以下、本実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。まず、本実施の形態に係る船外機の換気構造が適用される船外機の概略構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る船外機の全体斜視図である。なお、以下の図においては、説明の便宜上、船外機前方を矢印FR、船外機後方を矢印RE、船外機左方を矢印L、船外機右方を矢印Rでそれぞれ示す。図1Aにおいては、本実施の形態に係る船外機を右前方側から示している。図1Bにおいては、船外機を左後方側から示している。
図1A、図1Bに示すように、本実施の形態に係る船外機1は、船外機本体10と、この船外機本体10を船体の船尾部(不図示)に取り付けるためのブラケット装置11とを含んで構成される。船外機本体10は、本体上部に設けられたエンジンカバー14と、このエンジンカバー14の下方に設けられた胴体部19とを有する。エンジンカバー14は、アッパーカバー15及びロアカバー16によって構成される。胴体部19の下端部近傍には、プロペラ13が設けられている。ブラケット装置11は、ロアカバー16及び胴体部19の前方に配置されている。
アッパーカバー15は、概して下方側に開口した形状を有する。一方、ロアカバー16は、概して上方側に開口した形状を有する。これらのアッパーカバー15とロアカバー16とを組み合わせることで、船外機本体10の内部にエンジンルームが形成される。このエンジンルームには、詳細について後述するように、エンジン12、吸気装置2及び各種電装部品等が収容される。なお、アッパーカバー15とロアカバー16との合わせ面141には、図示しないシール部材が配置される。このシール部材は、概して環形状を有し、アッパーカバー15及びロアカバー16の合わせ面141から海水等の水分が浸入するのを防止する役割を果たす。
アッパーカバー15の前方には、エンジン12を始動させるリコイルスタータ(不図示)用のレバー17が船外機1の前方に向かって突出して設けられる。このレバー17を引くことでエンジン12が始動される。また、アッパーカバー15の後方には、図1Bに示すように、エンジン12の燃焼用空気を取り込むための吸気取入口151が設けられている。
アッパーカバー15の左方側側面の上端部近傍には、エンジンカバー14内の空気を外部に排出する排気口152が設けられている。排気口152は、前後方向に延在するスリット形状を有している。排気口152は、アッパーカバー15(エンジンカバー14)の前後方向の略中央に設けられている(図10参照)。
ロアカバー16の左方側側面の上下方向の中央近傍には、エンジンカバー14内に空気を取り込む吸気口161が設けられている。吸気口161は、概して円形状を有している。吸気口161は、ロアカバー16(エンジンカバー14)の前後方向の略中央に設けられている(図10参照)。この吸気口161と、アッパーカバー15の排気口152とは、エンジンカバー14の左方側側面においては、上下に並べて配置されている(図10参照)。
ロアカバー16の前方であって、ブラケット装置11の上方には、船外機1の前方に向かって突出するようにティラーハンドル18が設けられている。ティラーハンドル18は、ブラケット装置11が固定される船尾部分を支点として、船外機本体10を上下及び左右方向に揺動操作可能に構成されている。ティラーハンドル18の先端には、スロットルグリップ181が取り付けられている。スロットルグリップ181は、ティラーハンドル18の軸回りに回動可能に取り付けられている。スロットルグリップ181の回動量に応じてスロットルバルブ(不図示)の開度が調整される。これにより、船体の速度や加減速を制御することができる。
船外機本体10には、上下方向に延在してドライブシャフト(不図示)が配置されている。このドライブシャフトの下端部には、動力変換機構が設けられている。エンジン12は、これらのドライブシャフト及び変換機構を介してプロペラ13に連結されている。船外機1においては、これらのドライブシャフト及び変換機構により、エンジン12の駆動力をプロペラ13の回転力に変換して推進力を得る。
次に、図2〜図4を参照して、エンジンカバー14の内部の構成について説明する。図2は、図1Aに示す状態からアッパーカバー15を取り外した船外機1の斜視図である。図3は、図1Bに示す状態からアッパーカバー15を取り外した船外機1の斜視図である。図4は、図1Bに示す状態からエンジンカバー14(アッパーカバー15及びロアカバー16)を取り外した船外機1の斜視図である。なお、図2においては、説明の便宜上、アッパーカバー15の一部を構成するガイド部材31を示している。
図2〜図4に示すように、船外機本体10(より具体的には、エンジンカバー14)のエンジンルーム内には、エンジン12が収容されている。エンジン12は、例えば、多気筒4サイクルエンジンによって構成される。本実施の形態において、エンジン12の一部を構成するエンジンブロック121は、シリンダ(不図示)の軸方向と船外機1の前後方向とが一致するように構成されている。
エンジンブロック121の右方側には、吸気装置2が設けられている(図2参照)。吸気装置2は、アッパーカバー15の吸気取入口151から取り入れた外気をエンジン12内の燃焼室に供給する役割を果たす。特に、吸気装置2は、装置内を流通する外気の温度の上昇を抑制しつつ、外気に含まれる水分を分離する役割を果たす。吸気装置2は、吸気ダクト20、吸気消音箱21、スロットルボディ22(図6参照)及び吸気マニフォルド23を含んで構成される。
図2に示すように、吸気ダクト20及び吸気消音箱21は、アッパーカバー15を取り外した状態で全体が露出する位置に配置されている。すなわち、吸気ダクト20及び吸気消音箱21は、エンジンカバー14の合わせ面141よりも上方側に配置されている。吸気マニフォルド23は、その下端部周辺の一部がロアカバー16の一部に対向する位置に配置されている。なお、この吸気装置2の詳細な構成については後述する。
エンジンブロック121の左方側には、排気系部品、オイルフィルタ41及び各種電装部品が集約して配置されている(図3、図4参照)。例えば、エンジンブロック121の左方側側面には、排気系部品として、排気マニフォルド40が設けられている。排気マニフォルド40は、下方に向かって延びている。エンジン12内で発生した排気ガスは、排気マニフォルド40を通じて船外機本体10(より具体的には、胴体部19)の下端部近傍から排出される。また、エンジンブロック121の左側面には、電装部品として、図示しない発電機からの電気を整流し所望の電圧に制限するレギュレータ42やエンジンコントロールユニット43が設けられている。
図3に示すように、オイルフィルタ41及びエンジンコントロールユニット43は、アッパーカバー15を取り外した状態で全体が露出する位置に配置されている。すなわち、オイルフィルタ41及びエンジンコントロールユニット43は、エンジンカバー14の合わせ面141よりも上方側に配置されている。一方、レギュレータ42は、ロアカバー16の内壁に対向する位置に配置されている(図4参照)。すなわち、レギュレータ42は、エンジンカバー14の合わせ面141よりも下方側に配置されている。
エンジン12の上部には、エンジン12を始動させるためのリコイルスタータ30が設けられている。リコイルスタータ30は、後述するクランクシャフト34(図8参照)の軸端に設けられる円板状のフライホイール35(図8参照)をフライホイールカバー36で覆って構成される。フライホイールカバー36の上部には、エンジン12における吸気及びエンジンカバー14内の換気(排気)のためのガイド部材31(図2参照)が配置されている。本実施の形態において、ガイド部材31はアッパーカバー15の内側に固定されるものである。図2においては説明の便宜上、ガイド部材31のみフライホイールカバー36の上部に示している。
ここで、このガイド部材31の構成について、図5を参照しながら説明する。図5は、本実施の形態に係る船外機1が有するガイド部材31の近傍の部分拡大図である。なお、図5においては、船外機1の左後方側から示している。また、図5においては、図2と同様に、エンジン12の上方に、アッパーカバー15に固定されるガイド部材31を示している。
図5に示すように、ガイド部材31は、エンジン12の上方側であって、船外機1の後方側の一部に対向して配置されている。ガイド部材31は、吸気ダクト20及びリコイルスタータカバー30の一部を覆う底壁部311を有している。底壁部311の側縁部は、アッパーカバー15の内壁面(側壁面)の形状に対応した形状を有する。また、底壁部311には、底壁部311の表面から上方に向かって仕切壁312が立設される。仕切壁312は、船外機1の左右方向に延在する第1仕切壁313と、この第1仕切壁313の中央から左前方側に向かって延在する第2仕切壁314とを有する。これらの第1仕切壁313、第2仕切壁314の上端部は、アッパーカバーの内壁面(上壁面)の形状に対応した形状を有する。したがって、ガイド部材31がアッパーカバー15に固定された状態で、アッパーカバー15とガイド部材31との間には、一対の仕切られた空間が形成される。第1仕切壁313の後方側に形成される空間により吸気ガイド部32が構成される。一方、第1仕切壁313と第2仕切壁314との間に形成される空間により排気ガイド部33が構成される。吸気ガイド部32は、上述した吸気取入口151に連通している。排気ガイド部33は、上述した排気口152に連通している。
吸気ガイド部32において、底壁部311には段差部321が設けられている。底壁部311は、この段差部321の前方側の一部が、後方側の一部よりも高く構成されている。段差部321の前方側の底壁部311には、上面視矩形状で筒状の立壁部322が設けられている。この立壁部322は、第1の水分離部として機能する。立壁部322の内部において、左方側には底部323が設けられている。一方、立壁部322の右方側には貫通孔324が設けられている。この貫通孔324に対応する底壁部311の一部には、開口部325が形成されている。ガイド部材31がアッパーカバー15に固定された状態において、開口部325は、後述する吸気ダクト20の開口部201(図3参照)に接続される。また、段差部321よりも後方側の底壁部311には、後方側に向かって下がる傾斜部326が設けられている。この傾斜部326の後端部の上面は、吸気取入口151の下端部を規定するアッパーカバー15の一部と略同一高さに配置されている。
一方、排気ガイド部33において、底壁部311には段差部331が設けられている。底壁部311は、この段差部331の内側の一部が、外側の一部よりも高く構成されている。段差部331の内側の底壁部311には、開口部332が形成されている。ガイド部材31がアッパーカバー15に固定された状態において、開口部332は、後述するフライホイールカバー36の吐出口395(図3参照)に接続される。
このように構成されたガイド部材31において、アッパーカバー15(図1参照)の吸気取入口151から流入した外気は、吸気ガイド部32の底壁部311や仕切壁312(第1仕切壁313)、立壁部322の貫通孔324を伝って吸気ダクト20内に流入する。また、吸気ガイド部32に入り込んだ海水等の水分は、底壁部311に立設された立壁部322により分離される。そして、吸気ガイド部32の底壁部311及び傾斜部326を介して、吸気取入口151から外部に排出される。一方、エンジンカバー14内を循環し、フライホイールカバー36に入り込んだ空気は、吐出口395を介して排気ガイド部33に送り込まれる。そして、排気ガイド部33の底壁部311や仕切壁312(第1仕切壁313、第2仕切壁314)を伝ってアッパーカバー15の排気口152から外部に排出される。
次に、図6を参照して本実施の形態に係る船外機1が有する吸気装置2の構成について説明する。図6は、本実施の形態に係る船外機1が有する吸気装置2の構成の説明図である。図6A及び図6Bにおいては、それぞれ吸気装置2の斜視図及び側面図を示している。
図6に示すように、吸気装置2は、吸気マニフォルド23と、吸気マニフォルド23の上流端側に接続されるスロットルボディ22と、スロットルボディ22の上流端側に接続される吸気消音箱21と、吸気消音箱21の上流端に接続される吸気ダクト20とを含んで構成される。吸気ダクト20の開口部201は、吸気ガイド部32(図5参照)を介してアッパーカバー15に設けられた吸気取入口151に連通される。すなわち、吸気装置2は、吸気取入口151と、吸気消音箱21とを連通する吸気ダクト20を備え、外気を直接的に導入可能な構成を有している(ダイレクト吸気)。
吸気ダクト20は、船外機1の前後方向に筒状に延びるダクト部202と、ダクト部202の下方に所定の容積を有するレゾネータチャンバ部(以下、単に「レゾネータ部」という)203とを連通路204で連通して形成される。ダクト部202の上流端には、上方に開口する開口部201が設けられている。ダクト部202の下流端には、吸気消音箱21に接続される接続部205が設けられている。吸気ダクト20は、ダクト部202によって空気の流通経路を確保すると共に、レゾネータ部203によって吸気時の騒音(吸気騒音)を低減する役割を果たす。
吸気消音箱21は、上流端が吸気ダクト20に接続され、下流端がスロットルボディ22に接続される本体部24と、本体部24に対して着脱可能な蓋体部26とを含んで構成される。吸気消音箱21の内部には、図示しないエアフィルタエレメントが設けられている。吸気消音箱21は、吸気時の騒音を低減すると共に、空気中の水分を捕捉する役割を果たす。
スロットルボディ22は、内部に図示しないスロットルバルブを含んで構成される。スロットルグリップ181(図4参照)の回動量に応じてスロットルバルブの開度が調整される。これにより、エンジン12内に供給される空気の量が調整される。
吸気マニフォルド23は、スロットルボディ22が接続される上流端から船外機1の後方に向かって複数の流路(本実施の形態においては3つ)に分かれて構成される。そして、複数の流路は、それぞれエンジンブロック121(図4参照)の各吸気ポート(不図示)に接続される。
このように構成された吸気装置2において、吸気ダクト20の開口部201から流入した空気は、吸気ダクト20内のダクト部202から吸気消音箱21を通じ、スロットルボディ22及び吸気マニフォルド23を通過してエンジン12内に供給される。上述したように、吸気ダクト20のレゾネータ部203と吸気消音箱21とによって吸気時の騒音が低減される。吸気装置2では、吸気ダクト20及び吸気消音箱21がサイレンサアッシーを構成している。また、空気に含まれる水分は、吸気ダクト20及び吸気消音箱21を通過する間に分離される。そして、エアフィルタエレメントによって、さらに空気中の水分が除去される。このようにして、エンジン12内に水分が浸入することを防止することができる。
次に、図7〜図9を参照して、本実施の形態に係る船外機1が有するフライホイールカバー36の構成について説明する。図7は、本実施の形態に係る船外機1が有するフライホイールカバー36周辺の拡大図である。図8は、本実施の形態に係る船外機1が有するフライホイール35周辺の拡大図である。図9は、本実施の形態に係る船外機1が有するフライホイールカバー36の斜視図である。図9Aにおいては、フライホイールカバー36を上方側から示し、図9Bにおいては、フライホイールカバー36を下方側から示している。
図7及び図8に示すように、船外機1の上部には、リコイルスタータ30が設けられている。リコイルスタータ30は、クランクシャフト34の軸端に円板状のフライホイール35を設けて構成される。フライホイール35は、クランクシャフト34と一体的に固定される。フライホイール35は、フライホイールカバー36によって覆われている。フライホイールカバー36は、下方が開口した蓋形状を有している。フライホイールカバー36の上面には、フライホイールカバー36内の空気を外に排出するための吐出口395が設けられている。
フライホイールカバー36の前方には、上述したレバー17が突出するように設けられている。レバー17は、図示しないロープを介してフライホイール35に接続される。レバー17を握ってロープを引っ張ることにより、フライホイール35及びクランクシャフト34に回転力が与えられる。これにより、エンジン12が始動する。
フライホイールカバー36の直下には、電装部品ホルダ44に固定されたエンジンコントロールユニット43が配置されている。電装部品ホルダ44は、略直方体のエンジンコントロールユニット43を収容する空間を備えた枠状体によって形成されている。枠状体の上面は、フライホイールカバー36の開口を塞ぐ板状の上壁部441になっている。エンジンコントロールユニット43は、電装部品ホルダ44の収容空間内の所定の位置に固定される。
フライホイール35は、円板状に形成される円板部351の外周面にリングギヤ352を設けて構成される。円板部351の上面には、環状に突出する立壁部353が設けられている。立壁部353の内側の空間には、上述したロープが収容される。リングギヤ352は、円板部351より薄い板状に形成されると共に、円板部351の軸方向略中央で円板部351と一体的に固定される。リングギヤ352は、リングの外周に径方向外側に突出する複数の凸部354を周方向に等間隔に設けて構成される。
また、リングギヤ352の下方であって、円板部351の外周面には、径方向外側に突出する複数の凸部355が形成されている。そして、電装部品ホルダ44の上壁部441の上面であって、凸部355に対向する位置には、クランクシャフト34の回転角度を検出するクランクセンサ356が設けられている。クランクセンサ356は、フライホイール35の凸部355の位置からクランクシャフト34の回転角度を検出する。
このように構成されるリコイルスタータ30では、フライホイール35が回転されると、リングギヤ352(具体的には凸部354)及び凸部355に空気が衝突する。凸部354、355に衝突した空気は、フライホイール35の径方向外側に流される。このようにしてフライホイールカバー36内に生じる空気の流れが、フライホイール35の径方向外側に向かう旋回流となる。この旋回流が生じると、エンジンルーム内の空気は、電装部品ホルダ44の下方からフライホイールカバー36内へ送られる。そして、空気は、フライホイール35とフライホイールカバー36との隙間を通って吐出口395から外に排出される。このようにして、エンジンルーム内の換気が行われる。
フライホイールカバー36は、例えば、射出成型によって成形される。図9に示すように、フライホールカバー36は、フライホイール収容部37と、レバー収容部38とを繋げて一つの箱形状に形成される。フライホイール収容部37は、上面視略円形状で下方が開口された箱形状を有する。レバー収容部38は、このフライホイール収容部37の側面の一部から前方に向かって突出する略直方体形状を有している。また、レバー収容部38の基端部の左方側には、図示しないスタータモータの一部を収容するモータカバー部371が形成されている。
また、フライホイール収容部37の左後方部には、フライホイールカバー36内の空気を誘導する誘導部39が設けられている。誘導部39は、傾斜部391及び側壁部392で構成される。誘導部39は、これらの構成により、フライホイールカバー36内の空気をフライホイール収容部37から上方に誘導する。また、誘導部39の上面はフライホイール収容部37の上面に連なっている。誘導部39の上面には、上述した吐出口395が形成されている。吐出口395は、円弧状に形成されるスリットを径方向に複数本並べて配置して構成される。この吐出口395は、誘導部39により誘導された空気を外に排出する。また、誘導部39の内側において、フライホイール収容部37との境界部分には、第1ガイド壁393及び第2ガイド壁394が形成されている。これらの第1ガイド壁393及び第2ガイド壁394は、フライホイールカバー36内で発生する旋回流を吐出口395へガイドする役割を果たす。
このように構成されたフライホイールカバー36内で旋回流が発生すると、空気はフライホイール収容部37の内壁に沿って流れる。そして、空気は誘導部39に向かって流れ込む。誘導部39に流れ込んだ空気は、誘導部39の傾斜部391、側壁部392、第1ガイド壁393及び第2ガイド壁394によって上方側に誘導され、吐出口395からフライホイールカバー36の外に排出される。
次に、本実施の形態に係る船外機1の換気構造における換気経路について説明する。図10及び図11は、本実施の形態に係る船外機1の換気構造における換気経路を説明するための模式図である。なお、図10においては、説明の便宜上、本実施の形態に係る船外機1のアッパーカバー15を変形した一部の構成に示している。
図10及び図11に示すように、本実施の形態に係る船外機1においては、ロアカバー16に吸気口161が形成される一方、アッパーカバー15に排気口152が形成されている。船外機1が稼働すると、エンジンカバー14の外部の空気が吸気口161から取り込まれる。吸気口161から取り込まれた空気は、排気口152に向かってエンジンカバー14内を上方側に流れる。これらの吸気口161及び排気口152は、エンジンカバー14の同一面(左方側側面)に形成されている。このため、吸気口161から取り込まれた空気は、エンジンカバー14内におけるエンジンブロック121の左方側の空間を中心に上方側に流れる。
船外機1の稼働中においては、クランクシャフト34の回転に伴ってフライホイール35が回転する。このフライホイール35の回転に伴って、フライホイールカバー30内には旋回流が発生している。これに伴い、エンジンカバー14内を上方側に流れた空気がフライホイールカバー336内に取り込まれると共に、フライホイールカバー36内の空気が強制的に外部に排出される。フライホイールカバー36から排出された空気は、ガイド部材31の排気ガイド部33を介して排気口152から排出される。
なお、図11においては、説明の便宜上、フライホイールカバー36の上方側から空気が取り込まれる場合について説明している。しかしながら、エンジンカバー14内の空気は、フライホイールカバー36と周辺部材との間に形成される任意の隙間から取り込まれる。そして、フライホイールカバー36内の旋回流に巻き込まれると共に、吐出口395からフライホイールカバー36の外部に排出される。
本実施の形態に係る船外機1の換気構造においては、エンジンカバー14内にて吸気口161から排気口152までを繋ぐ経路で換気経路が形成される。そして、本実施の形態に係る船外機1の換気構造において、オイルフィルタ41は、このような換気経路上におけるロアカバー16とアッパーカバー15との合わせ面141よりも上方側の位置に配置されている。また、電装部品であるレギュレータ42は、このオイルフィルタ41よりも下方側の換気経路上に配置されている。特に、レギュレータ42は、換気経路上におけるロアカバー16とアッパーカバー15との合わせ面141よりも下方側の位置に配置されている。
このように換気経路上にオイルフィルタ41及びレギュレータ42が配置される。これにより、吸気口161から取り込まれた空気によってオイルフィルタ41の下方側の空間を冷却できるので、オイルフィルタ41の下方側の空間を有効に活用することができる。また、吸気口161から取り込まれた空気によって、オイルフィルタ41に到達する前にレギュレータ42を冷却できるので、効果的にレギュレータ42を冷却することができる。さらに、エンジンカバー14の合わせ面141よりも上方側にオイルフィルタ41が配置されることから、アッパーカバー15を取り外すだけでオイルフィルタ41の点検作業や交換作業を行うことができ、メンテナンス性を高めることができる。
また、レギュレータ42は、換気経路上におけるロアカバー16とアッパーカバー15との合わせ面141よりも下方側の位置に配置されている。このため、吸気口161とレギュレータ42との距離を短縮することができる。これにより、吸気口161から取り込まれた空気によって直接的にレギュレータ42を冷却することができる。これにより、デッドスペースとなり易いオイルフィルタ41の下方側の空間を有効に活用することが可能となる。なお、本実施の形態に係る船外機1の換気構造においては、レギュレータ42の冷却効果を向上する観点から、レギュレータ42の直下に吸気口161が位置するように、吸気口161が配置されている。
さらに、換気経路上の下流部においては、フライホイール35の回転に伴ってアッパーカバー15(より具体的には、フライホイールカバー36)内の空気を排気口152に導く構成となっている。これにより、アッパーカバー15(より具体的には、フライホイールカバー36)内の空気を強制的に排気口152に導くことができるので、エンジンカバー14内の換気効率を高めることが可能となる。
特に、本実施の形態に係る船外機1のように、吸気取入口151と、吸気消音箱21とを連通する吸気ダクト20を備え、外気を直接的に導入可能な構成(すなわち、ダイレクト吸気)を有する場合には、エンジンカバー14内の空気が滞留し易い。しかしながら、このようにエンジンカバー14(より具体的には、フライホイールカバー36)内の空気を強制的に排気口152に導く排気機構を備えることにより、エンジンカバー14内を効果的に換気できる。これにより、エンジンカバー14内の電装部品等が高温化して正常に稼働しなくなるような事態を抑制することが可能となる。
なお、本実施の形態に係る船外機1の換気構造において、吸気口161の内側には、図11に示すように、デフレクタ162が設けられている。デフレクタ162は、吸気口161から浸入した海水等の水分がエンジンカバー14内で飛散するのを防止する役割を果たす。このように吸気口161の内側にデフレクタ162を設けることにより、吸気口161から浸入した水分をエンジンカバー14内の所望の位置に導くことができる。これにより、エンジンカバー14内のエンジン12やレギュレータ42等の電装部品に直接水分がかかる事態を防止することが可能となる。
ここで、図12を参照しながら、このようにエンジンカバー14内に形成される換気経路の周辺の構成について説明する。図12は、本実施の形態に係る船外機1が有する換気構造の換気経路の周辺の構成の説明図である。なお、図12においては、説明の便宜上、吸気口161及び排気口152を破線により示している。
図12に示すように、換気経路上においては、吸気口161とレギュレータ42との間に発熱し得る電装部品が配置されていない。例えば、エンジン12からの排気ガスが通ることで発熱し得る排気マニュホルド40は、換気経路の後方側の位置に配置している。このため、吸気口161から取り込んだ空気が温められるのを防止することができる。これにより、吸気口161から取り込んだ空気による冷却性能が低下するのを防止することができる。
また、レギュレータ42の表面には、複数の放熱板421が設けられている。これらの放熱板421は、換気経路における換気方向に沿って延在して設けられている。すなわち、本実施の形態において、複数の放熱板421は、それぞれ上下方向に沿って延在して設けられている。このように放熱板421を設けることにより、吸気口161から取り込まれた空気を放熱板421に沿って流通させることができる。これにより、放熱板421を効率的に冷却することができる。この結果、レギュレータ42を効果的に冷却することが可能となる。
以上のように、本実施の形態に係る船外機1の換気構造においては、ロアカバー16に形成された吸気口161からアッパーカバー15までの換気経路上にて、エンジンカバー14の合わせ面141よりも上方側の一部にオイルフィルタ41を配置し、このオイルフィルタ41よりも下方側の一部に電装部品(レギュレータ42)を配置する。これにより、吸気口161から取り込まれた空気によってオイルフィルタ41の下方側の空間を冷却できるので、オイルフィルタ41の下方側の空間を有効に活用することができる。また、吸気口161から取り込まれた空気によって、オイルフィルタ41に到達する前にレギュレータ42を冷却できるので、効果的にレギュレータ42を冷却することができる。さらに、エンジンカバー14の合わせ面141よりも上方側にオイルフィルタ41が配置されることから、アッパーカバー15を取り外すだけでオイルフィルタ41の点検作業や交換作業を行うことができ、メンテナンス性を高めることができる。この結果、オイルフィルタ41の下方側の空間を有効に活用しつつ、エンジンカバー14内の構成部品に対する冷却性能及びメンテナンス性能を向上することが可能となる。
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
例えば、上記実施の形態においては、アッパーカバー15の側面(右方側側面)に単一の排気口152が形成される場合について説明している。しかしながら、排気口152の数量及び位置については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、図10に示すように、アッパーカバー15の側面に形成された排気口152に加え、上方側の後端部近傍に別の排気口153を設けるようにしてもよい。なお、この場合には、フライホイール35の回転に伴う排気機構により排出する方向を追加することが好ましい。このように排気口152、153を設ける場合には、エンジンカバー14内の換気効率を向上することが可能となる。また、排気口152の代わりに排気口153を設ける構成としてもよい。この場合には、排気口152が船体の進行方向の後方側に向けて開口していることから、エンジンカバー14から排出される空気量を増加でき、エンジンカバー14内の換気効率を向上することが可能となる。
また、上記実施の形態においては、換気経路上に配置される電装部品の一例としてレギュレータ42を用いて説明している。しかしながら、本実施の形態に係る船外機1の換気構造に適用される電装部品については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。本実施の形態に係る船外機1の換気構造においては、エンジンカバー14内に配置され、発熱し得る任意の電装部品を換気経路上に配置することができる。例えば、エンジンコントロールユニット43等を配置するようにしてもよい。
さらに、上記実施の形態においては、換気経路上に単一の電装部品(レギュレータ42)を配置する場合について説明している。しかしながら、換気経路上に配置される電装部品の数量は、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、2つ以上の電装部品を換気経路上に配置してもよい。2つ以上の電装部品を換気経路上に配置する場合には、これらの電装部品における発熱温度が均等化されるように配置することが好ましい。
以下、換気経路上に複数の電装部品が配置される場合に好適な態様について説明する。2つ以上の電装部品の発熱温度が均等化されるような配置を実現する方法として、これらの電装部品が所望の位置に配置されるように、ブラケット(以下、「電装部品用ブラケット」という)で保持することが考えられる。
図13は、本実施の形態に係る船外機1の換気構造に適用可能な電装部品用ブラケット45の説明図である。なお、図13においては、電装部品用ブラケット45を上方から示している。また、図13においては、電装部品として、2つのレギュレータ42A、42Bを備える場合について示している。例えば、レギュレータ42Aは、船外機1に搭載されるバッテリの充電に利用され、レギュレータ42Bに比べて発熱量が大きいものとする。一方、レギュレータ42Bは、船外機1に搭載されるエンジンコントロールユニット43の駆動に利用され、レギュレータ42Aに比べて発熱量が小さいものとする。なお、これらのレギュレータ42A、42Bは、それぞれ第1、第2の電装部品を構成する。
電装部品用ブラケット45は、例えば、金属板材に折り曲げ加工を施すことで形成される。図13に示すように、電装部品用ブラケット45は、船外機1の前後方向の2箇所で屈曲した形状を有している。電装部品用ブラケット45の左方側側面には、前方側部分に第1保持面451が設けられ、後方側部分に2保持面452が設けられている。第1保持面451には、レギュレータ42Aが保持される。第2保持面452には、レギュレータ42Bが保持される。
このように保持することにより、電装部品用ブラケット45においては、発熱量の大きいレギュレータ42Aが外側に配置される一方、発熱量の小さいレギュレータ42Bが内側に配置される。そして、このように保持した状態でレギュレータ42A、42Bが換気経路上に配置される。これにより、相対的にレギュレータ42Aにおける空気の接触面積を大きくすることができる。この結果、レギュレータ42A、42Bに対する冷却効率を調整することができ、発熱温度を均等化させることができる。これにより、発熱量が異なる複数の電装部品に対する冷却性能を確保することが可能となる。
また、上記実施の形態においては、換気経路上に、フライホイール35の回転に伴ってフライホイールカバー36内の空気を排気口152に導く排気機構を介在させる場合について説明している。しかしながら、本実施の形態に係る船外機1の換気構造については、このような排気機構を換気経路上に介在させない構成としてもよい。
図14は、本実施の形態に係る船外機1の換気構造の換気経路の変形例の説明図である。図14に示す船外機1の換気構造においては、ロアカバー16に形成された吸気口161と、アッパーカバー15に形成された排気口152とを直接繋ぐ換気経路を備える場合について示している。このような換気経路においては、吸気口161から取り込められた空気が、レギュレータ42及びオイルフィルタ41が配置された空間を通過した後、排気口152から外部に排出される。
このような換気経路を有する場合には、図10に示すように、吸気口161と排気口152とがエンジンカバー14の同一面(例えば、左方側側面)の上下方向に配置され、換気経路が略直線形状を有することが好ましい。この場合には、吸気口161から取り込まれた空気が、エンジンカバー14内で迂回等することなく、レギュレータ42等を冷却した直後に外部に排出されることから、冷却後に温まった空気がエンジンカバー14内に滞留するのを防止できる。これにより、船外機1における冷却性能を向上することが可能となる。
また、このような換気経路を有する場合には、吸気口161及び排気口152の内側にそれぞれデフレクタ162、154を設けることが好ましい。これにより、吸気口161や排気口152から浸入した海水等の水分をエンジンカバー14内の所望の位置に導くことができる。この結果、エンジンカバー14内のエンジン123やレギュレータ42等の電装部品に直接水分がかかる事態を防止することが可能となる。
さらに、上記実施の形態においては、船外機1が、吸気取入口151と、吸気消音箱21とを連通する吸気ダクト20を備え、外気を直接的に導入可能な構成(すなわち、ダイレクト吸気)を有する場合について説明している。しかしながら、本実施の形態に係る船外機1の換気構造は、ダイレクト吸気構造を有しない船外機1にも適用することができる。例えば、吸気取入口151から取り込んだ空気をエンジンカバー14内で流通させ、燃焼室等の供給する船外機にも適用することができる。