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JP5944564B1 - ゲル状組成物の製法およびそれにより得られたゲル状組成物 - Google Patents

ゲル状組成物の製法およびそれにより得られたゲル状組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】分散性に優れ、粘性に優れる有機溶剤系のゲル状組成物を、低コストで簡略的に得ることができる、ゲル状組成物の製法およびそれにより得られたゲル状組成物を提供する。【解決手段】セルロースI型結晶構造を有するセルロースを水に分散させた後、そのセルロースの水酸基を、カルボキシル基を有する置換基に変換する工程と、上記セルロースの分散媒である水を有機溶剤に置換する工程と、上記分散媒置換後のセルロースを疎水化する工程と、上記疎水化後のセルロースをナノ解繊し、有機溶剤中にセルロースナノファイバーが分散されたゲル状組成物を得る工程と、を備えたゲル状組成物の製法において、上記セルロースの疎水化を、特定のポリエーテルアミンによる中和反応により行う。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロース繊維を用いてなるゲル状組成物の製法およびそれにより得られたゲル状組成物に関するものである。
従来、増粘剤やゲル化剤としては、ジュランガム,カラギーナン,寒天,ザンタンガム等の天然高分子化合物や、メチルセルロース,ヒドロキシメチルセルロース等の非イオン性の水溶性セルロース、カルボキシメチルセルロース,カチオン化セルロース等のイオン性セルロース、ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,ポリアクリル酸ソーダ,カルボキシビニルポリマー,ポリエチレングリコール等の合成高分子、スメクタイト等の水膨潤性粘土鉱物等が使用されてきた。また、近年、天然に多量に存在するバイオマスであるセルロースをナノ粒子になるまで微細化したセルロースナノファイバーを、ゲル化剤として使用することも検討されている。
ところで、上記セルロースナノファイバーは、通常、水分散体として供給されるものであることから、水中に分散させて増粘付与に供するのが一般的であるが、近年、上記セルロースナノファイバーを、有機溶剤中に分散させ、増粘付与に供するニーズがある。しかしながら、有機溶剤への増粘付与に上記セルロースナノファイバーを使用するのであれば、上記セルロースナノファイバーの分散媒である水を完全に除去し、有機溶剤に置換する必要がある。また、有機溶剤中では、上記セルロースの水酸基同士の水素結合により、セルロースナノファイバーの凝集が生じ、増粘効果を示さないという課題もある。
そのようななか、セルロースI型結晶構造を有するセルロースを酸化させて、セルロースのC6位の水酸基をカルボキシル基にし、さらに、そのカルボキシル基に対し、アミンを用いてアミド結合させたり、アンモニウムヒドロキシドを用いて中和反応させたりして、セルロースに疎水基を導入し、有機溶剤中での分散性を高める手法が検討されている(例えば、特許文献1〜3等参照)。
特開2011−127067号公報 特開2013−216998号公報 WO2013/077354号公報
しかしながら、アミンによるアミド結合の場合、アミンとカルボン酸によるアミド結合反応に際し触媒が必要となるため、コストがかかる。また、アンモニウムヒドロキシドを用いた中和反応の場合、カルボン酸とアンモニウムヒドロキシドの反応により、水が生成し、完全な有機溶剤系にはならないという問題がある。
また、上記特許文献3では、アミンを用いた中和によって対処しているが、セルロースを水中でナノ分散後に有機溶剤に置換する必要があったり、セルロースの酸性化工程が複数回に亘ったりするため、製造工程が煩雑で時間がかかるといった問題や、有機溶剤を大量に必要とする等の問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、分散性に優れ、粘性に優れる有機溶剤系のゲル状組成物を、低コストで簡略的に得ることができる、ゲル状組成物の製法およびそれにより得られたゲル状組成物の提供をその目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は、セルロースI型結晶構造を有するセルロースを水に分散させた後、そのセルロースの水酸基を、カルボキシル基を有する置換基に変換する工程と、還元剤による上記セルロースの還元工程と、上記セルロースの分散媒である水を有機溶剤に置換する工程と、上記分散媒置換後のセルロースを疎水化する工程と、上記疎水化後のセルロースをナノ解繊し、有機溶剤中にセルロースナノファイバーが分散されたゲル状組成物を得る工程と、を備えたゲル状組成物の製法において、上記セルロースの疎水化を、下記の一般式(1)に示されるポリエーテルアミンによる中和反応により行うゲル状組成物の製法を、第一の要旨とする。
Figure 0005944564
また、本発明は、下記の(A)および(B)成分を含有するゲル状組成物を、第二の要旨とする。
(A)最大繊維径が1000nm以下で、数平均繊維径が2〜150nmのセルロースナノファイバーであって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位が選択的に水酸基,アルデヒド基,ケトン基,カルボキシル基のいずれかとなっており、かつ上記カルボキシル基の含量が0.6〜2.5mmol/g、上記アルデヒド基とケトン基の合計含量が、セミカルバジド法による測定において0.3mmol/g以下であるとともに、上記カルボキシル基が下記の一般式(1)に示されるポリエーテルアミンのアミノ基とイオン結合されてなる、セルロースナノファイバー。
Figure 0005944564
(B)有機溶剤。
すなわち、本発明者らは、分散性に優れ、粘性に優れる有機溶剤系のゲル状組成物を、低コストで簡略的に調製するため、鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、本発明者らは、セルロースI型結晶構造を有するセルロースの水酸基を、酸化等によりカルボキシル基を有する置換基(カルボキシル基、カルボキシル塩基、カルボキシルアルキル基等)に変換させた後、その置換基に対し、上記一般式(1)に示される特定のポリエーテルアミンを用いて中和反応を行い、疎水基を導入する(疎水化する)ことを想起した。このようにしたところ、有機溶剤への分散性や増粘効果を高めることができるとともに、上記中和反応に際し、触媒を必要とすることもなく、さらに水も生成することがないことから、安価で完全な有機溶剤系にすることができることを突き止めた。この特性を踏まえ、本発明者らは、セルロースの水酸基を、カルボキシル基を有する置換基に変換後、還元剤による上記セルロースの還元工程を経て、その分散媒である水を有機溶剤に置換し、ついで、広範な有機溶剤への分散性を向上させ、増粘効果を発現させるために、上記特定のポリエーテルアミンを用いてセルロースの中和反応を行うことで疎水基を導入し、最後に、上記中和反応後のセルロースを有機溶剤中でナノ解繊するといった工程を経ることにより、課題であった、有機溶剤への良好な増粘付与、製造時間の短縮、有機溶剤の使用量の削減等に成功した。
このように、本発明のゲル状組成物の製法は、セルロースI型結晶構造を有するセルロースを水に分散させた後、そのセルロースの水酸基を、カルボキシル基を有する置換基に変換する工程と、還元剤による上記セルロースの還元工程と、上記セルロースの分散媒である水を有機溶剤に置換する工程と、上記分散媒置換後のセルロースを疎水化する工程と、上記疎水化後のセルロースをナノ解繊し、有機溶剤中にセルロースナノファイバーが分散されたゲル状組成物を得る工程とを備えており、上記セルロースの疎水化を、特定のポリエーテルアミンによる中和反応により行うものである。したがって、有機溶剤への分散性に優れ、粘性に優れる、有機溶剤系のゲル状組成物を、従来の製法よりも製造時間を短縮して簡略的に得ることができる。また、上記製法は、触媒も必要ではなく、必要以上の有機溶剤も要しないことから、低コストであり、さらに、完全な有機溶剤系にすることも可能である。さらに、上記製法は、広範な有機溶剤を使用することが可能である。
そして、この製法により得られたゲル状組成物のなかでも、特に、そのゲル状組成物に含有のセルロースナノファイバーが、最大繊維径が1000nm以下で、数平均繊維径が2〜150nmであって、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位が選択的に水酸基,アルデヒド基,ケトン基,カルボキシル基のいずれかとなっており、かつ上記カルボキシル基の含量が0.6〜2.5mmol/g、セミカルバジド法による測定での上記アルデヒド基とケトン基の合計含量が0.3mmol/g以下であるとともに、そのカルボキシル基が上記特定のポリエーテルアミンのアミノ基とイオン結合されてなるものであるとき、より有機溶剤への分散性に優れ、粘性に優れたものとなる。そして、上記ゲル状組成物においては、先に述べたように、完全な有機溶剤系にすることができ、さらに広範な有機溶剤を使用した場合であっても、上記セルロースナノファイバーの分散安定性が高いことから、高分子材料との複合化にも好適に用いることができる。そして、その増粘性の高さから、塗料・インキ分野、他にも切削油用途や接着剤用途等において、優れた機能を発揮することができる。
つぎに、本発明を実施するための形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のゲル状組成物の製法は、先に述べたように、セルロースI型結晶構造を有するセルロースを水に分散させた後、そのセルロースの水酸基を、カルボキシル基を有する置換基に変換する工程と、還元剤による上記セルロースの還元工程と、上記セルロースの分散媒である水を有機溶剤に置換する工程と、上記分散媒置換後のセルロースを疎水化する工程と、上記疎水化後のセルロースをナノ解繊し、有機溶剤中にセルロースナノファイバーが分散されたゲル状組成物を得る工程と、を備えている。そして、上記セルロースの疎水化を、下記の一般式(1)に示されるポリエーテルアミンによる中和反応により行うことを、その製法の特徴とする。上記のように、本発明のゲル状組成物の製法では、上記カルボキシル基を有する置換基に変換する工程の後、還元処理を行う。以下、各工程を順に説明する。
Figure 0005944564
〔セルロースの水酸基を、カルボキシル基を有する置換基に変換する工程〕
この工程では、セルロースI型結晶構造を有するセルロースの水酸基を、酸化等によりカルボキシル基を有する置換基(カルボキシル基、カルボキシル塩基、カルボキシルアルキル基等)に変換させる。上記セルロース繊維表面の水酸基がカルボキシル基を有する置換基に変換されたセルロースとしては、例えば、酸化セルロース、カルボキシメチルセルロース、多価カルボキシメチルセルロース、長鎖カルボキシセルロース等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、繊維表面の水酸基の選択性に優れており、反応条件も穏やかであることから、酸化セルロースが好ましい。
例えば酸化により上記工程を行う場合、その酸化反応工程は、セルロースI型結晶構造を有するセルロースと、N−オキシル化合物とを水(分散媒体)に分散させた後、共酸化剤を添加して、反応を開始する。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10〜11に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なす。ここで、共酸化剤とは、直接的にセルロース水酸基を酸化する物質ではなく、酸化触媒として用いられるN−オキシル化合物を酸化する物質のことである。
セルロースI型結晶構造を有するセルロースとしては、通常、天然セルロースが用いられる。ここで、天然セルロースとは、植物,動物,バクテリア産生ゲル等のセルロースの生合成系から単離した精製セルロースを意味する。より具体的には、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター,コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ,バガスパルプ等の非木材系パルプ、バクテリアセルロース(BC)、ホヤから単離されるセルロース、海草から単離されるセルロース等をあげることができる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ、麦わらパルプ,バガスパルプ等の非木材系パルプが好ましい。上記天然セルロースは、叩解等の表面積を高める処理を施すと、反応効率を高めることができ、生産性を高めることができるため好ましい。また、上記天然セルロースとして、単離、精製の後、乾燥させない(ネバードライ)で保存していたものを使用すると、ミクロフィブリルの集束体が膨潤しやすい状態であるため、反応効率を高め、微細化処理後の数平均繊維径を小さくすることができるため好ましい。
上記に示すように、セルロースがI型結晶構造を有することは、例えば、広角X線回折像測定により得られる回折プロファイルにおいて、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
上記酸化反応におけるセルロースの分散媒体は水であり、反応水溶液中のセルロース濃度は、試薬(セルロース)の充分な拡散が可能な濃度であれば任意である。通常は、反応水溶液の重量に対して約5%以下であるが、機械的撹拌力の強い装置を使用することにより反応濃度を上げることができる。
また、上記N−オキシル化合物としては、例えば、一般に酸化触媒として用いられるニトロキシラジカルを有する化合物があげられる。上記N−オキシル化合物は、水溶性の化合物が好ましく、なかでもピペリジンニトロキシオキシラジカルが好ましく、特に2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)または4−アセトアミド−TEMPOが好ましい。上記N−オキシル化合物の添加は、触媒量で充分であり、好ましくは0.1〜4mmol/l、さらに好ましくは0.2〜2mmol/lの範囲で反応水溶液に添加する。
上記共酸化剤としては、例えば、次亜ハロゲン酸またはその塩、亜ハロゲン酸またはその塩、過ハロゲン酸またはその塩、過酸化水素、過有機酸等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム等のアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましい。そして、上記次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合は、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属の存在下で反応を進めることが、反応速度の点において好ましい。上記臭化アルカリ金属の添加量は、上記N−オキシル化合物に対して約1〜40倍モル量、好ましくは約10〜20倍モル量である。
上記反応水溶液のpHは約8〜11の範囲で維持されることが好ましい。水溶液の温度は約4〜40℃において任意であるが、反応は室温(25℃)で行うことが可能であり、特に温度の制御は必要としない。
目的とするカルボキシル基量等を得るために、酸化の程度を共酸化剤の添加量と反応時間により制御する。通常、反応時間は約5〜120分、長くとも240分以内に完了する。
〔還元工程〕
本発明の製法では、増粘性,分散安定性等により優れたゲル状組成物を得る観点から、上記酸化等の反応後、更にセルロースを還元反応させる。これにより、セルロースのアルデヒド基およびケトン基の一部ないし全部は還元され、水酸基に戻る。なお、セルロースのカルボキシル基は還元されない。そして、上記還元により、上記セルロースの、セミカルバジド法による測定でのアルデヒド基とケトン基の合計含量を、0.3mmol/g以下とし、好ましくは0〜0.1mmol/gの範囲とし、さらに好ましくは実質的に0mmol/gとする。これにより、単に酸化変性させたものよりも、増粘性、分散安定性が増し、特に気温等に左右されず長期にわたり分散安定性に優れるようになる。また、上記のように、セミカルバジド法による測定でのアルデヒド基とケトン基の合計含量が0.3mmol/g以下であるセルロースを、本発明のゲル状組成物に用いると、長期保存による凝集物の発生をより抑えることができる。なお、アルデヒド基とケトン基の合計含量が0.3mmol/gを超えると、長期保存による凝集物の発生や、ゲル状組成物の粘度が時間経過と共に著しく低下するといったおそれがある。なお、上記還元反応に使用する還元剤としては、一般的なものを使用することが可能であるが、好ましくは、LiBH、NaBHCN、NaBHがあげられる。なかでも、NaBH(水素化ホウ素ナトリウム)は、コスト及び利用可能性という観点から特に好ましい。
カルボキシル基を有する置換基に変換されたセルロースを基準として、還元剤の量は、0.1〜20重量%の範囲が好ましく、特に好ましくは3〜10重量%の範囲内である。反応条件は室温または室温より若干高い温度で、10分〜10時間、好ましくは30分〜2時間行なわれる。
ところで、セミカルバジド法による、アルデヒド基とケトン基との合計含量の測定は、例えば、つぎのようにして行われる。すなわち、まず、乾燥させた試料に、リン酸緩衝液によりpH=5に調整したセミカルバジド塩酸塩3g/l水溶液を正確に50ml加え、密栓し、二日間振とうする。ついで、この溶液10mlを正確に100mlビーカーに採取し、5N硫酸を25ml、0.05Nヨウ素酸カリウム水溶液5mlを加え、10分間撹拌する。その後、5%ヨウ化カリウム水溶液10mlを加えて、直ちに自動滴定装置を用いて、0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液にて滴定し、その滴定量等から、下記の式(i)に従い、試料中のカルボニル基量(アルデヒド基とケトン基との合計含量)を求めることができる。なお、セミカルバジドは、アルデヒド基やケトン基と反応しシッフ塩基(イミン)を形成するが、カルボキシル基とは反応しないことから、上記測定により、アルデヒド基とケトン基のみを定量できると考えられる。
Figure 0005944564
なお、上記セルロースは、繊維表面上のセルロース分子中の各グルコースユニットのC6位の水酸基のみが選択的に酸化変性されてカルボキシル基,アルデヒド基およびケトン基のいずれかとなっている。このセルロース繊維表面上のグルコースユニットのC6位の水酸基のみが選択的に酸化されているかどうかは、例えば、13C−NMRチャートにより確認することができる。すなわち、酸化前のセルロースの13C−NMRチャートで確認できるグルコース単位の1級水酸基のC6位に相当する62ppmのピークが、酸化反応後は消失し、代わりにカルボキシル基等に由来するピーク(178ppmのピークはカルボキシル基に由来するピーク)が現れる。このようにして、グルコース単位のC6位水酸基のみがカルボキシル基等に酸化されていることを確認することができる。
また、上記セルロースにおけるアルデヒド基の検出は、例えば、フェーリング試薬により行うこともできる。すなわち、例えば、乾燥させた試料に、フェーリング試薬(酒石酸ナトリウムカリウムと水酸化ナトリウムとの混合溶液と、硫酸銅五水和物水溶液)を加えた後、80℃で1時間加熱したとき、上澄みが青色、セルロース部分が紺色を呈するものは、アルデヒド基は検出されなかったと判断することができ、上澄みが黄色、セルロース部分が赤色を呈するものは、アルデヒド基は検出されたと判断することができる。
〔分散媒置換工程〕
上記の反応終了後、適宜、ろ過と水洗とを繰り返して精製する。そして、遠心分離機等により固液分離を行い、ケーキ状のセルロースを得た後、有機溶剤によるセルロースの洗浄を、必要に応じ繰り返し行い、有機溶剤中にセルロースを分散させ、分散媒の置換を行う。
上記有機溶媒としては、例えば、炭化水素系、芳香族炭化水素系、アルコール系、ハロゲン系、ケトン系、アミド系、カルボン酸系、エーテル系、エステル系、シアノ系、グリコール系、グリコールエーテル系、三級アミン系等の有機溶媒を用いることができる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
〔疎水化工程(中和反応)〕
上記分散媒置換後のセルロースに対し、下記の一般式(1)に示されるポリエーテルアミンにより中和反応を行う。これにより、上記セルロースのカルボキシル基が、下記の一般式(1)に示されるポリエーテルアミンのアミノ基とイオン結合され、セルロースの疎水化が行われるようになる。なお、上記中和反応は、先に述べた有機溶媒中で行われる。
Figure 0005944564
上記一般式(1)中、Rは炭素数1〜20の直鎖あるいは分岐のアルキル基、および/またはアリール基を示し、Rは炭素数2〜4の直鎖あるいは分岐のアルキレン基を示し、nは10以上50以下の整数を示し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示す。そして、上記Rは炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。また、Rは炭素数2のアルキレン基が好ましい。また、nは10以上30以下が好ましい。すなわち、上記一般式(1)に示されるポリエーテルアミンが上記範囲内にあれば、ゲル状組成物の安定性が優れたものとなるからである。
なお、上記ポリエーテルアミンは、市販品では、JEFFAMINE M シリーズ(HUNTSMAN社製)等が用いられる。
〔解繊工程〕
上記中和反応後のセルロースをナノ解繊し、有機溶剤中にセルロースナノファイバーが分散されたゲル状組成物を得る。上記ナノ解繊に使用する分散機としては、例えば、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波分散処理、ビーター、ディスク型レファイナー、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、グラインダー等の強力で叩解能力のある装置を使用することにより、よりナノ粒子状に微細化することが可能となり、より効率的かつ高度なダウンサイジングが可能となる。なお、上記分散機としては、例えば、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサー等を用いても差し支えない。
なお、解繊後は、セルロースの繊維同士がナノレベルで絡み合ってしまうので、溶剤を保持する力が上がり、溶剤ハケが悪くなる。よって、上記解繊後の溶剤置換には時間がかかり、また多量の溶媒を使う必要がある。本発明のゲル状組成物の製法では、上記解繊前に溶剤置換を行っていることから、このような問題を生じなくて済む。
このようにして得られた本発明のゲル状組成物は、有機溶剤系のゲル状組成物であって、有機溶剤中のセルロースナノファイバーが凝集することなく分散されており、粘性に優れている。なかでも、そのゲル状組成物に含有のセルロースナノファイバーが、最大繊維径が1000nm以下で、数平均繊維径が2〜150nmであって、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化変性されてアルデヒド基,ケトン基,カルボキシル基のいずれかとなっており、かつ上記カルボキシル基の含量が0.6〜2.5mmol/gの範囲であるとともに、そのカルボキシル基が上記特定のポリエーテルアミンのアミノ基とアミド結合されてなるものであるとき、より有機溶剤への分散性に優れ、粘性に優れたものとなる。そして、上記ゲル状組成物においては、完全な有機溶剤系にすることができ、さらに広範な有機溶剤を使用した場合であっても、上記セルロースナノファイバーの分散安定性が高いことから、高分子材料との複合化にも好適に用いることができる。そして、その増粘性の高さから、塗料・インキ分野、他にも切削油用途や接着剤用途等において、優れた機能を発揮することができる。
なお、上記セルロースナノファイバーのカルボキシル基の含量は、分散安定性等の観点から、より好ましくは1.0〜2.2mmol/gの範囲である。ここで、上記カルボキシル基量の測定は、以下のような電位差滴定により行うことができる。
〔カルボキシル基量の測定〕
乾燥重量を精秤したセルロース試料から0.5〜1重量%スラリーを60ml調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行う。測定はpHが約11になるまで続ける。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下記の式(ii)に従いカルボキシル基量を求めることができる。
Figure 0005944564
また、上記セルロースナノファイバーは、分散性、増粘性等の観点から、より好ましくは最大繊維径が500nm以下、かつ数平均繊維径が2〜100nmであり、さらに好ましくは最大繊維径が30nm以下、かつ数平均繊維径が2〜10nmである。
ここで、上記最大繊維径および数平均繊維径の解析は、例えば、つぎのようにして行うことができる。すなわち、固形分率で0.05〜0.1重量%のセルロースナノファイバーの水分散体を調製し、その分散体を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察用試料とする。なお、本発明外の大きな繊維径の繊維を含む場合には、ガラス上へキャストした表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。そして、構成する繊維の大きさに応じて5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。その際に、得られた画像内に縦横任意の画像幅の軸を想定し、その軸に対し、20本以上の繊維が交差するよう、試料および観察条件(倍率等)を調節する。そして、この条件を満たす観察画像を得た後、この画像に対し、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交錯する繊維の繊維径を目視で読み取っていく。このようにして、最低3枚の重複しない表面部分の画像を、電子顕微鏡で撮影し、各々2つの軸に交錯する繊維の繊維径の値を読み取る(したがって、最低20本×2×3=120本の繊維径の情報が得られる)。このようにして得られた繊維径のデータにより、最大繊維径および数平均繊維径を算出する。
また、上記セルロースナノファイバーのアスペクト比は、通常50以上であるが、好ましくは100以上、より好ましくは200以上である。すなわち、アスペクト比が小さすぎると、充分な擬塑性、流動性が得られないおそれがあるからである。
上記セルロースナノファイバーのアスペクト比は、例えば以下の方法で測定することができる。すなわち、セルロース繊維を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:10000倍)から、先に述べた方法に従い、セルロース繊維の数平均繊維径、および数平均繊維長を算出し、これらの値を用いて、下記の式(iii)に従い、アスペクト比を算出することができる。
Figure 0005944564
そして、本発明のゲル状組成物における上記セルロースナノファイバーの含有量は、分散性、増粘性等の観点から、ゲル状組成物全体の0.01〜20重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、ゲル状組成物全体の2〜10重量%の範囲である。また、本発明のゲル状組成物の粘度は、有機溶剤の粘度に対し10倍以上であることが好ましい。
つぎに、実施例について比較例等と併せて説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中、「%」とあるのは、特に限定のない限り重量基準を意味する。
まず、参考例,実施例および比較例に先立ち、参考例用,実施例用のセルロース繊維A1〜A6および比較例用のセルロース繊維A’1,A’2を、以下の製造例1〜8に従って調製した。
〔製造例1:セルロース繊維A1(参考例用)の調製〕
針葉樹パルプ2gに、水150ml、臭化ナトリウム0.25g、TEMPO0.025gを加え、充分撹拌して分散させた後、13%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(共酸化剤)を、上記パルプ1.0gに対して次亜塩素酸ナトリウム量が5.2mmol/gとなるように加え、反応を開始した。反応の進行に伴いpHが低下するため、pHを10〜11に保持するように0.5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながら、pHの変化が見られなくなるまで反応させた(反応時間:120分)。反応終了後、0.1N塩酸を添加して中和した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、繊維表面が酸化されたセルロース繊維を得た。つぎに、上記セルロース繊維にエタノールを加えて、ろ過し、エタノール洗浄を繰り返して、上記セルロース繊維に含まれる水をエタノールに置換することにより、セルロース繊維A1を調製した。
〔製造例2:セルロース繊維A2(参考例用)の調製〕
次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、上記パルプ1.0gに対して6.5mmol/gとした以外は、セルロース繊維A1の調製法に準じて、セルロース繊維A2を調製した。
〔製造例3:セルロース繊維A3(参考例用)の調製〕
次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、上記パルプ1.0gに対して12.0mmol/gとした以外は、セルロース繊維A1の調製法に準じて、セルロース繊維A3を調製した。
〔製造例4:セルロース繊維A4(実施例用)の調製〕
セルロース繊維A1の調製法と同様の手法で針葉樹パルプを酸化させた後、遠心分離機で固液分離し、純水を加えて固形分濃度4%に調整した。その後、24%NaOH水溶液にてスラリーのpHを10に調整した。スラリーの温度を30℃として水素化ホウ素ナトリウムをセルロース繊維に対して0.2mmol/g加え、2時間反応させることで還元処理した。反応後、0.1N塩酸を添加して中和した後、ろ過と水洗を繰り返して精製し、セルロース繊維を得た。つぎに、上記セルロース繊維にエタノールを加えてろ過し、エタノール洗浄を繰り返して、上記セルロース繊維に含まれる水をエタノールに置換することにより、セルロース繊維A4を調製した。
〔セルロース繊維A5(実施例用)の調製〕
セルロース繊維A2の調製法と同様の手法で針葉樹パルプを酸化させた後、セルロース繊維A4の調製法と同様の手法で還元、精製、エタノール置換することにより、セルロース繊維A5を調製した。
〔セルロース繊維A6(実施例用)の調製〕
セルロース繊維A3の調製法と同様の手法で針葉樹パルプを酸化させた後、セルロース繊維A4の調製法と同様の手法で還元、精製、エタノール置換することにより、セルロース繊維A6を調製した。
〔セルロース繊維A’1(比較例用)の調製〕
針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)50gをエタノール4950gに分散させ、パルプ濃度1%の分散液を調製した。この分散液をセレンディピターMKCA6−3(増幸産業社製)で30回処理し、セルロース繊維A’1を得た。
〔セルロース繊維A’2(比較例用)の調製〕
原料の針葉樹パルプに替えて再生セルロースを使用するとともに、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の添加量を、再生セルロース1.0gに対して27.0mmol/gとした以外は、セルロース繊維A1の調製法に準じて、セルロース繊維A’2を調製した。
上記のようにして得られたセルロース繊維A1〜A6,A’1,A’2について、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。その結果を、後記の表1に示した。
<結晶構造>
X線回折装置(リガク社製、RINT−Ultima3)を用いて、セルロース繊維の回折プロファイルを測定し、2シータ=14〜17°付近と、2シータ=22〜23°付近の2つの位置に典型的なピークが見られる場合は結晶構造(I型結晶構造)が「あり」と評価し、ピークが見られない場合は「なし」と評価した。
<数平均繊維径、アスペクト比の測定>
セルロース繊維に純水を加えて1%に希釈し、高圧ホモジナイザー(H11、三和エンジニアリング社製)を用いて圧力100MPaで1回処理した。そのときのセルロース繊維の数平均繊維径、および数平均繊維長を、透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子社製JEM−1400)を用いて観察した。すなわち、各セルロース繊維を親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストした後、2%ウラニルアセテートでネガティブ染色したTEM像(倍率:10000倍)から、先に述べた方法に従い、数平均繊維径、および数平均繊維長を算出した。さらに、これらの値を用いてアスペクト比を下記の式(iii)に従い算出した。
Figure 0005944564
<カルボキシル基量の測定>
セルロース繊維0.25gを水に分散させたセルロース水分散体60mlを調製し、0.1Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.05Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、電気伝導度測定を行った。測定はpHが11になるまで続けた。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において、消費された水酸化ナトリウム量(V)から、下記の式(ii)に従いカルボキシル基量を求めた。
Figure 0005944564
<カルボニル基量の測定(セミカルバジド法)>
セルロース繊維を約0.2g精秤し、これに、リン酸緩衝液によりpH=5に調整したセミカルバジド塩酸塩3g/l水溶液を正確に50ml加え、密栓し、二日間振とうした。つぎに、この溶液10mlを正確に100mlビーカーに採取し、5N硫酸25ml、0.05Nヨウ素酸カリウム水溶液5mlを加え、10分間撹拌した。その後、5%ヨウ化カリウム水溶液10mlを加え、直ちに自動滴定装置を用いて、0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液にて滴定し、その滴定量等から、下記の式(i)に従い、試料中のカルボニル基量(アルデヒド基とケトン基との合計含量)を求めた。
Figure 0005944564
<アルデヒド基の検出>
セルロース繊維を0.4g精秤し、日本薬局方に従って調製したフェーリング試薬(酒石酸ナトリウムカリウムと水酸化ナトリウムとの混合溶液5mlと、硫酸銅五水和物水溶液5ml)を加えた後、80℃で1時間加熱した。そして、上澄みが青色、セルロース繊維部分が紺色を呈するものはアルデヒド基が検出されなかったと判断し、「なし」と評価した。また、上澄みが黄色、セルロース繊維部分が赤色を呈するものは、アルデヒド基が検出されたと判断し、「あり」と評価した。
Figure 0005944564
上記のように、セルロース繊維A’1は、繊維表面の水酸基が酸化されておらず、セルロース繊維A’2は、セルロースI型結晶構造を有していない。なお、上記セルロース繊維A1〜A6に関し、セルロース繊維表面上のグルコースユニットのC6位の水酸基のみが選択的にカルボキシル基等に酸化されているかどうかについて、13C−NMRチャートで確認した結果、酸化前のセルロースの13C−NMRチャートで確認できるグルコース単位の1級水酸基のC6位に相当する62ppmのピークが、酸化反応後は消失し、代わりに178ppmにカルボキシル基に由来するピークが現れていた。このことから、セルロース繊維A1〜A6は、いずれもグルコース単位のC6位水酸基のみがカルボキシル基等に酸化されていることが確認された。
参考例1〕
上記セルロース繊維A1に、エタノールと、上記セルロース繊維A1のカルボキシル基量と等量のポリエーテルアミン(JEFFAMINE M−2070、HUNTSMAN社製)とを加えて、2%に希釈し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理した。これを、更にエタノールで希釈(ゲル状組成物全量の0.75%がセルロース繊維A1となるよう希釈)し、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)により8000rpmで10分間撹拌することにより、セルロースをナノ分散させ、溶剤系ゲル状組成物を調製した。この調製物について、下記の基準に従って、各特性の評価を行った結果、いずれも「○」の評価が得られた。なお、粘度の評価において、分散溶剤であるエタノールの粘度は0.88mPa・sとした。
〔分散性〕
撹拌調製された溶剤系ゲル状組成物を脱気してガラス瓶にうつし、一日静置した。静置後、溶液中でセルロース繊維が凝集し、沈降した場合を「×」、溶液中でセルロース繊維が沈降することなく、均一に分散している場合を「○」と評価した。
〔粘度〕
撹拌調製された溶剤系ゲル状組成物を脱気してガラス瓶にうつし、一日静置した後、音叉型振動式型粘度計(A&D社製 SV−10、30Hz:3min、25℃)を用いて粘度(mPa・s)を測定した。そして、下記の基準に従い、粘度の評価を行った。
◎:分散溶剤の粘度と比較して、測定溶液の粘度が100倍を超える
○:分散溶剤の粘度と比較して、測定溶液の粘度が10倍以上100倍以下
×:分散溶剤の粘度と比較して、測定溶液の粘度が10倍未満
参考例2,3、実施例、比較例12〕
セルロース繊維A1に代えて、前記のようにして得られたセルロース繊維A2〜A6、A’1、A’2を使用(下記の表2に示す組合せのセルロース繊維を使用)した以外は、参考例1と同様にして(ポリエーテルアミンとしては、参考例1と同様、JEFFAMINE M−2070(HUNTSMAN社製)を使用)、溶剤系ゲル状組成物を調製した。そして、上記基準に従って各特性の評価を行ったものを、下記の表2に併せて示す。
Figure 0005944564
上記表2の結果より、実施例のゲル状組成物は、均一に分散し、粘度の点でも良好な結果が得られた。これに対し、比較例1のゲル状組成物では、セルロース繊維A’1がポリエーテルアミンによって中和反応されていないため、分散性が低く、粘度は測定できなかった。また比較例2のゲル状組成物では、セルロース繊維A’2が針葉樹起源ではないことから、セルロースI型結晶構造を有しておらず、分散性は良好であったが、粘度の点で劣っていた。
〔実施例
前記のようにして得られたセルロース繊維A6に、トルエンを加えて洗浄ろ過を繰り返し、エタノールをトルエンに置換した。その後、トルエンに置換した上記セルロース繊維に、トルエンと、上記セルロース繊維A6のカルボキシル基量と等量のポリエーテルアミン(JEFFAMINE M−2070、HUNTSMAN社製)とを加えて、2%に希釈し、高圧ホモジナイザー(スギノマシン社製、スターバースト)を用いて圧力100MPaで1回処理した。これをトルエンで更に希釈(ゲル状組成物全量の0.75%がセルロース繊維A1となるよう希釈)し、T.K.ホモミクサー(PRIMIX社製)により8000rpmで10分間撹拌することにより、セルロースをナノ分散させ、溶剤系ゲル状組成物を調製した。この調製物について、前記基準に従って、分散性および粘度を測定し評価を行った結果、分散性が「○」、粘度が「◎」の評価が得られた。なお、粘度の評価において、分散溶剤であるトルエンの粘度は0.56mPa・sとした。
〔実施例、比較例3〜5〕
分散溶媒であるトルエンと、修飾剤であるポリエーテルアミン(JEFFAMINE M−2070、HUNTSMAN社製)を、下記の表3のように変更した。それ以外は実施例と同様の手法で溶剤系ゲル状組成物を調製し、分散性および粘度を測定し評価を行った。なお、表3において、修飾剤「M2070」はJEFFAMINE M−2070(HUNTSMAN社製)であり、修飾剤「M2005」はJEFFAMINE M−2005(HUNTSMAN社製)であり、修飾剤「D2000」はJEFFAMINE D−2000(HUNTSMAN社製)である。また、粘度の評価において、分散溶剤であるトルエンの粘度は0.56mPa・s、塩化メチレンの粘度は0.45mPa・s、エチレングリコールの粘度は、30.0mPa・s、エタノールの粘度は0.88mPa・sとした。そして、その結果を、下記の表3に併せて示す。
Figure 0005944564
上記表3の結果より、実施例のゲル状組成物は、分散性および粘度の点で良好な結果が得られた。これに対し、比較例3のゲル状組成物では、分散性は良好であったが、セルロースナノファイバー同士の凝集力も働き、粘度の向上には至らなかった。比較例4のゲル状組成物では、修飾剤の疎水性が足りず、セルロースナノファイバーが完全に凝集してしまい、分散性は低い結果となった。比較例5のゲル状組成物では、修飾剤にポリエーテルジアミンであるJEFFAMINE D−2000を用いたため、2つのアミノ基がセルロースナノファイバー同士を架橋し、凝集させてしまい、分散性は低い結果となった。分散性が低い比較例4と比較例5のゲル状組成物に関しては、分散性が良好ではなかったため、粘度測定は行っていない。
本発明のゲル状組成物は、溶剤系ゲル状組成物であり、広範な有機溶剤に対し高い分散安定性を示すことから、高分子材料との複合化にも好適に用いることができる。また、高い増粘性を示すことから、塗料・インキ分野、他にも切削油用途や接着剤用途など、好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. セルロースI型結晶構造を有するセルロースを水に分散させた後、そのセルロースの水酸基を、カルボキシル基を有する置換基に変換する工程と、還元剤による上記セルロースの還元工程と、上記セルロースの分散媒である水を有機溶剤に置換する工程と、上記分散媒置換後のセルロースを疎水化する工程と、上記疎水化後のセルロースをナノ解繊し、有機溶剤中にセルロースナノファイバーが分散されたゲル状組成物を得る工程と、を備えたゲル状組成物の製法において、上記セルロースの疎水化を、下記の一般式(1)に示されるポリエーテルアミンによる中和反応により行うことを特徴とするゲル状組成物の製法。
    Figure 0005944564
  2. セルロースの水酸基を、カルボキシル基を有する置換基に変換する工程を、N−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて酸化させることにより行う、請求項1記載のゲル状組成物の製法。
  3. 下記の(A)および(B)成分を含有することを特徴とするゲル状組成物。
    (A)最大繊維径が1000nm以下で、数平均繊維径が2〜150nmのセルロースナノファイバーであって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有すると共に、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位が選択的に水酸基,アルデヒド基,ケトン基,カルボキシル基のいずれかとなっており、かつ上記カルボキシル基の含量が0.6〜2.5mmol/g、上記アルデヒド基とケトン基の合計含量が、セミカルバジド法による測定において0.3mmol/g以下であるとともに、上記カルボキシル基が下記の一般式(1)に示されるポリエーテルアミンのアミノ基とイオン結合されてなる、セルロースナノファイバー。
    Figure 0005944564
    (B)有機溶剤。
  4. 上記セルロースナノファイバー(A)の含有量が、ゲル状組成物全体の0.01〜20重量%の範囲である、請求項3記載のゲル状組成物。
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