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JP6240034B2 - 窒化珪素質基板およびこれを備える回路基板ならびに電子装置 - Google Patents

窒化珪素質基板およびこれを備える回路基板ならびに電子装置 Download PDF

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JP6240034B2 JP2014132792A JP2014132792A JP6240034B2 JP 6240034 B2 JP6240034 B2 JP 6240034B2 JP 2014132792 A JP2014132792 A JP 2014132792A JP 2014132792 A JP2014132792 A JP 2014132792A JP 6240034 B2 JP6240034 B2 JP 6240034B2
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Description

本発明は、窒化珪素質基板およびこれを備える回路基板ならびに電子装置に関するものである。
近年、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)素子、金属酸化膜型電界効果トランジスタ(MOSFET)素子、発光ダイオード(LED)素子、フリーホイーリングダイオード(FWD)素子、ジャイアント・トランジスタ(GTR)素子等の半導体素子、昇華型サーマルプリンタヘッド素子、サーマルインクジェットプリンタヘッド素子およびペルチェ素子等の各種電子部品を回路基板の回路部材上に搭載した電子装置が用いられている。
このような回路基板は、絶縁性が高く機械的強度に優れた窒化珪素質基板の表面に、例えば、銅を主成分とする回路部材が接合されて用いられている。そして、回路基板ひいては電子装置の信頼性を高めるため、窒化珪素質基板と回路部材との接合強度を高めるための検討が為されている。
例えば、特許文献1では、窒化珪素基板に金属回路板をろう付け接合した窒化珪素回路基板であって、窒化珪素基板の接合面は算術平均粗さRaが、Ra<1μm、最大高さRyが、Ry<10μm、粗さ曲線から求めたスキューネスRskが、1>Rsk>0であり、ろう付け接合界面のボイドの面積率が3%以下である窒化珪素回路基板が提案されている。
特開2010−76948号公報
今般、回路部材を介して電子部品が搭載される窒化珪素質基板には、優れた機械的強度を有しつつ、回路基板および電子装置の信頼性をさらに高めるため、回路部材となる金属との更なる接合強度の向上が求められている。
本発明は、上記要求を満たすべく案出されたものであり、優れた機械的強度を有しつつ、金属との接合強度が向上した窒化珪素質基板およびこれを備える回路基板ならびに電子装置を提供することを目的とするものである。
本発明の窒化珪素質基板は、窒化珪素を主成分とし、金属との接合面となる表面を備える焼結体からなり、該表面に菱面体晶の窒化硼素が存在し、前記表面における全成分100
質量%のうち、前記菱面体晶の窒化硼素の含有量が5質量%以上20質量%以下であることを特徴とするものである。
また、本発明の回路基板は、上記構成の窒化珪素質基板の前記表面に回路部材を備えていることを特徴とするものである。
また、本発明の電子装置は、上記構成の回路基板における前記回路部材上に電子部品を
搭載してなることを特徴とするものである。
本発明の窒化珪素質基板は、優れた機械的強度を有しつつ、金属との接合強度を向上することができる。
また、本発明の回路基板および電子装置は、金属である回路部材と窒化珪素質基板とが強固に接合されていることから、長期間に使用に耐え得る優れた耐久性を有しているため高い信頼性を有する。
本実施形態の回路基板の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A’線での断面図である。 本実施形態の回路基板の他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のB−B’線での断面図である。 本実施形態の回路基板のさらに他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のC−C’線での断面図である。 本実施形態の電子装置の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のD−D’線での断面図である。
まず、本実施形態の窒化珪素質基板について説明する。
本実施形態の窒化珪素質基板は、窒化珪素を主成分とし、金属との接合面となる表面を備える焼結体からなり、表面に菱面体晶の窒化硼素が存在し、表面における全成分100質
量%のうち、菱面体晶の窒化硼素の含有量が5質量%以上20質量%以下である。このような構成を満たしていることにより、本実施形態の窒化珪素質基板は、優れた機械的強度を有しつつ、金属との接合強度を向上できる。
ここで、窒化硼素は、常圧における結晶構造として、六方晶と菱面体晶とがあり、菱面体晶の窒化硼素は、単位格子におけるc軸の格子定数(1.0000nm)が六方晶の窒化硼素の単位格子のc軸における格子定数(0.66813nm)よりも大きいものである。
そして、このような菱面体晶の窒化硼素が存在していることにより、焼結時に、窒化珪素の柱状結晶粒子を構成する単位格子の一部が菱面体晶の窒化硼素の単位格子内に侵入して、菱面体晶の窒化硼素と窒化珪素とが強固に結合されるとともに、結合された結晶の形状が複雑な形状となっているため接合強度が向上できると考えられる。
なお、窒化珪素質基板の表面における全成分100質量%のうち、菱面体晶の窒化硼素の
含有量が5%未満では、上述した接合強度の向上効果が少なくなる傾向があり、20質量%を超えると、機械的強度が低下する傾向がある。
また、窒化硼素において、六方晶の結晶構造の窒化硼素は少ないことが好適であり、六方晶の窒化硼素の含有量は、菱面体晶の窒化硼素の含有量の10%以下であることが好適である。
また、本実施形態において、窒化珪素質基板の表面とは、窒化珪素質基板のうち金属が接合される外表面を指すが、成分の同定や含有量の測定における試料採取にあたっては、採取領域を表面から深さ方向に50μmの深さまでを表面と見なすものとする。
ここで、金属との接合面となる表面における各成分の含有量は、X線回折装置(XRD)を用いて、表面における成分を同定した後、蛍光X線分析装置(XRF)を用いて、元素の含有量を求め、同定された成分の含有量に換算すればよい。または、窒化珪素質基板の表面から深さ方向に30μm〜50μm程度の深さまで研磨して得られる研磨粉を試料とし
、ICP発光分光分析装置(ICP)を用いて、元素の含有量を求め、同定された成分の含有量に換算してもよい。具体的には、同定された成分が、窒化珪素、窒化硼素および窒化ジルコニウムであれば、XRFまたはICPで測定することによって得られた、珪素、硼素およびジルコニウムの含有量をそれぞれ窒化物の含有量に換算すればよい。
また、XRDを用いて測定した際に、菱面体晶のみの窒化硼素が同定された場合には、上述した方法で求めた窒化硼素の含有量が菱面体晶の窒化硼素の含有量である。なお、六方晶の窒化硼素が同定された場合には、窒化珪素質基板の表面から深さ方向に30μm〜50
μm程度の深さまで研磨して得られる研磨粉を試料として、XRDを用いたリートベルト法で、結晶構造毎の質量百分率を求め、窒化硼素の含有量に菱面体晶の質量百分率を掛けて算出すればよい。
そして、本実施形態の窒化珪素質基板は、窒化珪素を主成分とする。なお、主成分とは焼結体を構成する全成分100質量%のうち、窒化珪素を63質量%以上含有することを意味
し、特に、70質量%以上含有すると機械的強度がより高くなる傾向があるため好適である。また、金属とは、金属板、金属層、金属箔などのことであり、ろう材等により接合されている金属板も上記金属に含む概念である。 なお、本実施形態の窒化珪素質基板における機械的強度は、JIS R 1601−2008(ISO 14704:2000(MOD))に準拠し
て、室温における4点曲げ強度で評価することができ、本実施形態の窒化珪素質基板は、900MPa以上の4点曲げ強度を有する。また、本実施形態の窒化珪素質基板における金
属との接合強度は、JIS C 6481−1996に準拠して測定することができる。
また、本実施形態の窒化珪素質基板は、窒化珪素の結晶間である粒界相に、窒化ジルコニウムが存在し、焼結体を構成する全成分100質量%のうち、ジルコニウムを窒化物に換
算した含有量が0.2質量%以上1.0質量%以下であることが好適である。
上記構成を満たしているときには、高い電圧に耐え得る絶縁破壊特性を有しつつ、窒化ジルコニウムが、耐酸化性を有した高融点の結晶であるために、高温時においても優れた機械的強度を有する。
ここで、絶縁破壊特性については、JIS C 2141−1992(IEC 672-2(1980)
)に準拠した絶縁破壊の強さ(MV/m)で評価することができる。なお、本実施形態の窒化珪素質基板における絶縁破壊の強さは、20MV/m以上であることが好適である。
また、本実施形態の窒化珪素質基板は、窒化珪素の結晶間である粒界相に、マグネシウムおよびアルミニウムの酸窒化物(MgAlON)を含むことが好適である。このような構成を満たしているときには、粒界相における結晶が増えることとなるため、高温時においても優れた機械的強度を有する。また、マグネシウムおよびアルミニウムの酸窒化物の線膨張係数は、酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウムよりも窒化珪素の線膨張係数に近いものであるため、加熱と冷却とが繰り返された際に、粒界相からのクラックが生じにくくなる。さらに、マグネシウムおよびアルミニウムの酸窒化物は、耐食性に優れているため、ハロゲン系ガス等の腐食性の強いガスの環境下に配置される部材に好適に用いることができる。
ここで、マグネシウムおよびアルミニウムの酸窒化物は、XRDを用いて同定すればよい。マグネシウムおよびアルミニウムの酸窒化物の組成式は、例えば、Mg0.2Al1.45
2.150.15として表される。また、他の方法としては、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて粒界相を確認し、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いて粒界相において確認される結晶にX線を照射し、Mg、Al、OおよびNが確認されることによっても、マグネシウムおよびアルミニウムの酸窒化物の存在を確認することができる。
また、本実施形態の窒化珪素質基板は、希土類金属およびマグネシウムを粒界相に含み、それぞれを酸化物に換算した含有量の合計が3質量%以上6質量%以下であることが好適である。希土類金属は、酸素との親和性が高いことから、焼結時に窒化珪素の原料粉末間の酸素を多く取り込み、窒化珪素の粒成長を促進する。また、マグネシウムは、その酸化物が有する焼結促進作用によって緻密化を促進する。
それゆえ、窒化珪素質基板を構成する全成分のうち、希土類金属およびマグネシウムをそれぞれ酸化物に換算した含有量の合計が3質量%以上6質量%以下であるときには、粒界相の占有面積増加に伴う放熱特性の低下を抑えつつ、窒化珪素質基板の機械的強度を高めることができる。なお、マグネシウムの酸化物換算での含有量は1質量%以上2質量%以下であることが好適であり、希土類金属の酸化物換算での含有量は2質量%以上4質量%以下であることが好適である。
また、希土類金属(RE)およびマグネシウム(Mg)が粒界相に含まれるか否かについては、EDSを用いて粒界相にX線を照射して確認すればよく、含有量については、XRFまたはICPによって、RE、Mgの含有量を求め、これら各含有量をRE、MgOに換算することで求めることができる。
また、本実施形態の窒化珪素質基板の電気的特性は、常温における体積抵抗率が1014Ω・cm以上であり、300℃における体積抵抗率が1012Ω・cm以上であることが好適
である。この体積抵抗率は、JIS C 2141−1992に準拠して測定すればよい。ただし、窒化珪素質基板の大きさが小さく、窒化珪素質基板からJIS C 2141−1992で規定する大きさの試験片を得ることができない場合には、2端子法を用いて評価するものとし、その結果が上記数値を満足することが好適である。
次に、本実施形態の回路基板について図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態の回路基板の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A’線での断面図である。
図1に示す本実施形態の回路基板10は、本実施形態の窒化珪素質基板1の表面に回路部材2が直接接合されてなる例である。なお、以下の説明では、まず回路部材2を説明したのち、窒化珪素質基板1について説明する。
まず、回路部材2は金属成分を主成分とするものであり、回路部材2における主成分とは、回路部材2を構成する全成分100質量%のうち、50質量%以上占める成分のことであ
る。
より具体的には、銅を用いるのが好ましく、銅の含有量が90質量%以上であり、銅の含有量が多い、無酸素銅、タフピッチ銅およびりん脱酸銅のいずれかからなることが好適である。特に、無酸素銅のうち、銅の含有量が99.995質量%以上の線形結晶無酸素銅、単結晶状高純度無酸素銅および真空溶解銅のいずれかからなることが好適である。このように、回路部材2における銅の含有量が多いときには、高い熱伝導率により放熱特性が向上し、電気抵抗が低いことにより回路特性(電子部品の発熱を抑制し電力損失を少なくする特性)が向上する。また、銅の含有量が多いときには、降伏応力が低くなり、加熱すると塑
性変形しやすくなるため、回路部材2の接合強度が上がり、より信頼性が高くなる。なお、回路部材2の厚みは0.5mm以上5mm以下がよい。
次に、図2は、本実施形態の回路基板の他の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のB−B’線での断面図である。
図2に示す例の回路基板20は、図1に示す回路基板10とは、窒化珪素質基板1と回路部材2とが接合層3を介して接合されている点で異なっている。回路部材2を接合層3となるろう材を介して接合することにより、窒化珪素質基板1に厚みの厚い回路部材2を容易に接合することができる。
なお、接合層3となるろう材としては、主成分が銀および銅の少なくともいずれか1種であって、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびニオブから選ばれる1種以上を含有することが好適であり、その厚みは、例えば、5μm以上20μm以下がよい。
次に、図3は、本実施形態の回路基板のさらに他の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のC−C’線での断面図である。
図3に示す例の回路基板30は、本実施形態の窒化珪素質基板1の表面に、窒化珪素質基板1側から接合層3および銅材4を順次介して回路部材2が接合されている例を示している。
図2に示す回路基板20において、窒化珪素質基板1に回路部材2を接合するときの温度が800〜900℃であるのに対し、図3に示す回路基板30のように、銅材4を介することにより、回路部材2と銅材4との間の接合を、銅の拡散によって300〜500℃程度の比較的低い温度で接合することができるため、窒化珪素質基板1に生じる反りを抑制することができる。その結果、窒化珪素質基板1に生じる応力が小さいことから、熱を繰り返し加えても亀裂が生じにくいものとなる。また、回路部材2を厚くすることができるため、回路基板30の放熱特性を高くすることができる。
なお、銅材4としては、銅の含有量が多い、無酸素銅、タフピッチ銅およびりん脱酸銅のいずれかからなることが好適である。特に、無酸素銅のうち、銅の含有量が99.995質量%以上の線形結晶無酸素銅、単結晶状高純度無酸素銅および真空溶解銅のいずれかからなることが好適であり、その厚みは、例えば、0.1mm以上0.6mm以下がよい。
以上のように図1〜3の回路基板10〜30は、本実施形態の窒化珪素質基板1の表面に回路部材2が接合されてなることから、長期間に使用に耐え得る優れた耐久性を有しているため高い信頼性を有する。
図4は、本実施形態の電子装置の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は(a)のD−D’線での断面図である。図4に示す例の電子装置Sは、本実施形態の回路基板10の回路部材2上に半導体素子等の電子部品5が搭載されたものである。
図4に示す例の電子装置Sによれば、窒化珪素質基板1が優れた機械的強度を有しつつ、回路部材2と窒化珪素質基板1とが強固に接合されていることから、長期間に使用に耐え得る優れた耐久性を有しているため高い信頼性を有している。また、機械的強度が高く、高い絶縁破壊の強さを有する回路基板10上に電子部品5が載置されていることから、信頼性の高い電子装置Sとすることができる。
次に、本実施形態の窒化珪素質基板の製造方法について説明する。
まず、β化率が20%以下であって、純度が98%以上である窒化珪素の粉末と、第1の添加成分(以下、純度が98%以上である窒化珪素の粉末と、第1の添加成分とを合わせて、1次原料という。)として酸化マグネシウム(MgO)および希土類金属の酸化物(例えば、Sc、Y、La、Ce、Pr11、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuの少なくともいずれか1種)の各粉末とを、バレルミル、回転ミル、振動ミル、ビーズミル、サンドミル、アジテーターミル等の混合装置を用いて、水とともに湿式混合し、粉砕してスラリーを作製する。
ここで、酸化マグネシウムおよび希土類金属の酸化物の各粉末の添加量は、例えば、それぞれ1質量%以上2質量%以下、2質量%以上4質量%以下であり、残部が窒化珪素の粉末である。
なお、窒化珪素および第1の添加成分の粉末の粉砕で用いるボールは、不純物が混入しにくい材質あるいは同じ材料組成の窒化珪素質焼結体からなるボールが好適である。なお、1次原料の粉砕は、粒度分布曲線の累積体積の総和を100%とした場合の累積体積が90
%となる粒径(D90)が3μm以下となるまで粉砕することが、焼結性の向上という点から好適である。また、粉砕によって得られる粒度分布は、ボールの外径、ボールの量、スラリーの粘度、粉砕時間等で調整することができる。
次に、得られたスラリーをASTM E 11−61に記載されている粒度番号が200のメ
ッシュまたはこのメッシュより細かいメッシュの篩いに通した後に乾燥させて、窒化珪素を主成分とする顆粒(以下、窒化珪素質顆粒という。)を得る。乾燥は、噴霧乾燥機で乾燥させてもよく、他の方法であっても何ら問題ない。そして、粉末圧延法を用いて窒化珪素質顆粒をシート状に成形してセラミックグリーンシートとし、このセラミックグリーンシートを所定の長さに切断して窒化珪素を主成分とする成形体(以下、窒化珪素質成形体という。)を得る。あるいは、粉末圧延法に代えて、加圧成形法または冷間静水圧法を用い、窒化珪素質顆粒を成形型に充填してから加圧することによって窒化珪素質成形体を得ても構わない。
そして、得られた窒化珪素質成形体の表面に、窒化珪素、第1の添加成分および菱面体晶の窒化硼素の各粉末を、バインダーとともにエタノール等の溶媒に添加したペーストをスクリーン印刷法で塗布し、温度を、例えば、60℃以上100℃以下として乾燥させると、
表面に菱面体晶の窒化硼素が存在する窒化珪素質成形体が得られる。なお、菱面体晶の窒化硼素の粉末の添加量は、上記各粉末の合計100質量%のうち、5質量%20質量%以下と
すればよい。
あるいは、上記方法に代えて、窒化珪素質成形体を反応容器内の所定位置に配置し、硼素源ガスとしてBCl、BF、BBr、B、B、B13およびB(Cのうちの少なくともいずれか1種と、窒素源ガスとしてHN、NH、N、NHCl、NHBr、NHF、NHHfおよびNHIのうちの少なくともいずれか1種と、希釈搬送ガス(キャリヤガス)としてAr、HeおよびHのうちの少なくともいずれか1種とを反応容器内に導入し、温度を600〜800℃、時間を1〜3時間で気相合成してもよい。この気相合成により、窒化珪素の粒子と、窒化硼素の粒子とが表面に混在する窒化珪素質成形体を得ることができる。
そして、表面に菱面体晶の窒化硼素が存在する窒化珪素質成形体を、相対密度が55%以上95%以下の窒化珪素質焼結体からなるこう鉢の内部に複数枚積み重ねた状態で、黒鉛抵抗発熱体が設置された焼成炉内に入れて焼成する。なお、このとき、窒化珪素質成形体の
含有成分の揮発を抑制するために、窒化珪素質成形体と組成の近似した共材を窒化珪素質成形体の周囲に配置する。この共材は窒化珪素質成形体100質量部に対して、2質量部以
上10質量部未満の量が好適である。
また、焼成条件については、室温から300〜1000℃までは真空雰囲気中にて昇温し、そ
の後、窒素ガスを導入して、窒素分圧を15〜900kPaに維持する。そして、さらに昇温
を進めることによって、1000〜1400℃付近では添加成分が固相反応を経て液相成分を形成し、1400℃以上の温度域でα型からβ型への窒化珪素の相転移が不可逆的に起こる。
そして、焼成炉内の温度を上げて、1640℃以上1700℃未満で4時間以上10時間以下保持した後、170℃/時間以上230℃/以下の降温速度で冷却することによって、金属との接合面となる表面を備え、この表面に菱面体晶の窒化硼素が存在し、表面における全成分100
質量%のうち、菱面体晶の窒化硼素の含有量が5質量%以上20質量%以下である本実施形態の窒化珪素質基板を得ることができる。なお、1700℃以上では、菱面体晶の窒化硼素は、六方晶の窒化硼素に変わりやすくなる。
次に、窒化珪素の結晶間である粒界相に、窒化ジルコニウムが存在し、焼結体を構成する全成分100質量%のうち、ジルコニウムを窒化物に換算した含有量が0.2質量%以上1.0
質量%以下である窒化珪素質基板を得るには、前述の1次原料に、第2の添加成分として酸化ジルコニウムまたは窒化ジルコニウムの粉末を加えればよい。このとき、第2の添加成分が酸化ジルコニウムの粉末の場合には、添加する原料の合計100質量%のうち、0.2質量%以上1.2質量%以下となるように加え、第2の添加成分が窒化ジルコニウムの粉末の
場合には、0.2質量%以上1.0質量%以下となるように加えればよい。なお、窒化珪素質成形体の表面に塗布するペーストに、酸化ジルコニウムの粉末または窒化ジルコニウムの粉末を添加してもよいことはいうまでもない。
また、マグネシウムおよびアルミニウムの酸窒化物(MgAlON)を粒界相に含む窒化珪素質基板を得るには、前述の1次原料に窒化アルミニウムの粉末を加え、酸化マグネシウムの粉末と窒化アルミニウムの粉末とのモル比が、例えば、1:0.8〜1:1.2になるようにすればよい。
さらに、希土類金属およびマグネシウムを粒界相に含み、それぞれを酸化物に換算した含有量の合計が3質量%以上6質量%以下である窒化珪素質基板を得るには、添加する原料の合計100質量%のうち、希土類金属およびマグネシウムの第1の添加成分の各粉末の
合計が3質量%以上6質量%以下、残部を窒化珪素となるように秤量すればよい。
上述した方法により得られた窒化珪素質基板は、相対密度が98%以上、特に、99.95%
以上であることが好適で、不可避不純物が含まれていても構わない。
次に、本実施形態の回路基板の製造方法について説明する。
図1に示す例の回路基板10を得るには、まず、窒化珪素質基板1を上述した製造方法により準備する。次いで、この窒化珪素質基板1の表面(図1(a)に示す面)に銅を主成分とする回路部材2を配置する。その後、窒素雰囲気中、1065℃以上1085℃以下で加熱し、同時に30MPa以上の圧力を加えることによって、窒化珪素質基板1の表面に、直接接合により回路部材2を接合してなる回路基板10を得ることができる。
図2に示す例の回路基板20を得るには、まず、上述した窒化珪素質基板1を準備した後、この窒化珪素質基板1の表面(図2(a)に示す面)に、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびニオブから選ばれる1種以上を含有する銀(Ag)−銅(Cu)系合金のペ
ースト状のろう材を、スクリーン印刷法、ロールコーター法および刷毛塗り法等のいずれかの方法により塗布し、この上に銅を主成分とする回路部材2を配置する。このペースト状のろう材には、モリブデン、タンタル、オスミウム、レニウムおよびタングステンから選ばれる1種以上を含有させてもよい。その後、真空雰囲気中、800℃以上900℃以下で加熱し、同時に30MPa以上の圧力を加えることによって、窒化珪素質基板1の表面に、接合層3を介して回路部材2を接合してなる回路基板20を得ることができる。
また、図3に示す例の回路基板30を得るには、まず、上述した窒化珪素質基板1を準備する。次いで、この窒化珪素質基板1の表面(図3(a)に示す面)に、チタン、ジルコニウム、ハフニウムおよびニオブから選ばれる1種以上を含有する銀(Ag)−銅(Cu)系合金のペースト状のろう材を、スクリーン印刷法、ロールコーター法および刷毛塗り法等のいずれかの方法により塗布する。このペースト状のろう材にも、モリブデン、タンタル、オスミウム、レニウムおよびタングステンから選ばれる1種以上を含有させてもよい。そして、ろう材上に薄状の銅材4を配置する。その後、800℃以上900℃以下で加熱して、窒化珪素質基板1の表面に接合層3を介して銅材4を接合する。
そして、銅材4における回路部材2と対向する面を研磨した後、銅材4上に回路部材2を配置する。続いて、水素、窒素、ネオンまたはアルゴンのいずれかから選ばれる雰囲気中、300℃以上500℃以下で加熱し、同時に30MPa以上の圧力を加えることによって、窒化珪素質基板1の表面に、接合層3、銅材4を順次介して回路部材2を接合してなる回路基板30を得ることができる。
また、本実施形態の電子装置Sについては、上述した製造方法によって得られた回路基板10〜30における回路部材2上に電子部品を実装することにより、得ることができる。なお、窒化珪素質基板1の回路部材2を設けた面の反対面に放熱部材を設けてもよいことはいうまでもない。
以下、本実施形態の実施例を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、β化率が10%(即ち、α化率が90%)であって、純度が98%である窒化珪素の粉末と、第1の添加成分として酸化マグネシウム(MgO)および酸化イットリウム(Y)の各粉末を、回転ミルを用いて湿式混合し、粒径(D90)が1μm以下となるまで粉砕してスラリーとした。
ここで、上記各粉末は、窒化珪素質基板におけるマグネシウムおよびイットリウムの各含有量が酸化物換算でそれぞれ1.5質量%、2.5質量%となるようにそれぞれ秤量した。
次に、得られたスラリーに有機バインダを加えた後、ASTM E 11−61に記載されている粒度番号が250のメッシュの篩いに通した後に噴霧乾燥機を用いて乾燥させること
によって、窒化珪素質顆粒を得た。そして、粉末圧延法を用いて、窒化珪素質顆粒をシート状に成形してセラミックグリーンシートとし、このセラミックグリーンシートを所定の長さに切断し、平板状の窒化珪素質成形体を得た。また、冷間静水圧法を用いて、圧力を150MPaとして、窒化珪素質基板の外寸が60mm×60mm×20mmとなるような厚肉の
窒化珪素質成形体を得た。
ここで得られた平板状の窒化珪素質成形体は、回路部材と窒化珪素質基板との接合強度を評価するためのものであり、厚肉の窒化珪素質成形体は、窒化珪素質基板の機械的強度を評価するためのものである。
次に、1次原料および結晶構造が菱面体晶または六方晶である窒化硼素の各粉末を準備し、窒化硼素の粉末の添加量を表1に示す通りとし、残部を1次原料となるように秤量し、バインダーとともにエタノール等の溶媒に添加したペーストをスクリーン印刷法で塗布し、温度を80℃として乾燥させた。
そして、ペーストを塗布し、乾燥させた窒化珪素質成形体を相対密度が75%である窒化珪素質焼結体からなるこう鉢の内部に複数枚積み重ねた状態で、黒鉛抵抗発熱体が設置された焼成炉内に入れて焼成した。なお、このとき、窒化珪素質成形体100質量部に対して
、6質量部である窒化珪素質成形体と同組成の共材を窒化珪素質成形体の周囲に配置した。
焼成条件については、室温から500℃までは真空雰囲気中にて昇温し、その後、窒素ガ
スを導入して、窒素分圧を100kPaに維持した。そして、焼成炉内の温度を上げて表1
に示す焼成温度で5時間保持した。そして、降温速度を200℃/時間として冷却すること
によって、窒化珪素質基板である試料No.1〜9を得た。
そして、金属との接合面となる表面における各成分の含有量は、XRDを用いて、表面における成分を同定した後、XRFを用いて、元素の含有量を求め、同定された成分の含有量に換算し、窒化硼素の含有量のみ表1に示した。
ここで、XRDを用いて、菱面体晶のみ若しくは六方晶のみの窒化硼素が同定された試料No.8以外については、上述した方法で求めた窒化硼素の含有量を菱面体晶若しくは六方晶の窒化硼素の含有量とした。一方、試料No.8の結晶については、菱面体晶および六方晶の窒化硼素が同定されたため、上記表面から深さ方向に50μm研磨し、この範囲における研磨粉を試料として、XRDを用いたリートベルト法で、菱面体晶および六方晶の質量百分率を求め、窒化硼素の含有量に、質量百分率を掛けて算出し、菱面体晶および六方晶それぞれの含有量を表1に示した。
次に、窒化珪素質基板を850℃で熱処理することによって、窒化珪素質基板の表面に付
着した有機物や残留炭素を除去した。そして、熱処理した窒化珪素質基板の表面における回路部材の配置に対応する部分に、ペースト状のろう材をスクリーン印刷で塗布した後、135℃で乾燥させた。
その後、乾燥したろう材の存在領域に無酸素銅からなる回路部材を配置して、真空雰囲気中において、840℃で加熱することにより、窒化珪素質基板の表面に接合層を介して回
路部材が接合された回路基板を得た。
そして、窒化珪素質基板と回路部材との引きはがし強さをJIS C 6481−1996に準拠して測定することにより、回路部材と窒化珪素質基板との接合強度を評価した。
また、外寸が60mm×60mm×20mmの窒化珪素質基板から、厚さ、幅および長さがそれぞれ3mm、4mm、50mmである試験片を切り出し、JIS 1601−2008(ISO 14704:2000(MOD))に準拠して、室温における4点曲げ強度を求めた。結果を表1
に示す。
Figure 0006240034
表1に示す通り、試料No.1は、引きはがし強さが29KN/mであり、試料No.7〜9は、4点曲げ強度の値が900MPa未満であった。これに対し、試料No.2〜6は
、4点曲げ強度および引きはがし強さにおいて大きな値が得られており、表面に菱面体晶の窒化硼素が存在し、表面における全成分100質量%のうち、菱面体晶の窒化硼素の含有
量が5質量%以上20質量%以下であることにより、優れた機械的強度を有しつつ、金属との接合強度を向上できることがわかった。
実施例1の試料No.4で用いた粉末に、第2の添加成分として酸化ジルコニウムの粉末を、これら粉末の合計100質量%のうち、表2に示す添加量で加え、実施例1に示した
方法と同じ方法で、窒化珪素質顆粒を得た。
そして、粉末圧延法を用いて、窒化珪素質顆粒をシート状に成形してセラミックグリーンシートとし、このセラミックグリーンシートを所定の長さに切断し、平板状の窒化珪素質成形体を得た。
また、窒化珪素質基板の機械的強度を評価するために、冷間静水圧法を用いて、圧力を150MPaとして、窒化珪素質基板の外寸が60mm×60mm×20mmとなるような厚肉の
窒化珪素質成形体を得た。
これ以降は、実施例1に示した方法と同じ方法で、試料No.10〜16の窒化珪素質基板を得た。なお、焼成温度は、いずれの試料も1670℃とした。
そして、XRDを用いて、成分を同定した結果、いずれの試料も表面には、窒化珪素、菱面体晶の窒化硼素が存在し、断面におけるXRDの確認において、窒化ジルコニウムが存在することを確認した。
また、XRFを用いて、各試料の断面におけるジルコニウムの含有量を求め、窒化ジル
コニウムの含有量に換算した。
また、外寸が60mm×60mm×20mmの窒化珪素質基板から、厚さ、幅および長さがそれぞれ3mm、4mm、50mmである試験片を切り出し、JIS R 1601−2008(ISO 14704:2000(MOD))に準拠して、室温における4点曲げ強度SおよびJIS
R 1604−2008(ISO 17565:2003(MOD))に準拠して、800℃における4点曲げ強度Sをそれぞれ測定した。そして、次の式により、4点曲げ強度の低下率ΔSを求めた。ΔS=(S−S)/S × 100 ・・・(1)
また、各試料の絶縁破壊の強さを評価するために、JIS C 2110−1−2010(IEC 60243−1(1998))に準拠して各試料の絶縁破壊の強さ(MV/m)を測定した。
なお、各試料の外寸、各試料に印加する電圧、昇圧速度および周波数は、それぞれ25mm×25mm×0.32mm、3.5kV、0.5kV/秒、60Hzとした。、また、各試料の厚み方向に配置される電極の材質は黄銅とし、各試料の周囲媒質としてシリコーン油を用いた。結果を表2に示す。
Figure 0006240034
表2に示す通り、試料No.11〜15は、800℃における4点曲げ強度が820MPa以上であり、4点曲げ強度の下げ幅が小さく、絶縁破壊の強さが24MV/m以上であった。この結果より、粒界相に、窒化ジルコニウムが存在し、焼結体を構成する全成分100質量%の
うち、ジルコニウムを窒化物に換算した含有量が0.2質量%以上1.0質量%以下であることにより、高い電圧に耐え得る絶縁破壊特性を有しつつ、高温時においても優れた機械的強度を有するものであることがわかった。
酸化マグネシウムの粉末と窒化アルミニウムの粉末とのモル比を1:1となるように、実施例1の試料No.4で用いた粉末に、窒化アルミニウムの粉末を加え、実施例1に示した方法と同じ方法で、窒化珪素質顆粒を得た。
そして、冷間静水圧法を用いて、圧力を150MPaとして、窒化珪素質基板の外寸が60
mm×60mm×20mmとなるような窒化珪素質成形体を得た。
これ以降は、実施例1に示した方法と同じ方法で窒化珪素質基板である試料No.17を
得た。なお、焼成温度は、1670℃とした。また、比較例として、実施例1の試料No.4を試料No.18として準備した。
そして、各試料の断面についてXRDを用いて、マグネシウムおよびアルミニウムの酸窒化物の有無を確認したところ、試料No.18では確認されず、確認された試料No.17についてはその組成式を表3に示した。
そして、窒化珪素質基板から、厚さ、幅および長さがそれぞれ3mm、4mm、50mmである試験片を切り出し、JIS R 1604−2008(ISO 17565:2003(MOD))
に準拠して、1200℃における4点曲げ強度Sを測定し、その値を表3に示した。
Figure 0006240034
表3に示す通り、試料No.17は、試料No.18よりも1200℃における4点曲げ強度において大きな値が得られており、粒界相に、マグネシウムおよびアルミニウムの酸窒化物が存在することにより、高温時においても機械的強度に優れていることがわかった。
1:窒化珪素質基板
2:回路部材
3:接合層
4:銅材
5:電子部品
10、20、30:回路基

Claims (5)

  1. 窒化珪素を主成分とし、金属との接合面となる表面を備える焼結体からなり、該表面に菱面体晶の窒化硼素が存在し、前記表面における全成分100質量%のうち、前記菱面体晶の窒化硼素の含有量が5質量%以上20質量%以下であることを特徴とする窒化珪素質基板。
  2. 前記窒化珪素の結晶間である粒界相に、窒化ジルコニウムが存在し、前記焼結体を構成する全成分100質量%のうち、ジルコニウムを窒化物に換算した含有量が0.2質量%以上1.0質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の窒化珪素質基板。
  3. 前記粒界相に、マグネシウムおよびアルミニウムの酸窒化物が存在することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の窒化珪素質基板。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の窒化珪素質基板の前記表面に回路部材が接合されてなることを特徴とする回路基板。
  5. 請求項4に記載の回路基板における前記回路部材上に電子部品を搭載してなることを特徴とする電子装置。
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