JP6221576B2 - 水圧転写フィルム用活性剤組成物、及びこれを用いた加飾成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
2.さらにイソホロンを含む上記1に記載の活性剤組成物。
3.前記水圧転写フィルムが、水溶性フィルム上に、アクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなる樹脂層、並びに意匠層を少なくとも有するものである上記1又は2に記載の活性剤組成物。
4.下記の工程(a)〜(c)を順に有する加飾成形品の製造方法。
工程(a)水溶性フィルム上に意匠層を少なくとも有する水圧転写フィルムを、該水溶性フィルム側が水面に向くように水面に浮遊させる前又は後に、該意匠層側からブチルカルビトールアセテートを70質量%以上含む活性剤組成物を塗布する活性剤組成物塗布工程
工程(b)該工程(a)を経た水圧転写フィルム上に被転写体を押圧し、水圧によって該意匠層側の面と被転写体の被転写面とを密着させる工程
工程(c)該被転写体の被転写面に密着した水溶性フィルムを除去する脱膜工程
水圧転写フィルム用活性剤組成物は、水圧転写フィルムにおける、被転写体に転写される意匠層の少なくとも一部を溶解又は膨潤して軟化(活性化)しうる組成物であり、また後述する被転写体の表面を溶解させる機能を有する組成物である。本発明の水圧転写フィルム用活性剤組成物は、ブチルカルビトールアセテート(沸点247℃)を70質量%以上含むものである。このブチルカルビトールアセテートの含有量は、75〜95質量%であることが好ましい。ブチルカルビトールアセテートの含有量が上記範囲内であると、様々な水圧転写フィルムに対応し、かつ該転写フィルムの優れた付きまわり性が得られ、結果として優れた外観を有する加飾成形品が得られる。
アルコール類としては、エチルアルコール(沸点78℃)、n−プロピルアルコール(沸点97℃)、イソプロピルアルコール(沸点82℃)、2−ブチルアルコール(沸点99℃)、n−ブチルアルコール(沸点117℃)、イソブチルアルコール(沸点108℃)などが好ましく挙げられる。
エステル類としては、酢酸エチル(沸点77℃)、酢酸プロピル(沸点102℃)、酢酸ブチル(沸点125℃)、酢酸イソブチル(沸点118℃)、酢酸sec−ブチル(沸点112℃)、酢酸tert−ブチル(沸点98℃)、シュウ酸ジブチル(沸点246℃)などが好ましく挙げられる。
アセチレングリコール類としては、メトキシブチルアセテート(沸点172℃)、エチルカルビトールアセテート(沸点217℃)などが好ましく挙げられる。
エーテル類としては、メチルセロソルブ(沸点124℃)、ブチルセロソルブ(沸点171℃)、イソアミルセロソルブ(沸点181℃)などが好ましく挙げられる。
ケトン類としては、メチルエチルケトン(沸点80℃)、メチルイソブチルケトン(沸点116℃)、ジブチルケトン(沸点187℃)、及びジイソブチルケトン(沸点168℃)などが好ましく挙げられる。
樹脂としては、アクリレート系単量体の単独又は共重合体などの熱可塑性樹脂や、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、フタル酸アルキッド樹脂、フタル酸ジアリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂などが好ましく挙げられ、なかでも熱硬化性樹脂が好ましい。
また、可塑剤は樹脂層や意匠層を軟化させる機能を有する剤であり、例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソオクチルなどのフタル酸エステルが好ましく挙げられる。
本発明の活性剤組成物に含まれるブチルカルビトールアセテート、さらには所望により用いられるイソホロンは、いずれも溶解性が高く、かつ沸点が高く揮発しにくい化合物であるため、活性剤組成物中に例えば60質量%以上といった高濃度で含まれる場合、水圧転写フィルムの樹脂層や意匠層を形成する樹脂の種類によっては、意匠層が侵食されることで意匠性が低下したり、作業性が低下することがある。このような理由から、水圧転写フィルムの活性化に用いられる活性剤組成物において、ブチルカルビトールアセテートやイソホロンを高濃度で用いることは一般的とはいえなかった。
本発明の活性剤組成物が好適に用いられる水圧転写フィルムとしては、水溶性フィルムを基材とし、該水溶性フィルム上に意匠層を少なくとも有する構成のものであれば特に制限はなく、該水溶性フィルム上に、アクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなる樹脂層、並びに意匠層を少なくとも有する構成のものが好ましく挙げられる。このような構成の水圧転写フィルムとして、水圧転写フィルムの樹脂層が低艶部分と高艶部分とを有し、該低艶部分と高艶部分が樹脂層の水溶性フィルム側の端面内に少なくとも存在し、該高艶部分がアクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなるものが好ましく挙げられる(以後、水圧転写フィルムAと称する場合がある。)。以下、水圧転写フィルムAについて、図1〜4を用いて説明する。
水圧転写フィルムAを用いて被転写体に加飾を施すと、水溶性フィルム1が除去されることで、樹脂層2の端面Sに存在する低艶部分2aと高艶部分2bとが露出してグロスマット(艶差)意匠が発現する。これによって低艶部分2aが形成された領域が凹部に見え、加飾成形品に立体感のある意匠を付与することができる。
水溶性フィルム1を構成する樹脂としては、例えばポリビニルアルコール樹脂、デキストリン、ゼラチン、にかわ、カゼイン、セラック、アラビアゴム、澱粉、蛋白質、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸との共重合体、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどの各種水溶性ポリマーが挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が混合されて用いられてもよい。なお、水溶性フィルム1には、マンナン、キサンタンガム、グアーガムなどのゴム成分が添加されていてもよい。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ポリビニルアルコールの重合度、ケン化度、及び澱粉やゴムなどの添加剤の配合量などを変えることにより、水溶性フィルムに対して転写用の印刷層を形成する際に必要な機械的強度、取り扱い中の耐湿性、水面に浮かべてからの吸水による柔軟化の速度、水中での延展又は拡散に要する時間、転写工程での変形のし易さなどを適宜調節することができる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは水溶性ではあるが、水に溶解する前段階では水に膨潤して軟化しつつもフィルムとして存続することが好ましい。フィルムとして存続している状態にあるときに水圧転写を行なうことにより、水圧転写時の転写用の各層の過度の流動、変形を防止することができるからである。
低艶部分2aにおける低艶領域は視覚的に凹部として認識され、高艶部分2bにおける高艶領域は凸部として認識されるため、全体として、この低艶領域及び高艶領域によって視覚的に凹凸模様として認識される。
また、高艶部分2bを形成する樹脂組成物には、アクリルポリマーポリオールに加えて、さらにイソシアネートを含有させることもできる。イソシアネートはアクリルポリマーポリオールの硬化剤であって、イソシアネートを含有させることで、当該樹脂組成物の少なくとも一部を硬化状態又は半硬化状態とする。このことにより、加飾成形品の製造時における水圧転写フィルムを水面に浮遊させる工程で、水圧転写フィルムが溶解ないしは膨潤することで発生しやすくなる過度の展伸を抑制することができる。
このことから高艶部分2bは、図1に示すように、水溶性フィルム1上に、パターン状に形成された低艶部分2aと、該低艶部分2aを被覆するとともに水溶性フィルム1上の低艶部分2aが設けられていない領域をも被覆するように形成された高艶部分2bとからなる樹脂層2を有するほうが、水圧転写フィルム全体の過度の展伸を抑制することができる点で好ましい。
ブロックイソシアネートを使用することにより、高艶部分2bにより高い成形性を付与することができ、所望形状に成形した後に成形品を加熱処理し、イソシアネート基を再生、ポリオールと反応、硬化することにより、低艶部分2a、意匠層3と良好な密着性を発現できる。
これらのうち、特にウレタン樹脂はアクリルポリマーポリオールとの相溶性が高く、好ましい。
また、上記高艶部分2bには、本発明の効果を阻害しない範囲内で着色剤を添加してもよい。着色剤としては、後述する意匠層で用いられるものと同様のものを用いることができる。
また、ウレタン樹脂としては、ポリオール成分、ポリアミン成分及びイソシアネートの組合せより合成されるウレタンウレア樹脂が好ましく用いられ、ポリオール成分やイソシアネートとしては、上述したものを用いることができる。
低艶部分2aは、例えば後述する意匠層3によって木目模様を表現しようとする場合には、木目の導管部分に同調させることで、艶差により導管部分が視覚的に凹部となった模様が得られる。
低艶部分2a中の艶消し剤の含有量は、グロスマット効果と成形加工性とのバランスの観点から、0.5〜50質量%であると好ましく、10〜50質量%であるとより好ましく、25〜50質量%であるとさらに好ましい。
樹脂組成物Iは、艶消し剤を積極的に使用することで、高艶部分と低艶部分とが明確に分かれて、より艶差のコントラストの強い意匠が得られる。一方、樹脂組成物IIは、アクリルポリマーポリオール以外の樹脂を含み、かつ艶消し剤の含有量を少なくすることで、樹脂組成物Iでは表現できない半透明感を有する意匠を表現することが可能となる。また、艶消し剤の含有量を少なくすることにより、とりわけ艶消し剤を用いないことにより、転写加工性が向上するという利点も得られる。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルーなどの無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルーなどの有機顔料又は染料、さらには金属顔料、真珠光沢(パール)顔料、蓄光性顔料などの光輝性顔料などが用いられる。
プライマー層4を形成する樹脂としては、低艶部分2aに含まれるバインダー樹脂と同様のものが挙げられ、例えば高艶部分2bと同様に、溶媒に溶解した塗工液を公知の方法で塗布するなどして形成することができる。
工程(C)における意匠層3の形成方法は、工程(B)における塗布方法や印刷方法と同様である。
図3に示す水圧転写フィルムAは、例えば、水溶性フィルム1の上に低艶部分2aをパターン状に形成する工程(A)と、水溶性フィルム1上の低艶部分2aが設けられていない領域の少なくとも一部を被覆するように高艶部分2bを形成して樹脂層2とする工程(B)と、必要に応じて樹脂層2上に意匠層3を形成する工程(C)により製造することができる。また、上記工程(B)と工程(C)との間に、樹脂層2上にプライマー層を形成する工程を設けることで、図4に示す水圧転写フィルムAを製造することができる。
本発明の活性剤組成物が好適に用いられる水圧転写フィルムとしては、水溶性フィルム上に意匠層と樹脂層とを順に有しており、該樹脂層がアクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなるものが好ましく挙げられる(以後、水圧転写フィルムBと称する場合がある。)。以下、水圧転写フィルムBについて、図5を用いて説明する。
また、図5に示すように、水圧転写フィルムBは、さらにプライマー層4を有していてもよく、プライマー層4を採用することにより、さらに高い輝度を得ることができる。該プライマー層4は、水溶性フィルム1と意匠層3の間に位置することが好ましい。
水圧転写フィルムBの樹脂層2は、アクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなる層であり、図5に示すように、意匠層3と接触していてもよいし、意匠層3と樹脂層2との間に他の層が存在していてもよい。樹脂層2として、このような構成とすることで、活性剤組成物に含まれる溶剤から意匠層3を保護することができるので、とりわけ意匠層3を輝度の高い層とする場合には、高い光輝性を得るという効果が顕著となり、加飾成形品に優れた意匠を付与することができる。
樹脂層2は、上述のアクリルポリマーポリオール、必要に応じて添加されるイソシアネート、ウレタン樹脂、及びその他の樹脂を溶媒に溶解した塗布液を、公知の方法で塗布し、必要に応じて乾燥し、硬化して形成することができる。保護層3の厚さについては、通常、1〜25μm程度であり、好ましくは1〜10μmの範囲である。
また、その塗工方法についても、樹脂層2と同様の方法を用いることができ、例えば、溶媒に溶解した塗工液を公知の方法で塗布するなどして形成することができる。
プライマー層4の厚さとしては、通常、0.1〜10μm程度であり、好ましくは0.5〜2μmの範囲である。
工程(A)〜(C)において、各層は公知の塗布方法又は印刷方法によって形成したり、あるいは樹脂フィルムをラミネートすることにより形成することができる。当該塗布方法としては、グラビアコート、リバースコートなどが挙げられ、印刷方法としては、グラビア印刷などが挙げられる。
本発明の活性剤組成物が好適に用いられる水圧転写フィルムとしては、水溶性フィルム上に樹脂層と光輝性顔料を含む意匠層とを順に有しており、少なくとも該意匠層の樹脂層の側とは反対側の面に凹凸形状を有し、該樹脂層がアクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなるものが好ましく挙げられる(以後、水圧転写フィルムCと称する場合がある。)。以下、水圧転写フィルムCについて、図6を用いて説明する。
水圧転写フィルムCの樹脂層2は、水溶性フィルム1と後述する意匠層3との間に設けられ、アクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなる層である。樹脂層2を設けることにより、水圧転写フィルムCの製造時に凹凸形状5が良好に賦型しうる賦型性が得られ、また水圧転写時に意匠層3が伸展しすぎるのを抑制し、凹凸形状5に対応する凹凸感発現部を形成して凹凸感を保持することで、光輝性と高級感とを備える意匠性(以後、単に意匠性と称する場合がある。)が得られる。なお、凹凸形状5に対応する凹凸感発現部については、加飾成形品の製造方法についての説明において詳説する。
示差走査熱量計を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料を昇温速度10℃/分で測定した。軟化点より20℃以上低い温度でピークが観測される場合にはそのピークの温度を、また軟化点より20℃以上低い温度でピークが観測されずに段差が観測されるときは該段差部分の曲線の最大傾斜を示す接線と該段差の高温側のベースラインの延長線との交点の温度を、ガラス転移温度として読み取った。
また、凹凸形状5の幅は、10〜100μmが好ましく、より好ましくは20〜40μmである。凹凸形状5の幅が上記範囲内であることにより、優れた賦型性や意匠性が得られる。ここで、凹凸形状5の幅は、凸部自体の幅のことである。
また、凹凸形状5は、エンボス加工により好適に設けることができる。
公知の塗布方法としては、グラビアコート、リバースコートなどが挙げられ、公知の印刷方法としては、グラビア印刷などが挙げられる。
ここで用いられるエンボス版としては、上記の凹凸形状の深さ、周期幅(ピッチ)、及び幅を達成できる寸法を具備するものであれば特に制限はない。通常、エンボス版の凹凸形状の深さは、10〜80μm程度であり、好ましくは20〜60μm、より好ましくは30〜45μmである。
本発明の活性剤組成物が好適に用いられる水圧転写フィルムとしては、水溶性フィルム上に光輝性顔料を含む意匠層と樹脂層とを順に有しており、少なくとも該樹脂層の意匠層の側とは反対側の面に凹凸形状を有し、該樹脂層がアクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなるものが好ましく挙げられる(以後、水圧転写フィルムDと称する場合がある。)。以下、水圧転写フィルムDについて、図7及び8を用いて説明する。
水圧転写フィルムDの意匠層3は、光輝性を発現し、水溶性フィルム1と樹脂層2との間に設けられる層であり、好ましくはバインダー樹脂と光輝性顔料を含む光輝性インキにより形成される層である。意匠層3を形成する光輝性インキは、上記の水圧転写フィルムCの意匠層3を形成する光輝性インキと同様のものが好ましく挙げられる。また、意匠層3の模様、厚さも、上記の水圧転写フィルムCの意匠層3と同様である。
公知の塗布方法としては、グラビアコート、リバースコートなどが挙げられ、公知の印刷方法としては、グラビア印刷などが挙げられる。
本発明の加飾成形品の製造方法は、工程(a)水溶性フィルム上に意匠層を少なくとも有する水圧転写フィルムを、該水溶性フィルム側が水面に向くように水面に浮遊させる前又は後に、該意匠層側からブチルカルビトールアセテートを70質量%以上含む活性剤組成物を塗布する活性剤組成物塗布工程、工程(b)該工程(a)を経た水圧転写フィルム上に被転写体を押圧し、水圧によって該意匠層側の面と被転写体の被転写面とを密着させる工程、及び工程(c)該被転写体の被転写面に密着した水溶性フィルムを除去する脱膜工程を順に有することを特徴とするものである。また、必要に応じて工程(d)被転写体の被転写面上にトップコート層を形成する工程を有してもよい。
水圧転写フィルムを浮かべ水圧を印加するための水は、水溶性フィルムの種類などに応じ、適宣水温を調整するのがよく、好ましくは25〜50℃程度、より好ましくは25〜35℃である。
また、本発明の水圧転写フィルムと被転写体との転写時間は、20〜180秒程度が好ましく、より好ましくは30〜120秒程度である。ここで、転写時間とは、本発明の転写フィルムを水に浮遊させてから、被転写体への転写が完了するまでの時間のことである。
脱膜工程(c)は、被転写体の被転写面に密着した水溶性フィルムを除去する工程である。
水溶性フィルムの除去は、例えば、水を用いてシャワー洗浄することで行うことができる。この工程(c)により、被転写面に付着している水溶性フィルムは除去される。なお、シャワー洗浄の条件は、水溶性フィルムを形成する材料などにより異なるが、通常は水温15〜60℃程度、洗浄時間10秒〜5分程度が好ましい。そして、工程(c)の後、被転写体を十分乾燥し水分を蒸発させれば、被転写体の被転写面に転写された意匠層と樹脂層とによって、所望の意匠が付与された樹脂成形品が得られる。
本発明の加飾成形品の製造方法は、工程(c)の後、さらに所望により、転写された意匠層や樹脂層の上に、トップコート層を形成する工程(d)を有することができる。
工程(d)において、前記工程(c)にて被転写体の被転写面に転写された意匠層や樹脂層に対し、表面強度向上、表面保護、表面艶調整などのために、必要に応じてトップコート剤を塗布して、トップコート層を形成することができる。トップコート剤としては、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂など、具体的にはウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂などを含む樹脂組成物が好ましく挙げられる。
図9は、本発明の加飾成形品の製造方法により得られる加飾成形品の構成の一例を示す概略断面図であり、水圧転写フィルムCを用いた際の加飾成形品を示すものである。本発明の加飾成形品の製造方法により得られる加飾成形品20は、被転写体21、意匠層3、及び樹脂層2を順に有している。そして、意匠層3の凹凸形状5に対応する凹凸感発現部23を有することで、凹凸感が保持されており、これにより加飾成形品は光輝性と高級感とを備える意匠性を有するものとなっている。また、加飾成形品には、必要に応じてトップコート層22を設けることもできる。
〔付きまわり性の評価〕
実施例及び比較例で得られた加飾成形品について、その付きまわり性を、下記の基準で評価した。結果を第1表に示す。
○ :被転写体に対して絵柄を極めて良好に転写することができ、優れた意匠を有する加飾成形品が得られた。
△ :被転写体に対して絵柄を転写することができ、実用上問題ない程度に良好な意匠を有する加飾成形品が得られた。
× :被転写体に対して絵柄を転写できたものの、転写の際の伸びが不十分であることに起因して、加飾成形品の端部にしわが入った。
(水圧転写フィルムの作製)
水溶性フィルムとして、PVAフィルム(厚さ40μm)を用い、その片面の一部に、後述の木目柄の導管部と同調するパターンの厚さ1μmの低艶部分をグラビア印刷により形成した。低艶部分の形成には、バインダー樹脂である硝化綿とアルキッド樹脂との混合樹脂(硝化綿とアルキッド樹脂との質量比5:2)と、艶消し剤であるシリカ(体積平均粒径:5μm)とを質量比1:1で含むインキを使用した。次に、低艶部分上に、アクリルポリマーポリオール(重量平均分子量:30,000、水酸基価:80mgKOH/g)及びウレタンウレア樹脂(ガラス転移温度:40℃)の質量比80:20の混合樹脂を含む樹脂組成物を含むインキを塗布し、厚さ2μmの高艶部分を形成して、樹脂層を形成した。
次に、上記低艶部分の木目柄の導管部と同調するように、木目模様の意匠層をグラビア印刷により形成し、水圧転写フィルムを得た。意匠層は、バインダー樹脂として、硝化綿とアルキッド樹脂との混合樹脂(硝化綿とアルキッドの質量比5:2)を使用し、着色剤に弁柄及びカーボンブラックを所定の配合比率で使用した着色インキを用いた。
上述のようにして得た水圧転写フィルムの意匠層表面に、ブチルカルビトールアセテート100質量%の活性剤組成物を10g/m2塗布し、2分30秒静置した後、水溶性フィルム側が水面側を向くようにして2分間水面に浮遊させた後、水圧転写フィルム上に被転写体(直径35mm、長さ250mmの円柱形状の部材を被転写体として使用)を押圧し、水圧によって低艶部分及び高艶部分からなる樹脂層、及び意匠層を被転写体の被転写面に密着させる転写工程を経て、該被転写体の被転写面上より水溶性フィルムを除去する脱膜工程を行った。このようにして得られた加飾成形品は、最表面に低艶部分と高艶部分からなる意匠層が露出したものとなった。
実施例1において、活性剤組成物として第1表の組成のものを用いた以外は、実施例1と同様にして水圧転写フィルム及び加飾成形品を得た。得られた加飾成形品の付きまわり性の評価結果を第1表に示す。
実施例1において、活性剤組成物として下記の組成のものを用いた以外は、実施例1と同様にして水圧転写フィルム及び加飾成形品を得た。得られた加飾成形品の付きまわり性の評価結果を第1表に示す。
(活性剤組成物の組成)
ブチルカルビトールアセテート 60質量部
ブチルセロソルブ 15質量部
フタル酸系アルキッド樹脂 6質量部
マイクロシリカ(体質顔料) 2質量部
フタル酸ジブチル 17質量部
実施例1において、活性剤組成物として第1表の組成のものを用いた以外は、実施例1と同様にして水圧転写フィルム及び加飾成形品を得た。得られた加飾成形品の付きまわり性の評価結果を第1表に示す。
*2,イソブチルケトン100質量%の活性剤組成物を使用した。
*3,イソブタノール100質量%の活性剤組成物を使用した。
*4,エチルエトキシプロピオネート100質量%の活性剤組成物を使用した。
*5,ジブチルエーテル100質量%の活性剤組成物を使用した。
B 水圧転写フィルムB
C 水圧転写フィルムC
D 水圧転写フィルムD
1 水溶性フィルム
2 樹脂層
2a 低艶部分
2b 高艶部分
3 意匠層
4 プライマー層
5 凹凸形状
20 加飾成形品
21 被転写体
22 トップコート層
23 凹凸感発現部
Claims (11)
- ブチルカルビトールアセテートを70質量%以上含み、さらにイソホロンを含む水圧転写フィルム用活性剤組成物。
- ブチルカルビトールアセテートの含有量が75〜95質量%である請求項1に記載の活性剤組成物。
- 前記水圧転写フィルムが水溶性フィルム上に、アクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなる樹脂層、並びに意匠層を少なくとも有するものである請求項1又は2に記載の活性剤組成物。
- 前記水圧転写フィルムの樹脂層が低艶部分と高艶部分とを有し、該低艶部分と高艶部分が樹脂層の水溶性フィルム側の端面内に少なくとも存在し、該高艶部分がアクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなるものである請求項3に記載の活性剤組成物。
- 前記水圧転写フィルムが水溶性フィルム上に意匠層と樹脂層とを順に有しており、該樹脂層がアクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなるものである請求項3に記載の活性剤組成物。
- 前記意匠層が光輝性顔料を含む層である請求項5に記載の活性剤組成物。
- 前記水圧転写フィルムが水溶性フィルム上に樹脂層と光輝性顔料を含む意匠層とを順に有しており、少なくとも該意匠層の樹脂層の側とは反対側の面に凹凸形状を有し、該樹脂層がアクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなるものである請求項3に記載の活性剤組成物。
- 前記水圧転写フィルムが水溶性フィルム上に光輝性顔料を含む意匠層と樹脂層とを順に有しており、少なくとも該樹脂層の意匠層の側とは反対側の面に凹凸形状を有し、該樹脂層がアクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなるものである請求項3に記載の活性剤組成物。
- 下記の工程(a)〜(c)を順に有する加飾成形品の製造方法。
工程(a)水溶性フィルム上に意匠層を少なくとも有する水圧転写フィルムを、該水溶性フィルム側が水面に向くように水面に浮遊させる前又は後に、該意匠層側からブチルカルビトールアセテートを70質量%以上含み、さらにイソホロンを含む活性剤組成物を塗布する活性剤組成物塗布工程
工程(b)該工程(a)を経た水圧転写フィルム上に被転写体を押圧し、水圧によって該意匠層側の面と被転写体の被転写面とを密着させる工程
工程(c)該被転写体の被転写面に密着した水溶性フィルムを除去する脱膜工程 - 前記水圧転写フィルムが、アクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなるものである樹脂層、並びに意匠層を少なくとも有するものである請求項9に記載の加飾成形品の製造方法。
- 下記の工程(a)〜(c)を順に有する加飾成形品の製造方法。
工程(a)水圧転写フィルムが、水溶性フィルム上にアクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなる樹脂層、並びに意匠層を少なくとも有するものであり、該樹脂層が低艶部分と高艶部分とを有し、該低艶部分と高艶部分が樹脂層の水溶性フィルム側の端面内に少なくとも存在し、該高艶部分がアクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなるものであり、
該水圧転写フィルムを、該水溶性フィルム側が水面に向くように水面に浮遊させる前又は後に、該意匠層側からブチルカルビトールアセテートを70質量%以上含む活性剤組成物を塗布する活性剤組成物塗布工程
工程(b)該工程(a)を経た水圧転写フィルム上に被転写体を押圧し、水圧によって該意匠層側の面と被転写体の被転写面とを密着させる工程
工程(c)該被転写体の被転写面に密着した水溶性フィルムを除去する脱膜工程
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