以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の前席用エアバッグ装置60は、図1,2,9〜11に示すように、運転席用エアバッグ装置20と助手席用エアバッグ装置30との間におけるインストルメントパネル(以下、適宜、インパネと略す)1の助手席側部4に搭載されて構成されている。第1実施形態の場合、前席用エアバッグ装置60は、運転席用エアバッグ装置20や助手席用エアバッグ装置30とともに、運転者DMや助手席搭乗者PMの前席乗員Mを保護する前席乗員保護装置FABを構成し、車両Vの斜め衝突、オフセット衝突、前面衝突、さらには、側面衝突等の際に、作動され、それぞれのエアバッグ(前席用エアバッグ61、運転席用エアバッグ21、及び、助手席用エアバッグ31)が収納部位から略後方側に展開膨張する。
なお、各実施形態において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両Vの前後・上下・左右の方向と一致するものである。
また、第1実施形態の前席用エアバッグ装置60は、運転席用エアバッグ装置20と助手席用エアバッグ装置30との間に搭載されていることから、中央エアバッグ装置ともいえ、さらに、前席用エアバッグ61も、中央エアバッグともいえる。
運転席用エアバッグ装置20は、ステアリング装置8のステアリングホイール9の中央のボス部10に搭載されている。ステアリングホイール9は、運転席13の前方に配置されて、リング部11を把持して所定方向に回転させることにより、車両Vを操舵する。
運転席用エアバッグ21は、ステアリングホイール9のボス部10に折り畳まれて収納され、運転席用エアバッグ装置20の作動時、前方移動する運転席13に着座した前席乗員Mとしての運転者DMを受け止めることができるように、図示しないインフレーターからの膨張用ガスを流入させて、収納部位のボス部10から後方に展開膨張する。運転席用エアバッグ21は、膨張完了形状を、リング部11より外形寸法を大きくする略円板状としている。運転席用エアバッグ21は、同形状とした円形状の運転席側壁部22と車体側壁部23との外周縁相互を結合させて構成され、膨張完了時、前面側の車体側壁部23がリング部11に支持される構成としている。
助手席用エアバッグ装置30は、助手席16の前方のインパネ1の部位(助手席側部)4に搭載されている。助手席用エアバッグ31は、インパネ1の助手席側部4に折り畳まれて収納され、助手席用エアバッグ装置30の作動時、前方移動する助手席16に着座した前席乗員Mとしての助手席搭乗者PMを受け止めることができるように、インフレーター45(45P)からの膨張用ガスGを流入させて、インパネ1の助手席側部4から後方に展開膨張する。
助手席用エアバッグ31は、図9〜11,15,16に示すように、膨張完了形状を、後面側の略長方形状の乗員側壁部32を底壁とした略四角錘形状として、四角錘形状の周壁部33の外表面の一部(下面)をインパネ1の助手席側部4の後面4aに支持させる構成としている。なお、乗員側壁部32は、左右方向の中央に上下方向に沿う凹溝状とした前方側に凹む凹部32aを備えて構成されている。
また、周壁部33の前端側の下面には、膨張用ガスを流入させるための円形に開口した流入用開口34が、配設され、流入用開口34の周縁を、ケース50に取付固定する取付部35としている。取付部35には、ケース50に取り付けるためのリテーナ41(図17参照)の各ボルト42を挿通させる貫通孔35aが、配設されている。
さらに、膨張完了時の周壁部33の前席用エアバッグ61から離れた側面には、余剰の膨張用ガスGを排気するベントホール33aが開口している。また、周壁部33の内周側には、左右方向に沿う帯状とし、左右の側壁部位相互(左壁部33b、右壁部33c相互)を連結して左右方向の幅寸法を規制する横テザー36(図15参照)が、所定数(図例では二つ)配設されている。
なお、リテーナ41は、図17に示すように、略四角環状として、四隅に下方に延びるボルト42を配設させて構成されている。リテーナ41は、エアバッグ31を膨張させるインフレーター45(45P)とともに、エアバッグ31をケース50の取付基部51の右方側の外側取付座52に取り付けるものである。すなわち、各ボルト42を貫通孔35aに挿通させて、エアバッグ31内の取付部35にリテーナ41を当てるとともに、本体部46をケース50内に下方から挿入させたインフレーター45Pのフランジ部47に、各ボルト42を貫通させ、そして、各ボルト42にナット43を締結することにより、エアバッグ31とインフレーター45Pとをケース50に取り付けている。
また、ケース50は、略直体形の箱形状として、第1実施形態の場合、折り畳んだ助手席用エアバッグ31と前席用エアバッグ61とを収納しており、すなわち、エアバッグ31,61の両者の収納部位として兼用されている。そして、ケース50の底壁となる取付基部51には、車両Vの車外側(右側)の外側取付座52に、既述したように、助手席用エアバッグ31の取付部35が、リテーナ41を利用して、取り付けられ、車両Vの左右方向の中央側となる車内側(左側)の内側取付座53に、前席用エアバッグ61の後述する取付部65が取付固定され、そして、助手席用エアバッグ31と前席用エアバッグ61とが、それぞれ、折り畳まれて、ケース50内の取付基部51上で左右に並設されて(詳しくは、右方側に助手席用エアバッグ31が配設され、左方側に前席用エアバッグ61が配設されて)収納されている。
なお、取付基部51の外側取付座52と内側取付座53とには、各エアバッグ31,61を膨張させるインフレーター45(45P,45C)の円柱状の本体部46を下方から挿入させる開口52a,53aと、開口52a,53aの周縁に配置された各ボルト42を挿通させる貫通孔(図符号省略)と、が配設されている。
前席用エアバッグ装置60は、膨張した運転席用エアバッグ21と助手席用エアバッグ31との間で膨張させる前席用エアバッグ(中央エアバッグ)61と、エアバッグ61に膨張用ガスを供給するインフレーター45(45C)と、折り畳んだエアバッグ61及びインフレーター45Cを収納しておくケース50と、を備えて構成される。第1実施形態の場合、ケース50は、既述したように、助手席用エアバッグ装置30と共用されて、助手席16の前方のインパネ1における助手席側部4に搭載されている。
インフレーター45Cは、図5,17に示すように、運転席用エアバッグ装置20の図示しないインフレーターや助手席用エアバッグ装置30のインフレーター45Pと同様に、車両Vの斜め衝突、オフセット衝突、前面衝突、さらには、側面衝突の際に、作動するように構成されて、作動時、折り畳まれたエアバッグ61に膨張用ガスGを供給して、エアバッグ61を展開膨張させるように構成されている。インフレーター45Cは、インフレーター45Pと同様に、上部にガス吐出口46aを設けた円柱状の本体部46と、本体部46の外周面から突出するフランジ部47と、を備えて構成される。インフレーター45Cの本体部46は、ケース50の内側取付座53の開口53aに下方から挿入され、エアバッグ61の取付部65を押さえたリテーナ41の各ボルト42が、取付部65の貫通孔65a(図3参照)や内側取付座53を貫通し、さらに、フランジ部47を貫通して、ナット43を締結されることにより、インフレーター45Cは、エアバッグ61の取付部65とともに、ケース50の内側取付座53に取付固定される。
前席用エアバッグ61は、図3〜6,17に示すように、収納部位としてのケース50の取付基部51における内側取付座53に取付固定されて、膨張用ガスGを流入させるガス流入部62と、ガス流入部62の左右方向の一方側(実施形態では左方側)に前端部71を連結させ、前端部71から後方側に延びるバッグ本体部70と、を備えて構成される。膨張完了時の前席用エアバッグ61は、インパネ1における左右方向の中央付近のセンタークラスタ2の後面2aに、バッグ本体部70の下面70cの前端側を当接させて、支持させる構成としている(図11参照)。また、膨張完了時の前席用エアバッグ61は、バッグ本体部70の後面側の後側壁部78が、略鉛直方向に沿って配設されて、膨張完了時の助手席用エアバッグ31の後面側の乗員側壁部32より若干後方側に配置されて、車両Vの左右方向の中央側に移動する前席乗員M、すなわち、斜め左前方向に前進移動する助手席搭乗者PMや斜め右前方向に移動する運転者DMの頭部Hや肩部Sを含めた上半身UBを受け止めることができるように、設定されている(図9参照)。
ガス流入部62は、バッグ本体部70の前端部71への連結側を除いて、外形形状を等しくした上面側の天井壁部66と下面側の底壁部63との外周縁相互を結合させて、構成され、第1実施形態の場合、略長方形板状(略正方形板状)としている。底壁部63には、膨張用ガスを流入させための円形の流入用開口64が開口され、流入用開口64の周縁は、リテーナ41の各ボルト42を貫通させる貫通孔65aを有して、収納部位としてのケース50の内側取付座53への取付部65として構成されている。
バッグ本体部70は、前端部71の前縁71a側を、左右方向に沿った直線状として、ガス流入部62の前縁62aと連ならせ、かつ、前縁71a側から後方に向かった厚さ寸法を漸増させる膨張形状として、前端部71から後方側の本体膨張部72に連なるように、構成されている。
第1実施形態の前席用エアバッグ61は、図7,8に示すように、外周壁を構成するエアバッグ用基布110として、上側基布111、下側基布112、流入側基布114、離隔側基布116、及び、後側基布117の5枚から構成されている。上側基布111は、バッグ本体部70の上側壁部75を構成し、下側基布112は、ガス流入部62の底壁部63を構成する底側部113を有して、バッグ本体部70の下側壁部74を構成している。また、流入側基布114は、ガス流入部62の天井壁部66を構成する天井側部115を有して、バッグ本体部70のガス流入部62側の側壁部である流入側壁部76を構成し、離隔側基布116は、バッグ本体部70のガス流入部62から離れた側の側壁部である離隔側壁部77を構成している。後側基布117は、バッグ本体部70の後側壁部78を構成している。
なお、上側基布111は、前縁111aを下側基布112の底側部113を除いた前縁112aと縫合させ、後縁111bを後側基布117の上縁117aと縫合させている。また、上側基布111は、左縁111cを離隔側基布116の上縁116aと縫合させ、右縁111dを流入側基布114の上縁114aと縫合させている。
そして、前縁111a,112a相互の縫合部位は、他の周縁部位と異なって、縫代を、後述するガス流入部62の前縁62aの縫合部位と同様に、外表面側に露出させている。
下側基布112は、底側部113を除いた前縁112aを上側基布111の前縁111aと縫合させ、後縁112bを後側基布117の下縁117bと縫合させている。また、下側基布112は、左縁112cを離隔側基布116の下縁116bと縫合させ、底側部113を除いた右縁112dを流入側基布114の下縁114bと縫合させている。
流入側基布114は、上縁114aを上側基布111の右縁111dに縫合させ、天井側部115を除いた下縁114bを下側基布112の右縁112dに縫合させ、後縁114cを後側基布117の右縁117dに縫合させている。
離隔側基布116は、上縁116aを上側基布111の左縁111cに縫合させ、下縁116bを下側基布112の左縁112cに縫合させ、後縁116cを後側基布117の左縁117cに縫合させている。
後側基布117は、上縁117aを上側基布111の後縁111bに縫合させ、下縁117bを下側基布112の後縁112bに縫合させ、左縁117cを離隔側基布116の後縁116cに縫合させ、右縁117dを流入側基布114の後縁114cに縫合させている。
そして、流入側基布114に設けられた天井側部115と下側基布112に設けられた底側部113とは、前縁115a,113a相互、後縁115b,113b相互、及び、右縁115c,113c相互が、それぞれ、縫合されている。これらの天井側部115と底側部113とからなるガス流入部62の外周縁の縫合部位は、全ての縫代を外表面側に露出している。そして、前縁115a,113a相互の縫合部位と、上側基布111の前縁111aと下側基布112の前縁112aとの相互の縫合部位とは、縫代を外表面側に露出させて左右方向に直線状に連ならせるように、縫合されている(平面縫製されている)。
また、これらの基布111,112,113,114,115は、ポリアミド等の織布から形成されている。
さらに、エアバッグ61は、バッグ本体部70の前端部71におけるガス流入部62から左右方向で離れた外縁(左縁)71bから延びる外縁側テザー80を備えている。外縁側テザー80は、取付部65の内側取付座53への取付固定時に共締めされる。そのため、外縁側テザー80の先端には、リテーナ41のボルト42aを挿通させる貫通孔80aが前後に二つ形成されている。なお、外縁側テザー80が内側取付座53の左縁側に取付固定された状態で、エアバッグ61が膨張を完了させれば、前端部71の外縁71b側が下側壁部74の下方に反転しつつ右方側に引っ張られる状態となる(図9,17参照)。
また、バッグ本体部70には、図3,4,6に示すように、膨張完了時、前縁71aから後側壁部78にかけて、上下方向の厚さ寸法を漸増させる略四角柱状の膨張形状を維持できるように、内部に、膨張完了時に上下方向で対向する上側壁部75と下側壁部74とを連結する縦テザー82と、左右方向で対向する流入側壁部76と離隔側壁部77とを連結する横テザー86と、を配設させている。
そして、第1実施形態の場合、縦テザー82は、左右方向に幅方向を設けた帯状として、前後にずれた2つの第1縦テザー83と第2縦テザー84とを備えて構成されている。最前列の第1縦テザー83は、二列目の第2縦テザー84よりは、下側壁部74と上側壁部75との上下方向の連結距離を短くして(連結距離CL1<連結距離CL2)、配設されている(図6参照)。
そして、横テザー86は、前後方向にずれ、かつ、それぞれ、左右方向に沿って配置される4つを備えて構成されている。すなわち、4つの横テザー86は、最前列側から順に、第1横テザー87、第2横テザー88、第3横テザー89、及び、第4横テザー90として、配設されている。
なお、図3,4では簡略化しているが、各テザー83,84,87,88,89,90は、対向する壁部からそれぞれ延びる一対の布片83a,84a,87a,88a,89a,90aの相互を、連結して形成されている(図7,8参照)。
そして、第1横テザー87は、最前列の第1縦テザー83と二列目の第2縦テザー84との間に、配設されている。また、最後列の第4横テザー90は、縦テザー82より後方に配置されて、エアバッグ61内に配置される最後列のテザーとして、配設されている。
また、第1実施形態の場合、バッグ本体部70の前端部71では、ガス流入部62との連結部位の前後方向のエリア内において、前側に第1縦テザー83を配設し、後側に第1横テザー87を配設させている。
さらに、第1実施形態では、図3,4,9,10に示すように、バッグ本体部70が、膨張完了時の運転席用エアバッグ21の側方における前方側から後方側にかけて、展開膨張する構成としている。そして、膨張完了時の後端70aから運転席用エアバッグ21側の側面70bにかけて、膨張完了時の運転席用エアバッグ21の右端側を収納するような運転席側凹部92が、配設されている。運転席側凹部92の内周面は、運転席用エアバッグ21を支持可能な支持面93としており、この支持面93は、膨張完了時の運転席用エアバッグ21における前席用エアバッグ61に接近する前面21a側を支持可能な前支持部93aと、エアバッグ61に接近する側方21b側を支持可能な横支持部93bと、を備えて構成されている。
そして、第3横テザー89は、運転席側凹部92を形成できるように、前支持部93aから後方にずれた横支持部93bのエリアにおいて、左右方向で対向する流入側壁部76(流入側基布114)と離隔側壁部77(離隔側基布116)とを連結して、配設されている。
さらに、第1実施形態の前席用エアバッグ61では、図9,10,12,13に示すように、膨張完了時の助手席用エアバッグ31の側方に展開膨張する構成として、バッグ本体部70と膨張完了時の助手席用エアバッグ31とを連結する連結テザー98,99を、上下にずれた少なくとも二箇所に、配設させている。なお、これらのテザー98,99も、バッグ本体部70側とエアバッグ31側とに連結された一対の布片98a,99a(101a)の相互を、連結して形成されている。
さらに、第1実施形態のエアバッグ61では、膨張完了時のバッグ本体部70の後端70a側と膨張完了時の助手席用エアバッグ31の後端31a側との間の凹部102の後方を覆い可能に、バッグ本体部70と助手席用エアバッグ31とを連結するカバー布101を、配設させている。実施形態の場合、下部側の連結テザー99が、カバー布101から構成されている。
さらに、実施形態のエアバッグ61では、図9,14に示すように、膨張完了時のバッグ本体部70の下面70c側における助手席用エアバッグ31から離れた外縁(実施形態では左縁)70d側と、膨張完了時の助手席用エアバッグ31の下面31b側におけるバッグ本体部70側の内縁(実施形態では左縁)31c側と、を連結する下側連結布103が、配設されている。下側連結布103は、膨張完了時のエアバッグ31,61におけるインパネ1の後面2a,4aから後方に離れた部位の前後方向の中間付近に、あるいは、中間部位より後端31a,71a側に、配置されている。そして、下側連結布103は、エアバッグ61,31にそれぞれ連結される一対の布片103a相互を連結して、形成されている。
また、この前席用エアバッグ61では、膨張用ガスを排気するベントホール79が、膨張完了時の助手席用エアバッグ31から離れた側の左右方向の側面に、すなわち、運転席用エアバッグ21側となる離隔側壁部77に、設けられている。さらに、ベントホール79は、運転席用エアバッグ21に塞がれないように、運転席側凹部92の前方の位置に、配設されている。
第1実施形態の前席用エアバッグ装置60と助手席用エアバッグ装置30の車両Vへの搭載は、まず、各ボルト42を貫通孔65aから突出させて、前席用エアバッグ61のガス流入部62内にリテーナ41を収納する。同様に、各ボルト42を貫通孔35aから突出させて、助手席用エアバッグ31内にリテーナ41を収納する。そして、前席用エアバッグ61と助手席用エアバッグ31とを折り畳んで、ケース50内に収納するように、取付基部51上に載せるとともに、各リテーナ41のボルト42を外側取付座52や内側取付座53の貫通孔から突出させる。なお、前席用エアバッグ61では、外縁側テザー80の先端の2つの貫通孔80aにリテーナ41の左縁側の対応するボルト42を貫通させた状態で、ケース50内に収納する。
そして、対応するインフレーター45C,45Pの本体部46を、開口53a,52aを経て、下方からケース50内に挿入し、各フランジ部47にボルト42を貫通させて、各ボルト42にナット43を締結すれば、取付基部51の内側取付座53に、インフレーター45Cとともに折り畳まれた前席用エアバッグ61を取付固定でき、また、外側取付座52に、インフレーター45Pとともに、折り畳まれた助手席用エアバッグ31を取付固定することができる。なお、ナット43の締結時、外縁側テザー80は、その先端を取付部65と共締めされてケース50の内側取付座53に取付固定される。
その後、ケース50を車両Vの所定のインパネリンホースから延びるブラケットに連結させ、各インフレーター45C,45Pにエアバッグ装置60,30の作動用の図示しない制御装置から延びる作動信号入力用のリード線を結線し、インパネ1を車両Vに組み付ければ、前席用エアバッグ装置60と助手席用エアバッグ装置30とを車両Vに搭載することができる。そしてまた、別途、図示しない制御装置から延びる作動信号入力用のリード線を運転席用エアバッグ装置20のインフレーターに結線しつつ、運転席用エアバッグ装置20を組み付けたステアリングホイール9を、ステアリング装置8に装着すれば、運転席用エアバッグ装置20を車両Vに搭載することができて、運転席用エアバッグ装置20、助手席用エアバッグ装置30、及び、前席用エアバッグ装置60を具備して構成される前席乗員保護装置FABを、車両Vに搭載することができる。
車両Vへの搭載後、前席乗員保護装置FABが作動すれば、運転席用エアバッグ21、助手席用エアバッグ31、及び、前席用エアバッグ61が、それぞれの収納部位であるボス部10aやケース50から後方側へ突出しつつ、展開膨張することとなる。
そして、第1実施形態の前席用エアバッグ装置60では、インフレーター45Cからの膨張用ガスGを流入させたエアバッグ61が、膨張して、収納部位としてのケース50を覆っていたインパネ1に設けられた図示しないエアバッグカバーを押し開き、後方側へ展開膨張する。すなわち、エアバッグ61のケース50の内側取付座53に取り付けられたガス流入部62の左方側に連なった前端部71を基準に、前端部71の後方側の本体膨張部72が、後方側に展開膨張し、バッグ本体部70が、インパネ1のセンタークラスタ2から後方に略四角形状に延びる膨張完了形状として、膨張を完了させることとなる(図9,10参照)。
膨張完了時のエアバッグ61では、図3,16,17に示すように、ガス流入部62が、外形形状を略正方形状として略等しくした上面側の天井壁部66と下面側の底壁部63との外周縁相互(前縁62a(115a,113a)相互、後縁62b(115b,113b)相互、外側縁62c(115c,113c)相互)を結合させた平面バッグ構造となっているため、容易に、上下方向の厚さ寸法を抑制して、膨張を完了させることができ、周囲の部材である助手席用エアバッグ31の前端31dの下面31e側や左面31f側との干渉を抑制して、バッグ本体部70側に膨張用ガスGを供給できる。
また、ガス流入部62の左方から後方側に延びるバッグ本体部70は、前端部71が、その前縁71a側を、縫代を外表面側に露出させて、平面縫製した直線状のガス流入部62の前縁62aと、直線状に連ならせ、かつ、その前縁71a側から後方に向かった厚さ寸法を漸増させる膨張形状としていることから、ガス流入部62からバッグ本体部70の前端部71に流入する膨張用ガスGは、厚さ寸法の薄い前縁71a側から厚さ寸法を厚くする後方側に流れる。そのため、バッグ本体部70は、前端部71内で後方に流れる膨張用ガスGにより、本体膨張部72が前端部71から後方へ延びるように膨張することとなる。その結果、前席用エアバッグ61は、ケース50に取付固定されるガス流入部62から左右方向の左方にずれたバッグ本体部70の前端部71を基準に、バッグ本体部70の本体膨張部72が後方に延びる状態、すなわち、上方から見てL字状に膨張を完了させることができる。
さらに、ガス流入部62は、厚さ寸法を小さくして膨張するものの、膨張用ガスGの上流側であることから、内圧が高く、剛体のような形状保持性を有して膨張する。そして、バッグ本体部70の前端部71が、その前縁71aを、形状保持性を有したガス流入部62の前縁62aに対して連ならせつつ、流入側壁部76側をガス流入部62に連通保持させる状態となることから、形状保持性の高いガス流入部62に保持された状態となる。そのため、バッグ本体部70における前端部71の後方側に連なる本体膨張部72は、左右方向への揺動、換言すれば、左右方向へのブレ、を抑えて、前端部71から後方側に向かって円滑に展開膨張することができる。
したがって、第1実施形態の前席用エアバッグ装置60では、作動時、前席用エアバッグ61が、ケース50付近での周囲の助手席用エアバッグ31との干渉を抑制して、上方から見て収納部位としてのケース50からL字形に展開膨張することができる。そして、第1実施形態の前席用エアバッグ装置60では、前席用エアバッグ61のバッグ本体部70が、前端部71側から本体膨張部72側にかけて、前後方向に沿った後方側に向かって展開膨張することができることから、前席の運転者DMや助手席搭乗者PM等の前席乗員Mが、膨張を完了させた前席用エアバッグ61に対して、斜め右前方側に向かって当たる状態となったり、逆に、斜め左前方向側に向かって当たる状態となっても、性能を低下させること無く、共に、それらの前席乗員Mを均等に良好に受け止めることが可能となる。
そして、第1実施形態の前席用エアバッグ装置60では、前席用エアバッグ61が、バッグ本体部70の前端部71におけるガス流入部62から左右方向で離れた外縁70dから延びて、取付部65におけるケース50の内側取付座53への取付固定時に共締めされてケース50に固定される外縁側テザー80、を備えて構成されている。
そのため、第1実施形態では、バッグ本体部70の前端部71が、ガス流入部62と連通して直接的にガス流入部62に保持される側面側の流入側壁部76側だけでなく、ガス流入部62から離れた側面側の離隔側壁部77側も、外縁側テザー80によってガス流入部62と連結される状態となって、より強固にガス流入部62に保持される構成となる。そのため、バッグ本体部70の前端部71の後方の本体膨張部72は、一層、左右方向への揺動、換言すれば、左右方向へのブレ、を防止されて、後方側に向かって円滑に展開膨張することができる。
また、第1実施形態の前席用エアバッグ装置60では、バッグ本体部70が、内部に、膨張完了時に上下方向で対向する壁部74,75相互を連結する縦テザー82と左右方向で対向する壁部76,77相互を連結する横テザー86を配設させて構成されている。
そのため、第1実施形態では、バッグ本体部70が、展開膨張途中に上下左右に無秩序に膨らむことを抑制して、所定の膨張形態を維持して、展開膨張でき、そして、膨張完了時にも、所定の膨張完了形状を安定して確保できる。
さらに、第1実施形態の前席用エアバッグ装置60では、縦テザー82が、少なくとも前後にずれた第1縦テザー83と第2縦テザー84との2つを配設させる構成として、最前列の第1縦テザー83と二列目の第2縦テザー84とが、図6に示すように、上下方向の連結距離CL1,CL2を、CL1<CL2とするように、最前列側を短くして配設されるとともに、間に、横テザー86の第1横テザー87を配置させて、配設されている。
そのため、第1実施形態では、後方側にかけて厚さ寸法を漸増させるバッグ本体部70の形状を、左右方向の膨らみを抑制して、容易に確保できる。
さらに、第1実施形態の前席用エアバッグ装置60では、バッグ本体部70の前端部71が、ガス流入部62との連結部位の前後方向のエリア内において、前側に第1縦テザー83を配設し、後側に第1横テザー87を配設させて、構成されている。
そのため、第1実施形態では、前席用エアバッグ61におけるガス流入部62に連通されるバッグ本体部70の前端部71が、横テザー86でなく、縦テザー82(第1縦テザー83)を最前列に配置させていることから、前縁71a側から後方に向かった厚さ寸法を漸増させる膨張形状を、容易に確保できる。
さらにまた、第1実施形態の前席用エアバッグ装置60では、バッグ本体部70が、縦テザー82と横テザー86とを、前後方向にずらして、それぞれ、複数、すなわち、第1縦テザー83、第2縦テザー84、第1横テザー87、第2横テザー88、第3横テザー89、第4横テザー90として、複数配設させ、かつ、最後列に、横テザー86の一つである第4横テザー90を配設させて、構成されている。
そのため、前席用エアバッグ61のバッグ本体部70が、展開膨張完了時の左右方向の幅寸法を安定させることができ、前席用エアバッグ61の左右に隣接して運転席用エアバッグ21や助手席用エアバッグ31が配設される際、それらのエアバッグ21,31との干渉を抑えることができる。
さらに、第1実施形態の前席用エアバッグ装置60では、前席用エアバッグ61のバッグ本体部70が、膨張完了時の運転席用エアバッグ21の右方における前方側から後方側にかけて、展開膨張する構成として、運転席用エアバッグ21における前席用エアバッグ61に接近する前面21a側と側方21b側とを支持可能な支持面93を備えた運転席側凹部92を、膨張完了時の後端70aから側面70bにかけて配設させている(図9,10参照)。
そのため、第1実施形態では、膨張完了時の前席用エアバッグ61のバッグ本体部70が、運転席用エアバッグ21の前面21a側と側方21b側とを支持できることから、運転席用エアバッグ21が、前席用エアバッグ61に接近するように移動しても、前席用エアバッグ61により支持されて、移動を防止できることとなり、運転者DMをクッション性良く受け止めることができる。逆に、前席用エアバッグ61が、斜め左前方向に前進移動する前席乗員Mとしての助手席搭乗者PMを受け止めて、運転席用エアバッグ21側に移動しても、運転席用エアバッグ21に支持され、さらに、ステアリングホイール9のリング部11にも支持されて、移動を防止されることから、前席乗員Mとしての助手席搭乗者PMをクッション性良く受け止めることができる。そしてさらに、運転者DMが、運転席用エアバッグ21と前席用エアバッグ61との間に前進移動して、運転席用エアバッグ21から外れる斜め右前方側に移動しても、前席用エアバッグ61が、運転席用エアバッグ21の前面21a側に延びる支持面93の前支持部93aを備えており、その支持面93の前支持部93aにより、運転席用エアバッグ21の側方21bをすり抜けた運転者DMを的確に受け止めることが可能となる。
さらに、第1実施形態の前席用エアバッグ装置60では、図3,4に示すように、運転席側凹部92が、バッグ本体部70の左右方向で対向する壁部76,77相互を連結する第3横テザー89を設けて、形成されている。
そのため、第1実施形態では、第3横テザー89を利用して、容易に、前席用エアバッグ61に運転席側凹部92を設けることができる。
さらにまた、第1実施形態の前席用エアバッグ装置60では、図9,10,16,17に示すように、前席用エアバッグ61が、バッグ本体部70を膨張完了時の助手席用エアバッグ31の左方で展開膨張させる構成とするとともに、ガス流入部62を助手席用エアバッグ31の収納部位としてケース50の外側取付座52側に向けて配設させる構成としている。さらに、前席用エアバッグ61が、前席用エアバッグ61の収納部位と助手席用エアバッグ31の収納部位とを一つのケース50として共用し、前席用エアバッグ61の取付部65と助手席用エアバッグ31のケース50への取付部35とを左右方向で隣接して配設させる構成としている。
そのため、第1実施形態では、前席用エアバッグ61の収納部位を、助手席用エアバッグ31の収納部位と、一つのケース50により共用でき、前席前方のインパネ1の助手席側部4の内部のスペースを有効利用することができる。勿論、前席用エアバッグ61は、ケース50に取付固定されるガス流入部62が上下方向の厚さ寸法を抑制して膨張を完了させることができる平面バッグ構造としており、ケース50内で助手席用エアバッグ31の前端31dが左右方向や上下方向に厚さ寸法を増大させて膨張する構造であっても、助手席用エアバッグ31の膨張形態を阻害せずに、ガス流入部62がバッグ本体部70側への円滑な膨張用ガスGの流入状態を維持して、膨張することができる。
さらに、第1実施形態では、前席用エアバッグ61が、膨張完了時のバッグ本体部70と助手席用エアバッグ31とを連結する連結テザー98,99を、上下にずれた少なくとも二箇所に、配設させている。
そのため、第1実施形態では、連結テザー98,99により、前席用エアバッグ61と助手席用エアバッグ31とが、共に、離反すること無く、ケース50から展開膨張することができて、助手席搭乗者PMや運転者DMの前席乗員Mを、的確に、受け止めることができる。
さらに、第1実施形態では、前席用エアバッグ61が、膨張完了時のバッグ本体部70の後端70a側と膨張完了時の助手席用エアバッグ31の後端31a側との間の凹部102の後方を覆い可能に、バッグ本体部70と助手席用エアバッグ31とを連結するカバー布101(連結テザー99)を、配設させている。
そのため、第1実施形態では、前席乗員Mの助手席搭乗者PMが膨張完了時の前席用エアバッグ61と助手席用エアバッグ31との間に進入しようとしても、カバー布101を利用して、クッション性良く助手席搭乗者PMを受け止めることができる。
さらに、第1実施形態では、前席用エアバッグ61が、膨張完了時のバッグ本体部70の下面70c側における助手席用エアバッグ31から離れた外縁70d側と、膨張完了時の助手席用エアバッグ31の下面31b側におけるバッグ本体部70側の内縁31c側と、を連結する下側連結布103を、配設させている。
そのため、第1実施形態では、前席用エアバッグ61における助手席用エアバッグ31から離れる側の離隔側壁部77が、助手席用エアバッグ31から離れる状態を抑制されて、展開膨張途中の前席用エアバッグ61のバッグ本体部70は、助手席用エアバッグ31自体と下側連結布103とにより、左右のブレを抑制されて、前端部71から後方に延びる本体膨張部72を、真直ぐ後方側に向けて、安定して展開膨張させることができる。
さらにまた、第1実施形態では、前席用エアバッグ61の膨張用ガスGを排気するベントホール79が、膨張完了時の助手席用エアバッグ31から離れた側の左右方向の側面である離隔側壁部77であって、運転席用エアバッグ21の前方側に、配設されている。
そのため、第1実施形態では、前席用エアバッグ61が、収納部位としてのケース50を共用した助手席用エアバッグ31と接近した状態で膨張しても、助手席用エアバッグ31に塞がれること無く、ベントホール79から、円滑に、余剰の膨張用ガスGを排気することができる。勿論、ベントホール79は、運転席用エアバッグ21にも塞がれずに、円滑に、余剰の膨張用ガスGを排気することができる。
また、助手席用エアバッグ31も、図15,16に示すように、前席用エアバッグ61と離れた側面にベントホール33aを配設させていることから、前席用エアバッグ61に塞がれずに、円滑に、ベントホール33aから余剰の膨張用ガスGを排気することができる。
また、第1実施形態の前席用エアバッグ装置60では、バッグ本体部70が、図7,8に示すように、複数枚のエアバッグ用基布110から袋状に構成されるとともに、ガス流入部62の天井壁部66と底壁部63とが、複数枚のエアバッグ用基布110の内の別々のバッグ用基布としての流入側基布114と下側基布112とから延設されて、構成されている。
そのため、第1実施形態では、ガス流入部62の天井壁部66と底壁部63とが、バッグ本体部70を袋状に構成するエアバッグ用基布110の流入側基布114と下側基布112とから延設されて形成されていることから、ガス流入部62とバッグ本体部70との連結部位に、縫製等の結合手段を極力使用せずに済み、ガスシール性を確保して、ガス流入部62とバッグ本体部70との連結状態を確保できる。
特に、第1実施形態では、バッグ本体部70を構成するエアバッグ用基布110が、膨張完了形状の上面側に配置される上側壁部75を構成する上側基布111と、下面側に配置される下側壁部74を構成する下側基布112と、左右方向の側面におけるガス流入部62に連なる側の流入側壁部76を構成する流入側基布114と、左右方向の側面におけるガス流入部62から離れた離隔側壁部77を構成する離隔側基布116と、後面側の後側壁部78を構成する後側基布117との5枚から構成されている。そして、流入側基布114が、ガス流入部62の天井壁部66を構成する天井側部115を備え、下側基布112が、ガス流入部62の底壁部63を構成する底側部113を備えて構成されている。
そのため、第1実施形態では、バッグ本体部70が、前端部71から後方に延びる部位の膨張形状を、上側壁部75、下側壁部74、流入側壁部76、及び、離隔側壁部77からなる略四角柱状に構成できる。そのため、バッグ本体部70は、上側壁部75と下側壁部74との上下方向の厚さ寸法(間隔)を後方側にかけて漸増させる形状を、左右の流入側壁部76と離隔側壁部77とを対応させ、さらに、適宜、上側壁部75と下側壁部74とを連結する縦テザー82等を設ける等して、容易に確保できる。さらに、ガス流入部62を構成する天井壁部66の天井側部115が、流入側壁部76を形成する流入側基布114から延設され、ガス流入部62を構成する底壁部63の底側部113が、下側壁部74を形成する下側基布112から延設される構成となって、バッグ本体部70の流入側壁部76とガス流入部62の天井壁部66とが、一枚の連なった流入側基布114から形成され、また、バッグ本体部70の下側壁部74とガス流入部62の底壁部63とが、一枚の連なった下側基布112から形成されることから、ガス流入部62をバッグ本体部70の右方に連通させる構成であっても、ガス流入部62の天井壁部66と底壁部63とが、それぞれ、バッグ本体部70の流入側壁部76と下側壁部74とに対して、縫製等の結合手段を使用せずに、連なって連結される構成となって、容易にガスシール性を確保して、ガス流入部62とバッグ本体部70とを連結させることができる。
なお、第1実施形態では、前席用エアバッグ61の外周壁を5枚のエアバッグ用基布110(111,112,114,116,117)から構成したが、後側基布117の一部若しくは全部を、上側基布111、下側基布112、流入側基布114、離隔側基布116のいずれか一つ、あるいは、二つ等から延設させて、4枚構成のエアバッグ用基布から前席用エアバッグの外周壁を構成してもよい。あるいは、運転席側凹部が小さい、あるいは、運転席側凹部を設けない等の構成の場合、下側基布、後側基布、及び、上側基布を一枚から構成して、他の流入側基布や離隔側基布と合わせた計3枚のエアバッグ用基布から前席用エアバッグの外周壁を構成してもよい。
但し、実施形態のような5枚構成のエアバッグ用基布から構成する場合には、大きく凹む運転席側凹部、換言すれば、左右方向の幅寸法を大きくした前支持部93a、を確保し、かつ、縦テザー82や横テザー86とを設けて、後方側に漸増する立体的なバッグ本体部70を、容易に、形成することができる。
なお、助手席用エアバッグ31と連結する上下二つの連結テザーを設ける場合、図18〜21に示す第2実施形態の前席用エアバッグ装置60Aの前席用エアバッグ61Aのように構成しても良い。この前席用エアバッグ61Aでは、上下の連結テザー98A,99Aが、上下方向の長さ寸法を小さくして、上下にずれて配設されている。助手席用エアバッグ31と前席用エアバッグ61Aとの間の凹部102を塞ぐカバー布101Aは、設けなくともよいが、二点鎖線に示すように、連結テザー98A,99Aの後方を覆うように、上下方向の長さ寸法を大きくして、配設してもよい。このカバー布101Aを連結テザーとして考慮すれば、第2実施形態では、計3つの連結テザー98A,99A,101Aが配設される構成となり、連結テザーは3つ以上配設してもよい。
また、第1実施形態では、運転席側凹部92を設けた前席用エアバッグ61を例示したが、図22〜25に示す第3実施形態の前席用エアバッグ装置60Bの前席用エアバッグ61Bのように、運転席側凹部を設けずに構成してもよい。
なお、この前席用エアバッグ61Bは、第1実施形態の前席用エアバッグ61と比較して、運転席側凹部を備えていない構成として、左右方向の幅寸法が小さくなり、横テザー86Bが前後方向にずれた3つの第1横テザー87B、第2横テザー88B、及び、第4横テザー90Bから形成されて、運転席側凹部92を設けるための第3横テザー89を備えていない構成としている。縦テザー82Bは、第1実施形態と同様に、前後にずれた第1縦テザー83Bと第2縦テザー84Bとから構成されている。
また、エアバッグ用基布110Bとしては、エアバッグ61Bの左右方向の幅寸法を狭くするように、上側壁部75を形成する上側基布111B、下側壁部74とガス流入部62の底壁部63とを形成する底側部113を備えた下側基布112B、流入側壁部76とガス流入部62の天井壁部66とを形成する天井側部115を備えた流入側基布114B、離隔側壁部77を形成する離隔側基布116B、及び、後側壁部78を形成する後側基布117B、から構成されている。
さらに、第1実施形態の前席用エアバッグ装置60では、前席用エアバッグ61と助手席用エアバッグ31との収納部位を共用して配設する場合を説明したが、図26,27に示す第4実施形態の前席用エアバッグ装置60Cように、運転席13の前方のインパネ1の運転席側部3に収納するように構成してもよい。
この前席用エアバッグ装置60Cの前席用エアバッグ61Cは、収納部位としてのケース50Cの取付座53Cに対し、図示しないリテーナ41を利用して、インフレーター45Cとともに、ガス流入部62Cの取付部65が取付固定されている。そして、ガス流入部62Cの右方側にバッグ本体部70Cの前端部71が連なっている。そして、バッグ本体部70Cは、前端部71が、後方に向かって上下方向の厚さ寸法を漸増させて、後方の本体膨張部72に連なり、本体膨張部72は、その後面側で、車両Vの左右方向の中央側に向かう前席乗員M、すなわち、斜め右前方向に前進移動する運転者DM、あるいは、斜め左前方向に前進移動する助手席搭乗者PMを受け止め可能に構成されている。勿論、運転席13と助手席16との間の中央席17に着座した前席乗員Mが、前進移動しても、エアバッグ61Cが的確に受け止めることができる。
そして、この前席用エアバッグ61Cでも、ガス流入部62Cが、取付部65を有した底壁部63と天井壁部66との外周縁相互を結合(縫合)させた平面バッグ構造として、膨張完了時の上下方向の厚さ寸法を抑制されるように構成されている。また、膨張完了時に、ガス流入部62Cの右方側にバッグ本体部70Cの前端部71が連通され、前端部71を基準に本体膨張部72が後方側に直線状に膨張して、上方から見て、前席用エアバッグ61Cが、L字状に配設される。
そのため、この第4実施形態の前席用エアバッグ装置60Cでも、作動時、前席用エアバッグ61Cが、収納部位としてのケース50C付近での周囲の部材との干渉を抑制して、運転席用エアバッグ21と助手席用エアバッグ31との間で、上方から見て収納部位のケース50Cの部位からL字形に展開膨張することができる。そして、この前席用エアバッグ装置60Cでは、前席用エアバッグ61Cのバッグ本体部70Cが、前端部71側から本体膨張部72側にかけて、前後方向に沿った後方側に向かって展開膨張することができることから、前席の運転者DMや助手席搭乗者PMからなる前席乗員Mが、膨張を完了させた前席用エアバッグ61Cに対して、斜め右前方側に向かって当たる状態となったり、逆に、斜め左前方向側に向かって当たる状態となっても、性能を低下させること無く、共に、それらの前席乗員Mを良好に受け止めることが可能となる。勿論、中央席17に着座した前席乗員Mが、前進移動しても、エアバッグ61Cが的確に受け止めることができる。
また、図28,29に示す第5実施形態の前席用エアバッグ装置60Dのように、助手席16の前方のインパネ1の助手席側部4に搭載されて、助手席用エアバッグ装置として使用される構成としてもよい。
すなわち、この前席用エアバッグ装置60Dの前席用エアバッグ61Dは、収納部位としてのケース50Dの取付座53Dに対し、図示しないリテーナ41を利用して、インフレーター45Cとともに、ガス流入部62Dの取付部65が取付固定されている。そして、ガス流入部62Dの左方側にバッグ本体部70Dの前端部71が連なっている。そして、バッグ本体部70Dは、前端部71が、後方に向かって上下方向の厚さ寸法を漸増させて、後方の本体膨張部72に連なり、本体膨張部72は、その後面側で、前進移動する助手席搭乗者PMを受け止め可能に構成されている。
この前席用エアバッグ61Dでも、ガス流入部62Dが、取付部65を有した底壁部63と天井壁部66との外周縁相互を結合(縫合)させた平面バッグ構造として、膨張完了時の上下方向の厚さ寸法を抑制されるように構成されている。また、膨張完了時に、ガス流入部62Dの左方側にバッグ本体部70Dの前端部71が連通され、前端部71を基準に本体膨張部72が後方側に直線状に膨張して、上方から見て、前席用エアバッグ61Dが、L字状に配設される。
そのため、この第5実施形態の前席用エアバッグ装置60Dでも、作動時、前席用エアバッグ61Dが、収納部位としてのケース50D付近での周囲の部材との干渉を抑制して、助手席16の前方側で、上方から見て収納部位のケース50Cの部位からL字形に展開膨張することができる。そして、この前席用エアバッグ装置60Dでは、前席用エアバッグ61Dのバッグ本体部70Dが、前端部71側から本体膨張部72側にかけて、前後方向に沿った後方側に向かって展開膨張することができることから、前進移動する助手席搭乗者PMを良好に受け止めることが可能となる。
また、前席用エアバッグに運転席用エアバッグを収納するような運転席側凹部を設ける場合、図30、31に示す第6実施形態の前席用エアバッグ装置60Eの前席用エアバッグ61Eのように、バッグ本体部70Eの後端70a側における運転席13側の下部70e側に、膨張を完了させた運転席用エアバッグ21の下部21c側に接触若しくは接近する隆起部95を、突出するように配設させてもよい。
この前席用エアバッグ61Eは、バッグ本体部70Eの後端70aの運転席用エアバッグ21側に、隆起部95を備えている点が相違するだけで、他の構成は、第1実施形態の前席用エアバッグ61と同様であり、同様な作用効果を奏する。
そして、この第6実施形態では、バッグ本体部70の後端70a側の下部70e側に、運転席用エアバッグ21の下部21c側に接触若しくは接近する隆起部95が、配設されていることから、運転席用エアバッグ21と前席用エアバッグ61Eとの間に、シートベルトBDを装着した運転者DMが、前屈みの状態で移動し、そして、運転席用エアバッグ21の斜め下方へ外れようとしても、前席用エアバッグ61Eの隆起部95が、その運転者DMの頭部H、肩部S、腕部A、あるいは、腰部Wを含めた上半身UBを的確に受け止めることができる。
なお、第6実施形態の前席用エアバッグ61Eにおいて、カバー布101の下方部位の助手席用エアバッグ31側の部位にも、二点鎖線に示すように、助手席用エアバッグ31の後端下部31ab側に接触若しくは接近する隆起部96を設けてもよい。このような構成であると、助手席用エアバッグ31と前席用エアバッグ61Eとの間に、シートベルトBPを装着した助手席搭乗者PMが、前屈みの状態で移動し、そして、カバー布101の下方側に進入しようとしても、前席用エアバッグ61Eの隆起部96が、その助手席搭乗者PMの頭部H、肩部S、腕部A、あるいは、腰部Wを含めた上半身UBを的確に受け止めることができることとなる。
ちなみに、隆起部96を設ける場合には、カバー布101を省略しても良い。
また、前席用エアバッグと助手席用エアバッグとを連結する連結テザーを設ける場合、図32〜34に示す第7実施形態の前席用エアバッグ装置60Fの前席用エアバッグ61Fのように構成しても良い。この前席用エアバッグ61Fでは、膨張完了時のバッグ本体部70の上面70gにおける助手席用エアバッグ31側の縁70hと、膨張完了時の助手席用エアバッグ31の上面31gにおける前席用エアバッグ61F側の縁31hとを連結するように、連結テザー100を配設している。連結テザー100は、下側連結布103と同様に、膨張完了時のエアバッグ61F,31におけるインパネ1の後面2a,4aから後方に離れた部位の前後方向の中間付近に、配置されている。そして、連結テザー100は、エアバッグ61F,31にそれぞれ連結される一対の布片100a相互を連結して、形成されている。この前席用エアバッグ装置60Fでは、前席用エアバッグ61Fに連結テザー100を設けている点が、第2実施形態のエアバッグ61Aと相違しているだけで、他の構成は、第2実施形態の前席用エアバッグ装置60Aと同様な構成としている。
そして、この第7実施形態でも、エアバッグ61F,31の上面61g,31g側相互を連結する連結テザー100によって、展開膨張途中の前席用エアバッグ61Fと助手席用エアバッグ31とが、より一層、共に離反すること無く、ケース50から展開膨張する状態を確保できて、助手席搭乗者PMや運転者DMの前席乗員Mを、的確に受け止めることができる。
また、第1実施形態の前席用エアバッグ装置60と助手席用エアバッグ装置30とを備えてなる前席乗員保護装置FABでは、助手席用エアバッグ31が、左右の側壁部位相互(左壁部33b、右壁部33c相互)を連結して左右方向の幅寸法を規制する横テザー36,36(図15参照)を、配設させている。
そのため、この前席乗員保護装置FABでは、助手席用エアバッグ31が、内部に配置された横テザー36により、膨張途中や膨張完了時に、左右方向の幅寸法を規制されて、前席用エアバッグ61側に突出することを抑制される。そのため、助手席用エアバッグ31の前席用エアバッグ61への干渉が抑制されて、前席用エアバッグ61の左右方向のブレや、前席用エアバッグ61との干渉時に反力を受ける助手席用エアバッグ31自体の左右方向のブレを抑制して、前席用エアバッグ61と助手席用エアバッグ31とが、円滑に後方側へ展開膨張し、そして、膨張を完了させることが可能となる。
そして、助手席用エアバッグに横テザーを設ける場合、図35に示す前席乗員保護装置FAB1のように構成してもよい。図35に示す前席乗員保護装置FAB1は、第8実施形態となる前席用エアバッグ装置60Gの前席用エアバッグ61Gが、膨張完了時の左右方向で対向する壁部76,77相互を連結する横テザー86を、前後にずらして複数配設させている。そして、助手席用エアバッグ装置30の助手席用エアバッグ31Gの横テザー37が、助手席用エアバッグ31Gの膨張完了時に、膨張完了時の前席用エアバッグ61Gにおける前後にずれて配置されている横テザー88,89の間の側方(右方)に、配置されるように、配設されている。
なお、この前席用エアバッグ61Gは、膨張完了時の左右方向で対向する壁部76,77相互を連結する横テザー86が、第1実施形態と同様に、前後方向にずれ、かつ、それぞれ、左右方向に沿って配置される4つを備えて構成されている。すなわち、4つの横テザー86は、最前列側から順に、第1横テザー87、第2横テザー88、第3横テザー89、及び、第4横テザー90として、配設されている。
そして、前席用エアバッグ61Gの膨張完了時の上下方向で対向する壁部74,75相互を連結する縦テザー82Gは、左右方向に幅方向を設けた帯状として、前後にずれた3つの第1縦テザー83、第2縦テザー84、及び、第3縦テザー85、を備えて構成されている。最前列の第1縦テザー83は、二列目の第2縦テザー84よりは、下側壁部74と上側壁部75との上下方向の連結距離を短くして配設されている。そして、第1縦テザー83は、第1横テザー87の前方に配置され、第2縦テザー84は、第1横テザー87と第2横テザー88との間に配置され、第3縦テザー85は、第2横テザー88と第3横テザー89との間に配置されている。
助手席用エアバッグ31Gは、既述したように、横テザー37を、膨張完了時の状態で、前席用エアバッグ61Gの第2横テザー88と第3横テザー89との間の右方側に、配置させている。なお、この助手席用エアバッグ31Gでは、横テザー37の前方側にも、左右方向で対向する左壁部33bと右壁部33cとに結合される横テザー38を配設している。この横テザー38も、第1横テザー87と第2横テザー88との間の右方側に配置させている。
これらのテザー37,38も、第3縦テザー85を含めて、対向する壁部に結合させた布片37a,38a,85a相互を結合して、形成されている。
また、前席用エアバッグ61Gは、第3縦テザー85を備えている点が、第1実施形態の前席用エアバッグ61と相違するだけあり、他の構成は、第1実施形態の前席用エアバッグ61と同様としている。助手席用エアバッグ31Gは、取付部35付近が左右方向の幅寸法を狭くしている点と、横テザー38の配置位置を前方に配置させている点が、第1実施形態の前席乗員保護装置FABの助手席用エアバッグ31と相違するだけであり、他の構成は、第1実施形態の前席乗員保護装置FABの助手席用エアバッグ31と略同様な構成としている。
そして、このような構成の前席乗員保護装置FAB1では、膨張途中や膨張完了時に、前席用エアバッグ61Gにおける前後の横テザー87,88間の部位や横テザー88,89間の部位が、助手席用エアバッグ31G側に突出しても、助手席用エアバッグ31Gは、その位置に、横テザー37,38を配置させていることから、的確に、前席用エアバッグ61Gと助手席用エアバッグ31Gとの干渉を抑制することができる。勿論、前席用エアバッグ61Gは、前後にずれた複数の横テザー86(87,88,89,90)を配設させていることから、前席用エアバッグ61Gの助手席用エアバッグ31G側への突出を前後方向の長い範囲にわたって抑制できる。そのため、助手席用エアバッグ31Gの左右方向のブレや、助手席用エアバッグ31Gとの干渉時に反力を受ける前席用エアバッグ61G自体の左右方向のブレを抑制して、前席用エアバッグ61Gと助手席用エアバッグ31Gとは、より円滑に後方側へ展開膨張して膨張を完了させることが可能となる。
なお、図例では、助手席用エアバッグ31Gに、二つの横テザー37,38を設けた場合を示したが、後方側の横テザー37を配設するだけの構成としてもよい。勿論、図15に示す助手席用エアバッグ31でも、横テザー36を一つとしてもよい。
また、第1実施形態の前席乗員保護装置FABの助手席用エアバッグ31でも、二つの横テザー36を、膨張完了時の状態で、前席用エアバッグ61の前後にずれた横テザー86,87間の部位、横テザー87,88間の部位、あるいは、横テザー89,90間の部位における側方(右方側)に、配置させてもよい。