JP6243548B2 - 工業用二層織物 - Google Patents
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Description
しかし、サテン織等の従来技術を織物に採用すると、ナックルが連続しない箇所が存在するため、隣接する緯糸同士の寄集が発生し、緯糸の不均一な並びに起因する転写マークの発生が問題となっていた。
そして、綾織を崩した組織でありながら、隣接する緯糸同士の離間又は寄集を防止し、転写マークを抑制すると共に、表面平滑性及び走行安定性といった織物に要求される全ての特性を満足させる組織は存在していなかった。
(1)上面側経糸と上面側緯糸からなる上面側織物と、下面側経糸と下面側緯糸からなる下面側織物とを、接結糸として機能する経糸によって接合された工業用二層織物において、表面側に形成される全ての経糸ナックルは単一の上面側緯糸の上側を通る事で形成されており、前記経糸ナックルは隣接するシャフトにおいて平面視斜め方向に少なくとも二つの他の経糸ナックルが配置されており、前記経糸ナックルは連続して配置されることにより織物の表面層側に杉綾模様を形成するように配置されていることを特徴とする工業用二層織物である。
又、本発明における「単一の上面側緯糸の上側」とは、経糸接結糸が隣接している二本以上の上面側緯糸の上を通ることはなく、経糸接結糸が必ず1本の上面側緯糸の上を通って単一のナックルを形成していることを示している。そのため、経糸ナックルが織物の表面上にロングクリンプを形成することはない。
更に、本発明における「杉綾模様」とは、経糸ナックルが走行方向に対して斜めの方向に平面視上一定数並設され、更に正方向に反転して同数並ぶことにより、経糸ナックルによるジグザグ模様を織物の上面層側に形成している様をいう。すなわち、ジグザグ模様の反転部における頂点には、一の経糸ナックルが配置されている。
また、本発明における頂点に配置された経糸ナックルにおいては、一方向の隣接するシャフトの上下斜め方向に2つの他の経糸ナックルが配置され、ジグザグ模様を形成する頂点と頂点の中間地点に配置された経糸ナックルは、両隣りのシャフトの対角線上(斜め方向)に2つの他の経糸ナックルが配置されている。
本発明における、平面視斜め方向に連接する経糸ナックルの配置数の最小値は3である。すなわちジグザグ模様の頂点間に1つの経糸ナックルが配置されたものが、最小値3となる。また、経糸ナックルの数の最大値を採用することにより、完全組織を形成する上面側経糸の総本数の2倍の個数の経糸ナックルを配置することにより、ジグザグ模様の一つの辺が形成されることになる。
(3)前記杉綾模様の頂点に配置された経糸ナックルは、接結糸であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載された工業用二層織物である。
(4)前記織物の表面側に表れる上面側緯糸によって形成されたナックルが、全て同じ長さを有していることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれか一に記載された工業用二層織物である。
本発明に係る工業用二層織物は、上面側経糸と上面側緯糸からなる上面側織物と、下面側経糸と下面側緯糸からなる下面側織物の二層で構成されており、上面側織物と下面側織物とは接結糸として機能する経糸によって接合されている。
また、本発明に係る工業用二層織物は、表面側に形成される全ての経糸ナックルが単一の上面側緯糸の上側を通って形成されている点に特徴を有する。さらに、前記経糸ナックルは隣接するシャフトにおいて平面視斜め方向に少なくとも二つの他の経糸ナックルが配置されており、前記経糸ナックルは連続して配置されることにより織物の表面層側に杉綾模様を形成するように配置されている。
本発明は、一の接結糸が上面側織物上にナックルを形成している箇所において、隣接する斜め方向の箇所に二つの経糸ナックルを形成することによって、一の接結糸が形成する経糸ナックルにおいて発生する凹凸形状を隣接する二つの経糸ナックルとの応力関係によって打ち消しあうことができる。そのため紙に対する織物の脱水マークの転写を抑止し、結果的に紙における織物との接触面に生じる転写マークを防止し、表面平滑性を良好なものとすることができる。
本発明の工業用二層織物に係る実施形態を図面に則して説明する。図1〜図7は本発明の工業用二層織物に係る実施形態1〜5を示す意匠図である。下記に記述する完全組織とは、織物組織の最小の繰り返し単位であって、この完全組織が上下左右につながって織物全体の組織が形成される。意匠図において、経糸はアラビア数字、例えば1、2、3・・・で示した。本実施形態において、接結機能を有する経糸を(b)で示している。また、上面側経糸は(U)、下面側経糸は(L)で示している。 緯糸はダッシュを付したアラビア数字、例えば1’、2’、3’・・・で示した。配置比率によって上面側緯糸と下面側緯糸が上下に配置されている場合と、上面側緯糸のみの場合がある。上面側緯糸は(U)で、下面側緯糸は(L)で示している。
上面側経糸と下面側経糸、および上面側緯糸と下面側緯糸は上下に重なって配置されているところがある。緯糸については配置比率から一部上面側緯糸の下に下面側緯糸が配置されていないところもある。意匠図では糸が上下に正確に重なって配置されることになっているが、これは図面の都合上であって実際の織物ではずれて配置されても構わない。
図1は本発明の工業用二層織物に係る実施形態1の完全組織を示す意匠図である。上面側経糸(2U)と下面側経糸(2L)と、接結機能を有する上面側経糸接結糸(1Ub,3Ub)と下面側経糸接結糸(1Lb,3Lb)を含む2つの経糸対がある。第一の経糸対は、1Ubと1Lbとから構成され、第二の経糸対は、3Ubと3Lbとから構成されている。図1に示す如く、第一の経糸対と第二の経糸対の間に、上面側経糸(2U)と下面側経糸(2L)の対が配置されており、合計6シャフトの織物である。なお、上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率は4:3である。
実施形態1に係る工業用織物における連続して配置される経糸ナックルは、杉綾模様を形成する頂点間における前記経糸ナックルの数が3である。
そして、一の接結糸が上面側織物上にナックルを形成している箇所において、隣接する斜め方向の箇所に二つの経糸ナックルを形成することによって、一の接結糸が形成する経糸ナックルにおいて発生する凹凸形状を隣接する二つの経糸ナックルとの応力関係によって打ち消しあうことができるため、紙における織物との接触面に生じる転写マークを抑制し、表面平滑性及び走行安定性に優れた工業用二層織物を提供することができる。
図3は本発明の工業用二層織物に係る実施形態2の完全組織を示す意匠図である。上面側経糸(2U,3U,5U,6U)と下面側経糸(2L,3L,5L,6L)と、接結機能を有する上面側経糸接結糸(1Ub,4Ub)と下面側経糸接結糸(1Lb,4Lb)を含む2つの経糸対がある。第一の経糸対は、1Ubと1Lbとから構成され、第二の経糸対は、4Ubと4Lbとから構成されている。実施形態2に係る工業用二層織物は、図12シャフトの織物である。なお、上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率は1:1である。
表面側に形成される全ての経糸ナックルは単一の上面側緯糸の上側を通る事で形成されている。例えば、図4に示す如く、上面側経糸接結糸(1Ub)は、単一の上面側緯糸(1’U)及び上面側緯糸(4’U)の上側を通って経糸ナックルを形成し、下面側経糸接結糸(1Lb)は、単一の上面側緯糸(7’U)及び上面側緯糸(10’U)の上側を通って経糸ナックルを形成している。また、上面側経糸(2U)も夫々単一の上面側緯糸(2’U,6’U,8’U,12’U)の上側を通って経糸ナックルを形成している。
また、実施形態2に係る工業用織物における連続して配置される経糸ナックルは、杉綾模様を形成する頂点間における前記経糸ナックルの数が4である。
そして、図3に示すような杉綾模様を形成することによって、斜紋線のない工業用二層織物を提供することができる。
また、一の接結糸が上面側織物上にナックルを形成している箇所において、隣接する斜め方向の箇所に二つの経糸ナックルを形成することによって、一の接結糸が形成する経糸ナックルにおいて発生する凹凸形状を隣接する二つの経糸ナックルとの応力関係によって打ち消しあうことができるため、紙における織物との接触面に生じる転写マークを抑制し、表面平滑性及び走行安定性に優れた工業用二層織物を提供することができる。
図5は本発明の工業用二層織物に係る実施形態3の表面組織の一部を示す意匠図である。ここで、図中における■印は接結糸及び上面側経糸によって形成される経糸ナックルを示している。これは実施形態4及び5においても同様である。
本実施形態3に係る工業用二層織物は、図5に示す如く、表面組織中に8本の上面側経糸及び経糸接結糸を有する。
本実施形態3に係る工業用二層織物において、杉綾模様を形成する頂点間における経糸ナックルの数は、上面側経糸の本数である8の2倍である16個を有している。すなわち、経糸8と緯糸16の交差する箇所にある経糸ナックルを頂点とする連続して配置される経糸ナックル数は、経糸7−緯糸15、経糸6−緯糸14、経糸5−緯糸13、経糸4−緯糸12、経糸3−緯糸11、経糸2−緯糸10、経糸1−緯糸9、経糸8−緯糸8、経糸7−緯糸7、経糸6−緯糸6、経糸5−緯糸5、経糸4−緯糸4、経糸3−緯糸3、経糸2−緯糸2、そして正方向に反転してジグザグ模様を形成する他方の頂点である経糸1−緯糸1まで、計16個を有している。
上記のように経糸ナックルを連続して配置することにより織物の表面層側に杉綾模様を形成することができる。これにより斜紋線がなく、かつ転写マークもない、表面平滑性及び走行安定性に優れた工業用二層織物を提供することができる。
図6は本発明の工業用二層織物に係る実施形態4の表面組織の一部を示す意匠図である。本実施形態4に係る工業用二層織物は、図6に示す如く、表面組織中に6本の上面側経糸及び経糸接結糸を有する。
本実施形態4に係る工業用二層織物において、杉綾模様を形成する頂点間における経糸ナックルの数は3個である。杉綾模様の頂点は、経糸1−緯糸1、経糸3−緯糸3、経糸4−緯糸1及び経糸6−緯糸3の計4つある。 このような完全組織を上下左右に連接することによって、走行方向に杉綾模様が形成される。これにより斜紋線がなく、かつ転写マークもない、表面平滑性及び走行安定性に優れた工業用二層織物を提供することができる。
図7は本発明の工業用二層織物に係る実施形態5の表面組織の一部を示す意匠図である。本実施形態5に係る工業用二層織物は、完全組織において24シャフトの織物である。本実施形態5に係る工業用二層織物は、図7に示す如く、表面組織中に12本の上面側経糸及び経糸接結糸を有する。
本実施形態5に係る工業用二層織物において、杉綾模様を形成する頂点間における経糸ナックルの数は5個である。杉綾模様の頂点は、経糸1−緯糸4、経糸1−緯糸8、経糸5−緯糸4、経糸5−緯糸8、経糸9−緯糸4及び経糸9−緯糸8の計6つある。
このような完全組織を上下左右に連接することによって、走行方向に杉綾模様が形成される。これにより斜紋線がなく、かつ転写マークもない、表面平滑性及び走行安定性に優れた工業用二層織物を提供することができる。
黒く現れた部分は、織物の表面において凸部を形成している部分である。図9における工業用二層織物においては、斜め方向に連続する転写マークが現れているのが看取される。一方、図8に示す如く、実施形態2に係る工業用二層織物においては、比較的濃く表れた黒い点が杉綾模様を形成するように現われているのが看取される。そして実施形態2に係る工業用二層織物には、斜め方向の転写マークが看取されない。
すなわち、本発明に係る工業用二層織物は、従来の工業用二層織物に比較して、紙に対する脱水マークの転写が抑止され、網厚を増大させることなく表面平滑性を良好なものとする顕著な効果を奏することが明らかである。
1’〜30’ 緯糸
U 上糸
L 下糸
b 接結糸
Claims (4)
- 上面側経糸と上面側緯糸からなる上面側織物と、下面側経糸と下面側緯糸からなる下面側織物とを、接結糸として機能する経糸によって接合された工業用二層織物において、表面側に形成される全ての経糸ナックルは単一の上面側緯糸の上側を通る事で形成されており、前記経糸ナックルは隣接するシャフトにおいて平面視斜め方向に少なくとも二つの他の経糸ナックルが配置されており、前記経糸ナックルは連続して配置されることにより織物の表面層側に杉綾模様を形成するように配置されていることを特徴とする工業用二層織物。
- 前記連続して配置される経糸ナックルは、杉綾模様を形成する頂点間における前記経糸ナックルの数の最小値が3であり、最大値が完全組織における上面側経糸の本数の2倍であることを特徴とする請求項1に記載された工業用二層織物。
- 前記杉綾模様の頂点に配置された経糸ナックルは、接結糸であることを特徴とする請求項1又は2に記載された工業用二層織物。
- 前記織物の表面側に表れる上面側緯糸によって形成されたナックルが、全て同じ長さを有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載された工業用二層織物。
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