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JP6225467B2 - プリント配線板用銅箔およびその製造方法ならびにその銅箔を用いたプリント配線板 - Google Patents

プリント配線板用銅箔およびその製造方法ならびにその銅箔を用いたプリント配線板 Download PDF

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Description

本発明は、プリント配線板用銅箔に関し、より詳細には、電子機器等に使用されるプリント配線板用銅箔およびその製造方法ならびにその銅箔を用いたプリント配線板に関する。
近年、電子機器の小型化、軽量化、及び高機能化に伴い、プリント配線板の配線パターンの微細化が強く要求されている。プリント配線板は、例えば、半導体実装基板やマザーボード基板等に用いられる。
従来、プリント配線板に銅配線パターンを形成する方法として、サブトラクティブ法とセミアディティブ法が知られている。
サブトラクティブ法では、まず、絶縁基材の表面に銅箔を積層する。つぎに、銅箔の表面にレジスト層を形成し、そのレジスト層にフォトリソグラフィーによってパターンを形成する。つぎに、銅箔のレジスト層によって覆われていない部分をエッチングによって除去することで銅配線パターンを形成する。
セミアディティブ法では、まず、絶縁基材の表面にシード層と呼ばれる金属薄層を形成する。つぎに、シード層の表面に、レジスト層を形成し、そのレジスト層にフォトリソグラフィーによってパターンを形成する。つぎに、シード層のレジスト層によって覆われていない部分に電気銅メッキを施すことによって銅配線パターンを形成する。シード層の銅メッキが施されなかった部分は、エッチングによって除去される。
セミアディティブ法において、シード層が電解銅箔または圧延銅箔で形成されている場合、銅箔の一方の表面(絶縁基材と接触する側の表面)には粗化処理が施される。銅箔の表面が粗化されると、銅箔の表面には微細な凸部が形成される。この凸部が絶縁基材の内部に入り込むことによって、物理的なアンカー効果が発揮され、銅箔が絶縁基材の表面に強固に接着される。
しかし、従来のプリント配線板には、以下のような問題があった。セミアディティブ法において、銅箔の表面の粗化の度合いが大きい場合、銅箔の表面の凸部が、絶縁基材の内部に深く入り込んでしまう。この場合、絶縁基材の表面から銅箔(シード層)を除去するために必要なエッチングの時間が長くなってしまう。また、エッチングの時間が長くなる結果として、銅配線パターンの線幅の減少量が大きくなるため、微細な銅配線パターンを形成することが困難になる。
一方、銅箔(シード層)の表面の粗化の度合いが小さすぎる場合、銅箔と絶縁基材との接着性が悪くなるため、銅箔が絶縁基材の表面から剥がれやすくなり、微細な銅配線パターンを形成することが困難になる。
銅箔の表面粗さに関する従来技術として、以下の技術が知られている。特許文献1には、表面粗さが1〜3μmの銅箔が記載されている。この銅箔の表面には、長さ0.6〜1.0μm、最大径0.2〜0.8μmの逆涙滴状の微細なこぶが設けられている。特許文献2には、表面粗さ(Rz:十点平均粗さ)が2.5μm以下であり、直径が0.05〜1.0μmの球状微粒子からなる粗化処理層を有し、該粗化処理層上にMo、Ni、W、P、Co、Geの少なくとも一種類以上からなる防錆層を有し、且つ、シランカップリング層を有する銅箔が記載されている。特許文献3には、表面粗さ(Rz)が2.5μm以下であり、素地山の最小ピーク間距離が5μm以上であり、表面に平均粒径2μm以下の結晶粒が存在する銅箔が記載されている。特許文献4には、頭頂部角度θが85度以下の突起形状の微細銅粒子を含んだ銅箔が記載されている。特許文献5には、電子線三次元粗さ解析装置により1000倍に拡大した表面に基づく算術平均粗さが0.05〜0.8μmであり、かつ、表面積代替値が1.005〜1.08である銅または銅合金材が記載されている。
特開平07−231152号公報 特開2006−210689号公報 特開2004−263300号公報 特開2010−236058号公報 特開平10−265872号公報
しかしながら、本発明者らは、特許文献1〜5に開示された銅箔を絶縁基材に接着した場合、銅箔の表面の凸部が絶縁基材の内部に深く入り込むため、銅箔を除去するために必要なエッチングの時間が長くなることを知見した。その結果、銅配線パターンの線幅の減少量が大きくなるため、微細な銅配線パターンを形成することが困難であった。
本発明は、絶縁基材との接着性が良好であり、かつ、絶縁基材の表面からエッチングによって容易に除去することのできるプリント配線板用銅箔及びその銅箔を用いたプリント配線板を提供することを目的とする。
本発明は以下の通りである。
1.少なくとも一方の表面は、以下の式(1):
E= 銅箔の表面積/銅箔の表面の十点平均粗さ ・・・(1)
(銅箔の表面積は、銅箔の縦1μm×横1μmの単位領域当たりの表面積であり、銅箔の表面積は、前記銅箔の表面を走査型トンネル顕微鏡で観測したときに得られる値である)
で表される密着向上係数Eの値が2.5〜8である、プリント配線板用銅箔。
2.前記銅箔の表面がエッチング処理されている、上記1に記載のプリント配線板用銅箔。
3.以下の式(2):
エッチング量[μm] =(エッチング前の銅箔の質量−エッチング後の銅箔の質量)/(エッチング面積×銅の密度) ・・・(2)
(式中、銅の密度は、8.96g/cmである)
で表される前記銅箔の表面のエッチング量が、1μm以下である、上記2に記載のプリント配線板用銅箔。
4.前記エッチング処理に用いられる液体組成物は、過酸化水素、硫酸、ハロゲンイオン、およびテトラゾール類からなる群から選択される1種以上を含む、上記2または3に記載のプリント配線板用銅箔。
5.前記銅箔の表面は、銅以外の金属、シランカップリング剤、または接着剤によって処理されていない、上記1〜4のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔。
6.絶縁基材と、
前記絶縁基材の表面に積層された、上記1〜5のいずれかに記載のプリント配線板用銅箔と、
を備えてなる、銅張積層板。
7.上記6に記載の銅張積層板を備えてなる、プリント配線板。
8.セミアディティブ法によって配線パターンが形成されている上記7に記載のプリント配線板。
9.サブトラクティブ法によって配線パターンが形成されている上記7に記載のプリント配線板。
10.前記配線パターンの線幅が20μm以下である上記8または上記9に記載のプリント配線板。
11.銅箔の少なくとも一方の表面を、以下の式(1):
E= 銅箔の表面積/銅箔の表面の十点平均粗さ ・・・(1)
(銅箔の表面積は、銅箔の縦1μm×横1μmの単位領域当たりの表面積であり、銅箔の表面積は、前記銅箔の表面を走査型トンネル顕微鏡で観測したときに得られる値である)
で表される密着向上係数Eの値が2.5〜8になるまでエッチング処理する、プリント配線板用銅箔の製造方法。
12.前記エッチング処理に用いられる液体組成物は、過酸化水素、硫酸、ハロゲンイオン、およびテトラゾール類からなる群から選択される1種以上を含む、上記11に記載のプリント配線板用銅箔の製造方法。
13. 前記エッチング用液体組成物が、
0.2〜1.5質量%の過酸化水素と、
0.5〜3.0質量%の硫酸と、
0.3〜3ppmのハロゲンイオンと、
0.01〜0.3質量%のテトラゾール類と
を含んでなる、上記12に記載のプリント配線板用銅箔の製造方法。
本発明によれば、絶縁基材との接着性が良好であり、かつ、絶縁基材の表面からエッチングによって容易に除去することのできるプリント配線板用銅箔及びその銅箔を用いたプリント配線板を提供することができる。
実施例1の銅箔表面の3次元画像(×30000)。 比較例1の銅箔表面の3次元画像(×30000)。 実施例1の配線断面の電子顕微鏡画像(×2000)。 比較例1の配線断面の電子顕微鏡画像(×2000)。
一般に、電子機器等に用いられるプリント配線板は、絶縁基材の表面に銅箔が積層された銅張積層板を備えている。
絶縁基材としては、例えば、ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させた基材や、紙基材にフェノール樹脂を含浸させた基材が用いられる。これらの基材は、プリプレグとも呼ばれる場合もある。プリプレグとは、ガラス繊維等にエポキシ樹脂(ワニス)を含浸させた基材を半硬化させたものをいう。
銅箔としては、電解銅箔や圧延銅箔等が用いられる。電解銅箔とは、ドラム形状をした回転陰極と、その回転陰極に沿って配置された陽極との間に硫酸銅電解液を流した後、回転陰極の表面に銅を電解析出させ、析出した銅を連続的に回転陰極から引き剥がすことによって製造される銅箔である。一方、圧延銅箔とは、鋳造等によって得られた銅の塊を圧延加工して製造される銅箔である。
本発明のプリント配線板用銅箔は、絶縁基材に接触する側の表面がエッチングによって緻密に粗化されている。エッチング処理に用いられる液体組成物(エッチング用液体組成物)は、過酸化水素、硫酸、ハロゲンイオン、及びテトラゾール類からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましく、水をさらに含むことが好ましい。
エッチング用液体組成物中の過酸化水素の濃度は、0.2〜1.5質量%が好ましく、0.3〜1.2質量%がより好ましく、0.4〜1.0質量%がさらに好ましく、0.5〜0.8質量%が最も好ましい。過酸化水素の濃度がこのような範囲となるように調製されたエッチング用液体組成物は、銅の溶解速度が大きく、経済的に優れている。
エッチング用液体組成物中の硫酸の濃度は、0.5〜3.0質量%が好ましく、0.5〜2.5質量%がより好ましく、0.7〜2.0質量%がさらに好ましく、1.0〜1.8質量%が最も好ましい。硫酸の濃度がこのような範囲となるように調製されたエッチング用液体組成物は、銅の溶解速度が大きく、経済的に優れている。
ハロゲンイオンは、銅箔の表面を粗化する効果がある。ハロゲンイオンを含むエッチング用液体組成物を用いて銅箔の表面を粗化することによって、銅箔の絶縁基材に対する接着性を高めることができる。
ハロゲンイオンとしては、フッ素イオン、塩化物イオン、臭素イオン、及びヨウ素イオンからなる群から選択される一種以上を用いることができる。これらのうち好ましいものは、塩化物イオン、又は、臭素イオンである。
エッチング用液体組成物中のハロゲンイオンの濃度は、0.3〜3ppmが好ましく、0.5〜2.5ppmがより好ましく、0.7〜2ppmが最も好ましい。
テトラゾール類は、ハロゲンイオンと併用されることにより、銅箔の表面を緻密に粗化する効果がある。したがって、テトラゾール類を含むエッチング用液体組成物を用いて銅箔の表面を粗化することによって、銅箔の絶縁基材に対する接着性をより高めることができる。
エッチング用液体組成物に含まれるテトラゾール類は、1H−テトラゾール、1−メチルテトラゾール、1−エチルテトラゾール、5−メチルテトラゾール、5−エチルテトラゾール、5−アミノテトラゾール、5−n−プロピルテトラゾール、5−メルカプトテトラゾール、5−メルカプト−1−メチルテトラゾール、1,5−ジメチルテトラゾール、1,5−ジエチルテトラゾール、1−メチル−5−エチルテトラゾール、1−エチル−5−メチルテトラゾール、1−イソプロピル−5−メチルテトラゾール、及び1−シクロヘキシル−5−メチルテトラゾールからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。より好ましくは、1H−テトラゾール、5−メチルテトラゾール、5−エチルテトラゾール、5−メルカプト−1−メチルテトラゾール、1,5−ジメチルテトラゾール、1,5−ジエチルテトラゾール、及び1−エチル−5−メチルテトラゾールからなる群から選択される1種以上である。
エッチング用液体組成物中のテトラゾール類の濃度は、0.01〜0.3質量%が好ましく、0.05〜0.25質量%がより好ましく、0.1〜0.2質量%が最も好ましい。
上記のエッチング用液体組成物を使用して銅箔の表面をエッチングする。エッチングの方法は特に制限するものではなく、例えば、スプレー法、浸漬法などの公知の方法を用いることができる。
銅箔のエッチング量は、1μm以下であることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましく、0.2〜0.9μmであることがさらに好ましく、0.3〜0.7μmであることが最も好ましい。エッチング量が上記範囲内にあれば、絶縁基材とエッチング後の銅箔を積層した際に絶縁基材へ潜り込む該銅箔の量を少なくできるので、絶縁基材中に潜り込んだ該銅箔を後工程でエッチング除去し易くなる。銅箔のエッチング量とは、以下の式(2)で表される値である。
エッチング量[μm] =(エッチング前の銅箔の質量−エッチング後の銅箔の質量)/(エッチング面積×銅の密度) ・・・(2)
(式中、銅の密度は、8.96g/cmである。)
なお、本発明における「エッチング量」とは、エッチング処理された銅箔の個々の箇所の深さではなく、エッチング処理された銅箔表面全体の平均的な深さをいうものである。
銅箔の厚みは、特に制限するものではないが、3〜35μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましい。銅箔の厚みがこの範囲にある場合、銅箔の取り扱い性が良好になる。
銅箔の絶縁基材に接触する側の表面は、銅以外の金属、シランカップリング剤、または接着剤(プライマー)によって処理されていないことが好ましい。本発明の銅箔の表面は、緻密に粗化されている。このため、本発明の銅箔は、銅以外の金属、シランカップリング剤、または接着剤等によって表面処理しなくとも、絶縁基材に対して強固に接着することが可能である。
本発明のプリント配線板用銅箔は、絶縁基材と接触する側の表面の密着向上係数Eの値が2.5〜8である。密着向上係数Eは、2.7〜7.5であることが好ましく、2.9〜7であることがさらに好ましく、3〜6.5であることが最も好ましい。密着向上係数Eが上記範囲内にあれば、銅箔表面に微細な凹凸が形成されており、絶縁基材との密着性を向上させることができる。密着向上係数Eとは、以下の式(1)で表される値である。
E= 銅箔の表面積C/銅箔の表面の十点平均粗さD …(1)
(銅箔の表面積Cは、銅箔の縦1μm×横1μmの単位領域当たりの表面積であり、銅箔の表面積は、銅箔の表面を走査型トンネル顕微鏡で観測したときに得られる値である)
銅箔の表面積C[μm]は、銅箔表面の所定の領域内の凹凸を考慮した場合の表面積を、その領域が平坦であると仮定した場合の表面積で除した値に等しい。例えば、銅箔の表面積C[μm]は、銅箔表面の縦5μm×横5μmの領域内の凹凸を考慮した場合の表面積を、その領域が平坦であると仮定した場合の表面積(つまり、5×5=25)で除した値に等しい。
銅箔の表面の十点平均粗さD[μm]は、JIS B 0601において十点平均粗さRzjisとして規定されている。十点平均粗さRzjisとは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜き取り部分の平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高(Yp)の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高(Yv)の絶対値の平均値との和を求め、この値をマイクロメートルで表したものをいう。
上記式(1)における銅箔の表面積C[μm]は、銅箔の表面の凹凸を考慮した場合の表面積である。したがって、銅箔の表面が緻密であればあるほど、銅箔の表面積Cは大きくなる傾向がある。ここでいう「緻密」とは、銅箔表面の凸部の一つ一つが微小であり、かつ、凸部が密集している状態のことをいう。
銅箔の表面積C[μm]は、銅箔の表面を走査型トンネル顕微鏡で観測して3次元形状データを得た後、この3次元形状データに基づいて算出された値であることが好ましい。また、銅箔の表面積C[μm]は、銅箔の表面を走査型トンネル顕微鏡で30000倍に拡大したときに得られる値であることが好ましい。
走査型トンネル顕微鏡は、金属探針と試料の間に流れるトンネル電流を検出するタイプの顕微鏡である。先端の尖った白金やタングステンなどの金属探針を試料に近づけた後、それらの間に微小なバイアス電圧を印加すると、トンネル効果によってトンネル電流が流れる。このトンネル電流を一定に保つように探針を走査することにより、試料の表面形状を原子レベルで観測することができる。
本発明のプリント配線板用銅箔の製造方法は、銅箔の少なくとも一方の表面を、以下の式(1):
E= 銅箔の表面積/銅箔の表面の十点平均粗さ ・・・(1)
(銅箔の表面積は、銅箔の縦1μm×横1μmの単位領域当たりの表面積であり、銅箔の表面積は、前記銅箔の表面を走査型トンネル顕微鏡で観測したときに得られる値である)
で表される密着向上係数Eの値が2.5〜8になるまでエッチング処理することを特徴とする。エッチング処理に用いられる液体組成物は、上記で説明したとおりである。
本発明の銅箔は、熱圧着などの公知の方法を用いて絶縁基材に積層される。このようにして得られる積層板(銅張積層板)は、プリント配線板の配線パターンを形成するために用いられる。
プリント配線板の配線パターンがサブトラクティブ法によって形成される場合、本発明の銅箔をプリント配線板の導電層に用いることができる。
プリント配線板の配線パターンがセミアディティブ方によって形成される場合、本発明の銅箔をプリント配線板のシード層に用いることができる。
本発明によれば、絶縁基材との接着性が良好であり、かつ、絶縁基材の表面からエッチングによって容易に除去することのできるプリント配線板用銅箔及びその銅箔を用いたプリント配線板を得ることができる。
[実施例1]
実施例1では、まず、厚み12μm、寸法150mm×150mmの電解銅箔を準備した。つぎに、準備した電解銅箔のシャイニー面をエッチングした。エッチング用液体組成物の組成、及び、エッチングの条件は、以下の通りである。なお、シャイニー面とは、電解銅箔の両面のうち、ドラム形状の陰極に接触していた側の表面のことである。
・エッチング用液体組成物の組成
過酸化水素:0.5質量%
硫酸:2質量%
1H−テトラゾール:0.1質量%
塩化物イオン:0.5ppm
・エッチングの条件
エッチング用液体組成物の温度:30℃
スプレー圧力:0.1MPa
スプレー時間:1分間
つぎに、エッチング後の銅箔の表面を、走査型トンネル顕微鏡で30000倍の倍率で観測した。図1は、このときに観測された銅箔表面の3次元画像である。
エッチング後の銅箔表面の縦5μm×横5μmの領域内の表面積を測定した。その結果、銅箔の表面積は、45.4[μm]であった。測定には、以下の装置を使用した。
・走査型トンネル顕微鏡(エスアイアイナノテクノロジー社製、L−traceII/NanoNaviIIステーション)
エッチング後の銅箔の表面粗さ(Rzjis:十点平均粗さ)を測定した。その結果、銅箔の表面粗さは、0.55[μm]であった。測定には、以下の装置を使用した。
・レーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK−9700II、408nmバイオレットレーザー使用)
上記式(1)に基づいて、密着向上係数Eを算出した。その結果、密着向上係数Eは、3.30であった。計算式は、以下の通りである。
E = {45.4/(5×5)}/0.55 = 3.30
銅箔表面のエッチング量を、上記式(2)に基づいて算出した。その結果、銅箔表面のエッチング量は、0.5μmであった。
エッチング後の銅箔を、真空熱プレスによってプリプレグ(三菱ガス化学株式会社製、商品名:HL832NS)に積層した。これにより、プリプレグ及び銅箔からなる銅張積層板を作製した。この銅張積層板において、銅箔のエッチングされた側の表面は、プリプレグに密着している。
このようにして得られた銅張積層板を用いて、銅箔の引き剥がし強さ(ピール強度)を測定した。引き剥がし強さは、JIS C 6481に規定された方法に従って測定した。その結果、銅箔の引き剥がし強さは、1.05kgf/cmであった。
次に、銅張積層板の表面をエッチングした。エッチング用液体組成物の組成、及び、エッチングの条件は、以下の通りである。
・エッチング用液体組成物の組成
過酸化水素:3質量%
硫酸:7質量%
商品名:三菱ガス化学株式会社製、CPE−770
・エッチングの条件
エッチング用液体組成物の温度:35℃
スプレー圧力:0.2MPa
スプレー時間:1分間
次に、エッチング後の銅張積層板の銅箔の厚みを測定した。その結果、十点測定の平均の厚みが、2.5μmであった。測定には、以下の装置を使用した。
・渦電流式銅膜厚計(FISCHER社製、FISCHERSCOPE MMS)
銅箔に配線パターンを形成するために、以下の処理を行った。まず、エッチング後の銅張積層板の銅箔の上に、無電解銅メッキ0.5μmを施した。つぎに、無電解銅メッキが施された銅箔の上に、ドライフィルムレジストをラミネートした。つぎに、露光、現像工程を経て、レジスト層にレジストパターンを形成した。つぎに、レジストパターンが形成されている銅箔に対して、電気銅メッキを施した。最後に、レジスト剥離液を用いて、銅箔の上のレジストを除去した。レジスト除去の際の処理条件は、以下の通りである。
・レジスト剥離液
モノエタノールアミン:5質量%
商品名:三菱ガス化学株式会社製、R−100M
・処理条件
レジスト剥離液の温度:50℃
スプレー圧力:0.1MPa
銅箔に形成された配線パターンの寸法を、金属顕微鏡(オリンパス株式会社製、MX61L)を用いて測定した。その結果、配線パターンの寸法は、ライン/スペース=20μm/10μmであった。
つぎに、エッチング用液体組成物を用いて、基板の上からシード層(銅箔)を除去した。その結果、シード層を完全に除去するのに要した時間は、1分間であった。シード層除去の際の処理条件は、以下の通りである。
・エッチング用液体組成物の組成
過酸化水素:2質量%
硫酸:6質量%
商品名:三菱ガス化学株式会社製、CPE−800
・処理条件
エッチング用液体組成物の温度:30℃
スプレー圧力:0.2MPa
シード層(銅箔)を除去した後の配線パターンの線幅の減少量を、金属顕微鏡(オリンパス株式会社製、MX61L)を用いて測定した。その結果、線幅の減少量は、5.0μmであった。図3は、電子顕微鏡による配線の断面写真である。
[実施例2]
実施例2では、電解銅箔のシャイニー面のエッチング処理に用いられる液体組成物を以下の通りに変更した以外は、実施例1と同様の試験を行った。
・エッチング用液体組成物の組成
過酸化水素:0.5質量%
硫酸:2質量%
5−メチルテトラゾール:0.1質量%
塩化物イオン:1ppm
エッチング後の銅箔表面の縦5μm×横5μmの領域内の表面積を測定した。その結果、銅箔の表面積は、44.7[μm]であった。
エッチング後の銅箔の表面粗さ(Rzjis:十点平均粗さ)を測定した。その結果、銅箔の表面粗さは、0.5[μm]であった。
上記式(1)に基づいて、密着向上係数Eを算出した。その結果、密着向上係数Eは、3.58であった。計算式は、以下の通りである。
E = {44.7/(5×5)}/0.5 = 3.58
銅箔表面のエッチング量を、上記式(2)に基づいて算出した。その結果、銅箔表面のエッチング量は、0.4μmであった。
銅箔の引き剥がし強さは、1.00kgf/cmであった。
シード層を除去した後の配線パターンの線幅の減少量は、5.0μmであった。
[実施例3]
実施例3では、電解銅箔のシャイニー面のエッチング処理に用いられる液体組成物を以下の通りに変更した以外は、実施例1と同様の試験を行った。
・エッチング用液体組成物の組成
過酸化水素:1質量%
硫酸:2.5質量%
5−メチルテトラゾール:0.05質量%
1,5−ジメチルテトラゾール:0.05質量%
塩化物イオン:1ppm
エッチング後の銅箔表面の縦5μm×横5μmの領域内の表面積を測定した。その結果、銅箔の表面積は、38[μm]であった。
エッチング後の銅箔の表面粗さ(Rzjis:十点平均粗さ)を測定した。その結果、銅箔の表面粗さは、0.25[μm]であった。
上記式(1)に基づいて、密着向上係数Eを算出した。その結果、密着向上係数Eは、5.60であった。計算式は、以下の通りである。
E = {38/(5×5)}/0.25 = 6.08
銅箔表面のエッチング量を、上記式(2)に基づいて算出した。その結果、銅箔表面のエッチング量は、0.3μmであった。
銅箔の引き剥がし強さは、0.9kgf/cmであった。
シード層を除去した後の配線パターンの線幅の減少量は、4.5μmであった。
[実施例4]
実施例4では、電解銅箔のシャイニー面のエッチング処理のエッチング条件を以下の通りに変更した以外は、実施例3と同様の試験を行った。
・エッチングの条件
エッチング用液体組成物の温度:35℃
スプレー圧力:0.2MPa
スプレー時間:1分間
エッチング後の銅箔表面の縦5μm×横5μmの領域内の表面積を測定した。その結果、銅箔の表面積は、45[μm]であった。
エッチング後の銅箔の表面粗さ(Rzjis:十点平均粗さ)を測定した。その結果、銅箔の表面粗さは、0.45[μm]であった。
上記式(1)に基づいて、密着向上係数Eを算出した。その結果、密着向上係数Eは、3.70であった。計算式は、以下の通りである。
E = {45/(5×5)}/0.45 = 4.0
銅箔表面のエッチング量を、上記式(2)に基づいて算出した。その結果、銅箔表面のエッチング量は、0.65μmであった。
銅箔の引き剥がし強さは、0.95kgf/cmであった。
シード層を除去した後の配線パターンの線幅の減少量は、5.0μmであった。
[比較例1]
比較例1では、一方の表面が予め粗化されている以下の電解銅箔を使用した以外は、実施例1と同様の試験を行った。
・電解銅箔
厚み:12μm
商品名:三井金属鉱業株式会社製、3EC−VLP
上記の電解銅箔の表面を、走査型トンネル顕微鏡で30000倍の倍率で観測した。図2は、このときに観測された銅箔表面の3次元画像である。
銅箔表面の縦5μm×横5μmの領域内の表面積を測定した。その結果、銅箔の表面積は、36.2[μm]であった。
銅箔の表面粗さ(Rzjis:十点平均粗さ)を測定した。その結果、銅箔の表面粗さは、3.65[μm]であった。
上記式(1)に基づいて、密着向上係数Eを算出した。その結果、密着向上係数Eは、0.40であった。計算式は、以下の通りである。
E = {36.2/(5×5)}/3.65 = 0.40
銅箔の引き剥がし強さは、0.90kgf/cmであった。
シード層を除去した後の配線パターンの線幅の減少量は、9.8μmであった。図4は電子顕微鏡による配線の断面写真である。
[比較例2]
比較例2では、一方の表面が予め粗化されている以下の電解銅箔を使用した以外は、実施例1と同様の試験を行った。
・電解銅箔
厚み:12μm
商品名:古河電気工業株式会社製、FV―WS
銅箔表面の縦5μm×横5μmの領域内の表面積を測定した。その結果、銅箔の表面積は、33.8[μm]であった。
銅箔の表面粗さ(Rzjis:十点平均粗さ)を測定した。その結果、銅箔の表面粗さは、2.20[μm]であった。
上記式(1)に基づいて、密着向上係数Eを算出した。その結果、密着向上係数Eは、0.61であった。計算式は、以下の通りである。
E = {33.8/(5×5)}/2.20 = 0.61
銅箔の引き剥がし強さは、0.85kgf/cmであった。
シード層を除去した後の配線パターンの線幅の減少量は、9.5μmであった。
[比較例3]
比較例3では、一方の表面が予め粗化されている以下の電解銅箔を使用した以外は、実施例1と同様の試験を行った。
・電解銅箔
厚み:12μm
商品名:JX日鉱日石金属株式会社製、HLPLC
銅箔表面の縦5μm×横5μmの領域内の表面積を測定した。その結果、銅箔の表面積は、32.2[μm]であった。
銅箔の表面粗さ(Rzjis:十点平均粗さ)を測定した。その結果、銅箔の表面粗さは、2.05[μm]であった。
上記式(1)に基づいて、密着向上係数Eを算出した。その結果、密着向上係数Eは、0.63であった。計算式は、以下の通りである。
E = {32.2/(5×5)}/2.05 = 0.63
銅箔の引き剥がし強さは、0.85kgf/cmであった。
シード層を除去した後の配線パターンの線幅の減少量は、9.3μmであった。
[比較例4]
比較例4では、一方の表面が予め粗化されている以下の電解銅箔を使用した以外は、実施例1と同様の試験を行った。
・電解銅箔
厚み:12μm
商品名:福田金属箔粉工業株式会社製、SV
銅箔表面の縦5μm×横5μmの領域内の表面積を測定した。その結果、銅箔の表面積は、31.3[μm]であった。
銅箔の表面粗さ(Rzjis:十点平均粗さ)を測定した。その結果、銅箔の表面粗さは、1.85[μm]であった。
上記式(1)に基づいて、密着向上係数Eを算出した。その結果、密着向上係数Eは、0.68であった。計算式は、以下の通りである。
E = {31.3/(5×5)}/1.85 = 0.68
銅箔の引き剥がし強さは、0.70kgf/cmであった。
シード層を除去した後の配線パターンの線幅の減少量は、9.0μmであった。
[比較例5]
比較例5では、電解銅箔のシャイニー面のエッチング処理に用いられる液体組成物を以下の通りに変更した以外は、実施例1と同様の試験を行った。
・エッチング用液体組成物の組成
過酸化水素:1.3質量%
硫酸:5質量%
5−アミノテトラゾール:0.35質量%
商品名:三菱ガス化学株式会社製CPE−900
エッチング後の銅箔表面の縦5μm×横5μmの領域内の表面積を測定した。その結果、銅箔の表面積は、36[μm]であった。
エッチング後の銅箔の表面粗さ(Rzjis:十点平均粗さ)を測定した。その結果、銅箔の表面粗さは、0.75[μm]であった。
上記式(1)に基づいて、密着向上係数Eを算出した。その結果、密着向上係数Eは、5.60であった。計算式は、以下の通りである。
E = {36/(5×5)}/0.75 = 1.92
銅箔表面のエッチング量を、上記式(2)に基づいて算出した。その結果、銅箔表面のエッチング量は、1.5μmであった。
銅箔の引き剥がし強さは、0.50kgf/cmであった。
シード層を除去した後の配線パターンの線幅の減少量は、6.5μmであった。
[比較例6]
比較例6では、電解銅箔のシャイニー面をエッチングしなかった以外は、実施例1と同様の試験を行った。
銅箔表面(未処理)の縦5μm×横5μmの領域内の表面積を、25[μm]とした。
銅箔(未処理)の表面粗さ(Rzjis:十点平均粗さ)を測定した。その結果、銅箔の表面粗さは、0.1[μm]であった。
上記式(1)に基づいて、密着向上係数Eを算出した。その結果、密着向上係数Eは、5.60であった。計算式は、以下の通りである。
E = {25/(5×5)}/0.1 = 10
銅箔の引き剥がし強さは、0.20kgf/cmであった。
シード層を除去した後の配線パターンの線幅の減少量は、4.5μmであった。
実施例1〜4及び比較例1〜6の結果を、以下の表1に示す。
実施例1〜4は、比較例1〜5よりも、密着向上係数Eが大きかった。
実施例1、2、および4は、比較例1〜6よりも、銅箔の引き剥がし強さが大きかった。
実施例3は、比較例1と引き剥がし強さが同等であり、比較例2〜6よりも、銅箔の引き剥がし強さが大きかった。
実施例1〜4は、比較例1〜5よりも、配線パターンの線幅減少量が小さかった。
実施例1〜4は、比較例5よりも、エッチング量が少なかった。
本発明の銅箔は、絶縁基材との密着性が良好であった。
本発明の銅箔は、配線パターンの線幅の減少量が小さいため、微細な配線パターンを形成することができる。
本発明の銅箔は、配線パターンの線幅が20μm以下のプリント配線板に好ましく適用
することができる。

Claims (8)

  1. 銅箔の少なくとも一方の表面を、以下の式(1):
    E= 銅箔の表面積/銅箔の表面の十点平均粗さ ・・・(1)
    (銅箔の表面積は、銅箔の縦1μm×横1μmの単位領域当たりの表面積であり、銅箔の表面積は、前記銅箔の表面を走査型トンネル顕微鏡で観測したときに得られる値である)
    で表される密着向上係数Eの値が2.5〜8になるまでエッチング処理する、プリント配線板用銅箔の製造方法であって、
    前記エッチング処理に、
    0.2〜1.5質量%の過酸化水素と、
    0.5〜3.0質量%の硫酸と、
    0.3〜3ppmのハロゲンイオンと、
    0.01〜0.3質量%のテトラゾール類と
    を含む液体組成物(但し、銀イオンを含むものを除く)を用いる、方法
  2. 以下の式(2):
    エッチング量[μm] =(エッチング前の銅箔の質量−エッチング後の銅箔の質量)/(エッチング面積×銅の密度) ・・・(2)
    (式中、銅の密度は、8.96g/cm である)
    で表される前記銅箔の表面のエッチング量が、1μm以下である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記銅箔の表面は、銅以外の金属、シランカップリング剤、または接着剤によって処理されていない、請求項1または2に記載の方法。
  4. 絶縁基材と、前記絶縁基材の表面に積層されたプリント配線板用銅箔とを備えてなる、銅張積層板の製造方法であって、
    前記プリント配線板用銅箔を、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法により製造する、方法。
  5. 銅張積層板を備えてなるプリント配線板の製造方法であって、
    前記銅張積層板を、請求項4に記載の方法により製造する、方法。
  6. セミアディティブ法によって配線パターンを形成する、請求項5に記載の方法。
  7. サブトラクティブ法によって配線パターンを形成する、請求項5に記載の方法。
  8. 前記配線パターンの線幅が20μm以下である、請求項6または7に記載の方法。
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