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JP6128029B2 - 繊維強化複合材、繊維強化複合材の製造方法および繊維強化複合材の固定方法 - Google Patents

繊維強化複合材、繊維強化複合材の製造方法および繊維強化複合材の固定方法 Download PDF

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Description

本発明は、繊維強化複合材、繊維強化複合材の製造方法および繊維強化複合材の固定方法に関する。具体的には、本発明は、強化繊維と熱可塑性樹脂を含み、かつ低密度領域と高密度領域を有する繊維強化複合材であって、必要最低限の低密度領域を固定用金具等の固定部材の貫通に供することを特徴とする繊維強化複合材等に関する。
従来、スポーツ、レジャー用品、航空機用材料などの分野で用いられる構造材料には、アルミ材等の金属材料が一般的に用いられていた。アルミ材等の金属材料は等方性のある機械的物性値を有するため、他の部材に固定する際などに穴を設けても応力集中することがなく、ネジ止め等の簡便な方法で他の部材に固定することが可能である。しかし、金属材料はその比重が他の材料と比較して大きいため、構造材料の重量が大きくなるという問題があった。
そこで、近年は、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維と熱可塑性樹脂を含む不織布を加熱加圧処理し、成形した繊維強化複合材を構造材料として用いることが検討されている。このような繊維強化複合材は、金属材料と比較して比重が小さいため、構造材料を軽量化することが可能となる。さらに、繊維強化複合材は、高強度、高弾性、低熱膨張率、錆びないという特徴を有する非常に有用な材料である。
しかしながら、繊維強化複合材は、高強度、高弾性であるが故に、ネジや鋲等を貫通させると割れやすいという問題がある。近年は、繊維強化複合材を他の部材に固定する場合、効率化のために、下穴を開けずに直接タッピングビス、ドリルビス等で固定する方法が多用されており、このような場合、特に割れ等の欠陥が発生しやすく、問題となっていた。また、繊維強化複合材は、熱膨張率が他の材料、例えば金属などと大きく異なるため、他の材質の材料に固定すると、温度変化により固定部に局所的な応力が発生し、破損を生じることが多いという問題もある。
このような問題を解決するために、例えば特許文献1及び2では、繊維強化複合材の内部を低密度化し、かつ繊維強化複合材を金属製キャップで補強することによって割れの発生を抑制することが提案されている。特許文献1及び2に開示された構造体では、外層部に繊維強化複合材(繊維強化プラスチック)が用いられており、内層部に強度の低い樹脂又は軽量コア材料が用いられている。さらに、繊維強化複合材には金属製キャップが被せられている。
特開平5−77322号公報 特開平5−69487号公報
しかしながら、特許文献1及び2に記載されたような構造体は、内部に低密度領域を有するため、外部からの衝撃に弱く、その強度が十分ではないという問題がある。また、構造体を形成するために、高密度の外層と低密度の内層を別途準備して貼りあわせねばならず、生産性が上がらないというデメリットがある。
さらに、特許文献1及び2に記載されたような構造体においては、金属製キャップを用いた場合であっても繊維強化複合材に固定部材を貫通させる際に、繊維強化複合材に割れが発生する場合があることが本発明者らの検討により明らかとなった。また、補強材として金属製キャップを用いているため、固定時のハンドリング性が悪化するだけでなく、繊維強化複合体の軽量化と相反するという問題もある。
なお、繊維強化複合材と他の部材を固定する際に、繊維強化複合材の割れを防ぐためには、接着剤を用いて貼合するという方法も考えられる。しかし、貼合には、硬化までの時間がかかり、生産性が低いという欠点がある。また修理や点検等で取り外す必要のある箇所には適用できないという不具合もある。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、ネジ止め等の簡便な方法で他の部材に固定することができる繊維強化複合材であって、固定時に破損や欠陥が生じない繊維強化複合材を提供することを目的として検討を進めた。さらに、本発明者らは、上述したような固定時の適性を有することに加えて、優れた強度を有する繊維強化複合材を提供することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、強化繊維と熱可塑性樹脂を含み、かつ低密度領域と高密度領域を有する繊維強化複合材において、各々の領域の密度を特定条件とし、固定部材が貫通する箇所を低密度領域とし、該低密度領域が占める割合を所定の範囲内とすることにより、簡便な方法で他の部材に固定することができる繊維強化複合材であって、固定時に破損や欠陥が生じない繊維強化複合材を得ることができることを見出した。さらに本発明者らは、上記のような繊維強化複合材は、優れた強度を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1]強化繊維と熱可塑性樹脂を含む繊維強化複合材であって、前記繊維強化複合材は、低密度領域と高密度領域を有し、前記低密度領域の密度をPとし、前記高密度領域の密度をQとすると、1.5P<Qであり、前記繊維強化複合材の全面積に対して、前記低密度領域が占める割合は0.001〜15%であることを特徴とする繊維強化複合材。
[2]前記低密度領域は、固定部材を貫通させるための領域であることを特徴とする[1]に記載の繊維強化複合材。
[3]前記強化繊維は、繊維径が20μm以下であり、ガラス転移温度が210℃以上であり、弾性率が50GPa以上である繊維から構成されることを特徴とする[1]または[2]に記載の繊維強化複合材。
[4]前記強化繊維と前記熱可塑性樹脂の含有質量比率は、前記成形加工シートの全領域において略一定であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
[5]前記強化繊維と前記熱可塑性樹脂の含有質量比率は、0.2:1〜10:1であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
[6]前記繊維強化複合材は凹凸構造を有し、凸部の最高点が低密度領域に属することを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
[7]前記低密度領域が、前記繊維強化複合材中で非連続領域として形成されることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
[8]前記強化繊維は、ガラス繊維または炭素繊維であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
[9]前記熱可塑性樹脂は、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ナイロン、ポリプロピレン、またはポリフェニレンスルフィドであることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
[10]前記低密度領域には、さらに貫通孔が設けられていることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
[11]前記低密度領域と前記貫通孔の合計面積は、前記貫通孔の面積に対して1倍より大きく4倍以下であることを特徴とする[10]に記載の繊維強化複合材。
[12]強化繊維と、熱可塑性樹脂繊維を混合し、乾式不織布法または湿式不織布法によって不織布シートを製造する工程と、前記不織布シートを、前記熱可塑性樹脂繊維のガラス転移温度以上の温度で加熱加圧成形する工程を含み、前記加熱加圧成形する工程は、前記不織布シートの固定部材を貫通させようとする領域を平均圧力よりも低圧で加圧する工程を含むことを特徴とする繊維強化複合材の製造方法。
[13]前記加熱加圧成形する工程は、凹部を有する金型を、前記不織布シートに押し当ててプレス加工をする工程を含むことを特徴とする[12]に記載の繊維強化複合材の製造方法。
[14]強化繊維と、熱可塑性樹脂繊維を混合し、乾式不織布法または湿式不織布法によって不織布シートを製造する工程と、前記不織布シートを複数枚積層して、前記熱可塑性樹脂繊維のガラス転移温度以上の温度で加熱加圧成形する工程を含み、前記加熱加圧成形する工程は、固定部材を貫通させようとする領域の前記不織布シートの積層枚数を減らすことにより、低密度領域とすることを特徴とする繊維強化複合材の製造方法。
[15]前記固定部材を貫通させようとする領域の面積が前記不織布シートの全面積の0.001〜15%であることを特徴とする[12]〜[14]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材の製造方法。
[16]前記加熱加圧成形する工程は、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTgとした場合に、Tg〜Tg+100℃に加熱する工程を含むことを特徴とする[12]〜[15]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材の製造方法。
[17][12]〜[16]のいずれか1項に記載の製造方法により製造された繊維強化複合材。
[18][1]〜[11]および[17]のいずれか1項に記載の繊維強化複合材を、固定部材を用いて固定対象部材に固定する固定方法であって、前記固定部材を前記繊維強化複合材の低密度領域に貫通させて、前記固定対象部材と前記繊維強化複合材を固定することを特徴とする固定方法。
[19]前記固定部材を貫通させる低密度領域の面積は、前記固定部材を前記繊維強化複合材の低密度領域に貫通させた際に形成される貫通孔の面積に対して、1倍より大きく4倍以下であることを特徴とする[18]に記載の固定方法。
[20]前記固定部材を貫通させる低密度領域の面積は、前記固定部材を前記繊維強化複合材の低密度領域に貫通させた際に形成される貫通孔の面積に対して0.5〜1倍であることを特徴とする[18]に記載の固定方法。
[21]前記固定部材を貫通させた後に、前記繊維強化複合材に低密度領域が残存しないことを特徴とする[18]に記載の固定方法。
[22][19]に記載の固定方法により得られる、前記固定対象部材に固定化された繊維強化複合材。
[23][20]に記載の固定方法により得られる、前記固定対象部材に固定化された繊維強化複合材。
本発明によれば、ネジや鋲等の固定部材を用いて、簡便な方法で繊維強化複合材を他の部材に固定することができる。また、繊維強化複合材を他の部材に固定する際に、破損や欠陥が生じることを抑制することができる。さらに、本発明によれば、繊維強化複合材は、上述したような固定時の適性を有することに加えて、優れた強度を有する。このため、本発明の繊維強化複合材は、あらゆる工業製品の構成部品として好適に用いられる。
図1は、本発明の繊維強化複合材の一態様を示す平面図と断面図である。 図2は、本発明の繊維強化複合材の他の態様を示す平面図である。 図3は、本発明の繊維強化複合材に含まれる低密度領域の一態様を示す拡大断面図である。 図4は、本発明の繊維強化複合材と固定対象部材を固定する様子を示す斜視図である。 図5は、実施例で用いたアルミ板の穴の配置を示す平面図である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
(繊維強化複合材)
本発明は、強化繊維と熱可塑性樹脂を含む繊維強化複合材であって、低密度領域と高密度領域を有する繊維強化複合材に関する。ここで、低密度領域の密度をPとし、高密度領域の密度をQとすると、1.5P<Qである。また、繊維強化複合材の全面積に対して、低密度領域が占める割合は0.001〜15%である。
なお、密度とは、一定領域の質量を該領域の体積で割った値を示し、低密度領域とはその密度が平均密度よりも10%以上低い領域をいう。一方、高密度領域とは低密度領域以外の領域をいう。本発明では、低密度領域の密度(P)と、高密度領域の密度(Q)は、1.5P<Qの関係となる。
本発明の繊維強化複合材の低密度領域は、固定部材を貫通させるための領域となり得る。このように、低密度領域を固定領域とすることによって、ネジ止め等の簡便な方法によって、繊維強化複合材を他の部材(固定対象部材)に固定することが可能となる。
また、低密度領域の面積は、繊維強化複合材の全面積に対して0.001〜15%であり、低密度領域は局所的かつ限定的に設けられている。このため、本発明の繊維強化複合材は、十分な強度を発揮することができる。加えて、本発明の繊維強化複合材は、固定部材を用いて繊維強化複合材を固定対象部材に固定する際であっても、破損等が生じることがない。これは、低密度領域に含まれる空隙が固定部材の貫入体積を吸収することと、貫入による破壊、亀裂の進行を妨げるためであると考えられる。また、低密度領域は適度に変形することにより、有効接触面積を拡大し、固定具からの応力を分散することもできる。
通常、十分な強度を有する繊維強化複合材は、固定部材を貫通させる際に、応力が高密度領域の局所に集中し、振動等で亀裂が生じることが多い。しかし、本発明では、低密度領域を局所的かつ限定的に設けているため、固定部材を貫通させる際の破損の発生を抑制することができる。また、本発明では、固定部材を用いて固定する際のハンドリング性が良好であり、本発明の繊維強化複合材と固定対象部材を容易に固定することができる。
本発明の繊維強化複合材に含まれる高密度領域には、熱可塑性樹脂の少なくとも一部が溶解し固化した状態で存在する。高密度領域では、繊維間に含まれる空気量すなわち空隙が少なくなり、各繊維は強固に結合している。このように、強固に結合した繊維を有する箇所では、繊維強化複合材の強度が高められることとなる。
高密度領域の密度は高い方が繊維強化複合材の強度を高めることができるため好ましい。高密度領域の密度は、1.0〜1.8g/cm3であることが好ましく、1.2〜1.8g/cm3であることがより好ましく、1.3〜1.8g/cm3であることがさらに好ましい。なお、高密度領域の密度は、炭素繊維を主たる強化繊維とする場合、1.0〜1.5g/cm3であることが好ましく、1.2〜1.5g/cm3であることがより好ましく、1.3〜1.5g/cm3であることがさらに好ましい。高密度領域の密度を上記範囲内とすることにより、繊維強化複合材の強度を高めることができ、耐久性を高めることができる。
一方、低密度領域では、高密度領域と比較して繊維間に含まれる空気量すなわち空隙が多くなっている。低密度領域の密度は、0.1〜1.3g/cm3であることが好ましく、0.2〜1.0g/cm3であることがより好ましく、0.2〜0.8g/cm3であることがさらに好ましい。低密度領域の密度を上記上限値以下とすることにより、固定部材の貫入による割れの発生を効果的に抑制することができる。また、低密度領域の密度を上記下限値以上とすることにより、低密度領域に含まれる強化繊維や繊維状の熱可塑性樹脂が繊維強化複合材から飛散したり、脱落したりすることを抑制することができる。さらに低密度領域の密度を上記下限値以上とすることにより、固定部材を貫入した際に、固定部材の周りの強度を一定程度以上に保つことが可能となり、固定部材を安定した状態で保持することが可能となる。
低密度領域の面積は、繊維強化複合材の全面積に対して0.001〜15%であればよく、0.001〜10%であることが好ましく、0.001〜8%であることがより好ましく、0.001〜5%であることがさらに好ましい。下限値は、例えば繊維強化複合材の全面積に対して0.1%以上にしたり、1%以上にしたりすることができる。下限値は、繊維強化複合材に貫通させる固定部材の貫通断面積の合計値を繊維強化複合材の全面積で割って100を乗じた値(これを固定部材貫通面積率という)以上とすることができる。また、下限値と上限値の好ましい範囲は、固定部材貫通面積率に対する倍率により規定することも可能であり、例えば固定部材貫通面積率の1〜4倍、好ましくは1〜3倍、より好ましくは1.05〜2倍、さらに好ましくは1.05〜1.5倍と規定することができる。本発明の繊維強化複合材の低密度領域の面積や面積比率は、繊維強化複合材の全面積、貫通させる固定部材が繊維強化複合材を貫通する断面積、貫通させる固体用の個数を考慮して決定することが好ましい。
本発明の繊維強化複合材においては、低密度領域以外の領域は、高密度領域である。すなわち、高密度領域の面積は、繊維強化複合材の全面積に対して85〜99.99%であればよく、90〜99.99%であることが好ましく、92〜99.99%であることがより好ましく、95〜99.99%であることがさらに好ましい。下限値は、例えば繊維強化複合材の全面積に対して99.9%以下にしたり、99%以下にしたりすることができる。
高密度領域および低密度領域が占める割合を上記範囲内とすることにより、繊維強化複合材は、十分な強度を発揮し得ることに加えて、固定部材を用いて繊維強化複合材を固定対象部材に固定する際の破損等が抑制される。
図1は、本発明の繊維強化複合材10の一態様を示す図である。図1(a)は、本発明の繊維強化複合材10の平面図を示しており、図1(b)及び(c)は、本発明の繊維強化複合材10の断面図を示している。図1(a)に示されているように、繊維強化複合材10は、低密度領域12と高密度領域14を有する。図1(a)のように低密度領域12を繊維強化複合材10の全面積に対して0.001〜15%とし、可能な限り高密度領域14を広く設けることにより、より高強度の繊維強化複合材とすることができる。
本発明では、図1(b)のように低密度領域12の厚みが、高密度領域14の厚みよりも厚くなるように成形してもよい。また、図1(c)のように低密度領域12と高密度領域14の厚みは略同一となるように成形してもよく、低密度領域の厚みが、高密度領域の厚みよりも薄くなるように成形してもよい。中でも、成形容易性の観点からは、図1(b)のように低密度領域12の厚みが、高密度領域14の厚みよりも厚くなるように成形することが好ましい。
図1(b)のように低密度領域12の厚みが、高密度領域14の厚みよりも厚い場合、高密度領域14の平均膜厚は、0.5〜50mmであることが好ましく、1.0〜30mmであることがより好ましく、1.0〜10mmであることがさらに好ましい。また、低密度領域12の平均膜厚は、1.5〜150mmであることが好ましく、2.0〜90mmであることがより好ましく、2.0〜30mmであることがさらに好ましい。
図1(b)のように低密度領域12の平均膜厚の方が高密度領域14の平均膜厚よりも厚い場合は、繊維強化複合材の表面には凹凸構造が形成されることとなる。本発明では、このような凹凸構造の凸部の最高点が低密度領域に属することとなり、凹部の最深点が高密度領域に属することとなる。図1(b)に示されるように、低密度領域12は、中央の凸部を構成し、高密度領域14は、端部の凹部を構成する。
なお、凹凸構造の凸部には、切削加工を施してもよく、凸部分が平らになるように切り落とすことにより、低密度領域12と高密度領域14の平均膜厚が略同一の繊維強化複合材を得ることができる。また、凹凸構造の凸部に相当する箇所をさらに切削することで、低密度領域12の平均膜厚が高密度領域14の平均膜厚よりも薄い維強化複合材を形成してもよい。
図1に示されているように、低密度領域12は繊維強化複合材中で非連続領域として形成されることが好ましい。この場合、低密度領域12は、繊維強化複合材10の面上に間欠的に設けられることとなる。低密度領域12が繊維強化複合材中で非連続領域として設けられている場合、低密度領域12は繊維強化複合材中に複数個設けられていることが好ましい。低密度領域の個数は、繊維強化複合材の大きさや形状、固定する対象物の形状や材質、固定物の使用目的や使用環境などを考慮して適宜決定することが好ましい。通常は、単位面積あたりの個数が一定の範囲内になるようにするか、単位外周長あたりの個数が一定の範囲内になるようにすることが好ましい。例えば、低密度領域の個数は、繊維強化複合材1m2あたり2〜200個にすることが好ましく、4〜100個にすることがより好ましく、8〜60個にすることがさらに好ましい。また、別の観点から規定すると、低密度領域の個数は、繊維強化複合材の外周長1mあたり、0.5〜50個にすることが好ましく、1〜25個にすることがより好ましく、2〜15個にすることがさらに好ましい。
低密度領域を設ける位置は、固定部材を貫通させ、固定対象部材に固定する固定箇所として好適な位置であれば特に制限されることはない。例えば、低密度領域は、繊維強化複合材の四隅に設けてもよく、中央領域に設けてもよい。なお、繊維強化複合材の全面を固定対象部材に固定する場合、低密度領域は、繊維強化複合材の少なくとも四隅に設けることが好ましい。これにより、繊維強化複合材を固定対象部材に強固に固定することが可能となる。
低密度領域の形状は、特に制限されることはないが、図1(a)に示されるような円形であることが好ましい。また、図2(a)に示されるような略矩形であってもよく、この場合、角部に円弧の丸みを付けた矩形であることが好ましい。さらに、低密度領域の形状は、図2(b)に示されているように、四隅に対応するくの字形状であってもよい。この場合も低密度領域の角部は円弧の丸みを帯びた形状であることが好ましい。
低密度領域12は、図2(c)に示されているように、外周領域に設けられていてもよい。図2(c)のように低密度領域12は、外周領域に非連続で複数箇所設けられることが好ましい。なお、繊維強化複合材10の外周領域とは、繊維強化複合材10の外周縁を含む領域であって、外周縁に添って略一定幅を有するように形成される領域のことをいう。ここで、一定幅とは、成形加工シート10が矩形である場合は、その幅が含まれる四角形の一辺の全長の1〜20%の長さのことをいう。外周領域における低密度領域の形状は図2の態様に限定されず、例えば、中心から外周方向へ向かう複数の低密度領域が放射線状に形成されていてもよいし、外周領域に複数の低密度領域がジグザグに形成されていてもよいし、ランダムに形成されていてもよい。
図3に示されているように低密度領域12には、切り欠け部13が形成されていてもよい。切り欠け部とは、低密度領域12を構成する凸部に形成された凹部のことをいう。切り欠け部13は、低密度領域12の中心部を含む領域に形成されることが好ましい。また、切り欠け部13の形状は、円形状であってもよく、矩形や線状等の様々な形状とすることができる。切り欠け部13の面積は、低密度領域12の表面積の1〜10%であることが好ましく、1〜5%であることがより好ましい。このような切り欠け部13は、ネジや鋲等の固定部材の位置決めを容易にする働きをする。すなわち、ネジや鋲等の固定部材の先端を切り欠け部13に嵌め込むことにより、固定時に固定部材の先端が意図しない横滑りを起こしたり、固定部材が意図しない方向に貫入することを防ぐことができる。
本発明の繊維強化複合材の低密度領域には、貫通孔が設けられていてもよい。ここで、貫通孔とは、繊維強化複合材を固定対象部材に固定するための固定部材が、低密度領域を貫通することにより形成された孔である。すなわち、本発明は、固定部材を低密度領域に貫通させた繊維強化複合材に関するものであってもよい。
この場合、繊維強化複合材の低密度領域と貫通孔の合計面積は、貫通孔の面積に対して1倍より大きく4倍以下であることが好ましく、1.05〜4倍であることがより好ましく、1.2〜3.5倍であることがさらに好ましい。
(強化繊維)
本発明で用いる強化繊維は、繊維強化複合材の強度を高めるために機能する。強化繊維は、繊維径が20μm以下であり、ガラス転移温度が210℃以上であり、弾性率が50GPa以上である繊維から構成されることが好ましい。
強化繊維の繊維径は、0.1〜18μmであることが好ましく、2〜16μmであることがより好ましく、3〜12μmであることがさらに好ましい。強化繊維の繊維径を上記範囲内とすることにより、熱可塑性樹脂繊維との混合物の均一性を良化させることができ、繊維強化複合材の強度を高めることができる。また、強化繊維の繊維径を上記下限値以上とすることは、製造工程あるいは使用中に人体に取り込まれないようにする観点からも好ましい。
また、強化繊維の繊維長は、3〜30mmであることが好ましく、4〜28mmであることがより好ましく、5〜25mmであることがさらに好ましい。強化繊維の繊維長を上記範囲内とすることにより、繊維の分散性を均一にすることができる。なお、強化繊維の繊維径及び繊維長は単一であってもよく、異なる繊維径、繊維長のものをブレンドして使用してもよい。
強化繊維のガラス転移温度は210℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましく、230℃以上であることがさらに好ましい。なお、強化繊維のガラス転移温度の上限値は特に設ける必要はない。強化繊維のガラス転移温度を上記範囲とすることにより、後述する熱可塑性樹脂が溶融する温度で加熱された場合であっても、強化繊維が溶融することがなく、繊維強化複合材を強化する機能を十分に発揮することができる。
強化繊維の引っ張り弾性率は、50GPa以上であることが好ましく、70GPa以上であることがより好ましく、80GPa以上であることがさらに好ましい。このように、強化繊維の弾性率を高いものとすることにより、高弾性率の繊維強化複合材を得ることができる。一般に高弾性率の繊維強化複合材は、固定部材を貫入させた際に割れることが多いが、本発明では繊維強化複合材に低密度領域を設け、低密度領域に固定部材を貫入させることにより繊維強化複合材にひび割れ等の欠陥が生じることを回避することができる。
本発明で用いることができる強化繊維としては、例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミックス繊維、ロックウール繊維、バサルト繊維等を例示することができる。中でも、価格と強度、弾性率のバランスからガラス繊維または炭素繊維を用いることが好ましい。また、耐衝撃性(靭性)の点から、アラミド繊維が好ましい。
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、石油・石炭ピッチ系、レーヨン系、リグニン系等の炭素繊維を用いることができる。中でも、工業規模における生産性及び機械特性の観点から、ポリアクリロニトリル(PAN)系の炭素繊維を用いることが好ましい。
ガラス繊維にはEガラス、Sガラス等の種類があるが、その種類については特に限定されない。一般的に入手が容易なEガラスを用いるのが効率的である。
また、強化繊維は、上記の繊維を1種のみ用いてもよいが2種以上の繊維を併用してもよい。例えば、ガラス繊維と炭素繊維を混合して用いてもよく、ガラス繊維とセラミックス繊維を混合して用いてもよい。さらに、上述した繊維の他に、金属繊維等を混合して用いてもよい。
(熱可塑性樹脂)
本発明の繊維強化複合材に使用する熱可塑性樹脂は、加熱加圧処理時にマトリックス、あるいは、強化繊維の交点に結着点を形成する。熱可塑性樹脂は、加熱加圧成形前は、繊維状であり、加熱加圧処理を行うことにより、溶融しマトリックス状となる。このように繊維状の熱可塑性樹脂を用いることにより、加熱加圧成形時間を短縮することができ、効率よく繊維強化複合材を成形することができる。
熱可塑性樹脂は、いわゆるスーパーエンプラと呼ばれる繊維であってもよい。スーパーエンプラは、優れた耐熱性と難燃性を有する熱可塑性樹脂である。
熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)等を例示することができる。中でも、繊維分散性が良好であり、かつ高強度の繊維強化複合材プラスチック成形体を得るために、ポリカーボネートやポリエーテルイミド、ナイロンを用いることが好ましい。また、耐薬品性に優れた繊維強化複合材を得るためには、ポリプロピレンやポリフェニレンスルフィド(PPS)を用いることが好ましい。
難燃性の繊維強化複合材を得るためには、熱可塑性樹脂繊維は、繊維状態においてLOI値(限界酸素指数)が24以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましい。ここで「LOI値(限界酸素指数)」とは、燃焼を続けるのに必要な酸素濃度を表し、JIS K 7201に記載された方法で測定した数値をいう。すなわち、限界酸素指数が20以下である場合は、通常の空気中で燃焼することを示す。LOI値(限界酸素指数)は、24以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、35以上であることがさらに好ましく、40以上であることが特に好ましい。LOI値(限界酸素指数)を上記範囲内とすることにより、繊維強化複合材は非常に高い難燃性を示すことができる。
また、熱可塑性繊維のASTM E−662に記載の方法で測定した20分燃焼時の発煙量は30ds前後であることが好ましく、非常に発煙量が少ない繊維強化プラスチック成形体用シートを得ることができる。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度は繊維強化複合材の耐熱性から120℃以上であることが好ましい。熱可塑性繊維には、繊維強化複合材を成形する際の200℃から400℃というような温度条件下で十分に流動的であることが求められる。なお、熱可塑性樹脂のガラス転移温度が120℃未満であったとしても、耐熱性の要求されない用途への使用、あるいはガラス転移温度は低いが、樹脂の荷重たわみ温度が高い樹脂(例えばポリプロピレン、ナイロン、ポリフェニレンスルフィド樹脂等)を繊維化したものであれば使用可能である。
なお、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、上述した強化繊維のガラス転移温度よりも低いことが必要である。これにより、繊維強化複合材を加熱加圧処理した際に、主に高密度領域の熱可塑性樹脂のみを溶融することができ、繊維強化複合材の強度を高めることができる。
熱可塑性樹脂は、非晶質の熱可塑性樹脂を用いると耐衝撃性に優れ、成形条件(冷却速度)に左右されず品質が安定するため好ましい。非晶質の熱可塑性樹脂としてはポリカーボネート、ポリエーテルイミド等を好適に用いることができる。
繊維強化複合材を短時間で成形するためには、使用される熱可塑性樹脂繊維が高温下で速やかに溶融することが必要であり、そのためには、熱可塑性樹脂繊維の繊維径は細いことが好ましい。これは、繊維径が細い場合、繊維同士の接触点数が増加するため、繊維同士の接触面積が増加し、熱伝導が良好となるためである。また、繊維の熱容量が小さくなるため、溶融させるために必要な熱量が少なくなるためである。使用される熱可塑性樹脂繊維の繊維径は30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂繊維の繊維長は特に限定されないが、3〜30mmであることが好ましく、4〜28mmであることがより好ましく、5〜25mmであることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂繊維の繊維長を上記範囲内とすることにより、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維が均一に混合されるため、繊維強化複合材の強度を高めることができる。熱可塑性樹脂繊維の繊維径及び繊維長は単一であってもよく、また異なる繊維径、繊維長のものをブレンドして使用してもよい。
熱可塑性樹脂繊維の繊維径は強化繊維の繊維径の4倍以下であることが好ましく、3倍以下であることがより好ましく、熱可塑性樹脂繊維の繊維径と強化繊維の繊維径は同程度であることがさらに好ましい。これにより、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維は均一に混合されやすくなる。これにより、高い強度の繊維強化複合材を得ることができる。
繊維強化複合材に含まれる強化繊維と熱可塑性樹脂の含有質量比率は、繊維強化複合材の全領域において略一定であることが好ましい。すなわち、本発明では、強化繊維と熱可塑性樹脂の含有質量比率をシート内で変化させなくても、低密度領域を局所的に有する繊維強化複合材を得ることができる。このため、繊維強化複合材の製造工程を簡略化でき、生産コストを抑制することができる。なお、強化繊維と熱可塑性樹脂の含有質量比率が略一定であることは、含有質量比率に±5%の変動があってもよいことを示す。
繊維強化複合材に含まれる強化繊維と熱可塑性樹脂の含有質量比率は、0.2:1〜10:1であることが好ましく、0.5:1〜5:1であることがより好ましく、0.7:1〜3:1であることがさらに好ましい。強化繊維と熱可塑性樹脂の含有質量比率を上記範囲内とすることにより、繊維強化複合材の強度を高めることができ、低密度領域の密度を好ましい範囲とすることができる。
一般的に、熱可塑性樹脂としてスーパーエンプラ樹脂を用いた場合、スーパーエンプラ樹脂は溶融粘度が高いため、射出成形等の方法では強化繊維を多量に配合すると、強化繊維を均一に分散させることが難しく、強化繊維の配合比率には限界がある。しかし、本発明の繊維強化複合材では、必要とされる強度に応じて比較的自由に強化繊維とマトリックス樹脂繊維との比率を設定することができる。
(バインダー成分)
本発明の繊維強化複合材は、バインダー成分をさらに含むことが好ましい。バインダー成分は、繊維強化複合材の全質量に対して0.1〜10質量%となるように含有されることが好ましく、0.3〜10質量%であることがより好ましく、0.4〜9質量%であることがさらに好ましく、0.5〜8質量%であることが特に好ましい。バインダー成分の含有率を上記範囲内とすることにより、製造工程中の強度を高めることができ、ハンドリング性を向上させることができる。なお、バインダー成分の量は多くなると表面強度・層間強度共に強くなるが、逆に加熱成形時の臭気の問題が発生しやすくなる。しかし、上記の範囲においては臭気の問題はほとんど発生せず、また繰り返しの断裁工程を経ても層間剥離などを発生しない繊維強化複合材を得ることができる。
バインダー成分としては、一般的に不織布製造に使用される、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、PVA樹脂、各種澱粉、セルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドーアクリル酸エステルーメタクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリ酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が使用できる。
バインダー成分は、メチル(メタ)アクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位、エチル(メタ)アクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む共重合体を含有することが好ましい。中でも、バインダー成分は、メチルメタクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位及びエチルメタクリレート含有モノマー由来の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む共重合体を含有することが好ましい。また、これらのモノマーは他のモノマー、例えばスチレンや酢酸ビニル、アクリルアミド等と共重合させてもよい。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を含むことを意味し、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を含むことを意味する。
更に、本発明で好ましいバインダー成分として、ポリエステル樹脂及び変性ポリエステル樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。変性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂を変性することで融点を低下させたものであれば特に限定されないが、変性ポリエチレンテレフタレートが好ましい。変性ポリエチレンテレフタレートとしては、共重合ポリエチレンテレフタレート(coPET)が好ましく、例えば、ウレタン変性共重合ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。ポリエステル樹脂は本発明の熱可塑性繊維と加熱溶融時に相溶するため、冷却後も熱や樹脂の機能を損ないにくいため、好ましく用いられる。
共重合ポリエチレンテレフタレートは、融点が140℃以下のものが好ましく、120℃以下ものがより好ましい。また、特公平1−30926号公報に記載のような変性ポリエステル樹脂を使用してもよい。変性ポリエステル樹脂の具体例として、特に、ユニチカ社製商品名「メルティ4000」(繊維全てが共重合ポリエチレンテレフタレートである繊維)が好ましく挙げられる。また、上記芯鞘構造のバインダー繊維としては、ユニチカ社製商品名「メルティ4080」や、クラレ社製商品名「N−720」等が好適に使用できる。
(繊維強化複合材の製造方法)
本発明の繊維強化複合材の製造方法は、強化繊維と、熱可塑性樹脂繊維を混合し、乾式不織布法または湿式不織布法によって不織布シートを製造する工程と、不織布シートを、熱可塑性樹脂繊維のガラス転移温度以上の温度で加熱加圧成形する工程を含む。さらに、加熱加圧成形する工程は、不織布シートの0.001〜15%の領域を、平均圧力よりも低圧で加圧する工程を含む。
不織布シートを製造する工程では、乾式不織布法または湿式不織布法が用いられる。乾式不織布法は、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維を一定の長さにカットしたチョップドストランドを空気中に分散させてネットに捕捉してウエブを形成する方法である。また、湿式不織布法は、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維を一定の長さにカットしたチョップドストランドを溶媒中に分散させ、その後溶媒を除去してウエブを形成する方法である。中でも、乾式不織布法のエアレイド法は嵩高い高坪量のシートを得られる点で好ましく用いられる。一方で、湿式不織布法は均一で幅広のシートを得やすい点で好適である。
不織布シートでは、熱可塑性樹脂と強化繊維が互いに交差して存在することによりシート中に空隙が存在している。このため、不織布シートは、溶融法、溶剤法、ドライパウダーコーティング法、パウダーサスペンション法、樹脂フィルム含浸法等で形成した繊維間を樹脂が完全に埋めている不織布とは異なり、熱成形前はシート自体がしなやかでドレープ性がある。これにより、本発明の製造方法で用いる不織布シートは、巻き取りの形態で保管・輸送が可能となり、曲面の型に沿わせて配置した後、加熱加圧成形することができる等、ハンドリング性に優れている。また、繊維強化複合材に加工した場合に低密度領域と高密度領域を形成することが可能となる。
不織布シートにバインダー成分を含有させる場合は、不織布シートを製造する工程で混合することができる。あるいは、バインダー成分を不織布のシートが形成されたのちに液体あるいはエマルジョン状のバインダー成分を散布法、塗工法又は含浸法でシートに付与することができる。なお、バインダー成分は、不織布シートの両表層に集中するように含有されることが好ましい。これにより、表面繊維の飛散、毛羽立ちや脱落を抑制することができ、ハンドリング性に優れた繊維強化複合材を得ることができる。また、シートの不織布の内部(中層)にもバインダーが含有されていることが、シートの層間強度を維持するために好ましい。
加熱加圧成形する工程は、熱可塑性樹脂繊維のガラス転移温度以上の温度で加熱加圧処理する工程であり、熱可塑性樹脂の少なくとも一部が流動する温度まで加熱しつつ加圧を行う工程である。なお、加熱温度は、熱可塑性樹脂繊維が流動する温度であって強化繊維は溶融しない温度帯であることが好ましい。このような温度帯とすることにより、繊維強化複合材の強度を高めることができる。具体的な加熱温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度が100℃以上の場合は、ガラス転移温度をTgとした場合に、Tg〜Tg+100℃であることが好ましく、Tg〜Tg+50℃であることがより好ましい。
加熱加圧成形する工程は、不織布シートの0.001〜15%の領域を、平均圧力よりも低圧で加圧する工程を含む。すなわち、加熱加圧工程では、不織布シートにかかる圧力に分布が付与される。このように平均圧力よりも低圧で加圧される領域は、低密度領域となり、それ以外の領域は高密度領域となる。加熱加圧成形する工程で付与される平均圧力は、2〜20MPaであることが好ましく、不織布シートの0.001〜15%の領域には、0〜4MPaの圧力が付与されることが好ましい。なお、低密度領域には、圧力が付与されなくてもよく、平均圧力よりも低い圧力がかかるように加圧処理されてもよい。
所望の保持温度に到達するまでの昇温速度は3〜20℃/分が好ましく、所望の熱プレス温度での保持時間としては1〜30分、その後、繊維強化複合材を取り出す温度(200℃以下)までは圧力を維持しながら、3〜20℃/分の冷却速度とするのが好ましい。更に、生産効率はやや落ちるものの、熱プレスの保持温度から熱可塑性樹脂のガラス転移温度までは空冷でゆっくりと0.1〜3℃/分で冷却することも、強度向上の観点からは好ましい。また、急速加熱、急速冷却(ヒートアンドクール)成形を用いて熱プレス成形することも可能であり、その場合の昇温、冷却速度はそれぞれ30〜500℃/分である。更に、赤外線ヒーターによる場合は、温度として150〜600℃、好ましくは200〜500℃で1〜30分間加熱し、その後30〜150MPaの平均圧力で成形することができる。この場合、不織布シートの0.001〜15%の領域には、0.1〜20MPaの圧力が付与されることが好ましい。
加熱加圧成形する工程で低密度と高密度領域をもつ繊維強化複合材を得るには、低密度領域を得ようとする部位に対応する位置に凹部を有する金型を、不織布シートに押し当ててプレス加工処理を施すことが好ましい。具体的には、あらかじめ加熱した凹部を有する金型を不織布シートに押し当てることにより、加熱加圧処理をすることができる。なお、金型が有する凹部とは、不織布シートに金型を接触させた際に、金型と不織布シート間に空間が形成され得る箇所をいい、凹部に対応する箇所では低密度領域が形成されることとなる。一方で、凹部が形成されていない金型の領域では、金型と不織布シート間にほとんど空間が形成されず、高い圧力が付与され高密度領域が形成されることとなる。なお、本発明の製造方法に用いる金型の凹部の面積は、金型全体の面積に対して0.001〜15%である。ここで、凹部の面積とは、凹部の投影面積を意味するものとする。
本発明では、金型の凹部の形状を様々な形状とすることにより、低密度領域の形状を自在に変更することができ、低密度領域の面積も0.001〜15%の範囲内において適宜変更することができる。
本発明の製造方法においては、1枚の不織布シートに加熱加圧処理が施されてもよく、所望の厚さとなるように不織布シートを複数枚積層した積層体に加熱加圧処理が施されてもよい。不織布シートを複数枚積層したものを加工することにより、低密度領域を効果的に形成することができ、繊維強化複合材の低密度領域に固定部材を貫入する際にひび割れ等の欠陥が生じることを防ぐことができる。さらに、不織布シートを複数枚積層した積層体を加工することにより、繊維強化複合材自体の強度を高めることもできる。
また、加熱加圧成形する工程で低密度と高密度領域をもつ繊維強化複合材を得るには、不織布シートを複数枚積層した積層体に加熱加圧処理をする際に、低密度領域を得ようとする部位に対応する位置の不織布シートの積層枚数を減じておいた上で加熱加圧処理をしてもよい。積層枚数が減じられた領域では、領域内の材料が少ないことにより低密度領域となる。一方で、積層枚数を減じていない領域では、高密度領域が形成されることとなる。
(固定方法)
本発明は、繊維強化複合材を、固定部材を用いて固定対象部材に固定する固定方法に関する。本発明の固定方法においては、固定部材を繊維強化複合材の低密度領域に貫通させて、固定対象部材と繊維強化複合材を固定する。
図4は、繊維強化複合材と固定対象部材を固定する様子を示す斜視図である。図4に示されているように、固定部材20は繊維強化複合材10の低密度領域12に貫通する。さらに、図4中の矢印の方向に繊維強化複合材10及び固定部材20を移動させることにより、固定部材20は固定対象部材30に貫入し、繊維強化複合材10と固定対象部材は固定される。
固定部材としては、ネジや鋲として用いられる一般的な部材を挙げることができる。具体的には、釘、木ネジ、タッピングビス、ドリルビス、ナッター、リベット、ブラインドリベット等を挙げることができる。
固定部材を貫通させる低密度領域の面積は、固定部材を繊維強化複合材の低密度領域に貫通させた際に形成される貫通孔の面積に対して、1倍より大きく4倍以下であることが好ましく、1.05〜4倍であることがより好ましく、1.2〜3.5倍であることがさらに好ましい。なお、低密度領域に貫通孔が形成された場合は、低密度領域の面積とは、低密度領域と貫通孔の面積の合計面積のことをいう。
また、固定部材を貫通させる低密度領域の面積は、固定部材を繊維強化複合材の低密度領域に貫通させた際に形成される貫通孔の面積以下であってもよい。具体的には、固定部材を貫通させる低密度領域の面積は、固定部材を繊維強化複合材の低密度領域に貫通させた際に形成される貫通孔の面積に対して0.5〜1倍であってもよい。低密度領域の面積が貫通孔の面積以下の場合、低密度領域の周囲の高密度領域にも貫通孔が形成される。また、このような場合、固定部材を貫通させた後には、繊維強化複合材には、低密度領域が存在しない場合もある。
繊維強化複合材を固定部材に固定する場合、効率化の観点から、下穴を開けずに直接固定する方法を採用することが好ましい。すなわち、本発明の固定方法は、固定部材を繊維強化複合材の低密度領域に穿孔させながら貫通させる工程を含むことが好ましい。
一方、繊維強化複合材には、あらかじめ下穴が設けられていてもよい。本発明の固定方法は、あらかじめ設けられた下穴に固定部材を貫通させる工程を含んでいてもよい。
また、本発明は、上記のような固定方法により得られる、固定対象部材に固定化された繊維強化複合材に関するものでもある。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(実施例1)
繊維径が6μmであり、繊維長が18mmのガラス繊維(ガラス転移温度300℃以上、弾性率80GPa)40部、繊維径15μmのポリエーテルイミド(PEI)繊維(Fiber Innovation Technology社製、繊維長12mm)50部、鞘部に変性PET(融点110℃)、芯部にPET繊維を使用した芯鞘バインダー繊維(クラレ製 N−720)10部を水中に投入した。水の量は、投入した繊維の重量に対し200倍となるとした(繊維スラリー濃度として0.5%)。
このスラリーに、分散剤として「エマノーン3199」(花王株式会社、商品名)を繊維100質量部に対し1質量部となるよう添加して攪拌し、繊維を水中に均一に分散させた繊維スラリーを調製した。
上記繊維スラリーから湿式抄紙法でウエットウエブを形成し、180℃で加熱乾燥することにより表1に示すバインダー量で目付けが450g/m2である不織布を作製した。
この不織布を、30cm角で6枚積層したのち、厚さ30mmの30cm角のアルミ板に直径5mm、深さ4mmの穴を4隅と各辺中央に図5(a=28.5cm、b=30cm)のような配置で8個あけたものを片面に当てて、もう一方の面には30cm角のアルミ板を当てて、圧力2MPa、温度280℃で加熱加圧処理をした後、冷却し、繊維強化複合材を作製した。
高密度領域の密度は1.3g/cm3であり、低密度領域の密度は0.43g/cm3であった。また、低密度領域の面積の合計は、1.55cm2であり、繊維強化複合材の全面積(900cm2)に対して0.17%であった。なお、高密度領域の厚さは2mmであり、低密度領域の厚さは6mmであった。
この低密度領域をもつ、30cm角の繊維強化複合材を、1.5cm角のアルミ角パイプで作った外寸30cm角のアルミ枠の上に重ね、繊維強化複合材の八箇所の低密度領域の中心を貫通するように、それぞれ3mm径のタッピングビスをねじ込んでアルミ枠に固定した。
(実施例2)実施例1と同様に不織布シートを作製した。
この不織布シートを、30cm角で3枚、30cm角のシートに4隅と各辺中央に図5のような配置で直径5mmの孔を8個あけたものを3枚、計6枚を積層したのち両面に30cm角のアルミ板を当てて、圧力2MPa、温度280℃で加熱加圧処理をした後、冷却し、繊維強化複合材を作製した。
高密度領域の密度は1.3g/cm3であり、低密度領域の密度は0.65g/cm3であった。また、低密度領域の面積の合計は、1.55cm2であり、繊維強化複合材の全面積(900cm2)に対して0.17%であった。なお、高密度領域の厚さは2mmであり、低密度領域の厚さは4mmであった。
この繊維強化複合材を、実施例1と同様にアルミ枠に固定した。
(実施例3)
実施例1のポリエーテルイミド繊維をポリカーボネート繊維に換えた以外は実施例1と同様にアルミ枠に固定した繊維強化複合材を作製した。
(実施例4)
繊維長6mm、繊維径7μm、弾性率240GPaの炭素繊維(東邦テナックス製HT110)(ガラス転移温度300℃以上)40部、繊維径15μmのポリエーテルイミド(PEI)繊維(Fiber Innovation Technology社製、繊維長12mm)50部、鞘部に変性PET(融点110℃)、芯部にPET繊維を使用した芯鞘バインダー繊維(クラレ製 N−720)10部を水中に投入した。水の量は、投入した繊維の重量に対し200倍となるとした(繊維スラリー濃度として0.5%)。
このスラリーに、分散剤として「エマノーン3199」(花王株式会社、商品名)を繊維100質量部に対し1質量部となるよう添加して攪拌し、繊維を水中に均一に分散させた繊維スラリーを調製した。
上記繊維スラリーから湿式抄紙法でウエットウエブを形成し、180℃で加熱乾燥することにより表1に示すバインダー量で目付けが450g/m2である不織布を作製した。
この不織布を、30cm角で6枚積層したのち、厚さ30mmの30cm角のアルミ板に直径5mm、深さ2mmの穴を4隅と各辺中央に図5のような配置で8個あけたものを片面に当てて、もう一方の面には30cm角のアルミ板を当てて、圧力10MPa、温度280℃で加熱加圧処理をした後、冷却し、繊維強化複合材を作製した。
高密度領域の密度は1.5g/cm3であり、低密度領域の密度は0.75g/cm3であった。また、低密度領域の面積の合計は、1.55cm2であり、繊維強化複合材の全面積(900cm2)に対して0.17%であった。なお、高密度領域の厚さは2mmであり、低密度領域の厚さは6mmであった。
この低密度領域をもつ、30cm角の繊維強化複合材を、1.5cm角のアルミ角パイプで作った外寸30cm角のアルミ枠の上に重ね、繊維強化複合材の8箇所の低密度領域の中心を貫通するように、それぞれ3mm径のタッピングビスをねじ込んでアルミ枠に固定した。
(比較例1)
実施例1の30cm角のアルミ板に直径5mm、深さ4mmの穴を4隅と各辺中央に図5のような配置で8個あけたものに換えて、穴のない30cm角のアルミ板用いた以外は、実施例1と同様に、低密度領域のない繊維強化複合材を作製し、実施例1のタッピングビスと同じ位置にタッピングビスをネジ込んでアルミ枠に固定したものを作製した。
(比較例2)
実施例1の30cm角のアルミ板に直径5mm、深さ4mmの穴を4隅と各辺中央に図5のような配置で8個あけたものに換えて、穴のない30cm角のアルミ板用い、圧力を0.5MPaに換えた以外は、比較例1と同様に、全体が低密度(0.65g/cm3)の厚さ4mmの繊維強化複合材を作製し、実施例1のタッピングビスと同じ位置にタッピングビスをネジ込んでアルミ枠に固定したものを作製した。
(比較例3)
実施例3の30cm角のアルミ板に直径5mm、深さ4mmの穴を4隅と各辺中央に図5のような配置で8個あけたものに換えて、穴のない30cm角のアルミ板用いた以外は、実施例1と同様に、低密度領域のない繊維強化複合材を作製し、実施例1のタッピングビスと同じ位置にタッピングビスをネジ込んでアルミ枠に固定したものを作製した。
(比較例4)
実施例4の30cm角のアルミ板に直径5mm、深さ4mmの穴を4隅と各辺中央に図5のような配置で8個あけたものに換えて、穴のない30cm角のアルミ板用いた以外は、実施例4と同様に、低密度領域のない繊維強化複合材(密度1.5g/cm3)を作製し、実施例1のタッピングビスと同じ位置にタッピングビスをネジ込んでアルミ枠に固定したものを作製した。
(比較例5)
実施例4の30cm角のアルミ板に直径5mm、深さ4mmの穴を4隅と各辺中央に図5のような配置で8個あけたものに換えて、30cm角のアルミ板に直径5mm、深さ0.7mmの穴を4隅と各辺中央に図5のような配置で8個あけたアルミ板用いた以外は、実施例4と同様に、高密度領域の密度は1.5g/cm3であり、低密度領域の密度は1.1g/cm3である繊維強化複合材を作製し、実施例1のタッピングビスと同じ位置にタッピングビスをネジ込んでアルミ枠に固定したものを作製した。
(評価方法)
<固定時の破損の状態>
固定箇所すなわち、タッピングビスをねじ込んだ箇所に、亀裂破損が無いかを10倍のルーペを通して目視観察し、以下の基準で評価した。
○:繊維強化複合材に破損はなかった。
△:繊維強化複合材にひび割れが生じた。
×:繊維強化複合材が割れた。
<強度>
アルミ枠に固定した繊維強化複合材をアルミ枠が下側になるようにコンクリートの床に水平に置き、枠の中央垂直上方30cmの高さから直径3cmの鉄球を自然落下させて、亀裂、破損がないかを10倍のルーペを用いて目視観察し、以下の基準で評価した。
○:亀裂破損は認められなかった。
△:固定部周辺に亀裂破損が認められた。
×:繊維強化複合材に亀裂破損が認められた。
Figure 0006128029
低密度領域の密度をPとし、高密度領域の密度をQとしたときに、1.5P<Qの関係を満たし、かつ、繊維強化複合材の全面積に対して低密度領域が占める割合が0.001〜15%である実施例の繊維強化複合材は、いずれも固定時に破損することがなく、十分な強度を有していることが確認された。これに対して、高密度領域と低密度領域の2つの領域を持たない比較例1〜4の繊維強化複合材や、2つの領域を有していても1.5P<Qの関係を満たさない比較例5の繊維強化複合材は、固定時に破損したり、強度が十分でないといった問題があった。
本発明によれば、ネジや鋲等の固定部材を用いて、簡便な方法で繊維強化複合材を他の部材に固定することができる。また、繊維強化複合材を他の部材に固定する際に、破損や欠陥が生じることを抑制することができる。さらに、本発明によれば、繊維強化複合材は、上述したような固定時の適性を有することに加えて、優れた強度を有する。このため、本発明の繊維強化複合材は、あらゆる工業製品の構成部品として好適に用いられ、産業上の利用可能性が高い。
10 繊維強化複合材
12 低密度領域
13 切り欠け部
14 高密度領域
20 固定部材
30 固定対象部材
40 穴

Claims (23)

  1. 強化繊維と熱可塑性樹脂を含む繊維強化複合材であって、前記繊維強化複合材は、低密度領域と高密度領域を有し、前記低密度領域の密度をPとし、前記高密度領域の密度をQとすると、1.5P<Qであり、前記繊維強化複合材の全面積に対して、前記低密度領域が占める割合は0.001〜15%であることを特徴とする繊維強化複合材。
  2. 前記低密度領域は、固定部材を貫通させるための領域であることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化複合材。
  3. 前記強化繊維は、繊維径が20μm以下であり、ガラス転移温度が210℃以上であり、弾性率が50GPa以上である繊維から構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維強化複合材。
  4. 前記強化繊維と前記熱可塑性樹脂の含有質量比率は、前記成形加工シートの全領域において略一定であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
  5. 前記強化繊維と前記熱可塑性樹脂の含有質量比率は、0.2:1〜10:1であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
  6. 前記繊維強化複合材は凹凸構造を有し、凸部の最高点が低密度領域に属することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
  7. 前記低密度領域が、前記繊維強化複合材中で非連続領域として形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
  8. 前記強化繊維は、ガラス繊維または炭素繊維であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
  9. 前記熱可塑性樹脂は、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ナイロン、ポリプロピレン、またはポリフェニレンスルフィドであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
  10. 前記低密度領域には、さらに貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
  11. 前記低密度領域と前記貫通孔の合計面積は、前記貫通孔の面積に対して1倍より大きく4倍以下であることを特徴とする請求項10に記載の繊維強化複合材。
  12. 強化繊維と、熱可塑性樹脂繊維を混合し、乾式不織布法または湿式不織布法によって不織布シートを製造する工程と、前記不織布シートを、前記熱可塑性樹脂繊維のガラス転移温度以上の温度で加熱加圧成形する工程を含み、前記加熱加圧成形する工程は、前記不織布シートの固定部材を貫通させようとする領域を平均圧力よりも低圧で加圧する工程を含むことを特徴とする繊維強化複合材の製造方法。
  13. 前記加熱加圧成形する工程は、凹部を有する金型を、前記不織布シートに押し当ててプレス加工をする工程を含むことを特徴とする請求項12に記載の繊維強化複合材の製造方法。
  14. 強化繊維と、熱可塑性樹脂繊維を混合し、乾式不織布法または湿式不織布法によって不織布シートを製造する工程と、前記不織布シートを複数枚積層して、前記熱可塑性樹脂繊維のガラス転移温度以上の温度で加熱加圧成形する工程を含み、前記加熱加圧成形する工程は、固定部材を貫通させようとする領域の前記不織布シートの積層枚数を減らすことにより、低密度領域とすることを特徴とする繊維強化複合材の製造方法。
  15. 前記固定部材を貫通させようとする領域の面積が前記不織布シートの全面積の0.001〜15%であることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の繊維強化複合材の製造方法。
  16. 前記加熱加圧成形する工程は、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTgとした場合に、Tg〜Tg+100℃に加熱する工程を含むことを特徴とする請求項12〜15のいずれか1項に記載の繊維強化複合材の製造方法。
  17. 請求項12〜16のいずれか1項に記載の製造方法により製造された繊維強化複合材。
  18. 請求項1〜11および17のいずれか1項に記載の繊維強化複合材を、固定部材を用いて固定対象部材に固定する固定方法であって、前記固定部材を前記繊維強化複合材の低密度領域に貫通させて、前記固定対象部材と前記繊維強化複合材を固定することを特徴とする固定方法。
  19. 前記固定部材を貫通させる低密度領域の面積は、前記固定部材を前記繊維強化複合材の低密度領域に貫通させた際に形成される貫通孔の面積に対して、1倍より大きく4倍以下であることを特徴とする請求項18に記載の固定方法。
  20. 前記固定部材を貫通させる低密度領域の面積は、前記固定部材を前記繊維強化複合材の低密度領域に貫通させた際に形成される貫通孔の面積に対して0.5〜1倍であることを特徴とする請求項18に記載の固定方法。
  21. 前記固定部材を貫通させた後に、前記繊維強化複合材に低密度領域が残存しないことを特徴とする請求項18に記載の固定方法。
  22. 請求項19に記載の固定方法により得られる、前記固定対象部材に固定化された繊維強化複合材。
  23. 請求項20に記載の固定方法により得られる、前記固定対象部材に固定化された繊維強化複合材。
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