以下に、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明に係るインクジェットインクは、少なくとも顔料、樹脂、水、溶剤、及び界面活性剤を含んでなり、特に界面活性剤の処方に一つの特徴を有する。
本発明に係るインクジェットインクは、以下に説明する通り、界面活性剤として、界面活性剤Aを少なくとも含有し、好ましくは更なる界面活性剤として、界面活性剤B及び又はCを含有する。
本発明に係るインクジェットインク(以下、インクという場合がある。)は、界面活性剤として、当該界面活性剤1重量%、2−ピロリドン40重量%及び水59重量%からなる液の表面張力を24mN/m以下の範囲まで低下させることができる界面活性剤Aを、インク総量に対して0.001重量%以上0.1重量%以下の範囲で含有する。なお、本発明において、表面張力は、ウィルヘルミのプレート法により測定された値である。
このような界面活性剤Aとしては、フッ素系又はシリコン系界面活性剤を好ましく例示できる。
本発明において、フッ素系又はシリコン系界面活性剤は、平均分子量が1000以上のポリマー型界面活性剤であることが好ましく、特に好ましくは疎水部分の分子量合計が1000以上であることが好ましい。界面活性剤がインク中でエマルジョン状態になっている場合であっても、上記平均分子量を満たしているものであればよい。
本発明において、フッ素系界面活性剤とは、通常の界面活性剤の疎水性基の炭素に結合した水素原子の代わりに、その一部または全部をフッ素原子で置換したものを指す。この内、分子内にパーフルオロアルキル基を有するものが好ましい。
フッ素系の界面活性剤の内、ある種のものはDIC社からメガファック(Megafac)なる商品名で、旭硝子社からサーフロン(Surflon)なる商品名で、3M社からノベックなる商品名で、イー・アイ・デュポン・ネメラス・アンド・カンパニー社からゾニルス(Zonyls)なる商品名でそれぞれ市販されている。
シリコン系界面活性剤としては、好ましくはポリエーテル変性ポリシロキサン化合物があり、例えば、信越化学工業製のKF−905や、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社のTSF4440、TSF4445などが挙げられる。
また、本発明に係るインクジェットインクは、界面活性剤として、当該界面活性剤1重量%、2−ピロリドン40重量%及び水59重量%からなる液の表面張力が、上述した界面活性剤Aを用いた場合よりも高いフッ素系又はシリコン系界面活性剤を、更なる界面活性剤Bとして、インク総量に対して0.1重量%以上1重量%以下の範囲で含むことが好ましい。
更に、本発明に係るインクジェットインクは、界面活性剤として、当該界面活性剤のみを除いたインクジェットインクの全組成物に対して、当該界面活性剤を1重量%添加しても、添加後の組成物の表面張力を25mN/m以下に下げることのない界面活性剤を、更なる界面活性剤Cとして、インク総量に対して0.5重量%以上の範囲で含むことが好ましい。
このような界面活性剤Cとしては、格別限定されないが、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、および脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、およびポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩類、および第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤などを好ましく例示でき、これらの中から上記表面張力の条件を満たすものを適宜選択して用いることができる。
また、本発明に係るインクジェットインクは、表面張力が25mN/m以上の範囲である。表面張力は、ウィルヘルミのプレート法に基づいて測定した値である。
更に、本発明に係るインクジェットインクは、溶剤として、環状スルホン系、環状ラクタム系、環状イミダゾリジノン系又は環状ラクトン系からなる環状構造を有する溶剤を、インク総量に対して5重量%以上の範囲で含有する。
環状スルホン系溶剤は、環状スルホン構造を有する溶剤であり、スルホラン等を好ましく例示できる。
環状ラクタム系溶剤は、環状ラクタム構造を有する溶剤であり、2−ピロリドン(2−ピロリジノン)、N−メチル−2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム等を好ましく例示できる。
環状イミダゾリジノン系溶剤は、環状イミダゾリジノン構造を有する溶剤であり、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を好ましく例示できる。
環状ラクトン系溶剤は、環状ラクトン構造、つまり環状エステル構造を有する溶剤であり、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等を好ましく例示できる。
本発明においては、これら環状構造を有する溶剤の中でも、N−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン等を特に好ましく用いることができる。
上述した環状構造を有する溶剤は、界面活性剤を溶解し易い。そのため、これら溶剤をインク中に含有させると、通常は、記録媒体に着弾したインクドットの乾燥(水の蒸発)に伴って、界面活性剤が溶剤中に溶け込み、界面活性剤による表面張力低下機能が発揮され難くなり、インクドットの表面張力が上昇することが考えられる。乾燥に伴って表面張力が上昇したドットに隣接して、比較的表面張力が低い新たなドットが着弾形成されると、表面張力が小さい方から大きい方へ向かう所謂マランゴニ対流が発生して、先に打たれたドット中に新たなドットが流れ込み易くなる。その結果、ベタ印字部に斑や抜けが生じ易くなるものと推定される。これに対して、本発明の構成を備えるインクジェットインクは、上述した環状構造を有する溶剤を含んでいても、乾燥に伴って、少なくともインクが流動性を失うまでの間、表面張力が変化し難い、あるいは低下し易い性質を発揮し、これによりマランゴニ対流の発生を防止して、ベタ印字部に斑や抜けが生じ難くなるものと推定される。
そのため、本発明に係るインクジェットインクは、互いに一部が接触する状態で記録媒体上に2以上のドットを形成する場合に特に顕著な効果を発揮し、隣接するドットの着弾時差が、好ましくは3〜60秒の範囲と比較的大きい場合、具体的には、同一の画像領域を複数回のヘッドスキャンで描写するインクジェット法において特に際立った効果を奏する。特にその中でも、N−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン等を使用した場合、パス数の少ない高速印字における着弾時差でも、斑や抜けの発生が好適に防止され、きれいな画像を得ることができる。
また、本発明に係るインクジェットインクは、上述の環状構造を有する溶剤の他に、水に可溶な溶剤を含有する。
水に可溶な溶剤としては、グリコールエーテル類もしくは1,2−アルカンジオールまたは1,3−アルカンジオール類を含んでいることが好ましく、具体的には以下のような、溶剤が好ましい。
グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールのモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル類、トリエチレングリコールのモノアルキルエーテル類、テトラエチレングリコールのモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールのモノアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールのモノアルキルエーテル類、トリプロピレングリコールのモノアルキルエーテル類、エチレングリコールのジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールのジアルキルエーテル類、トリエチレングリコールのジアルキルエーテル類、テトラエチレングリコールのジアルキルエーテル類、プロピレングリコールのジアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールのジアルキルエーテル類、トリプロピレングリコールのジアルキルエーテル類、特にエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が好ましい。
また、1,2−アルカンジオール類としては、例えば、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール等が好ましい。
更に、1,3−アルカンジオール類としては、例えば、1,3−ヘキサンジオール、1,3−ヘプタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、等が挙げられ、特に1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,3−ヘプタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール等が好ましい。
水に可溶な溶剤としては、更に、3−メチル−3−メトキシブタノールや、1−メトキシ−2−ブタノール、ヘキシレングリコール等、分岐ジオールや、そのアルキルエーテル等を好ましく挙げることができる。
更に、本発明のインクジェットインクが含有できる溶剤としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、ブトキシジメチルプロピオンアミド、メトキシジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。
本発明に係るインクジェットインクは、以上に説明した環状構造を有する溶剤や、水に可溶な溶剤等を含めた該インクジェットインクが含有する溶剤全体のSP値が低いほど好ましく、特に24以下であることが好ましい。
本発明において、SP値(溶解度パラメーター)は、Hansenによる原子および原子団の蒸発エネルギーとモル体積の値より計算した分子凝集エネルギーの平方根で表される値(Hansen Solubility Parameters a useer's handbook参照)である。
本発明において、SP値は、Polymer HandBook (Second Edition)第IV章Solubility Parameter Valuesに記載があり、その値を用いる。単位は(cal/cm3)1/2であり、25℃における値を指す。なお、データの記載がないものについては、R. F. Fedors, Polymer Engineering Science, 14, p147 (1967)に記載の方法で計算することができる。
本発明において、「溶剤全体のSP値」とは、インク中に含まれる溶剤が1種である場合は、該溶剤のSP値を指し、インク中に2種以上の溶剤を含む場合は、各溶剤のSP値を、各溶剤の含有量に基づいて量平均した値を指す。ここで、量平均した値とは、具体的には、溶剤ごとに該溶剤のSP値と該溶剤の含有量との積を得、次いで、溶剤ごとに得られた積の総和を、溶剤全体の総含有量で除した値を指す。
溶剤全体のSP値は、以上に説明した溶剤を、適宜組み合わせて達成することができる。
また、本発明に係るインクジェットインクは、インク総量に対して、全溶剤の含有量が、10重量%以上40重量%以下の範囲であることが好ましい。
本発明のインクジェットインクが含有する樹脂は、格別限定されるものではないが、ガラス転移温度Tgが80℃以下のものを少なくとも一種以上含むことが好ましい。
従来、ガラス転移温度Tgが80℃以下の樹脂を含む場合は、記録媒体への定着性に優れる等の利点が得られ易いが、インク溜まりが形成されやすくなり、インク射出安定性を損なう弊害を生じる問題があった。これに対して、本発明のインクジェットインクにおいては、ガラス転移温度Tgが80℃以下の樹脂を含む場合でも、インク射出安定性に優れる効果が得られるため、上述した記録媒体への定着性と共に、記録画像の画質を更に向上する効果を奏する。
また、本発明のインクジェットインクが含有する樹脂の総量は、該インクジェットインクの総量に対して6重量%以上の範囲であることが好ましい。このように樹脂の含有量が多い場合であっても、本発明によれば射出安定性に優れる効果を奏する。なお、樹脂の総量とは、記録媒体への定着性を得るために含有される定着樹脂だけでなく、顔料を分散させる顔料分散樹脂等の他の樹脂を含む場合は、これらも含めたすべての樹脂の総量である。
以下に、定着樹脂について説明し、顔料分散樹脂については後に色材の説明において後述する。
定着樹脂は、着弾したインク滴を記録媒体に定着(接着)させる機能を有する。また、定着樹脂は、インク皮膜の耐擦性や耐水性を高めるだけでなく、光沢や光学濃度を高める機能を有することも求められている。そのため、定着樹脂は、水及び溶剤からなる水系溶媒に分散させやすいこと、透明性をある程度有すること、他のインク成分との相溶性を有していることがより好ましい。
本発明のインクに用いられる定着樹脂は、水系溶媒に対して溶解または分散することができるものであれば特に制限はなく、水溶性樹脂や水系分散型ポリマー微粒子などであることが好ましい。水系溶媒に対する溶解性や安定性が高いことから、水溶性樹脂を用いることがより好ましい。
本発明に用いることのできる水溶性樹脂としては、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、アクリロニトリル−アクリル系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。なかでも、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂およびポリウレタン系樹脂が好ましく、アクリル系樹脂がより好ましい。
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体であっても、(メタ)アクリル酸エステルと他の共重合モノマーとの共重合体であってもよい。樹脂構造の設計自由度が高く、重合反応で合成しやすく、低コストであること等から、(メタ)アクリル酸エステルと他の共重合モノマーとの共重合体が特に好ましい。前記共重合体における、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有割合は、共重合体を構成する全モノマーに対して60〜100質量%であることが好ましく、80〜100質量%であることがより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルの例には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが含まれる。なかでも、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル(アルキルの炭素数は1〜12)が好ましい。(メタ)アクリル酸エステルは、一種類であっても、二種類以上であってもよい。二種類以上の(メタ)アクリル酸エステルの好ましい組み合わせの例には、メタアクリル酸メチル、アクリル酸アルキルエステル(アルキルの炭素数は1〜12)、およびメタアクリル酸アルキルエステル(アルキルの炭素数は2〜12)の組み合わせが含まれる。
(メタ)アクリル酸エステルと他の共重合モノマーとの共重合体における他の共重合モノマーの例には、酸性基を有するモノマーが含まれる。酸性基を有するモノマーの例には、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸などが含まれる。なかでも、(メタ)アクリル酸エステルと他の共重合モノマーとの共重合体は、主モノマーとしてのメタアクリル酸メチル、アクリル酸アルキルエステル(アルキルの炭素数は1〜12)およびメタアクリル酸アルキルエステル(アルキルの炭素数は2〜12)と、他の共重合体モノマーとしての酸性基を有するモノマーと、を重合反応させて得られる共重合体であることが好ましい。前記共重合体に含まれる主モノマー(メタアクリル酸メチル、アクリル酸アルキルエステル(アルキルの炭素数は1〜12)およびメタアクリル酸アルキルエステル(アルキルの炭素数は2〜12))由来の構成単位の合計含有割合は、共重合体を構成する全モノマーに対して80〜95質量%であることが好ましい。
アクリル系樹脂に含まれる酸性基の少なくとも一部は、水系溶媒に対する溶解性を高める観点などから、塩基で中和されていることが好ましい。中和する塩基の例には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物(例えば、NaOH、KOH等);アミン類(例えば、アルカノールアミン、アルキルアミン等);アンモニアなどが含まれる。中でも、アンモニア及び/又はアミン類で中和された樹脂は、記録媒体に定着後のインクから、アンモニア及び/又はアミン類が水系溶媒と共に蒸発するため、アンモニア及び/又はアミン類が除去された樹脂の溶解性が低下する。そのような樹脂を含む硬化後のインク皮膜は、耐水性を有するため、好ましい。中でもアミン類が好ましく、具体的なアミンの例としては、トリエチルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジ−n−ブチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、2−アミノー2−メチル−1−プロパノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−メチルアミノエタノールなどが挙げられる。
本発明に用いられる水溶性樹脂の酸価は、50〜300mgKOH/gであることが好ましく、50〜130mgKOH/gであることがより好ましい。水溶性樹脂の酸価が50mgKOH/g未満であると、樹脂の水に対する溶解性が十分ではないため、水系溶媒に対して十分には溶解できないことがある。一方、水溶性樹脂の酸価が300mgKOH/g超であると、インク皮膜が柔らかくなり、耐擦性が低下する。
本発明における水溶性樹脂の酸価とは、水溶性樹脂1g中に含まれる酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数を指し、JIS K 0070の酸価測定、加水分解酸価測定(全酸価測定)によって測定することができる。
中和塩基の含有量は、水溶性樹脂の酸価および含有量にもよるが、水溶性樹脂に含まれる酸性基の化学当量数に対して0.5〜5倍の化学当量数となるようにすることが好ましい。中和塩基の含有量が、水溶性樹脂に含まれる酸性基の化学当量数に対して0.5倍未満の化学当量数であると、アクリル系樹脂の分散性を高める効果が十分には得られないことがある。一方、中和塩基の含有量が水溶性樹脂に含まれる酸性基の化学当量数に対して5倍超の化学当量数であると、インク皮膜の耐水性が低下したり、変色、臭気などを生じたりすることがある。
水溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2.0×104〜8.0×104であることが好ましく、2.5×104〜7.0×104であることがより好ましい。重量平均分子量が2.0×104未満であると、インクの定着能力が小さいため、得られる画像の耐擦性が十分でないことがある。一方、重量平均分子量(Mw)が8.0×104超であると、インクの粘度が高すぎて、ノズルからの射出安定性が低下することがある。
定着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、30〜100℃であることが好ましい。Tgが30℃未満であると、得られる画像の耐擦性が十分でなかったり、ブロッキングが発生したりすることがある。一方、Tgが100℃超であると、乾燥後のインク皮膜が硬すぎて脆くなり、耐擦性が低下することがあると考えられる。
定着樹脂の含有量は、インク全体に対して1〜15質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい。定着樹脂の含有量が1質量%未満であると、顔料などの色材を記録媒体上に定着させる機能を十分には得られないことがある。一方、定着樹脂の含有量が15質量%超であると、インクの粘度が高くなり、射出安定性が低下することがある。
本発明の水性インクは、インク膜の耐擦性をさらに高めるために、水系分散型ポリマー微粒子をさらに含んでもよい。
水系分散型ポリマー微粒子は、前述と同様の水溶性樹脂で構成されうる。水系分散型ポリマー微粒子の平均粒子径は、ヘッドのノズル詰まりがなく、良好な光沢を有する画像が得られる観点などから、300nm以下であることが好ましく、130nm以下であることがより好ましい。また、ポリマー微粒子の平均粒子径は、製造安定性の観点から、30nm以上であることが好ましい。
水系分散型ポリマー微粒子の含有量は、記録媒体への定着性とインクの長期保存安定性が得られやすい観点などから、インク全体に対して0.7質量〜6質量%が好ましく、1〜3質量%であることがより好ましい。
本発明に係るインクジェットインクが含有する顔料は格別限定されず、公知の有機顔料または無機顔料であってよい。
有機顔料の例には、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、およびキノフタロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ、および酸性染料型レーキ等の染料レーキ;ニトロ顔料;ニトロソ顔料;アニリンブラック;および昼光蛍光顔料等が含まれる。
以下に顔料の具体例を示すが、本発明はこれら例示する化合物に限定されるものではない。
マゼンタ、レッド又はバイオレット用の有機顔料の好ましい例には、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド8、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド148、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントレッド258、C.I.ピグメントレッド282、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23等が含まれる。
オレンジ、イエローまたはブラウン用の有機顔料の好ましい例には、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー43、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー81、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー194、C.I.ピグメントイエロー199、C.I.ピグメントイエロー213、C.I.ピグメントブラウン22等が含まれる。
グリーンまたはシアン用の有機顔料の好ましい例には、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:5、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー29、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が含まれる。
ブラック用の有機顔料の例には、C.I.ピグメントブラック5、C.I.ピグメントブラック7等が含まれる。ホワイト用の有機顔料の例には、C.I.ピグメントホワイト6等が含まれる。
無機顔料の例には、カーボンブラック、および酸化チタン等が含まれる。
本発明のインクは、顔料の分散性を高めるために、顔料分散樹脂(顔料分散剤)をさらに含んでもよい。顔料分散剤の例には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩等が含まれる。
顔料は、安定に分散させるために、顔料分散体としてインクに添加されることが好ましい。顔料分散体は、水系溶媒中に安定に分散しうるものであればよく、顔料を分散樹脂で分散させた顔料分散体;顔料が水不溶性樹脂で被覆されたカプセル顔料:表面修飾され、分散樹脂を含まなくても分散可能な自己分散顔料などが挙げられる。
顔料を分散樹脂で分散させた顔料分散体に用いられる分散樹脂は、水溶性樹脂であることが好ましい。そのような水溶性樹脂の好ましい例には、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等が含まれる。また顔料の分散樹脂として、前記定着樹脂として用いられうる水溶性樹脂を用いて分散しても良い。
顔料を水不溶性樹脂で被覆したカプセル顔料における、水不溶性樹脂は、弱酸性ないし弱塩基性の範囲の水に対して不溶な樹脂である。具体的には、pH4〜10の水溶液に対する溶解度が2%以下である樹脂が好ましい。水不溶性樹脂の例には、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、アクリロニトリル−アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコンアクリル系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂などが含まれる。カプセル顔料の平均粒子径は、インクの保存安定性、発色性などの観点から、80〜200nm程度であることが好ましい。
カプセル顔料(水不溶性樹脂で被覆された顔料微粒子)は、公知の方法で製造することができる。例えば、水不溶性樹脂を有機溶剤(例えばメチルエチルケトンなど)に溶解し、さらに塩基成分を加えて、水不溶性樹脂に含まれる酸性基を部分的もしくは完全に中和する。得られた溶液に、顔料と、イオン交換水とを添加して、混合および分散させる。その後、得られた溶液から有機溶剤を除去して、必要に応じてイオン交換水をさらに加えて、カプセル顔料を調製する。または、顔料と、重合性界面活性剤とを分散させた溶液に、モノマーを添加し、重合反応させて顔料を樹脂で被覆する方法などもある。
前述の分散樹脂および水不溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは3.0×103〜5.0×105であり、より好ましくは7.0×103〜2.0×105である。
顔料と分散樹脂の質量比は、顔料/分散樹脂が100/150〜100/30であることが好ましい。画像の耐久性と、インクの射出安定性、保存安定性を高める観点などから、100/100〜100/40であることがより好ましい。
顔料の分散は、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等により行うことができる。
顔料分散体の粗粒分を除去し、顔料微粒子の粒径分布を揃える観点などから、顔料分散体は、インクに添加される前に、遠心分離処理またはフィルターによるろ過処理などが施されていてもよい。
自己分散顔料は、市販品であってもよい。自己分散顔料の市販品の例には、CABO−JET200、CABO−JET300(キャボット社製)、ボンジェットCW1(オリエント化学工業(株)社製)等が含まれる。
本発明のインクジェットインクは、インク総量に対して、顔料と樹脂の含有量を合計した値が、8重量%以上の範囲であることが好ましい。なお、ここでいう樹脂は、記録媒体への定着性を得るために含有される定着樹脂だけでなく、顔料を分散させる顔料分散樹脂等の他の樹脂を含む場合は、これらも含めたすべての樹脂を指す。
本発明のインクは、必要に応じてその他の成分をさらに含んでもよい。その他の成分の例には、防腐剤、防黴剤、防錆剤、消泡剤、粘度調整剤、浸透剤、pH調整剤、乾燥防止剤(例えば尿素、チオ尿素、エチレン尿素など)等が含まれる。
防腐剤および防黴剤は、長期にわたってインクの保存安定性を保つ機能を有する。防腐剤および防黴剤は、特に制限されないが、例えば芳香族ハロゲン化合物(例えば、Preventol CMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えば、PROXEL GXL)などであってよい。
本発明のインクジェットインクを用いてインクジェット法によって記録媒体上に画像記録を行う際に用いられる記録媒体としては、普通紙、コート紙、インクジェット専用紙、布帛等のインク吸収能の高い記録媒体も適用可能であるが、低吸水性の記録媒体(インクの吸収性が低い記録媒体)や非吸水性の記録媒体(インクの吸収性を有しない記録媒体)を用いる場合により優れた効果を発揮し、記録媒体がポリ塩化ビニルからなる場合にも有効である。
本発明においては、低吸水性や非吸水性の記録媒体を用いることで、画像耐久性や光沢性が一層高まり高品質な画像を得ることができるだけでなく、屋外での長期使用にも耐えることが可能となる。
低吸水性の記録媒体の例には、印刷本紙などのコート紙などが含まれる。低吸水性の記録媒体の市販品としては、例えばリコービジネスコーグロス100(株式会社リコー製)、OKトップコート+、OK金藤+、SA金藤+(王子製紙株式会社製)、スーパーMIダル、オーロラコート、ユーライト、スペースDX(日本製紙株式会社製)、αマット、ミューコート(北越製紙株式会社製)、雷鳥アート、雷鳥スーパーアート(中越パルプ工業株式会社製)、特菱アート、パールコートN(三菱製紙株式会社製)などが挙げられる。
非吸水性の記録媒体の例には、樹脂基材、金属基材、ガラス基材などが含まれる。樹脂基材は、好ましくは疎水性樹脂からなる樹脂基材(プレート、シートおよびフィルムを含む)、該樹脂基材とその他の基材(紙など)との複合基材などであってよい。疎水性樹脂の例には、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが含まれ、好ましくは塩化ビニルである。
ポリ塩化ビニルからなる記録媒体の具体例としては、SOL−371G、SOL−373M、SOL−4701(以上、ビッグテクノス株式会社製)、光沢塩ビ(株式会社システムグラフィ製)、KSM−VS、KSM−VST、KSM−VT(以上、株式会社きもと製)、J−CAL−HGX、J−CAL−YHG、J−CAL−WWWG(以上、株式会社共ショウ大阪製)、BUS MARK V400 F vinyl、LITEcal V−600F vinyl(以上、Flexcon製)、FR2(Hanwha製)LLBAU13713、LLSP20133(以上、桜井株式会社製)、P−370B、P−400M(以上、カンボウプラス株式会社製)、S02P、S12P、S13P、S14P、S22P、S24P、S34P、S27P(以上、Grafityp製)、P−223RW、P−224RW、P−249ZW、P−284ZC(以上、リンテック株式会社製)、LKG−19、LPA−70、LPE−248、LPM−45、LTG−11、LTG−21(以上、株式会社新星製)、MPI3023(株式会社トーヨーコーポレーション製)、ナポレオングロス光沢塩ビ(株式会社二樹エレクトロニクス製)、JV−610、Y−114(以上、アイケーシー株式会社製)、NIJ−CAPVC、NIJ−SPVCGT(以上、ニチエ株式会社製)、3101/H12/P4、3104/H12/P4、3104/H12/P4S、9800/H12/P4、3100/H12/R2、3101/H12/R2、3104/H12/R2、1445/H14/P3、1438/One Way Vision(以上、Inetrcoat製)、JT5129PM、JT5728P、JT5822P、JT5829P、JT5829R、JT5829PM、JT5829RM、JT5929PM(以上、Mactac製)、MPI1005、MPI1900、MPI2000、MPI2001、MPI2002、MPI3000、MPI3021、MPI3500、MPI3501(以上、Avery製)、AM−101G、AM−501G(以上、銀一株式会社製)、FR2(ハンファ・ジャパン株式会社製)、AY−15P、AY−60P、AY−80P、DBSP137GGH、DBSP137GGL(以上、株式会社インサイト製)、SJT−V200F、SJT−V400F−1(以上、平岡織染株式会社製)、SPS−98、SPSM−98、SPSH−98、SVGL−137、SVGS−137、MD3−200、MD3−301M、MD5−100、MD5−101M、MD5−105(以上、Metamark製)、640M、641G、641M、3105M、3105SG、3162G、3164G、3164M、3164XG、3164XM、3165G、3165SG、3165M、3169M、3451SG、3551G、3551M、3631、3641M、3651G、3651M、3651SG、3951G、3641M(以上、Orafol製)、SVTL−HQ130(株式会社ラミーコーポレーション製)、SP300 GWF、SPCLEARAD vinyl(以上、Catalina製)、RM−SJR(菱洋商事株式会社製)、Hi Lucky、New Lucky PVC(以上、LG製)、SIY−110、SIY−310、SIY−320(以上、積水化学工業株式会社製)、PRINT MI Frontlit、PRINT XL Light weight banner(以上、Endutex製)、RIJET 100、RIJET 145、RIJET165(以上、Ritrama製)、NM−SG、NM−SM(日栄化工株式会社製)、LTO3GS(株式会社ルキオ製)、イージープリント80、パフォーマンスプリント80(以上、ジェットグラフ株式会社製)、DSE 550、DSB 550、DSE 800G、DSE 802/137、V250WG、V300WG、V350WG(以上、Hexis製)、Digital White 6005PE、6010PE(以上、Multifix製)等が挙げられる。
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されない。
1.インクの調製
1−1.顔料分散体の作製
顔料分散剤としてフローレンTG−750W(固形分40%、エボニックデグサ社製)20部と、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの3部をイオン交換水62部に加えた。この溶液に、C.I.ピグメントブルー15:3を15部添加し、プレミックスした後、0.5mmジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、顔料固形分が15%のシアン顔料分散体を得た。
1−2.インク1の作製
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを5質量部、ジョンクリルJDX−6500(BASF社製、アクリル樹脂、固形分29.7%)を17質量部、1,2ヘキサンジオールを10質量部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルを10質量部、メガファックF−477を0.02質量部、DYNWET800を1質量部に、水を総質量80部となるよう添加し、充分に混合したのち、上記調製したシアン顔料分散体の20部を加えて、総量を100部とした後、攪拌した後、5μmのフィルターによりろ過して、インク1を得た。
1−3.インク2〜16の作製
インク1において、有機溶剤の種類と添加量、界面活性剤の種類と添加量を、表1に記載の組み合わせに変更した以外は同様にして、インク2〜15を調製した。なお、表1に記載の水の残部とは、インク総量が100部となる添加量である。
インク1〜16で用いた樹脂、有機溶剤及び界面活性剤は下記の通りである。
〈樹脂〉
JDX:ジョンクリルJDX−6500(BASF社製、アクリル樹脂、固形分29.7%)
〈有機溶剤〉
DMI:1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン
PDN:2−ピロリドン
GBL:γ−ブチロラクトン
NMP:N−メチル−2−ピロリジノン
スルホラン
HDO:1,2−ヘキサンジオール
DPGME:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
TEGBE:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(顔料分散体として)
〈界面活性剤〉
ノベック4432:(3M社製、フッ素系のポリマー型界面活性剤)
MF477:メガファック F−477(DIC株式会社製、フッ素系のポリマー型界面活性剤)
TSF4440:TSF4440(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、シリコン系界面活性剤)
E108:エマルゲン108(花王社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤)
F100:フタージェント 100(ネオス社製、フッ素系界面活性剤)
DW800:BYK DYNWET800(ビックケミー社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤)
また、以上の各界面活性剤について、当該界面活性剤1重量%、2−ピロリドン40重量%及び水59重量%からなる液の表面張力をウィルヘルミのプレート法により測定した結果を表2に示す。
2.画像形成方法
吐出ヘッドとして、KM512MN(コニカミノルタIJ社製)駆動周波数13kHz、最小液滴量14plのものを用いた。そして、キャリッジに吐出ヘッドを4列搭載したオンデマンド型のインクジェットプリンターのインクジェットヘッドの1つに、得られたインクを装填した。
そして、記録媒体としての軟質塩化ビニルシート MD5(メタマーク社製)上に、解像度720dpi×720dpi、10cm×10cmの印字率100%ベタ画像を形成し、記録画像とした。
また印字の際には裏面よりメディアの表面温度が45℃となるようバックヒートを行った。
3.評価方法
16パスおよび4パスの二つの印字方法により、得られた画像について、以下の通り画質(斑及び色ムラ耐性、及び、白抜け耐性)、並びに、接着性及び耐擦性の評価を行った。
3−1.斑及び色ムラ耐性の評価
記録画像を観察し、斑及び色ムラの有無を観察し、以下の基準に基づいて評価した。
◎:ベタ画像が均一でムラの発生は全く認められない。
○:ベタ画像での濃度ムラは目立たない及び/又はベタ画像と未印字部との境界部で、極弱い濃淡のある個所が散在する。
×:目視観察で、ハジキやまだらの発生が画像全般に認められ、ミリメートル単位の大きさの濃淡が多数発生している。
××:上記×の中でも酷いもの。
3−2.白抜け耐性の評価
記録画像を観察し、記録媒体に着弾したドットが、隣接するドット側に引き込まれることなどによって発生する白抜けの有無を観察し、以下の基準に基づいて評価した。
◎:ドットが完全に均一であり、白抜けが防止されている。
○:白抜けが僅かに発生しているが、50cm離れた位置からは確認できない。
×:白抜けが発生し、50cm離れた位置からもスジのように見える。
3−3.接着性及び耐擦性の評価
記録画像をキムワイプS−200(クレシア製)にて5回こすり画像濃度低下を観察し、以下の基準に基づいて評価した。
○:傷は付く場合はあるが白い部分の発生は認められない。
×:インク膜が取れて白い傷がみられる。
評価結果を表3に示す。
<評価>
以上の評価結果より、本発明のインクによれば、印字画像の接着性及び耐擦性に優れ、且つ高画質化(斑及び色ムラ耐性並びに白抜け耐性の向上)を実現できるインクジェットインクを提供することができる。
特に1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、又はγ−ブチロラクトン(GBL)を含有し、且つ2−ピロリドン40重量%及び水59重量%からなる液の表面張力を24mN/m以下の範囲まで低下させることができる界面活性剤をインク総量に対して0.001重量%以上0.1重量%以下の範囲で含有するインク1〜3及び6〜9を使用した場合、高速の印字(4パス印刷)においても充分な接着性及び耐擦性と、高画質を達成することができる。