JP6217460B2 - 非水二次電池電極用バインダ樹脂、非水二次電池電極用バインダ樹脂組成物、非水二次電池電極用スラリー組成物、非水二次電池用電極、および非水二次電池 - Google Patents
非水二次電池電極用バインダ樹脂、非水二次電池電極用バインダ樹脂組成物、非水二次電池電極用スラリー組成物、非水二次電池用電極、および非水二次電池 Download PDFInfo
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Description
一般に、リチウムイオン二次電池用の電極としては、集電体と、該集電体上に設けられた合剤層とを備えるものが用いられており、合剤層には活物質などがバインダ樹脂によって保持されている。かかる電極は、通常、以下のようにして製造される。
すなわち、バインダ樹脂、活物質、溶媒、および必要に応じて導電助剤等を混練して、非水二次電池電極用スラリー組成物(以下、「電極用スラリー」ともいう。)を調製する。この電極用スラリーを転写ロール等で集電体の片面又は両面に塗工し、溶媒を乾燥除去して合剤層を形成し、その後、必要に応じてロールプレス機等で圧縮成形して電極を得る。溶媒としては、活物質や導電助剤等を分散し、バインダ樹脂を溶解するものが用いられる。
そのため最近では、有機溶媒を水へ置き換える流れがあり、例えば負極用のバインダ樹脂としてスチレン−ブタジエンゴム(SBR)ラテックス等の水溶性のバインダ樹脂や、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)が用いられている。
そこで、水溶性のバインダ樹脂を粉末状で提供することが望まれているが、ラテックス系の樹脂はガラス転移温度が低い組成であることが多い。そのため、一旦粉末化すると高分子鎖が絡み、再度水に分散しにくくなるという問題があり、水溶性のバインダ樹脂を粉末状で供給することは困難であった。
そのため、NMPにPVDF粉を溶解して電極用スラリーを調製するように、電極作製時に、水に溶解または分散して使用することができる粉末状のバインダ樹脂が求められている。
そのため、安定品質で供給可能な非天然物で水溶性のバインダ樹脂が望まれる。
加えて、バインダ樹脂には、電池に高い電池性能を付与できる性能を併せ持つことも要求される。
例えば特許文献1には、バインダ樹脂として、ポリN−ビニルアセトアミドと、エチレンオキサイド(EO)およびプロピレンオキサイド(PO)の共重合体とを含む樹脂成分を含む電極が開示されている。特許文献1によれば、このバインダ樹脂を用いることで、結着性、低温から室温環境下での電池特性、リチウムイオンの伝導性に優れるとしている。
しかし、特許文献1に記載のバインダ樹脂は、EO鎖あるいはPO鎖が電解液組成に類似した分子構造のため、EOおよびPOの共重合体が電解液へ溶出する場合があり、電池性能へ悪影響を及ぼすことが懸念されていた。
[1] 下記一般式(1)で表される構造単位(A)と、下記一般式(2)で表される構造単位(B)と、下記一般式(3)で表される構造単位(C)とを少なくとも有する共重合体を含有する非水二次電池電極用バインダ樹脂であって、前記共重合体を構成する全ての単位の合計を100質量%としたときに、前記構造単位(A)の含有率が20〜99.8質量%であり、前記構造単位(B)の含有率が0.1〜50質量%であり、前記構造単位(C)の含有率が0.1〜50質量%である、非水二次電池電極用バインダ樹脂。
[3] [1]に記載の非水二次電池電極用バインダ樹脂、または[2]に記載の非水二次電池電極用バインダ樹脂組成物と、活物質と、溶媒とを含有する、非水二次電池電極用スラリー組成物。
[4] 集電体と、該集電体上に設けられた合剤層とを備え、前記合剤層が、[3]に記載の非水二次電池電極用スラリー組成物を集電体に塗工し、乾燥させて得られるものである、非水二次電池用電極。
[5] [4]に記載の非水二次電池用電極を備える、非水二次電池。
なお、本明細書において「水溶性」とは、バインダ樹脂が水に溶解することを意味し、バインダ樹脂の全てが水に溶解することはもちろんのこと、一部が水に溶解する場合でも、水溶性とみなす。
また、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリルとメタクリルの総称であり、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称であり、「(メタ)アリル」は、アリルとメタリルの総称である。
本発明の非水二次電池電極用バインダ樹脂(以下、単に「バインダ樹脂」ともいう。)は、後述する構造単位(A)と、構造単位(B)と、構造単位(C)とを少なくとも有する共重合体(以下、「共重合体(I)」という。)を含有する。
(構造単位(A))
構造単位(A)は下記一般式(1)で表される構造単位である。
炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基 、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等のアルキル基などが挙げられる。炭化水素基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。
得られる共重合体(I)の水溶性を高める観点から、R1およびR2が炭化水素基である場合は炭素数が少ない方が好ましく、R1およびR2としてはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。共重合体(I)の水溶性がより高まる点で、R1およびR2がそれぞれ水素原子であるものが特に好ましい。
構造単位(B)は下記一般式(2)で表される構造単位である。
炭化水素基としては、構造単位(A)の説明において先に例示した炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。
得られる共重合体(I)の水溶性を高める観点から、R3が炭化水素基である場合は炭素数が少ない方が好ましく、R3としては水素原子または炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。共重合体(I)の水溶性がより高まる点で、R3が水素原子であるものが特に好ましい。
なお、詳しくは後述するが、構造単位(B)は、単量体(a)と構造単位(C)の由来源となる単量体とを共重合した後に、得られた共重合体を加水分解することでも形成できる。
構造単位(C)は下記一般式(3)で表される構造単位である。
二価の置換基としては、直鎖状あるいは分岐状の二価の炭化水素基や、芳香環、脂環の任意の炭素原子から水素を2つ除いた二価の置換基などが挙げられ、それらは単一でも他の置換基と結合していてもよく、その骨格あるいは置換基にヘテロ原子を含んでもよい。具体的にはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の直鎖状あるいは分岐状の二価の炭化水素基や、ベンゼン環、ナフタレン環、チオフェン環等の芳香環、シクロヘキサン等の脂環の任意の炭素原子から水素を2つ除いた二価の置換基が挙げられる。
−(R6O)−で表される構造としては炭素数2〜4のアルキレンオキサイド単位が好ましく、具体的にはエチレンオキサイド単位、プロピレンオキサイド単位が好ましいが、任意の炭化水素基を有するアルキレンオキサイド単位であれば特に限定されない。
R7は水素原子または一価の置換基である。一価の置換基としては、直鎖状あるいは分岐状の一価の炭化水素基や、芳香環、脂環の任意の炭素原子から水素を1つ除いた一価の置換基などが挙げられ、それらは単一でも他の置換基と結合していてもよく、その骨格あるいは置換基にヘテロ原子を含んでもよい。具体的には炭素数1〜20のアルキル基等の直鎖状あるいは分岐状の一価の炭化水素基や、ベンゼン環、ナフタレン環、チオフェン環等の芳香環、シクロヘキサン等の脂環の任意の炭素原子から水素を1つ除いた一価の置換基が挙げられる。
X1の形態としては、単独構造単位の繰返しでもよいし、2つ以上の構造単位の繰返しでもよい。また、X1の形態が2つ以上の構造単位の繰返しの場合、構造単位の並び方は特に限定されず、各構造単位がランダムに存在していてもよいし、各構造単位がブロックで存在していてもよいし、各構造単位が交互に存在していてもよい。
R5がメチル基、R7が水素原子、X1がエチレングリコールの繰り返し単位である、ブレンマーE(エチレングリコールの繰り返し単位が1)、ブレンマーPEシリーズ(例えば、エチレングリコールの繰り返し単位が約2〜8)。
R5がメチル基、R7が水素原子、X1がプロピレングリコールの繰り返し単位である、ブレンマーP(繰り返し単位が1)、ブレンマーPPシリーズ(例えば、繰り返し単位が約4〜13)。
R5がメチル基、R7が水素原子、X1がエチレングリコールおよびプロピレングリコールの繰り返し単位である、ブレンマー50PEP−300(エチレングリコールの繰り返し単位が約3.5、プロピレングリコールの繰り返し単位が約2.5)、ブレンマー70PEP−350B(エチレングリコールの繰り返し単位が約5、プロピレングリコールの繰り返し単位が約2)。
R5がメチル基、R7が水素原子、X1がエチレングリコールおよびブチレングリコールの繰り返し単位である、ブレンマー55PET−800(エチレングリコールの繰り返し単位が約10、ブチレングリコールの繰り返し単位が約5)。
R5が水素原子、R7が水素原子、X1がエチレングリコールの繰り返し単位である、ブレンマーAEシリーズ(例えば、エチレングリコールの繰り返し単位が約2〜10)。
R5が水素原子、R7が水素原子、X1がプロピレングリコールの繰り返し単位である、ブレンマーAPシリーズ(例えば、プロピレングリコールの繰り返し単位が約3〜9)。
R5がメチル基、R7がメチル基、X1がエチレングリコールの繰り返し単位である、ブレンマーPMEシリーズ(例えば、エチレングリコールの繰り返し単位が約2〜90)。
R5が水素原子、R7がメチル基、X1がエチレングリコールの繰り返し単位である、AM−130G(例えば、エチレングリコールの繰り返し単位が約13)。
R5がメチル基、R7がCH2CH(C2H5)C4H9、X1がエチレングリコールおよびプロピレングリコールの繰り返し単位である、ブレンマー50POEP−800B(エチレングリコールの繰り返し単位が約8、プロピレングリコールの繰り返し単位が約6)。
R5がメチル基、R7がオクタデシル基、X1がエチレングリコールの繰り返し単位である、ブレンマーPSE−1300(エチレングリコールの繰り返し単位が約30)。
R5がメチル基、R7がフェニル基、X1がエチレングリコールの繰り返し単位である、ブレンマーPAEシリーズ(例えば、エチレングリコールの繰り返し単位が1あるいは2)。
R5が水素原子、R7がフェニル基の水素原子の1つをノニル基で置換したもの、X1がプロピレングリコールの繰り返し単位である、ブレンマーANP−300(プロピレングリコールの繰り返し単位が約5)。
R5が水素原子、R7がフェニル基、X1がエチレングリコールの繰り返し単位である、ブレンマーAAEシリーズ(例えば、エチレングリコールの繰り返し単位が約1〜5.5)。
R5が水素原子、R7がリン酸基、X1がエチレングリコールの繰り返し単位である、メタクリロイルオキシエチルフォスフェート(エチレングリコールの繰り返し単位が1)。
これらの化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上述した化合物の構造式の一例を以下に示す。
共重合体(I)は、必要に応じて、構造単位(A)、構造単位(B)、および構造単位(C)以外の単位(以下、「任意単位」という。)を含んでいてもよい。
任意単位の由来源となる単量体(以下、「任意単量体」という。)としては、単量体(a)、単量体(b)、および単量体(c)と共重合可能であれば特に限定されないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸およびその塩類;メチルビニルケトン、イソプロピルメチルケトン等のビニルケトン類;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−シアノアクリレート、ジシアノビニリデン、フマロニトリルエチル等のシアン化ビニル単量体;塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル単量体;イタコン酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有単量体およびその塩;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;マレイミド、フェニルマレイミド等のマレイミド類;(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホン酸基含有ビニル単量体およびその塩;リン酸基を含有ビニル単量体およびその塩;酢酸ビニル、N−ビニルピロリドンなどが挙げられる。
これら任意単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
共重合体(I)は、単量体(a)、単量体(b)、単量体(c)および必要に応じて任意単量体を共重合することで得られる。
重合方法は特に限定されず、使用する単量体の種類や生成する共重合体(I)の溶解性などに応じて、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、断熱重合などを選ぶことができる。
例えば、使用する単量体が水に可溶であり、かつ生成する共重合体(I)も水に対して十分な親和性を有する場合には、水溶液重合を用いることができる。水溶液重合は、原料となる単量体および水溶性重合開始剤を水に溶解し、加熱することにより共重合体(I)を得る方法である。
また、使用する単量体の水への溶解度が小さいときは、懸濁重合や乳化重合などを用いることができる。乳化重合は、水中に原料となる単量体、乳化剤、水溶性重合開始剤などを加え、撹拌下に加熱することにより共重合体(I)を得る方法である。
重合後は、ろ過、遠心分離、加熱乾燥、減圧乾燥及びこれらを組み合わせて水を除去することで、粉末状の共重合体(I)が得られる。
共重合を行うに際しては、分子量調節等の目的で、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えばメルカプタン化合物、チオグリコール、四塩化炭素、α−メチルスチレンダイマー、次亜燐酸塩などが挙げられる。
共重合体(I’)を加水分解することで、構造単位(A)の一部が構造単位(B)となり、構造単位(A)と構造単位(B)と構造単位(C)とを少なくとも有する共重合体(I)が得られる。
アルカリによる加水分解に用いるアルカリ(塩基)としては、周期律表の第1及び第2主族の金属の金属水酸化物が挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等が挙げられる。
また、アルカリとしては、アンモニア及びアンモニアのアルキル誘導体、例えばアルキルアミン、アリルアミン等のアミン類も好適である。斯かるアミン類としては、例えばトリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、アニリンなどが挙げられる。
これらの中でもアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムが好ましい。
共重合体(I)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。例えば、テトラヒドロフランや水等の溶媒を溶離液とし、ポリスチレン換算分子量として求めることができる。
本発明のバインダ樹脂は、共重合体(I)のみからなるものでもよいが、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、重合体(I)以外の他の重合体を含んでいてもよい。
他の重合体としては、例えばポリアクリル酸およびその塩、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどが挙げられ、これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
バインダ樹脂100質量%中の共重合体(I)の含有量は50〜100質量%以上であることが好ましく、他の重合体の含有量は0〜50質量%であることが好ましい。
バインダ樹脂の形態としては、粉末状、水等の溶媒に溶解または分散したドープ状などが挙げられる。
以上説明した本発明のバインダ樹脂は、アミド構造単位である構造単位(A)に加え、構造単位(B)および構造単位(C)を有する共重合体(I)を含有する。該共重合体(I)は水溶性である。しかも、構造単位(B)を有するので結着性に優れ、構造単位(C)を有するので電極用スラリーとしたときに、電極材料の分散性が良好である。なお、本発明のバインダ樹脂であれば電極用スラリーとしたときに、電極材料の分散性が良好である理由については、以下のように考えられる。
構造単位(A)のみで構成された重合体は親水性が高く、主に疎水性である電極材料との濡れ性が低いため、電極用スラリー中で電極材料の分散性が低下するものと考えらえる。しかし、構造単位(A)に加えて構造単位(B)および構造単位(C)を有する共重合体(I)であれば、結着性や柔軟性といった機能に加えて、共重合体(I)と電極材料との濡れ性が向上し、電極用スラリー中での電極材料の分散性が向上するものと考えらえる。
本発明の非水二次電池電極用バインダ樹脂組成物(以下、単に「バインダ樹脂組成物」という。)は、上述した本発明のバインダ樹脂を含有する。
バインダ樹脂組成物の形態としては、粉末状、水等の溶媒に溶解または分散したドープ状などが挙げられる。保管や流通時の安定性、経済性、取り扱い性の容易さの観点から、保管や流通時は粉末状が好ましい。
バインダ樹脂組成物が粘度調整剤等の添加剤を含有する場合、その含有量は、バインダ樹脂組成物を100質量%としたときに、50質量%以下が好ましい。ただし、電池性能をより高める観点から、添加剤の含有量は少ないほど好ましい。
本発明の非水二次電池電極用スラリー組成物(以下、単に「電極用スラリー」ともいう。)は、上述した本発明のバインダ樹脂または本発明のバインダ樹脂組成物と、活物質と、溶媒とを含有するものである。
例えばリチウムイオン二次電池の場合、正極の活物質(正極活物質)としては、負極の活物質(負極活物質)より高電位であり、充放電時にリチウムイオンを吸脱できる物質が用いられる。
正極活物質の具体例としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる少なくとも1種類以上の金属と、リチウムとを含有するリチウム含有金属複合酸化物などが挙げられる。これら正極活物質は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
負極活物質としては、例えば、黒鉛、非晶質炭素、炭素繊維、コークス、活性炭等の炭素材料;前記炭素材料とシリコン、錫、銀等の金属又はこれらの酸化物との複合物等が挙げられる。これら負極活物質は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
リチウムイオン二次電池においては、正極活物質としてリチウム含有金属複合酸化物を用い、負極活物質として黒鉛を用いることが好ましい。このような組み合わせとすることで、リチウムイオン二次電池の電圧を例えば4V以上に高められる。
導電助剤としては、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックなどが挙げられる。これらの導電助剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機溶媒としては、本発明のバインダ樹脂や本発明のバインダ樹脂組成物を均一に溶解または分散できる溶媒であれば特に制限されないが、例えばNMP、NMPとエステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等)の混合溶液、NMPとグライム系溶媒(ジグライム、トリグライム、テトラグライム等)の混合溶液などが挙げられる。これら有機溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ただし、有機溶媒は環境への負荷が高いことから、溶媒としては水を単独で用いることが好ましい。
本発明のバインダ樹脂およびバインダ樹脂組成物は水溶性であるため、水に容易に溶解または分散できる。
スラリー調製時、本発明のバインダ樹脂は、粉末状のものをそのまま使用してもよく、活物質や導電助剤等の電極材料と混合する前に、予め、溶媒に溶解して樹脂溶液として用いてもよい。
本発明の非水二次電池用電極(以下、単に「電極」ともいう。)は、集電体と、該集電体上に設けられた合剤層とを備え、前記合剤層が、上述した本発明の電極用スラリーを集電体に塗工し、乾燥させて得られるものである。すなわち、合剤層は、本発明のバインダ樹脂または本発明のバインダ樹脂組成物と、活物質とを含有するものである。
集電体の形状としては、目的とする電池の形態に応じて決定でき、例えば薄膜状、網状、繊維状が挙げられる。これらの中でも、薄膜状が好ましい。
集電体の厚みは、5〜30μmが好ましく、8〜25μmがより好ましい。
なお、得られた電極を任意の寸法に切断してもよい。
塗工工程では、電極用スラリーを集電体に塗工する。塗工方法としては、集電体に電極用スラリーを任意の厚みで塗工できる方法であれば特に制限されず、例えばドクターブレードやコンマコーター等を用いて行なうことができる。塗工量は、形成しようとする合剤層の厚みに応じて適宜設定できる。
乾燥工程では、溶媒を除去する。乾燥方法としては、溶媒を除去できればよく、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線等の照射による乾燥法など等が挙げられる。
圧延工程では、形成された合剤層を圧延する。圧延方法としては、合剤層を任意の厚みに圧延できればよく、例えば金型プレスやロールプレス等の方法が挙げられる。
なお、正極用の電極(正極電極)は負極用の電極(負極電極)と比べ活物質の容量が小さいため、正極電極の合剤層は、負極電極の合剤層より厚くされることが好ましい。
本発明の非水二次電池は、上述した本発明の電極を備えるものである。
「非水二次電池」は、電解液として水を含まない非水系電解液を用いたものであり、例えばリチウムイオン二次電池等が挙げられる。非水二次電池は、通常、電極(正極電極および負極電極)と、非水系電解液と、セパレータとを備える。非水二次電池としては、正極電極と負極電極とを透過性のセパレータ(例えば、ポリエチレンあるいはポリプロピレン製の多孔性フィルム)を間に介して配置し、これに非水系電解液を含浸させた非水二次電池;集電体の両面に合剤層が形成された負極電極/セパレータ/集電体の両面に合剤層が形成された正極電極/セパレータからなる積層体をロール状(渦巻状)に捲回した捲回体が、非水系電解液と共に電池缶(有底の金属ケーシング)に収容された筒状の非水二次電池などが挙げられる。
有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等のオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、NMP等の含窒素類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル等のエステル類;ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類;アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;スルホラン等のスルホン類;3−メチル−2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類;1,3−プロパンスルトン、4−ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類などが挙げられる。これらの有機溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
非水系電解液としては、カーボネート類にLiPF6を溶解した溶液が好ましく、該溶液はリチウムイオン二次電池の電解液として特に好適である。
正極電極および負極電極のいずれか一方が本発明の電極である場合、他方の電極としては、公知のものが利用できる。
まず、正極電極と負極電極とをセパレータを介してスパイラル状に捲回して捲回体とする。得られた捲回体を電池缶に挿入し、予め負極電極の集電体に溶接しておいたタブ端子を電池缶底に溶接する。
次いで、電池缶に非水系電解液を注入し、さらに予め正極電極の集電体に溶接しておいたタブ端子を電池の蓋に溶接し、蓋を絶縁性のガスケットを介して電池缶の上部に配置し、蓋と電池缶とが接した部分をかしめて密閉して、リチウムイオン二次電池とする。
非水二次電池の形状は、コイン型、円筒型、角形、扁平型など何れであってもよい。
<製造例1>
脱イオン水70質量部に対し、単量体(a)としてN−ビニルホルムアミド27.0質量部と、単量体(c)としてメトキシポリエチレングリコール#550アクリレート(新中村化学工業会社製、「AM−130G」)3.0質量部と、酢酸ナトリウム1.5質量部とを混合した単量体水溶液を、リン酸によりpH=6.3となるよう調節し、単量体調節液を得た。この単量体調節液を5℃まで冷却した後、温度計を取り付けた断熱反応容器に入れ、15分間窒素曝気を行った。その後、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン](和光純薬工業株式会社製、「VA−057」)1500ppm(対単量体)を10質量%水溶液として添加し、次いで、t−ブチルハイドロパーオキサイド200ppm(対単量体)を10質量%水溶液として添加し、さらに、亜硫酸水素ナトリウム200ppm(対単量体)を10質量%水溶液として添加することにより共重合を行った。内温がピークを超えた後さらに1時間熟成し、ゲルを取り出した。取り出したゲルに、10質量%水酸化リチウム水溶液17.7質量部を添加し、さらに水を加えて撹拌して固形分が4質量%の水溶液とし、水浴中にて内温75℃で5時間加熱し、加水分解反応を行った。加水分解反応後の反応液を冷却し、共重合体を含む水溶液を得た。これをバインダ樹脂水溶液1とした。
得られたバインダ樹脂水溶液1について、以下の方法により共重合体中の構造単位の含有率を測定した。結果を表1に示す。
まず、加水分解前の共重合体中の構造単位(A)と構造単位(C)の含有率を、単量体(a)および単量体(c)の配合量から求めた。
バインダ樹脂水溶液を精秤し、メスフラスコに採取し、これに脱塩水を加えた。このメスフラスコから水溶液をホールピペットで採取したものに脱塩水を加えた後、pH計で確認しながら1N−塩酸溶液によりpHが2.5になるように調整し、これを試験液とした。
得られた試験液にトルイジンブルーを加え、N/400−ポリビニル硫酸カリウム溶液(和光純薬工業株式会社製、「PVSK」)で滴定した。試験液が青色から紫色に変色した点を終点とした。滴定結果から、構造単位(A)および構造単位(B)の含有率の含有率を求めた。
15分間窒素曝気を行った後に、次亜リン酸ナトリウム250ppm(対単量体)を10質量%水溶液として添加したこと以外は、製造例1と同様の操作を行い、共重合体を含む水溶液を得た。これをバインダ樹脂水溶液2とした。
得られたバインダ樹脂水溶液2について、製造例1と同様にして、共重合体中の構造単位の含有率を測定した。結果を表1に示す。
15分間窒素曝気を行った後に、次亜リン酸ナトリウム500ppm(対単量体)を10質量%水溶液として添加したこと以外は、製造例1と同様の操作を行い、共重合体を含む水溶液を得た。これをバインダ樹脂水溶液3とした。
得られたバインダ樹脂水溶液3について、製造例1と同様にして、共重合体中の構造単位の含有率を測定した。結果を表1に示す。
15分間窒素曝気を行った後に、次亜リン酸ナトリウム1000ppm(対単量体)を10質量%水溶液として添加したこと以外は、製造例1と同様の操作を行い、共重合体を含む水溶液を得た。これをバインダ樹脂水溶液4とした。
得られたバインダ樹脂水溶液4について、製造例1と同様にして、共重合体中の構造単位の含有率を測定した。結果を表1に示す。
15分間窒素曝気を行った後に、次亜リン酸ナトリウム250ppm(対単量体)を10質量%水溶液として添加したこと、および10質量%水酸化リチウム水溶液の量を35.4質量部に変更したこと以外は、製造例1と同様の操作を行い、共重合体を含む水溶液を得た。これをバインダ樹脂水溶液5とした。
得られたバインダ樹脂水溶液5について、製造例1と同様にして、共重合体中の構造単位の含有率を測定した。結果を表1に示す。
15分間窒素曝気を行った後に、次亜リン酸ナトリウム500ppm(対単量体)を10質量%水溶液として添加したこと、および10質量%水酸化リチウム水溶液の量を35.4質量部に変更したこと以外は、製造例1と同様の操作を行い、共重合体を含む水溶液を得た。これをバインダ樹脂水溶液6とした。
得られたバインダ樹脂水溶液6について、製造例1と同様にして、共重合体中の構造単位の含有率を測定した。結果を表1に示す。
15分間窒素曝気を行った後に、次亜リン酸ナトリウム1000ppm(対単量体)を10質量%水溶液として添加したこと、および10質量%水酸化リチウム水溶液の量を35.4質量部に変更したこと以外は、製造例1と同様の操作を行い、共重合体を含む水溶液を得た。これをバインダ樹脂水溶液7とした。
得られたバインダ樹脂水溶液7について、製造例1と同様にして、共重合体中の構造単位の含有率を測定した。結果を表1に示す。
製造例1と同様にして共重合を行い、内温がピークを超えた後さらに1時間熟成し、ゲルを取り出した。取り出したゲルに水を加えて撹拌し、固形分4質量%の水溶液を得た。これをバインダ樹脂水溶液8とした。
得られたバインダ樹脂水溶液8について、製造例1と同様にして、共重合体中の構造単位の含有率を測定した。結果を表1に示す。
N−ビニルホルムアミドの量を30.0質量部に変更したこと、メトキシポリエチレングリコール#550アクリレート(新中村化学工業会社製、「AM−130G」)を使用しなかったこと以外は、製造例1と同様の操作を行い、共重合体を含む水溶液を得た。これをバインダ樹脂水溶液9とした。
得られたバインダ樹脂水溶液9について、製造例1と同様にして、共重合体中の構造単位の含有率を測定した。結果を表1に示す。
<電極用スラリーの調製>
バインダ樹脂水溶液1を2.5gと天然黒鉛系負極活物質(三菱化学株式会社製、「MPGC16」)5gを、自公転ミキサー(Thinky社製、「泡とり練太郎」)を用い、自転1000rpm、公転2000rpmの条件にて混練した。その後、塗工可能な粘度まで水で調整することにより、電極用スラリーを得た。
得られた電極用スラリーを集電体(銅箔、厚み20μm)上にドクターブレード法により均一に塗工し、室温にて1時間乾燥した。さらに真空乾燥機にて0.6kPa、60℃で12時間減圧乾燥し、合剤層(負極層)が集電体(銅箔)上に形成された負極電極を得た。
得られた負極電極について、以下の方法により分散性および結着性の評価を行った。結果を表2に示す。
(分散性の評価)
得られた負極電極の合剤層側の表面を目視にて観察し、電極材料(活物質)等の凝集物の有無を確認し、以下の評価基準にて分散性を評価した。「○」であることは、電極用スラリー中の電極材料の分散性が良好であることを意味する。
○:凝集物が確認されず、均一な表面である。
×:凝集物が確認され、不均一な表面である。
負極電極を幅30mm角になるように切り出し、試験片とした。試験片について、幅1mmのボラゾン切刃(すくい角20°、にげ角10°、刃角60°)を用い、初期押圧荷重0.5N、バランス荷重0.3→0.2N、水平速度1μm/sec、垂直速度0.2μm/sec、初期接触荷重0.08〜1Nの条件で、ボラゾン切刃が合剤層と銅箔との界面を移動する際の最大応力値を3点記録した。この最大応力値の平均値を合剤層と集電体の剥離強度とした。この値が大きいほど、合剤層が集電体に強固に結着していることを示す。
バインダ樹脂水溶液を表2に示す種類のものに変更した以外は、実施例1と同様にして電極用スラリーを調製し、負極電極を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
なお、バインダ樹脂水溶液5〜7に含まれる各共重合体は、バインダ樹脂水溶液1〜4に含まれる各共重合体に比べて、構造単位(C)の含有率が若干多い。これは、以下のように考えらえる。通常、加水分解により構造単位(A)の一部が構造単位(B)となることで置換基の脱離が起こり、共重合体全体の分子量が低下する。バインダ樹脂水溶液5〜7はバインダ樹脂水溶液1〜4よりも加水分解がより進行したため、分子量がより低下し、その結果、相対的に構造単位(C)の含有率が増えたものと考えられる。
構造単位(C)を含まない共重合体からなるバインダ樹脂を用いた比較例2の負極電極は、結着性には優れているものの、凝集物が確認された。
本発明の非水二次電池電極用スラリー組成物は、本発明の非水二次電池電極用バインダ樹脂または該非水二次電池電極用バインダ樹脂を含有する非水二次電池電極用バインダ樹脂組成物を用いて得られるものであり、良好な電極材料の分散性を有する。また、本発明の非水二次電池電極用スラリー組成物を用いることで、集電体上に、均一性等が良好で、結着性に優れる合剤層が形成された非水二次電池用電極が得られる。
本発明の非水二次電池用電極は、合剤層の均一性等が良好で、かつ結着性に優れる。そのため該電極を備えた非水二次電池によれば、良好な電池性能が得られる。
Claims (5)
- 下記一般式(1)で表される構造単位(A)と、下記一般式(2)で表される構造単位(B)と、下記一般式(3)で表される構造単位(C)とを少なくとも有する共重合体を含有する非水二次電池電極用バインダ樹脂であって、
前記共重合体を構成する全ての単位の合計を100質量%としたときに、前記構造単位(A)の含有率が20〜84質量%であり、前記構造単位(B)の含有率が6〜50質量%であり、前記構造単位(C)の含有率が10〜50質量%である、非水二次電池電極用バインダ樹脂。
- 請求項1に記載の非水二次電池電極用バインダ樹脂を含有する、非水二次電池電極用バインダ樹脂組成物。
- 請求項1に記載の非水二次電池電極用バインダ樹脂、または請求項2に記載の非水二次電池電極用バインダ樹脂組成物と、活物質と、溶媒とを含有する、非水二次電池電極用スラリー組成物。
- 集電体と、該集電体上に設けられた合剤層とを備え、
前記合剤層が、請求項3に記載の非水二次電池電極用スラリー組成物を集電体に塗工し、乾燥させて得られるものである、非水二次電池用電極。 - 請求項4に記載の非水二次電池用電極を備える、非水二次電池。
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