以下、この発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る画像形成装置をデジタル複合機に適用した場合のデジタル複合機の外観を示す概略図である。図2は、この発明の一実施形態に係る画像形成装置をデジタル複合機に適用した場合のデジタル複合機の構成を示すブロック図である。
図1および図2を参照して、デジタル複合機11は、制御部12と、操作部13と、画像読み取り部14と、画像形成部15と、用紙セット部19と、排出トレイ30と、格納部としてのハードディスク16と、ファクシミリ通信部17と、ネットワーク25と接続するためのネットワークインターフェース部18とを備える。
制御部12は、デジタル複合機11全体の制御を行う。操作部13は、デジタル複合機11側から発信する情報やユーザーの入力内容を表示する表示画面21を含む。操作部13は、印刷部数や階調性等の画像形成の条件や電源のオンまたはオフを入力させる。画像読み取り部14は、セット位置にセットされた原稿を読み取り位置に搬送する原稿搬送装置としてのADF22を含む。画像読み取り部14は、ADF22または載置台上にセットされた原稿の画像を読み取る。用紙セット部19は、手差しで用紙をセットする手差しトレイ28やサイズの異なる複数枚の用紙を収納可能な給紙カセット群29を含む。用紙セット部19は、画像形成部15に供給する用紙をセットさせる。画像形成部15は、トナーにより可視画像を形成する現像装置41、および現像装置41により形成されたトナーによる可視画像を用紙に定着させる定着装置51を含む。画像形成部15は、画像読み取り部14により読み取られた画像やネットワーク25を介して送信された画像データを基に、搬送されてきた用紙に画像を形成する。画像形成部15により画像を形成された用紙は、排出トレイ30に排出される。ハードディスク16は、送信された画像データや入力された画像形成条件等の格納を行う。ファクシミリ通信部17は、公衆回線24に接続されており、ファクシミリ送信やファクシミリ受信を行う。
なお、デジタル複合機11は、画像データの書き出しや読み出しを行うDRAM(Dynamic Random Access Memory)等を備えるが、これらについては、図示および説明を省略する。また、図2中の矢印は、制御信号や制御、画像に関するデータの流れを示している。なお、図1に示すように、この実施形態においては、給紙カセット群29は、3つの給紙カセット23a、23b、23cから構成されている。
デジタル複合機11は、画像読み取り部14により読み取られた原稿を用いて画像形成部15において画像を形成することにより、複写機として作動する。また、デジタル複合機11は、ネットワークインターフェース部18を通じて、ネットワーク25に接続されたコンピューター26a、26b、26cから送信された画像データを用いて、画像形成部15において画像を形成して用紙に印刷することにより、プリンターとして作動する。すなわち、画像形成部15は、要求された画像を印刷する印刷部として作動する。デジタル複合機11は、ファクシミリ通信部17を通じて、公衆回線24から送信された画像データを用いて、DRAMを介して画像形成部15において画像を形成することにより、また、画像読み取り部14により読み取られた原稿の画像データを、ファクシミリ通信部17を通じて公衆回線24に画像データを送信することにより、ファクシミリ装置として作動する。デジタル複合機11は、画像処理に関し、複写機能、プリンター機能、ファクシミリ機能等、複数の機能を有する。さらに、各機能に対しても、詳細に設定可能な機能を有する。
この発明の一実施形態に係るデジタル複合機11を含む画像形成システム27は、上記した構成のデジタル複合機11と、ネットワーク25を介してデジタル複合機11に接続される複数のコンピューター26a、26b、26cとを備える。この実施形態においては、複数のコンピューター26a〜26cについては、3台示している。各コンピューター26a〜26cはそれぞれ、デジタル複合機11に対して、ネットワーク25を介して印刷要求を行って印刷をすることができる。デジタル複合機11とコンピューター26a〜26cとは、LAN(Local Area Network)ケーブル等を用いて有線で接続されていてもよいし、無線で接続されていてもよく、ネットワーク25内には、他のデジタル複合機やサーバーが接続されている構成でもよい。
次に、上記した操作部13の構成について、さらに詳細に説明する。図3は、操作部13の概略的な構成を示す外観図である。図3を参照して、操作部13は、印刷部数等を入力させるための0〜9までの数字、および「*」や「#」の記号を入力させるテンキー31と、印刷の開始やファクシミリ送信の開始を指示させるスタートキー32と、デジタル複合機11の電源のオンオフを入力させる電源キー33と、デジタル複合機11の有するプリンター機能やコピー機能等の選択を指示させるメニューキー34と、種々の画像形成の条件や使用ユーザーの登録を指示させる登録キー35と、テンキー31等を用いてユーザーにより入力された指示の内容をキャンセルさせるリセットキー36と、上記した表示画面21とを含む。表示画面21は、液晶のタッチパネル機能を有しており、ユーザーの指での押圧等により、表示画面21からも画像形成条件等を入力させると共に、機能の選択等を行うことができる。
次に、上記した画像形成部15の構成について、さらに詳細に説明する。図4は、画像形成部15の概略的な構成を示す図である。図4を参照して、画像形成部15は、トナー等の現像剤を用いて用紙に可視画像を形成する現像装置41を備える。図4中の二点鎖線で示す現像装置41は、その表面に静電潜像を形成する感光体42と、感光体42の表面を帯電させる帯電部43と、現像スリーブや複数の撹拌ローラーを含み、静電潜像が形成された感光体42の表面にトナー等の現像剤を供給してトナーによる可視画像を形成する現像器44と、転写チャージャーや分離チャージャーを含み、感光体42の表面上に形成された可視画像を、搬送されてきた用紙39に転写する転写部45と、除電ローラーやクリーニングブレード等を含み、可視画像の用紙39への転写の後に感光体42の表面上に残ったトナーや残留電荷等を除去するクリーニング部46とを備える。感光体42は、図4中の矢印R1の方向に回転する。画像形成部15は、画像読み取り部14により読み取った画像を基に感光体42上に静電潜像を形成する。また、画像形成部15は、感光体42上に形成された静電潜像に対し、トナーを供給してトナーによる可視画像を形成する。画像形成部15は、感光体42に対し、帯電、現像、転写、クリーニングを繰り返して、搬送されてきた用紙39にトナーによる可視画像を形成する。なお、現像装置41に着脱可能に設けられたトナーコンテナ(図示せず)により、現像によって消費されたトナーが随時現像器44に供給される。
画像形成部15は、現像装置41により用紙39上に形成されたトナーによる可視画像を用紙39に定着させる定着装置51を備える。定着装置51は、トナーを用紙に定着させる際に用紙を加熱する中空状の回転可能な熱ローラー52と、トナーを用紙に定着させる際に用紙を加圧する中実状の回転可能な圧ローラー53と、熱ローラー52を加熱する第一のヒーター54aおよび第二のヒーター54bと、熱ローラー52の中央領域の温度を検知する第一のサーミスタ55aと、熱ローラー52の両端部領域の温度を検知する第二のサーミスタ55bとを含む。
熱ローラー52は、円筒状であって、金属の素管から構成されている。熱ローラー52の内方側には、第一のヒーター54a、および第二のヒーター54bが配置されている。なお、第一および第二のサーミスタ55a、55bについても、熱ローラー52の内方側に接触または非接触で配置されている。
図5は、熱ローラー52の内方側に配置された第一のヒーター54a、および第二のヒーター54bを示す概略図である。図5は、図4中の矢印D2で示す方向から見た図に相当する。理解の容易の観点から、図5において熱ローラー52の外形を破線で示している。
図1〜図5を参照して、第一のヒーター54aと第二のヒーター54bとは、熱ローラー52の内方側において、概ね平行となるように配置されている。第一のヒーター54aおよび第二のヒーター54bへの通電により熱ローラー52が加熱される。第一のヒーター54aは、熱ローラー52の中央領域56に対応する部分に発熱体58を有する。第一のヒーター54aは、通電により発熱体58を発熱させて、主に熱ローラー52の中央領域56を加熱する。第二のヒーター54bは、熱ローラー52の両端部領域57a、57bに対応する部分に二つの発熱体59a、59bを有する。第二のヒーター54bは、通電により二つの発熱体59a、59bを発熱させて、主に熱ローラー52の両端部領域57a、57bを加熱する。第一のヒーター54a、および第二のヒーター54bへの通電状態を制御することにより、熱ローラー52の長手方向、すなわち、熱ローラー52の回転軸の方向の温度分布が制御される。
圧ローラー53は、弾性を有するゴム状の円柱状部材から構成されている。熱ローラー52と圧ローラー53とは当接している。具体的には、熱ローラー52の表面と、圧ローラー53の表面とが長手方向に接触するように熱ローラー52と圧ローラー53とが設けられている。なお、熱ローラー52と圧ローラー53とは接触しているため、熱ローラー52の熱が、ある程度圧ローラー53に伝わっている。すなわち、熱ローラー52と圧ローラー53とは、長手方向においてほとんど同じ温度分布となっている。熱ローラー52と圧ローラー53との接触領域に用紙39が搬送され、用紙39上に形成されたトナーによる可視画像が熱および圧力により用紙39に定着される。
圧ローラー53は、図4中の矢印R2の方向に回転する。熱ローラー52は、圧ローラー53と逆の方向に回転する。熱ローラー52と圧ローラー53の回転により、用紙39を上流側から下流側へ搬送する。この搬送時に、熱ローラー52および圧ローラー53により用紙39に形成された可視画像の定着を行う。用紙39の搬送される方向はおおよそ、図4中の矢印D1で示される。
なお、画像形成部15には、現像装置41と定着装置51との間に設けられる搬送ベルト47、および複数の給紙ローラー48a、48b、48c、48d、48eが設けられている。例えば、手差しトレイ28にセットされた用紙39は、給紙ローラー48a〜48eによって、用紙搬送路49a、49b、49c、49dを搬送され、排出トレイ30に排出される。また、給紙カセット23a〜23c内にセットされた用紙39は、給紙ローラー48b〜48eによって、用紙搬送路49b〜49dを搬送され、排出トレイ30に排出される。
次に、このデジタル複合機11を用いて画像を形成する場合について説明する。図6は、デジタル複合機11を用いて画像を形成する場合の処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、原稿の画像をコピーする場合について説明する。
図6を参照して、ユーザーは、ADF22に画像を読み取らせるための原稿をセットする。そうすると、制御部12は、ADF22への原稿のセットを検知する(図6において、ステップS11、以下、「ステップ」を省略する)。そして、ユーザーは、操作部13の表示画面21から、出力するメディア、すなわち、ユーザーが要求する出力用の用紙のデータを入力する。
図7は、この場合の操作部13の表示画面21の一例を示す図である。図7を参照して、操作部13の表示画面21には、「出力するメディアのデータを入力してください。」とのメッセージ61と、「メディアの種別」との表示62aと、メディアの種別を入力させる入力部63aと、「メディアのサイズ」との表示62bと、メディアのサイズを入力させる入力部63bとが表記されている。この場合、ユーザーは、A4サイズの普通紙を、出力されるメディアの種別およびメディアのサイズとして入力したとする。具体的には、操作部13の表示画面21によるタッチパネルにおいて入力される。
その後、制御部12が操作部13のスタートキー32の押下を検知すると(S12)、表示画面21において入力されたデータを取得する(S13)。ここで、制御部12は、入力されたメディアの種別のデータを取得するデータ取得部として作動する。
次に、取得したデータに基づき、出力されるメディアの種別が、前回と異なる用紙の種別であるか否かが判断される(S14)。この場合、前回出力されたメディアの種別が普通紙であれば、取得したデータにより出力されるメディアが普通紙であるか否かが判断される。ここで、前回出力されたメディアの種別のデータについては、ハードディスク16に格納されている。また、複数枚のコピーがなされる場合は、直前のコピーとなる。
前回出力されたメディアの種別が、今回出力されるメディアの種別と同じであると判断されれば(S14において、YES)、次に、出力されるメディアが、所定の条件を具備しているか否かが判断される(S15)。
ここで、所定の条件とは、取得されたメディアの主走査方向の幅のデータが所定の値以下であるか、または、取得されたメディアの重さのデータが所定の値以上であるという条件である。制御部12は、取得したメディアの種別のデータおよびメディアのサイズから、上記した所定の条件に該当するか否かを判断する。ここで、制御部12は、判断部として作動する。
制御部12は、取得したデータから、所定の条件を具備していると判断すれば(S15において、YES)、用紙の各領域におけるトナーによる可視画像のトナー濃度を導出する(S16)。この場合、メディアの種別として普通紙とのデータが入力されているため、所定の条件を具備していると判断する。そして、ADF22により原稿を画像読み取り部14に搬送して原稿の画像の読み取りを開始する。この場合、画像読み取り部14により読み取った画像が複写元となるため、制御部12は、読み取った画像から中央領域のトナー濃度と両端部領域のトナー濃度とを導出する。ここで、制御部12は、トナー濃度導出部として作動する。
その後、導出されたトナー濃度に基づき、定着の温度、すなわち、熱ローラー52および圧ローラー53の温度を制御しながら、画像形成を開始する(S17)。
ここで、画像形成において、熱ローラー52および圧ローラー53の温度の制御に際し、中央領域56のトナー濃度が、両端部領域57a、57bのトナー濃度よりも高いか否かを判断し(S18)、この判断に応じて、熱ローラー52および圧ローラー53の長手方向の温度分布を調整する。この場合、読み取った画像を基に、トナーにより形成される可視画像において、中央領域56のトナー濃度が、両端部領域57a、57bのトナー濃度よりも高いか否かを判断する。
中央領域56のトナー濃度が高いと判断されれば(S18において、YES)、第一の温度制御を行って画像を形成する(S19)。第一の温度調整については、熱ローラー52の中央領域56の温度を温度T1、熱ローラー52の両端部領域57a、57bの温度を温度T2、設定された熱ローラー52の中央領域56と両端部領域57a、57bとの温度差の絶対値をB1とすると、以下の関係を有するような温度の調整である。すなわち、第一の温度調整として、温度T1を定着目標温度とし、温度T2をT1+B1とする。
図8は、第一の温度調整の場合の熱ローラー52の温度分布と形成される画像との関係を示す図である。図8中の上側で、形成されるトナーによる可視画像を示し、下側の線69で、熱ローラー52の長手方向の温度分布を示す。線70は、定着目標温度を示す。定着目標温度とは、用いるトナーの種類やメディアの種別等に応じて、より適切にトナーを定着させることができるよう設定された温度である。
図8を参照して、制御部12は、トナーにより形成された可視画像66のうち、中央領域56の画像67のトナー濃度が、両端部領域57a、57bの画像68a、68bのトナー濃度よりも高いことを導出する。この場合、画像読み取り部14により読み取った画像から制御部12が判断する。そうすると、熱ローラー52の長手方向の温度分布について、中央領域56の温度T1を定着目標温度とし、両端部領域57a、57bの温度T2をT1+B1とするよう制御する。ここで、この制御については、中央領域56を主に加熱する第一のヒーター54a、両端部領域57a、57bを主に加熱する第二のヒーター54bへの通電状態を制御することにより行う。具体的には、第一のサーミスタ55a、第二のサーミスタ55bにより熱ローラー52の中央領域56および両端部領域57a、57bの温度を検知し、第一および第二のヒーター54a、54bへの通電のオンまたはオフのタイミングおよび通電時間を調整して制御する。ここで、制御部12は、温度調整部として作動する。なお、中央領域56の温度T1については、中央領域56の長手方向の中心、両端部領域57a、57bの温度T2については、それぞれの端部領域57a、57bの長手方向の中心としている。
そして、第一の温度調整を行った後に、トナーによる可視画像をその上に形成された普通紙を熱ローラー52と圧ローラー53との間の接触領域に搬送して定着させ、排出トレイ30に排出して画像形成を終了する(S20)。
また、S18において、両端部領域57a、57bのトナー濃度が高いと判断されれば(S18において、NO)、第二の温度調整を行って画像を形成する(S21)。ここで、第二の温度調整については、熱ローラー52の中央領域56の温度を温度T1、熱ローラー52の両端部領域57a、57bの温度を温度T2、設定された熱ローラー52の中央領域56と両端部領域57a、57bとの温度差の絶対値をB1とすると、以下の関係を有するような温度の制御である。すなわち、第二の温度調整として、温度T2を定着目標温度とし、温度T1をT2−B1とする。
図9は、第二の温度調整の場合の熱ローラー52の温度分布と形成される画像との関係を示す図である。図9中の上側で、形成されるトナーによる可視画像を示し、下側の線74で、熱ローラー52の長手方向の温度分布を示す。線70は、上記したように、定着目標温度を示す。
図9を参照して、制御部12は、トナーにより形成された可視画像71のうち、中央領域56の画像72のトナー濃度が、両端部領域57a、57bの画像73a、73bのトナー濃度よりも高いことを導出する。この場合、画像読み取り部14により読み取った画像から制御部12が判断する。そうすると、熱ローラー52の長手方向の温度分布について、両端部領域57a、57bの温度T2を定着目標温度とし、中央領域56の温度T1をT2−B1とするよう制御する。ここで、この制御についても、中央領域を主に加熱する第一のヒーター54a、両端部領域を主に加熱する第二のヒーター54bへの通電状態を制御することにより行う。
そして、第二の温度調整を行った後に、トナーによる可視画像をその上に形成された普通紙を熱ローラー52と圧ローラー53との間の接触領域に搬送して定着させ、排出トレイ30に排出して画像形成を終了する(S20)。
また、S15において、所定の条件を具備しなかった場合(S15において、NO)、すなわち、取得されたメディアの主走査方向の幅のデータが所定の値未満であり、かつ、取得されたメディアの重さのデータが所定の値未満であれば、熱ローラー52の温度制御を以下のように行ってから、画像形成を開始する。この場合も、取得したメディアの種別のデータ等により判断する。
熱ローラー52の温度調整は、具体的には、熱ローラー52の中央領域56の温度を温度T1、熱ローラー52の両端部領域57a、57bの温度を温度T2、設定された熱ローラー52の中央領域と両端部領域との温度差の絶対値をB2とすると、T1+B2<T2の関係となるようにする。すなわち、T1+B2<T2の関係となるまで、画像形成を待機する。なお、上記した温度T1と温度T2との関係については、任意に定められる。具体的には、中央領域56の温度T1に対して設定された温度差の絶対値B2を足し合わせたものが、両端部領域57a、57bの温度T2よりも低くなる状態を待って、画像形成を行う。その後の処理については、上記と同様である。
このような構成のデジタル複合機11によれば、出力するメディアがしわの発生しにくい場合である等、取得されたメディアに関するデータにより所定の条件を具備すれば、温度調整に要する時間を省略することができるため、不要な待ち時間の短縮を図ることができる。また、トナーによる可視画像が形成されたメディアに対して、トナー濃度の高い領域に対して定着目標温度を設定して調整しているため、定着不良や画像荒れが発生するおそれを低減して、トナー濃度に応じた適切な定着を行うことができる。この場合、熱ローラー52の両端部領域57a、57bの温度の方が熱ローラー52の中央領域56の温度よりも高くなるよう調整しているため、メディアにしわが生じるおそれを大きく低減することができる。したがって、このようなデジタル複合機11は、より適切にトナーによる可視画像をメディアに定着させることができる。
これについて、以下に説明する。図10は、中央領域56の温度が両端部領域57a、57bの温度よりも高い場合の熱ローラー52の温度分布と、熱ローラー52および圧ローラー53の間に搬送される用紙の状態とを示す概念図である。図10において、熱ローラー52の温度分布は、線76aによって示されている。図11は、両端部領域57a、57bの温度が中央領域56の温度よりも高い場合の熱ローラー52の温度分布と、熱ローラー52および圧ローラー53の間に搬送される用紙の状態とを示す概念図である。図11において、熱ローラー52の温度分布は、線76bによって示されている。なお、理解の容易の観点から、図10および図11において、熱ローラー52および圧ローラー53の熱膨張については、誇張して図示している。
まず、図10を参照して、中央領域56の温度が両端部領域57a、57bの温度よりも高い状態であると、それぞれの領域における熱ローラー52および圧ローラー53の熱膨張量の差により、熱ローラー52の中央領域56の径、および圧ローラー53の中央領域56の径はそれぞれ、熱ローラー52の両端部領域57a、57bの径、および圧ローラー53の両端部領域57a、57bの径よりも大きくなる。そうすると、用紙39を図10中の矢印D1で示す方向に搬送してトナーによる可視画像を用紙39に定着させる際に、用紙39の搬送速度について、中央領域56側の方が速くなり、両端部領域57a、57bに向かって遅くなってしまうこととなる。その結果、図10中の用紙39中の矢印に示すように、両端部領域57a、57b側から中央領域56側に向かう力が働くことになる。このような状況となると、用紙39が中央領域56側に押し縮められることとなり、用紙39にしわ、具体的には、搬送方向に平行な方向に延びるしわが発生しやすい傾向となってしまう。
次に、図11を参照して、両端部領域57a、57bの温度が中央領域56の温度よりも高い状態であると、それぞれの領域における熱ローラー52および圧ローラー53の熱膨張量の差により、熱ローラー52の両端部領域57a、57bの径、および圧ローラー53の両端部領域57a、57bの径はそれぞれ、熱ローラー52の中央領域56の径、および圧ローラー53の中央領域56の径よりも大きくなる。そうすると、用紙39を図11中の矢印D1で示す方向に搬送してトナーによる可視画像を用紙39に定着させる際に、用紙39の搬送速度について、両端部領域57a、57b側の方が速くなり、中央領域56側が遅くなることとなる。その結果、図11中の用紙39中の矢印に示すように、中央領域56側から両端部領域57a、57b側に向かう力が働くことになる。このような状況においては、用紙39が両端部領域57a、57b側に引っ張られることとなり、しわが発生しにくい傾向となる。
したがって、本願発明においては、しわが発生するおそれを低減させる観点から、熱ローラー52の中央領域56の温度よりも両端部領域57a、57bの温度を高くするよう調整して、定着を行おうとするものである。そして、トナー濃度の高い領域に対して、定着目標温度となるよう設定して調整し、より適切な定着を行おうとするものである。
なお、上記の実施の形態においては、所定の条件として、取得されたメディアの主走査方向の幅のデータが所定の値以下であるか、または、取得されたメディアの重さのデータが所定の値以上であるという条件を挙げたが、これに限らず、他の条件としてもよい。例えば、上記した所定の条件のうちの一方のみとしてもよいし、所定の値として、数種のデータを用いてもよい。また、メディアの厚みのデータやメディアの種別自体のデータについて、所定の条件のパラメータとして挙げてもよい。
また、上記の実施の形態においては、第一のヒーターおよび第二のヒーターで、熱ローラーを加熱することとしたが、これに限らず、一つのヒーターで加熱するようにしてもよいし、三つ以上のヒーターを備える構成としてもよい。
なお、上記の実施の形態においては、操作部の表示画面において、ユーザーから入力されたメディアのデータから、データを取得することにしたが、これに限らず、デジタル複合機11に備えられるデータ取得部は、メディアの種別のデータ、メディアの重さのデータ、メディアの厚みのデータ、およびメディアの主走査方向の幅のデータのうちの少なくともいずれか一つのデータを取得するメディアセンサーを含むよう構成してもよい。メディアセンサーは、例えば、画像形成部に備えられる用紙搬送路や、給紙カセットに設けられる。
また、上記の実施の形態においては、画像読み取り部により読み取った画像を基に、トナー濃度を導出することとしたが、これに限らず、照射した光の反射光量によりトナー濃度を検知するトナー濃度検知センサーによりトナー濃度を導出することにしてもよい。この場合、ドナー濃度検知センサーを準備し、実際にトナーによる可視画像を用紙上に形成して、形成されたトナーによる可視画像に対して、トナー濃度検知センサーによりトナー濃度を検知して、トナー濃度を導出する。
なお、上記の実施の形態においては、両端部領域と中央領域との温度分布の関係を示したが、これに限らず、一方側の端部領域と中央領域との関係における温度分布の関係を上記した関係とするよう構成してもよい。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。