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JP6277895B2 - トルク伝達部材及び駆動軸と被駆動軸との結合部 - Google Patents

トルク伝達部材及び駆動軸と被駆動軸との結合部 Download PDF

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JP6277895B2 JP2014144708A JP2014144708A JP6277895B2 JP 6277895 B2 JP6277895 B2 JP 6277895B2 JP 2014144708 A JP2014144708 A JP 2014144708A JP 2014144708 A JP2014144708 A JP 2014144708A JP 6277895 B2 JP6277895 B2 JP 6277895B2
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Description

この発明は、電動式パワーステアリング装置等の各種機械装置に組み込まれ、駆動軸と被駆動軸との間でトルクを伝達する為に利用するトルク伝達部材、及び、これら駆動軸と被駆動軸との結合部に関する。
操舵輪(フォークリフト等の特殊車両を除き、通常は前輪)に舵角を付与する際に、運転者がステアリングホイールを操作する為に要する力の軽減を図る為の装置として、パワーステアリング装置が広く使用されている。又、この様なパワーステアリング装置で、補助動力源として電動モータを使用する電動式パワーステアリング装置も、近年広く普及している。電動式パワーステアリング装置は、油圧式のパワーステアリング装置に比べて小型・軽量にでき、補助動力の大きさ(トルク)の制御が容易で、しかもエンジンの動力損失が少ない等の利点がある。
電動式パワーステアリング装置の構造は、各種知られているが、何れの構造の場合にも、ステアリングホイールの操作によって回転させられ、回転に伴って操舵輪に舵角を付与する回転軸に、電動モータの補助動力を、減速機を介して付与する。この減速機として一般的には、ウォーム減速機が使用されている。図17〜18は、ウォーム減速機を使用した電動式パワーステアリング装置の1例を示している。ステアリングホイール1により所定方向に回転させられる回転軸であるステアリングシャフト2の前端部は、ハウジング3の内側に回転可能に支持しており、この部分にウォームホイール4を固定している。このウォームホイール4と噛合するウォーム歯5をウォーム軸6の軸方向中間部に設け、電動モータ7により回転駆動されるウォーム8の両端部は、深溝型玉軸受等の1対の転がり軸受9a、9bにより、前記ハウジング3内に回転可能に支持されている。
又、前記電動モータ7の出力軸10の先端部と前記ウォーム軸6の基端部とを、トルク(回転力)の伝達を可能に結合する為に、このウォーム軸6の基端部に、その内周面に特許請求の範囲に記載した内歯に相当する雌スプライン歯11を有するスプライン孔12を、このウォーム軸6の基端面に開口する状態で形成している。又、前記出力軸10の先端部に、その外周面に特許請求の範囲に記載した外歯に相当する雄スプライン歯13を有するスプライン軸部14を形成している。そして、このスプライン軸部14と前記スプライン孔12とをスプライン係合させる事で、前記出力軸10と前記ウォーム軸6とを、トルクの伝達を可能に結合している。
尚、本明細書及び特許請求の範囲に於ける「スプライン」には、ピッチの細かい、所謂「セレーション」と呼ばれるものも含む。
ところで、上述の様に構成される電動式パワーステアリング装置の場合、前記雄スプライン歯13と前記雌スプライン歯11との間には、通常、適度な大きさの隙間(バックラッシュ)が設けられている。この理由は、前記スプライン軸部14と前記スプライン孔12とをスプライン係合させる作業を容易に行える様にする為である。又、前記出力軸10の中心軸と前記ウォーム軸6の中心軸とが僅かにずれた程度では、前記スプライン係合部にコジリが発生しない様にして、前記出力軸10を回転させる為に要するトルクが上昇する事を防止する為でもある。ところが、前記スプライン係合部にバックラッシュが存在すると、このスプライン係合部ががたつき易くなり、前記電動モータ7が起動する瞬間や、その回転方向が変換される瞬間に、前記雄スプライン歯13の円周方向側面と前記雌スプライン歯11の円周方向側面とが勢い良く衝突し、歯打ち音と言われる異音を発生させる原因となる。
この様な事情に鑑み、例えば特許文献1には、電動モータの出力軸とウォーム軸の基端部とを、略円筒状のトルク伝達部材を介してスプライン係合させ、このスプライン係合部に熱可塑性エラストマー等の合成樹脂を充填する事により、このスプライン係合部でのがたつきを防止する技術が記載されている。この様な特許文献1に記載された構造の場合、スプライン係合部でのがたつきを抑え、歯打ち音の発生を防止する面では有利になるが、スプライン係合部でのがたつきを防止する事のみを考慮したものであって、アライメント誤差を吸収(補償)する事に就いては考慮されていない。
即ち、前記特許文献1に記載された構造の場合、合成樹脂等の弾性材の存在により、スプライン係合部には、バックラッシュが存在しないか、存在しても極く小さくなる。この為、互いに結合される1対の軸同士の間に、芯ずれ等のアライメント誤差を生じた場合にも、このアライメント誤差を吸収する事が難しくなる。この結果、コジリが発生し易くなり、トルクの上昇や、スプライン歯の摩耗の増大等の問題を招く恐れがある。一方、電動式パワーステアリング装置は、組立誤差や形状誤差の積算等に基づき、前記電動モータ7の出力軸10の中心軸と、前記ウォーム軸6の中心軸との位置関係が不一致になる、アライメント誤差を生じ易い。この為、電動式パワーステアリング装置のスプライン係合部に於いては、がたつきを防止できるだけでなく、アライメント誤差を吸収できる事が望まれる。
これに対し、特許文献2には、電動式パワーステアリング装置を構成する電動モータの出力軸とステアリング軸との結合部に関して、がたつきを防止すると共に、アライメント誤差を吸収できる技術が記載されている。但し、前記特許文献2に記載された技術の場合には、前記出力軸と前記ステアリング軸とを、1対の連結基体と緩衝部材とを組み合わせて成る、カップリング装置(軸継手)を介して結合する為、構造が複雑になり、組立作業が面倒になる等、製造コストの上昇を招く。又、トルク伝達時に、前記両連結基体に設けられた爪部同士の間で円周方向に挟持される前記緩衝部材を、互いに連結された1対の回転伝達部材と、これら両回転伝達部材同士の間に挟持される中間介在部材とから構成している。この為、前記出力軸と前記ステアリング軸との間で芯ずれが生じた場合にも、前記両回転伝達部材同士が相対変位不能に連結されている事から、コジリが発生し易く、アライメント誤差を十分に吸収できるとは言い難い。
尚、本発明に関連するその他の先行技術文献として特許文献3がある。この特許文献3には、メインギヤとサブギヤとを相対回転可能に組み合わせると共に、これら両ギヤ同士の間にばねを配置した、所謂シザーズギヤ構造を採用する事で、相手歯との噛合部でバックラッシュが発生するのを抑制する発明が記載されている。但し、前記特許文献3に記載された発明の場合には、外周面にのみ歯部(メインギヤ及びサブギヤ)を設ける構造を開示しているのみで、内外両周面に歯部を設ける構造を採用した場合のバックラッシュの発生防止に就いては、一切記載されていない。
特開2005−240959号公報 特許第4779358号公報 実開平7−10606号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑み、駆動軸と被駆動軸とにそれぞれ設けられた外歯と内歯とに噛合して、これら両軸同士の間でトルクを伝達するトルク伝達部材に関し、これら外歯と内歯とのそれぞれの噛合部において、バックラッシュの発生を抑制できると共に、前記両軸同士の間のアライメント誤差を効果的に吸収できる構造を実現すべく発明したものである。又、この様なトルク伝達部材を利用した、駆動軸と被駆動軸との結合部の構造を実現すべく発明したものである。
本発明のトルク伝達部材は、互いに同軸上に配置された駆動軸と被駆動軸との間に設けられて、これら両軸同士の間でトルクを伝達するものであり、これら両軸のうちの一方の軸に設けられた外歯と噛合する内径側歯部と、これら両軸のうちの他方の軸に設けられた内歯と噛合する外径側歯部とを備える。尚、外歯及び内歯は、軸の周面に直接形成されていても良いし、軸に固定した別の部材の周面に形成されていても良い。
又、前記トルク伝達部材は、軸方向両側に配置された1対のトルク伝達素子と、これら両トルク伝達素子同士の間部分に設けられた中間素子とを組み合わせて成る。
前記両トルク伝達素子は、互いに連結されておらず、それぞれ略円環状で、内外両周面のうち、内周面には前記内径側歯部を構成する内径側歯素子が、外周面には前記外径側歯部を構成する外径側歯素子が、それぞれ設けられている。
前記中間素子は、略円環状で、前記両トルク伝達素子よりも弾性変形し易い材料から造られた本体部と、この本体部の軸方向両側面から軸方向両側にそれぞれ突出する状態で設けられた複数の突起部とを備えている。
又、前記本体部の内外両周面のうちの一方の周面にのみ、前記外歯と前記内歯とのうちの何れか一方の歯と、がたつきなく弾性的に噛合する、弾性歯部が設けられている。
そして、特に本発明のトルク伝達部材の場合には、前記各突起部を、前記両トルク伝達素子に形成された挿入孔内にそれぞれ挿入する(例えば圧入する)事により、これら両トルク伝達素子を前記中間素子に対しそれぞれ支持した状態で、内周面に設けられた1対の内径側歯素子と、外周面に設けられた1対の外径側歯素子とのうち、少なくとも径方向に関して前記弾性歯部と反対側に位置する1対の歯素子同士の円周方向に関する位相をずらしている。そして、これら両歯素子を前記外歯と前記内歯とのうちの何れか他方の歯と噛合させた状態で、これら両歯素子同士の間で、この他方の歯を円周方向両側から押圧する。
この様な本発明のトルク伝達部材を実施する場合には、例えば請求項2に記載した発明の様に、前記各内径側歯素子及び前記各外径側歯素子を、インボリュート歯形としたり、請求項3に記載した発明の様に、スプライン歯形とする。又、これらを併せて、インボリュートスプライン歯形とする事もできる。
又、本発明のトルク伝達部材を実施する場合には、例えば請求項4に記載した発明の様に、前記各内径側歯素子と前記各外径側歯素子とのうち、少なくとも一方の歯素子の円周方向に関する幅寸法を、軸方向に関して変化させたり、請求項5に記載した発明の様に、前記各内径側歯素子と前記各外径側歯素子とのうち、少なくとも一方の歯素子の歯丈を、軸方向に関して変化させる。又、これらの構成を同時に実施する事もできる。
本発明の駆動軸と被駆動軸との結合部は、互いに同軸上に配置された駆動軸及び被駆動軸と、これら両軸同士の間でトルクを伝達する、略円環状のトルク伝達部材とを備える。
これら両軸のうち、一方の軸には外歯が、他方の軸には内歯が、それぞれ設けられている。尚、外歯及び内歯は、軸の周面に直接形成されていても良いし、軸に固定した別の部材の周面に形成されていても良い。
又、前記トルク伝達部材の内外両周面のうち、内周面には前記外歯と噛合する内径側歯部が、外周面には前記内歯と噛合する外径側歯部が、それぞれ設けられている。
そして、特に本発明の駆動軸と被駆動軸との結合部の場合には、前記トルク伝達部材を、上述した様な本発明のトルク伝達部材としている。
以上の様な構成を有する本発明によれば、駆動軸と被駆動軸とに設けられた外歯と内歯とのそれぞれの噛合部において、バックラッシュの発生を抑制できると共に、前記両軸同士の間のアライメント誤差を効果的に吸収できる。
即ち、本発明の場合には、トルク伝達部材を構成する中間素子の本体部のうち、何れか一方の周面に設けた弾性歯部を、前記外歯と前記内歯とのうちの何れか一方の歯に対し、がたつきなく弾性的に噛合させている。又、前記トルク伝達部材を構成する1対のトルク伝達素子に設けられた1対の内径側歯素子と1対の外径側歯素子とのうち、少なくとも径方向に関して前記弾性歯部と反対側に設けられ、円周方向に関する位相をずらした1対の歯素子により、前記外歯と前記内歯とのうちの何れか他方の歯を円周方向両側から押圧している。この為、本発明の場合には、前記外歯と前記内歯とのうちの何れか一方の歯との噛合部でのバックラッシュを前記弾性歯部により、何れか他方の歯との噛合部でのバックラッシュを、円周方向に関する位相がずれた前記1対の歯素子により、それぞれ有効に防止できる。従って、前記トルク伝達部材と前記外歯及び前記内歯とのそれぞれの噛合部において、バックラッシュの発生を抑制できる。
又、本発明の場合には、前記トルク伝達部材を構成する1対のトルク伝達素子同士を連結せずに、これら両トルク伝達素子を、前記中間素子に設けられた突起部を利用して、この中間素子にのみ支持している。この為、前記両トルク伝達素子同士を互いに変位し易くできる為、前記両軸同士のアライメント誤差を効果的に吸収できる。
又、請求項4、5に記載した発明によれば、前記外歯と前記各内径側歯素子との接触面積、又は、前記内歯と前記各外径側歯素子との接触面積を小さくできる為、これら外歯と各内径側歯素子とを互いに相対変位させ易くできるか、又は、前記内歯と前記各外径側歯素子とを互いに相対変位させ易くできる。この為、前記両軸同士の間のアライメント誤差をより効果的に吸収できる。
本発明の実施の形態の第1例を示す、駆動軸と被駆動軸との結合部を示す断面図。 同じく分解斜視図。 同じくトルク伝達部材を取り出して示す分解斜視図。 同じく正面図。 同じく図4のA部拡大図。 同じく図4のB矢視拡大図。 同じくトルク伝達部材の斜視図。 同じく別の方向から見た状態を示すトルク伝達部材の斜視図。 同じくトルク伝達素子を取り出して示す正面図(A)、及び、右側面図(B)。 同じく図9の(A)のC−C断面図。 同じく中間素子を取り出して示す正面図(A)、及び、右側面図(B)。 同じく中間素子の斜視図。 本発明の実施の形態の第2例を示す、トルク伝達素子の正面図(A)、及び、(A)を右側から見た部分側面図(B)。 同じく図6に相当する図。 本発明の実施の形態の第3例を示す、トルク伝達部材の正面図(A)、及び、(A)を右側から見た上部側面図(B)。 本発明の対象となるトルク伝達部材の別の2例を示す正面図。 本発明の対象となる自動車用操舵装置の1例を示す部分縦断側面図。 電動式パワーステアリング装置の従来構造の1例を示す、図17のD−D拡大断面図。
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例に就いて、図1〜12を参照しつつ説明する。本例の場合には、電動式パワーステアリング装置を構成する電動モータ7(図17、18参照)の出力軸10aの先端部と、ウォーム式減速機を構成するウォーム軸6aの基端部との間に、本例のトルク伝達部材15を設けて、前記出力軸10aから前記ウォーム軸6aにトルクを伝達可能としている。電動式パワーステアリング装置全体の構成及び作用は、前述の図17〜18に示した構造を含め、従来から広く知られている電動式パワーステアリング装置と同様であるから、説明を省略し、以下、前記出力軸10aと前記ウォーム軸6aとの結合部の構成及び作用を中心に説明する。
前記出力軸10aと前記ウォーム軸6aとは、互いに同軸上に配置されており、このうちのウォーム軸6aの基端部には、中間部乃至先端部に比べて外径寸法が大きくなった大径部16が設けられている。又、この大径部16の内側には、基端面に開口する状態で、スプライン孔12aが形成されている。このスプライン孔12aの内周面には、特許請求の範囲に記載した内歯に相当する雌スプライン歯11aが全周に亙り形成されている。一方、前記出力軸10aの先端部には、スプライン軸部14aが設けられている。このスプライン軸部14aの外周面には、特許請求の範囲に記載した外歯に相当する雄スプライン歯13aが全周に亙り形成されている。本例の場合、これら雄スプライン歯13aの歯先円を通る外接円の直径を、前記雌スプライン歯11aの歯先円を通る内接円の直径よりも十分に小さくして、前記スプライン軸部14aと前記スプライン孔12aとを直接スプライン係合させずに、前記トルク伝達部材15を介して係合する事により、前記出力軸10aと前記ウォーム軸6aとをトルクの伝達を可能に結合している。
前記トルク伝達部材15は、全体を略円環状に構成しており、軸方向両側に配置された1対のトルク伝達素子17a、17bと、これら両トルク伝達素子17a、17b同士の間部分に設けられた中間素子18とを組み合わせて成る。この様な構成を有する前記トルク伝達部材15の内周面(内周面両端部)には、前記出力軸10aの先端部外周面に形成された前記雄スプライン歯13aと噛合する、内径側歯部19が設けられている。これに対し、前記トルク伝達部材15の外周面(外周面両端部)には、前記ウォーム軸6aの基端部内周面に形成された前記雌スプライン歯11aと噛合する、外径側歯部20が設けられている。
前記両トルク伝達素子17a、17bは、それぞれ略円環状で、後述する挿入孔23a、23bの円周方向に関する形成位置を除いて互いに同形状であり、例えばポリアセタール樹脂やポリアミド樹脂等の合成樹脂を射出成形する事により、又は、金属材料により造られている。又、前記両トルク伝達素子17a、17bの内外両周面のうち、内周面には前記内径側歯部19を構成する、インボリュートスプライン歯形である内径側歯素子21a、21bが、外周面には前記外径側歯部20を構成する、インボリュートスプライン歯形である外径側歯素子22a、22bが、それぞれ形成されている。又、前記両トルク伝達素子17a、17bには、径方向中間部の円周方向等間隔3個所位置に、それぞれ挿入孔23a、23bが軸方向に貫通する状態で形成されている。これら各挿入孔23a、23bはそれぞれ、前記両トルク伝達素子17a、17bのうち、前記トルク伝達部材15の組立状態で、前記中間素子18と軸方向に対向する軸方向内側半部に設けられた大径孔部24と、軸方向外側半部に設けられた小径孔部25とから構成されている。本例の場合、この様な構成を有する前記各挿入孔23a、23bの円周方向に関する形成位置を、前記両トルク伝達素子17a、17b同士の間で、僅かにずらしている。又、これら両トルク伝達素子17a、17b同士は、前記トルク伝達部材15の組立状態で、互いに直接は連結せずに、前記中間素子18を介してのみ連結する。
前記中間素子18は、例えばゴムやエラストマー等の、前記両トルク伝達素子17a、17bよりも弾性変形し易い材料から造られた、略円輪状の本体部26と、この本体部26の軸方向両側面の外径寄り部分から軸方向両側にそれぞれ突出する状態で設けられた、例えば金属等の剛体製である複数(図示の例では合計6本)の突起部27a、27bとを備えている。尚、本体部と各突起部とを、弾性変形し易い材料(ゴム、エラストマー等)で一体的に形成しても良い。このうちの本体部26の内周面には、前記出力軸10aの先端部外周面に形成された前記雄スプライン歯13aと、がたつきなく弾性的に噛合する、弾性歯部28が形成されている。この弾性歯部28を構成する各歯の自由状態での円周方向に関する幅寸法W28は、前記各内径側歯素子21a、21b(を構成する各歯)の円周方向に関する幅寸法W21よりも大きい。これに対し、前記本体部26の外周面は、単一円筒面としており、歯部は設けていない。又、この本体部26の外径寸法は、前記両トルク伝達素子17a、17bの外周面に形成された外径側歯素子22a、22bの歯底円を通る仮想円の直径よりも小さくなっている。
又、前記本体部26の軸方向片側面から突出する状態で設けられた3本の突起部27a、27aと、この本体部26の軸方向他側面から突出する状態で設けられた3本の突起部27b、27bとは、それぞれ同軸上に設けられており、それぞれの基端部同士が前記本体部26の内部で連結されている。つまり、本例の場合には、軸方向中央部を基部とし、軸方向両端部をそれぞれ突起部27a、27bとした3本の軸部29、29のうち、それぞれの基部を、前記本体部26の内部に位置させている。又、本例の場合には、前記両突起部27a、27bの基端部に、先端部に比べて外径寸法が小さくなったくびれ部30、30を設けている。又、前記両突起部27a、27aの外径寸法(先端部の外径寸法)及び軸方向寸法は、前記各トルク伝達素子17a、17bに形成された挿入孔23a、23bの大径孔部24、24の内径寸法及び軸方向寸法よりも、それぞれ僅かに大きくしている。
本例の場合には、上述の様な構成を有する前記両トルク伝達素子17a、17bと、前記中間素子18とを組み合わせる事により、前記トルク伝達部材15を構成している。具体的には、前記中間素子18を構成する前記各突起部27a、27bを、前記両トルク伝達素子17a、17bの軸方向内側面にそれぞれ開口した大径孔部24、24内に圧入する事により、前記中間素子18に対して前記両トルク伝達素子17a、17bをそれぞれ支持し、前記トルク伝達部材15としている。そして、特に本例の場合には、この様にトルク伝達部材15を組み立てた状態で、このトルク伝達部材15の外周面の両端部に設けられた1対の外径側歯素子22a、22b同士の円周方向に関する位相をずらしている。そして、前記各突起部27a、27bを円周方向に弾性変形させて(撓ませて)、前記両外径側歯素子22a、22b同士の円周方向に関する位相のずれを小さくした状態で、これら両外径側歯素子22a、22bを、前記雌スプライン歯11aに噛合させている。この結果、これら両外径側歯素子22a、22bにより、この雌スプライン歯11aを、円周方向両側から押圧(挟持)している。本例の場合には、前記各突起部27a、27bの基端部にくびれ部30、30を設けている為、軽い力で、これら各突起部27a、27bを撓ませる事が可能である。
尚、前記各挿入孔23a、23bの円周方向に関するずれの程度(ずれ量、ずれ角度)は、前記各突起部27a、27bの剛性の大きさを考慮し、前記両外径側歯素子22a、22bにより、前記雌スプライン歯11aを、円周方向両側から軽い力で挟持できる程度の大きさに設定している。
本例の場合には、前記両外径側歯素子22a、22b同士の円周方向に関する位相だけでなく、前記両内径側歯素子21a、21b同士の円周方向に関する位相も同様に(同方向に同じ分だけ)ずれている。但し、前記両トルク伝達素子17a、17bのうち、一方のトルク伝達素子17aに設けられた内径側歯素子21aの円周方向片側面と、他方のトルク伝達素子17bに設けられた内径側歯素子21bの円周方向他側面よりも、前記弾性歯部28を構成する各歯の円周方向側面が、それぞれ円周方向に張り出している。この為、前記雄スプライン歯13aとの噛合部におけるバックラッシュの抑制効果は、前記弾性歯部28による弾性的な噛合により発揮される。尚、本例の場合には、前記弾性歯部28を構成する各歯の数と、前記内径側歯素子21a、21bを構成する各歯の数とを同じとしているが、これら両歯の数は同数にしなくても良い。例えば、弾性歯部を構成する各歯の数を、内径側歯素子を構成する各歯の数の半分として(例えば弾性歯部を構成する各歯の数を3つ、内径側歯素子を構成する各歯の数を6つとして)、円周方向等間隔位置で弾性歯部を内径側歯素子よりも円周方向に張り出せる構成を採用できる。
以上の様な構成を有する本例の場合には、前記出力軸10aと前記ウォーム軸6aとに設けられた雄スプライン歯13aと雌スプライン歯11aとのそれぞれの噛合部において、バックラッシュの発生を抑制できると共に、前記両軸6a、10a同士の間のアライメント誤差を効果的に吸収できる。
即ち、本例の場合には、前記中間素子18の本体部26の内周面に設けた弾性歯部28を、前記雄スプライン歯13aに対し、がたつきなく弾性的に噛合させていると共に、前記トルク伝達部材15の外周面の両端部に設けられ、このトルク伝達部材15の組立状態で円周方向に関する位相をずらした1対の外径側歯素子22a、22bにより、前記雌スプライン歯11aを円周方向両側から押圧している。この為、前記雄スプライン歯13aとの噛合部におけるバックラッシュを前記弾性歯部28により、前記雌スプライン歯11aとの噛合部におけるバックラッシュを前記両外径側歯素子22a、22bにより、それぞれ有効に防止できる。従って、前記トルク伝達部材15と前記雄スプライン歯13a及び前記雌スプライン歯11aとのそれぞれの噛合部において、バックラッシュの発生を抑制できる。
又、本例の場合には、前記トルク伝達部材15を構成する1対のトルク伝達素子17a、17b同士を直接は連結せずに、これら両トルク伝達素子17a、17bを、前記中間素子18に設けられた前記各突起部27a、27bを利用して、この中間素子18にのみ支持している。この為、前記両トルク伝達素子17a、17b同士を互いに変位し易くできる為、前記両軸6a、10a同士のアライメント誤差を効果的に吸収できる
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例に就いて、図13〜14を参照しつつ説明する。本例の特徴は、トルク伝達素子17a、17bの外周面に形成した外径側歯素子22c、22dの円周方向に関する幅寸法を、それぞれ軸方向に関して変化させた点にある。より具体的には、前記両トルク伝達素子17a、17bの軸方向外半部に関する、前記両外径側歯素子22c、22dの円周方向に関する幅寸法を、それぞれ軸方向外側に向かう程小さくしている。
この様な構成を有する本例のトルク伝達部材15の場合には、雌スプライン歯11a(図1等参照)と前記各外径側歯素子22c、22dとの接触面積を小さくできると共に、円周方向に関する幅寸法が小さくなった部分に逃げ部を形成できる。この為、前記雌スプライン歯11aと前記各外径側歯素子22c、22dとを、互いに相対変位させ易くできる。従って、ウォーム軸6aと出力軸10a(図1等参照)同士のアライメント誤差をより効果的に吸収できる。
その他の構成及び作用効果に就いては、前記実施の形態の第1例の場合と同様である。
[実施の形態の第3例]
本発明の実施の形態の第3例に就いて、図15を参照しつつ説明する。本例の特徴は、トルク伝達素子17a、17bの外周面に形成した外径側歯素子22e、22fの歯丈を、それぞれ軸方向に関して変化させた点にある。より具体的には、前記両トルク伝達素子17a、17bの軸方向外半部に関する、前記両外径側歯素子22e、22fの歯丈を、それぞれ軸方向外側に向かう程低くしている。
この様な構成を有する本例のトルク伝達部材15の場合には、雌スプライン歯11a(図1等参照)と前記各外径側歯素子22e、22fとの接触面積を小さくできると共に、歯丈が小さくなった部分に逃げ部を形成できる。この為、前記雌スプライン歯11aと前記各外径側歯素子22e、22fとを、互いに相対変位させ易くできる。この為、ウォーム軸6aと出力軸10a(図1等参照)同士のアライメント誤差をより効果的に吸収できる。
その他の構成及び作用効果に就いては、前記実施の形態の第1例の場合と同様である。
本発明を実施する場合には、前述した実施の形態の各例の構造の様に、中間素子の内周面に弾性歯部を設ける構造に限定されず、中間素子の外周面に弾性歯部を設けても良い。又、この様に中間素子の外周面に弾性歯部を設ける場合には、1対の内径側歯素子同士の円周方向に関する位相をずらし、これら両内径側歯素子により外歯を円周方向両側から押圧する。又、前述した実施の形態の各例の構造では、各歯の形状をスプライン歯形としたものを例示して説明したが、本発明を実施する場合に、各歯の形状はスプライン歯形に限定されず、各種の形状を採用できる。又、中間素子に設けた係合突起は、トルク伝達素子に形成した挿入孔に対して圧入する構造に限定されず、例えば、挿入孔を段付孔とすると共に、係合突起を基端部に比べて先端部の外径寸法が大きくなった矢印形状ものを使用し、これら基端部と先端部との間に存在する段差面を、前記挿入孔の段差面に係合させる構造を採用する事もできる。
又、前述した実施の形態の各例の構造の場合には、1対のトルク伝達素子に関して、挿入孔の円周方向に関する形成位置を異ならせた構造を例に説明したが、本発明を実施する場合には、次の様な構成を採用する事により、1対のトルク伝達素子を、挿入孔の位置も含めて同一形状とする事ができる。
即ち、図16の(A)に示す様に、1対のトルク伝達素子17c、17cに関して、外径側歯素子22eを構成する各歯及び内径側歯素子21cを構成する各歯に関する円周方向の対称軸α、α´上にそれぞれ挿入孔23c、23cを形成し、前記両トルク伝達素子17c、17cを同一形状とする。尚、図16の(A)中、実線で示した挿入孔23cが対称軸α上に形成された手前側のトルク伝達素子17cに関する挿入孔であり、破線で示した挿入孔23cが対称軸α´上に形成された奥側のトルク伝達素子17cに関する挿入孔である。そして、代わりに、中間素子18aとして、軸方向両側に設けられる突起部の円周方向に関する位相がずれたものを使用する。又は、図16の(B)に示す様に、1対のトルク伝達素子17d、17dとして、外径側歯素子22fを構成する各歯及び内径側歯素子21dを構成する各歯に関する円周方向の対称軸α、α´上から円周方向に僅かにずれた位置にそれぞれ挿入孔23d、23dを形成したもの用意する。そして、中間素子18と組み合わせる際に、一方のトルク伝達素子17dを、他方のトルク伝達素子17dとは表裏反対に組み合わせ、図16の(B)中、手前側のトルク伝達素子17dに形成された挿入孔23d、23dと、奥側のトルク伝達素子17dに形成された挿入孔23d、23dとの円周方向に関する位相を一致させる。以上の様な構成によれば、1対のトルク伝達素子の共通化を図れる為、コストの低減効果を得られる。
又、前述した実施の形態の各例の構造の場合には、ウォーム軸の基端部に内歯(スプライン歯)が形成されたスプライン孔が形成されており、出力軸の先端部に外歯(スプライン歯)が形成されたスプライン軸部が形成された構造を例に説明した。但し、本発明を実施する場合には、例えば、ウォーム軸の基端部に外歯(スプライン歯)が形成されたスプライン軸部が形成されており、出力軸の先端部に内歯(スプライン歯)が形成されたスプライン孔が形成されていても良い。要するに、ウォーム軸の基端部の構造と出力軸の先端部の構造とは反対でも良い。
1 ステアリングホイール
2 ステアリングシャフト
3 ハウジング
4 ウォームホイール
5 ウォーム歯
6、6a ウォーム軸
7 電動モータ
8 ウォーム
9a、9b 転がり軸受
10、10a 出力軸
11、11a 雌スプライン歯
12、12a スプライン孔
13、13a 雄スプライン歯
14、14a スプライン軸部
15 トルク伝達部材
16 大径部
17a、17b、17c、17d トルク伝達素子
18、18a 中間素子
19 内径側歯部
20 外径側歯部
21a、21b、21c、21d 内径側歯素子
22a、22b、22c、22d、22e、22f 外径側歯素子
23a、23b、23c、23d 挿入孔
24 大径孔部
25 小径孔部
26 本体部
27a、27b 突起部
28 弾性歯部
29 軸部
30 くびれ部

Claims (6)

  1. 互いに同軸上に配置された駆動軸と被駆動軸との間に設けられて、これら両軸同士の間でトルクを伝達するものであり、これら両軸のうちの一方の軸に設けられた外歯と噛合する内径側歯部と、これら両軸のうちの他方の軸に設けられた内歯と噛合する外径側歯部とを、それぞれ備えたトルク伝達部材であって、
    このトルク伝達部材が、軸方向両側に配置された1対のトルク伝達素子と、これら両トルク伝達素子同士の間部分に設けられた中間素子とを組み合わせて成り、
    これら両トルク伝達素子は、互いに連結されておらず、それぞれ略円環状で、内外両周面のうち、内周面には前記内径側歯部を構成する内径側歯素子が、外周面には前記外径側歯部を構成する外径側歯素子が、それぞれ設けられており、
    前記中間素子は、略円環状で、前記両トルク伝達素子よりも弾性変形し易い材料から造られた本体部と、この本体部の軸方向両側面から軸方向両側にそれぞれ突出する状態で設けられた複数の突起部とを備えており、
    前記本体部の内外両周面のうちの一方の周面にのみ、前記外歯と前記内歯とのうちの何れか一方の歯と、がたつきなく弾性的に噛合する、弾性歯部が設けられており、
    前記各突起部を、前記両トルク伝達素子に形成された挿入孔内にそれぞれ挿入する事により、これら両トルク伝達素子を前記中間素子に対しそれぞれ支持した状態で、内周面に設けられた1対の内径側歯素子と、外周面に設けられた1対の外径側歯素子とのうち、少なくとも径方向に関して前記弾性歯部と反対側に位置する1対の歯素子同士の円周方向に関する位相がずれており、これら両歯素子同士の間で、前記外歯と前記内歯とのうちの何れか他方の歯を円周方向両側から押圧する、
    事を特徴とするトルク伝達部材。
  2. 前記各内径側歯素子及び前記各外径側歯素子が、インボリュート歯形である、請求項1に記載したトルク伝達部材。
  3. 前記各内径側歯素子及び前記各外径側歯素子が、スプライン歯形である、請求項1に記載したトルク伝達部材。
  4. 前記各内径側歯素子と前記各外径側歯素子とのうち、少なくとも一方の歯素子の円周方向に関する幅寸法が、軸方向に関して変化している、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載したトルク伝達部材。
  5. 前記各内径側歯素子と前記各外径側歯素子とのうち、少なくとも一方の歯素子の歯丈が、軸方向に関して変化している、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載したトルク伝達部材。
  6. 互いに同軸上に配置された駆動軸及び被駆動軸と、これら両軸同士の間でトルクを伝達する、略円環状のトルク伝達部材とを備え、これら両軸のうち、一方の軸には外歯が、他方の軸には内歯が、それぞれ設けられており、前記トルク伝達部材の内外両周面のうち、内周面には前記外歯と噛合する内径側歯部が、外周面には前記内歯と噛合する外径側歯部が、それぞれ設けられている、駆動軸と被駆動軸との結合部であって、
    前記トルク伝達部材が、請求項1〜5のうちの何れか1項に記載したトルク伝達部材である事を特徴とする、駆動軸と被駆動軸との結合部。
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