JP6222893B2 - 塗料組成物およびこれを用いた塗料被覆金属材料 - Google Patents
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この表面処理は、金属材料を製品形状に成形した後、当該金属材料表面に耐熱性の高い無機皮膜を形成する方法やシリコーン樹脂皮膜を形成する方法により行われている。しかし、無機皮膜を形成する方法では、成膜コストが高くなってしまい、一方、シリコーン樹脂皮膜を形成する方法では、使用する塗料のコストが高くなってしまう。加えて、従来、塗料は有機溶剤系のものが主流であったが、環境配慮の観点から、水系塗料への切り替えが望まれている。
例えば、特許文献1には、アルカリケイ酸系ガラス水溶液に粒子状充填材、四フッ化系フッ素樹脂を配合してなる複合皮膜が形成された塗装金属板が提案されている。
しかし、特許文献1および特許文献2に記載された塗料は、当該塗料を被覆させた金属材料について高温環境下で長時間使用した場合、当該塗料中のフッ素樹脂が分解してしまい、毒性の強いフッ素ガスを発生させるおそれがある。
つまり、特許文献1および特許文献2に記載された塗料は、耐熱性と安全性とを両立させるものではなかった。
また、本発明に係る塗料組成物は、非イオン性界面活性剤を含むとともに、pHを7.0以上としていることから、塗料の安定性(貯蔵時の安定性)に優れるとともに、当該塗料組成物を金属材料に塗布した場合、塗装外観を優れたものとすることができる。
また、本発明に係る塗料組成物は、シランカップリング剤を所定量含むことから、塗料の安定性をさらに優れたものとする(長期安定性を向上させる)ことができる。
また、本発明に係る塗料組成物は、所定の平均粒径のアクリル系微粒子を所定量含むことから、当該塗料組成物を金属材料に塗布した場合、耐熱光沢性を優れたものとすることができる。
また、本発明に係る塗料組成物は、含有する水性樹脂とケイ酸塩化合物がいずれも安価で入手可能であるとともに、塗料組成物の調整には何ら特殊な方法を必要としないため、コスト面でも優れる。
なお、特許文献2に記載されたポリエーテルサルフォン樹脂は、エンジニアリングプラスチックとして広く知られているが、塗料化が難しい樹脂であるとともに、塗料コストが高価であることから、塗料化の容易性およびコスト面においても、本発明に係る塗料組成物の方が優位である。
このように、本発明に係る塗料被覆金属材料は、金属材料表面に前記塗料組成物が塗布されることで形成された皮膜を備えることにより、安全に耐熱性を向上させることができる。
このように、本発明に係る塗料被覆金属材料は、下地皮膜を備えることにより、金属材料に対する皮膜の密着性を向上させるとともに、耐食性も向上させることができる。
なお、第2実施形態および第3実施形態を説明するに際して、既に説明した実施形態と共通する構成については説明を省略し、相違する構成を中心に説明する。
(塗料組成物)
第1実施形態に係る塗料組成物(以下、単に、塗料ともいう)は、カルボキシル基を含む水性樹脂(以下、適宜、水性樹脂という)と、アルカリ金属イオンを含むケイ酸塩化合物(以下、適宜、ケイ酸塩化合物という)と、非イオン性界面活性剤と、を含み、水性樹脂とケイ酸塩化合物との含有割合、ケイ酸塩化合物の種類、塗料組成物のpHを特定したものであることを特徴とする。
なお、カルボキシル基を含むと規定している理由は、ケイ酸塩化合物の金属イオンと反応して造膜するためである。
そして、ケイ酸塩化合物に含有されるアルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウムから選ばれるいずれか1種類である。これらのアルカリ金属は、入手が容易であるとともに、安価に準備することができるため、塗料コストの向上を抑制でき、その結果、塗料を大量生産に適するものとすることができる。
なお、ケイ酸塩化合物100質量部に対し、水性樹脂は250質量部以上であることが好ましい。
非イオン性界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、塗料の安定性向上の観点より、固形分換算で0.1質量%以上であることが好ましく、耐熱性確保の観点より、5質量%以下であることが好ましい。
なお、非イオン性と規定している理由は、イオン性界面活性剤を用いると塗料がゲル化してしまうが、非イオン性界面活性剤を用いると無機成分と有機成分とが塗料中で分散し塗料がゲル化しないというものである。
また、塗料組成物のpHは、12未満であることが好ましい。これは、塗料組成物のpHが12以上となると、金属材料が腐食してしまう場合があるためである。なお、塗料組成物のpHが12以上となってしまう場合は、塩酸、酢酸、硝酸等で混合する前の各溶液のpHを予め調整するか、あるいは混合溶液のpHを調整しておけばよい。
図1に示すように、第1実施形態に係る塗料被覆金属材料1Aは、金属材料2と、金属材料2の表面に第1実施形態に係る塗料組成物からなる皮膜3と、を備えることを特徴とする。
塗料被覆金属材料1Aは、第1実施形態に係る塗料組成物で形成された皮膜3を備えることにより、安全に塗料被覆金属材料1Aの耐熱性を向上させることができ、耐熱性と安全性とを両立させることができる。
なお、このような金属材料2の金属種、形状等は、特に制限はなく、目的に応じて選択すればよい。
(塗料組成物)
第2実施形態に係る塗料組成物は、第1実施形態に係る塗料組成物に、エポキシ基を含むシランカップリング剤が所定量含有されている、または、所定の平均粒径のコロイダルシリカが所定量含有されている、または、シランカップリング剤およびコロイダルシリカの両方がそれぞれ所定量含有されていることを特徴とする。
なお、エポキシ基を含むと規定している理由は、エポキシ基以外の官能基を含むシランカップリング剤では、塗料の長期安定性が得られないばかりか、皮膜の反応性が悪くなり所定の皮膜性能が得られないというものである。
なお、シランカップリング剤の含有量は、0.2質量%以上2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、コロイダルシリカの含有量は、7.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、コロイダルシリカの平均粒径は、20nm以下であることがさらに好ましく、6nm以下であることが特に好ましい。
図2に示すように、第2実施形態に係る塗料被覆金属材料1Bは、金属材料2と、金属材料の表面に第2実施形態に係る塗料組成物からなる皮膜3と、を備えることを特徴とする。そして、皮膜3には、シランカップリング剤およびコロイダルシリカ4の少なくともいずれか一方が含有されている。
(塗料組成物)
第3実施形態に係る塗料組成物は、第1実施形態または第2実施形態に係る塗料組成物に、所定の平均粒径の樹脂ビーズが所定量含有されていることを特徴とする。
なお、樹脂ビーズの含有量は、4.0質量%以上29.0質量%以下がさらに好ましく、5.0質量%以上27.0質量%以下が特に好ましい。
なお、樹脂ビーズの平均粒径は、0.3μm以上15.0μm以下であることがさらに好ましい。
図3に示すように、第3実施形態に係る塗料被覆金属材料1Cは、金属材料2と、金属材料2の表面に第3実施形態に係る塗料組成物からなる皮膜3と、を備えることを特徴とする。そして、皮膜3には、樹脂ビーズ5が含有されている。
塗料被覆金属材料1Cは、樹脂ビーズ5を含有する塗料組成物で形成された皮膜3を備えることにより、塗料被覆金属材料1Cの耐熱光沢性を優れたものとすることができる。
なお、皮膜3には、さらに、シランカップリング剤およびコロイダルシリカ4の少なくともいずれか一方が含有されていてもよい。
(塗料被覆金属材料)
図4に示すように、第1〜3実施形態の変形例に係る塗料被覆金属材料1Dは、金属材料2と、皮膜3との間に、下地皮膜6を形成させるのが好ましい。
塗料被覆金属材料1Dは、下地皮膜6を備えることにより、金属材料2に対する皮膜3の密着性を向上させるとともに、耐食性も向上させることができる。
(塗料組成物の製造方法)
塗料組成物の製造方法については、従来公知の塗料の製造方法を用いればよく、上記の各物質を所定の比率で混合し、pH調整を行うといった方法でよい。
塗料被覆金属材料は、金属材料の表面に塗料組成物を塗布し(塗布工程)、塗料組成物を塗布した金属材料2を常温乾燥あるいは焼付け処理して塗料組成物を硬化させ、皮膜を形成させる(乾燥工程)ことにより製造することができる。
一方、膜厚が20μmを超えても、さらなる効果の向上は得られ難い。また、ロールコーターのピックアップロールによる塗料の持ち上げが不十分となり膜厚のバラツキが著しく大きくなり、外観が劣ることになるため好ましくない。なお、膜厚は、好ましくは3μm以上18μm以下であり、より好ましくは3μm以上10μm以下である。
そして、前記した処理温度であれば、20秒から50秒程度の短時間焼付け処理にて、皮膜を形成させることができる。
例えば、本発明に係る塗料被覆金属材料は、皮膜3に着色顔料を含ませることによって、当該皮膜3に所望の色を付けることができる。着色顔料は、400℃以上の高温でも分解や変色しない耐熱性の高い無機顔料が好ましく、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、チタンブラック、銅・クロムブラック、コバルトブラック、マンガン・鉄ブラック、銅・マンガン・鉄ブラック、マンガン・ビスマスブラック等があり、これらの中から選択される1種類を用いることもできるし、2種類以上を混合して用いることもできる。
はじめに、水性樹脂と、ケイ酸塩化合物と、非イオン性界面活性剤と、を含む塗料組成物を用いた塗料被覆金属材料(第1実施形態に対応する塗料被覆金属材料)について具体的に説明する。
まず、金属材料として、板厚0.3mmのステンレス鋼板(JIS G4303)およびアルミニウム板(JIS H4000)を使用した。そして、下地処理として、ステンレス鋼板には、酸洗した後、塗布型クロメート処理を施し、アルミニウム板には、アルカリ脱脂した後、リン酸クロメート処理を施し、ともにCr換算で20mg/m2のクロメート皮膜(下地皮膜)を当該板の両面に形成させた。
調製した塗料を、バーコーターを用いて金属材料に塗布し(約25000mg/m2)、焼付温度200℃で30秒間焼付処理を行って皮膜(片面約5μm)を両面に形成させ、No.1〜19に係る塗料被覆金属材料(供試材)を作製した。
<耐熱性の評価>
耐熱性の評価は、作製した供試材を大気中で400℃、24時間の加熱を行い、加熱前と比較して皮膜が消失したものを不良(×)、皮膜は残存するが皮膜剥離したものをやや不良(△)、皮膜は残存するが変色したものを良好(○)、皮膜が残存し、かつ、変色しないものを優良(◎)とした。
安全性の評価は、耐熱性の評価中に、アクリロニトリル、亜硫酸ガス、塩化水素、塩素、クロルメチル、シアン化水素、二硫化炭素、フッ素、ブロムメチル、ベンゼン、ホスゲン、硫化水素のいずれかの毒性の強いガスが発生すると想定されるものは不良(×)、発生しないと想定されるものは良好(〇)とした。
なお、上記の毒性の強いガスの発生有無については、塗料組成による理論上の化学反応から判断した。
これに対し、No.11〜19に係る供試材は、本発明の要件のいずれかを満たしていないので、耐熱性または安全性が不良となった。
No.12に係る供試材は、水性樹脂の種類が本発明の要件を満たさないため、塗料調製中に塗料がゲル化して、金属材料に塗装することができなかった。
No.13に係る供試材は、ケイ酸塩化合物にアルカリ金属イオンが含まれていないため、耐熱性が不良となった。
No.14、15に係る供試材は、ケイ酸塩化合物100重量部に対する水性樹脂の比率が本発明の要件を満たさないため、皮膜が成膜しないか、耐熱性が不良となった。
No.17、18に係る供試材は、水性樹脂の種類および比率が本発明の要件を満たさなかったため、安全性が不良となった。
No.19に係る供試材は、水性樹脂の種類が本発明の要件を満たさないため、皮膜は残存するが皮膜剥離してしまい、耐熱性がやや不良となった。
なお、No.17に係る供試材は、特許文献1に記載された発明に相当するものであり、No.18に係る供試材は、特許文献2に記載された発明に相当するものである。
次に、水性樹脂と、ケイ酸塩化合物と、非イオン性界面活性剤と、を含むとともに、シランカップリング剤またはコロイダルシリカをさらに含む塗料組成物(第2実施形態に対応する塗料組成物)について具体的に説明する。
表2に示す種類の各種物質を所定の含有量で、表2に示すpHとなるように混合し、各塗料を調製することにより、No.20〜33に係る塗料組成物(供試材)を作製した。
貯蔵安定性の評価は、調製した塗料を40℃で24時間保持した後の粘度が10000mPa・sを超えるものは不良(○)、粘度が10000mPa・s以下であれば良好(◎)とした。
作製した供試材の貯蔵安定性を表2に示す。
これに対し、No.27〜33に係る供試材は、本発明の好ましい要件のいずれかを満たしていないので、貯蔵安定性が不良となった。
No.28、29に係る供試材は、シランカップリング剤の添加量が好ましい範囲を満たしていないので、貯蔵安定性が不良となった。
No.30〜33に係る供試材は、コロイダルシリカの粒径もしくは添加量が好ましい範囲を満たしていないので、貯蔵安定性が不良となった。
次に、水性樹脂と、ケイ酸塩化合物と、非イオン性界面活性剤と、を含むとともに、樹脂ビーズをさらに含む塗料組成物を用いた塗料被覆金属材料(第3実施形態に対応する塗料被覆金属材料)について具体的に説明する。
まず、前記した第1実施例と同じ条件で、金属材料(ステンレス鋼板、アルミニウム板)の両面にクロメート皮膜(下地皮膜)を形成させた。
次に、表3に示す種類の各種物質を所定の含有量で、表3に示すpHとなるように混合し、各塗料を調製した。
調製した塗料を、第1実施例と同じ条件で金属材料に塗布し、皮膜を両面に形成させ、No.34〜41に係る塗料被覆金属材料(供試材)を作製した。
なお、使用した樹脂ビーズは、アクリル系微粒子であった。
耐熱光沢性の評価は、作製した供試材を大気雰囲気中で300℃、1時間加熱を行い、加熱前と加熱後の板の明度L*を色差計で測定し、加熱前後の明度L*の差ΔLがΔL<−3、あるいは、3<ΔLのものを不良(○)、−3≦ΔL≦3のものを良好(◎)とした。
作製した供試材の耐熱光沢性を表3に示す。
これに対し、No.38〜41に係る供試材は、本発明の好ましい要件を満たしていないので、耐熱光沢性が不良となった。
1A 第1実施形態に係る塗料被覆金属材料
1B 第2実施形態に係る塗料被覆金属材料
1C 第3実施形態に係る塗料被覆金属材料
1D 第1〜3実施形態の変形例に係る塗料被覆金属材料
2 金属材料
3 皮膜
4 コロイダルシリカ
5 樹脂ビーズ
6 下地皮膜
Claims (4)
- カルボキシル基を含む水性樹脂と、アルカリ金属イオンを含むケイ酸塩化合物と、非イオン性界面活性剤と、を含み、
前記カルボキシル基を含む水性樹脂は、アクリル酸高分子、カルボキシル基を含むエチレン樹脂、エチレンアクリル酸共重合高分子、エチレンメタクリル酸系共重合高分子のいずれか1種類であって、
前記アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウムのいずれか1種類であって、
前記水性樹脂の含有比率は、固形分換算で前記ケイ酸塩化合物100質量部に対し、80質量部以上1000質量部以下であって、
pH7.0以上であり、
さらに、エポキシ基を含むシランカップリング剤を固形分換算で0.05質量%以上5.0質量%以下含み、
平均粒径が0.3μm以上30.0μm以下のアクリル系微粒子を固形分換算で5.0質量%以上30.0質量%未満含むことを特徴とする塗料組成物。 - 平均粒径が1nm以上100nm以下のコロイダルシリカを固形分換算で5.0質量%以上12.0質量%以下、を含むことを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
- 金属材料と、当該金属材料の表面に形成され請求項1または請求項2に記載の塗料組成物からなる皮膜と、を備えることを特徴とする塗料被覆金属材料。
- 前記金属材料と前記皮膜の間に下地皮膜が形成されたものであることを特徴とする請求項3に記載の塗料被覆金属材料。
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