以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置を備えた3相モータの駆動システムのブロック図である。本例の駆動システムは、電力変換器に使用する半導体として、 スイッチング素子に、絶縁ゲートパイポーラトランジスタ(IGBT)を使用する例である。
本例の駆動システムは、バッテリ1と、インバータ2と、モータ3と、スイッチ4と、コントローラ5とを備えている。
バッテリ1は、リチウムイオン電池等の二次電池を複数、直接又は並列に接続することで構成される電池である。バッテリ1は、車両の動力源となる。
インバータ2は、コントローラの制御信号に基づき、バッテリ1から入力される直流電力を交流電力に変換してモータ3に出力する電力変換装置である。インバータ2は、上アーム回路を形成する上アーム素子21、23、25と、下編む回路を形成する下アーム素子22、24、26と、平滑コンデンサ27と、駆動回路30とを有している。
上アーム素子21、23、25は、パワーデバイスとしてのスイッチング素子Q1、Q3、Q5とダイオードD1、D3、D5とをそれぞれ並列に接続した回路を主要な構成としている。スイッチング素子Q1のコレクタ端子とダイオードD1のカソード端子が接続され、かつスイッチング素子Q1のコレクタ端子とダイオードD1のアノード端子が接続されている。下アーム素子22、24、26は、同じくパワーデバイスとしてのスイッチング素子Q2、Q4、Q6とダイオードD2、D4、D6とをそれぞれ並列に接続した回路を主要な構成とする。スイッチング素子Q2〜スイッチング素子Q6とダイオードD2〜D56の接続は、スイッチング素子Q1とダイオードD1の接続と同様である。
本例では、2つのスイッチング素子Q1〜Q6を直列に接続した3対の回路が、電源線Pと電源線Nの間に接続されることにより、バッテリ1に電気的に接続され、各対のスイッチング素子を接続する各接続点と、3相モータ3の三相の出力部とがそれぞれ電気的に接続されている。電源線Pはバッテリ1の正極側に接続され、電源線Nはバッテリ1の負極側に接続されている。
スイッチング素子Q1のエミッタ端子とスイッチング素子Q2のコレクタ端子との接続点はU相の出力となり、スイッチング素子Q3のエミッタ端子とスイッチング素子Q4のコレクタ端子との接続点はV相の出力となり、スイッチング素子Q5のエミッタ端子とスイッチング素子Q6のコレクタ端子との接続点はW相の出力となり、モータ3の三相配線に接続されている。そして、上アーム素子21、23、25及び下アーム素子22、24、26により2レベルの3相インバータ回路20が構成されている。
平滑コンデンサ27は、インバータ回路20と、バッテリ1との間に接続される、バッテリ1からの電力を平滑する素子である。平滑コンデンサ27は、電源線P、N間に接続されている。
駆動回路30は、コントローラ5から送信されるスイッチング信号に基づいて、スイッチング素子S1〜S6のオン及びオフを切り替える機能を備えている。本実施例ではハイサイドゲート制御回路31と、ローサイドゲート制御回路32を使うことによって有している。ハイサイドゲート制御回路31は、上アーム素子21のスイッチング素子Q1のゲートを制御することで、スイッチング素子Q1のオン、オフを切り替える回路であり、スイッチング素子Q1のゲート駆動回路である。ローサイドゲート制御回路32は、下アーム回路22のスイッチング素子Q2のゲートを制御することで、スイッチング素子Q2のオン、オフを切り替える回路であり、スイッチング素子Q2のゲート駆動回路である。
なお、図1では、U相のハイサイドゲート制御回路31及びローサイドゲート制御回路32のみを図示しているが、V相及びW相についても、駆動回路2は、同様のゲート制御回路を有している。
モータ3は、3相交流モータであり、回転子に2次巻き線が備わった誘導モータや、回転しに永久磁石を内蔵したブラシレスモータや永久磁石同期モータなどがあげられる。モータ3は、インバータ回路の各相で、スイッチング素子Q1、Q2の接続点、スイッチング素子Q3、Q4の接続点及びスイッチング素子Q5、Q6の接続点にそれぞれ接続されている。
スイッチ4は、バッテリ1とインバータ2の平滑コンデンサ27との間に接続されている。
コントローラ5は、駆動回路2を制御するためのコントローラである。コントローラ5は、外部から入力されるトルク指令値、モータ3の相電流、モータ3の回転速度に基づいて、トルク指令値の要求トルクをモータ3から出力させるための、インバータ2の電流指令値を演算する。なお、モータ3の相電流は、インバータ回路20とモータ3との間に接続された電流センサ6により検出され、モータ3の回転速度は、モータ3に設けられたレゾルバ7の検出値から算出される。
そして、コントローラ5は、モータ3が必要とする電力を供給するためのスイッチング信号を生成し、駆動回路30に出力する。そして、駆動回路30は当該スイッチング信号に基づいて、各スイッチング素子Q1〜Q6のオン、オフを切り替える。これにより、コントローラ5は、インバータ2をPWM制御している。
次に、図2を用いて、ゲート制御回路の詳細な構成を説明する。図2は、ハイサイドゲート制御回路31、上アーム素子21及びコントローラ5のブロック図である。なお、ハイサイドとローサイドは同様の構成で実施できるため、説明を省略する。また、他のスイッチング素子Q2〜Q5とゲート制御回路の構成は、図2と同様であるため、説明を省略する。
図2に示すように、ハイサイドゲート制御回路31は、ゲート駆動回路311と、ゲート電圧検出部312と、ゲート電荷量測定部313と、直流電圧推定部314と、ゲート抵抗設定回路315と、ゲート電流検出部316と、基準電圧設定部318を有している。図2において、Cはスイッチング素子Q1であるトランジスタのコレクタ端子を、Gはゲート端子を、Eはエミッタ端子を、ESは検出用エミッタ端子を示している。
ゲート駆動回路311は、スイッチング素子Q1のオン及びオフを切り替えるための駆動回路である。ゲート駆動回路311は、ゲート端子Gに接続され、ゲート電圧を入力することで、ゲート−エミッタ間の入力容量にゲート電荷を蓄積し、スイッチング素子Q1をターンオンさせる。また、ゲート駆動回路311は当該ゲート電荷を引き抜くことで、スイッチング素子をターンオフさせる。
ゲート電圧検出部312は、ゲート端子G及び検出用エミッタ端子ESに接続されることで、スイッチング素子Q1のゲート端子側に接続され、これら端子間の電圧を検出することで、スイッチング素子Q1のゲート電圧(Vg)を検出する。ゲート電圧検出部312は、検出されたゲート電圧を、電圧推定部314に出力する。
ゲート電荷量推定部313は、ゲート端子Gに接続されたゲート電流検出部316の電流値に基づいて、ゲートに蓄積される電荷量を測定する。ゲート電荷量推定部313は、ゲート電流検出部316で検出されるゲート電流の積算値を演算することで、ゲート電荷量を測定する。ゲート電荷量推定部313は、測定した電荷量を、電圧推定部314に出力する。
直流電圧推定部314は、ゲート電圧検出部312により検出されたゲート電圧と、ゲート電荷量測定部により測定された電荷量に基づいて、スイッチング素子のエミッタコレクタ間の直流電圧(Vce)を推定する。電圧推定部314は、推定した電圧(Vce)を基準電圧設定部318に出力する。
ゲート抵抗設定回路315は、電圧推定部315で推定されたコレクタエミッタ間電圧(Vce)に基づき、スイッチング素子Q1のゲート抵抗を設定する。
基準電圧設定部318は、直流電圧推定部314で推定された直流電圧に基づき、スイッチング素子Q1のゲート抵抗を変更するための基準電圧を設定する。
次に、図3を用いて、ゲート駆動回路311及びゲート抵抗設定回路312の具体的な構成を説明する。図3は、ハイサイドゲート制御回路31の回路図を示す。
図3に示すように、ゲート駆動回路311は、パルス発信器3111と、トランジスタTr1、Tr2と、抵抗R11、R12、ダイオードD11、D12の並列回路とを有している。パルス発信器3111は、増幅回路等を含み、トランジスタTr1、Tr2のベースに接続されている。パルス発信器3111は、コントローラ5から入力されるスイッチング信号で示される制御タイミングで、スイッチング素子Q1のオン、オフを切り替えるよう、パルスをトランジスタTr1、Tr2に発信する。
トランジスタTr1は、npn型のトランジスタである。トランジスタTr2はpnp型のトランジスタである。トランジスタTr1、Tr2は互いに直列に接続されている。そして、トランジスタTr1、Tr2のベースの接続点が、パルス発信器321に接続され、トランジスタTr1のエミッタとトランジスタTr2のコレクタとの接続点が、抵抗R11、R12、ダイオードD11、D12の並列回路の接続されている。
抵抗R11とダイオードD11が直列に、抵抗R12とダイオードD12が直列に接続されている。そして、ダイオードD11とダイオードD12とが逆方向になるように、抵抗R11とダイオードD11の直列回路と、抵抗R12とダイオードD12の直列回路が、並列に接続されている。また、抵抗R11、R12、ダイオードD11、D12の並列回路は、トランジスタTr1、Tr2の接続点と、スイッチング素子Q1のゲート端子との間に接続されている。
ゲート抵抗設定回路315は、抵抗R1、R2、トランジスタS1、S2、比較器321、322を有している。トランジスタS1は、P型のMOSFETであり、トランジスタS2はN型のMOSFETである。
抵抗R1とトランジスタS1との並列回路は、ゲート電源317の正極とトランジスタTr1のコレクタとの間に接続されている。比較器321の反転入力には、スイッチング素子Q1のフィードバックされたゲート電圧(VGFB)が入力される。比較器321の非反転入力には、基準電圧設定部318から、スイッチング素子Q1のターンオンのときに、ゲート抵抗を変更するための基準電圧(REF_ON)が入力される。比較器321の比較結果が、トランジスタS1の制御端子に入力される。
抵抗R2とトランジスタS2との並列回路は、ゲート電源317の負極とトランジスタTr2のエミッタとの間に接続されている。比較器322の反転入力には、スイッチング素子Q1のフィードバックされたゲート電圧(VGFB)が入力される。比較器322の非反転入力には、基準電圧設定部318から、スイッチング素子Q1のターンオフのときに、ゲート抵抗を変更するための基準電圧(REF_OFF)が入力される。。比較器322の比較結果が、トランジスタS2の制御端子に入力される。
次に、図3の回路動作について、説明する。スイッチング素子Q1をターンオンさせるときには、トランジスタTr1をオンに、トランジスタTr2をオフにするパルス信号を、パルス生成器3111から出力し、トランジスタTr1、Tr2のベースに入力させる。トランジスタTr1がオンになることで、ゲート電源317から、ゲート電流が、抵抗R1又はトランジスタS1を介して、抵抗R11、ダイオードD11と通り、スイッチング素子Q1のゲートに入力される。そして、電荷が、スイッチング素子Q1のゲートエミッタ間の入力容量に蓄積されて、ゲート電圧が、スイッチング素子Q1をオンにさせる電圧閾値を越えると、スイッチング素子Q1がオンになる。
一方、スイッチング素子Q1をターンオフさせる際には、パルス発生器3111からのパルス信号により、トランジスタTr1をオフに、トランジスタTr2をオンにして、スイッチング素子Q1のゲートから抵抗R12及びダイオードD12を通り、抵抗R2又はトランジスタS2の一方を導通させて、グランドまでの導通経路が形成される。そして、スイッチング素子Q1のゲートエミッタ間の入力容量に蓄積されている電荷が引き抜かれることで、ゲート電圧が下がり、スイッチング素子Q1がオフになる。
また、スイッチング素子Q1をターンオンさせる時に、トランジスタS1のオン、オフを切り替えることで、ゲート抵抗を設定する。スイッチング素子Q1をターンオンさせるときに、トランジスタS1をオフにすると、ゲート電流は、抵抗R1及び抵抗R11を流れて、スイッチング素子Q1のゲートに入力される。そのため、ゲート抵抗は、抵抗R1と抵抗R11との合成インピーダンスZ1となる。
一方、スイッチング素子Q1をターンオンさせるときに、トランジスタS1をオンにすると、抵抗R1の間がトランジスタS1で短絡されるため、ゲート電流は、トランジスタS1及び抵抗R11を流れて、スイッチング素子Q1のゲートに入力される。そのため、ゲート抵抗は、トランジスタS1の導通時の抵抗と、抵抗R11の合成インピーダンスZ2となる。抵抗R1のインピーダンスは、トランジスタS1導通時の抵抗に対して、十分大きい値を選定することで、下記の式(1)が成り立つ。
すなわち、合成インピーダンスZ2は抵抗R1分だけ小さくすることが、できる。従って、スイッチング素子Q1をターンオンさせる際に、トランジスタS1をオンからオフにすることで、ゲートインピーダンスを、抵抗R1の分だけ、高めることができる。
また、スイッチング素子Q1をターンオフさせるときに、トランジスタS2のオン、オフを切り替えることで、ゲート抵抗を設定する。スイッチング素子Q1をターンオフさせるときに、トランジスタS2をオフにすると、ゲート電荷量から引き出される電流は、抵抗R2及び抵抗R12を流れて、エミッタ側端子VEEに流れる。そのため、ゲート抵抗は、抵抗R2と抵抗R12とのインピーダンスとなる。
一方、スイッチング素子Q1をターンオフさせるときに、トランジスタS2をオンにすると、抵抗R2の間がトランジスタS2で短絡されるため、ゲートからの電流は、トランジスタS2及び抵抗R12を流れて、エミッタ側端子VEEに流れる。そのため、ゲート抵抗は、抵抗R12のインピーダンスとなる。ターンオンのときと同様に、抵抗R2のインピーダンスはトランジスタS2の導通時抵抗に対して十分大きい値を設定することにより、スイッチング素子Q1をターンオフさせる際に、トランジスタS2をオンからオフにすることで、ゲートインピーダンスを、抵抗R2の分だけ、高めることができる。
これにより、ゲート抵抗設定回路315は、スイッチング素子Q1のゲート抵抗を所定のインピーダンスより高くする高インピーダンス回路と、当該ゲート抵抗を当該所定のインピーダンスより低くする低インピーダンス回路とを切り替える。そして、ゲート抵抗設定回路315は、スイッチング素子Q1のターンオンのとき、及び、ターンオフのときに、トランジスタS1、S2のオン、オフを切り替えることで、過渡的にゲートインピーダンスを変更する。なお、所定のインピーダンスは、抵抗R1、R2、R11、R12の抵抗値により設定される。
ここで、スイッチング素子Q1〜Q6で発生するサージ電圧について説明する。スイッチング素子Q1のサージ電圧を抑制するためには、トランジスタの過渡状態における、スイッチング素子Q1の電極間電圧の時間変化(dV/dt)を抑制する必要がある。スイッチング素子Q1の電圧変化量(dV/dt)を抑制するには、例えば、スイッチング素子Q1をターンオフするときに、ゲート抵抗設定回路315により、ゲート抵抗を高めることで、サージ電圧を抑制することができる。しかしながら、ゲート抵抗を高めた場合には、スイッチング素子Q1のスイッチング損失が高くなる。
ゆえに、スイッチング損失を小さくしつつ、電圧変化量(dV/dt)を抑制するためには、ゲート抵抗設定回路315によるゲート抵抗の切り替えタイミングを、適切なタイミングに設定する必要がある。そして、ゲート抵抗の切り替えタイミングは、スイッチング素子Q1の電極間電圧の変化から、適切なタイミングに設定することができる。
本例の直流電圧推定部314は、以下に説明する方法で、スイッチング素子Q1のコレクタエミッタ間電圧(Vce)を推定することにより、スイッチング素子Q1の電極間電圧の変化を検出している。
スイッチング素子Q1のオン、オフの動作中、スイッチング素子Q1のコレクタ端子とエミッタ端子との電圧差は変化する。また、スイッチング素子Q1のオン、オフの切り替えは、コレクタエミッタ間の入力容量の電荷量により決まる。そのため、コレクタ端子とエミッタ端子との電位差とゲートの電荷量との対応関係から、スイッチング素子Q1の過渡状態を推定することができつつ、スイッチング素子Q1の電極間電圧(Vce)を推定することができる。
すなわち、本例は、直流電圧推定部314により推定される直流電圧を用いることで、スイッチング素子Q1の電極間電圧の変化をしているため、ゲート抵抗の切り替えタイミングを、適切なタイミングに設定することを可能としている。
図4を用いて、スイッチング素子Q1における、ゲート電荷量(Qg)及びゲート電圧(Vg)に対するコレクタエミッタ間電圧(Vce)の大きさとゲート電圧Vgとゲート電荷量Qgによる特性変化の例を説明する。図4は、ゲート電荷量に対するゲート電圧の特性を示すグラフである。例えば実線においてはVceが低電圧の100Vである時の特性を示し、点線はVceが高電圧の300Vである時の特性を示す。電圧(Vth)は、スイッチング素子Q1のゲート電圧閾値である。
ゲート電圧(Vg)がゲート電圧閾値(Vth)より高い領域では、同じゲート電圧を印加したとしても、コレクタエミッタ間電圧に応じて、ゲート電荷量(Qg)が異なる。これは電圧効果トランジスタであるスイッチング素子Q1の帰還容量(Cres)が、ターンオンまたはターンオフのスイッチ動作の途中に、充放電されるためである。当該帰還容量は、スイッチング素子の内部構造によるものである。そして、ゲート電荷量(Qg)、コレクタエミッタ間電圧(Vce)及び帰還容量(Cres)との間には、式(2)の関係が成立する。
そして、本例において、インバータ2のスイッチング素子Q1に高電圧のパワーデバイスを用いることで、スイッチング時のコレクタエミッタ間電圧(Vce)は高くなり、あるいは、本例のスイッチング素子Q1に、帰還容量(Cres)の大きいデバイスをスイッチング素子Q1に用いることで、ゲート電荷量(Qg)の変化量は大きくなる。
そのため、直流電圧推定部314は、図4に示す関係から、コレクタエミッタ間電圧(Vce)を推定する。図4の関係は、スイッチング素子Q1からQ6のデバイスの特性から予め決まる特性である。電圧推定部314は、ゲート電圧(Vg)とゲート電荷量(Qg)に対するコレクタエミッタ間電圧(Vce)の相関関係を、例えばマップ等により予め記録する。そして、直流電圧推定部314は、当該マップを参照して、ゲート電圧検出部312のゲート電圧、及び、ゲート電荷量測定部313の電荷量特性に対応する直流電圧を推定し、基準電圧設定部318に出力する。
基準電圧設定部318は、直流電圧推定部314で推定された直流電圧により、基準電圧を電圧(REF_OFF)又は電圧(REF_ON)を設定する。これにより、直流電圧の大きさによって、ターンオンまたはターンオフ時の過渡的なゲートインピーダンス変更のタイミングを最適化することができる。
ゲート電圧検出部312及びゲート電荷量測定部313は、ゲート電圧の検出及びゲート電荷量の測定を、所定の周期で行い、直流電圧推定部314に出力し、コレクタエミッタ間電圧(Vce)が推定されている。なお、当該所定の周期は、コントローラ5によるスイッチング周期よりも短い周期である。
そして、本例は、以下に説明するように、電圧推定部314の出力をもとに、基準電圧設定部318にて基準電圧を設定することで、所定の周期で推定されるコレクタエミッタ間電圧(Vce)に対して、スイッチング素子Q1を駆動するための最適な電圧変化量(dV/dt)を過渡的に制御することが可能である。
コントローラ5は、電源線Pと電源線N間との短絡を避けるために、例えばU相のスイッチング制御では、スイッチング素子Q1と、スイッチング素子Q2のオン及びオフを交互に行っている。
そのため、ハイサイド側のスイッチング素子Q1をターンオフするときには、ローサイド側のスイッチング素子Q2はオフ状態である。この時、スイッチング素子Q1の正極側(高電位側)の端子と、負極側(低電位側)の端子との間の電圧(VHce)は、スイッチング素子Q1の正極と負極間との間の電極間電圧(Vce)と等しい。
そして、電極間電圧(Vce)は、上記のとおり電圧推定部314により推定されているため、スイッチング素子Q1の過渡状態を推定することができ、スイッチング素子Q1をターンオフさせるときに、スイッチング素子Q1のゲート抵抗を過渡的に変更すればよい。
以下、ターンオフさせるときの、ゲート抵抗設定回路315におけるゲート抵抗の制御について説明する。スイッチング素子Q1のターンオフの開始時点では、コレクタエミッタ間電圧が低いため、ゲート抵抗設定回路315はゲート抵抗を低い状態にする。具体的には、ターンオフの開始時点で、ゲート電荷量は小さく、電圧推定部314で推定されるコレクタエミッタ間電圧(Vce)は低い。そのため、基準電圧設定部318は、フィードバックゲート電圧(VGFB)が比較器322に入力されても、トランジスタS2がオン状態を維持するように、比較器322の非反転端子に入力する基準電圧を設定することで、ゲート抵抗設定回路315を制御する。
次に、スイッチング素子Q1のターンオフ動作が継続されて、スイッチング素子Q1の実際の電圧(Vce)が上昇する。電圧推定部314は、ゲート電荷量測定部313の電荷量と、ゲート電圧検出部312のゲート電圧から、コレクタエミッタ間電圧を推定することで、電圧(Vce)の上昇を推定する。
電圧推定部314は、直流電圧Vdcの大きさに応じて、サージ電圧によりコレクタエミッタ間電圧(Vce)がバッテリ1の直流電圧(Vdc)を大きく越えるか否かを判定する機能を有している。例えば、ゲート電荷量とゲート電圧の特性(Vg、Qg特性)から推定されたコレクタエミッタ間電圧と、サージ電圧の上昇を判定するための電圧閾値とを比較してもよく、あるいは、推定されたコレクタエミッタ間電圧の変化量と、所定の判定閾値との比較により判定すればよい。
そして、サージ電圧が大きく、コレクタエミッタ間電圧(Vce)が直流電圧(Vdc)を大きく越えると判定した場合には、基準電圧設定部318は、フィードバックゲート電圧(VGFB)の比較器322への入力に対して、トランジスタS2がオフに切り替えるよう、比較器322の非反転端子の基準電圧(REF_OFF)を設定する。
トランジスタS2をオフにさせる当該基準電圧(REF_OFF)の設定後、ターンオフの時間経過と供に、ゲート電圧は低くなり、フィードバック電圧(VGFB)が基準電圧(REF_OFF)に達すると、スイッチング素子Q1がオフになり、ゲート抵抗が高くなる。これにより、スイッチング素子Q1のコレクタエミッタ間電圧のピーク値が抑制され、サージ電圧を抑制することができる。
また、ゲート電圧を切り替えるタイミングは、基準電圧設定部318で設定される、比較器322の基準電圧の大きさによって決まる。基準電圧設定部318による基準電圧(REF_OFF)が小さくなるほど、高いゲート抵抗への切り替えタイミングが遅くなる。ゲート抵抗の切り替えタイミングは、例えば、ターンオフ開始後の、コレクタエミッタ間電圧の変化率から設定すればよい。
次に、図5を用いて、スイッチング素子Q1をターンオフ時のハイサイドゲート制御回路31の制御について説明する。図5は、コレクタ電流(Ic)、コレクタエミッタ電圧(Vce)、ゲート電圧(Vg)、ゲート電流(Ig)、及び、ゲート電荷量(Qg)の特性を示し、(a)は比較例の特性を、(b)は本発明の特性を示す。横軸は時間を示す。
時刻t1で、コントローラ5から、スイッチング素子Q1をターンオフさせる制御指令が入力されると、ゲート駆動回路311は、トランジスタTr1をオフに、トランジスタTr2をオンにする。そして、ゲート電圧(Vg)の低下が始まる。
時刻t2でゲート電圧(Vg)がゲート電圧閾値(Vth)以下になると、スイッチング素子Q1のターンオフが開始する。
時刻t2以降、比較例では、ゲート抵抗は低いインピーダンスを維持し、コレクタエミッタ間電圧(Vce)が大きく上昇する。そして、電圧(Vce)の変化率(dV/dt)が大きいため、サージ電圧(Vs)が大きくなる。そして、時刻taで、コレクタエミッタ間電圧(Vce)はピーク電圧(Vdc+Vs1)となる。比較例のように、スイッチング素子Q1の過渡状態で、ゲート抵抗を変更しない場合には、スイッチング素子のデバイス特性や、インバータ回路の規制インダクタンスなどのインバータ2の内部の回路定数により、電圧(Vce)が上昇する。
一方、本例では、時刻t2の時点から、ゲート電荷量測定部313は、ゲート電流検出部316の電流値の積算を開始し、電荷量(Qg)を測定する。また、電圧推定部314は、測定された電荷量と、ゲート電圧検出部312のゲート電圧から、コレクタエミッタ間電圧(Vce)を推定する。
そして、時刻t3の時点で、ハイサイドゲート制御回路31は、推定されたコレクタエミッタ間電圧(Vce)が、ゲート抵抗を切り替えるための閾値電圧に達したことを検知し、ゲート抵抗設定回路315により、ゲート抵抗を低インピーダンスから高インピーダンス側に切り替える。
時刻t3以降、電圧(Vce)の上昇は、比較例よりも抑制される。そして、時刻(tb)の時点で、直流電圧(Vce)はピーク電圧(Vdc+Vs2)となる。本発明のサージ電圧(Vs2)は比較例のサージ電圧(Vs1)よりも低いため、コレクタエミッタ間電圧(Vce)のピーク電圧も比較例より低くなる。
ハイサイドゲート制御回路31は、スイッチング素子Q1をターンオンさせる時にも、同様に、ゲート電圧の検出値と、ゲート電荷量の測定値から、Vg−Qgの特性を使用して、コレクタエミッタ間の電圧を推定し、スイッチング素子Q1の過渡状態で、推定された電圧(Vce)に応じて、ゲート抵抗を切り替えている。
なお、ゲート抵抗を高抵抗側に設定する時間は、ゲート電圧閾値(Vth)のばらつき、ゲート電流検出部の検出誤差、ゲート電流又はゲート電圧等の電圧電流の立ち下がり時間あるいは立ち上がり時間等に応じて設定してもよい。
ターンオン時の詳細な制御は、上記と同様であるため、説明を省略するが、スイッチング素子Q1のターンオン時の制御では、制御しているスイッチング素子Q1〜Q6と直列に接続された対アームのスイッチング素子Q1〜Q6およびダイオードD1〜D6のリカバリ電圧を含んだ電圧上昇を制御することもできる。
上記のように、本例は、スイッチング素子Q1〜Q6をターンオン、または、ターンオフのときに、ゲート電圧検出部312で検出されたゲート電圧と、ゲート電荷量測定部313で測定された電荷量に基づいて、スイッチング素子Q1〜Q6のゲートインピーダンスを設定する。これにより、本例は、スイッチング素子のゲート電荷量を測定しつつ、スイッチング素子の状態に応じたゲートインピーダンスを設定しているため、サージを抑えた最適な駆動制御をすることができ、その結果として、電磁波干渉(EMIノイズ)を低減することができる。
また、本例は、ゲート電圧検出部312のゲート電圧と、ゲート電荷量測定部313のゲート電荷量に基づいて、スイッチング素子Q1〜Q6の正極及び負極間の電極間電圧(Vce)を推定する。これにより、スイッチング動作時のゲート動作状態と、スイッチ動作時のゲート電荷量を測定し、ゲートの過渡状態を計測することができ、スイッチング素子Q1〜Q6の過渡状態を検出することができるため、当該過渡状態の時に、ゲート抵抗を設定することで、サージ電圧を抑制することができる。
また本例は、スイッチング素子Q1〜Q6のゲート電圧及びゲート電荷量に対する電極間電圧(Vce)の相関関係から、電極間電圧(Vce)を推定することができる。
また本例は、スイッチング素子Q1〜Q6のターンオフのときに、スイッチング素子Q1〜Q6が、サージ電圧の上昇を示す電圧閾値を越える場合に、ゲート抵抗設定回路315に含まれる低インピーダンス回路から高インピーダンス回路に切り替える。これにより、スイッチング素子Q1〜Q6の過渡状態を検出し、サージ電圧を抑制することができる。
また本例は、スイッチング素子Q1〜Q6のゲート端子に接続されたゲート電流検出部316の検出値から、ゲート電荷量を測定する。これにより、本例は、高電圧が印加されない、スイッチング素子Q1〜Q6のゲート入力側の検出値を用いて、電荷量を測定することができ、サージ電圧を抑制することができる。
また本例は、スイッチング素子がターンオフの開始時点又はターンオンの開始時点からゲート電荷量の測定を開始している。これにより、ターンオフ又はターンオン制御中における、スイッチング素子Q1〜Q6の過渡状態を検出することができる。
また本例は、ハイサイドゲート制御回路31及びローサイドゲート制御回路32を備え、インバータ2の上アーム素子21、23、25のスイッチング素子Q1、Q3、Q5及び下アーム回路22、24、26のスイッチング素子Q2、Q4、Q6をそれぞれ駆動させている。すなわち、スイッチング素子Q1〜Q6のバラツキ又は検出誤差等により、各スイッチング素子Q1〜Q6の過渡状態は異なるが、本例では、各スイッチング素子Q1〜Q6に対応するハイサイドゲート制御回路31、ローサイドゲート制御回路32で、過渡状態を検出し、ゲート抵抗を設定している。これにより、各スイッチング素子Q1〜Q6の過渡状態に応じて、サージ電圧を抑制することができる。また、インバータ2で生じるEMIノイズを抑制することができるため、システムの簡素化、電力変換装置の小型化を実現することができる。
また、インバータ2のスイッチング動作時に、サージ電圧が発生した場合には、当該インバータ2を備えた車両の駆動システム内で、EMIノイズが発生する。そして、このEMIノイズは、車両に設けられたFMラジオやテレビ放送の電波に影響を及ぼし、車両内外の通信機器にも影響を及ぼす可能性がある。
本例の駆動システムは、上記のとおり、サージ電圧を抑制することができるため、駆動システムを車両に適用した場合には、EMIノイズの発生を防ぐことができる。また、本例は、インバータの変換効率を高めることもでき、制御応答性を高めることができ、システムの小型化を実現することができる。
また、本例の駆動システムは、スイッチング素子Q1〜Q6のゲート電圧を制御することで、インバータ2からの出力電圧波形を調整する機能を設けることできる。そして、本例の駆動システムを車両に搭載した場合には、誘導性負荷であるモータ3等の回転体の回転子に対して、車両が必要とするトルクを発生させる際に、サージ電圧を抑制したり、EMIノイズを低減したりすることができる。
なお、本例の変形例として、ゲート電荷量測定部313は、ゲート電流検出部316の代わりに、電圧検出部319の検出電圧に基づいて、ゲート電荷量を測定してもよい。図6に、本発明の変形例に係る半導体装置のハイサイドゲート制御回路31の回路図を示す。
図6に示すように、変形例に係るハイサイドゲート制御回路31は、電圧検出部319及び抵抗R3を有している。抵抗R3は、抵抗R11、R12及びダイオードD11、D12の並列回路と、スイッチング素子Q1のゲート端子との間に接続されている。そして、電圧検出部319は、抵抗R3の両端の電圧を検出し、ゲート電荷量測定部313に出力する。
ゲート電荷量測定部313は、電圧検出部319の検出電圧(V
_R3)と、抵抗R3の抵抗値(R
3)から、式(3)を用いて、ゲート電流(Ig)を測定する。
そして、ゲート電荷量測定部313は、式(3)で演算された電流値を積算することで、ゲート電荷量を測定する。
また本例は、スイッチング素子Q1〜Q6にIGBTを用いて、コレクターエミッタ間の電圧を推定するためにゲート電圧フィードバックVGFBを用いたが、MOSFETのドレインーソース間の電圧を推定するためにゲート電圧フィードバックVGFBを用いても同様の効果が得られることは明らかである。図7は、本発明の変形例に係る半導体装置における、制御回路31、上アーム素子21及びコントローラ5のブロック図である。図7において、Gはゲート端子を、SSは検出用ソース端子を、Dはドレイン端子を、Sはソース端子を示している。
図7に示すように、ゲート駆動回路311は、スイッチング素子Q1のゲート端子G及び検出用ソース端子ESに接続されている。ゲート電圧検出部312は、ゲート端子G及び検出用ソース端子ESに接続されている。ゲート電荷量推定部313は、ゲート端子Gに接続されたゲート電流検出部316の電流値に基づいて、ゲートに蓄積される電荷量を測定する。
図2に示す、ゲート電圧(Vg)とゲート電荷量(Qg)の特性は、MOSFETでも同様の特性を示す。そのため、電圧推定部314は、ゲート電圧及びゲート電荷量に基づいて、MOSFETであるスイッチング素子Q1の電極間電圧(ドレイン−ソース間電圧)を推定することができる。これにより、本例は、スイッチング素子Q1にMOSFETを用いても、IGBTに係る本例の制御と同様に、スイッチング素子Q1の過渡状態を検出し、ゲート抵抗を設定することで、サージ電圧を抑制することができる。
図8は、本発明の変形例に係る半導体装置を備えた電力変換装置のブロック図である。また、図1に示すように、本例の半導体装置を、3相など複数の相の出力をもつインバータ回路に適用したが、図8に示す変形例の半導体装置のように、単相のインバータ回路に適用してもよい。。
また、本例の好適な例として、ゲート構造がトレンチ構造であるトランジスタを、本例の半導体装置のスイッチング素子Q1〜Q6に用いるとよい。
ここで、ゲート構造と、Vg−Qgの特性との関係について説明する。インバータ用のパワートランジスタ(スイッチング素子Q1〜Q6)として使われるデバイスは、MOSFETやIGBTなどの酸化膜ゲートを有するトランジスタが挙げられる。そして、式(1)に示すように、ゲート電圧と電荷量特性(Vg−Qg特性)は、帰還容量(Cres)に対して依存性をもっている。そして、パワートランジスタとして縦型デバイスを用いた場合には、帰還容量(Cres)は、ゲート構造によって変化する。
図9に、ゲート構造の違いによるゲート電荷量(Qg)とゲート電圧(Vg)の特性を示す。図9は、スイッチング素子Q1における、ゲート電荷量(Qg)及びゲート電圧(Vg)に対するコレクタエミッタ間電圧(Vce)の関係を説明する。実線はプレーナ構造の特性を、点線はトレンチ構造の特性を示している。
トレンチ構造の帰還容量(Cres)は、一般的にプレーナ構造の帰還容量よりも大きい傾向がある。そのため、ゲート電圧が同一電圧であって、例えば、電極間電圧(Vce)が100Vから300Vに変化した場合に、トレンチ構造のゲート電荷の変化量(ΔQg1)は、プレーナ構造のゲート電荷の変化量(ΔQg2)より大きくなる。
そのため、本例では、ゲート構造がトレンチ構造であるトランジスタを、スイッチング素子Q1〜Q6に使用することで、ゲート電圧及びゲート電荷量に対して、電極間電圧(Vce)の変化量を大きくすることできるため、当該電極間電圧(Vce)の推定精度を高めることも可能である。
上記のゲート電圧検出部312が本発明の「ゲート電圧検出手段」に相当し、ゲート電荷量測定部313が「ゲート電荷量測定部」に、ゲート抵抗設定回路315が本発明の「ゲートインピーダンス設定手段」に、電圧推定部314が「電圧推定手段」に、ハイサイドゲート制御回路31が「第1ゲート制御回路」に、ローサイドゲート制御回路32が「第2ゲート制御回路」に、コントローラ5が「制御手段」相当する。
《第2実施形態》
本発明の他の実施形態に係る半導体装置を備えた電力変換装置について説明する。本例では、本例では上述した第1実施形態に対して、コントローラ5の制御の一部が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであるため、その記載を適宜、援用する。
コントローラ5により一定の周期でPWM制御を行った場合に、ステップ上のトルク指令に基づいてインバータ2を制御すると、モータ3、平滑コンデンサ27及びバッテリ1の回路定数等によって、電源線P、N間の電圧(インバータ入力電圧)が低下し、電流に脈動が生じる場合がある。
そのため本例では、ゲート電圧及びゲート電荷に基づく、スイッチング素子Q1〜Q6の電極間電圧の推定制御を用いた上で、インバータ入力電圧の低下及び電流の脈動を抑制している。以下、具体的な本例の制御について説明する。
ハイサイドゲート制御回路31は、ゲート電圧検出部312、ゲート電荷用測定部313及び電圧推定部314を用いて、コントローラ5によるPWM制御の制御周期よりも短い周期で、スイッチング素子Q1〜Q6の電極間電圧を推定している。
そして、例えばU相について、スイッチング素子Q1をターンオンさせる場合には、スイッチング素子Q2はオフ状態である。そのため、スイッチング素子Q1の電極間電圧の変化と、インバータ2の入力電圧の変化には相関性がある。
コントローラ5は、トルク指令値等に基づき、スイッチング動作を行うための電流指令値を演算し、当該電流指令値に基づいてスイッチング信号を生成して、駆動回路30に送信する。ハイサイドゲート制御回路31は、当該スイッチング信号に基づき、スイッチング素子Q1〜Q6をターンオン又はターンオフさせる。その際、ハイサイドゲート制御回路31は、ゲート電圧及びゲート電荷量に基づいて、スイッチング素子Q1の電極間電圧を推定する。そして、推定された電極間電圧の変化量が、所定の判定閾値より高い場合には、ハイサイドゲート制御回路31は、電極間電圧を変化したこと示す信号を、コントローラ5に送信する。すなわち、駆動回路30は、上位制御コントローラであるコントローラ5と、信号の送受信を行っている。
コントローラ5は、ハイサイドゲート制御回路31から、電極間電圧が変化した旨の信号を受信すると、電圧の変化量に応じて、インバータ2の入力電圧の変化を抑制するよう、電流指令値を再演算する。そして、コントローラ5は、次のPWM制御周期では、変更後の電流指令値に基づいて、スイッチング信号を生成し、駆動回路30に出力する。これにより、電圧推定部314で推定されて電極間電圧に基づいて、インバータ2の入力電圧の低下を抑制することができる。
次に、図10を用いて、駆動回路30及びコントローラ5の制御について説明する。図10は、電流指令値(Iq*)、インバータ入力電圧(Vdc)及びインバータ電流(Iq)の特性を示す。横軸は時間を示す。点線のグラフaは、変更前の電流指令値であり、実線のグラフbは変更後の電流指令値を示す。また、点線のグラフc、eは、比較例のインバータ入力電圧及びインバータ電流をそれぞれ示し、実線のグラフd、fは、本発明のインバータ入力電圧及びインバータ電流をそれぞれ示す。なお、比較例では、スイッチング素子Q1〜Q6の電極間電圧の推定及び推定された電圧に基づく電流指令値の制御を行っていない。
時刻t1の時点で、コントローラ5は、ステップ状の電流指令値でインバータ2を制御し、駆動回路30は、コントローラ5のゲート制御指令に基づき、スイッチング素子Q1〜Q6のスイッチング動作を行う。
時刻t2の時点で、電圧推定部314は、ゲート電圧及びゲート電荷量に基づき、スイッチング素子Q1〜Q6の電極間電圧を推定する。そして、推定された電極間電圧の変化量、あるいは、バッテリ1の電圧に対する当該電極間電圧の電圧差が、インバータ入力電圧の低下を判定するための閾値より大きい場合には、駆動回路30は、インバータ入力電圧の低下を示す信号をコントローラ5に送信する。なお、時刻t1と時刻t2との間の時間は、コントローラ5の制御周期より短い。
時刻t3の時点で、コントローラ5は駆動回路30の信号に基づき、時刻t1で設定した電流指令値と、異なる電流指令値に変更する。そして、電流指令値の変更に伴い、時刻t3以降、インバータ入力電圧の低下は抑制され、また、インバータ電流の上昇も抑制される。なお、時刻t1と時刻t3との間の時間は、コントローラ5の制御周期に相当する。
一方、比較例では、時刻t2の時点で上記のような制御を行っていないため、電流指令値は変更されず、またインバータの入力電圧はさらに低下し、インバータ電流も脈動している。
上記のように、本例は、電圧推定部314で推定されたスイッチング素子Q1〜Q6の電極間電圧に基づいて、電流指令値を異なる電流指令値に変更する。これにより、インバータ2の直流電圧の過渡的な変化を追うことができるため、インバータ入力電圧の変動を抑制することができる。