はバンプフォイル片及びシムの形状を説明するためにその平面図と側面図を対応させた説明図である。第4実施形態のスラスト軸受3D(3)が第3実施形態のスラスト軸受3C(3)と主に異なるところは、シム50が、トップフォイル片11とバンプフォイル片21(バックフォイル片)との間に配設されている点である。
すなわち、本実施形態におけるシム50も、図8に示した6つの支持領域31に対応してベースプレート30の周方向に6つ設けられたもので、図9(c)、(d)に示すようにバンプフォイル片21の内周側に対向することなく、外周側に対向するように形成配置されたシム片51と、このシム片51の周方向の一方の側、本実施形態では回転軸1の回転方向上流側に一体に形成されたシム固定辺52とからなっている。
シム片51は、第3実施形態のシム片51と同様に、扇形の頂点側を切り欠いて内周側、外周側をそれぞれ円弧状とした、略台形状に形成されている。本実施形態でも、前記バンプフォイル片21の内周側の2つのバンプフォイル分割片21bに対向する部位が切り欠かれて、これに対向することなく、外周側の2つのバンプフォイル分割片21bに対向して配置されている。ただし、本実施形態のシム50のシム片51は、バンプフォイル片21(バックフォイル片)の下側でなく、バンプフォイル片21の上側に配設されているため、バンプフォイル片21の最頂部、すなわち山部23の稜線(頂部)に接して配置されている。
なお、シム50のシム片51については、図9(c)に示したようにその内周側を完全に切り欠くことなく、バンプフォイル片21の内周側領域において、少なくとも該バンプフォイル片21の山部23の最頂部に対向してこれに接しないようにすれば、その一部をバンプフォイル片21の内周側領域に残しておいてもよい。具体的には、山部23を除いた谷部22に対向する部位を櫛歯状に残しておいてもよい。このように谷部22に対向する部位を残しておいても、この部位はバンプフォイル片21に直接接することなく、隙間を空けて谷部22に対向するので、シム片は図9(c)に示したシム片51と同様にバンプフォイル片21の内周側に隙間を生じるようになり、従ってシム片51と同様に機能する。
シム固定辺52は、第3実施形態と同様に本実施形態でも、トップフォイル片11の径方向の長さと同じ長さに形成されており、従ってトップフォイル片11の固定辺12と同じ長さに形成されて、これと重ねられて配置されている。これにより、本実施形態のシム固定辺52も、トップフォイル片11の固定辺12とともにベースプレート30にスポット溶接(点付溶接)され、固定されている。
ただし、本実施形態ではシム50がバンプフォイル片21の上側に配設されているため、シム50のシム固定辺52側は、トップフォイル片11の固定辺12側と同様に、シム固定辺52より回転方向下流側が曲げ加工されている。すなわち、バンプフォイル片21の山部23の高さ分の段差を吸収できるように立ち上げられ、回転方向下流側がバンプフォイル片21の山部23上に載せられている。そして、この回転方向下流側の端辺側は、固定されることなく単にバンプフォイル片21の山部23上に支持された自由端となっている。
本実施形態のスラスト軸受3D(3)にあっては、トップフォイル片11とバンプフォイル片21との間にシム片51(シム50)を配設しているので、トップフォイル片11の外周端側がバンプフォイル片21側に押し込まれてスラストカラー4から離れる方向に動こうとし、内周端側がスラストカラー4側へ起き上がろうとしても、内周端側ではシム片51によってトップフォイル片11とバンプフォイル片21との間に隙間が生じているので、この隙間が無くなるまではトップフォイル片11の内周端側をスラストカラー4側へ押し返す力が生じず、トップフォイル片11の内周端側の起き上がりが起こらない。従って、トップフォイル片11の下流側端辺側において、内周端側における流体潤滑膜の膜厚が極端に薄くなることを防止することができる。よって、このスラスト軸受3D(3)も、内周端側でトップフォイル片11がスラストカラー4に接触するのを防止することができるとともに、高負荷に耐え得る優れたものとなる。
また、内周端側と外周端側とでバンプフォイル片21の山の高さを変えることなく、シム片51を配設することでトップフォイル片11の内周端側の起き上がりを防止しているので、バンプフォイル片21の山の高さを変えることで起き上がりを防止する場合に比べて、トップフォイル片11に対する内外周間での支持力の違いを、容易に、且つ精度良く作り出すことができる。従って、内周端側と外周端側とでバンプフォイル片21の山の高さを変えたり、剛性を変える場合に比べ、スラスト軸受3D(3)の設計や製作を容易にすることができる。また、寸法管理が容易になるため量産化に有効となり、製造コストの低減化も可能となる。
また、シム固定辺52をトップフォイル片11の径方向の長さと同じ長さに形成しているので、シム固定辺52をトップフォイル片11の固定辺12と重ねてスポット溶接等によりベースプレート30に固定することができる。従って、製作を容易にして製造コストの低減化を図ることができる。
なお、本実施形態の変形例として、前記第1実施形態に対する第2実施形態のように、本実施形態のベースプレート30の前記支持領域31に傾斜面32を形成するとともに、バンプフォイル片21の山部23の高さを全て同一にしてもよい。
このように各支持領域31に傾斜面32を形成し、バンプフォイル片21の山部23の高さを全て同一にするとともに、該山部23の配列方向を傾斜面32の傾斜方向に一致させれば、この傾斜面32上にバンプフォイル片21、シム50を介してトップフォイル片11を配設することにより、トップフォイル片11の高さを傾斜面32に沿って精度よく変化させることができる。すなわち、トップフォイル片11に所定の傾斜角θを付与することができる。また、その際にバンプフォイル片21については、山部23の高さを周方向で変化させることなく一定の高さに作製すればよく、従ってその加工コストを抑えることができる。
よって、この変形例のスラスト軸受によれば、第4実施形態の効果に加えて、加工を容易にして量産性を向上し、コストの低減化を図ることができるという効果も得ることができる。また、加工が容易になってバラツキが少なくなるため、設計時に予測した軸受性能(例えば軸受負荷能力)が得やすくなる。
「第5実施形態」
次に、本発明のスラスト軸受3の第5実施形態について、図10、図11(a)〜(d)を参照して説明する。なお、図10はスラスト軸受の平面図、図11(a)は図10のE−E線矢視断面図、図11(b)はバンプフォイル片の平面図、図11(c)はシムの平面図、図11(d)はバンプフォイル片及びシムの形状を説明するためにその平面図と側面図を対応させた説明図である。第5実施形態のスラスト軸受3E(3)が第4実施形態のスラスト軸受3D(3)と主に異なるところは、シム50のシム固定辺52が、回転軸1の回転方向下流側に位置している点である。
すなわち、本実施形態におけるシム50も、図10に示した6つの支持領域31に対応してベースプレート30の周方向に6つ設けられたもので、図11(c)、(d)に示すようにバンプフォイル片21の内周側に対向することなく、外周側に対向するように形成配置されたシム片51と、このシム片51の周方向の一方の側、本実施形態では回転軸1の回転方向下流側に一体に形成されたシム固定辺52とからなっている。
シム片51は、第4実施形態のシム片51と同様に、扇形の頂点側を切り欠いて内周側、外周側をそれぞれ円弧状とした、略台形状に形成されている。本実施形態でも、前記バンプフォイル片21の内周側の2つのバンプフォイル分割片21bに対向する部位が切り欠かれて、これに対向することなく、外周側の2つのバンプフォイル分割片21bに対向してその最頂部、すなわち山部23の稜線(頂部)に接して配置されている。
シム固定辺52は、本実施形態ではトップフォイル片11もしくはバンプフォイル片21の径方向の長さと同じ長さに形成されている。ただし、回転軸1の回転方向下流側に形成されているため、図11(a)に示すようにトップフォイル片11の固定辺12と重ねられることなく、また、バンプフォイル片21の端辺21a(固定辺)とも重ねられることなく、バンプフォイル片21の端辺21aの外側(回転軸1の回転方向下流側)にて単独でベースプレート30にスポット溶接(点付溶接)され、固定されている。
また、本実施形態でもシム50がバンプフォイル片21の上側に配設されているため、シム50のシム固定辺52側は、シム固定辺52より回転方向上流側が曲げ加工されている。すなわち、バンプフォイル片21の山部23の高さ分の段差を吸収できるように立ち上げられ、回転方向上流側がバンプフォイル片21の山部23上に載せられている。そして、回転方向上流側の端辺側は、固定されることなく単にバンプフォイル片21の山部23上に支持された自由端となっている。
本実施形態のスラスト軸受3E(3)にあっても、トップフォイル片11とバンプフォイル片21との間にシム片51(シム50)を配設しているので、トップフォイル片11の内周端側の、スラストカラー4側への起き上がりを防止することができ、従ってトップフォイル片11の下流側端辺側において、内周端側における流体潤滑膜の膜厚が極端に薄くなることを防止することができる。よって、このスラスト軸受3E(3)も、内周端側でトップフォイル片11がスラストカラー4に接触するのを防止することができるとともに、高負荷に耐え得る優れたものとなる。
また、内周端側と外周端側とでバンプフォイル片21の山の高さを変えることなく、シム片51を配設することでトップフォイル片11の内周端側の起き上がりを防止しているので、バンプフォイル片21の山の高さを変えることで起き上がりを防止する場合に比べて、トップフォイル片11に対する内外周間での支持力の違いを、容易に、且つ精度良く作り出すことができる。従って、内周端側と外周端側とでバンプフォイル片21の山の高さを変えたり、剛性を変える場合に比べ、スラスト軸受3E(3)の設計や製作を容易にすることができる。また、寸法管理が容易になるため量産化に有効となり、製造コストの低減化も可能となる。
さらに、シム50のシム固定辺52は回転方向下流側に位置しているので、トップフォイル片11が流体潤滑膜を介してスラストカラー4に押し込まれた際、上下に重ねられたトップフォイル片11とシム50とはその自由端側が互いに対向する方向、すなわち相反する方向(互いの固定辺の方向)に滑るようになる。従って、これらトップフォイル片11とシム50との間の相対的な滑り量が増加するため、これらの間にて高い摩擦減衰効果が得られるようになる。
なお、本実施形態の変形例として、前記第1実施形態に対する第2実施形態のように、本実施形態のベースプレート30の前記支持領域31に傾斜面32を形成するとともに、バンプフォイル片21の山部23の高さを全て同一にしてもよい。
このように各支持領域31に傾斜面32を形成し、バンプフォイル片21の山部23の高さを全て同一にするとともに、該山部23の配列方向を傾斜面32の傾斜方向に一致させれば、この傾斜面32上にバンプフォイル片21、シム50を介してトップフォイル片11を配設することにより、トップフォイル片11の高さを傾斜面32に沿って精度よく変化させることができる。すなわち、トップフォイル片11に所定の傾斜角θを付与することができる。また、その際にバンプフォイル片21については、山部23の高さを周方向で変化させることなく一定の高さに作製すればよく、従ってその加工コストを抑えることができる。
よって、この変形例のスラスト軸受によれば、第5実施形態の効果に加えて、加工を容易にして量産性を向上し、コストの低減化を図ることができるという効果も得ることができる。また、加工が容易になってバラツキが少なくなるため、設計時に予測した軸受性能(例えば軸受負荷能力)が得やすくなる。
また、前記第5実施形態、及びその変形例において、シム固定辺52については、バンプフォイル片21の端辺21a(固定辺)に重ねて配置し、この端辺21aと共にスポット溶接等によりベースプレート30に固定してもよい。
また、前記第5実施形態、及びその変形例においては、図12に示すようにシム片51のみによってシムを形成してもよい。このシム片51にあっても、図11(c)に示したシム50と同様にバンプフォイル片21の上側に配設されているため、その回転方向下流側、すなわちベースプレート30に固定される側が曲げ加工されている。これにより、回転方向上流側がバンプフォイル片21の山部23上に載せられる。そして、この回転方向上流側の端辺側は、固定されることなく単にバンプフォイル片21の山部23上に支持された自由端となっている。
このようなシム片51のみからなるシムを用いた場合には、シム(シム片51)の形状が単純であるため部品としての取り扱い性が良いといった効果が得られる。また、ベースプレート30に固定される部位がバンプフォイル片21やトップフォイル片11の長さより短いものの、シム片51はベースプレート30に独立してスポット溶接等により固定されるため、支障無く良好に固定される。すなわち、シム片51の固定される部位がバンプフォイル片21の端辺21aやトップフォイル片11の固定辺12に重ねられて固定される場合、径方向の長さの相違によって固定部にて段差が形成されてしまう。しかし、本例ではシム片51が独立してベースプレート30に固定されるため、このような段差が形成されず、従って段差に起因する溶接不良等の不都合が回避される。
「第6実施形態」
次に、本発明のスラスト軸受3の第6実施形態について、図13、図14(a)〜(d)を参照して説明する。なお、図13はスラスト軸受の平面図、図14(a)は図13のF−F線矢視断面図、図14(b)はバンプフォイル片の平面図、図14(c)はシムの平面図、図14(d)はバンプフォイル片及びシムの形状を説明するためにその平面図と側面図を対応させた説明図である。第6実施形態のスラスト軸受3F(3)が第5実施形態のスラスト軸受3E(3)と主に異なるところは、図14(a)に示すようにシム50の、回転軸1の回転方向下流側のシム固定辺52が、トップフォイル片11の固定辺12とともに、ベースプレート30に固定されている点である。
すなわち、本実施形態におけるシム50も、図13に示した6つの支持領域31に対応してベースプレート30の周方向に6つ設けられたもので、図14(c)、(d)に示すようにバンプフォイル片21の内周側に対向することなく、外周側に対向するように形成配置されたシム片51と、このシム片51の周方向の一方の側、本実施形態では回転軸1の回転方向下流側に一体に形成されたシム固定辺52と、からなっている。
シム片51は、第5実施形態のシム片51と同様に、扇形の頂点側を切り欠いて内周側、外周側をそれぞれ円弧状とした、略台形状に形成されている。本実施形態でも、前記バンプフォイル片21の内周側の2つのバンプフォイル分割片21bに対向する部位が切り欠かれて、これに対向することなく、外周側の2つのバンプフォイル分割片21bに対向してその最頂部、すなわち山部23の稜線(頂部)に接して配置されている。
また、シム50は、図10、図11(a)〜(d)に示した第5実施形態のシム50に比べ、回転方向下流側が長く形成されており、その端辺、すなわちシム固定辺52が、図13、図14(a)に示すように回転方向下流側に隣り合うトップフォイル片11の、固定辺12とともにベースプレート30にスポット溶接(点付溶接)され、固定されている。一方、回転方向上流側は、本実施形態では固定されることなく単にバンプフォイル片21の山部23上に支持された自由端となっている。
本実施形態のスラスト軸受3F(3)にあっても、トップフォイル片11とバンプフォイル片21との間にシム片51(シム50)を配設しているので、トップフォイル片11の内周端側の、スラストカラー4側への起き上がりを防止することができ、従ってトップフォイル片11の下流側端辺側において、内周端側における流体潤滑膜の膜厚が極端に薄くなることを防止することができる。よって、このスラスト軸受3F(3)も、内周端側でトップフォイル片11がスラストカラー4に接触するのを防止することができるとともに、高負荷に耐え得る優れたものとなる。
また、内周端側と外周端側とでバンプフォイル片21の山の高さを変えることなく、シム片51を配設することでトップフォイル片11の内周端側の起き上がりを防止しているので、バンプフォイル片21の山の高さを変えることで起き上がりを防止する場合に比べて、トップフォイル片11に対する内外周間での支持力の違いを、容易に、且つ精度良く作り出すことができる。従って、内周端側と外周端側とでバンプフォイル片21の山の高さを変えたり、剛性を変える場合に比べ、スラスト軸受3F(3)の設計や製作を容易にすることができる。また、寸法管理が容易になるため量産化に有効となり、製造コストの低減化も可能となる。
さらに、シム固定辺52を回転方向下流側に隣り合うトップフォイル片11の固定辺12とともにベースプレート30に固定しているので、トップフォイル片11が流体潤滑膜を介してスラストカラー4に押し込まれた際、上下に重ねられたトップフォイル片11とシム50とはその自由端側が互いに対向する方向、すなわち相反する方向(互いの固定辺の方向)に滑るようになる。従って、これらトップフォイル片11とシム50との間の相対的な滑り量が増加するため、これらの間にて高い摩擦減衰効果が得られるようになる。
なお、本実施形態の変形例として、前記第1実施形態に対する第2実施形態のように、本実施形態のベースプレート30の前記支持領域31に傾斜面32を形成するとともに、バンプフォイル片21の山部23の高さを全て同一にしてもよい。
このように各支持領域31に傾斜面32を形成し、バンプフォイル片21の山部23の高さを全て同一にするとともに、該山部23の配列方向を傾斜面32の傾斜方向に一致させれば、この傾斜面32上にバンプフォイル片21、シム50を介してトップフォイル片11を配設することにより、トップフォイル片11の高さを傾斜面32に沿って精度よく変化させることができる。すなわち、トップフォイル片11に所定の傾斜角θを付与することができる。また、その際にバンプフォイル片21については、山部23の高さを周方向で変化させることなく一定の高さに作製すればよく、従ってその加工コストを抑えることができる。
よって、この変形例のスラスト軸受によれば、第6実施形態の効果に加えて、加工を容易にして量産性を向上し、コストの低減化を図ることができるという効果も得ることができる。また、加工が容易になってバラツキが少なくなるため、設計時に予測した軸受性能(例えば軸受負荷能力)が得やすくなる。
次に、本発明のスラスト軸受3の第7実施形態〜第12実施形態について説明する。これら第7実施形態〜第12実施形態は、それぞれ、第1実施形態〜第6実施形態に対応した実施形態であり、第1実施形態〜第6実施形態に対して、シムの形状を変えた点でのみ異なっている。すなわち、第7実施形態〜第12実施形態のシム55は、そのシム片56が、バンプフォイル片21(バックフォイル片)の内周側領域だけでなく、外周側領域においても切り欠かれて形成されている。
「第7実施形態」
前記したように第7実施形態のスラスト軸受は、第1実施形態に対応する実施形態であり、第1実施形態のスラスト軸受3A(3)と異なるところは、図15(a)〜(d)に示すようにシム片の形状にある。なお、図15(a)〜(d)は本発明に係るスラスト軸受の第7実施形態を示す図であり、図15(a)は図3のA−A線矢視断面図に対応する断面図、図15(b)はバンプフォイル片の平面図、図15(c)はシムの平面図、図15(d)はバンプフォイル片及びシムの形状を説明するためにその平面図と側面図を対応させた説明図である。
図15(c)に示すように本実施形態のシム55は、シム片56と、このシム片56の周方向の一方の側、本実施形態では回転軸1の回転方向下流側に一体に形成されたシム固定辺57と、からなっている。なお、本実施形態、及び後述する第8実施形態〜第12実施形態では、第1実施形態〜第7実施形態と同様に、シム固定辺57はバンプフォイル片21(バックフォイル片)もしくはトップフォイル片11の径方向の長さと同じ長さに形成されている。
シム片56は、扇形の頂点側及び外周側を共に切り欠いて、内周側、外周側をそれぞれ円弧状とした、略台形状に形成されている。すなわち、本実施形態では、図15(d)に示すようにバンプフォイル片21の径方向における中間領域に対向して、シム片56が形成され、配置されている。従ってこのシム片56は、バンプフォイル片21の中間領域に対向してその最底部、すなわち谷部22に接して配置されている。
シム片56が、シム固定辺57に対して内周側で切り欠かれた径方向の長さL1は、シム固定辺57の径方向の長さをLとすると、0.2L以上0.5L以下程度とされる。また、外周側で切り欠かれた径方向の長さL2は、0.05L以上0.3L以下程度とされる。ここで、シム固定辺57に対して外周側も切り欠いてシム片56を形成しているのは、以下の理由による。
トップフォイル10(トップフォイル片11)の外周側では、その外周端で流体潤滑膜の圧力が周囲圧(例えば大気圧)と同じになるため、この外周側端部での流体潤滑膜の膜圧は、その他の外周側(外周端から内寄りに入ったところ)に比べて低くなる。このため、トップフォイル10(トップフォイル片11)はその内周端だけでなく、外周端でも起き上がりが生じ、この外周端も局所的に摩耗するおそれがある。
そこで、本実施形態では、前記したようにバンプフォイル片21に対して外周側でもこれに対向させることなく、切り欠いてシム片56を形成することにより、トップフォイル片11の外周端での起き上がりも防止している。
なお、シム片56については、内周側だけでなく、外周側についてもこれを完全に切り欠くことなく、少なくとも該バンプフォイル片21の最底部となる谷部22に対向しないようにすれば、その一部をバンプフォイル片21の外周側領域に残しておいてもよい。具体的には、谷部22を除いた山部23に対向する部位を櫛歯状に残しておいてもよい。このように山部23に対向する部位を残しておいても、この部位はバンプフォイル片21に直接接することなく、隙間を空けて山部23に対向するので、シム片は図15(c)に示したシム片56と同様にバンプフォイル片21の中間領域のみをその厚さ分持ち上げて支持するようになり、従ってシム片56と同様に機能する。
本実施形態のスラスト軸受にあっては、バンプフォイル片21とベースプレート30との間にシム片56(シム55)を配設しているので、トップフォイル片11の内周端側の、スラストカラー4側への起き上がりを防止するとともに、トップフォイル片11の外周端側の、スラストカラー4側への起き上がりも防止することができる。従ってトップフォイル片11の下流側端辺側において、内周端側における流体潤滑膜、及び外周端側における流体潤滑膜の膜厚が極端に薄くなることを防止することができる。よって、このスラスト軸受は、内周端側、外周端側のいずれにおいてもトップフォイル片11がスラストカラー4に接触するのを防止することができるとともに、高負荷に耐え得る優れたものとなる。
「第8実施形態」
前記したように第8実施形態のスラスト軸受は、第2実施形態に対応する実施形態である。そして、第8実施形態のスラスト軸受が第7実施形態のスラスト軸受3と主に異なるところは、第2実施形態の図5(a)〜(c)に示したように、ベースプレート30の前記支持領域31に傾斜面32を形成した点と、バンプフォイル片21の山部23の高さを、全て同一にした点である。すなわち、本実施形態においても、シム55として図15(c)に示した形状のシム片56を有するシム55が用いられる。
従って、本実施形態のスラスト軸受にあっても、バンプフォイル片21とベースプレート30との間にシム片56(シム55)を配設しているので、トップフォイル片11の内周端側の、スラストカラー4側への起き上がりを防止するとともに、トップフォイル片11の外周端側の、スラストカラー4側への起き上がりも防止することができる。これにより、トップフォイル片11の下流側端辺側において、内周端側における流体潤滑膜、及び外周端側における流体潤滑膜の膜厚が極端に薄くなることを防止することができる。よって、このスラスト軸受は、内周端側、外周端側のいずれにおいてもトップフォイル片11がスラストカラー4に接触するのを防止することができるとともに、高負荷に耐え得る優れたものとなる。
また、ベースプレート30の各支持領域31に傾斜面32を形成し、バンプフォイル片21の山部23の高さを全て同一にするとともに、該山部23の配列方向を傾斜面32の傾斜方向に一致させているので、第2実施形態のスラスト軸受3B(3)と同様に加工を容易にして量産性を向上し、コストの低減化を図ることができる。
「第9実施形態」
前記したように第9実施形態のスラスト軸受は、第3実施形態に対応する実施形態である。なお、図16(a)〜(d)は本発明に係るスラスト軸受の第9実施形態を示す図であり、図16(a)は図6のC−C線矢視断面図に対応する断面図、図16(b)はバンプフォイル片の平面図、図16(c)はシムの平面図、図16(d)はバンプフォイル片及びシムの形状を説明するためにその平面図と側面図を対応させた説明図である。第9実施形態のスラスト軸受が第7実施形態のスラスト軸受3と主に異なるところは、図16(c)に示すようにシム50のシム固定辺52が、回転軸1の回転方向上流側に位置している点である。
図16(c)に示すように本実施形態のシム55は、シム片56と、このシム片56の周方向の一方の側、本実施形態では回転軸1の回転方向上流側に一体に形成されたシム固定辺57と、からなっている。
シム片56は、扇形の頂点側及び外周側を共に切り欠いて、内周側、外周側をそれぞれ円弧状とした、略台形状に形成されている。すなわち、本実施形態でも、図16(d)に示すようにバンプフォイル片21の径方向における中間領域に対向して、シム片56が形成され、配置されている。従ってこのシム片56は、バンプフォイル片21の中間領域に対向してその最底部、すなわち谷部22に接して配置されている。
また、本実施形態においても、シム固定辺57はバンプフォイル片21(バックフォイル片)もしくはトップフォイル片11の径方向の長さと同じ長さに形成されている。
そして、第7実施形態と同様に、シム片56がシム固定辺57に対して内周側で切り欠かれた径方向の長さL1は、シム固定辺57の径方向の長さをLとすると、0.2L以上0.5L以下程度とされる。また、外周側で切り欠かれた径方向の長さL2は、0.05L以上0.3L以下程度とされる。
本実施形態のスラスト軸受にあっても、バンプフォイル片21とベースプレート30との間にシム片56(シム55)を配設しているので、トップフォイル片11の内周端側の、スラストカラー4側への起き上がりを防止するとともに、トップフォイル片11の外周端側の、スラストカラー4側への起き上がりも防止することができる。従ってトップフォイル片11の下流側端辺側において、内周端側における流体潤滑膜、及び外周端側における流体潤滑膜の膜厚が極端に薄くなることを防止することができる。よって、このスラスト軸受は、内周端側、外周端側のいずれにおいてもトップフォイル片11がスラストカラー4に接触するのを防止することができるとともに、高負荷に耐え得る優れたものとなる。
なお、本実施形態の変形例として、前記第1実施形態に対する第2実施形態のように、本実施形態のベースプレート30の前記支持領域31に傾斜面32を形成するとともに、バンプフォイル片21の山部23の高さを全て同一にしてもよい。その場合には、第2実施形態のスラスト軸受3B(3)と同様に、加工を容易にして量産性を向上し、コストの低減化を図ることができる。
「第10実施形態」
前記したように第10実施形態のスラスト軸受は、第4実施形態に対応する実施形態である。なお、図17(a)〜(d)は本発明に係るスラスト軸受の第10実施形態を示す図であり、図17(a)は図8のD−D線矢視断面図に対応する断面図、図17(b)はバンプフォイル片の平面図、図17(c)はシムの平面図、図17(d)はバンプフォイル片及びシムの形状を説明するためにその平面図と側面図を対応させた説明図である。第10実施形態のスラスト軸受が第9実施形態のスラスト軸受3と主に異なるところは、シム55が、図17(a)に示すようにトップフォイル片11とバンプフォイル片21(バックフォイル片)との間に配設されている点である。
図17(c)に示すように本実施形態のシム55は、シム片56と、このシム片56の周方向の一方の側、本実施形態では回転軸1の回転方向上流側に一体に形成されたシム固定辺57と、からなっている。
シム片56は、扇形の頂点側及び外周側を共に切り欠いて、内周側、外周側をそれぞれ円弧状とした、略台形状に形成されている。すなわち、本実施形態でも、図17(d)に示すようにバンプフォイル片21の径方向における中間領域に対向して、シム片56が形成され、配置されている。従ってこのシム片56は、バンプフォイル片21の中間領域に対向してその最頂部、すなわち山部23の稜線(頂部)に接して配置されている。
また、本実施形態においても、シム固定辺57はバンプフォイル片21(バックフォイル片)もしくはトップフォイル片11の径方向の長さと同じ長さに形成されている。
そして、第7実施形態と同様に、シム片56がシム固定辺57に対して内周側で切り欠かれた径方向の長さL1は、シム固定辺57の径方向の長さをLとすると、0.2L以上0.5L以下程度とされる。また、外周側で切り欠かれた径方向の長さL2は、0.05L以上0.3L以下程度とされる。
本実施形態のスラスト軸受にあっては、トップフォイル片11とバンプフォイル片21との間にシム片56(シム55)を配設しているので、トップフォイル片11の内周端側の、スラストカラー4側への起き上がりを防止するとともに、トップフォイル片11の外周端側の、スラストカラー4側への起き上がりも防止することができる。従ってトップフォイル片11の下流側端辺側において、内周端側における流体潤滑膜、及び外周端側における流体潤滑膜の膜厚が極端に薄くなることを防止することができる。よって、このスラスト軸受は、内周端側、外周端側のいずれにおいてもトップフォイル片11がスラストカラー4に接触するのを防止することができるとともに、高負荷に耐え得る優れたものとなる。
なお、本実施形態の変形例として、前記第1実施形態に対する第2実施形態のように、本実施形態のベースプレート30の前記支持領域31に傾斜面32を形成するとともに、バンプフォイル片21の山部23の高さを全て同一にしてもよい。その場合には、第2実施形態のスラスト軸受3B(3)と同様に、加工を容易にして量産性を向上し、コストの低減化を図ることができる。
「第11実施形態」
前記したように第11実施形態のスラスト軸受は、第5実施形態に対応する実施形態である。なお、図18(a)〜(d)は本発明に係るスラスト軸受の第11実施形態を示す図であり、図18(a)は図10のE−E線矢視断面図に対応する断面図、図18(b)はバンプフォイル片の平面図、図18(c)はシムの平面図、図18(d)はバンプフォイル片及びシムの形状を説明するためにその平面図と側面図を対応させた説明図である。第11実施形態のスラスト軸受が第10実施形態のスラスト軸受3と主に異なるところは、図18(a)に示すようにシム55のシム固定辺57が、回転軸1の回転方向下流側に位置している点である。
図18(c)に示すように本実施形態のシム55は、シム片56と、このシム片56の周方向の一方の側、本実施形態では回転軸1の回転方向下流側に一体に形成されたシム固定辺57と、からなっている。
シム片56は、扇形の頂点側及び外周側を共に切り欠いて、内周側、外周側をそれぞれ円弧状とした、略台形状に形成されている。すなわち、本実施形態でも、図18(d)に示すようにバンプフォイル片21の径方向における中間領域に対向して、シム片56が形成され、配置されている。従ってこのシム片56は、バンプフォイル片21の中間領域に対向してその最頂部、すなわち山部23の稜線に接して配置されている。
また、本実施形態においても、シム固定辺57はバンプフォイル片21(バックフォイル片)もしくはトップフォイル片11の径方向の長さと同じ長さに形成されている。
そして、第7実施形態と同様に、シム片56がシム固定辺57に対して内周側で切り欠かれた径方向の長さL1は、シム固定辺57の径方向の長さをLとすると、0.2L以上0.5L以下程度とされる。また、外周側で切り欠かれた径方向の長さL2は、0.05L以上0.3L以下程度とされる。
本実施形態のスラスト軸受にあっても、トップフォイル片11とバンプフォイル片21との間にシム片56(シム55)を配設しているので、トップフォイル片11の内周端側の、スラストカラー4側への起き上がりを防止するとともに、トップフォイル片11の外周端側の、スラストカラー4側への起き上がりも防止することができる。従ってトップフォイル片11の下流側端辺側において、内周端側における流体潤滑膜、及び外周端側における流体潤滑膜の膜厚が極端に薄くなることを防止することができる。よって、このスラスト軸受は、内周端側、外周端側のいずれにおいてもトップフォイル片11がスラストカラー4に接触するのを防止することができるとともに、高負荷に耐え得る優れたものとなる。
なお、本実施形態の変形例として、前記第1実施形態に対する第2実施形態のように、本実施形態のベースプレート30の前記支持領域31に傾斜面32を形成するとともに、バンプフォイル片21の山部23の高さを全て同一にしてもよい。その場合には、第2実施形態のスラスト軸受3B(3)と同様に、加工を容易にして量産性を向上し、コストの低減化を図ることができる。
また、前記第5実施形態、及びその変形例において、図12に示したようにシム片51のみによってシムを形成したように、本第11実施形態、及びその変形例においても、図18(b)に示したシム片56のみによってシムとし、これを用いてスラスト軸受としてもよい。このようなシム片56のみからなるシムを用いた場合には、シム(シム片56)の形状が単純であるため部品としての取り扱い性が良いといった効果が得られる。
「第12実施形態」
前記したように第12実施形態のスラスト軸受は、第6実施形態に対応する実施形態である。なお、図19(a)〜(d)は本発明に係るスラスト軸受の第12実施形態を示す図であり、図19(a)は図13のF−F線矢視断面図に対応する断面図、図19(b)はバンプフォイル片の平面図、図19(c)はシムの平面図、図19(d)はバンプフォイル片及びシムの形状を説明するためにその平面図と側面図を対応させた説明図である。第12実施形態のスラスト軸受が第11実施形態のスラスト軸受3と主に異なるところは、図19(a)に示すようにシム55の、回転軸1の回転方向下流側のシム固定辺57が、トップフォイル片11の固定辺12とともに、ベースプレート30に固定されている点である。
図19(c)に示すように本実施形態のシム55は、シム片56と、このシム片56の周方向の一方の側、本実施形態では回転軸1の回転方向下流側に一体に形成されたシム固定辺57と、からなっている。
シム片56は、扇形の頂点側及び外周側を共に切り欠いて、内周側、外周側をそれぞれ円弧状とした、略台形状に形成されている。すなわち、本実施形態でも、図19(d)に示すようにバンプフォイル片21の径方向における中間領域に対向して、シム片56が形成され、配置されている。従ってこのシム片56は、バンプフォイル片21の中間領域に対向してその最頂部、すなわち山部23の稜線に接して配置されている。
また、本実施形態においても、シム固定辺57はバンプフォイル片21(バックフォイル片)もしくはトップフォイル片11の径方向の長さと同じ長さに形成されている。
そして、第7実施形態と同様に、シム片56がシム固定辺57に対して内周側で切り欠かれた径方向の長さL1は、シム固定辺57の径方向の長さをLとすると、0.2L以上0.5L以下程度とされる。また、外周側で切り欠かれた径方向の長さL2は、0.05L以上0.3L以下程度とされる。
本実施形態のスラスト軸受にあっても、トップフォイル片11とバンプフォイル片21との間にシム片56(シム55)を配設しているので、トップフォイル片11の内周端側の、スラストカラー4側への起き上がりを防止するとともに、トップフォイル片11の外周端側の、スラストカラー4側への起き上がりも防止することができる。従ってトップフォイル片11の下流側端辺側において、内周端側における流体潤滑膜、及び外周端側における流体潤滑膜の膜厚が極端に薄くなることを防止することができる。よって、このスラスト軸受は、内周端側、外周端側のいずれにおいてもトップフォイル片11がスラストカラー4に接触するのを防止することができるとともに、高負荷に耐え得る優れたものとなる。
なお、本実施形態の変形例として、前記第1実施形態に対する第2実施形態のように、本実施形態のベースプレート30の前記支持領域31に傾斜面32を形成するとともに、バンプフォイル片21の山部23の高さを全て同一にしてもよい。その場合には、第2実施形態のスラスト軸受3B(3)と同様に、加工を容易にして量産性を向上し、コストの低減化を図ることができる。
また、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、前記実施形態ではバックフォイル20やトップフォイル10をそれぞれ6つのバックフォイル片21(バンプフォイル片21)、トップフォイル片11で構成し、さらにシム50(55)も6つ用い、従ってベースプレート30の支持領域31もこれに合わせて6つ形成(設定)したが、バックフォイル片21(バンプフォイル片21)やトップフォイル片11、シム50(55)は、複数であれば5つ以下でも7つ以上であってもよい。その場合に、支持領域31の数についても、バックフォイル片21(バンプフォイル片21)やトップフォイル片11、シム50(55)の数に合わせるのはもちろんである。
また、前記実施形態では、バンプフォイル片21(バックフォイル片21)を4つのバンプフォイル分割片21bと連続辺(固定辺)とによって形成したが、各分割片については4つに限定されることなく、2つ以上であればいくつに分割してもよい。さらに、連続辺を形成することなく、従って分割片をそれぞれ連結することなく、完全に独立した形態に形成してもよい。
また、前記実施形態では、バンプフォイル片21(バックフォイル片21)を径方向にて複数に分割することで形成されるスリット21cを円弧状に形成したが、該スリット21cを例えば直線状に形成してもよい。
また、バンプフォイル片21(バックフォイル片21)については、これを径方向に分割して複数のバンプフォイル分割片21bを形成することなく、全体が径方向に連続した通常のフォイル片によって、バンプフォイル片21(バックフォイル片21)を形成してもよい。
また、トップフォイル片やバンプフォイル片、シムの形状、支持領域上へのトップフォイル片やバンプフォイル片、シムの配置、傾斜面の傾斜方向など、前記実施形態以外にも種々の形態を採用することが可能である。