JP6292014B2 - 導電性ペーストおよびセラミック電子部品 - Google Patents
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Description
すなわち、導電性ペースト含まれるNi粉末の分散性が悪化すると、積層セラミックコンデンサの作製時において、導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷し乾燥した場合、塗膜上にはNi粉末の再凝集による塊状物の発生や、塗膜表面粗さが悪化し、その結果、積層セラミックコンデンサの耐電圧特性や静電容量等の電気的特性を著しく劣化させるといった問題が生ずる。
また、導電性ペーストの分散性が悪いと、導電性ペーストを放置した場合、Ni粉末の沈降分離や導電性ペーストの粘度安定性に悪影響を及ぼすといった問題が生ずる。
また、この発明にかかるセラミック電子部品は、前述の導電性ペーストを用いて導体パターンが作製されたこと、を特徴とする、セラミック電子部品である。
また、この発明にかかるセラミック電子部品では、内部電極がセラミック本体に埋設されたセラミック電子部品において、前記内部電極が、本発明の導電性ペーストを使用して形成されているので、塗膜の平滑性を確保することが可能となり、電気的特性の良好なセラミック電子部品を高効率で得ることができる。
導電性ペーストは、Ni粉末と、共材であるBa、Tiを含むペロブスカイト型酸化物と、分散剤と、バインダ樹脂と、有機溶剤とを含む。
XPS法は、被測定試料であるNi粉末の表面組成、化学状態を分析する電子分光法の一種であり、Ni粉末の表面にX線を照射した時に光電効果によって原子から放出される光電子のエネルギー分布、具体的にはX線によって励起される光電子の運動エネルギーを測定することにより、X線エネルギーと前記運動エネルギーとの差、すなわち束縛エネルギーを求め、これにより元素の同定と化学状態を分析することができる。
図1は、前述の導電性ペーストを用いて内部電極が形成された積層セラミックコンデンサ1を示す長さ方向の垂直断面図である。
積層セラミックコンデンサ1は、セラミック本体10と、セラミック本体10の左右の端部に形成された外部電極20,22とを備えている。
次に、前述の積層セラミックコンデンサ1の製造方法を説明する。
まず、誘電体材料として、Ba、Tiを主たる成分とするペロブスカイト型酸化物が準備される。この誘電体材料から得られた誘電体粉末に有機バインダ、有機溶剤、可塑剤および分散剤を所定の割合で混合し、セラミックスラリーが作製される。このセラミックスラリーは、樹脂フィルム上に、たとえば、乾燥後の厚みが3.0μmとなるようにして、内層もしくは外層用セラミックグリーンシートに成形される。
次に、Ni粉末と、共材であるBa,Tiを含むペロブスカイト型酸化物と、ポリカルボン酸系分散剤と、バインダ樹脂と、有機溶剤とが準備される。
次に、内層用セラミックグリーンシート上に、たとえば、乾燥後の厚みが1±0.1μmになるように本発明にかかる導電性ペーストがスクリーン印刷され、内部電極12,13となる導電性ペースト膜(焼成前の導体パターン)が形成される。
1.実験例
以下、実験例の試料が作製され、導電性ペーストの特性評価(粘度変化率測定、塗膜平滑性、Ni/共材分散状態、耐電圧不良率評価、容量低下品の発生率)が行われた。
まず、内層用および外層用セラミック層の主成分は、誘電体材料として、Ba、Tiを含むペロブスカイト型酸化物を使用した。上記セラミックス誘電体粉末を有機バインダ、有機溶剤、可塑剤、分散剤を所定の割合で混合し、セラミックスラリーを調整した。それから、このセラミックスラリーを樹脂フィルム上に、乾燥後の厚みが3.0μmになるように形成して、内層用もしくは外層用セラミックグリーンシートを作製した。
次に、この内層用セラミックグリーンシートに、焼成後のセラミック素子の大きさ(3.2mm×1.6mm)に対応するようなパターンで、導電性ペーストを乾燥後の厚みが1±0.1μmになるようにスクリーン印刷した。
なお、導電性ペーストとしては、表1に示すような表面組成とした、Ni粉末を50重量部と、共材としてBa、Tiを含むペロブスカイト型酸化物を5重量部と、ブチルカルビトールに表1に示すような酸点量としたそれぞれの樹脂10重量部を溶解した樹脂溶液と、表1に示すような酸点量としたポリカルボン酸系分散剤1重量部と、残部としてブチルカルビトールを配合してなる、表1に示した各試料の導電性ペーストが作製された。
また、バインダ樹脂として用いられる表1に示すそれぞれの樹脂種に対する酸点量は、カリウムメトキシドを滴定溶媒とした中和滴定により、バインダ樹脂の酸点量測定をした。
それから、導電性ペーストをスクリーン印刷した内層用セラミックグリーンシートおよび外層用セラミックグリーンシートを樹脂フィルムから剥離後、あわせて350枚重ねて、圧着することにより積層体を形成し、この積層体を所定の大きさにカットして個々の未焼成のセラミック本体に分割した。
(粘度変化率測定)
粘度変化率は、E型粘度計により、初期粘度を20℃、1rpmの条件で測定し、下記式により30日後の初期粘度からの変化率(粘度変化率)を算出した。
30日後の初期粘度からの変化率(%)=(30日後の粘度−初期粘度)/初期粘度×100
塗膜平滑性は、印刷した印刷塗膜表面をレーザー顕微鏡(対物レンズ×10、n=5)で観察し、面内表面粗さSaを算出した。
Ni/共材分散状態は、印刷した印刷塗膜表面をFE−SEMを用いて、倍率×10000、視野数n=20視野の条件で測定し、1μm以上の共材の凝集が1つでもある場合、NGと判断した。測定箇所は、電極塗膜の中心部とした。
耐電圧不良率は、各試料の10000個に対して、150Vの直流電圧を印加したときの短絡不良の有無を測定し、下記式により算出した。
耐電圧不良率=短絡した試料数/10000
静電容量低下品の発生率は、各試料10000個に対して、静電容量を測定し、設計容量の90%に満たない試料を容量低下品と判断し、その発生率を算出した。
表2は、粘度変化率測定、塗膜平滑性、Ni/共材分散状態、耐電圧不良率評価および容量低下品の発生率のそれぞれの評価結果を示す。
試料番号1ないし試料番号4の導電性ペーストは、Ni粉末と、共材であるBa,Tiを含むペロブスカイト型酸化物と、ポリカルボン酸系分散剤と、バインダ樹脂と、有機溶剤とを含み、Ni粉末の表面組成は、Niが3〜22mol%、Ni(OH)2が64〜85mol%、NiOが0〜14mol%であり、ポリカルボン酸系分散剤の酸点量は、500〜2000μmol/gであり、バインダ樹脂として、たとえば、ブチルカルビトールに樹脂を溶解した樹脂溶液が用いられ、酸点量は、15〜100μmol/gである。
この導電性ペーストでは、Ni粉末と共材と分散剤とバインダ樹脂との相互作用が適正化され、その結果、良好な粘度安定性、塗膜特性を得ることができ、加えて、この導電性ペーストを用いた試料は、良好な電気的特性が得られていると考えられる。
10 セラミック本体
11 内層用セラミック層
12,13 内部電極
15a,15b 外層用セラミック層
20,22 外部電極
Claims (2)
- 少なくとも金属成分と、酸化物と、分散剤と、バインダ樹脂とを含有する導電性ペーストであって、
前記金属成分は、その表面組成が、Ni:3〜22mol%、Ni(OH)2:64〜85mol%、NiO:0〜14mol%のNi粉末であり、
前記分散剤の酸点量は、500〜2000μmol/gであり、
前記バインダ樹脂の酸点量は、15〜100μmol/gであること、
を特徴とする、導電性ペースト。 - 請求項1に記載の導電性ペーストを用いて導体パターンが作製されたこと、を特徴とする、セラミック電子部品。
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