以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置100の概略構成を示すブロック図である。撮像装置100は、被写体を撮像して得られた画像情報を記憶媒体に記憶するだけでなく、画像情報を記憶媒体から再生し、現像処理して表示する機能や、画像情報を外部の装置やサーバ(クラウド)等と送受信する機能を有する。したがって、撮像装置100は、換言すれば、画像処理装置、記憶装置、再生装置、記憶再生装置或いは通信装置と表現することができる。
撮像装置100は、制御部161、操作部162、表示部123、撮像光学部101、撮像センサ102、センサ信号処理部103、認識部131、カメラ制御部104及び評価値算出部105を備える。また、撮像装置100は、現像部110、RAW圧縮部113、RAW伸張部114及びバッファ115を備える。更に、撮像装置100は、表示処理部122、外部出力端子124、静止画伸張部143、動画伸張部144、静止画圧縮部141、動画圧縮部142、記憶再生部151、記憶媒体152、通信部153及び通信端子154を備える。
制御部161は、不図示であるが、CPUと、CPUが実行する制御プログラム等を格納するROMと、制御プログラムを展開するワークエリアとして機能すると共にCPUが取り扱う各種データやパラメータを一時記憶するRAM等を含む。制御部161は、制御プログラムを実行して、撮像装置100を構成する各ブロックの動作や処理を制御することにより、撮像装置100の全体的な動作を制御する。
操作部162は、ユーザが撮像装置100に対して指示を与えるために用いるキーやボタン、タッチパネル等の入力デバイスを含む。操作部162を操作することにより発生する操作信号は制御部161によって検出され、制御部161は入力操作に応じた動作が実行されるように撮像装置100を制御する。表示部123は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置を含み、撮影中の被写体像や撮影された映像(画像)、撮像装置100の動作条件を設定するためのメニュー画面や各種情報等を表示する。
撮像光学部101は、不図示のズームレンズやフォーカスレンズ等の各種のレンズを有する。また、撮像光学部101は、機械的な絞りやシャッタ等を備えていてもよい。撮像センサ102は、例えばCMOSセンサ等であり、光電変換素子とベイヤー配列型カラーフィルタ等とを含む。操作部162によって撮影動作の開始が指示されると、撮像対象となる被写体の光学像が撮像光学部101を介して入力され、撮像センサ102上に結像する。このとき、カメラ制御部104が、評価値算出部105から取得する評価値や認識部131によって抽出される被写体情報に基づいて、撮影時における撮像光学部101及び撮像センサ102の動作を制御する。なお、評価値算出部105が算出する評価値と、認識部131が抽出する被写体情報の詳細ついては、後述する。
撮像センサ102により光電変換された電気信号に対して、センサ信号処理部103によって画素の修復処理が施される。センサ信号処理部103が実行する画素の修復処理には、撮像センサ102における欠落画素や信頼性の低い画素の値に対して、周辺画素値を用いて修復対象の画素を補間する処理や、所定のオフセット値を減算する処理が含まれる。以下の説明では、センサ信号処理部103から出力される画像情報である生の画像(未現像の画像データ)を「RAW画像」と称呼することとする。ただし、RAW画像の定義としてはこれに限らず、後述するデベイヤ−処理を施した画像でも、非線形な変換処理が施される前までをRAW画像と呼ぶこともある。センサ信号処理部103から出力されるRAW画像は、評価値算出部105、現像部110及びRAW圧縮部113へ供給される。
RAW画像は、現像部110において現像処理される。現像部110は、簡易現像部111(第1の現像部)と、高画質現像部112(第2の現像部)と、現像部110からの出力を簡易現像部111と高画質現像部112のどちらから行うかを選択するスイッチ部121とを有する。簡易現像部111と高画質現像部112は共に、RAW画像に対してデベイヤー処理(デモザイク処理)を施して、RAW画像を輝度と色差から成る信号に変換した後、各信号に含まれるノイズを除去し、光学的な歪を補正して画像を適正化する等の、所謂、現像処理を行う。
高画質現像部112は、簡易現像部111よりも各処理を高精度に行う。よって、簡易現像部111による現像処理後の現像画像よりも高画質な現像画像が高画質現像部112による現像処理によって得られる。しかし、その一方で、高画質現像部112では、現像処理のための処理負荷が簡易現像部111よりも大きくなる。そこで、本実施形態では、高画質現像部112は、撮影と並行したリアルタイムの現像に特化したものではなく、撮影後に時間をかけて分散処理を行うことが可能な構成となっており、これにより、回路規模や消費電力の増大(ピーク)を低く抑える。
他方、簡易現像部111は、高速に現像処理を行えるように、高画質現像部112よりも現像処理のための処理負荷が小さくなるように構成されている。そのため、簡易現像部111で生成される現像画像の画質は、高画質現像部112で生成される現像画像の画質よりも低いものの、撮影動作と並行したリアルタイムのRAW画像の現像には、簡易現像部111を用いるようにする。
スイッチ部121は、操作部162によりユーザから指示された操作内容や実行中の動作モードに応じた制御に従って、制御部161によって切り替えられる。なお、本実施形態では、現像部110の中に簡易現像部111と高画質現像部112とが独立に存在する構成としたが、1つの現像部が動作モードを切り替えることで簡易現像と高画質現像とを排他的に行うことができる構成となっていてもよい。以下の説明では、簡易現像部111から出力される簡易現像後の画像情報を「簡易画像情報」と称呼し、高画質現像部112から出力される高画質現像後の画像情報を「高画質画像情報」と称呼することとする。また、以下の説明では、簡易画像情報と高画質画像情報とを区別しない場合には、これらを併せた称呼として、適宜、「現像画像情報」を用いることとする。
現像部110から出力される現像画像情報は、表示処理部122によって所定の表示処理がなされた後、表示部123に表示される。また、撮像装置100では、現像画像情報を外部出力端子124を介して外部に接続された表示機器(不図示)に出力することができるようになっている。外部出力端子124は、例えばHDMI(登録商標)やSDIのような汎用インタフェースである。
現像部110から出力される現像画像情報(主に簡易画像情報)は、評価値算出部105へ供給される。評価値算出部105は、センサ信号処理部103から取得したRAW画像或いは現像部110から取得した現像画像情報に含まれる輝度値やコントラスト値等から、フォーカス状態や露出状態等の評価値を算出する。
現像部110から出力される現像画像情報(主に簡易画像情報)は、認識部131へ供給される。認識部131は、現像画像情報から被写体情報を抽出し、認識する機能を有する。具体的には、現像画像情報によって表される画像内に人物の顔があるか否かを検出し、顔がある場合には顔の位置を示す情報を出力し、更に、顔の特徴情報(例えば、顔の形、目、鼻、口等の位置等)に基づいて特定の人物の認証(顔認証)等を行う。
現像部110から出力される現像画像情報は、静止画圧縮部141及び動画圧縮部142へ供給される。現像画像情報を静止画として圧縮する場合には静止画圧縮部141が用いられ、現像画像情報を動画として圧縮する場合には動画圧縮部142を用いる。静止画圧縮部141及び動画圧縮部142はそれぞれ、圧縮対象となる現像画像情報を高能率符号化(圧縮符号化)し、情報量が圧縮された画像情報を生成して、画像ファイル(静止画ファイル、動画ファイル)に変換する。なお、静止画圧縮にはJPEG等を、動画圧縮にはMPEG−2やH.264、H.265等を用いることができる。
RAW圧縮部113は、センサ信号処理部103から出力されたRAW画像を、ウェーブレット変換や差分符号化等の技術を用いて高能率符号化して、圧縮されたRAWファイル(以下「圧縮RAWファイル」という)に変換し、バッファ115に格納する。バッファ115は、圧縮RAWファイルを一時的に記憶する記憶手段である。バッファ115に格納された圧縮RAWファイルは後に読み出すことができるが、圧縮RAWファイルをバッファ115に格納した後には、別の記憶媒体に移動して記憶させると同時に、バッファ115から削除されるように構成してもよい。
圧縮RAWファイル、静止画ファイル及び動画ファイルは、記憶再生部151によって記憶媒体152に記憶される。記憶媒体152は、内蔵式の大容量メモリやハードディスク、着脱式のメモリカード等である。記憶再生部151は、記憶媒体152から静止画ファイル、動画ファイル及び圧縮RAWファイルを読み出すこともできる。また、記憶再生部151は、通信部153を介して外部の不図示のストレージやサーバに対して、静止画ファイル等の各種ファイルの書き込みと読み出しを行うことができる。通信部153は通信端子154を用いて、無線通信或いは有線通信により、不図示のインターネットや外部機器にアクセスする機能を有する。
操作部162を通して静止画又は動画の再生動作が指示されると、制御部161の制御下において、記憶再生部151は、記憶媒体152から又は通信部153を介して、所定のファイルを取得する。記憶再生部151は、再生対象がRAW画像である場合には、取得した圧縮RAWファイルをバッファ115に格納する。また、記憶再生部151は、再生対象が静止画である場合には、取得した静止画ファイルを静止画伸張部143へ供給し、再生対象が動画である場合には、取得した動画ファイルを動画伸張部144へ供給する。RAW伸張部114は、取得した圧縮RAWファイルを復号して伸張し、伸張RAWファイルを生成する。RAW伸張部114は、生成した伸張RAWファイルを、現像部110の簡易現像部111又は高画質現像部112へ供給する。静止画伸張部143は、取得した静止画ファイルを復号して伸張し、静止画の再生画像として表示処理部122へ供給する。動画伸張部144は、取得した動画ファイルを復号して伸張し、動画の再生画像として表示処理部122へ供給する。表示処理部122は、取得した静止画又は動画の再生画像に対して必要な表示処理を施して表示部123に表示する。
上記の通りに構成された撮像装置100には、静止画撮影モード、静止画再生モード、動画撮影モード、動画再生モードの4つの動作モードがある。これらの動作モードはそれぞれ、アイドル状態を経由して切り替え可能となっており、ユーザによる操作部162の操作、指示により切り替えられるようになっている。また、これらの動作モードはそれぞれ、制御部161の判断にしたがって自動的に切り替わる場合がある。
図2は、撮像装置100が静止画撮影モードにあるときの処理のフローチャートである。図2に示す各処理は、制御部161が有するCPUがROMに格納されているプログラムをRAMに展開し、実行することにより、制御部161の制御下で撮像装置100の各ブロックが所定の動作と処理を実行することにより実現される。
静止画撮影モードでの処理が開始されると、ステップS201において、制御部161が、撮像装置100における情報処理負荷(以下「処理負荷」という)が小さい状況にあるか否かを判定する。制御部161は、処理負荷が小さい場合(S201でYES)、撮像装置100がアイドル状態にあると判定し、処理をステップS220へ進めてアイドル状態での処理を実行し、処理負荷が小さくない場合(S201でNO)、処理をステップS202へ進める。例えば、静止画の高速連写中は処理負荷が大きいため、常に処理はステップS202へ進められる。一方、通常の単発撮影を行う場合、第1の撮影と第2の撮影の合間(1枚の静止画を撮影してから、次の静止画の撮影を行うまでの間)に、例えば半分の頻度で、処理はステップS220へ進められる。
ステップS202では、カメラ制御部104が、好適な条件で撮影が行われるように、撮像光学部101と撮像センサ102の動作を制御する(カメラ制御)。具体的には、ユーザのズームやフォーカスの指示に従って、撮像光学部101が有するレンズの移動が行われ、撮影画素数の指示に従って撮像センサ102の読み出し領域が設定される。また、評価値算出部105が算出した評価値や認識部131が検出した被写体情報に基づいて、特定の被写体へのフォーカス調整や追尾等の制御が行われる。
続くステップS203では、センサ信号処理部103が、撮像センサ102から出力される電気信号に対して、画素の修復のための信号処理(欠落画素、信頼性の低い画素の値に対する周辺画素値を用いた補間処理、所定のオフセット値の減算処理等)を施す。これにより、センサ信号処理部103からRAW画像が出力される。その後のステップS204では、簡易現像部111がRAW画像を現像処理する。このとき、制御部161は、現像部110から簡易現像部111で生成された簡易画像情報が出力されるように、スイッチ部121を設定する。
なお、簡易現像部111は、具体的には、現像後の画像サイズを200万画素以下に制限し、ノイズ除去や光学的な歪補正を限定的な処理に留め或いは省く等して、現像の高速処理や簡易処理を実現する。これにより撮像装置100では、例えば200万画素の毎秒60コマというパフォーマンスの撮影を、小さい回路規模で、且つ、少ない消費電力で実現することができる。
簡易現像部111から出力される簡易画像情報は、評価値算出部105へ供給される。これにより、ステップS205では、評価値算出部105が、簡易画像情報からフォーカス状態や露出状態等の評価値を算出する。なお、評価値算出部105は、センサ信号処理部103からRAW画像を取得して、RAW画像から前記の評価値を算出するようにしてもよい。また、簡易現像部111から出力される簡易画像情報は、認識部131へ供給される。これにより、ステップS206では、認識部131が、簡易画像情報に基づいて被写体検出を行い、被写体情報を生成して、出力する。更に、簡易現像部111から出力される簡易画像情報は、表示処理部122へ供給される。これによりステップS207では、表示処理部122が、取得した簡易画像情報から表示画像を生成し、表示部123又は外部出力端子124を経由して外部のテレビジョン等の他の表示装置に出力する。こうして、画像表示が行われる。
なお、表示部123による表示画像は、静止画撮影モードにおいて、ユーザが被写体を適切にフレーミングするためのライブビュー表示(撮影スルー画像表示)に用いられる。また、表示処理部122は、評価値算出部105から供給される評価値や認識部131から供給される被写体情報を活用して、例えば、表示画像上の合焦領域へのマーキング表示や認識された顔の位置への枠表示等を行うことができる。
その後のステップS208において、制御部161は、ユーザから撮影指示が入力されたか否かを判定する。撮影指示は、不図示のシャッタボタンの押下や、表示部123がタッチパネル機能を有する場合におけるタッチパネルへのタッチにより行われる。制御部161は、撮影指示がない場合(S208でNO)、処理をステップS201へ戻し、撮影指示があった場合(S208でYES)、処理をステップS209へ進める。
ステップS208の撮影指示に応答して、簡易現像部111で現像処理された簡易画像情報が静止画圧縮部141へ供給される。これによりステップS209では、静止画圧縮部141が、JPEG等の周知の静止画圧縮技術を用いて、取得した簡易画像情報に対して高能率符号化処理(静止画圧縮)を施し、静止画ファイルを生成する。続くステップS210では、記憶再生部151が、ステップS309で生成した静止画ファイルを記憶媒体152に記憶する。
また、ステップS208の撮影指示に応答して、RAW圧縮部113は、撮影された静止画に対応するRAW画像をセンサ信号処理部103から取得する。そこで、ステップS211では、RAW圧縮部113が、取得したRAW画像に対して高能率符号化処理(RAW圧縮)を施し、RAWファイルを生成して、バッファ115に格納する。
なお、RAW圧縮部113が行う高能率符号化処理は、非可逆符号化でもあってもよいし、可逆符号化であってもよい。また、RAW圧縮部113によるRAW圧縮を省略して、RAW画像が非圧縮の状態のままスルー出力されるようにしてもよい。本実施形態では、RAW圧縮の有無にかかわらず、センサ信号処理部103から出力されるRAW画像の情報を大きく損なうことのない、高画質ファイルとして復元可能なRAWファイルが生成される。
ステップS212では、記憶再生部151が、ステップS211で生成されたRAWファイルを記憶媒体152に記憶する。なお、ステップS210,S212において、記憶再生部151は、静止画ファイル及び/又はRAWファイルを、通信部153を介し、通信端子154を通して、外部のストレージへ送信して記憶するようにしてもよい。
その後のステップS213において、制御部161は、現像優先度を管理する現像優先度設定ファイルの生成と更新を行う。現像優先度は、後述する追いかけ現像処理において複数の高画質現像部112による現像処理が終わっていない画像が存在する場合にどの画像から先に現像処理を行うかを示すパラメータである。本実施形態では、現像優先度は、認識部131で認識された顔の数や人物の認証の結果に応じて設定される。具体的には、顔の数が多くなるにしたがって現像優先度は高く設定され、顔が予め登録されている人物が多くなるほど(顔認証に成功した人数が多くなるほど)、現像優先度はより高く設定される。例えば、認識された顔の数毎に1ポイントを加算し、登録された人物である場合には2ポイントを加算し、画像毎に算出した合計ポイントを現像優先度とする。これにより、現像優先度は、風景写真よりも人物写真の方が高くなり、また人物写真の中でも登録されている人物が映っている写真(例えば、家族や自分の写真)の方がより高くなる。
現像優先度をRAWファイルと関連付けたリストが、現像優先度ファイルとして作成され、記憶媒体152に記憶される。また、既に現像優先度ファイルが存在する場合には、作成した現像優先度ファイルをその末尾に追加することで、現像優先度ファイルは更新される。
図3は、現像優先度設定ファイルの例を示す図である。図3に示すように、現像優先度設定ファイルでは、RAWファイルのファイル名と現像優先度とがセットになったデータで構成される。ステップS213での現像優先度設定ファイルの生成、更新が行われると、制御部161により、処理はステップS201に戻される。
ここで、静止画ファイルと静止画のRAWファイルのそれぞれのファイル構造について説明する。図4(a)は、静止画ファイルのファイル構造の例を示す図であり、図4(b)は、静止画のRAWファイルのファイル構造の例を示す図である。
図4(a)に示すように、静止画ファイル400は、ヘッダ部401、メタデータ部402及び圧縮データ部403から成る。ヘッダ部401には、このファイルが静止画ファイルの形式であることを示す識別コード等が含まれる。メタデータ部402は、RAWファイル名404、現像ステータス405及び撮影メタデータ406を含む。RAWファイル名404は、この静止画ファイルと同時に生成された静止画のRAWファイルのファイル名である。現像ステータス405は、この静止画ファイル400が簡易現像部111又は高画質現像部112によって現像されたことを示す情報である。一例として、現像ステータス405には、その静止画ファイルが簡易現像部111で生成されたものか高画質現像部112で生成されたものかを識別するためのフラグが立てられる。撮影メタデータ406は、評価値算出部105が算出した評価値や認識部131で検知された被写体情報、撮影時の情報(撮像光学部101のレンズ種別識別情報や撮像センサ102のセンサ種別識別情報等)を含む。なお、不図示であるが、メタデータ部402は、この静止画ファイル400と同時に生成されたRAWファイルが記憶されている記憶媒体152等の識別コードや記憶されているフォルダのパス情報等を更に含んでいてもよい。圧縮データ部403には、高能率符号化された静止画の圧縮データが含まれる。
図4(b)に示す静止画のRAWファイル410は、ヘッダ部411、メタデータ部412及び圧縮データ部413から成る。ヘッダ部411には、このファイルがRAWファイルの形式であることを示す識別コード等が含まれる。メタデータ部412は、ファイル名414、現像ステータス415及び撮影メタデータ416を含む。ファイル名414は、このRAWファイルと同時に生成された静止画ファイルのファイル名である。現像ステータス415は、ファイル名414が示す静止画ファイルが簡易現像部111又は高画質現像部112によって現像されたことを示す情報である。撮影メタデータ416は、評価値算出部105が算出した評価値や認識部131で検知された被写体情報、撮影時の情報(撮像光学部101のレンズ種別識別情報や撮像センサ102のセンサ種別識別情報等)を含む。なお、不図示であるが、メタデータ部412は、静止画のRAWファイル410と同時に生成された静止画ファイルが記憶されている記憶媒体152等の識別コードや記憶されているフォルダのパス情報などを更に含んでもいてもよい。更に、メタデータ部412は、RAWファイル410と同時に生成された静止画ファイル400自体をメタデータ化したデータを格納していてもよい。圧縮データ部413には、RAW画像を高能率符号化した圧縮データが含まれるが、圧縮されていないRAW画像のデータであってもよい。
なお、図4に示したファイル構造は一例であり、DCFやEXIF等の標準規格に準じた構成であってもよい。
上述の通り、撮像装置100は、静止画撮影モードにおいて、撮影指示があるまでのライブビュー表示や撮影指示に応答して生成される静止画ファイルのための現像処理を簡易現像部111によって行う。また、撮像装置100は、静止画の撮影指示に応答して、RAWファイルを生成するが、RAWファイルの生成に現像処理は必要とされない。そのため、撮像装置100では、静止画の画素数や連写スピードを高めながらも、小規模な回路を用いて、少ない消費電力でRAWファイルを記憶することができる。
次に、図2のステップS220について説明する。図5は、ステップS220のアイドル状態で実行される処理のフローチャートである。図5に示す各処理は、制御部161が有するCPUがROMに格納されているプログラムをRAMに展開し、実行することにより、制御部161の制御下で撮像装置100の各ブロックが所定の動作と処理を実行することにより実現される。
撮像装置100がアイドル状態にあるとき、ステップS501において、制御部161が、ユーザの設定により追いかけ現像を行うか否かを判定する。制御部161は、追いかけ現像を行わない場合(S501でNO)、処理をステップS502へ進め、追いかけ現像を行う場合(S501でYES)、処理をステップS520へ進める。
ステップS502,S503,S504,S505において、制御部161は、ユーザが静止画撮影モード、静止画再生モード、動画撮影モード及び動画再生モードの4つの動作モードからどの動作モードを選択したかを判定する。そして、制御部161は、撮像装置100を選択された動作モードで動作させるために、処理をステップS510,S511,S512,S513のいずれかに進める。ステップS502〜S505の処理は、その順序を問わず、全ての判定の結果が「NO」となった場合、処理はステップS501へ戻される。
ステップS520〜S527の処理は、追いかけ現像に関係する処理である。これらの処理について説明する前に、追いかけ現像について説明する。本実施形態において、「追いかけ現像」とは、撮影動作を終えた後、バッファ115又は記憶媒体152等に記憶されたRAWファイルをソースとして、改めて高画質に現像処理を施し、高画質の静止画ファイルや表示画像を生成する処理を指す。追いかけ現像は、静止画と動画の両方のRAWファイルを対象とするが、以下の説明では、静止画のRAWファイルを例に取り上げて説明を行うこととする。
既に説明した通り、撮影時に生成される静止画ファイルは、簡易現像部111で現像されたものであるため、その画質は高くはなく、よって、撮影内容の大まかな確認としては有効であるが、画像の細部の確認やプリントアウトの用途には十分ではない場合がある。一方、静止画ファイルと同時に生成されるRAWファイルは、画像情報を大きくは損なわないが、現像処理前のデータであるため、画像表示やプリントアウトに即時に対応することができず、現像処理を行う時間が必要となる。また、RAWファイルは、JPEG等のように広く普及したファイルではないため、RAWファイルを取り扱うことができる再生環境も限定されてしまう。
そこで、本実施形態では、追いかけ現像は、記憶されているRAWファイルを読み出して高画質現像部112による高画質な現像処理を行った後、所定の圧縮処理等を行って生成した静止画ファイルを記憶媒体152等に記憶することで実行される。そして、このような追いかけ現像を、撮影と撮影の合間やアイドル状態(スリープ状態)等のユーザ操作待ち状態、つまり、撮像装置100の処理負荷が比較的小さい状態において実行する。これにより、後に細部の確認表示やプリントアウト等の高画質な画像再生の要求に対して、その都度、現像処理を行う必要がなくなり、従来の静止画ファイルと同様の一般的な使用環境での活用が可能になる。なお、追いかけ現像は、手動で実行する構成に限らず、制御部161が自動で実行する構成とすることで、ユーザにとっては利便性が高くなる。
ステップS520〜S527の処理の説明に戻る。記憶媒体152等には、図4を参照して説明したように、1回の撮影指示に対して静止画ファイルとRAWファイルとが1組となって記憶されている。そこで、ステップS520において、制御部161は、高画質現像部112での現像処理(追いかけ現像)が未処理のRAWファイルがあるか否かを判定する。その判定方法としては、次のような方法がある。本実施形態では、後述するように、RAWファイルを追いかけ現像することにより生成された高画質の静止画ファイルは、簡易現像部111により生成された静止画ファイルを上書きする形で記憶媒体152等に記憶される。そこで、静止画ファイル400のメタデータ部402に格納されている現像ステータス405に、その静止画ファイルが簡易現像部111で生成されたものか追いかけ現像により高画質現像部112で生成されたものかを識別するためのフラグを立てる。これにより、制御部161は、そのフラグを参照してステップS520の判定を行うことができる。また、静止画のRAWファイル410の現像ステータス415に、追いかけ現像が終了したか否かを示すフラグを立て、制御部161がそのフラグを参照して、ステップS520の判定を行うようにしてもよい。或いは、一連の撮影された静止画に対して、現像処理の状態を示すテーブルファイルを別に用意し、制御部161がこのテーブルファイルを参照して、ステップS520の判定を行うようにしてもよい。
制御部161は、未処理のRAWファイルがある場合(S520でYES)、処理をステップS521へ進め、未処理のRAWファイルがない場合(S520でNO)、処理をステップS502へ戻す。ステップS521において、制御部161は、追いかけ現像を行う静止画のRAWファイルを選択する。RAWファイルの選択は、図3に示した現像優先度設定ファイルを参照して、最も現像優先度の高い画像のRAWファイルを選択することによって行われる。なお、現像優先度設定ファイルにおいて、選択されたRAWファイルに関するデータは、以降は不要となるために削除され、これにより現像優先度設定ファイルの更新が行われる。
続くステップS522において、制御部161は、ステップS521で選択した画像に対応するRAWファイルが、バッファ115にバッファリングされているか否かを判定する。制御部161は、RAWファイルがバッファリングされている場合(S522でYES)、処理をステップS524へ進め、RAWファイルがバッファリングされていない場合(S522でNO)、処理をステップS523へ進める。
ステップS523において、制御部161は、追いかけ現像の対象とされたRAWファイルを記憶媒体152等から読み出す。なお、バッファ115では、静止画撮影モードで撮影された新しい画像から優先的に保持されるようにデータの更新が行われ、過去に撮影された画像から順にバッファ115から削除される。これにより、直前に撮影された画像は常にバッファ115に保持されているため、ステップS523をスキップすることができる場合が多くなり、処理の高速化を図ることができる。また、直前に撮影された画像から時刻を遡って追いかけ現像を行うようにすることで、バッファ115に保持されている画像を優先的に処理することができ、処理の効率化を図ることができる。
ステップS524では、RAW伸張部114が、バッファ115又は記憶媒体152から読み出したRAWファイルを伸張処理し、RAW画像を復元する。続くステップS525では、高画質現像部112が、復元されたRAW画像を高画質に現像する。高画質現像部112により現像された画像のサイズ(画素数)は、撮像センサ102から読出された全体サイズのまま又はユーザにより設定されたサイズとなり、簡易現像部111により現像された画像よりも格段に高品質(高画質)なものとなる。
なお、高画質現像部112は簡易現像部111よりも現像処理を高精度に行うため、高画質の画像を得ることができる。その一方で、高画質現像部112では、処理負荷が簡易現像部111よりも大きくなってしまう。本実施形態では、高画質現像部112での現像処理を、撮影と並行したリアルタイムで実行することを避け、時間に余裕のあるときに行う構成としており、これにより回路規模の大型化と消費電力の増大を抑えることを可能としている。
高画質現像部112で生成された高画質画像情報は、スイッチ部121を経由して表示処理部122や静止画圧縮部141へ出力される。よって、ステップS526では、静止画圧縮部141が、取得した高画質画像情報に対して高能率符号化処理(静止画圧縮)を施して高画質の静止画ファイルを生成する。
続くステップS527では、記憶再生部151が、静止画圧縮部141から出力された高画質の静止画ファイルを記憶媒体152等に記憶する。その際、記憶再生部151は、高画質の静止画ファイルに、その元となったRAWファイルと同時に記憶された簡易現像による静止画ファイルと同じファイル名を付して、簡易現像による静止画ファイルを上書きする。よって、簡易現像による静止画ファイルは削除(消去)されることになる。そして、記憶再生部151は、追いかけ現像の元となったRAWファイルにおけるメタデータ部412内の現像ステータス415を、高画質現像部112での現像がなされたこと(追いかけ現像されたこと)を示す情報(フラグ)に変更し、RAWファイルを更新する。なお、ステップS527で記憶媒体152記憶される高画質の静止画ファイルは、図4(a)に示す静止画ファイル400と同じファイル構造を有する。
ステップS527の後、制御部161は、処理をステップS502へ戻す。その結果、追いかけ現像が未処理のRAWファイルがある場合には、引き続き、高画質現像部112による現像処理が行われることとなる。
以上の説明の通り、本実施形態では、撮像装置100は、撮影と撮影との合間や再生モードにあるとき、アイドル状態等のユーザによる操作待ち等の、比較的、処理負荷が小さいときに追いかけ現像(高画質現像部112による現像処理)を実行する。そして、撮影時の簡易現像による静止画ファイルを、RAWファイルに基づく高画質現像による静止画ファイルに置き換えていく。上記説明では、静止画についての処理を取り上げたが,動画についての処理も同様に行われる。よって、撮影時の簡易現像による動画ファイルも、RAWファイルを用いた高画質現像による動画ファイルに置き換えていく。これにより、細部の確認表示やプリントアウト等の高画質な再生が要求されたときに、その都度、現像処理を行う必要がなくなり、従来の静止画ファイルを活用する場面と同等の操作感や使用感を得ることができる。
追いかけ現像での処理枚数(処理能力)よりも撮影枚数(撮影頻度)が多い場合には、未現像の画像が複数枚存在する状況となるが、前述の通りに現像優先度が設定され、現像優先度に従った順番で追いかけ現像が行われる。このような構成は、例えば、通信部153を介して静止画ファイルを外部機器と共有する場合に特に有用となる。即ち、本実施形態では、現像優先度は、風景写真よりも人物写真で高く、人物写真でも複数の人物が写っており、且つ、登録された人物が写っている場合に高くなり、登録される人物は家族や友人である場合が多い。そのため、家族や友人との集合写真を撮影後に速やかに各自の携帯端末に送って皆で写真を観賞しながら楽しむといった場合には、集合写真が他の写真よりも優先的に高画質で現像処理されるため、速やかな画像の共有が可能になる。これにより、画像を共有する相手にとっても、現像処理の待ちの時間を最小限とすることができる利点がある。
次に、撮像装置100が静止画再生モードにあるときの処理について説明する。図6は、撮像装置100が静止画再生モードにあるときの処理のフローチャートである。図6に示す各処理は、制御部161が有するCPUがROMに格納されているプログラムをRAMに展開し、実行することにより、制御部161の制御下で撮像装置100の各ブロックが所定の動作と処理を実行することにより実現される。
静止画再生モードの処理が開始されると、先ず、ステップS601において、制御部161は、撮像装置100の処理負荷が小さいか否かを判定する。制御部161は、処理負荷が小さい場合(S601でYES)、撮像装置100がアイドル状態にあると判定し、処理をステップS610へ進めてアイドル状態での処理を実行し、処理負荷が小さくない場合(S601でNO)、処理をステップS602へ進める。例えば、再生指示等のユーザ操作を待っている間は処理負荷が小さいため、処理はステップS610へ移行され、ユーザ操作により静止画再生が開始されている(再生中の状態を含む)場合には、処理負荷は大きいために処理はステップS602へ進められる。なお、ステップS610では、先に図5のフローチャートを参照して説明した処理が実行される。
ステップS602において、制御部161は、再生対象とされた画像について、ユーザから拡大表示の指示を受けているか否かを判定する。制御部161は、拡大表示の指示がある場合(S602でYES)、処理をステップS603へ進め、拡大表示の指示がない場合(S602でNO)、処理をステップS620へ進める。
ここで、拡大表示の表示形態について説明する。図7は、静止画再生モードでの表示処理の例を示す図である。図7各図に示す第1の表示画面700、第2の表示画面710及び第3の表示画面720はそれぞれ、表示部123が有する液晶ディスプレイ或いは有機ELディスプレイ等の画面である。
図7(a)の第1の表示画面700には、6つの縮小画像701が表示されている。図7(b)の第2の表示画面710には、図7(a)に示す6つ縮小画像701の内の1つを画面全体に表示した標準画像711が表示されている。図7(c)の第3の表示画面720には、図7(a)に示す6つ縮小画像701の内の1つの画像(ここでは、図7(b)に示す画像)の一部領域を拡大させた拡大画像721が表示されている。例えば、撮影直後にフォーカスの適否の確認を行う場合には、第3の表示画面720のように被写体像の細部を拡大表示するような使われ方が一般的に行われる。
第3の表示画面720のように拡大画像721の表示を行う場合、処理はステップS602からステップS603へ移行することになる。一方、第1の表示画面700のように1フレームの画像を縮小した1又は複数の縮小画像701を表示する場合には、処理はステップS602からステップS620へ移行することになる。また、第2の表示画面710のように1フレームの画像に相当する標準画像711を表示する場合には、表示画素数が簡易現像による静止画ファイルの画素数(上述の例の場合、200万画素以下)と同じか又はそれ以下であれば、処理はステップS602からステップS620へ移行することになる。これは、表示画像が、簡易現像による静止画ファイルの画素数で足りる場合には、静止画ファイルが簡易現像部111で現像処理されたものであっても、十分な画質で表示することができるからである。
ステップS620では、記憶再生部151が記憶媒体152等から再生対象の静止画ファイルを読み出し、続くステップS621では、静止画伸張部143が静止画ファイルを復号して伸張する。その後、処理はステップS608へ進められる。ステップS608において、表示処理部122は、図7(a)又は図7(b)のように画像表示を行う。
拡大表示を行う場合には、表示される画像が、簡易現像による静止画ファイルの画素数では足りないことが起こり得る。即ち、簡易現像による静止画ファイルを用いて表示したのでは、解像感の低下を招いてしまう。そこで、拡大表示を行う場合のステップS603では、制御部161が、再生対象とされた画像の静止画ファイルが、高画質現像部112で現像済みか否かを判定する。ここでの判定の方法は、図5を参照して説明したステップS520の判定方法に準じ、よって、ここでの詳細な説明は省略する。
制御部161は、高画質現像部112で現像済みの場合(S603でYES)、処理をステップS620へ進める。これは、高画質画像情報に基づいて生成され、記憶媒体152に記憶されている静止画ファイルであれば、読み出して拡大しても、十分な画質での表示が可能であるからである。
制御部161は、高画質現像部112での現像が行われていない場合(S603でNO)、処理をステップS604へ進め、これにより、高画質現像部112による現像処理、つまり、追いかけ現像が実行されることになる。これは、高画質現像部112によって現像処された静止画であれば、拡大表示の要求に対して十分な画質で応えることができるからである。ステップS604〜S607では、図5を参照して説明したステップS522〜S525と同じ処理が行われるため、ここでの詳細な説明は省略する。
ステップS607の高画質現像部112での現像処理が終了すると、高画質画像情報がスイッチ部121を経由して表示処理部122に出力される。これにより、ステップS608では、表示処理部122は、図7(c)のように画像表示を行う。ステップS608の画像表示が実行されると、制御部161は処理をステップS601へ戻す。
なお、ステップS604〜S607での高画質現像処理は、撮影直後等の、まだ追いかけ現像が実行されていないタイミングで発生することが想定される。本実施形態では、撮像装置100が処理負荷の小さいアイドル状態にあるときに追いかけ現像が徐々に終了し、簡易現像された静止画ファイルが自然に高画質現像された静止画ファイルに置き換えられる。こうして静止画ファイルの置き換えが進むにつれて、ステップS604〜S607の高画質現像処理を実行するケースが減少するため、拡大表示に対して速やかに高画質画像を出力することができるようになり、操作性をより一層高めることができる。
また、本実施形態では、バッファ115にRAWファイルが保持されている場合、ステップS605の処理をスキップすることができるため、素早く拡大画像を表示することができるようになる。そこで、バッファ115にできるだけ多くのRAWファイルが保持された状態となる構成とすることが好ましい。具体的には、図7(a)の第1の表示画面700や図7(b)の第2の表示画面710がなされている場合に、拡大表示に備えて、縮小画像701や標準画像711に対応するRAWファイルを予め記憶媒体152等から読み出して、バッファ115へ移動させるようにする。こうして拡大表示の指示に先行してRAWファイルを読み出してバッファリングすることにより、図7(c)の第3の表示画面720のような拡大画像721の表示指示がなされたときに、より素早く対応することができ、ユーザの操作感や使用感を向上させることができる。
次に、撮像装置100が動画撮影モードにあるときの処理について説明する。図8は、撮像装置100が動画撮影モードにあるときの処理のフローチャートである。図8に示す各処理は、制御部161が有するCPUがROMに格納されているプログラムをRAMに展開し、実行することにより、制御部161の制御下で撮像装置100の各ブロックが所定の動作と処理を実行することにより実現される。
動画撮影モードの処理が開始されると、ステップS801において、制御部161は、撮像装置100の処理負荷が小さいか否かを判定する。制御部161は、処理負荷が小さい場合(S801でYES)、撮像装置100がアイドル状態にあると判定し、処理をステップS820へ進めてアイドル状態での処理を実行し、処理負荷が小さくない場合(S801でNO)、処理をステップS802へ進める。例えば、水平解像度が4000画素相当(4K)や8000画素相当(8K)のように画素数の多い動画や、毎秒120コマ(120P)のようにフレームレートの高い動画が設定されているときは、処理負荷が高いため、処理は常にステップS802へ進められる。一方、画素数が所定値より少ない場合やフレームレートが所定速度より低い場合には、動画の第1のフレームと第2のフレームの処理の合間に、例えば、処理は半分の頻度でステップS820へ進められる。
ステップS802では、カメラ制御部104が、適切な条件で動画撮影を行うように撮像光学部101や撮像センサ102の動作を制御する。具体的には、カメラ制御部104は、ユーザのズームやフォーカスの指示に従って、撮像光学部101に含まれるレンズを移動させ、撮影画素数の指示に従って撮像センサ102の読み出し領域を設定する。また、評価値算出部105と認識部131からそれぞれ供給される評価値と被写体情報とに基づいて、特定被写体へのフォーカス調整や追尾等の制御が行われる。
続くステップS803において、センサ信号処理部103が、撮像センサ102から出力される電気信号に対して、画素の修復のための信号処理を施す。例えば、欠落画素や信頼性の低い画素の値に対して、周辺画素値を用いた補間処理や所定のオフセット値の減算処理が行われる。本実施形態では、センサ信号処理部103から出力される生(未現像)の動画の映像情報を、先に説明した静止画撮影の場合と同様に、「RAW画像」と称呼することとする。
ステップS804では、簡易現像部111が、RAW画像を現像処理する。このとき、制御部161は、簡易現像部111から簡易画像情報が出力されるように、スイッチ部121を設定する。簡易現像部111は、具体的には、現像後の画像サイズを、例えばHD映像の200万画素以下に制限し、ノイズ除去や光学的な歪補正を限定的な処理に留め或いは省いて簡易化する。これにより、現像処理の高速化を実現すると共に、HDサイズの動画の高速撮影を小さい回路規模で、且つ、少ない消費電力で実現することができる。
簡易現像部111で生成された簡易画像情報は、評価値算出部105へ供給される。これにより、ステップS805において、評価値算出部105は、簡易画像情報に含まれる輝度値やコントラスト値等からフォーカス状態や露出状態等の評価値を算出する。なお、評価値算出部105は、現像処理前のRAW画像を取得し、取得したRAW画像から同様に評価値を算出するようにしてもよい。また、簡易現像部111で生成された簡易画像情報は、認識部131へ供給される。ステップS806において、認識部131は、簡易画像情報から、顔の有無や位置、特定の人物の認証等の被写体検出を行い、その結果を被写体情報として出力する。
簡易現像部111で生成された簡易画像情報は、表示処理部122へ供給される。ステップS807において、表示処理部122は、取得した簡易画像情報から表示画像を形成し、表示部123又は外部の表示装置に出力し、表示する。表示部123による表示画像は、動画撮影モードにおいて、ユーザが被写体を適切にフレーミングするための確認表示に用いられる。例えば、動画撮影中の表示画像は、静止画撮影とは異なり、撮影された動画の記憶開始前(スタンバイ中)だけでなく、録画中(REC中)においても被写体を適切にフレーミングするためのライブビュー表示に用いられる。
なお、表示処理部122から外部出力端子124を経由して、外部のテレビジョン等の他の表示装置に画像表示を行ってもよい。また、表示処理部122は、評価値算出部105と認識部131からそれぞれ供給される評価値や被写体情報を活用して、表示画像上の合焦領域に対するマーキング表示や認識された顔の位置への枠表示等を行うようにしてもよい。
ステップS808において、制御部161は、ユーザからの録画開始指示を受けて、動画が録画中(REC中)であるか否かを判定する。制御部161は、録画中の場合(S808でYES)、処理をステップS809へ進め、録画中でない場合、つまり、スタンバイ中の場合(S808でNO)、処理をステップS801へ戻す。
ステップS809において、動画圧縮部142は、録画開始から録画終了までの間の撮影対象について簡易現像部111で生成された撮影動画である簡易画像情報を逐次取得しており、取得した簡易画像情報に対してフレーム単位で圧縮処理を施す。その際、不図示であるが、動画の撮影と同時に不図示のマイクロフォンによって音声情報が取得されており、動画圧縮部142は撮影動画に対応する音声情報に対しても圧縮処理を施す。なお、動画圧縮部142は、簡易画像情報及び音声情報に対して、MPEG−2、H.264或いはH.265等の周知の動画圧縮技術を用いて高能率符号化処理(動画圧縮)を施すことで動画ファイルを生成する。続くステップS810では、記憶再生部151が、動画圧縮部142から出力される動画ファイルを記憶媒体152に記憶する。
録画開始から録画終了までの間の撮影対象についてセンサ信号処理部103から出力されたRAW画像(ステップ808において録画対象となった動画に対応する期間のRAW画像)は、RAW圧縮部113へ供給されている。そこで、ステップS811では、RAW圧縮部113が、センサ信号処理部103から取得したRAW画像を高能率符号化(RAW圧縮)してRAWファイルを生成し、生成されたRAWファイルをバッファ115に格納する。
なお、RAW圧縮部113が行う動画のRAW画像に対する高能率符号化は、静止画のRAW画像に対する処理と同様に、ウェーブレット変換や差分符号化等の周知技術により行うことができ、非可逆符号化であってもよいし可逆符号化でもあってもよい。また、RAW圧縮部113のRAW圧縮を省略して、RAW画像が非圧縮の状態のままスルー出力されてもよい。本実施形態では、RAW圧縮部113による高能率符号化の有無に関わらず、センサ信号処理部103から供給される画像情報を大きく損なわない高画質ファイルとして復元可能なRAWファイルが生成されるものとする。
ステップS812では、記憶再生部151が、RAW圧縮部113から出力されるRAWファイルを記憶媒体152に記憶する。その後、処理はステップS801へ戻される。ステップS810,S812において、記憶再生部151は、動画ファイル及び/又はRAWファイルを通信部153により通信端子154を介して外部のストレージに送って記憶するようにしてもよい。
ここで、動画ファイルと動画のRAWファイルのそれぞれのファイル構造について説明する。図9(a)は、動画ファイルのファイル構造の例を示す図であり、図9(b)は、動画のRAWファイルのファイル構造の例を示す図である。図9(a)に示す動画ファイル900と図9(b)に示す動画のRAWファイル910はそれぞれ、記憶再生部151によって、例えば、記憶媒体152の所定の記憶エリアに記憶されている。
動画ファイル900は、ヘッダ部901、メタデータ部902、圧縮データ部903から成る。ヘッダ部901には、このファイルが動画ファイルの形式であることを示す識別コード等が含まれる。メタデータ部902は、ファイル名情報904、現像ステータス905及び撮影メタデータ906を含む。ファイル名情報904は、この静止画ファイルと同時に生成された動画のRAWファイルのファイル名である。現像ステータス905は、この動画ファイルが簡易現像部111又は高画質現像部112によって現像されたことを示す情報である。撮影メタデータ906は、評価値算出部105が算出した評価値や認識部131で検知された被写体情報、撮影時の情報(例えば、撮像光学部101のレンズ種別識別情報や撮像センサ102のセンサ種別識別情報等)を含む。なお、不図示であるが、メタデータ部902は、この動画ファイル900と同時に生成された動画のRAWファイルが記憶されている記憶媒体152等の識別コードや、記憶されているフォルダのパス情報等を更に含んでいてもよい。圧縮データ部903には、高能率符号化された動画と音声の圧縮データが含まれる。
図9(b)に示す動画のRAWファイル910は、ヘッダ部911、メタデータ部912、圧縮データ部913から成る。ヘッダ部911には、このファイルがRAWファイルの形式であることを示す識別コード等が含まれる。メタデータ部912は、ファイル名914、現像ステータス915及び撮影メタデータ916を含む。ファイル名914は、このRAWファイルと同時に生成された動画ファイルのファイル名である。現像ステータス915は、ファイル名914が示す動画ファイルが簡易現像部111又は高画質現像部112によって現像されたことを示す情報である。撮影メタデータ916は、評価値算出部105が算出した評価値や認識部131で検知された被写体情報、撮影時の情報(例えば、撮像光学部101のレンズ種別識別情報や撮像センサ102のセンサ種別識別情報等)を含む。なお、不図示であるが、メタデータ部912は、動画のRAWファイル910と同時に生成された動画ファイルが記憶されている記憶媒体152等の識別コードや、記憶されているフォルダのパス情報などを更に含んでもいてもよい。また、メタデータ部912は、動画のRAWファイル910と同時に生成された動画ファイルの全部又は一部(先頭フレームなど)を抽出してメタデータ化したデータを格納していてもよい。圧縮データ部913には、動画のRAW画像を高能率符号化したデータが含まれるが、動画の圧縮されていないRAW画像のデータであってもよい。
なお、図9に示したファイル構造は一例であり、DCFやAVCHD、MXF等などの標準規格に準じた構成であってもよい。
図8を参照して説明した通り、撮像装置100は、動画撮影モードでの動作時のRAW画像の現像処理を簡易現像部111で行うと共に、録画時に動画ファイルを生成する際に、その動画ファイルに対応するRAWファイルを生成する。生成されるRAWファイルは、センサ信号処理部103から供給される画像情報を大きく損なわない高画質ファイルであるが、現像処理を必要としない。そのため、4Kや8Kのように画素数を高めた動画撮影や毎秒120コマ(120P)のようにフレームレートを高めた動画撮影の現像処理を、小さい回路規模で、且つ、少ない消費電力で実現することができる。
次に、撮像装置100が動画再生モードにあるときの処理について説明する。図10は、撮像装置100が動画再生モードにあるときの処理のフローチャートである。図10に示す各処理は、制御部161が有するCPUがROMに格納されているプログラムをRAMに展開し、実行することにより、制御部161の制御下で撮像装置100の各ブロックが所定の動作と処理を実行することにより実現される。
動画再生モードの処理が開始されると、先ず、ステップS1001において、制御部161は、撮像装置100の処理負荷が小さいか否かを判定する。制御部161は、処理負荷が小さい場合(S1001でYES)、撮像装置100がアイドル状態にあると判定し、処理をステップS1010へ進めてアイドル状態での処理を実行する。制御部161は、処理負荷が小さくない場合(S1001でNO)、処理をステップS1002へ進める。例えば、再生指示等のユーザ操作を待っている間は、処理負荷が低いため、処理はステップS1010へ進められ、ユーザ操作により動画再生が開始された場合や動画再生中の場合には、処理はステップS1002へ進められる。
ステップS1002において、制御部161は、再生動画についてユーザから再生の一時停止(ポーズ)の指示を受けているか否かを判定する。制御部161は、一時停止指示がない場合(S1002でNO)、動画再生を継続するために処理をステップS1003へ進め、一時停止指示があった場合(S1002でYES)、処理をステップS1020へ進める。
ステップS1003では、記憶再生部151が、記憶媒体152等から再生対象の動画ファイルを読み出す。そして、ステップS1004において、動画伸張部144が、動画ファイルを1フレームずつ復号して伸張し、こうして生成した動画の再生画像を表示処理部122へ出力する。その後のステップS1005では、表示処理部122が、動画伸張部144から取得した動画の再生画像に所定の処理を施して表示部123へ出力し、これにより表示部123に動画が再生表示される。
ステップS1002で一時停止指示を受けて処理がステップS1020へ進められた場合、制御部161は、再生中(表示中)の動画を一時停止状態にすると共に、一時停止位置でのフレームを静止画として表示させる。こうして静止画が表示された状態になると、画像が動いているときよりも細部の画質を視認しやすくなる。また、一時停止中には拡大表示の指示を受けやすいと考えられる。そこで、本実施形態では、一時停止の指示があった場合には、簡易現像された動画ファイルのフレームよりも高画質なフレームを表示することとする。
そのために、ステップS1020において、記憶再生部151が、再生中の動画ファイルに対応する動画のRAWファイルの、更に一時停止表示中のフレームに対応するRAW画像のフレームを読み出す。このとき、記憶再生部151は、再生対象となるRAWファイルがバッファ115にバッファリングされていれば、バッファ115から読み出しを行い、バッファリングされていなければ、記憶媒体152等から読み出しを行う。
ステップS1021において、RAW伸張部114は、バッファ115又は記憶媒体152等から読み出した動画のRAWファイルを復号して伸張し、RAW画像を復元し、復元したRAW画像を高画質現像部112へ供給する。続くステップS1022において、高画質現像部112は、取得したRAW画像を高画質に現像処理し、高画質画像情報が生成される。
撮像装置100では、動画のRAWファイルから高画質に現像された、再生一時停止により表示中のフレームに対応する高画質の静止画を、新たな静止画ファイルとしてキャプチャすることが可能となっている。そこで、ステップS1023において、制御部161は、再生一時停止位置の表示画像を静止画としてキャプチャするユーザ指示を受けつけたか否かを判定する。制御部161は、静止画キャプチャの指示を受け付けていない場合(S1023でNO)、処理をステップS1005へ進める。これにより、高画質現像部112から高画質画像情報が表示処理部122へ供給され、表示処理部122は、再生一時停止により表示中のフレームに対応する高画質の静止画を表示部123へ出力する。これにより、ステップS1005において、表示部123に表示されている簡易現像された動画のフレームは、高画質に現像された静止画に切り替わる。
制御部161は、静止画キャプチャの指示を受け付けた場合(S1023でYES)、処理をステップS1024へ進める。その際に、高画質現像部112から高画質画像情が報が静止画圧縮部141へ供給される。よって、ステップS1024では、静止画圧縮部141が、高画質現像部112から取得した高画質画像情を用い、キャプチャ指示を受けた静止画の画像情報に対してJPEG等の周知技術を用いて高能率符号化処理(静止画圧縮)を施す。こうして生成された高画質の静止画ファイルは、記憶再生部151へ供給される。
ステップS1025において、記憶再生部151は、静止画圧縮部141から取得した高画質の静止画ファイルを記憶媒体152等に記憶する。その後、制御部161は、処理をステップS1005へ進め、これにより、表示部123に表示されている簡易現像された動画のフレームは、高画質に現像された静止画に切り替わる。
なお、ステップS1024で静止画圧縮部141によって生成される高画質の静止画ファイルは、図4(a)の静止画ファイル400の同様の構成を成す。そのメタデータ部402には、RAWファイル名404として、キャプチャ元となった動画のRAWファイルのファイル名が格納される。また、その撮影メタデータ406には、静止画としてキャプチャされたフレームの時刻情報が格納され、動画のRAWファイルの対応するフレーム位置を指し示される。ステップS1024で高画質の静止画ファイルを生成した際に、動画のRAWファイルの対応するフレームを静止画として抽出して、対となる新たな静止画のRAWファイル410を作成するようにしてもよい。静止画のRAWファイルを生成する場合、図2を参照して説明したステップS210〜S213の処理を用いて、静止画ファイルとRAWファイルとを構成すればよい。
なお、ステップS1005の画像表示は1フレーム毎に行われ、動画再生中は、次のフレームの表示を行うために、処理はステップS1001へ戻される。ステップS1001からステップS1010へ進んだ場合には、先に説明した図5のフローチャートに従った処理が実行される。
以上の説明の通り、撮像装置100では、動画再生モードにあるときには、記憶媒体152等に記憶された動画ファイルを用いて、遅延なく動画を再生することができる。また、動画再生を一時停止させた状態では、一時停止時の表示画像をRAWファイルから高画質に現像した静止画に差し替えて表示することができ、高画質な静止画を静止画ファイルとしてキャプチャすることができる。これらの機能は、ユーザにとって利便性の高いものとなる。
また、図10のステップS1020〜S1025の高画質現像処理は、撮影直後等の、追いかけ現像が実行されていないタイミングで発生することが想定される。本実施形態では、撮影と撮影との合間や再生モードやアイドル状態等のユーザ操作待ちの、撮像装置100が、比較的、処理負荷が小さい状態のときに動画のRAWファイルの追いかけ現像が徐々に終了する。これにより、簡易現像による動画ファイルが自然に高画質現像による動画ファイルに置き換わる。こうして動画ファイルの置き換えが進むにつれて、ステップS1020〜S1025の処理が発生するケースが減少するため、速やかに高画質画像を出力することができるようになり、操作性をより一層高めることができる。
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。さらに、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
本発明は以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムコードを読み出して実行する処理である。この場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。