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JP6215959B2 - 冬用タイヤ - Google Patents

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JP6215959B2 JP2015549039A JP2015549039A JP6215959B2 JP 6215959 B2 JP6215959 B2 JP 6215959B2 JP 2015549039 A JP2015549039 A JP 2015549039A JP 2015549039 A JP2015549039 A JP 2015549039A JP 6215959 B2 JP6215959 B2 JP 6215959B2
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Description

本発明は、所定のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する冬用タイヤに関する。
冬用タイヤ、特にスタッドレスタイヤでは、低温での硬度(Hs)を低くして、氷の微小な凹凸への追従性を向上させることで、氷上グリップ性能を確保している。そのため、スタッドレスタイヤに使用されるゴム組成物には、ゴム成分として、ガラス転移温度(Tg)の低いブタジエンゴム(BR)、特にハイシスBR、が使用されている。
更に、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛パナテトラ、火山灰、卵殻粉、粉砕胡桃等をゴム組成物に配合し、氷上の引っ掻き効果を向上させることで、氷上グリップ性能を向上させる試みが行われている。また、発泡ゴムや吸水ゴムをゴム組成物に配合することにより、水膜を吸収したり或いは水膜を除去したりして、トレッドゴムと氷の密着性を向上させることで、氷上グリップ性能を向上させる試みが行われている。しかし、これらの方法では、耐摩耗性が低下するという問題があった。
耐摩耗性が低いと、タイヤを使用できる走行距離が短くなってしまう。一方、近年では、スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤにおいても走行距離の向上が期待されており、冬用タイヤに使用されるゴム組成物には、優れた氷上グリップ性能だけではなく、優れた耐摩耗性も求められている。
他方、ゴム組成物のグリップ性能や耐摩耗性を改善する方法として、α−メチルスチレン系樹脂、クマロンインデン系樹脂などの樹脂を配合する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。α−メチルスチレン系樹脂として一般的に使用されているアリゾナケミカル社のSA85は、元々、スチレンブタジエンゴム(SBR)及びブタジエンゴム(BR)を含有するサマータイヤ用ゴム組成物のために開発されたものであるが、近年では、天然ゴム(NR)等のイソプレン系ジエンゴムを多量に含有するゴム組成物にも配合されている。
しかしながら、イソプレン系ジエンゴムを多量に含有するゴム組成物にTgの高いSA85やクマロンインデン系樹脂を配合すると、低温での硬度(Hs)が高くなるため、氷上グリップ性能が低下するという点で改善の余地があった。
特開2013−1805号公報
上述のように、スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤにおいて氷上グリップ性能と耐摩耗性とを高いレベルで両立させることには改善の余地があった。
本発明は、前記課題を解決し、氷上グリップ性能及び耐摩耗性の両性能が改善され、更に、良好な機械的強度を有する冬用タイヤを提供することを目的とする。
本発明は、ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する冬用タイヤであって、前記ゴム組成物は、シス含量95モル%以上、ビニル含量1モル%以下、重量平均分子量53万以上の油展ブタジエンゴムと、イソプレン系ジエンゴムと、シリカと、カーボンブラックとを含有し、前記油展ブタジエンゴムが希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムであり、総ゴム固形分100質量%中、前記油展ブタジエンゴムに含まれるブタジエンゴム分の含有量が8〜80質量%、前記イソプレン系ジエンゴムの含有量が13〜80質量%であり、総ゴム固形分100質量部に対して、前記シリカの含有量が15〜125質量部、前記カーボンブラックの含有量が3〜70質量部、前記シリカ及びカーボンブラックの合計含有量が45〜130質量部であることを特徴とする冬用タイヤに関する。
前記総ゴム固形分100質量部に対して、架橋剤由来の全硫黄量が0.5〜1.4質量部であることが好ましい。
前記油展ブタジエンゴムの重量平均分子量が70万以上であることが好ましい。
前記ゴム組成物は、更に、軟化点が104〜126℃であるテルペン系樹脂、及び/又は、窒素吸着比表面積が10〜60m/gである水酸化アルミニウムを含有することが好ましい。
前記総ゴム固形分100質量%中、前記油展ブタジエンゴムに含まれるブタジエンゴム分の含有量が20〜70質量%、前記イソプレン系ジエンゴムの含有量が30〜70質量%であることが好ましい。
前記総ゴム固形分100質量部に対して、架橋剤由来の全硫黄量が0.5〜1.0質量部であることが好ましい。
本発明によれば、特定の油展ブタジエンゴムと、イソプレン系ジエンゴムと、シリカと、カーボンブラックとを所定量含有するゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する冬用タイヤであるので、氷上グリップ性能、耐摩耗性及び機械的強度がバランス良く改善された冬用タイヤを提供できる。
本発明の冬用タイヤは、特定の油展ブタジエンゴムと、イソプレン系ジエンゴムと、シリカと、カーボンブラックとを所定量含有するゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するものである。これにより、氷上グリップ性能、耐摩耗性及び機械的強度をバランス良く改善できる。
本発明の冬用タイヤにおいては、特定の油展ブタジエンゴムとイソプレン系ジエンゴムとを用いることで、ブタジエンゴムの相とイソプレン系ジエンゴムの相とが微分散し、相互に入り組ませることができる。これにより、歪みをゴム全体に分散させることができ、また、通常シリカが混和しにくいブタジエンゴム相に多くのシリカが分配し、通常カーボンブラックが混和しにくいイソプレン系ジエンゴム相に多くのカーボンブラックが分配し、両ゴム相へ両フィラーが偏りなく分配・分散することとなり、上記各種性能が改善されるものと考えられる。
先ず、上記ゴム組成物について説明する。
本発明におけるゴム組成物は、希土類元素系触媒を用いて合成され、シス含量95モル%以上、ビニル含量1モル%以下、重量平均分子量53万以上の油展ブタジエンゴム(油展BR)と、イソプレン系ジエンゴムと、シリカと、カーボンブラックとを含有する。
上記油展BRについて、希土類元素系触媒は公知のものを使用でき、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒が挙げられる。なかでも、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジム(Nd)含有化合物を用いたNd系触媒が特に好ましい。
ランタン系列希土類元素化合物としては、原子番号57〜71の希土類金属のハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコラート、チオアルコラート、アミド等が挙げられる。なかでも、前述のとおり、Nd系触媒の使用が高シス含量、低ビニル含量のBRが得られる点で好ましい。
上記油展BRのシス含量は、95モル%以上であり、好ましくは96モル%以上である。95モル%未満であると、良好な耐摩耗性、機械的強度が得られないおそれがある。なお、シス含量の上限は特に限定されず、100モル%でもよい。
上記油展BRのビニル含量は、1モル%以下であり、好ましくは0.5モル%以下である。1モル%を超えると、耐摩耗性が低下するおそれがある。なお、ビニル含量の下限は特に限定されず、0モル%でもよい。
上記油展BRの重量平均分子量(Mw)は、53万以上であり、好ましくは60万以上、より好ましくは70万以上である。一方、Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは100万以下、より好ましくは95万以下である。100万を超えると、ポリマーの分散が困難、かつ、フィラーの取り込みが困難となり、機械的強度が悪化する傾向がある。
上記油展BRは、ポリマー製造段階から、ブタジエンゴムに、油展成分としてオイルなどを添加したゴムであり、このようなブタジエンゴムを用いることによって、ブタジエンゴムへのシリカやカーボンブラックといったフィラーの分散を容易にすることができる。該油展成分としては、パラフィンオイル、アロマオイル、ナフテンオイル、軽度抽出溶媒和物(MES(mild extraction solvates))、処理留出物芳香族系抽出物(TDAE(treated distillate aromatic extracts))、溶媒残留物芳香族系抽出物((S−RAE)solvent residue aromatic extracts)、等が挙げられる。なかでも、MES、TDAEが好ましい。
上記油展BRの油展量(BR分100質量部に対するオイル成分の含有量)は特に限定されず、適宜設定すれば良く、通常、5〜100質量部、好ましくは10〜50質量部である。
上記油展BRは、例えば、希土類系触媒を用いて公知の方法で調製でき、市販品も使用可能である。市販品としては、ランクセス(株)製のBUNA−CB29 TDAE(Nd系触媒を用いて合成した希土類系BR、ゴム成分100質量部に対してTDAEを37.5質量部含有、シス含量:95.8モル%、ビニル含量:0.4モル%、Mw:76万)、ランクセス(株)製のBUNA−CB29 MES(Nd系触媒を用いて合成した希土類系BR、ゴム成分100質量部に対してMESを37.5質量部含有、シス含量:96.1モル%、ビニル含量:0.4モル%、Mw:73.7万)等が挙げられる。
総ゴム固形分100質量%中、上記油展BRに含まれるBR分(BR固形分量)の含有量は、8質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは35質量%以上である。該含有量は、80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、特に好ましくは65質量%以下である。8質量%未満であると、氷上グリップ性能や耐摩耗性の向上が見込めない。80質量%を超えると、ゴム配合中の総オイル量が過多となり、ゴム成分に対するシリカの相溶性が低下し、機械的強度が悪化するおそれがある。
なお、本明細書中、総ゴム固形分とは、ゴム組成物中に含まれるゴム成分の固形分量を意味する。ただし、ゴム成分に硫黄架橋可能な液状ゴムが含まれる場合には、当該液状ゴムの量も総ゴム固形分に含めることとする。
上記イソプレン系ジエンゴムとしては、合成イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、改質天然ゴム等が挙げられる。NRには、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)も含まれ、改質天然ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等が挙げられる。なかでも、NR、IRが好ましく、NRがより好ましい。
総ゴム固形分100質量%中、上記イソプレン系ジエンゴムの含有量は、13質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。該含有量は、80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。13質量%未満であると、もう一方のジエンゴムであるブタジエンゴムと海島相を形成できず、氷上グリップ性能、耐摩耗性及びロール加工性が悪化するおそれがある。80質量%を超えると、ゴム配合の低温硬度が高くなり、氷上グリップ性能及び耐摩耗性が悪化するおそれがある。
上記ゴム組成物は、ゴム成分として、上記油展BR及び上記イソプレン系ジエンゴム以外の他のゴムを含んでもよい。すなわち、上記ゴム組成物が、上記油展BR及び上記イソプレン系ジエンゴム以外の他のゴムを総ゴム固形分100質量%中0〜50質量%含むこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記他のゴムとしては、非油展BRなどの上記油展BR以外の他のBR、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴム;エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)等の非ジエン系ゴム等が挙げられる。
上記油展BR以外の他のBRとしては、例えば、希土類元素系触媒を用いて合成され、シス含量が95モル%以上である非油展BRや、シリカ変性ブタジエンゴムなどが挙げられる。例えば、当該シリカ変性ブタジエンゴムを上記油展BRと併用した場合には、通常シリカが混和しにくいブタジエンゴム相により多くのシリカを分配することが可能となり、ブタジエンゴム相の補強度が高まり、耐摩耗性の向上が期待できる。
上記シリカ変性ブタジエンゴムとしては、下記一般式(1)で表される化合物により変性された変性ブタジエンゴム、分子中にグリシジルアミノ基を含む低分子化合物により変性された変性ブタジエンゴム、及び分子中にグリシジルアミノ基を含む低分子化合物と、該低分子化合物の2量体以上のオリゴマーとの混合物により変性された変性ブタジエンゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
Figure 0006215959
上記一般式(1)中、R、R及びRは、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を表す。R及びRは結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。
上記分子中にグリシジルアミノ基を含む低分子化合物は、下記一般式で示される化合物であることが好ましい。
Figure 0006215959
上記一般式中、R11及びR12は、同一又は異なって、炭素数1〜10の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、及び3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。R13及びR14は、同一又は異なって、水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、及び3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。R15は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、3級アミン、エポキシ、カルボニル、及びハロゲンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。mは1〜6の整数を表す。
上記ゴム組成物が、上記他のゴムとして、上記他のBRを含む場合、総ゴム固形分100質量%中、上記油展BRに含まれるBR分及び上記他のBRに含まれるBR分の合計含有量(BR固形分の総量)は、好ましくは13質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。また、該含有量は、好ましくは85質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。上記範囲内であると、本発明の効果を充分に発揮できる。
次に、上記他のゴムとしてのSBRについて、その結合スチレン量は、好ましくは8質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。また、該結合スチレン量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは46質量%以下である。8質量%未満であると、ウェットグリップ性能が不充分となるおそれがあり、50質量%を超えると、ポリマーの分散が困難になったり、破断強度や耐摩耗性が悪化したりするおそれがある。
上記SBRの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは70万以上、より好ましくは80万以上、更に好ましくは90万以上、特に好ましくは100万以上である。一方、Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは150万以下、より好ましくは130万以下である。70万未満であると、耐摩耗性が低下するおそれがあり、150万を超えると、ポリマーの分散が困難、かつ、フィラーの取り込みが困難となり、機械的強度が悪化する傾向がある。
上記SBRのビニル含量は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは15モル%以上である。また、該ビニル含量は、好ましくは60モル%以下、より好ましくは50モル%以下である。上記範囲内であると、本発明の効果を充分に発揮できる。
上記SBRとしては、特に限定されず、乳化重合SBR(E−SBR)、溶液重合SBR(S−SBR)などが挙げられ、油展されていても、油展されていなくてもよい。なかでも、耐摩耗性の観点から、油展E−SBRが好ましく、また、油展各種シリカ用変性SBR(各種変性剤でポリマーの末端や主鎖が変性された油展SBRなど)も使用可能である。
上記油展SBRは、ポリマー製造段階から、スチレンブタジエンゴムに、油展成分としてオイルなどを添加したゴムであり、該油展成分としては、前記の同様のもの等が挙げられる。なかでも、アロマオイル、TDAE、ナフテンオイル、MES、S−RAEが好ましく、耐摩耗性の観点から、TDAE、アロマオイルが特に好ましい。
上記油展SBRの油展量(SBR分100質量部に対するオイル成分の含有量)は特に限定されず、適宜設定すれば良く、通常、5〜100質量部、好ましくは10〜50質量部である。
上記SBRは、例えば、アニオン重合法、溶液重合法、乳化重合法等、公知の方法を用いて調製でき、市販品も使用可能である。市販品としては、日本ゼオン(株)製のNipol 9548、JSR(株)製の0122等が挙げられる。
上記ゴム組成物が、上記他のゴムとして上記SBRを含む場合、総ゴム固形分100質量%中、上記SBRの含有量は、冬用タイヤのうちウェットグリップ性能が要求される用途では、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは35質量%以上である。また、該含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。10質量%未満であると、ウェットグリップ性能が不充分となるおそれがあり、80質量%を超えると、氷上グリップ性能が悪化するおそれがある。なお、上記SBRが油展SBRの場合、上記SBRの含有量とは、油展SBRに含まれるSBR分(SBR固形分量)の含有量のことである。
なお、本明細書において、BRのシス含量(シス−1,4−結合ブタジエン単位量)及びビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)、SBRのビニル含量は、赤外吸収スペクトル分析法により測定でき、SBRの結合スチレン量は、H−NMR測定により算出される。BR、SBRの重量平均分子量(Mw)は、実施例で示す方法により、求めることができる。
上記ゴム組成物において、上記油展BRに含まれるBR分及びイソプレン系ジエンゴムの配合比率(BRゴム分質量/イソプレン系ジエンゴム質量)は、好ましくは20/80〜80/20、より好ましくは30/70〜70/30、更に好ましくは30/70〜67/33である。当該配合比率が20/80未満の場合や80/20を超える場合、ポリマー2相をバランス良く補強、架橋させることができず、本発明の効果が充分に発揮されない傾向がある。なお、ライトトラック用タイヤの場合、乗用車用タイヤの場合に比べ、単位面積当たりの接地面圧力が高く、氷上グリップ性能は自動的に高くなるため、BRゴムは比較的少量で良い。
上記ゴム組成物には、シリカ及びカーボンブラックの両フィラーが含まれる。両フィラーのうち、シリカはイソプレン系ジエンゴムに、カーボンブラックはBRに取り込まれやすい傾向があるため、上記油展BR、上記イソプレン系ジエンゴムと、シリカ及びカーボンブラックを組み合わせることで、本発明の効果を発揮することができる。
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などを用いることができる。シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカ(含水シリカ)が好ましい。
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは100m/g以上である。また、該NSAは、好ましくは280m/g以下、より好ましくは250m/g以下である。上記範囲内であると、本発明の効果を充分に発揮できる。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−81に準じて測定される。
カーボンブラックとしては、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられる。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは100m/g以上、更に好ましくは130m/g以上である。また、該NSAは、好ましくは250m/g以下、より好ましくは230m/g以下、更に好ましくは180m/g以下である。なお、NSAが50m/g未満では、耐摩耗性が低下するおそれがあり、250m/gを超えると、充分な加工性が得られないおそれがある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
シリカの含有量は、総ゴム固形分100質量部に対して、15質量部以上、好ましくは20質量部以上である。また、該含有量は、125質量部以下、好ましくは118質量部以下である。15質量部未満であると、微小歪での複素弾性率(E)が高く(低歪0.1〜0.5%)、氷上グリップ性能、補強性(耐摩耗性)が充分に得られないおそれがあり、125質量部を超えると、フィラー量が多くなりすぎて、フィラーの分散が困難となり、破断伸び(チッピング性)、耐摩耗性が低下するおそれがある。
カーボンブラックの含有量は、総ゴム固形分100質量部に対して、3質量部以上、好ましくは5質量部以上である。また、該含有量は、70質量部以下、好ましくは65質量部以下である。3質量部未満であると、上記油展BRに取り込まれるフィラー量が少なく、耐摩耗性が充分に得られず、ゴムの紫外線耐劣化性が大幅に低下するおそれがあり、70質量部を超えると、氷上グリップ性能及びウェットグリップ性能が低下するおそれがある。
シリカ及びカーボンブラックの合計含有量は、総ゴム固形分100質量部に対して、45質量部以上、好ましくは60質量部以上、より好ましくは65質量部以上である。また、該合計含有量は、130質量部以下、好ましくは125質量部以下、より好ましくは120質量部以下である。45質量部未満であると、氷上グリップ性能及び耐摩耗性が低下するおそれがあり、130質量部を超えると、チッピング性、耐摩耗性が低下するおそれがある。
シリカ及びカーボンブラックの配合比率(シリカ/カーボンブラック(質量比))は、好ましくは20/80〜96/4、より好ましくは25/75〜85/15である。20/80未満の場合や96/4を超える場合、ポリマー2相をバランス良く補強、架橋させることができずに、耐摩耗性や氷上グリップ性能が低下するおそれがある。
上記ゴム組成物は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、硫黄(スルフィド結合)を含む化合物などが挙げられ、例えば、スルフィド系、メルカプト系、ビニル系、アミノ系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系シランカップリング剤などが挙げられる。具体的には、Evonik社製のSi69、Si75、Si363、Momentive社製のNXT、NXTZなどが市販されている。
上記シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。1質量部未満では、耐摩耗性、低燃費性が悪化する傾向がある。シランカップリング剤の含有量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。15質量部を超えると、ポリマー架橋に消費される傾向が生じ、架橋密度を上げてしまい、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
上記ゴム組成物は、通常、硫黄、ハイブリッド架橋剤等の架橋剤を含有する。硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられ、なかでも、粉末硫黄が好適に用いられる。また、ハイブリッド架橋剤としては、市販品KA9188、Duralink HTS等が挙げられる。なお、上記架橋剤としては、硫黄、ハイブリッド架橋剤等の1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、硫黄とハイブリッド架橋剤とを併用することもできる。
上記ゴム組成物において、架橋剤由来の全硫黄量は、総ゴム固形分100質量部に対して、0.5〜1.4質量部であることが好ましい。架橋剤由来の全硫黄量がこのような範囲であると、耐摩耗性をより向上させることができ、また、スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤは、夏場に倉庫等で保管される場合が多いが、そのような場合におけるトレッドゴムの硬化を充分に抑制することも可能となる。架橋剤由来の全硫黄量としてより好ましくは0.6質量部以上、更に好ましくは0.65質量部以上である。また、より好ましくは1.2質量部以下、更に好ましくは1.0質量部以下、特に好ましくは0.8質量部以下である。0.5質量部未満であると、加硫後の硬度(Hs)や隣接ゴム配合との共架橋が充分に得られないおそれがあり、1.4質量部を超えると、耐摩耗性が低下する傾向があり、氷上グリップ性能及び破断伸びが悪化するおそれがある。
なお、架橋剤由来の全硫黄量とは、仕上げ練りで投入する全架橋剤中に含まれる純硫黄成分量であり、例えば、架橋剤として不溶性硫黄(オイル含有)を用いる場合は、オイル分を除いた純硫黄量を意味する。
上記ゴム組成物は、上記油展BRや油展SBR等、油展ゴムに含まれる油以外に、別途添加されるオイルの配合量が、総ゴム固形分100質量部に対して、35質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、25質量部以下であることが更に好ましく、配合しなくてもよい。油展ゴムと、後述するレジン等を併用することにより、別途プロセスオイルとして配合するオイルの減量が可能となり、加工中の練りローター滑りやポリマー相間の滑りが抑制され、ポリマー相(ゴム成分)が混ざりやすくなる。
なお、上記別途添加されるオイルの種類としては、上記油展BRや油展SBRに油展成分として添加されるオイルと同様のものが挙げられる。
上記ゴム組成物は、従来からタイヤ用ゴム組成物に慣用されるレジンを含んでもよい。上記レジンとしては、特に限定されず、例えば、クマロンインデン樹脂等のクマロン系樹脂、芳香族テルペン樹脂、テルペンフェノール系樹脂、芳香族ビニル重合体(α−メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂)、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂などが挙げられる。なかでも、氷上グリップ性能を向上させる観点から、テルペン系樹脂が好ましい。なお、クマロン系樹脂は、破断強度、耐摩耗性を向上させることが期待できる。
上記テルペン系樹脂としては、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂や、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などを使用できる。また、これらの水素添加物を使用することもできる。
上記ポリテルペン樹脂は、テルペン化合物を重合して得られる樹脂である。該テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオールなどが挙げられる。
上記ポリテルペン樹脂としては、上述したテルペン化合物を原料とするピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、ピネン/リモネン樹脂などが挙げられる。なかでも、重合反応が容易である点、天然松脂が原料のため、安価であるという点から、ピネン樹脂が好ましい。ピネン樹脂は、通常、異性体の関係にあるα−ピネン及びβ−ピネンの両方を含んでいるが、含有する成分の違いにより、β−ピネンを主成分とするβ−ピネン樹脂と、α−ピネンを主成分とするα−ピネン樹脂とに分類される。本発明においては、β−ピネン樹脂を好適に使用できる。
上記芳香族変性テルペン樹脂としては、上記テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、上記テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂などが挙げられる。また、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂を使用することもできる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。また、スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
本発明の効果が特に良好に得られるという点から、テルペン系樹脂としては、ポリテルペン樹脂が好ましく、β−ピネン樹脂がより好ましい。
上記テルペン系樹脂の軟化点は、104〜126℃であることが好ましい。このような特定範囲の軟化点を有するテルペン系樹脂は、ゴム組成物中イソプレン系ジエンゴムの相に選択的に分配されるため、上記油展BRの低温可塑性を悪化させることがなく、他方、上記テルペン系樹脂の軟化点が当該範囲外であると、氷上グリップ性能、耐摩耗性及び機械的強度の改善効果が充分に得られない傾向がある。上記テルペン系樹脂の軟化点としてより好ましくは106℃以上、更に好ましくは110℃以上であり、一方、より好ましくは124℃以下、更に好ましくは120℃以下である。
なお、テルペン系樹脂の軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
上記テルペン系樹脂の水酸基価(mgKOH/g−gel)は、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは5以下、特に好ましくは1以下、最も好ましくは0である。20を超えると、氷上グリップ性能、耐摩耗性及び機械的強度の改善効果が充分に得られない傾向がある。
なお、テルペン系樹脂の水酸基価は、テルペン系樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K0070:1992)により測定した値である。従って、フェノール系化合物を含まないテルペン樹脂の場合、通常、水酸基価は0となる。
上記レジンを配合する場合の、レジンの含有量としては、総ゴム固形分100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましい。当該範囲外であると、性能の改善効果が得られず、或いは、かえって性能が悪化してしまう傾向がある。上記レジンの含有量としてより好ましくは2質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、一方、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。
上記ゴム組成物は、氷上グリップ性能を向上させる観点から、水酸化アルミニウムを含有することが好ましい。水酸化アルミニウムとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。水酸化アルミニウムは、混練り中に一部がシリカ以上のモース硬度を持つアルミナに転化したり、シリカと結合して固定化されたりするため、それらに起因するアルミナ塊や水酸化アルミニウムがアンカー効果を発現することとなり、氷上グリップ性能を向上させることができるといったことが考えられる。
水酸化アルミニウムの平均粒子径は、良好な耐摩耗性及び氷上グリップ性能が得られるという点から、好ましくは0.69μm以下、より好ましくは0.65μm以下、更に好ましくは0.62μm以下であり、好ましくは0.20μm以上、より好ましくは0.25μm以上である。水酸化アルミニウムの平均粒子径が0.69μmよりも大きいと、脱落してしまい、耐摩耗性が悪化する傾向がある。一方、水酸化アルミニウムの平均粒子径が0.20μm未満であると、接地時にゴムに埋没してしまい、氷上グリップ性能の向上に寄与できないおそれがある。
なお、水酸化アルミニウムの平均粒子径は、数平均粒子径であり、透過型電子顕微鏡により測定される値である。
水酸化アルミニウムの窒素吸着比表面積(NSA)は、良好な耐摩耗性及び氷上グリップ性能が得られるという点から、好ましくは10m/g以上、より好ましくは14m/g以上、更に好ましくは20m/g以上であり、好ましくは120m/g以下、より好ましくは60m/g以下、更に好ましくは50m/g以下、特に好ましくは45m/g以下である。水酸化アルミニウムのNSAが10m/g未満であると、氷上グリップ性能、耐摩耗性の向上効果が充分とはならないおそれがある。一方、水酸化アルミニウムのNSAが120m/gを超えると、水酸化アルミニウムの粒径が小さくなり、接地時にゴムに埋没してしまい、氷上グリップ性能の向上に寄与できなかったり、自己凝集してしまい、性能を発現できなかったりするおそれがある。
なお、水酸化アルミニウムのNSAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
上記水酸化アルミニウムを配合する場合の、水酸化アルミニウムの含有量は、総ゴム固形分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。1質量部未満であると、水酸化アルミニウムによる改善効果が充分に得られない傾向がある。水酸化アルミニウムの含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。60質量部を超えると、充分な耐摩耗性を確保できないおそれがある。
このように、氷上グリップ性能の向上を目的として、本発明におけるゴム組成物は、更に、軟化点が104〜126℃であるテルペン系樹脂、及び/又は、窒素吸着比表面積が10〜60m/gである水酸化アルミニウムを含有することもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記ゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、加工助剤、老化防止剤、ワックス、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
本発明におけるゴム組成物は、以下の方法など、従来公知の方法で製造できる。
先ず、バンバリーミキサー、オープンロールなどのゴム混練装置に架橋剤及び加硫促進剤以外の成分を配合(添加)して混練りした後(ベース練り工程)、得られた混練物に、更に架橋剤及び加硫促進剤を配合(添加)して混練りし(F練り)、その後加硫する方法などにより製造できる。該ゴム組成物は、タイヤのトレッドに使用される。
上記ベース練り工程は、上記ゴム成分等を混練するものであれば特に限定されず、1工程でベース練り工程を行う方法の他に、ゴム成分、シリカ半量、カーボンブラック、シランカップリング剤半量を混練するX練り、X練りで混練した混練物、残りのシリカ、残りのシランカップリング剤、架橋剤及び加硫促進剤を除くその他の成分を混練するY練り等に分割した複数のベース練りから成る工程でもよい。
本発明の冬用タイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状に合わせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを製造することができる。これにより、前述の成分を配合したトレッドを有する冬用タイヤが得られる。
本発明の冬用タイヤは、乗用車用、大型乗用車用、大型SUV用、ライトトラック、トラック、バスなどのスタッドレスタイヤ、スノータイヤ、スパイクタイヤなどに好適に用いることができる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下で製造するポリマーの物性については次のように測定した。
〔シス含量〕
赤外吸収スペクトル分析法により測定した。
〔重量平均分子量(Mw)〕
下記の条件(1)〜(8)でゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)を測定した。
(1)装置:東ソー(株)製のHLC−8220
(2)分離カラム:東ソー(株)製のHM―H(2本直列)
(3)測定温度:40℃
(4)キャリア:テトラヒドロフラン
(5)流量:0.6mL/分
(6)注入量:5μL
(7)検出器:示差屈折
(8)分子量標準:標準ポリスチレン
〔ビニル含量〕
赤外吸収スペクトル分析法により測定した。
〔結合スチレン量〕
日本電子(株)製JNM−ECAシリーズのNMR装置を用いて測定した。
<末端変性剤の作製>
窒素雰囲気下、250mlメスフラスコに3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(アヅマックス(株)製)を20.8g入れ、さらに無水ヘキサン(関東化学(株)製)を加え、全量を250mlにして作製した。
<製造例1(変性BR)>
充分に窒素置換した30L耐圧容器にシクロヘキサン(関東化学(株)製)を18L、ブタジエン(高千穂商事(株)製)を2000g、ジエチルエーテル(関東化学(株)製)を53mmol加え、60℃に昇温した。次に、ブチルリチウム(関東化学(株)製)を16.6mL加えた後、3時間撹拌した。次に0.4mol/Lの四塩化ケイ素/ヘキサン溶液を12ml加え、30分撹拌を行った。次に、上記末端変性剤を13mL追加し30分間撹拌を行った。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール(大内新興化学工業(株)製)0.2gを溶かしたメタノール(関東化学(株)製)2mLを添加後、反応溶液を18Lのメタノールが入ったステンレス容器に入れて凝集体を回収した。得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、変性BR(BR5)を得た。シス含量は38モル%であった。Mwは42万であり、ビニル含量は13モル%であった。
<製造例2(変性SBR)>
充分に窒素置換した30L耐圧容器にn−ヘキサンを18L、スチレン(関東化学(株)製)を740g、ブタジエンを1260g、テトラメチルエチレンジアミンを17mmol加え、40℃に昇温した。次に、ブチルリチウムを10.5mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌した。次に0.4mol/Lの四塩化ケイ素/ヘキサン溶液を3.5ml加え、30分撹拌を行った。次に、上記末端変性剤を30mL追加し30分間撹拌を行った。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール(大内新興化学工業(株)製)0.2gを溶かしたメタノール(関東化学(株)製)2mLを添加後、反応溶液を18Lのメタノールが入ったステンレス容器に入れて凝集体を回収した。得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、変性SBR(SBR2)を得た。結合スチレン量は37.5質量%であった。Mwは92.5万であり、ビニル含量は55.8モル%であった。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
IR:JSR社製のIR2200
BR1:ランクセス社製のBUNA−CB24(Nd系触媒を用いて合成されたNd系BR、非油展、シス含量:97モル%)
BR2:宇部興産社製のBR133P(Co系触媒を用いて合成されたCo系BR、油展(パラフィンオイル)、ゴム成分100質量部に対してパラフィンオイルを37.5質量部含有、ビニル含量:2モル%、シス含量:96モル%、Mw:40万)
BR3:ランクセス社製のBUNA−CB29 TDAE(Nd系BR、油展)
BR4:ランクセス社製のBUNA−CB29 MES(Nd系BR、油展)
BR5:製造例1で作製したシリカ変性BR(非油展、ビニル含量:13モル%、シス含量:38モル%、Mw:42万)
SBR1:日本ゼオン(株)製のNipol 9548(E−SBR、油展、ゴム成分100質量部に対してオイルを37.5質量部含有、結合スチレン量:35質量%、ビニル含量:18モル%、Mw:108.5万)
SBR2:製造例2で作製したシリカ変性SBR(非油展、結合スチレン量:37.5質量%、ビニル含量:55.8モル%、Mw:92.5万)
カーボンブラック1:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(NSA:114m/g)
カーボンブラック2:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN134(NSA:148m/g)
シリカ1:Rhodia社製のZeosil 1085Gr(NSA:90m/g)
シリカ2:Evonik社製のULTRASIL VN3(NSA:175m/g)
レジン1:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C10(液状クマロンインデン樹脂、軟化点:5〜15℃)
レジン2:Arizona chemical社製のSYLVARES SA85(α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体、軟化点:85℃、Mw:1000)
レジン3:アリゾナケミカル社製のSylvares TR5147(ポリテルペン樹脂(リモネン樹脂)、軟化点:115℃、水酸基価:約0)
レジン4:ヤスハラケミカル社製のYSレジンPX1150N(β−ピネン樹脂、軟化点:115℃、水酸基価:約0)
レジン5:ヤスハラケミカル社製のYSレジンTO115(テルペンスチレン樹脂、軟化点:115℃、水酸基価:約0)
水酸化アルミニウム1:ATH#Bの乾式粉砕品(平均粒子径:0.15μm、NSA:61m/g)
水酸化アルミニウム2:ATH#Bの乾式粉砕品(平均粒子径:0.25μm、NSA:45m/g)
水酸化アルミニウム3:住友化学社製のATH#B(平均粒子径:0.6μm、NSA:15m/g)
水酸化アルミニウム4:昭和電工社製のハイジライトH43(平均粒子径:0.75μm、NSA:6.7m/g)
パラフィンオイル:ジャパンエナジー社製のP200
TDAEオイル:H&R社製のVivaTec400
ワックス:日本精鑞社製のOxoace355
6PPD:住友化学社製のアンチゲン6C(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)
TMQ:大内新興化学工業社製のノクラック224(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
ステアリン酸:日油社製のステアリン酸「椿」
亜鉛華:東邦亜鉛社製の銀嶺R
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
5%オイル含有粉末硫黄:細井化学工業社製のHK−200−5
TBBS:大内新興化学工業社製のノクセラーNS−G(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
DPG:大内新興化学工業社製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)
ハイブリッド架橋剤:ランクセス社製のVulcuren VP KA9188(1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン)(硫黄含有量:20.6%)
なお、上記BR1〜5、SBR1〜2の物性値を、以下の表1、2にまとめて示す。
Figure 0006215959
Figure 0006215959
<実施例及び比較例>
表3〜5に示す配合内容に従い、バンバリーミキサーを用いて、まず、ゴム成分及びカーボンブラックの全量と、シリカ及びシランカップリング剤の1/2量ずつとを150℃の条件下で5分間混練りした後(X練り)、シリカ及びシランカップリング剤の残りと、架橋剤及び加硫促進剤以外の残りの材料(老化防止剤、亜鉛華、レジンなど)とを添加して150℃の条件下で4分間混練りし(Y練り)、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に架橋剤及び加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて、105℃の条件下で4分間練り込み(F練り)、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で12分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に押出し成形し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、170℃の条件下で12分間加硫し、試験用冬用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15、乗用車用タイヤ)を得た。
得られた加硫ゴム組成物及び試験用冬用タイヤを使用して、下記の評価を行った。評価結果を表3〜5に示す。
(硬度(Hs))
JIS K6253「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−硬さの求め方」に準じて、タイプAデュロメーターにより、25℃における加硫ゴム組成物の硬度(ショアA)を測定した。
なお、安全性(操縦安定性)確保の面から、実施例及び比較例では、25℃での硬度が一定の範囲内(52±1)となるように配合内容を調節している。硬度を一定の範囲内に揃えて初めて破断強度、ウェットグリップ性能、耐摩耗性の適切な比較が可能となる。
(引張試験)
加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型試験片を用いて、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、室温にて引張試験を実施し、破断時伸びEB(%)を測定し、比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほど、機械的強度が高く、耐久性に優れることを示し、指数95以上なら、実用的に問題ない機械的強度である。
(ウェットグリップ性能)
上記試験用冬用タイヤを排気量2000ccの国産FR乗用車に装着し、ウェットアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際における、操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価し、比較例1を100として指数表示をした。指数が大きいほどウェットグリップ性能に優れることを示し、指数95以上なら、実用的に問題ないウェットグリップ性能である。
なお、ウェットグリップ性能は氷上グリップ性能と同様の傾向を示すことが知られていることから、ウェットグリップ性能に優れる冬用タイヤは、氷上グリップ性能にも優れたものであるということができる。
(耐摩耗性)
上記試験用冬用タイヤを排気量2000ccの国産FR乗用車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて実車走行を行った。その際におけるタイヤトレッドゴムの残溝量を計測した(新品時8.0mm)。比較例1の残溝量を100として指数表示し、指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示し、指数105以上なら、比較例1に対して優位といえる耐摩耗性である。そして更には、指数120以上ならば、耐摩耗性に特に優れているといえる。
Figure 0006215959
Figure 0006215959
Figure 0006215959
表3〜5中の「3性能平均」とは、EB指数、ウェットグリップ性能指数、及び、耐摩耗性指数の3つの指数の平均値であり、この値が105以上であれば、当該3つの性能がバランス良く改善されているといえ、更に115以上であれば、特に当該3つの性能がバランス良く優れているといえる。
表3〜5の結果より、特定の油展ブタジエンゴムと、イソプレン系ジエンゴムと、シリカと、カーボンブラックとを所定量含有するゴム組成物を用いた実施例では、氷上グリップ性能、耐摩耗性及び機械的強度をバランス良く改善できることが明らかとなった。特に、本発明における特定の油展ブタジエンゴムに含まれるブタジエンゴム分の含有量を総ゴム固形分100質量%中35〜65質量%とした実施例において、「3性能平均」の値が115以上を示し、氷上グリップ性能、耐摩耗性及び機械的強度の3つの性能に特にバランス良く優れることが分かる。

Claims (6)

  1. ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する冬用タイヤであって、
    該ゴム組成物は、シス含量95モル%以上、ビニル含量1モル%以下、重量平均分子量53万以上の油展ブタジエンゴムと、イソプレン系ジエンゴムと、シリカと、カーボンブラックとを含有し、
    該油展ブタジエンゴムが希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムであり、
    総ゴム固形分100質量%中、前記油展ブタジエンゴムに含まれるブタジエンゴム分の含有量が8〜80質量%、前記イソプレン系ジエンゴムの含有量が13〜80質量%であり、
    総ゴム固形分100質量部に対して、前記シリカの含有量が15〜125質量部、前記カーボンブラックの含有量が3〜70質量部、前記シリカ及びカーボンブラックの合計含有量が45〜130質量部である
    ことを特徴とする冬用タイヤ。
  2. 前記総ゴム固形分100質量部に対して、架橋剤由来の全硫黄量が0.5〜1.4質量部である請求項1記載の冬用タイヤ。
  3. 前記油展ブタジエンゴムの重量平均分子量が70万以上である請求項1又は2記載の冬用タイヤ。
  4. 前記ゴム組成物は、更に、軟化点が104〜126℃であるテルペン系樹脂、及び/又は、窒素吸着比表面積が10〜60m/gである水酸化アルミニウムを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の冬用タイヤ。
  5. 前記総ゴム固形分100質量%中、前記油展ブタジエンゴムに含まれるブタジエンゴム分の含有量が20〜70質量%、前記イソプレン系ジエンゴムの含有量が30〜70質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の冬用タイヤ。
  6. 前記総ゴム固形分100質量部に対して、架橋剤由来の全硫黄量が0.5〜1.0質量部である請求項2記載の冬用タイヤ
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