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JP6111632B2 - セルロース系増粘剤 - Google Patents

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本発明は、セルロース系増粘剤に関する。
増粘剤は、食品、化粧品、水系塗料、スプレー、農薬、芳香剤など様々な分野で利用されていおり、要求される品質により、ジュランガム,カラギーナン,寒天、ザンタンガム、メチルセルロース,ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース,カチオン化セルロース、ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,ポリアクリル酸ソーダ,カルボキシビニルポリマー,ポリエチレングリコール、スメクタイト等が使用されている。
また、特許文献1には、最大繊維径が1000nm以下で、数平均繊維径が2〜150nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性され、上記アルデヒド基を0.08〜0.3mmol/gおよび上記カルボキシル基を0.6〜2.0mmol/gであるセルロース系の増粘剤が開示されている。この増粘剤は、吹き付けられた表面の液滴が良好に定着するとともに、液滴が垂直面や傾斜面での液だれが発生しないといった従来の増粘剤にない特性を有している。
特開2008−197849
しかしながら、特許文献1に記載のセルロース系増粘剤は、優れた定着性(液滴と比着体の密着性)、液だれ性(液滴の垂直面や傾斜面での流動性)が認められるものの、高温下において減粘しやすいといった耐熱性の問題、乾燥させたセルロース系増粘剤が再分散しにくいといった再分散性の問題を有している。
そこで、本発明は、優れた定着性、液だれ性を有するとともに、高温下において減粘しにくい耐熱性、乾燥させたセルロース系増粘剤が分散しやすい再分散性を有したセルロース系増粘剤を提供することを目的する。
本発明は、以下の[1]を提供するものである。
〔1〕最大繊維径が1000nm以下、且つ数平均繊維径が2〜150nmのセルロース系増粘剤であって、該セルロース系増粘剤のグルコース単位当たりのカチオン置換度が0.01〜0.40、且つセルロース結晶化度が80%以上であることを特徴とするセルロース系増粘剤。
本発明によれば、、本発明は、優れた定着性、液だれ性を有するとともに、高温下において減粘しにくい耐熱性、乾燥させたセルロース系増粘剤が分散しやすい再分散性をを有したセルロース系増粘剤を提供することができる。
本発明は、最大繊維径が1000nm以下、且つ数平均繊維径が2〜150nmのセルロース系増粘剤であって、該セルロース系増粘剤のグルコース単位当たりのカチオン置換度が0.01〜0.40、且つセルロース結晶化度が80%以上であることを特徴とするセルロース系増粘剤に関する。
本発明のセルロース系増粘剤は、セルロースが結晶性を保持した状態で、グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.01〜0.40になるようにカチオン化したセルロースを解繊することで得ることができる。
本発明のセルロース系増粘剤が優れた効果を発現する理由は不明であるが、繊維形態を維持していること、カチオン基で化学修飾されていることが大きく影響していると考えられる。
(セルロース原料)
本発明において、セルロース原料としては、晒又は未晒木材パルプ、精製リンター、酢酸菌等の微生物によって生産されるセルロース等の天然セルロースや、セルロースを銅アンモニア溶液、モルホリン誘導体等、何らかの溶媒に溶解し、改めて紡糸された再生セルロース、及び上記セルロース系素材の加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル処理等によって解重合処理した微細セルロース又は機械的に処理した微細セルロースが例示される。
(カチオン化)
本発明において、セルロース原料のカチオン化は公知の方法を用いて行うことができ、特に限定されるものではないが、その一例として、セルロース原料にグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムハイドライト又はそのハロヒドリン型などのカチオン化剤と触媒である水酸化アルカリ金属(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を水及び/又は炭素数1〜4のアルコールの存在下で反応させることによって、カチオン変性されたセルロースを得ることができる。なお、この方法において、得られるカチオン変性されたセルロースのグルコース単位当たりのカチオン置換度は、反応させるカチオン化剤の添加量、水及び/又は炭素数1〜4のアルコールの組成比率をコントロールすることによって、調整することができる。
本発明において、カチオン化されたセルロースのグルコース単位当たりのカチオン置換度が0.01〜0.40であることが好ましい。セルロースにカチオン置換基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発する。このため、カチオン置換基を導入したセルロースは容易にナノ解繊することができる。なお、グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.01より小さいと、十分にナノ解繊することができない。一方、グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.40より大きいと、膨潤あるいは溶解するため、繊維形態を維持できなくなり、ナノファイバーとして得られなくなる場合がある。
(セルロースの結晶性)
本発明のセルロース系増粘剤は、結晶性を有していることが重要である。結晶性を有することで、セルロース系増粘剤間で3次元のネットワーク構造が形成される。その結果、せん断速度が低いスタテックな条件でこれまでの増粘剤では考えられない高粘性を示し、優れた定着性、液だれ性を発揮する。一方、結晶性を有していない水溶性であるカルボキシメチルセルロース及びその塩などのセルロース系増粘剤は、その増粘剤間のネットワーク構造を形成することができないため、優れた定着性、液だれ性を示さないと考えられる。なお、セルロース系増粘剤の結晶性を示す結晶型はどのような形態でも構わないが、セルロース系増粘剤の結晶I型、II型の合計が80%であることが好ましい。
(解繊)
本発明において、上記のカチオン化したセルロース原料を最大繊維径が1000nm以下、且つ数平均繊維径が2〜150nmになるように解繊することが重要である。
解繊する方法はとくに限定されないが、取扱い容易性から、上記のカチオン化したセルロース原料の水分散体を用いることが好ましい。
解繊する装置は特に限定されないが、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの装置を用いて前記水分散体に強力なせん断力を印加することが好ましい。特に、効率よく解繊するには、前記水分散体に50MPa以上の圧力を印加し、かつ強力なせん断力を印加できる湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。前記圧力は、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。また、高圧ホモジナイザーでの解繊・分散処理に先立って、必要に応じて、高速せん断ミキサーなどの公知の混合、攪拌、乳化、分散装置を用いて、上記のカチオン化したセルロース原料に予備処理を施すことも可能である。
(乾燥)
本発明のセルロース系増粘剤は、解繊された分散液のままで使用することも可能であるが、必要に応じて乾燥し、また水に再分散して使用することもできる。乾燥方法は何ら限定するものではないが、例えば凍結乾燥法、噴霧乾燥法、棚段式乾燥法、ドラム乾燥法、ベルト乾燥法、ガラス板等に薄く伸展し乾燥する方法、流動床乾燥法、マイクロウェーブ乾燥法、起熱ファン式減圧乾燥法などが既知の方法が使用できる。乾燥後は必要に応じて、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等で粉砕して使用しても良い。また、水への再分散の方法も既知の分散装置を使用することができる。
以下、本発明の実施の形態を実施例により説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。また、本発明にかかる物質の諸物性の評価は以下の方法で測定した。
<グルコース単位当たりのカチオン置換度の測定方法>
カチオン基の置換度は、試料(カチオン変性されたセルロース)を乾燥させた後に、全窒素分析計TN−10(三菱化学)で窒素含有量を測定し、次式により算出した。ここで言う置換度とは、無水グルコース単位1モル当たりの置換基のモル数の平均値を表している。
カチオン置換度=(162×N)/(1−151.6×N)
N:窒素含有量
<結晶化度の測定>
セルロース結晶化度は、広角X線回折法による測定で得られたグラフの回折角2θのピークにより算出した。手順は次の通りである。
まずセルロースを液体窒素で凍結させ、これを圧縮し、錠剤ペレットを作成した。
その後、このサンプルを用いてX線回折測定装置(LabX XRD−6000、島津製作所製)により測定した。得られたグラフを、グラフ解析ソフトPeakFit(Hulinks社製)によりピーク分離し、その面積比から結晶I型とII型を算出した。この時、ピーク分離のために、下記の回折角度を基準として結晶I型とII型を判別した。
結晶I型:2θ=14.7°、16.5°、22.5°
結晶II型:2θ=12.3°、20.2°、21.9°
〔最大繊維径、数平均繊維径〕
セルロース系増粘剤の最大繊維径および数平均繊維径を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、ランダムに選んだ200本の繊維の最大繊維径および数平均繊維径を測定した。
<B型粘度の測定>
得られたセルロース系増粘剤(固形分1%)を25℃で24時間放置した後、BH型粘度計(東機産業社製、BH型粘度計)を用いて回転数30rpm(3分)で粘度を測定した。
<耐熱性の評価>
得られたセルロース分散液を80℃で5時間、保持した。その後、分散液を25℃まで放冷し、上記方法でB粘度を測定した。
[レオメーターの測定]
得られたセルロース系増粘剤(固形分1%)を30℃とし、粘弾性レオメーターMCR301(アントンパール社製)により、ずり速度が0.01(1/s)の時の粘度を測定した。この時、パラレル型のプレート(PP25)を用い、測定部のギャップを1ミリとした。
<液たれ性の評価>
得られたセルロース分散液を0.1%濃度とし、スプレー容器にいれ、垂直面にスプレーし、垂直面に付着した液体のダレの程度を、下記の判定基準に従い、目視判定した。
○:液ダレがない。
△:僅かに液ダレがある。
×:明らかに液ダレがある。
(実施例1)
パルプを攪拌することができるパルパーに、パルプ(NBKP、日本製紙(株)製)を乾燥重量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥重量で24g加え、パルプ固形濃度が15%になるように水を加えた。その後、30℃で30分攪拌した後に70℃まで昇温し、カチオン化剤として3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを200g(有効成分換算)添加した。1時間反応した後に、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカチオン置換度0.05のカチオン変性されたセルロースを得た。その後、カチオン変性したパルプを固形濃度1%とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、140MPaの圧力で2回処理し、最大繊維系が500nm、数平均繊維径が50nm、セルロース結晶I型85%、セルロース系増粘剤を得た。
(実施例2)
実施例1で得られたセルロース系増粘剤の分散液を105℃で送風乾燥し絶乾状態にした後に、固形濃度を1%となるように水に再分散させた。再分散させたセルロース系増粘剤は、最大繊維系が500nm、数平均繊維径が100nm、セルロース結晶I型85%であった。
(比較例1)
投入するアルカリ量を240g、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを2000gとしカチオン化置換度0.5のカチオン化変性セルロースを得ること以外は、実施例1と同様にセルロース系増粘剤を得たが、得られたセルロース系増粘剤は、セルロース結晶性を保っておらず溶解していた。
(比較例2)
パルプ(NBKP、日本製紙(株)製)を使用し、 本パルプ原料5g(絶乾)を、TEMPO(Sigma Aldrich社)78mg(0.5mmol)と臭化ナトリウム755mg(7.4mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に2M次亜塩素酸ナトリウム水溶液16ml添加した後、0.5N塩酸水溶液でpHを10.3に調整し、酸化反応を開始した(酸化処理)。反応中は系内のpHは低下するが、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。2時間反応させた後、ガラスフィルターで濾過し、十分に水洗することで酸化セルロースを得た。得られた酸化セルロースのカルボキシル基量を下記のように測定したところ、1.60mmol/gであった。1%(w/v)の酸化セルローススラリー高圧ホモジナイザーにより20℃、140MPaの圧力で2回処理し、セルロース系増粘剤の分散液が得られた。得られたセルロース系増粘剤の最大繊維径100nm、数平均繊維径4nm、セルロース結晶I型90%であった。
その後、得られたセルロース系増粘剤の分散液を105℃で送風乾燥し絶乾状態にした後に、固形濃度を1%となるように水に再分散させたが、再分散させたセルロース系増粘剤は繊維が強く凝集し、最大繊維系が3000nm、数平均繊維径が1000nm、セルロース結晶I型90%であった。
<カルボキシルキ量の測定>
酸化セルロースの0.5質量%スラリーを60ml調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出した。
カルボキシル基量〔mmol/gパルプ〕= a〔ml〕× 0.05/酸化セルロース質量〔g〕
実施例1〜2、比較例1〜2の粘度、液だれ性、耐熱性の評価結果を表1に示す。
実施例1のセルロース系増粘剤は、低ずり速度における粘性が高く、液だれ性が良好であった。また、80℃で保温後においても粘度の低下が見られないことから優れた耐熱性を有している。さらに、、水への再分散性が良好であり、再分散させたセルロース系増粘剤においても優れた液だれ性が認めらるとともに、80℃で保温後においても粘度の低下が見られないことから優れた耐熱性を有している。
一方、カチオン置換度が0.5、結晶性を有していない比較例1のセルロース系増粘剤では、液だれ性が不良である。また、TEMPO酸化したセルロース系増粘剤は80℃で保温後において大幅な粘度の低下が見らるとともに、再分散性が大きく低下する結果となった。
Figure 0006111632

Claims (2)

  1. 最大繊維径が1000nm以下、且つ数平均繊維径が2〜150nmのセルロース系増粘剤であって、該セルロース系増粘剤のグルコース単位当たりのカチオン置換度が0.01〜0.40、且つセルロース結晶化度が80%以上であることを特徴とするセルロース系増粘剤。
  2. 請求項1に記載のセルロース系増粘剤の乾燥物。
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