以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、本発明に係る内視鏡1を示した構成図である。
同図における内視鏡1は、患者体内に挿入される挿入部2と、挿入部2の基端に連設され、内視鏡1の把持及び挿入部2の操作等に用いられる操作部3と、内視鏡1を不図示の光源装置やプロセッサ装置等のシステム構成機器に接続するユニバーサルコード4とを備える。
挿入部2は、基端から先端に向って順に連設される軟性部5、湾曲部6、及び先端部7から構成される。軟性部5は、可撓性を有し、挿入部2の挿入経路に沿って任意の方向に湾曲する。湾曲部6は、操作部3のアングルノブ8、9の各々の操作により上下と左右の各々の方向に湾曲する。先端部7は、体内の被観察部位を撮影してその撮影した画像を観察画像(内視鏡画像)としてユニバーサルコード4により接続されたプロセッサ装置に送る観察部や、ユニバーサルコード4により接続された光源装置から内視鏡1内部のライトガイドを通じて伝搬された照明光を被観察部位に照射する照明部などを備える。
図2は、先端部7を拡大して示した斜視図である。本実施の形態の内視鏡1は例えば十二指腸鏡として用いられる側視内視鏡であり、同図の先端部7は側視内視鏡における構成を示す。
同図に示すように先端部7には、挿入部2の軸線である長手軸に対して略平行な平坦面20が設けられ、その平坦面20に観察窓22及び照明窓24が設けられる。なお、以下において単に長手軸という場合には挿入部2の長手軸を示す。
観察窓22は、長手軸に対して側方(径方向)に存在する被観察部位の画像を取得する観察部の構成要素であり、側方の被観察部位からの被写体光を観察部の他の構成要素である光学系(結像レンズ等)及び撮像手段に取り込む。照明窓24は、先端部7に搭載される照明部の構成要素であり、照明部の他の構成要素である光出射部、即ち、光源装置からの光を伝搬するライトガイドの終端部に設けられた光出射部から出射された照明光を被観察部位に照射する。
なお、先端部7に対して、長手軸の方向であって先端側の位置を前側(先端側)、その反対側の位置を後側(基端側)とし、平坦面20に垂直な方向であって平坦面20に対向する側の位置を上側、その反対側を下側とし(図1参照)、左側と右側は、前後と上下の位置関係により決まる向きの位置とする。
また、先端部7において平坦面20の右側には、起立台収容スリット38が設けられ、起立台収容スリット38には起立台60が設けられる。起立台収容スリット38は、挿入部2内を挿通する処置具挿通チャンネルを通じて操作部3の処置具導入口13(図1参照)に連通しており、処置具導入口13から挿入された処置具が起立台収容スリット38に導かれる。
起立台60は、起立台収容スリット38に導かれた処置具の進行方向を曲げて起立台収容スリット38の上面側の開口部38a(処置具導出口38aともいう)へと向かう方向に案内し、処置具導出口38aから処置具を導出させる。
また、起立台60は、操作部3の起立操作レバー12(図1参照)の操作により起立する方向(起立方向)又は倒伏する方向(倒伏方向)に起伏動作(回転)し、処置具導出口38aからの処置具の導出方向(導出角度)を変更する。
なお、平坦面20の観察窓22の近傍には操作部3の送気送水ボタン10(図1参照)の操作により観察窓22への送気と送水とを切替可能に行う不図示の送気送水ノズルが設けられる。また、挿入部2内において処置具挿通チャンネルには吸引チャンネルが接続されており、操作部3の吸引ボタン11(図1参照)の操作により起立台収容スリット38からの吸引が行われる。
続いて、先端部7における起立台60の駆動機構に関する構成について詳説する。
図3は、長手軸に垂直な先端部7の断面図であり、図4は、先端部7の分解斜視図である。
これらの図に示すように、先端部7は、先端部7内を複数の領域に区画すると共に各種構成部品が一体的に組み付けられる先端部本体30(図4参照)を有し、先端部本体30の外周部が着脱可能なキャップ26により被覆される。
キャップ26は、弾性力のある材質、例えば弾性ゴムにより、先端側が閉塞した円筒形を基調とした形状に形成され、上述の平坦面20と起立台収容スリット38の上面側の開口部38a(処置具導出口38a)の全体及び前面側の開口部38bの上側一部とを開放する開口窓26Aと、起立台収容スリット38の下面側の開口部38cの全体及び前面側の開口の38bの下側一部とを閉鎖する隔壁部26Bとを有する。
また、キャップ26の基端には径方向内向きに環状に突出する係合部(不図示)が形成されており、その係合部が先端部本体30の外周部に形成された溝31に係合することで、キャップ26が先端部本体30に装着される。なお、後述のようにキャップ26は洗浄の際に取り外される。
先端部本体30は、耐食性を有する金属材料等の剛性部材で形成されており、基端側の円柱状の基端部32と、基端部32から先端側に向けて延設され、互いに向かい合う左右一対の側壁部34、36とを有する。これによって、先端部7内において、右側の側壁部34と左側の側壁部36との間には、起立台60を収容する空間部である起立台収容スリット38が形成され、側壁部34よりも右側には後述の起立レバー84を収容する空間部である起立レバー収容室40が形成され、側壁部36よりも左側には上述の観察部及び照明部の構成部品(不図示)を収容する空間部である光学系収容室42が形成される。なお、起立レバー収容室40及び光学系収容室42は、図4では不図示の保護板により被覆されて気密性が保持される。
起立台収容スリット38は、図4のように先端部本体30からキャップ26が取り外された状態において、上面側の開口部分を開口部38a(処置具導出口38a)、前面側の開口部分を開口部38b、下面側の開口部分を開口部38cとして有し、それらの開口部38a、38b、38cが連設されることにより上面から前面を通り下面まで延在して開口する。
また、起立台収容スリット38の基端側には、先端部本体30の基端部32により形成される後壁部46が配置され、その後壁部46には、図3のように処置具挿通チャンネル14の管路端部である開口部14aが配置される。
この起立台収容スリット38には、図4に全体が図示された起立台60が回転自在に設置される。なお、起立台60の構成については後述する。
起立台収容スリット38の右側に配置される側壁部34の下端付近には、図3及び図4のように起立レバー収容室40から起立台収容スリット38まで貫通する保持孔50が形成され、その保持孔50に回転軸82が回転自在に軸支される。
なお、本実施の形態では、回転軸82は、図4のように起立レバー84と一体形成されて長板状に延びる起立レバー84の基端から延設され、一端を起立台起立機構である起立レバー84に固定される固定端とし、他端を自由端とした片持ち梁状に構成される。この回転軸82と回転軸82の軸線に略垂直な方向に延びる起立レバー84とを有する部材を駆動部材80というものとするが、回転軸82と起立レバー84とは別体であってもよい。
また、図3のように回転軸82と保持孔50との間にはシール部材52が配置され、起立台収容スリット38と起立レバー収容室40とは相互に気体や液体の浸入が防止されている。
この回転軸82の起立台収容スリット38に突出する端部(第1軸部90)は、後述のように起立台60と連結する。
側壁部34の右側には、図4のように保持孔50を中心とした扇形状の空間部が起立レバー収容室40として形成される。この起立レバー収容室40には、駆動部材80の回転軸82の保持孔50への挿入と共に、駆動部材80の起立レバー84が収容される。
図5は、先端部本体30に起立台60及び駆動部材80を組み付けた状態を示した斜視図である。なお、起立レバー収容室40を被覆する保護板は省略している。
同図に示すように 起立レバー84の先端には、連結具85を介して操作ワイヤ86の先端部が連結される。操作ワイヤ86は、起立レバー収容室40の壁面に開口したワイヤ挿通孔44から挿入部2内を挿通して操作部3の起立操作レバー12に連結される。
これにより、起立操作レバー12の操作により操作ワイヤ86が押し引きされて起立レバー84が回転軸82と共に回転する。そして、その回転軸82の回転によって起立台60が回転し、起立台60が起伏動作する。なお、回転軸82を回転させる起立台起立機構は起立レバー84を操作ワイヤ86により押し引きする本実施の形態のものに限らない。
次に、起立台60と回転軸82との連結機構等について説明する。
図6は、起立台60と駆動部材80のみを示した斜視図である。
同図、及び図4に示すように、駆動部材80の回転軸82の先端には、軸方向に垂直な断面が非円形の形状の一形態として略正方形となる第1軸部90が突設され、更に、その係第1軸部90の先端側に軸方向に垂直な断面の断面積が第1軸部90よりも小さい第2軸部91が突設される。
図3のように側壁部34の保持孔50から起立台収容スリット38へは、これらの第1軸部90及び第2軸部91の部分のみが突出し、その先端は側壁部36の近傍に配置される。
なお、図9は、先端部本体30を上側から示した平面図であり、起立台60を省略して示したものである。この図及び図3からわかるように、側壁部34の保持孔50が形成される部分は側壁部36に近づく方向に突出しており、側壁部36との隙間が狭められている。
一方、起立台60は、処置具挿通チャンネル14の開口部14aから導出された処置具を処置具導出口38aの方向に案内する案内面61を有する起立台本体62と、起立台本体62よりも基端側に突出し、起立台本体62よりも細幅に形成された連結部64とを有する。
連結部64には、回転軸82の第1軸部90及び第2軸部91が挿入される回転軸受け部66が設けられる。回転軸受け部66は、回転軸82の第1軸部90に対して相対回転不能に係合され、かつ、回転軸82の第2軸部91に対して相対回転可能に遊嵌される回転軸受け領域70を有する。
即ち、回転軸受け領域70は、回転軸82の第1軸部90の形状及び大きさと略一致する係合孔であり、この回転軸受け領域70が図7のように回転軸82の第1軸部90に対して係合することで、回転軸82と起立台60とが連動して回転する状態に連結される。
内視鏡1の施術への通常使用時においてはこの状態に設定される。
一方、回転軸受け領域70は、回転軸82の第2軸部91に対しては大きな孔であり、回転軸受け領域70が第1軸部90と係合する位置から回転軸82の先端側に移動することで、図8にように回転軸82の第2軸部91に対して回転軸受け領域70が遊嵌された状態となる。
したがって、回転軸82と起立台60との連結が解除される。このとき、起立台60に直接力を加えることで、起立レバー84及び回転軸82の回転を伴うことなく起立台60のみを回転軸82の軸線周りに回転させることができる状態となる。
内視鏡1の洗浄を行う際にはこの状態に設定することで起立台60の大半の部分を起立台収容スリット38から待避させて起立台収容スリット38の内部や起立台60を洗浄することができ、先端部7の洗浄を容易かつ迅速に行うことができるようになる。
また、内視鏡1の施術への通常使用時において、起立台60と回転軸82とが常に連結された状態となるように、起立台60は、回転軸受け領域70が回転軸82の第2軸部91に対して遊嵌する位置に移動しないようになっている。
即ち、図10に示すように側壁部36には凹部110が形成される(図3も参照)。起立台60は、側壁部36の凹部110以外の領域の対向範囲に一部でも重なる場合には、回転軸82の軸線方向の移動が規制され、回転軸82の第1軸部90に対して回転軸受け領域70が係合した状態に維持される。
そして、内視鏡1の施術への通常使用時においては、起立台60の回転範囲がそのような規制を受ける範囲に制限される。したがって、内視鏡1の施術への通常使用時においては、起立台60と回転軸82とが常に連結された状態に維持される。
以上の先端部7の作用について説明する。
図11(A)、図12(A)、図13(A)、図14は、起立台収容スリット38における起立台60の状態を示した図であり、回転軸82の軸線に垂直な面であって、起立台60の回転軸受け領域70を通る面から側壁部36を見たときの回転軸82(第1軸部90及び第2軸部91)、起立台60、側壁部36等を示した図である。図11(B)、図12(B)は、側壁部34の起立レバー収容室40における起立レバー84の状態を示した図である。また、図13(B)は、図13(A)の状態を回転軸82の軸線を通る長手軸に垂直な断面で示した図である。
図11(A)、(B)は、先端部7にキャップ26を装着している場合であって、内視鏡1を施術に使用するときの状態を示す。先端部7にキャップ26が装着されている場合、起立台60は、倒伏側への回転範囲がキャップ26との当接により制限され、少なくとも起立台60が起立台収容スリット38の下面側の開口部38cから外部に露出しない回転範囲に制限される。また、起立側への回転範囲が先端部本体30との当接などにより制限される。
これによって、操作部3の起立操作レバー12により操作可能な起立台60の回転範囲(回転軸82の周りの回転角度範囲)は、例えば、同図(A)のようにθA0からθA1までの回転範囲内に制限されるものとする。
また、このときの起立レバー84の回転範囲(回転軸82の周りの回転角度範囲)が同図(B)のようにθB0からθB1までの回転範囲内で制限されるものとすると、θB0は、起立レバー84が起立レバー収容室40の倒伏側の側壁40Bに当接する位置よりも起立側となる。なお、θB1は、起立レバー84が起立レバー収容室40の起立側の側壁40Aに当接したときの位置に略一致するが、必ずしもこれに限らない。
一方、内視鏡1を施術に使用した後、先端部7等の洗浄を行う際には、先端部7からキャップ26が取り外される。これによって、キャップ26による起立台60の倒伏側への回転規制が解除される。そして、図12(B)のように起立レバー84をθB0よりも倒伏側のθB2の位置まで回転させることが可能となり、操作部3の起立操作レバー12により操作可能な起立台60の回転範囲が図12(A)のようにθA2まで拡大する。
そして、起立台60を少なくともθA0よりも倒伏側に設定した状態のとき、より好ましくは起立台60が起立台収容スリット38の下面側の開口部38cから外部に露出した状態のときに、起立台60が側壁部36の凹部110以外の領域の対向範囲に全く重ならない位置となる。このとき、起立台60を指や治具などを用いて回転軸82の先端側、即ち、側壁部36に向けて押圧すると、起立台60が凹部110の内部に入り込み、図13(A)及び図13(B)のように起立台60の回転軸受け部66において回転軸受け領域70が第2軸部91に遊嵌された状態となる。即ち、起立台60と回転軸82との連結が解除される。
これによって、起立台60を凹部110の範囲内で回転軸82及び起立レバー84の回転を伴うことなく起立台60を更に回転させ、図14のように起立台60の大部分を起立台収容スリット38から待避させることができる。そのため、起立台60と起立台収容スリット38の壁面との隙間が少なく、起立台収容スリット38の壁面の露出部分も多くなるため、起立台60及び起立台収容スリット38の内部を容易かつ迅速に洗浄することができる。
なお、側壁部36は、図11(A)、図12(B)、図13(A)のように、起立台60の回転方向の位置が、少なくともθA0よりも起立側となる位置、より好ましくは起立台60が起立台収容スリット38の下面側の開口部38cから外部に露出した状態となる位置よりも起立側となる位置のときには、起立台60が回転方向の第1位置に位置するものとして、起立台60の回転軸受け領域70が回転軸82の第1軸部90と係合する位置から第2軸部91を遊嵌する位置に移動することを規制する規制部であり、かつ、少なくともθA0よりも倒伏側となる位置、より好ましくは起立台60が起立台収容スリット38の下面側の開口部38cから外部に露出した状態となる位置よりも倒伏側となる位置のときには、起立台60が回転方向の第2位置に位置するものとして、起立台60の回転軸受け領域70が回転軸82の第1軸部90と係合する位置から第2軸部91を遊嵌する位置に移動することを許容する規制部として作用する。
ここで、第1位置は起立台60の全体が起立台収容スリット38の内部に収容される位置とすることができる。
また、第2位置は、起立台60の少なくとも一部が起立台収容スリット38の外部に露出する位置とすることができ、より好ましくは、起立台60の少なくとも一部が起立台収容スリット38の下面側の開口部38cから外部に露出する位置とすることができる。更に、第2位置は、起立台60の少なくとも一部が起立台収容スリット38の上面側の開口部38aから外部に露出する位置とすることもできる。
以上、上記実施の形態において、例えば図15に示すように側壁部36に回転軸82に対向する領域から下端まで連通する凹部112を凹部110内に更に形成してもよい。図14にその凹部112の範囲を破線で示すと、起立台60と回転軸82との連結を上記のように解除したのち、図14の起立台60のように凹部112が形成された範囲に重なる角度まで回転させる。そして、起立台60を回転軸82の軸線方向にスライドさせることで、凹部112を介して起立台60を起立台収容スリット38から完全に取り外すことができ、洗浄等を行うことができる。
また、上記実施の形態と同様に起立台60が所定の角度よりも起立側となる回転範囲、例えば、起立台60が起立台収容スリット38の上面側の開口部38aから外部に露出した状態となる回転範囲となったときに起立台60と回転軸82との連結を解除できるようにしてもよい。