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JP6222893B2 - 塗料組成物およびこれを用いた塗料被覆金属材料 - Google Patents

塗料組成物およびこれを用いた塗料被覆金属材料 Download PDF

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JP6222893B2 JP2012056446A JP2012056446A JP6222893B2 JP 6222893 B2 JP6222893 B2 JP 6222893B2 JP 2012056446 A JP2012056446 A JP 2012056446A JP 2012056446 A JP2012056446 A JP 2012056446A JP 6222893 B2 JP6222893 B2 JP 6222893B2
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Description

本発明は、塗料組成物およびこれを用いた塗料被覆金属材料に係り、特に、自動車の排気系部材、家電製品の耐熱構造部材などの高温環境下で使用される金属部材に用いられる塗料組成物および塗料被覆金属材料に関する。
自動車の排気系部材や家電製品の耐熱構造部材などの高温環境下で使用される金属部材には、意匠性、耐食性、機能性を付与するために、表面処理が施される。
この表面処理は、金属材料を製品形状に成形した後、当該金属材料表面に耐熱性の高い無機皮膜を形成する方法やシリコーン樹脂皮膜を形成する方法により行われている。しかし、無機皮膜を形成する方法では、成膜コストが高くなってしまい、一方、シリコーン樹脂皮膜を形成する方法では、使用する塗料のコストが高くなってしまう。加えて、従来、塗料は有機溶剤系のものが主流であったが、環境配慮の観点から、水系塗料への切り替えが望まれている。
上記のような事情を考慮し、耐熱性に優れた塗料や塗料被覆金属材料に関して、以下のような様々な提案がなされている。
例えば、特許文献1には、アルカリケイ酸系ガラス水溶液に粒子状充填材、四フッ化系フッ素樹脂を配合してなる複合皮膜が形成された塗装金属板が提案されている。
また、特許文献2には、ポリエーテルサルフォン樹脂の下塗り層の上に、四フッ化系フッ素樹脂を含有するポリエーテルサルフォン樹脂が形成された耐熱性塗装金属板が提案されている。
特開2000−319575号公報 特許第3361281号公報
特許文献1および特許文献2に係る技術は、いずれも、ガスレンジや電子レンジ等といった耐熱性が要求される部材用の金属板に関する技術である。したがって、特許文献1および特許文献2に記載された塗料は、耐熱性に関して一定の水準を満たす塗料である。
しかし、特許文献1および特許文献2に記載された塗料は、当該塗料を被覆させた金属材料について高温環境下で長時間使用した場合、当該塗料中のフッ素樹脂が分解してしまい、毒性の強いフッ素ガスを発生させるおそれがある。
つまり、特許文献1および特許文献2に記載された塗料は、耐熱性と安全性とを両立させるものではなかった。
そこで、本発明は、400℃以上の高温に耐えるとともに(耐熱性)、安全性に優れた塗料組成物および塗料被覆金属材料を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、塗料に水性樹脂とケイ酸塩化合物と界面活性剤とを含有させるとともに、水性樹脂とケイ酸塩化合物との含有割合、ケイ酸塩化合物の種類、塗料のpHを特定することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る塗料組成物は、カルボキシル基を含む水性樹脂と、アルカリ金属イオンを含むケイ酸塩化合物と、非イオン性界面活性剤と、を含み、前記カルボキシル基を含む水性樹脂は、アクリル酸高分子、カルボキシル基を含むエチレン樹脂、エチレンアクリル酸共重合高分子、エチレンメタクリル酸系共重合高分子のいずれか1種類であって、前記アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウムのいずれか1種類であって、前記水性樹脂の含有比率は、固形分換算で前記ケイ酸塩化合物100質量部に対し、80質量部以上1000質量部以下であって、pH7.0以上であり、さらに、エポキシ基を含むシランカップリング剤を固形分換算で0.05質量%以上5.0質量%以下含み、平均粒径が0.3μm以上30.0μm以下のアクリル系微粒子を固形分換算で5.0質量%以上30.0質量%未満含むことを特徴とする。
このように、本発明に係る塗料組成物は、カルボキシル基を含む水性樹脂と、アルカリ金属イオンを含むケイ酸塩化合物と、を含むとともに、水性樹脂とケイ酸塩化合物との含有割合、ケイ酸塩化合物の種類を特定しているので、当該塗料組成物を金属材料に塗布して皮膜を形成させた場合、耐熱性を向上させることができるとともに、400℃以上の高温環境下での使用時において、毒性の強いフッ素ガスを発生させるおそれもない。
また、本発明に係る塗料組成物は、非イオン性界面活性剤を含むとともに、pHを7.0以上としていることから、塗料の安定性(貯蔵時の安定性)に優れるとともに、当該塗料組成物を金属材料に塗布した場合、塗装外観を優れたものとすることができる。
また、本発明に係る塗料組成物は、シランカップリング剤を所定量含むことから、塗料の安定性をさらに優れたものとする(長期安定性を向上させる)ことができる。
また、本発明に係る塗料組成物は、所定の平均粒径のアクリル系微粒子を所定量含むことから、当該塗料組成物を金属材料に塗布した場合、耐熱光沢性を優れたものとすることができる。
また、本発明に係る塗料組成物は、水性樹脂とケイ酸塩化合物とを含んで構成されることから、当該塗料組成物を金属材料に塗布し所定の条件で焼付けを行った場合であっても、耐熱性、加工性は低下せず、大量生産性の面でも優れる。
また、本発明に係る塗料組成物は、含有する水性樹脂とケイ酸塩化合物がいずれも安価で入手可能であるとともに、塗料組成物の調整には何ら特殊な方法を必要としないため、コスト面でも優れる。
なお、特許文献2に記載されたポリエーテルサルフォン樹脂は、エンジニアリングプラスチックとして広く知られているが、塗料化が難しい樹脂であるとともに、塗料コストが高価であることから、塗料化の容易性およびコスト面においても、本発明に係る塗料組成物の方が優位である。
また、本発明に係る塗料組成物は、平均粒径が1nm以上100nm以下のコロイダルシリカを固形分換算で5.0質量%以上12.0質量%以下、を含むことが好ましい。
このように、本発明に係る塗料組成物は、コロイダルシリカを所定量含むことから、塗料の安定性をさらに優れたものとする(長期安定性を向上させる)ことができる。
本発明に係る塗料被覆金属材料は、金属材料と、当該金属材料の表面に形成され前記塗料組成物からなる皮膜と、を備えることを特徴とする。
このように、本発明に係る塗料被覆金属材料は、金属材料表面に前記塗料組成物が塗布されることで形成された皮膜を備えることにより、安全に耐熱性を向上させることができる。
また、本発明に係る塗料被覆金属材料は、前記金属材料と前記皮膜の間に下地皮膜が形成されたものであることが好ましい。
このように、本発明に係る塗料被覆金属材料は、下地皮膜を備えることにより、金属材料に対する皮膜の密着性を向上させるとともに、耐食性も向上させることができる。
本発明に係る塗料組成物は、水性樹脂と、ケイ酸塩化合物と、を所定の含有割合で含むとともに、ケイ酸塩化合物の種類を特定しているので、当該塗料組成物を金属材料に塗布して皮膜を形成させた場合、400℃以上の高温に耐えることができるとともに(耐熱性)、高温環境下での使用時において、毒性の強いフッ素ガスを発生させず、安全性にも優れる。
本発明に係る塗料被覆金属材料は、金属材料表面に前記塗料組成物からなる皮膜を備えることにより、安全に耐熱性を向上させることができ、耐熱性と安全性とを両立させることができる。
本発明に係る塗料被覆金属材料の第1実施形態を示す断面模式図である。 本発明に係る塗料被覆金属材料の第2実施形態を示す断面模式図である。 本発明に係る塗料被覆金属材料の第3実施形態を示す断面模式図である。 本発明に係る塗料被覆金属材料の第1〜3実施形態の変形例を示す断面模式図である。
以下、適宜図面を参照して、本発明に係る塗料組成物およびこれを用いた塗料被覆金属材料を実施するための形態(実施形態)について説明する。
なお、第2実施形態および第3実施形態を説明するに際して、既に説明した実施形態と共通する構成については説明を省略し、相違する構成を中心に説明する。
[第1実施形態]
(塗料組成物)
第1実施形態に係る塗料組成物(以下、単に、塗料ともいう)は、カルボキシル基を含む水性樹脂(以下、適宜、水性樹脂という)と、アルカリ金属イオンを含むケイ酸塩化合物(以下、適宜、ケイ酸塩化合物という)と、非イオン性界面活性剤と、を含み、水性樹脂とケイ酸塩化合物との含有割合、ケイ酸塩化合物の種類、塗料組成物のpHを特定したものであることを特徴とする。
カルボキシル基を含む水性樹脂とは、例えば、アクリル樹脂、エチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、PVA(ポリビニルアルコール)、PEO(ポリエチレンオキサイド)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウムなどのアクリル酸高分子、エチレン酸アクリル酸共重合高分子、エチレン酸メタクリル酸共重合高分子などのアクリル酸共重合高分子等であり、これらの中から選択される1種類を用いることもできるし、2種類以上を混合して用いることもできる。
なお、カルボキシル基を含むと規定している理由は、ケイ酸塩化合物の金属イオンと反応して造膜するためである。
アルカリ金属イオンを含むケイ酸塩化合物とは、例えば、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等であり、これらの中から選択される1種類を用いることもできるし、2種類以上を混合して用いることもできる。
そして、ケイ酸塩化合物に含有されるアルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウムから選ばれるいずれか1種類である。これらのアルカリ金属は、入手が容易であるとともに、安価に準備することができるため、塗料コストの向上を抑制でき、その結果、塗料を大量生産に適するものとすることができる。
水性樹脂とケイ酸塩化合物との含有割合については、ケイ酸塩化合物100質量部に対し、水性樹脂が固形分換算で80質量部以上1000質量部以下である。これは、水性樹脂が80質量部未満であると成膜できず(皮膜を形成することができず)、1000質量部を超えると十分な耐熱性が得られないからである。
なお、ケイ酸塩化合物100質量部に対し、水性樹脂は250質量部以上であることが好ましい。
非イオン性界面活性剤とは、例えば、エステル型、エーテル型、エーテル・エステル型、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルポリグルコシド等であり、これらの中から選択される1種類を用いることもできるし、2種類以上を混合して用いることもできる。
非イオン性界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、塗料の安定性向上の観点より、固形分換算で0.1質量%以上であることが好ましく、耐熱性確保の観点より、5質量%以下であることが好ましい。
なお、非イオン性と規定している理由は、イオン性界面活性剤を用いると塗料がゲル化してしまうが、非イオン性界面活性剤を用いると無機成分と有機成分とが塗料中で分散し塗料がゲル化しないというものである。
塗料組成物のpHは、7.0以上である。これは、塗料組成物のpHが7.0未満であると、塗料中の水素イオンとアルカリ金属イオンとが直ちに反応し、塗料がゲル化してしまうからである。なお、塗料組成物のpHが7.0未満になってしまう場合には、塗料組成物のpHが7.0以上になるように、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等で混合する前の各溶液のpHを予め調整しておけばよい。
また、塗料組成物のpHは、12未満であることが好ましい。これは、塗料組成物のpHが12以上となると、金属材料が腐食してしまう場合があるためである。なお、塗料組成物のpHが12以上となってしまう場合は、塩酸、酢酸、硝酸等で混合する前の各溶液のpHを予め調整するか、あるいは混合溶液のpHを調整しておけばよい。
なお、塗料組成物の上記以外の物質については、特に制限されず、従来公知の塗料を構成する溶媒等を使用すればよい。例えば、プレス成形性を高めるためにカルナウバワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの潤滑剤を一種または二種以上含有させることができる。また、塗装性を確保するため、流動性調整剤、レベリング剤、ワキ防止剤、防腐剤、安定化剤、耐ブロッキング防止剤などを含有させることができる。
(塗料被覆金属材料)
図1に示すように、第1実施形態に係る塗料被覆金属材料1Aは、金属材料2と、金属材料2の表面に第1実施形態に係る塗料組成物からなる皮膜3と、を備えることを特徴とする。
塗料被覆金属材料1Aは、第1実施形態に係る塗料組成物で形成された皮膜3を備えることにより、安全に塗料被覆金属材料1Aの耐熱性を向上させることができ、耐熱性と安全性とを両立させることができる。
ここで、金属材料2の金属種は、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金等である。また、金属材料2は、例えば、型材、棒材、線材、条、板材等の形状を呈するものであり、焼結品等であってもよい。
なお、このような金属材料2の金属種、形状等は、特に制限はなく、目的に応じて選択すればよい。
[第2実施形態]
(塗料組成物)
第2実施形態に係る塗料組成物は、第1実施形態に係る塗料組成物に、エポキシ基を含むシランカップリング剤が所定量含有されている、または、所定の平均粒径のコロイダルシリカが所定量含有されている、または、シランカップリング剤およびコロイダルシリカの両方がそれぞれ所定量含有されていることを特徴とする。
エポキシ基を含むシランカップリング剤(以下、適宜、シランカップリング剤という)とは、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等であり、これらの中から選択される1種類を用いることもできるし、2種類以上を混合して用いることもできる。
なお、エポキシ基を含むと規定している理由は、エポキシ基以外の官能基を含むシランカップリング剤では、塗料の長期安定性が得られないばかりか、皮膜の反応性が悪くなり所定の皮膜性能が得られないというものである。
そして、シランカップリング剤の含有量は、固形分換算で0.05質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。これは、シランカップリング剤の含有量が0.05質量%未満であると、塗料の長期安定性が得られず、一方、5.0質量%を超えると、塗料の長期安定性の向上という効果が飽和するとともに、皮膜の反応性が悪くなり所定の皮膜性能が得られなくなってしまうからである。
なお、シランカップリング剤の含有量は、0.2質量%以上2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
コロイダルシリカの含有量は、固形分換算で5.0質量%以上12.0質量%以下であることが好ましい。これは、コロイダルシリカの含有量が5.0質量%未満であると、塗料の長期安定性が得られず、一方、12.0質量%を超えると、造膜性が低下する(皮膜が形成され難くなる)からである。
なお、コロイダルシリカの含有量は、7.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
また、コロイダルシリカの平均粒径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。これは、コロイダルシリカの平均粒径が1nm未満であると、粒径が小さすぎて塗料の長期安定性が得られず、一方、100nmを超えると、塗料の増粘が助長され過ぎてしまい、塗料の安定性改善効果が得られないからである。
なお、コロイダルシリカの平均粒径は、20nm以下であることがさらに好ましく、6nm以下であることが特に好ましい。
ここで、コロイダルシリカの粒径には通常分布がある。本発明におけるコロイダルシリカの粒径は、レーザー回折式粒度分布測定器等で測定した積算体積50%粒径をいう。
(塗料被覆金属材料)
図2に示すように、第2実施形態に係る塗料被覆金属材料1Bは、金属材料2と、金属材料の表面に第2実施形態に係る塗料組成物からなる皮膜3と、を備えることを特徴とする。そして、皮膜3には、シランカップリング剤およびコロイダルシリカ4の少なくともいずれか一方が含有されている。
[第3実施形態]
(塗料組成物)
第3実施形態に係る塗料組成物は、第1実施形態または第2実施形態に係る塗料組成物に、所定の平均粒径の樹脂ビーズが所定量含有されていることを特徴とする。
樹脂ビーズとは、例えば、ウレタン微粒子、アクリル系微粒子、シリコーン微粒子、ポリスチレン微粒子等であり、これらの中から選択される1種類を用いることもできるし、2種類以上を混合して用いることもできる。
そして、樹脂ビーズの含有量は、固形分換算で1.0質量%以上30.0質量%未満であることが好ましい。これは、樹脂ビーズの含有量が1.0質量%未満であると、含有量が少なすぎて耐熱光沢性の改善という効果が認められず、一方、30.0質量%以上であると、塗料が増粘して塗布(塗装)作業が困難になるため、外観不良を引き起こし、その結果として耐熱光沢性が低下することとなるからである。
なお、樹脂ビーズの含有量は、4.0質量%以上29.0質量%以下がさらに好ましく、5.0質量%以上27.0質量%以下が特に好ましい。
また、樹脂ビーズの平均粒径は、0.3μm以上30.0μm以下であることが好ましい。これは、樹脂ビーズの平均粒径が0.3μm未満であると、粒径が小さすぎて耐熱光沢性の改善という効果が認められず、30μmを超えると、粒径が大きすぎて皮膜表面が粗面化されるため、耐熱光沢性が低下してしまうからである。
なお、樹脂ビーズの平均粒径は、0.3μm以上15.0μm以下であることがさらに好ましい。
ここで、樹脂ビーズの粒径には通常分布がある。本発明における樹脂ビーズの粒径は、樹脂ビーズを水系溶媒等に分散させたコロイドの状態で、レーザー回折式粒度分布測定器等で測定した積算体積50%粒径をいう。
(塗料被覆金属材料)
図3に示すように、第3実施形態に係る塗料被覆金属材料1Cは、金属材料2と、金属材料2の表面に第3実施形態に係る塗料組成物からなる皮膜3と、を備えることを特徴とする。そして、皮膜3には、樹脂ビーズ5が含有されている。
塗料被覆金属材料1Cは、樹脂ビーズ5を含有する塗料組成物で形成された皮膜3を備えることにより、塗料被覆金属材料1Cの耐熱光沢性を優れたものとすることができる。
なお、皮膜3には、さらに、シランカップリング剤およびコロイダルシリカ4の少なくともいずれか一方が含有されていてもよい。
[第1〜3実施形態の変形例]
(塗料被覆金属材料)
図4に示すように、第1〜3実施形態の変形例に係る塗料被覆金属材料1Dは、金属材料2と、皮膜3との間に、下地皮膜6を形成させるのが好ましい。
塗料被覆金属材料1Dは、下地皮膜6を備えることにより、金属材料2に対する皮膜3の密着性を向上させるとともに、耐食性も向上させることができる。
下地皮膜6としては、従来公知のCr,Zr,Tiの中から選択される1種類以上を含有する皮膜を使用できる。例えば、リン酸クロメート皮膜、クロム酸クロメート皮膜、リン酸ジルコニウム皮膜、酸化ジルコニウム皮膜、リン酸チタン皮膜、塗布型クロメート皮膜、塗布型ジルコニウム皮膜などを適宜使用することができる。また、必要に応じて、これらの皮膜に有機成分を含有させてもよい。近年の環境への配慮の観点から、六価クロムを含まないリン酸クロメート皮膜や、リン酸ジルコニウム皮膜、酸化ジルコニウム皮膜、リン酸チタン皮膜、塗布型ジルコニウム皮膜を使用することが好ましい。下地皮膜6の厚さは、目安として、金属材料2へのCr,Zr,Tiの付着量(Cr,Zr,Ti換算値)で10〜50mg/m2程度が好ましい。付着量が10mg/m2未満では、金属材料2の全面を均一に被覆することができず効果が十分に得られない。一方、付着量が50mg/m2を超えると、下地皮膜6自体に割れが生じやすくなる。Cr,Zr,Ti換算値は、例えば、蛍光X線法により比較的簡便かつ定量的に測定することができる。そのため、生産性を阻害することなく塗料被覆金属材料(プレコート金属板)の品質管理を行うことができる。
[塗料組成物および塗料被覆金属材料の製造方法]
(塗料組成物の製造方法)
塗料組成物の製造方法については、従来公知の塗料の製造方法を用いればよく、上記の各物質を所定の比率で混合し、pH調整を行うといった方法でよい。
(塗料被覆金属材料の製造方法)
塗料被覆金属材料は、金属材料の表面に塗料組成物を塗布し(塗布工程)、塗料組成物を塗布した金属材料2を常温乾燥あるいは焼付け処理して塗料組成物を硬化させ、皮膜を形成させる(乾燥工程)ことにより製造することができる。
塗布工程における塗料の金属材料への塗布方法としては、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター、カーテンフローコーター、ローラーカーテンコーター、静電塗布機、ブレードコーター、ダイコーター等いずれの方法で行ってもよいが、塗布量が均一になるとともに作業が簡便なロールコーターにより塗布するのが好ましい。
塗布工程における塗布は、金属材料2の表面に塗布した塗料を乾燥処理によって皮膜とした場合に、膜厚が0.2μm以上20μm以下の範囲で形成されるように塗料の塗布量を調整するのが好ましい。膜厚をこの範囲にすることにより本発明の所望する諸効果を奏することができるだけでなく、コイル状の金属材料2にロールコーターを使用して連続的に皮膜を形成できるため、生産性に優れ、コスト的にも望ましい。なお、塗布量の調整は、例えば、ロールコーターを用いる場合、金属材料2の搬送速度、ロールコーターの回転方向と回転速度等を適切に設定することで行うことができる。
膜厚が0.2μm未満となると、皮膜3によって奏される効果を十分に得ることができないおそれがある。特に、未塗装部が生じることがあり、外観が劣るおそれがある。また、ロールコーターを用いる場合、ピックアップロールとアプリケーターロールの間の圧力を高くする必要があり、ロールの摩耗が激しくなるため好ましくない。
一方、膜厚が20μmを超えても、さらなる効果の向上は得られ難い。また、ロールコーターのピックアップロールによる塗料の持ち上げが不十分となり膜厚のバラツキが著しく大きくなり、外観が劣ることになるため好ましくない。なお、膜厚は、好ましくは3μm以上18μm以下であり、より好ましくは3μm以上10μm以下である。
乾燥工程における焼付け処理方法としては、前記のように塗布した塗料であれば、例えば、160℃以上260℃以下の焼付け処理温度で焼付け処理を行うのが好ましい。このような焼付け処理温度で焼付けを行うと、好適に皮膜を形成させることができる。焼付け処理温度が160℃未満であると、皮膜形成が不十分となり、かつ、金属材料との密着性も不十分となるため加工性が低下する可能性がある。一方、焼付け温度が260℃を超えると、塗料の劣化や分解が始まるため加工性および密着性が低下する可能性がある。
そして、前記した処理温度であれば、20秒から50秒程度の短時間焼付け処理にて、皮膜を形成させることができる。
なお、詳細には、第2実施形態に係る塗料組成物および第3実施形態に係る塗料組成物を用いる場合、乾燥工程では前記の焼付け処理を行うのが好ましいが、第1実施形態に係る塗料組成物を用いる場合、乾燥工程では前記の焼付け処理を行ってもよいし、常温乾燥(数時間〜数日)を行ってもよい。
そして、塗布工程の前に、金属材料の表面を脱脂してもよい。金属材料の表面の脱脂は、例えば金属材料の表面に酸あるいはアルカリ水溶液をスプレーした後に水洗することで行うことができる。また、塗布工程の前に、上記した下地皮膜を形成させてもよい。下地皮膜の形成方法は、例えば、クロメート処理等の従来公知の方法でよい。
以上に説明した本発明に係る塗料組成物を用いた塗料被覆金属材料は、所定の形状に成形してマフラーなどの自動車の排気系部材や、ガスコンロ、電子レンジ、オーブンなどの家電製品の耐熱構造部材として使用することができる。
なお、本発明の内容は以上に説明した内容により限定されるものではない。
例えば、本発明に係る塗料被覆金属材料は、皮膜3に着色顔料を含ませることによって、当該皮膜3に所望の色を付けることができる。着色顔料は、400℃以上の高温でも分解や変色しない耐熱性の高い無機顔料が好ましく、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、チタンブラック、銅・クロムブラック、コバルトブラック、マンガン・鉄ブラック、銅・マンガン・鉄ブラック、マンガン・ビスマスブラック等があり、これらの中から選択される1種類を用いることもできるし、2種類以上を混合して用いることもできる。
また、本発明に係る塗料被覆金属材料は、皮膜の表面に、アクリル樹脂、エチレン樹脂、エポキシ樹脂などの水性樹脂を塗布して形成させたトップコート皮膜を備えてもよい。このようにすれば、高い耐熱性を保ちながら、加工性、潤滑性、耐指紋性、耐ブロッキング性等の機能を付与することができる。
また、図1〜4では、塗料被覆金属材料1A〜1Dは、板状を呈する金属材料1の片面にのみ皮膜3等が形成されているが、金属材料1の両面に皮膜2等が形成されていてもよい。
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明に係る塗料組成物およびこれを用いた塗料被覆金属材料について説明する。
[第1実施例]
はじめに、水性樹脂と、ケイ酸塩化合物と、非イオン性界面活性剤と、を含む塗料組成物を用いた塗料被覆金属材料(第1実施形態に対応する塗料被覆金属材料)について具体的に説明する。
<供試材の製造方法>
まず、金属材料として、板厚0.3mmのステンレス鋼板(JIS G4303)およびアルミニウム板(JIS H4000)を使用した。そして、下地処理として、ステンレス鋼板には、酸洗した後、塗布型クロメート処理を施し、アルミニウム板には、アルカリ脱脂した後、リン酸クロメート処理を施し、ともにCr換算で20mg/mのクロメート皮膜(下地皮膜)を当該板の両面に形成させた。
次に、表1に示す種類の水性樹脂(有機高分子)、各種の金属イオンを含有するケイ酸塩化合物、および非イオン性界面活性剤を所定の含有量で、表1に示すpHとなるように混合し、各塗料を調製した。
調製した塗料を、バーコーターを用いて金属材料に塗布し(約25000mg/m)、焼付温度200℃で30秒間焼付処理を行って皮膜(片面約5μm)を両面に形成させ、No.1〜19に係る塗料被覆金属材料(供試材)を作製した。
作製したNo.1〜19に係る供試材の耐熱性および安全性を次のように評価した。
<耐熱性の評価>
耐熱性の評価は、作製した供試材を大気中で400℃、24時間の加熱を行い、加熱前と比較して皮膜が消失したものを不良(×)、皮膜は残存するが皮膜剥離したものをやや不良(△)、皮膜は残存するが変色したものを良好(○)、皮膜が残存し、かつ、変色しないものを優良(◎)とした。
<安全性の評価>
安全性の評価は、耐熱性の評価中に、アクリロニトリル、亜硫酸ガス、塩化水素、塩素、クロルメチル、シアン化水素、二硫化炭素、フッ素、ブロムメチル、ベンゼン、ホスゲン、硫化水素のいずれかの毒性の強いガスが発生すると想定されるものは不良(×)、発生しないと想定されるものは良好(〇)とした。
なお、上記の毒性の強いガスの発生有無については、塗料組成による理論上の化学反応から判断した。
作製した供試材の耐熱性および安全性の結果を表1に示す。なお、表中の下線は本発明の要件を満たさないことを示す。
Figure 0006222893
No.1〜10に係る供試材は、本発明の要件を満たしていたので、耐熱性が良好あるいは優良となった。また、これらの供試材は、耐熱性を評価する際にフッ素ガスなどの毒性の強いガスを発生するとは想定されず、安全性にも優れていた。
これに対し、No.11〜19に係る供試材は、本発明の要件のいずれかを満たしていないので、耐熱性または安全性が不良となった。
具体的には、No.11に係る供試材は、水性樹脂の種類が本発明の要件を満たさないため耐熱性が不良となった。
No.12に係る供試材は、水性樹脂の種類が本発明の要件を満たさないため、塗料調製中に塗料がゲル化して、金属材料に塗装することができなかった。
No.13に係る供試材は、ケイ酸塩化合物にアルカリ金属イオンが含まれていないため、耐熱性が不良となった。
No.14、15に係る供試材は、ケイ酸塩化合物100重量部に対する水性樹脂の比率が本発明の要件を満たさないため、皮膜が成膜しないか、耐熱性が不良となった。
No.16に係る供試材は、塗料のpHが7未満であるため、塗料がゲル化して金属材料に塗装することができなかった。
No.17、18に係る供試材は、水性樹脂の種類および比率が本発明の要件を満たさなかったため、安全性が不良となった。
No.19に係る供試材は、水性樹脂の種類が本発明の要件を満たさないため、皮膜は残存するが皮膜剥離してしまい、耐熱性がやや不良となった。
なお、No.17に係る供試材は、特許文献1に記載された発明に相当するものであり、No.18に係る供試材は、特許文献2に記載された発明に相当するものである。
[第2実施例]
次に、水性樹脂と、ケイ酸塩化合物と、非イオン性界面活性剤と、を含むとともに、シランカップリング剤またはコロイダルシリカをさらに含む塗料組成物(第2実施形態に対応する塗料組成物)について具体的に説明する。
この第2実施例では、本発明の望ましい形態について調べるため、塗料の安定性(貯蔵安定性)について調べた。なお、当該特性は、本発明においてあくまで望ましい特性に過ぎないため、当該特性が優れない場合でも、第1実施例の耐熱性および安全性を満たしているものは、本発明の最低限の目的は達するものである。
<供試材の製造方法>
表2に示す種類の各種物質を所定の含有量で、表2に示すpHとなるように混合し、各塗料を調製することにより、No.20〜33に係る塗料組成物(供試材)を作製した。
<貯蔵安定性の評価>
貯蔵安定性の評価は、調製した塗料を40℃で24時間保持した後の粘度が10000mPa・sを超えるものは不良(○)、粘度が10000mPa・s以下であれば良好(◎)とした。
作製した供試材の貯蔵安定性を表2に示す。
Figure 0006222893
No.20〜26に係る供試材は、本発明の好ましい要件(必須の要件ではない)を満たしているので、いずれも貯蔵安定性が良好であった。
これに対し、No.27〜33に係る供試材は、本発明の好ましい要件のいずれかを満たしていないので、貯蔵安定性が不良となった。
具体的には、No.27に係る供試材は、シランカップリング剤の官能基の種類がビニル基であったため、貯蔵安定性が不良という結果となった。
No.28、29に係る供試材は、シランカップリング剤の添加量が好ましい範囲を満たしていないので、貯蔵安定性が不良となった。
No.30〜33に係る供試材は、コロイダルシリカの粒径もしくは添加量が好ましい範囲を満たしていないので、貯蔵安定性が不良となった。
[第3実施例]
次に、水性樹脂と、ケイ酸塩化合物と、非イオン性界面活性剤と、を含むとともに、樹脂ビーズをさらに含む塗料組成物を用いた塗料被覆金属材料(第3実施形態に対応する塗料被覆金属材料)について具体的に説明する。
この第3実施例では、本発明のさらに望ましい形態について調べるため、耐熱光沢性について調べた。なお、当該特性は、本発明においてあくまで望ましい特性にすぎないため、当該特性が優れない場合でも、第1実施例の耐熱性および安全性を満たしているものは、本発明の最低限の目的は達するものである。
<供試材の製造方法>
まず、前記した第1実施例と同じ条件で、金属材料(ステンレス鋼板、アルミニウム板)の両面にクロメート皮膜(下地皮膜)を形成させた。
次に、表3に示す種類の各種物質を所定の含有量で、表3に示すpHとなるように混合し、各塗料を調製した。
調製した塗料を、第1実施例と同じ条件で金属材料に塗布し、皮膜を両面に形成させ、No.34〜41に係る塗料被覆金属材料(供試材)を作製した。
なお、使用した樹脂ビーズは、アクリル系微粒子であった。
<耐熱光沢性の評価>
耐熱光沢性の評価は、作製した供試材を大気雰囲気中で300℃、1時間加熱を行い、加熱前と加熱後の板の明度Lを色差計で測定し、加熱前後の明度Lの差ΔLがΔL<−3、あるいは、3<ΔLのものを不良(○)、−3≦ΔL≦3のものを良好(◎)とした。
作製した供試材の耐熱光沢性を表3に示す。
Figure 0006222893
No.34〜37に係る供試材は、本発明の好ましい要件(必須の要件ではない)を満たしているので、いずれも耐熱光沢性が良好であった。
これに対し、No.38〜41に係る供試材は、本発明の好ましい要件を満たしていないので、耐熱光沢性が不良となった。
具体的には、No.38〜41に係る供試材は、樹脂ビーズの粒径あるいは添加量が本発明の好ましい範囲を満たさないため、耐熱光沢性が不良となった。
以上、本発明に係る塗料組成物およびこれを用いた塗料被覆金属材料について、発明を実施する形態および実施例により詳細に説明したが、本発明の趣旨はこれらの説明に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。
1 塗料被覆金属材料
1A 第1実施形態に係る塗料被覆金属材料
1B 第2実施形態に係る塗料被覆金属材料
1C 第3実施形態に係る塗料被覆金属材料
1D 第1〜3実施形態の変形例に係る塗料被覆金属材料
2 金属材料
3 皮膜
4 コロイダルシリカ
5 樹脂ビーズ
6 下地皮膜

Claims (4)

  1. カルボキシル基を含む水性樹脂と、アルカリ金属イオンを含むケイ酸塩化合物と、非イオン性界面活性剤と、を含み、
    前記カルボキシル基を含む水性樹脂は、アクリル酸高分子、カルボキシル基を含むエチレン樹脂、エチレンアクリル酸共重合高分子、エチレンメタクリル酸系共重合高分子のいずれか1種類であって、
    前記アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウムのいずれか1種類であって、
    前記水性樹脂の含有比率は、固形分換算で前記ケイ酸塩化合物100質量部に対し、80質量部以上1000質量部以下であって、
    pH7.0以上であり、
    さらに、エポキシ基を含むシランカップリング剤を固形分換算で0.05質量%以上5.0質量%以下含み、
    平均粒径が0.3μm以上30.0μm以下のアクリル系微粒子を固形分換算で5.0質量%以上30.0質量%未満含むことを特徴とする塗料組成物。
  2. 平均粒径が1nm以上100nm以下のコロイダルシリカを固形分換算で5.0質量%以上12.0質量%以下、を含むことを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
  3. 金属材料と、当該金属材料の表面に形成され請求項1または請求項2に記載の塗料組成物からなる皮膜と、を備えることを特徴とする塗料被覆金属材料。
  4. 前記金属材料と前記皮膜の間に下地皮膜が形成されたものであることを特徴とする請求項3に記載の塗料被覆金属材料。
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