以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の積層体は、被覆層と親水化層とを含む。
上記親水化層は、水に対する接触角が70°以下であることが好ましい。上記接触角としては、60°以下がより好ましく、下限は特に限定されないが、0°であってよく、13°であってよい。
上記接触角は、装置として接触角計「PCA−1」(協和界面科学製)を用い、溶媒として水により測定する。
上記被覆層は、表面自由エネルギーが30〜40mJ/m2である。上記表面自由エネルギーとしては、32mJ/m2以上が好ましく、38mJ/m2以下が好ましい。
上記表面自由エネルギーは、装置として接触角計「PCA−1」(協和界面科学製)を用い、溶媒としてn−ヘキサデカンと水により測定する。
本発明の積層体は、上記被覆層が特定の表面自由エネルギーを有することによって、上記親水化層と上記被覆層とが強固に接着しており、耐候性試験後でも両層が剥離しないことから、耐候性試験後でも優れた親水性を示す。
上記被覆層は、樹脂を含むことが好ましい。上記樹脂は、硬化性官能基を有する含フッ素ポリマー又はアクリルポリマーであることが好ましい。
上記硬化性官能基を有する含フッ素ポリマーとしては、含フッ素ポリマーに硬化性の官能基を導入したポリマーが挙げられる。なお、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーには明確な融点を有する樹脂性のポリマー、ゴム弾性を示すエラストマー性のポリマー、その中間の熱可塑性エラストマー性のポリマーが含まれる。
上記含フッ素ポリマーに硬化性を与える官能基は、ポリマーの製造の容易さや硬化系に併せて適宜選択されるが、例えば、水酸基(但し、カルボキシル基に含まれる水酸基は除く。以下、同じ。)、カルボキシル基、−COOCO−で表される基、シアノ基、アミノ基、グリシジル基、シリル基、シラネート基等が挙げられる。なかでも、硬化反応性が良好な点から、水酸基、カルボキシル基、−COOCO−で表される基、アミノ基、シアノ基、及び、シリル基からなる群より選択される少なくとも1種の基が好ましく、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、及び、シリル基からなる群より選択される少なくとも1種の基がより好ましく、水酸基、及び、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の基が更に好ましい。これらの硬化性官能基は、通常、硬化性官能基を有する単量体を共重合することにより含フッ素ポリマーに導入される。
上記硬化性官能基含有単量体としては、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アミノ基含有単量体、シリコーン系ビニル単量体等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素単量体に基づく重合単位と、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アミノ基含有単量体、及び、シリコーン系ビニル単量体からなる群より選択される少なくとも1種の硬化性官能基含有単量体に基づく重合単位とを含むことが好ましい。また、上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素単量体に基づく重合単位と、水酸基含有単量体及びカルボキシル基含有単量体からなる群より選択される少なくとも1種の硬化性官能基含有単量体に基づく重合単位とを含むことがより好ましい。
硬化性官能基含有単量体に基づく重合単位は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、8〜30モル%であることが好ましい。より好ましい下限は10モル%であり、より好ましい上限は20モル%である。
硬化性官能基含有単量体としては、たとえばつぎのものが例示できるが、これらのみに限定されるものではない。なお、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
(1−1)水酸基含有単量体:
水酸基含有単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類等が挙げられる。これらのなかでも、重合反応性、官能基の硬化性が優れる点で、水酸基含有ビニルエーテル類が好ましく、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、及び、2ーヒドロキシエチルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の単量体が特に好ましい。
他の水酸基含有単量体としては、たとえばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル等も挙げられる。
(1−2)カルボキシル基含有単量体:
カルボキシル基含有単量体としては、たとえば、式:
CR11R12=CR13(CH2)nCOOH
(式中、R11、R12およびR13は、同じかまたは異なり、水素原子、アルキル基、カルボキシル基またはエステル基である。nは、0または1である。)で表わされる不飽和カルボン酸類(例えば、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸等)、それらのエステル並びに酸無水物、及び、式:
CH2=CH(CH2)nO(R14OCO)mR15COOH
(式中、R14およびR15は、同じかまたは異なり、いずれも飽和または不飽和の直鎖、分岐または環状のアルキレン基である。nは、0または1であり、mは、0または1である。)で表わされるカルボキシル基含有ビニルエーテル単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体が好ましい。
上記カルボキシル基含有単量体の具体例としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、3−アリルオキシプロピオン酸、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニル等が挙げられる。それらのなかでも、単独重合性が低く単独重合体ができにくいことから、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、及び、3−アリルオキシプロピオン酸からなる群より選択される少なくとも1種の酸が好ましい。
上記カルボキシル基含有ビニルエーテル単量体の具体例としては、たとえば、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−アリロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸等が挙げられる。これらの中でも、単量体の安定性や重合反応性がよい点で有利であることから、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸が好ましい。
(1−3)アミノ基含有単量体:
アミノ基含有単量体としては、たとえばCH2=CH−O−(CH2)x−NH2(x=0〜10)で示されるアミノビニルエーテル類;CH2=CH−O−CO(CH2)x−NH2(x=1〜10)で示されるアリルアミン類;そのほかアミノメチルスチレン、ビニルアミン、アクリルアミド、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミド等が挙げられる。
(1−4)シリル基含有単量体:
シリル基含有単量体としては、例えば、シリコーン系ビニル単量体が挙げられる。シリコーン系ビニル単量体としては、たとえばCH2=CHCO2(CH2)3Si(OCH3)3、CH2=CHCO2(CH2)3Si(OC2H5)3、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3Si(OCH3)3、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3Si(OC2H5)3、CH2=CHCO2(CH2)3SiCH3(OC2H5)2、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3SiC2H5(OCH3)2、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3Si(CH3)2(OC2H5)、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3Si(CH3)2OH、CH2=CH(CH2)3Si(OCOCH3)3、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3SiC2H5(OCOCH3)2、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3SiCH3(N(CH3)COCH3)2、CH2=CHCO2(CH2)3SiCH3〔ON(CH3)C2H5〕2、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3SiC6H5〔ON(CH3)C2H5〕2等の(メタ)アクリル酸エステル類;CH2=CHSi[ON=C(CH3)(C2H5)]3、CH2=CHSi(OCH3)3、CH2=CHSi(OC2H5)3、CH2=CHSiCH3(OCH3)2、CH2=CHSi(OCOCH3)3、CH2=CHSi(CH3)2(OC2H5)、CH2=CHSi(CH3)2SiCH3(OCH3)2、CH2=CHSiC2H5(OCOCH3)2、CH2=CHSiCH3〔ON(CH3)C2H5〕2、ビニルトリクロロシランまたはこれらの部分加水分解物等のビニルシラン類;トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルブチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が例示される。
上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位を有することが好ましい。
含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの全重合単位に対して、20〜49モル%であることが好ましい。より好ましい下限は30モル%であり、更に好ましい下限は40モル%である。より好ましい上限は47モル%である。
含フッ素ビニルモノマーとしては、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、フッ化ビニリデン〔VdF〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、フッ化ビニル、へキサフルオロプロピレン及びパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、分散性、耐湿性、耐熱性、難燃性、接着性、共重合性及び耐薬品性等に優れている点で、TFE、CTFE及びVdFからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、耐候性に優れ、更に耐湿性により優れている点で、TFE及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種であることが特に好ましく、TFEが最も好ましい。
上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、カルボン酸ビニルエステル、アルキルビニルエーテル及び非フッ素化オレフィンからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素非含有ビニルモノマーに基づく重合単位を含むことが好ましい。
カルボン酸ビニルエステルは、相溶性を改善する作用を有する。カルボン酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニル等が挙げられる。
アルキルビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
非フッ素化オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等が挙げられる。
上記フッ素非含有ビニルモノマーに基づく重合単位は、硬化性官能基含有ビニルモノマーに基づく重合単位、及び、含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位以外の全重合単位を構成することが好ましい。
硬化性官能基が導入される含フッ素ポリマーとしては、該ポリマーを構成する重合単位に応じて、たとえば次のものが例示できる。
硬化性官能基が導入される含フッ素ポリマーとしては、例えば、(1)パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマー、(2)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を主体とするCTFE系ポリマー、(3)ビニリデンフルオライド(VdF)単位を主体とするVdF系ポリマー、(4)フルオロアルキル単位を主体とするフルオロアルキル基含有ポリマー等が挙げられる。
(1)パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマー
パーフルオロオレフィン系ポリマーは、パーフルオロオレフィン系ポリマーの全重合単位に対して、パーフルオロオレフィン単位が20〜49モル%であることが好ましい。より好ましい下限は30モル%であり、更に好ましい下限は40モル%である。より好ましい上限は47モル%である。具体例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体、若しくは、TFEと、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)等との共重合体、これらの単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。
上記共重合可能な他の単量体としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等の非フッ素系オレフィン類;ビニリデンフルオライド(VdF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニルフルオライド(VF)、フルオロビニルエーテル等のフッ素系単量体等が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマーの中でも、顔料分散性や耐候性、共重合性及び耐薬品性に優れる点で、TFE単位を主体とするTFE系ポリマーが好ましい。TFE系ポリマーは、TFE系ポリマーの全重合単位に対して、TFE単位が20〜49モル%であることが好ましい。より好ましい下限は30モル%であり、更に好ましい下限は40モル%である。より好ましい上限は47モル%である。
パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマーに硬化性官能基を導入した硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、例えば、TFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/VdF/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体等が挙げられ、特に、TFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、及び、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましい。このような硬化性ポリマーの塗料としては、たとえばダイキン工業(株)製のゼッフル(登録商標)GKシリーズ等が例示できる。
(2)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を主体とするCTFE系ポリマー
CTFE単位を主体とするCTFE系ポリマーに硬化性官能基を導入した硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、たとえばCTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体等が挙げられる。CTFE系ポリマーの硬化性ポリマー塗料としては、たとえば旭硝子(株)製のルミフロン(登録商標)、大日本インキ製造(株)製のフルオネート(登録商標)、セントラル硝子(株)製のセフラルコート(登録商標)等が例示できる。
(3)ビニリデンフルオライド(VdF)単位を主体とするVdF系ポリマー
VdF単位を主体とするVdF系ポリマーに硬化性官能基を導入した硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、たとえばVdF/TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体等が挙げられる。
(4)フルオロアルキル単位を主体とするフルオロアルキル基含有ポリマー
フルオロアルキル単位を主体とするフルオロアルキル基含有ポリマーに硬化性官能基を導入した硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、たとえばCF3CF2(CF2CF2)nCH2CH2OCOCH=CH2(n=3と4の混合物)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ステアリルアクリレート共重合体等が挙げられる。フルオロアルキル基含有ポリマーとしては、たとえばダイキン工業(株)製のユニダイン(登録商標)やエフトーン(登録商標)、デュポン社製のゾニール(登録商標)等が例示できる。
上記(1)〜(4)の中でも、耐候性及び防湿性の観点から、硬化性官能基が導入される含フッ素ポリマーは、パーフルオロオレフィン系ポリマーが好ましく、TFE単位を主体とするTFE系ポリマー又はCTFE単位を主体とするCTFE系ポリマーがより好ましい。
上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマーは、例えば、特開2004−204205号公報に開示される方法により製造することができる。
上記アクリルポリマーは、アクリル基を有する単量体に基づく重合単位が、全重合単位に対して、5質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、10質量%以上である。更に好ましくは、20質量%以上である。また、耐候性に優れる点から、98質量%以下が好ましく、96質量%以下がより好ましく、90質量%以下が更に好ましく、80質量%以下が特に好ましい。
アクリルポリマーは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく重合単位からなる重合体であることが好ましい。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は、例えば、1〜10である。
なお、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」は、アクリル酸アルキルエステル、及び、メタクリル酸アルキルエステルを含むものである。
アクリルポリマーは、耐候性に優れることから、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく重合単位の含有量が5質量%以上であることが好ましい。より好ましくは10質量%以上であり、更に好ましくは、20質量%以上である。また、耐候性に優れる点から、98質量%以下が好ましく、96質量%以下がより好ましく、90質量%以下が更に好ましく、80質量%以下が特に好ましい。
アクリルポリマーは、例えば、(i)側鎖および/または主鎖末端に硬化性官能基を有さない、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく重合単位からなる重合体(以下、アクリルポリマー(i)ともいう。)、並びに、(ii)側鎖および/または主鎖末端に硬化性官能基を有し、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく重合単位からなる共重合体(以下、アクリルポリマー(ii)ともいう。)からなる群より選択される少なくとも1種の重合体が好ましい。耐候性に優れることから、アクリルポリマー(ii)が好ましい。
アクリルポリマー(i)は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及び、シクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の単量体に基づく重合単位からなる重合体が好ましい。アクリルポリマー(i)は、これらの単量体のみからなる重合体であってもよいし、更に、これらの単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体に基づく重合単位からなる共重合体でもよい。
アクリルポリマー(i)は、耐候性が優れる点から、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及び、シクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の単量体に基づく重合単位からなる重合体が好ましく、更に、これらの単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体に基づく重合単位からなる共重合体がより好ましい。
イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及び、シクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の単量体と共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとしては、たとえば、芳香族基を有する(メタ)アクリレート類、α位にフッ素原子または塩素原子を有する(メタ)アクリレート類、アルキル基がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン等の芳香族ビニルモノマー類、エチレン、プロピレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のオレフィン類、フマル酸ジエステル類、マレイン酸ジエステル類、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
アクリルポリマー(i)の市販アクリル共重合体としては、たとえばヒタロイド(登録商標)1005、ヒタロイド1206、ヒタロイド2330−60、ヒタロイド4001、ヒタロイド1628A等(いずれも日立化成工業社製。商品名);ダイヤナール(登録商標)LR−1065、ダイヤナールLR−90等(いずれも三菱レイヨン社製。商品名);パラロイド(登録商標)B−44、パラロイドA−21、パラロイドB−82等(いずれもダウケミカル社製。商品名);ELVACITE2000等(ルーサント・インターナショナル社製。商品名);アルマテックス(登録商標)L1044P(三井化学社製。商品名)等が挙げられる。
アクリルポリマー(ii)は、側鎖および/または主鎖末端に硬化性官能基を有する。硬化性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、シアノ基、アミノ基、グリシジル基、シリル基、シラネート基等が挙げられ、なかでも、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、グリシジル基、及び、シリル基からなる群より選択される少なくとも1種の基がより好ましく、水酸基、アミノ基、及び、グリシジル基からなる群より選択される少なくとも1種の基が更に好ましく、硬化反応性が良好な点から水酸基が特に好ましい。
アクリルポリマー(ii)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく重合単位からなる共重合体であり、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は1〜10であることが好ましい。
アクリルポリマー(ii)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく重合単位、及び、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な単量体に基づく重合単位からなり、該共重合可能な単量体は、硬化性官能基を有するものであることが好ましい。
硬化性官能基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な単量体に基づく重合単位の含有量は、耐候性が優れることから、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下である。また耐候性が優れる点から、2質量%以上が好ましく、より好ましくは4質量%以上である。
アクリルポリマー(ii)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及び、シクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の単量体が好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能である硬化性官能基を有する単量体としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、及び、2−アミノプロピル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の単量体が好ましい。
アクリルポリマー(ii)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく重合単位、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能である硬化性官能基を有する単量体に基づく重合単位、及び、これらの単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体に基づく重合単位からなる共重合体であってもよい。
アクリルポリマー(ii)において、上記エチレン性不飽和単量体としては、芳香族基を有する(メタ)アクリレート類、α位にフッ素原子または塩素原子を有する(メタ)アクリレート類、アルキル基がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン等の芳香族ビニルモノマー類、エチレン、プロピレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のオレフィン類、フマル酸ジエステル類、マレイン酸ジエステル類、(メタ)アクリロニトリル等が好ましい。
アクリルポリマー(ii)の市販品としては、ヒタロイド3004、ヒタロイド3018、ヒタロイド3046C、ヒタロイド6500B、ヒタロイド6500等(いずれも日立化成工業(株)製。商品名);アクリディック(登録商標)A810−45、アクリディックA814、アクリディック47−540等(いずれも大日本インキ化学工業(株)製。商品名);ダイヤナールLR−620、ダイヤナールSS−1084、ダイヤナールSS−792等(いずれも三菱レイヨン(株)製。商品名);オレスター(登録商標)Q166、オレスターQ185、オレスターQ612、オレスターQ723等(いずれも三井化学(株)製。商品名);ハリアクロン8360G−55、ハリアクロン8360HS−130、ハリアクロン8160(いずれもハリマ化成(株)製。商品名)等がある。
アクリルポリマーの数平均分子量は、1000〜200000が好ましい。より好ましくは2000〜100000である。数平均分子量が大きすぎると塗布が困難になる傾向にあり、小さすぎると耐侯性に問題が生じる傾向にある。
上記樹脂として、また、パーハロオレフィン単位と非フッ素ビニル単量体単位とウンデシレン酸単位と水酸基含有ビニル単量体単位とを含む含フッ素共重合体またはその中和物を挙げることもできる。
上記樹脂としては、30〜70モル%のパーハロオレフィン単位と、5〜35モル%の非フッ素ビニル単量体単位と、水酸基価を10〜200mgKOH/gの範囲にする量の水酸基含有ビニル単量体単位と、酸価を10〜100mgKOH/gの範囲にする量のウンデシレン酸単位とを含む含フッ素共重合体又はその中和物であることも好ましい。
パーハロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)等の1種または2種以上が挙げられる。好ましいフルオロオレフィンとしては、耐候性に優れることから、TFEまたはHFP、特にTFEが挙げられる。
パーハロオレフィン単位の含有量は、耐候性に優れることから、30〜70モル%が好ましい。さらには35〜55モル%、特に40〜50モル%が好ましい。
非フッ素ビニル単量体としては、炭素数2〜4の非フッ素ビニル単量体が好ましい。例えば、エチレン、プロピレン、n−ブチレン、イソブチレン、酢酸ビニル等が挙げられ、これらのなかでも、特にパーハロオレフィンとの共重合性が良好で、透明性の向上やガラス転移温度を下げて柔軟性を改善する点からイソブチレンが好ましい。
非フッ素ビニル単量体単位の含有量は、製造が容易であり、硬化剤との相溶性にも優れることから、5〜35モル%が好ましい。さらには15〜30モル%が好ましい。
水酸基含有ビニル単量体としては、たとえば式:
CH2=CHR21
(式中、R21は−OR22または−CH2OR22(ただし、R22は水酸基を有するアルキル基である))で表わされる水酸基含有アルキルビニルエーテルや水酸基含有アルキルアリルエーテルが挙げられる。R22としては、たとえば炭素数1〜8の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基に1〜3個、好ましくは1個の水酸基が結合したものである。これらの例としては、たとえば2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等が挙げられる。これらのなかでも、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルが重合反応性、硬化性が優れる点で好ましい。
他の水酸基含有ビニル単量体としては、たとえばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等が例示できる。
水酸基含有ビニル単量体単位の含有量は、上記含フッ素共重合体の水酸基価を10〜200mgKOH/gの範囲にする量が好ましい。水酸基価としては、10mgKOH/g以上、さらには30mgKOH/g以上、特に50mgKOH/g以上の水酸基価を有していることが、耐候性に優れる点で好ましい。また水酸基価の上限は200mgKOH/g、好ましくは150mgKOH/gであることが塗膜に可とう性を付与する点で有利である。
ウンデシレン酸は炭素数11の直鎖の不飽和カルボン酸であり、クロトン酸に比べて炭化水素鎖が長く硬化剤との相溶性を大きく改善でき、また、トリメリット酸を用いてのカルボキシル基を導入した場合に生じるようなエステル結合を生じないので、エステルの開裂による貯蔵安定性の低下もない。しかも、単独重合体ができにくく、重合反応性が良好で難加水分解性である等の点で好ましい。
ウンデシレン酸単位の含有量は、得られる含フッ素共重合体の酸価を10〜100mgKOH/gの範囲にする量が好ましい。なかでも、酸価を10〜80mgKOH/g、特に15〜60mgKOH/gの範囲にする量が好ましい。
上記含フッ素共重合体の分子量は数平均分子量で100,000以下、好ましくは50,000以下のものが製造が容易である観点から好ましく、4,000以上、特に8,000以上のものが耐候性に優れる点で好ましい。
以下に好ましい具体的な含フッ素共重合体を例示するが、これらに限定されるものではない。
TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)/イソブチレン(IB)/ウンデシレン酸/安息香酸ビニル(VBz)/ピバリン酸ビニル共重合体、TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)/酢酸ビニル/ウンデシレン酸/安息香酸ビニル/ピバリン酸ビニル共重合体、TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)/イソブチレン/バーサティック酸ビニル/ウンデシレン酸共重合体、TFE/酢酸ビニル/イソブチレン/バーサティック酸ビニル/ウンデシレン酸共重合体。
ウンデシレン酸によって導入されるカルボキシル基は、含フッ素共重合体を水に分散しやすくし、安定な水性分散体を形成するためのものだけでなく、架橋に用いてもよい。
カルボキシル基はそのままでも水分散性を与えるが、アルカリで中和して水溶性または水分散性とすることにより、より一層水分散性が向上する。具体的には、たとえばアンモニウム塩、アミン塩またはアルカリ金属塩等とすることが好ましい。
中和は、水と混合する前、混合する際、または混合後に行ない、水溶性または水分散性の官能基に変換する。
中和に使用する中和剤としては、アンモニア;ジエチルアミン、エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、エチルアミノエチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルアミン等の有機アミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。これらのうちアンモニア、トリエチルアミン、ジエタノールアミンが入手の利便性、エマルションの安定性等の点で好ましく、特にアンモニアとトリエチルアミンが取り扱い性容易の点で有利である。
中和剤は、水溶液の形態で使用することが好ましいが、ガスまたは固形分の形態で使用してもよい。
中和は、含フッ素共重合体が有する酸価のうち、5mgKOH/g以上、好ましくは10mgKOH/g以上、また70mgKOH/g以下、そして好ましくは50mgKOH/g以下に相当するカルボキシル基を中和剤で中和すればよい。
なお、本発明における酸価および水酸基価は、つぎの方法で算出した計算値である。
(水酸基価算出方法)
生成したポリマー、ポリマー溶液、残存モノマー量の分析およびモノマー仕込み量から、ポリマー中のモノマー組成を算出する。つぎに、その全モノマー組成と水酸基含有モノマーの組成からポリマー中の水酸基価を算出する。
(酸価算出方法)
生成したポリマー、ポリマー溶液、残存モノマー量の分析およびモノマー仕込み量から、ポリマー中のモノマー組成を算出する。つぎに、その全モノマー組成とカルボキシル基含有モノマーの組成からポリマー中の酸価を算出する。
上記樹脂は、複合重合体粒子であることも好ましい。上記複合重合体粒子は、フルオロポリマー(A)とアクリルポリマー(B)とを同一粒子内に含むことが好ましい。フルオロポリマー(A)及びアクリルポリマー(B)は単一粒子中に存在する。この点で上記含フッ素複合重合体粒子は、フルオロポリマー(A)の粒子及びアクリルポリマー(B)の粒子を単に混合することにより得られる粒子とは相違する。フルオロポリマー(A)及びアクリルポリマー(B)は化学的に結合していない。
上記複合重合体粒子は、フルオロポリマー(A)とアクリルポリマー(B)との質量比(A/B)が95/5〜10/90であることが好ましい。質量比(A/B)としては、90/10以下がより好ましく、20/80以上がより好ましく、25/75以上が更に好ましい。質量比(A/B)が上記範囲内にあると、上記表面自由エネルギーを有する上記被覆層を容易に形成することができる。
フルオロポリマー(A)は、フルオロオレフィンに基づく繰り返し単位(フルオロオレフィン単位)を含むものである。上記フルオロオレフィンとしては、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、
等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フッ化ビニル(VF)、ビニリデンフルオライド(VdF)、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン等の非パーフルオロオレフィンが挙げられる。パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)等が挙げられる。
また、上記フルオロオレフィンとして、官能基含有フルオロオレフィンも使用できる。
上記官能基含有フルオロオレフィンとしては、例えば、式:
CX3 2=CX4−(Rf)m−Y1
(式中、Y1は−OH、−COOM2、−SO2F、−SO3M2(M2は水素原子、NH4基またはアルカリ金属)、カルボン酸塩、カルボキシエステル基、エポキシ基またはシアノ基;X3およびX4は同じかまたは異なりいずれも水素原子またはフッ素原子;Rfは炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基若しくは含フッ素オキシアルキレン基、または炭素数2〜40のエーテル結合を含有する2価の含フッ素アルキレン基若しくは含フッ素オキシアルキレン基;mは0または1)で示される化合物が挙げられる。
上記官能基含有フルオロオレフィンの具体例としては、例えば、
等が挙げられる。
上記フルオロオレフィンとして、ヨウ素含有モノマー、例えば、特公平5−63482号公報や特開昭62−12734号公報に記載されているパーフルオロ(6,6−ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)、パーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)等のパーフルオロビニルエーテルのヨウ素化物も使用できる。
なかでも、上記フルオロオレフィンとしては、フッ化ビニル、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及び、クロロトリフロロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、上記フルオロオレフィンとしては、ビニリデンフルオライドがより好ましく、ビニリデンフルオライドと、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びクロロトリフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種と、であることが更に好ましい。
フルオロポリマー(A)は、上記フルオロオレフィン単位の他に、フルオロオレフィンと共重合可能な非フッ素系単量体単位を含んでいてもよい。上記フルオロオレフィンと共重合可能な非フッ素系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、ビニルエーテル系単量体、アリルエーテル系単量体、ビニルエステル系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等が挙げられる。
フルオロポリマー(A)は、フルオロオレフィン単位として、ビニリデンフルオライド単位を含むことが好ましい。アクリルポリマー(B)との相溶性の観点からは、フルオロポリマー(A)は、ビニリデンフルオライド単位が、フルオロポリマー(A)を構成する全重合単位に対して50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、95モル%以下であることが好ましい。フルオロポリマー(A)は、ビニリデンフルオライド単位と、更に、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びクロロトリフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種のフルオロオレフィンの単位を含むことがより好ましい。
フルオロポリマー(A)としては、VdF/TFE/CTFE共重合体、VdF/TFE共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/HFP共重合体、及び、PVdFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、VdF/TFE/CTFE=40〜99/1〜50/0〜30(モル%)、VdF/TFE=50〜99/1〜50(モル%)、VdF/TFE/HFP=45〜99/0〜35/5〜50(モル%)、VdF/CTFE=40〜99/1〜30(モル%)、及び、VdF/HFP=50〜99/1〜50(モル%)からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
アクリルポリマー(B)は、アクリルモノマーに基づく繰り返し単位(アクリルモノマー単位)を含む。上記アクリルモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
アクリルポリマー(B)は、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種のアクリルモノマー単位を含むことが好ましく、メタクリル酸エステル単位と、アクリル酸、メタクリル酸及びアクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種のアクリルモノマー単位とを含むことがより好ましい。
アクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜10のアクリル酸アルキルエステルが好ましく、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、及び、グリシジルアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種のアクリル酸アルキルエステルであることがより好ましく、n−ブチルアクリレート及び2−エチルへキシルアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種のアクリル酸アルキルエステルであることが更に好ましい。
メタクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜10のメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、及び、グリシジルメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種のメタクリル酸アルキルエステルであることがより好ましく、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート及び、シクロヘキシルメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種のメタクリル酸アルキルエステルであることが更に好ましい。
アクリルポリマー(B)は、上記被覆層の上記表面自由エネルギーを容易に調整する観点から、メタクリル酸エステル単位と、アクリル酸、メタクリル酸及びアクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種のアクリルモノマー単位とを含むことが好ましく、造膜性に優れ、上記被覆層の上記表面自由エネルギーを容易に調整する観点から、メタクリル酸エステル単位とメタクリル酸単位とを含むことがより好ましい。
アクリルポリマー(B)は、アクリルポリマー(B)の全構成単位に対して、5〜98質量%のメタクリル酸エステル単位と、95〜2質量%のメタクリル酸単位とを含むことが更に好ましい。
アクリルポリマー(B)は、加水分解性シリル基含有単量体単位を含むものであってもよい。加水分解性シリル基含有単量体としては、
CH2=CHSi(OCH3)3、
CH2=CHSi(CH3)(OCH3)2、
CH2=C(CH3)Si(OCH3)3、
CH2=C(CH3)Si(CH3)(OCH3)2、
CH2=CHSi(OC2H5)3、
CH2=CHSi(OC3H7)3、
CH2=CHSi(OC4H9)3、
CH2=CHSi(OC6H13)3、
CH2=CHSi(OC8H17)3、
CH2=CHSi(OC10H21)3、
CH2=CHSi(OC12H25)3、
CH2=CHCOO(CH2)3Si(OCH3)3、
CH2=CHCOO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2、
CH2=CHCOO(CH2)3Si(OC2H5)3、
CH2=CHCOO(CH2)3Si(CH3)(OC2H5)2、
CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OCH3)3、
CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2、
CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OC2H5)3、
CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)(OC2H5)2、
CH2=C(CH3)COO(CH2)2O(CH2)3Si(OCH3)3、
CH2=C(CH3)COO(CH2)2(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2、
CH2=C(CH3)COO(CH2)11Si(OCH3)3、
CH2=C(CH3)COO(CH2)11Si(CH3)(OCH3)2、
CH2=CHCH2OCO(o−C6H4)COO(CH2)3Si(OCH3)3、
CH2=CHCH2OCO(o−C6H4)COO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2、
CH2=CH(CH2)4Si(OCH3)3、
CH2=CH(CH2)8Si(OCH3)3、
CH2=CHO(CH2)3Si(OCH3)3、
CH2=CHCH2O(CH2)3Si(OCH3)3、
CH2=CHCH2OCO(CH2)10Si(OCH3)3
等が挙げられる。これらの加水分解性シリル基含有単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
密着性、貯蔵安定性が良好な点から、なかでも、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、及び、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
加水分解性シリル基含有単量体単位の含有量は、アクリルポリマー(B)の全構成単位に対して、0.1〜2質量%であることが好ましい。0.1質量%より少ないと密着性が不充分となるおそれがあり、2質量%を超えると造膜性及び貯蔵安定性が不安定となるおそれがある。より好ましい上限は1.5質量%である。より好ましい下限は0.2質量%である。
アクリルポリマー(B)は、更に、紫外線吸収部位を有するエチレン性不飽和基含有単量体、及び、光安定化部位を有するエチレン性不飽和基含有単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体に基づく重合単位を含むことが好ましい。
紫外線吸収部位を有するエチレン性不飽和基含有単量体としては、べンゾトリアゾール型の紫外線吸収部位を有するメタクリレートであるRUVA−93(大塚化学(株)製)(以下RUVA−93という)、シアノアクリレート系等を挙げることができる。また、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系等の水酸基を含有する公知の紫外線吸収剤とメタクリル酸クロリド、アクリル酸クロリド等の酸ハロゲン化物との反応により得られる紫外線吸収剤のメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル等も挙げることができる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
紫外線吸収部位は、ベンゾトリアゾール系の水酸基を有する部位であることが好ましい。
具体的なエチレン性不飽和基含有単量体を有するベンゾフェノン系化合物としては、限定はされず、例えば、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシ−4´−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、及び、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノン等が好ましく挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
具体的なエチレン性不飽和基含有単量体を有するベンゾトリアゾール系化合物としては、限定はされず、例えば、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−3´−tert−ブチル−5´−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、及び、2−〔2´−ヒドロキシ−5´−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3´−tert−ブチルフェニル〕−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタクロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(RUVA−93)等が好ましく挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
具体的なエチレン性不飽和基含有単量体を有するトリアジン系化合物としては、限定はされず、例えば、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジン、及び、2,4−ビス(2−メトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジン等が好ましく挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
光安定化部位を有するエチレン性不飽和基含有単量体としては、たとえばアデカスタブLA82(旭電化工業(株)製)、アデカスタブLA87(旭電化工業(株)製)等のほか、水酸基を有する光安定化剤とメタクリル酸、アクリル酸とのエステル等も挙げることができる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
具体的な光安定化部位を有するエチレン性不飽和基含有単量体としては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルアクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−イミノピペリジルメタクリレート、2,2,6,6,−テトラメチル−4−イミノピペリジルメタクリレート、4−シアノ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−シアノ−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート等が挙げられる。
アクリルポリマー(B)は、不飽和カルボン酸類、水酸基含有アルキルビニルエーテル類、カルボン酸ビニルエステル類、α−オレフィン類、芳香族ビニル単量体、エポキシ基含有単量体等の非フッ素化オレフィン単位を含むものであってもよい。
不飽和カルボン酸類の具体例としては、たとえばビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、3−アリルオキシプロピオン酸、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニル、ウンデシレン酸等が挙げられる。なかでも、単独重合性が低く単独重合体ができにくい点、カルボキシル基の導入を制御しやすい点から、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、3−アリルオキシプロピオン酸、及び、ウンデシレン酸からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
水酸基含有アルキルビニルエーテル類の具体例としては、たとえば2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等が挙げられる。重合反応性が優れる点で、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、及び、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
カルボン酸ビニルエステル類の具体例としては、たとえば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニル等が挙げられる。カルボン酸ビニルエステル類を用いることで、得られる塗膜に、光沢の向上、ガラス転移温度の上昇等の特性を付与できる。
α−オレフィン類の具体例としては、たとえばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン、スチレン等が挙げられる。α−オレフィン類を用いることで、得られる塗膜に、可とう性の向上等の特性を付与できる。
芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類が例示できる。エポキシ基含有単量体の具体例としては、アリルグリシジルエーテル等が例示できる。
アクリルポリマー(B)は、アクリルポリマー(B)の全構成単位に対して、5〜98質量%のメタクリル酸エステル単位と、93〜1.9質量%のメタクリル酸単位と、0.1〜2質量%の加水分解性シリル基含有単量体単位とを含むことが好ましく、90〜98質量%のメタクリル酸エステル単位と、8〜1.9質量%のメタクリル酸単位と、0.1〜2質量%の加水分解性シリル基含有単量体単位とを含むことがより好ましい。
上記複合重合体粒子は、上記フルオロオレフィンを水性分散重合して、フルオロポリマー(A)粒子を含む水性分散体を得る工程、上記フルオロポリマー(A)粒子を含む水性分散体中で、少なくとも上記アクリルモノマーを、フルオロポリマー(A)粒子にシード重合する工程を含む製造方法により得られたものであることが好ましい。
上記水性分散重合及び上記シード重合は、所望により、非反応性アニオン界面活性剤、反応性アニオン界面活性剤、非反応性ノニオン界面活性剤、反応性ノニオン界面活性剤等の存在下に実施することもできる。
上記被覆層の上記表面自由エネルギーを容易に調整する観点から、上記シード重合を、反応性アニオン界面活性剤及び反応性ノニオン界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の存在下に実施することが好ましく、反応性アニオン界面活性剤の存在下に実施することがより好ましい。
上記反応性アニオン界面活性剤としては、
式(3):CH2=C(CH3)CH2CH2−O−(BO)m−(EO)n−SO3NH4
(式中、BOはブチレンオキサイド単位;EOはCH2CH2OまたはCH(CH3)O単位;mは0〜50の整数;nは0〜100の整数;m+nは0〜150の整数である。)で示される化合物(3)、
式(4):CH2=CHCH2−O−R1−X
(式中、R1は酸素原子および/または窒素原子を有していてもよい炭化水素鎖、XはSO3Y(YはNH4またはアルカリ金属)である。)で示される化合物(4)等が挙げられる。
化合物(3)の市販品としては、例えば、花王(株)製のラテムルPD−104等が挙げられる。
式(4)中のR1は、酸素原子および/または窒素原子を有していてもよい炭化水素鎖である。
上記R1は、オキシアルキレン基を含む炭化水素基であることが好ましい。
Xは、SO3Y(YはNH4またはアルカリ金属)である。アルカリ金属としては、Na、Kが好ましい。
上記オキシアルキレン基としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の炭素数2〜4の直鎖状または分岐鎖状のオキシアルキレン基が挙げられる。
式(4)で示される化合物としては、式(4a):
(式中、R
1’は直鎖状又は分岐状であり、酸素原子、フェニル基またはフェニレン基を含んでもよい炭化水素鎖;AOは炭素数2〜4の直鎖状または分岐鎖状のオキシアルキレン基;nは1〜100の整数;XはSO
3Y(YはNH
4またはアルカリ金属原子)である。)で示される化合物(4a)が好ましく挙げられる。
R
1’の炭素数は1〜51が好ましく、5〜21がより好ましく、10〜16が更に好ましい。
nは、1〜60の整数が好ましく、5以上の整数がより好ましく、10以上の整数が更に好ましく、30以下の整数がより好ましく、20以下の整数が更に好ましく、15以下の整数が特に好ましい。
上記アルカリ金属原子としては、Na、Kが好ましい。
式(4a)としては、次の式(4a−1):
(式中、R
3’は直鎖状又は分岐状であり、フェニル基またはフェニレン基を含んでもよい炭素数1〜50の炭化水素鎖;AOは炭素数2〜4の直鎖状または分岐鎖状のオキシアルキレン基;nは1〜100の整数;XはSO
3Y(YはNH
4またはアルカリ金属原子、たとえばNa、K)である。)で示される化合物(4a−1)、又は、下記式(4a−2);
(式中、R
4’は炭素数1〜50のアルキル基;AOは炭素数2〜4の直鎖状または分岐鎖状のオキシアルキレン基;nは1〜100の整数;XはSO
3Y(YはNH
4またはアルカリ金属原子、たとえばNa、K)である。)で示される化合物(4a−2)が好ましく挙げられる。
式(4a−1)において、R3’は炭素数1〜50であり、好ましくは5〜20であり、より好ましくは10〜15である。nは、1〜100の整数であり、分散安定性および耐水性の点から1〜60の整数であることが好ましく、5〜30の整数であることがより好ましく、10〜15の整数であることが更に好ましい。
Xは、SO3NH4が好ましい。
AOは、エチレンオキサイドであることが好ましい。
化合物(4a−1)の市販品としては、例えば、アデカリアソープのSEシリーズ、SRシリーズ(いずれも、ADEKA社製)等を挙げることができる。
式(4a−2)において、R4’は炭素数1〜50のアルキル基であり、好ましくは5〜20であり、より好ましくは10〜15である。nは、1〜100の整数であり、分散安定性および耐水性の点から1〜20の整数であることが好ましく、5〜15であることが更に好ましい。
Xは、SO3NH4が好ましい。
AOは、エチレンオキサイドであることが好ましい。
化合物(4a−2)の市販品としては、例えば、アクアロンKH−10(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
上記シード重合において、上記反応性アニオン界面活性剤の添加量は、上記シード粒子100質量部に対し、0.15〜100質量部が好ましく、0.77質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上が更に好ましく、70質量部以下がより好ましく、50質量部以下が更に好ましい。
上記被覆層は、上記樹脂を配合した塗料の乾燥塗膜からなることが好ましく、上記塗料を塗布した後、乾燥してなることがより好ましい。
上記塗料は、溶剤塗料、水性塗料、粉体塗料等であってよいが、溶剤塗料又は水性塗料であることが好ましく、水性塗料であることがより好ましい。すなわち、上記塗料は、上記樹脂及び水を含むことが好ましい。
溶剤塗料における溶剤としては、有機溶剤が好ましく、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;キシレン、トルエン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;プロピレングリコールメチルエーテル、エチルセロソルブ等のグリコールエーテル類;カルビトールアセテート等のジエチレングリコールエステル類;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;これらの混合溶剤等が挙げられる。
中でも、エステル類がより好ましく、酢酸ブチルが更に好ましい。
上記樹脂を配合した塗料の固形分濃度は、塗装効率がよいことから通常20質量%以上、好ましくは30質量%以上であり、また貯蔵安定性の点から70質量%以下、好ましくは60質量%以下である。
上記塗料は、更に、非反応性界面活性剤を含むものであってもよい。特に、上記塗料が水性塗料である場合、非反応性界面活性剤を含むことが好ましい。
上記非反応性界面活性剤としては、たとえば非反応性アニオン界面活性剤、非反応性ノニオン界面活性剤またはそれらの組み合わせを使用することができ、場合により非反応性両性界面活性剤、非反応性カチオン界面活性剤を使用することもできる。
非反応性アニオン界面活性剤としては、たとえば高級アルコールの硫酸エステルのナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスクシネートスルホン酸のナトリウム塩またはアルキルジフェニルエーテルスルホン酸のナトリウム塩等を使用することができる。これらの中で好ましい具体例は、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルキルフェニル)エーテルスルホネート等である。非反応性非イオン界面活性剤としては、たとえばポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル等を使用することができる。好ましい具体例は、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等である。非反応性両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン等が好適である。非反応性カチオン界面活性剤としては、たとえばアルキルピリジニウムクロリド、アルキルアンモニウムクロリド等を使用することができる。また、単量体と共重合性の乳化剤、たとえばスチレンスルホン酸ナトリウム、アルキルアリールスルホン酸ナトリウム等も使用することができる。
非反応性ノニオン界面活性剤としては、また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシポリアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、エマルゲン120(花王株式会社)等が挙げられる。
非反応性アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルケニルコハク酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物、特殊カルボン酸型高分子界面活性剤等が挙げられる。非反応性アニオン界面活性剤の具体例としては、ニューコール707−SF(日本乳化剤株式会社)、ハイテノールNF−08(第一工業製薬株式会社)等が挙げられる。
上記塗料には、更に、要求特性に応じて各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、成膜助剤、硬化剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、顔料、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、密着改良剤、つや消し剤等が挙げられる。
硬化剤としては、上記樹脂の硬化性官能基の種類に応じて選択され、たとえば水酸基含有含フッ素ポリマーに対しては、イソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物、イソシアネート基含有シラン化合物等が好ましく例示できる。また、カルボキシル基含有含フッ素ポリマーに対してはアミノ系硬化剤やエポキシ系硬化剤が、アミノ基含有含フッ素ポリマーに対してはカルボニル基含有硬化剤やエポキシ系硬化剤、酸無水物系硬化剤が通常採用される。
上記硬化剤としては、また、非ブロック型ポリイソシアネート化合物、ブロック型ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、アジリジン基、カルボジイミド基及びオキサゾリン基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する架橋剤、ヒドラジン誘導体等が挙げられる。
非ブロック型ポリイソシアネート化合物は、常温での硬化性に優れており、また架橋反応性の点でも優れている。
なお非ブロック型ポリイソシアネート化合物とは、アルコールやオキシム化合物とイソシアネート化合物との反応で得られるブロック型ポリイソシアネート化合物以外の、通常のイソシアネート化合物のことをいう。
非ブロック型ポリイソシアネート化合物としては、特開平11−310700号公報、特開平7−330861号公報、特開昭61−291613号公報等に記載されているポリエチレンオキシド化合物で変性された非ブロック型ポリイソシアネート化合物が好適である。
具体的には、ポリエチレンオキシド化合物で変性した非ブロック型脂肪族ポリイソシアネート化合物または非ブロック型芳香族ポリイソシアネート化合物が例示される。これらのなかでは、耐候性に優れる点から非ブロック型脂肪族系ポリイソシアネート化合物が好ましい。
非ブロック型脂肪族ポリイソシアネート化合物のうち鎖状脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、たとえばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ジイソシアナトヘキサン(=ヘキサメチレンジイソシアネート)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプトロエート等のジイソシアネート類;リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアネートオクタン、1,6,11−トリイソシアネートウンデカン、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアネートヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアネート−5−イソシアネートメチルオクタン等のポリイソシアネート類が例示できる。
非ブロック型脂肪族ポリイソシアネート化合物のうち脂環族ポリイソシアネート化合物としては、たとえば1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチル−シクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等のジイソシアネート類;1,3,5−トリイソシアネートシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアネートシクロヘキサン、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,6−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等のポリイソシアネート類が例示できる。
非ブロック型脂肪族系ポリイソシアネート化合物としては、たとえばトリレンジイソシアネート等が挙げられる。
これらのイソシアネート化合物は単独でまたは2種以上組合わせて使用してもよい。
変性剤であるポリエチレンオキシド化合物としては、たとえばポリオキシエチレンモノオクチルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレンモノデシルエーテル、ポリオキシエチレンモノセチルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテル等のポリオキシエチレンC8〜24アルキルエーテル、好ましくはポリオキシエチレンC10〜22アルキルエーテル、特にポリオキシエチレンC12〜18アルキルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;たとえばポリオキシエチレンモノオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノデシルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンC8〜12アルキル−C6〜12アリールエーテル等のポリオキシエチレンモノアルキルアリールエーテル類;たとえばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンジステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン−モノ、ジまたはトリC10〜24脂肪酸エステル等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;たとえばポリオキシエチレンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンモノステアリン酸エステル等のポリオキシエチレンモノC10〜24脂肪酸エステル等のポリオキシエチレンモノ高級脂肪酸エステル類等のノニオン性乳化剤として知られている化合物が例示できる。これらの化合物は単独でまたは2種以上組合わせて使用できる。好ましいものとしては、水分散性が容易である点からポリオキシエチレンC8〜24アルキルエーテル、ポリオキシエチレンC8〜12アルキルフェニルエーテルが挙げられる。
変性は、たとえば、溶液中にてポリイソシアネート化合物を変性剤と混合し、加熱して反応させる等の方法で行なうことができる。
上記ポリイソシアネート化合物と変性剤との割合は、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基1当量に対して、変性剤の活性水素原子0.01〜0.034当量、好ましくは0.015〜0.03当量程度の範囲から選択できる。
ポリエチレンオキシド変性の非ブロック型ポリイソシアネート化合物の市販品としては、たとえば住友バイエルウレタン(株)製のバイヒジュール3100、バイヒジュールTPLS2150等;旭化成(株)製のデュラネートWB40−100等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
非ブロック型ポリイソシアネート化合物は、通常、水溶液または水分散液の形態で使用する。
ブロック型ポリイソシアネート化合物としては、住化バイエルウレタン(株)製スミジュールBL3175、旭化成(株)製のデュラネートTPA−B80E等の公知の硬化剤が使用できる。
アジリジン基を有する架橋剤の例としては、BF−グッドリッチ(BF−Goodrich)社から供給されるXAMA2、XAMA7などが例示される。
カルボジイミド基を有する架橋剤の例としては、ユニオンカーバイド社から供給されるUCARLNK Crosslinker XL−29SE、日清紡ケミカル社のカルボジライトE−02,E−04、SV−02,V−02V−02−L2、V−04、V−10などが例示される。
オキサゾリン基を有する架橋剤の例としては、(株)日本触媒から供給されるエポクロスK−1010E、エポクロスK−1020E、エポクロスK−1030E、エポクロスK−2010E、エポクロスK−2020E、エポクロスK−2030E、エポクロスWS−500などが例示できる。
上記ヒドラジン誘導体は少なくとも2個のヒドラジン残基を有し、そしてとくに有利には飽和脂肪酸ジカルボン酸から導かれるものであってよい。とくに重要なものは、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸ジヒドラジドである。この種の好適なジヒドラジドは、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドおよび/またはセバシン酸ジヒドラジドである。炭酸のポリヒドラジドたとえば炭酸ジヒドラジドなどが例示される。
硬化剤は、上記樹脂の硬化性官能基1当量に対して、0.1〜5モル当量となるように添加することが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5モル当量である。
上記樹脂の硬化性官能基の含有量は、NMR、FT−IR、元素分析、蛍光X線分析、中和滴定を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
硬化促進剤としては、例えば有機スズ化合物、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルとアミンとの反応物、飽和または不飽和の多価カルボン酸またはその酸無水物、有機チタネート化合物、アミン系化合物、オクチル酸鉛等が挙げられる。
硬化促進剤は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。硬化促進剤の配合割合は上記樹脂100質量部に対して1.0×10−6〜1.0×10−2質量部が好ましく、5.0×10−5〜1.0×10−3質量部程度がより好ましい。
上記親水化層は、コロイダルシリカ、オルガノシリケート、有機金属化合物、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、遷移金属多価イオン及び金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、上記金属酸化物を含むことがより好ましい。
上記コロイダルシリカとしては、たとえば水ガラスの脱ナトリウム(イオン交換法、酸分解法、解膠法)によって製造され、一次粒子径としては、4〜150nmであり、好ましくは5〜50nmで、このものは通常水性分散液として供給されており、それをそのまま使用できる。
上記コロイダルシリカは、水分散性の状態で酸性側、塩基性側のいずれかであっても用いることができ、酸性側コロイダルシリカとしては、たとえば商品名スノーテックス−Oまたはスノーテックス−OL(日産化学工業(株)製)として市販されている非安定化シリカ(pH2〜4)が利用できる。一方、塩基性側のコロイダルシリカとしては、微量のアルカリ金属イオン、アルミニウムイオン、アンモニウムイオンまたはアミンの添加によって安定化したシリカ(pH8.4〜10)があり、たとえば商品名スノーテックス20、スノーテックスC、スノーテックスN、(以上は日産化学工業(株)製)、商品名ルドックスHS−40、HS−30、LS、SM−30、TM、AS、AM(以上は米国、デュポン社製)、商品名ナルコーク(米国、ナルコケミカル社製)、商品名ミトン(米国、モンサントケミカル社製)等として市販されているものを挙げることができる。前記pHが6〜8であるとコロイダルシリカの安定性だけでなく、塗料化したときの塗料の安定性が低下し、凝集、ゲル化の傾向がある。
上記コロイダルシリカとともに有機ケイ素化合物を用いることができ、その目的は、塗料化したときに、前記無機質基材、有機質基材への密着性、耐候性、耐薬品性、成膜性に加え、可撓性をさらに向上させることにある。該有機ケイ素化合物としては、式:
R31 aSi(OR32)4−a
(式中、R31は非加水分解性基または水素原子を示し、R32はアルキル基、アリール基、アルケニル基または水素原子を示し、aは0、1または2である)で示される単量体である。
上記非加水分解性基としては、たとえばメチル、エチル、プロピル等のアルキル基、フェニル基、トリル基、メシチル基等のアリール基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、γ−クロロプロピル基等のハロアルキル基、γ−アミノプロピル基、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピル基等のアミノアルキル基、γ−グリシドキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等のエポキシアルキル基、γ−メルカプトアルキル基、γ−メタクリロイルオキシプロピル基等のメタクリロイルオキシアルキル基、γ−ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシアルキル基等が挙げられる。これらの置換基の中で本発明にとり好ましいものは、置換基の炭素数が多いと反応性が低下するという点から、炭素数8以下、さらに好ましくは炭素数4以下のアルキル基およびそれに置換基の付加したアミノアルキル基、エポキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基およびアリール基の一種であるフェニル基、炭素数2〜3のアルケニル基である。また、R32のアルキル基、アリール基、アルケニル基に関しても前記R31と同様であるが、とくに好ましいものは、置換基の炭素数が多いと反応性が低下するという点から、炭素数4以下のアルキル基である。
上記有機ケイ素化合物としては、たとえばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、反応性、成膜性、可撓性等の点からメチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が好ましい。
上記オルガノシリケートとしては、特開平11−343462号公報、特開2002−129111号公報、特開2002−129110号公報、特開2007−153930号公報、特開2008−013771号公報、国際公開第94/06870号に記載されている化合物が本発明においても使用でき、加水分解性基が加水分解することにより親水性基となり、塗膜表面を親水化することによって汚染付着防止効果が奏される。
上記オルガノシリケートとしては、たとえば式:
Si(OR41)4
(式中、R41は水素原子またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の有機基、たとえば直鎖または分岐鎖状のアルキル基、単環でも多環でもよいアリール基等)で示される4官能オルガノシリケート化合物、またはその縮合物;または上記式の4官能オルガノシリケート化合物またはその縮合物の少なくとも1つのOR41基がノニオン性基、たとえばポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン鎖を必ず含む)を含む有機基で置換されたノニオン変性アルキル基を有するオルガノシリケート化合物;たとえばテトラジエトキシシラン、テトラトリエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラジプロポキシシラン、ジポリエトキシシラン、エトキシトリプロポキシシラン、エトキシトリブトキシシラン等が挙げられる。なお、親水化能を有する限り、官能基数が1〜3のオルガノシリケート化合物であってもよい。
4官能オルガノシリケート化合物としては、たとえばテトラヒドロキシシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン等;およびこれらの縮合物が例示できる。
オルガノシリケートとしては、ノニオン変性されたアルキル基を有するものが特に好ましい。ノニオン変性オルガノシリケート化合物としては、たとえば少なくとも1つの加水分解性基がアルキレンオキサイド鎖、たとえばエチレンオキサイド鎖を含む、変性されたオルガノシリケート化合物が好ましく挙げられる。なお、プロピレンオキサイド鎖、ブチレンオキサイド鎖を含んでいてもよい。なかでも、貯蔵安定性が良好な点から、アルキレンオキサイド変性オルガノシリケート、エチレンオキサイド変性オルガノシリケートが好ましい。
上記有機金属化合物としては、式:
XbM(OR51)aR52 c
[式中、aは0〜6の整数、bは0〜5の整数、cは0〜6の整数(ただし、a+b+c≧3であり、aとcとは同時に0にはならない)、Xは同じかまたは異なりいずれも酸素原子、チッ素原子、フッ素原子および/または塩素原子を含んでいてもよい炭素数1〜5000の1価の有機基または水素原子、Mは少なくとも3価の原子価を有する金属原子、R51は同じかまたは異なりいずれも酸素原子、チッ素原子、フッ素原子および/または塩素原子を含んでいてもよい炭素数1〜1000の1価の有機基、シロキサン残基または水素原子、R52は同じかまたは異なりいずれも酸素原子、チッ素原子、フッ素原子および/または塩素原子を含んでいてもよいキレート化の能力を有する炭素数1〜20の有機基を表す]で示される加水分解性有機金属化合物、そのオリゴマーまたは該有機金属化合物の2種以上からなるコオリゴマーが挙げられる。
上記パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂は、パーフルオロカーボンにスルホン酸基(場合により一部が塩の形になっていてもよい)が結合した樹脂である。
上記パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂は、−(CF2−CFZ)−で表される重合単位(式中、Zは、H、Cl、F又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基である。)と、−(CF2−CF(−O−(CF2)m−SO3H))−で表される重合単位(式中、mは1〜12の整数である。)と、を含む共重合体である。上記親水化層が上記構造のパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂を含むと、高い耐久性と親水性を、優れた耐汚染性を示す。高い親水性が得られる観点から、上記mは1〜6の整数であることが好ましく、また、ZはFであることが好ましい。
上記パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂としては、下記一般式(1)で表されるフッ化ビニルエーテル化合物と下記一般式(2)で表されるフッ化オレフィンモノマーとの共重合体からなるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体を加水分解して得られるものが好ましい。
CF2=CF−O−(CF2)m−W (1)
(式中、mは1〜12の整数である。Wは加水分解により−SO3Hに転換し得る官能基である。)
CF2=CFZ (2)
(式中、Zは、H、Cl、F又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基である。)
上記式(1)中の加水分解により−SO3Hに転換しうる官能基であるWとしては、SO2F、SO2Cl又はSO2Brが好ましい。mは1〜6の整数であることが好ましい。mが1〜6の整数であると、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の当量重量EWが低くなり、親水性が高くなる傾向にある。
また、上記式(1)及び(2)において、WはSO2Fであり、ZはFであるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体が好ましく、中でも、高い親水性及び高い樹脂濃度の溶液が得られる観点から、mは1〜6の整数、WはSO2F、かつZはFであるものがより好ましい。また、上記構造を有する共重合体であると、光触媒作用で生成するラジカル種への耐性が強くなる点でも好ましい。
上記パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体は、公知の手段により合成できる。例えば、ラジカル発生剤の過酸化物を利用した重合法等にて、含フッ素炭化水素等の重合溶剤を使用し、上記加水分解により−SO3Hに転換しうる官能基を有するフッ化ビニル化合物とテトラフルオロエチレン(TFE)等のフッ化オレフィンのガスを充填溶解して反応させ重合する方法(溶液重合)、含フッ素炭化水素等の溶媒を使用せずフッ化ビニル化合物そのものを重合溶剤として重合する方法(塊状重合)、界面活性剤の水溶液を媒体として、フッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンのガスとを充填して反応させ重合する方法(乳化重合)、界面活性剤及びアルコール等の助乳化剤の水溶液に、フッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンのガスを充填乳化して反応させ重合する方法(ミニエマルジョン重合、マイクロエマルジョン重合)及び懸濁安定剤の水溶液にフッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンのガスを充填懸濁して反応させ重合する方法(懸濁重合)等が知られているが、本実施形態においてはいずれの重合方法で作製されたものでも使用することができる。
上記のようにして作製されたパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体は、メルトインデックス(MI)が0.05〜50g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.1〜30g/10分であり、もっとも好ましくは0.2〜20g/10分である。MIは、JIS K 7210に従って270℃、荷重2.16kgの条件下で、メルトインデクサーを用いて測定し、押し出されたポリマーの質量を10分間あたりのグラム数で表したものである。
上記のようにして作製されたパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体は、押し出し機を用いてノズル又はダイ等で押し出し成型することが好ましい。この際の成型方法及び成型体の形状は特に限定されるものではない。後述の加水分解処理及び酸処理において処理速度を速めるには、成型体が0.5cm3以下のペレット状であることが好ましいが、重合後の粉末状態のものを利用してもよい。
上記のようにして成型されたパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体を、引き続き塩基性反応液体中に浸漬し、加水分解処理を行う。
この加水分解処理に使用する塩基性反応液としては、特に限定されるものではないが、ジメチルアミン、ジエチルアミン、モノメチルアミン、モノエチルアミン等のアミン化合物の水溶液や、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液が好ましく、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液が特に好ましい。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の含有量は特に限定されないが、反応液全体に対して10〜30質量%であることが好ましい。上記反応液は、さらにメチルアルコール、エチルアルコール、アセトン及びDMSO等の膨潤性有機化合物を含有することがより好ましい。また膨潤性の有機化合物の含有量は、反応液全体に対して1〜30質量%であることが好ましい。
パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体は、前記塩基性反応液体中で加水分解処理された後、温水等で十分に水洗され、その後、酸処理が行われる。酸処理に使用する酸としては、特に限定されないが、塩酸、硫酸及び硝酸等の鉱酸類や、シュウ酸、酢酸、ギ酸及びトリフルオロ酢酸等の有機酸類が好ましく、これらの酸と水との混合物がより好ましい。また、上記の酸類が2種類以上同時に使用されても構わない。この酸処理によってパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体はプロトン化され、−SO3Hを有するものとなる。プロトン化することによって得られたパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂は、プロトン性有機溶媒、水、又は両者の混合溶媒に溶解することが可能となる。
パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂は、当量重量EW(プロトン交換基1当量あたりのパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の乾燥重量グラム数)が200〜1000である。上記パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の当量重量EWとしては、好ましくは200〜950、より好ましくは200〜800である。更に好ましくは200〜700であり、特に好ましくは250〜600であり、最も好ましくは400〜500である。当量重量EWが上記範囲であることによって、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂に優れた親水性を付与することができる。その結果、親水性に優れた親水化層を形成でき、優れた耐汚染性効果を発現することができる。当量重量EWが小さすぎると、水に可溶となるため、上記親水化層が上記被覆層から剥離しやすくなるおそれがあり、大きすぎると、親水性が低下するおそれがある。
ここで、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の当量重量EWは、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂を塩置換し、その溶液をアルカリ溶液で逆滴定することにより測定することができる。
上記遷移金属多価イオンとしては、ラジカル耐性を効果的に向上させる観点から、セリウムイオンが特に好ましい。なお、セリウムイオンは+3価又は+4価の状態を取り得るが、本実施形態においては特に限定されない。上記被覆層は、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂及び遷移金属多価イオンを含むことが好ましく、この場合の遷移金属多価イオンは、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂のスルホン酸基とイオン結合可能であるものが好ましい。以下、セリウムイオンを例に取って説明する。
上記被覆層において、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂中にセリウムイオンが配合されていることが好ましい。パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂中にセリウムイオンを配合させる方法は特に限定されないが、例えば以下の方法が挙げられる。
(1)セリウムイオンが含まれる溶液中にパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂を浸漬する方法。
(2)パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の溶液内にセリウムイオンを含む塩を添加する方法。
(3)セリウムイオンを含む溶液とパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の溶液を混合する方法。
上記の方法によって得られるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂は、スルホン酸基の一部がセリウムイオンによりイオン交換されていると考えられる。
ここでセリウムイオンは+3価でも+4価でもよく、セリウムイオンを含む溶液を得るために各種のセリウム塩が使用される。+3価のセリウムイオンを含む塩を具体例に挙げると、例えば、酢酸セリウム(Ce(CH3COO)3・H2O)、塩化セリウム(CeCl3・6H2O)、硝酸セリウム(Ce(NO3)3・6H2O)、硫酸セリウム(Ce2(SO4)3・8H2O)、炭酸セリウム(Ce2(CO3)3・8H2O)等が挙げられる。+4価のセリウムイオンを含む塩としては、例えば、硫酸セリウム(Ce(SO4)2・4H2O)、硝酸二アンモニウムセリウム(Ce(NH4)2(NO3)6)、硫酸四アンモニウムセリウム(Ce(NH4)4(SO4)4・4H2O)等が挙げられる。また、セリウムの有機金属錯塩としては、セリウムアセチルアセトナート(Ce(CH3COCHCOCH3)3・3H2O)等が挙げられる。上記の中でも、特に炭酸セリウムが好ましい。水を含有したパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の溶液に、炭酸セリウムを加えると、炭酸ガスを発生しながら溶解する。この場合、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の溶液にアニオン種が残存しないためアニオン種除去の工程を必要としないという利点を有する。
例えば、セリウムイオンが+3価である場合、スルホン酸基がセリウムイオンによりイオン交換されると、Ce3+が3個の−SO3 −と結合する。本実施形態において、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂中に含まれるセリウムイオンの数は、樹脂中の−SO3 −基の数に対して0.3〜30当量%であることが好ましい(以下、この割合を「セリウムイオンの含有率」という。)。この数値範囲は、+3価のセリウムイオンが完全に3個の−SO3 −と結合している場合には、セリウムイオンでイオン交換されたスルホン酸基が、スルホン酸基とセリウムイオンでイオン交換されたスルホン酸基との合計量に対して0.9〜90%であることと同義である(以下、この割合を「置換率」という。)。セリウムイオンの含有率は、より好ましくは0.6〜20当量%、さらに好ましくは1〜15当量%である。上記置換率で表すと、1.8〜60%がより好ましく、3〜45%がさらに好ましい。セリウムイオンの含有率を上記範囲(0.3〜30当量%)に調整することにより、良好な親水性を維持したまま、高耐久性を有する塗膜を作製することができる。また、乾燥硬化して得られた塗膜は、柔軟性に優れ、更には、光触媒作用で生成するラジカル種に対する耐久性にも優れ、長期間光触媒機能を発揮することもできる。
上記金属酸化物としては、光触媒機能を有する金属酸化物が好ましい。上記金属酸化物としては、TiO2、ZnO、SrTiO3、CdS、GaP、InP、GaAs、BaTiO3、BaTiO4、BaTi4O9、K2NbO3、Nb2O5、Fe2O3、Ta2O5、K3Ta3、Si2O3、WO3、SnO2、Bi2O3、BiVO4、NiO、Cu2O、SiC、SiO2、MoS2、InPb、RuO2、CeO2等を挙げることができる。
また、Ti、Nb、Ta、Vから選ばれた少なくとも1種の元素を有する層状酸化物(特開昭62−74452号公報、特開平2−172535号公報、特開平7−24329号公報、特開平8−89799号公報、特開平8−89800号公報、特開平8−89804号公報、特開平8−198061号公報、特開平9−248465号公報、特開平10−99694号公報、特開平10−244165号公報等参照)を用いることもできる。
更に、これらの金属酸化物に、Pt、Rh、Ru、Nb、Cu、Sn、Ni、Fe等の金属及び/又はこれらの酸化物を添加あるいは固定化したものや、多孔質リン酸カルシウム等で被覆された光触媒(特開平10−244166号公報参照)等を使用することもできる。
更に、これらの他に、公知の増感剤を添加して可視光線領域における光触媒機能を付与したものも使用することができる。
これらの光触媒機能を有する金属酸化物のうち、TiO2(酸化チタン)は無毒であり、化学的安定性にも優れるためより好ましい。
酸化チタンには、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型の3つの結晶形が知られているが、これらのうちのいずれを使用してもよい。
好ましくは光活性が一番高いアナターゼ型である。
上記金属酸化物の結晶粒子径(1次粒子径)は1〜200nmであることが好ましく、より好ましくは1〜50nmである。ここで、結晶粒子径は、レーザーを利用した散乱法により測定した値をいう。
上記親水化層は、コロイダルシリカ、オルガノシリケート、有機金属化合物、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、遷移金属多価イオン及び金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種並びに水を含む親水化塗料から形成されることが好ましい。上記親水化層が上記親水化塗料から形成されるものであると、環境に負荷をかけずに上記親水化層を形成できる。本発明の積層体は、上記親水化層が水を含む親水化塗料から形成されたものであっても、上記親水化層と上記被覆層とが強固に接着している。上記親水化塗料は、水に加えてアルコールを含むものであってよく、上記アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。
上記積層体は、更に、基材を含むことが好ましい。上記基材は、後述する用途にあわせて適宜選択すればよい。例えば、サイディング材、窯業系基材、金属系基材、スレート基材、発泡コンクリートパネル、コンクリートパネル、アルミカーテンウォール、鋼板、亜鉛メッキ鋼板、ステンレス鋼板、塩ビシート、PETフィルム、ポリカーボネート基材、アクリルフィルム、ガラス等が挙げられる。
上記積層体は、上記基材、上記被覆層及び上記親水化層がこの順に積層されていることが好ましい。上記基材と上記被覆層との間に他の層を含むものであってもよい。上記他の層としては、アクリル樹脂層(但し、表面自由エネルギーが30〜40mJ/m2である層を除く)が挙げられる。上記被覆層及び上記親水化層は、直接接着していることが好ましい。
上記基材としては、サイディング材が好ましい。上記サイディング材としては、例えば、窯業系サイディング材、金属系サイディング材、プラスチック系サイディング材等が挙げられる。
特に、窯業系サイディング材では、耐水性、耐候性や外観の向上等のため、表面にアクリル系、アクリルシリコン系、アクリルウレタン系の塗膜が形成されることが多いが、上記被覆層は、アクリル系の塗膜にも強固に接着し、耐温水性に優れ、更に透明性にも優れる。窯業系サイディング材は、例えば、窯業系基材と、上記組成物を窯業系基材に塗装して得られる塗膜とを有するものであり、窯業系基材は、表面がアクリル樹脂からなるものであってもよい。
窯業系基材としては、従来公知のものを用いることができる。たとえばセメントを主とする水性スラリーの抄造により湿潤シートを得て、これを脱水プレス成形し、乾燥、養生硬化させたものや、セメント等の水性混練物を、押し出し成形、注型成形等することにより得られた成形体を硬化させたもの等、従来より公知の組成のものを使用することができる。窯業系基材は、成形体の表面にアクリル樹脂層を有するものであってもよい。
上記積層体は、上記樹脂を配合した塗料を上記基材に塗布して上記被覆層を形成する工程、並びに、上記被覆層上にコロイダルシリカ、オルガノシリケート、有機金属化合物、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、遷移金属多価イオン及び金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種並びに水を含む塗料を塗布して、上記親水化層を形成する工程を含む製造方法により製造できる。
上記被覆層を形成する塗料は、水性塗料であることが好ましい。従来の方法では、水性塗料により被覆層を形成した後、該被覆層上に水を含む塗料を塗布すると、該塗料が該被覆層に弾かれて、親水化層を形成できなかったり、形成できたとしても、両層の接着性が不十分であったりした。上記製造方法では、上記被覆層が上記樹脂を配合した塗料からなるので、該塗料が水性塗料であっても、上記被覆層と上記親水化層とが強固に接着した積層体を製造できる。
上記被覆層及び上記親水化層を形成するための塗料を塗布する方法としては、例えば、スプレーコーティング、ロールコーティング、フローコーティング、ローラー、刷毛による塗装等の塗装方法が挙げられる。塗布後、5〜200℃で乾燥してもよい。
上記積層体は、幅広い用途で使用可能である。例えば、電気製品(電子レンジ、トースター、冷蔵庫、洗濯機、ヘアードライアー、テレビ、ビデオ、アンプ、ラジオ、電気ポット、炊飯機、ラジオカセット、カセットデッキ、コンパクトディスクプレーヤー、ビデオカメラ等)、エアーコンディショナーの室内機、室外機、吹き出口およびダクト、空気清浄機、暖房機、蛍光燈、シャンデリア、反射板等の照明器具、家具、機械部品、装飾品、くし、めがねフレーム、天然繊維、合成繊維(糸状のもの、およびこれらから得られる織物)、事務機器(電話機、ファクシミリ、複写機(ロールを含む)、写真機、オーバーヘッドプロジェクター、実物投影機、時計、スライド映写機、机、本棚、ロッカー、書類棚、いす、ブックエンド、電子白板等)、自動車(ホイール、ドアミラー、モール、ドアのノブ、ナンバープレート、ハンドル、インスツルメンタルパネル等)、厨房器具類(レンジフード、流し台、調理台、包丁、まな板、水道の蛇口、ガスレンジ、換気扇等)、間仕切り、バスユニット、シャッター、ブラインド、カーテンレール、アコーディオンカーテン、壁、天井、床、外壁、手摺り、門扉、シャッター等が挙げられる。
また、特に好ましい態様として、次の製造方法が挙げられる。
すなわち、基材の上に水性塗料を塗布し、乾燥させることにより、被覆層を形成する工程、及び、
上記被覆層上に親水化塗料を塗布することにより、親水化層を形成する工程、
を含む製造方法であって、
上記水性塗料は、複合重合体粒子及び水を含み、
上記親水化塗料は、コロイダルシリカ、オルガノシリケート、有機金属化合物、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、遷移金属多価イオン及び金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種、並びに、水又はアルコールを含む
ことを特徴とする製造方法である。
上記製造方法は、上記の構成を有することから、水性塗料により形成された被覆層の上に、水性の親水化塗料により親水化層を形成できるという効果を奏する。従来の被覆層の上に親水化塗料を塗布すると、造膜性が良くなく、良好な外観を有する親水化層を形成できなかった。
上記複合重合体粒子としては、上述したものが、上記製造方法でも同様に使用できる。
上記複合重合体粒子は、フルオロポリマー(A)とアクリルポリマー(B)とを同一粒子内に含み、フルオロポリマー(A)とアクリルポリマー(B)との質量比(A/B)が90/10〜10/90であることが好ましい。
フルオロポリマー(A)としては、VdF/TFE/CTFE=40〜99/1〜50/0〜30(モル%)、VdF/TFE=50〜99/1〜50(モル%)、VdF/TFE/HFP=45〜99/0〜35/5〜50(モル%)、VdF/CTFE=40〜99/1〜30(モル%)、及び、VdF/HFP=50〜99/1〜50(モル%)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
アクリルポリマー(B)は、アクリルポリマー(B)の全構成単位に対して、5〜98質量%のメタクリル酸エステル単位と、93〜1.9質量%のメタクリル酸単位と、0.1〜2質量%の加水分解性シリル基含有単量体単位とを含むことが好ましく、90〜98質量%のメタクリル酸エステル単位と、8〜1.9質量%のメタクリル酸単位と、0.1〜2質量%の加水分解性シリル基含有単量体単位とを含むことがより好ましい。
メタクリル酸エステル単位としては、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、及び、シクロヘキシルメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種の単位が好ましい。
上記被覆層は、表面自由エネルギーが30〜40mJ/m2であることが好ましい。上記表面自由エネルギーとしては、32mJ/m2以上がより好ましく、38mJ/m2以下がより好ましい。
上記製造方法は、更に、上記フルオロオレフィンを水性分散重合して、フルオロポリマー(A)粒子を含む水性分散体を得る工程、上記フルオロポリマー(A)粒子を含む水性分散体中で、上記反応性アニオン界面活性剤の存在下に、少なくとも上記アクリルモノマーを、フルオロポリマー(A)粒子にシード重合する工程を含むものであってもよい。
上記水性塗料は、造膜助剤を含むものであってよい。上記造膜助剤としては特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;四塩化炭素、メチレンジクロライド、ヘキサフルオロイソプロパノール等の含ハロゲン溶剤;エチレングリコール等のエステル類又はエーテル類;「テキサノール」(イーストマンケミカル社製)、「CS−12」(チッソ社製)等の水性塗料用可塑剤等を挙げることができる。上記造膜助剤は、上記水性塗料中の固形分に対して、0.1〜15質量%であってよい。
コロイダルシリカ、オルガノシリケート、有機金属化合物、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、遷移金属多価イオン及び金属酸化物としては、それぞれ、上述したものが、上記製造方法でも同様に使用できる。
上記親水化塗料は、金属酸化物及び水を含むことが好ましく、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、金属酸化物、及び、水を含むことがより好ましい。上記親水化塗料は、水に加えてアルコールを含むものであってよく、上記アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。
上記基材としては、サイディング材、窯業系基材、金属系基材、スレート基材、発泡コンクリートパネル、コンクリートパネル、アルミカーテンウォール、鋼板、亜鉛メッキ鋼板、ステンレス鋼板、塩ビシート、PETフィルム、ポリカーボネート基材、アクリルフィルム、ガラス基材等が挙げられる。上記基材としては、基材表面にアクリル樹脂塗膜を備える基材が好ましい。
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
複合重合体粒子(被覆層)の表面自由エネルギーは、複合重合体粒子の水性分散体から得た膜について、装置として接触角計「PCA−1」(協和界面科学製)を用い、溶媒としてn−ヘキサデカンと水により測定した。
親水化層(親水化塗料)の造膜性は、目視と色彩色差計(色差計CR300(ミノルタ(株)製))で測定、被覆層の色彩と親水化層の色彩の明度差ΔLを造膜性の指標とした。
親水化層の接触角の測定は、装置として接触角計「PCA−1」(協和界面科学製)を用い、溶媒として水により測定した。また、次の条件で実施する耐候性試験後の接触角も測定した。
<耐候性試験後の接触角>
ダイプラウィンテス製メタルウェザーによる耐候性試験を実施した。試験条件は、照度65mW/cm2、ブラックパネル温度53℃、LIGHT照射時条件(53℃/70%RH/2時間)とした。試験を2時間実施した後、接触角の評価を行った。
実施例1
複合重合体粒子の合成
撹拌機、還流管、温度計、滴下ロートを備えた内容量2リットルのガラス製四つ口セパラブルフラスコに、VdF/TFE/CTFE重合体(VdF/TFE/CTFE=72/15/13(モル%))の粒子の水性分散液1018質量部にポリオキシ−1−(アリルオキシ)アルキルエーテル硫酸アンモニウム塩を9質量部加え水性分散液を調製した。
つぎに、上記水性分散液を攪拌下に水浴中で加温し、槽温が80℃に達したところで、メチルメタクリレート(MMA)47質量部、n−ブチルメタクリレート(BMA)394質量部、メタクリル酸18質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン1質量部、および過硫酸アンモニウム(APS)(1%水溶液)40質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了から30分後に室温まで冷却して反応を終了し、pH調整剤で中和を行い、複合重合体粒子の水性分散体を得た。フルオロポリマー(A)とアクリルポリマー(B)との質量比(A/B)は50/50であった。
パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂水溶液の調製
テトラフルオロエチレン(「CF2=CF2」、以下「TFE」と略記する。)とCF2=CFO(CF2)2SO3Hからなる共重合体(パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂)をエタノール水溶液(水:エタノール=50:50(質量比))に分散し5質量%の水溶液を作製した。次に、100gの5質量%パーフルオロカルボンスルホン酸水溶液に純水100gを添加し、固形分濃度20質量%になるまで濃縮し、20質量%パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂水溶液を得た。
親水化塗料の調製
酸化チタン10質量部、20%パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂水溶液50質量部、エタノール40質量部を配合して親水化塗料を調製した。
積層体の製造方法
基材としてアルミ板(化成アルミ板(JIS H4000 A1050P、AM−712処理。厚さ0.5mm)に予め下塗りとして水性アクリル系樹脂に黒顔料ペーストを混ぜたものを100g/m2となるように塗装し、室温で1日間乾燥させたもの)に上記複合体粒子の水性分散体に造膜助剤テキサノール(添加量10PHR、EASTMAN CHEMICAL製)を添加し、エアスプレーで塗布し、100℃で3分乾燥させ被覆層を形成した。
更に、親水化塗料を上記被覆層上に塗布し、80℃で5分間乾燥し、本発明の積層体を含むアルミ試験板を得た。
実施例2
撹拌機、還流管、温度計、滴下ロートを備えた内容量2リットルのガラス製四つ口セパラブルフラスコに、VdF/TFE/CTFE重合体(VdF/TFE/CTFE=72/15/13(モル%))の粒子の水性分散液1018質量部にポリオキシ−1−(アリルオキシ)アルキルエーテル硫酸アンモニウム塩を9質量部加え水性分散液を調製した。
つぎに、上記水性分散液を攪拌下に水浴中で加温し、槽温が80℃に達したところで、メチルメタクリレート(MMA)45質量部、n−ブチルメタクリレート(BMA)350質量部、シクロヘキシルメタクリレート44質量部、メタクリル酸16質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン5質量部、および過硫酸アンモニウム(APS)(1%水溶液)40質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了から熟成30分後に室温まで冷却して反応を終了し、pH調整剤で中和を行い、複合重合体粒子の水性分散体を得た。フルオロポリマー(A)とアクリルポリマー(B)との質量比(A/B)は50/50であった。
親水化塗料として、東亞合成(株)製「ハイチタン ABFS−2」を用いた。
実施例1と同様にして、アルミ試験板を得た。
実施例3
撹拌機、還流管、温度計、滴下ロートを備えた内容量2リットルのガラス製四つ口セパラブルフラスコに、VdF/TFE/CTFE重合体(VdF/TFE/CTFE=72/15/13(モル%))の粒子の水性分散液945質量部にポリオキシ−1−(アリルオキシ)アルキルエーテル硫酸アンモニウム塩を17質量部加え水性分散液を調製した。
つぎに、上記水性分散液を攪拌下に水浴中で加温し、槽温が80℃に達したところで、メチルメタクリレート(MMA)13質量部、n−ブチルメタクリレート(BMA)9質量部、n−ブチルアクリレート(BA)153質量部、メタクリル酸12質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン2質量部、および過硫酸アンモニウム(APS)(1%水溶液)30質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了から30分後に室温まで冷却して反応を終了し、pH調整剤で中和を行い、複合重合体粒子の水性分散体を得た。フルオロポリマー(A)とアクリルポリマー(B)との質量比(A/B)は70/30であった。
親水化塗料として、東亞合成(株)製「ハイチタン ABFS−2」を用いた。
実施例1と同様にして、アルミ試験板を得た。
実施例4
撹拌機、還流管、温度計、滴下ロートを備えた内容量2リットルのガラス製四つ口セパラブルフラスコに、VdF/TFE/CTFE重合体(VdF/TFE/CTFE=72/15/13(モル%))の粒子の水性分散液486質量部にポリオキシ−1−(アリルオキシ)アルキルエーテル硫酸アンモニウム塩を9質量部加え水性分散液を調製した。
つぎに、上記水性分散液を攪拌下に水浴中で加温し、槽温が80℃に達したところで、メチルメタクリレート(MMA)162質量部、n−ブチルメタクリレート(BMA)40質量部、n−ブチルアクリレート(BA)193質量部、メタクリル酸4質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン4質量部、および過硫酸アンモニウム(APS)(1%水溶液)63質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了から30分後に室温まで冷却して反応を終了し、pH調整剤で中和を行い、複合重合体粒子の水性分散体を得た。フルオロポリマー(A)とアクリルポリマー(B)との質量比(A/B)は35/65であった。
親水化塗料として、東亞合成(株)製「ハイチタン ABFS−2」を用いた。
実施例1と同様にして、アルミ試験板を得た。
比較例1
撹拌機、還流管、温度計、滴下ロートを備えた内容量2リットルのガラス製四つ口セパラブルフラスコに、VdF/TFE/CTFE重合体(VdF/TFE/CTFE=72/15/13(モル%))の粒子の水性分散液1018質量部にポリオキシアルキレン・多環フェニルエーテル・サルフェート・アンモニウム塩を9質量部加え水性分散液を調製した。
つぎに、上記水性分散液を攪拌下に水浴中で加温し、槽温が80℃に達したところで、メチルメタクリレート(MMA)288質量部、ブチルアクリレート(BA)157質量部、アクリル酸10質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン5質量部、および過硫酸アンモニウム(APS)(1%水溶液)40質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了から30分後に室温まで冷却して反応を終了し、pH調整剤で中和を行い、重合体粒子の水性分散体を得た。フルオロポリマー(A)とアクリルポリマー(B)との質量比(A/B)は50/50であった。
親水化塗料として、東亞合成(株)製「ハイチタン ABFS−2」を用いた。
実施例1と同様にして、アルミ試験板を得た。
比較例2
撹拌機、還流管、温度計、滴下ロートを備えた内容量2リットルのガラス製四つ口セパラブルフラスコに、VdF/TFE/CTFE重合体(VdF/TFE/CTFE=72/15/13(モル%))の粒子の水性分散液1018質量部にポリオキシ−1−(アリルオキシ)アルキルエーテル硫酸アンモニウム塩を9質量部加え水性分散液を調製した。
つぎに、上記水性分散液を攪拌下に水浴中で加温し、槽温が80℃に達したところで、メチルメタクリレート(MMA)47質量部、n−ブチルメタクリレート(BMA)394質量部、メタクリル酸12質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン1質量部、および過硫酸アンモニウム(APS)(1%水溶液)40質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了から30分後に室温まで冷却して反応を終了し、pH調整剤で中和を行い、複合重合体粒子の水性分散体を得た。フルオロポリマー(A)とアクリルポリマー(B)との質量比(A/B)は50/50であった。
親水化塗料として、東亞合成(株)製「ハイチタン ABFS−2」を用いた。
実施例1と同様にして、アルミ試験板を得た。
比較例3
撹拌機、還流管、温度計、滴下ロートを備えた内容量2リットルのガラス製四つ口セパラブルフラスコに、VdF/TFE/CTFE重合体(VdF/TFE/CTFE=72/15/13(モル%))の粒子の水性分散液1018質量部にポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム塩を9質量部加え水性分散液を調製した。
つぎに、上記水性分散液を攪拌下に水浴中で加温し、槽温が80℃に達したところで、メチルメタクリレート(MMA)47質量部、n−ブチルメタクリレート(BMA)394質量部、メタクリル酸18質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン1質量部、および過硫酸アンモニウム(APS)(1%水溶液)40質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了から30分後に室温まで冷却して反応を終了し、pH調整剤で中和を行い、複合重合体粒子の水性分散体を得た。フルオロポリマー(A)とアクリルポリマー(B)との質量比(A/B)は50/50であった。
親水化塗料として、東亞合成(株)製「ハイチタン ABFS−2」を用いた。
実施例1と同様にして、アルミ試験板を得た。