以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、絶縁被覆された少なくとも1つの導体を有するフレキシブル基板又はフレキシブルケーブルとして構成されるフレキシブル導電部材に接続されるコネクタとして、種々の用途に広く適用することができるものである。
図1は、本発明の一実施の形態に係るコネクタ1を示す斜視図である。図2は、図1とは異なる方向から見た状態を示すコネクタ1の斜視図である。また、図3は、コネクタ1に接続されるフレキシブル導電部材であるフレキシブルケーブル100の一部を示す斜視図である。図4は、図3とは異なる方向から見た状態を示すフレキシブルケーブル100の一部を示す斜視図である。図5は、フレキシブルケーブル100の一部の長手方向における断面を示す断面図であって、図3のD−D線矢視方向から見た断面を示す断面図である。
図1及び図2に示すコネクタ1は、図示が省略された基板に対して実装される。そして、基板に実装されたコネクタ1に対して、図3乃至図5に示すフレキシブルケーブル100が接続される。フレキシブルケーブル100は、本実施形態におけるフレキシブル導電部材であるフレキシブルフラットケーブル(FFC)として構成されている。フレキシブルケーブル100には、複数の導体101、被覆部102、シールド部103、補強板104、等が設けられている。
複数の導体101は、フレキシブルケーブル100において平行に配列され、それぞれ線状に延びるように延びるように設けられている。各導体101は、例えば、1本の金属線材として、又は細かい金属線材が束ねられた集合体として構成されている。被覆部102は、絶縁性材料で形成されて、複数の導体101を被覆するように設けられている。即ち、複数の導体101は、被覆部102によって絶縁被覆されている。
シールド部103は、被覆部102に対して、その周囲を覆うように張り付けられた導電膜103aと、フレキシブルケーブル100の端部100aに取り付けられた板状の導電板103bとを備えて構成されている。導電膜103aは、導電性の膜状の部材として形成されており、例えば、金属材料で箔状に形成されている。導電板103bは、金属材料で形成された細長い平板状の部材として設けられ、導電膜103aに接触した状態でフレキシブルケーブル100の端部100aに取り付けられている。導電膜103a及び導電板103bが設けられることにより、シールド部103は、電磁波ノイズ対策としてのシールド機能を発揮するように構成されている。
補強板104は、例えば、樹脂材料で形成され、フレキシブルケーブル100の端部100aの先端の剛性を増大させて補強するための細長い平板状の部材として設けられている。尚、フレキシブルケーブル100の端部100aをコネクタ1に対して挿入して接続する作業を作業者が行い易いように、フレキシブルケーブル100の端部100aに補強板104が設けられている。補強板104は、フレキシブルケーブル100の端部100aの先端における表裏面のうちの一方の面に張り付けられて固定されている。そして、補強板104は、フレキシブルケーブル100の端部100aに対して、フレキシブルケーブル100の長手方向に垂直な幅方向に沿って、且つ、端部100aの縁部分に沿って延びるように取り付けられている。尚、補強板104は、フレキシブルケーブル100の端部100aにおいて、被覆部102と導電板103bとの間で挟まれる位置に設けられている。
また、フレキシブルケーブル100には、その端部100aにおいて、複数の導体101の端部が露出した導体露出部105が設けられている。導体露出部105は、フレキシブルケーブル100の端部100aにおいて、平坦に広がる表裏面のうち補強板104が取り付けられる側と反対側の面において複数の導体101の端部を露出させる部分として設けられている。尚、フレキシブルケーブル100の端部100aにおいては、表裏面のうち導体露出部105が設けられる側と反対側の面において、導電板103bが、露出した複数の導体101に対して被覆部102を挟んで対応する位置までこの導電板103bが広がるように、取り付けられている。
尚、図3は、フレキシブルケーブル100について、複数の導体101が露出していない表面側の斜視図が図示されている。一方、図4は、フレキシブルケーブル100について、複数の導体101の端部が露出した導体露出部105が形成された裏面側の斜視図が図示されている。補強板104及び導電板103bは、フレキシブルケーブル101の端部100aに対して、導体露出部105が設けられていない側、即ち表面側において取り付けられている。尚、フレキシブルケーブル100について、表裏面が上記とは逆に定義されてもよい。即ち、フレキシブルケーブル100において、導体露出部105が設けられている側が表面側と定義され、導体露出部105が設けられていない側が裏面側と定義されてもよい。
また、フレキシブルケーブル100の端部100aには、その幅方向の両側において、一対の係止部(106、106)が設けられている。各係止部106は、フレキシブルケーブル100の幅方向の外側に向かって開放された凹み形状部分として形成され、例えば、切欠き状に切除されて形成されている。この係止部106は、後述するコネクタ1における弾性係止部22に対して係止する部分として設けられている。尚、係止部106の形状は、切欠き状の形状に限らず、弾性係止部22に係止可能な形状であればよく、種々の形状に形成されていてもよい。例えば、係止部106は、フレキシブルケーブル100の表裏面の一方に凹み形成された凹み穴として設けられていてもよく、また、フレキシブルケーブル100を表裏面方向に貫通する貫通孔として設けられていてもよい。また、本実施形態では、フレキシブルケーブル100の端部100aにおいて、導電板103bが、係止部106が設けられる部分までフレキシブルケーブル100の幅方向に延びた形態が例示されているが、この通りでなくてもよい。例えば、フレキシブルケーブル100の端部100aにおいて、導電板103bが、フレキシブルケーブル100の幅方向における両側の縁部分よりも内側の位置までしか延びていない形態が実施されてもよい。即ち、フレキシブルケーブル100の端部100aにおいて、係止部106が設けられる部分に導電板103bが配置されていない形態が実施されてもよい。
本実施形態では、コネクタ1に対して上述したフレキシブルケーブル100として構成されたフレキシブル導電部材が接続される形態を例にとって説明するが、この通りでなくてもよい。即ち、コネクタ1が接続されるフレキシブル導電部材は、上述した形態のフレキシブルケーブルに限らず、絶縁被覆された少なくとも1つの導体を有するフレキシブル導電部材であればよい。例えば、フレキシブル導電部材として、上述した形態とは異なる層構造或いは導体配置構造を有するフレキシブルケーブルが用いられてもよい。また、フレキシブル導電部材として、フレキシブルフラットケーブル以外の形態として構成されたフレキシブルケーブルが用いられてもよい。また、フレキシブル導電部材として、フレキシブルプリント回路基板(FPC)などのフレキシブル基板が用いられてもよい。
次に、本実施形態のコネクタ1について詳しく説明する。図1及び図2に示すコネクタ1は、図示が省略された基板に対して実装される。そして、コネクタ1は、ハウジング11、複数の信号コンタクト12、グランドコンタクト13、及びカバー14を備えて構成されている。
コネクタ1は、図1にて両端矢印Aで示す幅方向に長く延び、その幅方向に対して垂直な方向であって図1にて両端矢印Bで示す前後方向に短く延びる構造のコネクタとして設けられている。また、コネクタ1は、実装される基板に対して垂直となる方向であって図1にて両端矢印Cで示す高さ方向の高さが低い低背のコネクタとして設けられている。尚、コネクタ1の幅方向は、複数の信号コンタクト12が配列される方向と平行な方向として構成されている。また、コネクタ1の前後方向は、フレキシブルケーブル100が挿入される方向及び抜き出される方向と平行な方向として構成されている。
ハウジング11は、絶縁性の樹脂材料で形成され、互いに平行に配置された複数の信号コンタクト12を保持する構造部材として設けられている。また、ハウジング11は、その幅方向に長く延びる構造部材として構成されている。そして、複数の信号コンタクト12が、ハウジング11の幅方向に直線状に並んで配置されて、ハウジング11に保持されている。また、ハウジング11には、その内側において、後述のグランドコンタクト13及びカバー14が設置されている。
また、ハウジング11には、フレキシブルケーブル100の端部100aが挿入されて接続される挿入口21が設けられている。挿入口21は、ハウジング11の幅方向に沿って延びるとともに、コネクタ1の前方に向かって開口している。尚、図1は、コネクタ1を前方側から見た斜視図が図示されており、図2は、コネクタ1を後方側から見た斜視図が図示されている。また、ハウジング11における挿入口21の内側には、複数の信号コンタクト12が露出した状態で配置されている。
また、挿入口21における上方側、即ち、コネクタ1が図示しない基板に実装された状態でハウジング11に対する基板側と反対側は、図1及び図2に示す状態では、カバー14で覆われている。尚、後述するように、カバー14がハウジング11及びグランドコンタクト13に対して回転すると、挿入口21は、上方に開放された状態となる。
図6は、複数の信号コンタクト12を示す斜視図である。尚、図6(a)は、図1に示す状態のハウジング11に保持された姿勢の複数のコンタクト12を図示している。また、図6(b)は、図2に示す状態のハウジング11に保持された姿勢の複数のコンタクト12を図示している。また、図7は、図6(a)に示す姿勢のコンタクト12を1つのみ示す斜視図である。
複数の信号コンタクト12のそれぞれは、高い導電性を有する金属材料で形成されている。そして、複数の信号コンタクト12は、フレキシブルケーブル100における複数の導体101に対してそれぞれ電気的に接続される本実施形態の端子として構成されている。各信号コンタクト12は、図示しない基板に実装されたコネクタ1にフレキシブルケーブル100が接続されることで、フレキシブルケーブル100の各導体101に対して接触して電気的に接続される。尚、本実施形態では、各信号コンタクト12は、各導体101に接続されることで、各導体101との間で電気信号を伝送可能な信号端子として構成されている。
また、信号コンタクト12は、棒状及び板状の部分が一体に設けられて細長く延びるように形成されるとともに中途の複数個所に屈曲形成された部分を有する金属片として設けられている。複数の信号コンタクト12は、ハウジング11の成型加工が行われる際にハウジング11に一体成形され、或いは、成形されたハウジング11に嵌め込まれることで、ハウジング11に保持される。
また、信号コンタクト12には、図7によく示されるように、コンタクト本体部12a、リード部12b、接点部12cが設けられている。コンタクト本体部12aは、信号コンタクト12の中央部分として設けられるとともに、ハウジング11に対して保持される部分として設けられている。
リード部12bは、信号コンタクト12における一方の端部側に設けられている。そして、コネクタ1が図示しない基板に実装された状態でコンタクト本体部12aから基板側に向かって屈曲形成された状態となる部分の先端側の部分として設けられている。コネクタ1が基板に実装される際には、各信号コンタクト12のリード部12bが、それぞれ基板における回路パターンの導電部に対してはんだ付けされることになる。
接点部12cは、信号コンタクト12における他方の端部側に設けられている。そして、接点部12cは、コネクタ1が基板に実装された状態でコンタクト本体部12aから基板側と反対側に向かって屈曲形成された状態となる部分における最も基板から離れた頂点部分として設けられている。接点部12cは、ハウジング11の挿入口21の内側で露出した状態で配置されている。そして、接点部12cは、ハウジング11の内側において、フレキシブルケーブル100の端部100aが挿入口21に挿入された際に端部100aにおける導体101に対して接触して電気的に接続されるように、配置されている。
図8は、グランドコンタクト13を示す斜視図である。図9は、グランドコンタクト13を示す斜視図であって、図8とは異なる方向から見た状態を示す斜視図である。尚、図8は、図1に示す状態のハウジング11に保持された姿勢のグランドコンタクト13を図示している。また、図9は、図2に示す状態のハウジング11に保持された姿勢のグランドコンタクト13を図示している。
グランドコンタクト13は、コネクタ1に接続されたフレキシブルケーブル100のシールド部103と、コネクタ1が実装された基板のグランド側とを電気的に接続するグランド部材として設けられている。グランドコンタクト13が、シールド部103における導電板103bと基板のグランド側とを接続することで、電磁波ノイズ対策としてのシールド機能が果たされることになる。
グランドコンタクト13は、平板状の金属部材に対して打ち抜き加工及び折り曲げ加工等が施されることで形成される。そして、グランドコンタクト13は、ハウジング11の成型加工が行われる際にハウジング11に一体成形され、或いは、成形されたハウジング11に嵌め込まれることで、ハウジング11に固定される。
また、グランドコンタクト13には、図8及び図9に示されるように、グランド本体部13a、リード部13b、ケーブル接続部13c、カバー保持部13d、一対の弾性係止部(22、22)が設けられている。グランド本体部13aは、グランドコンタクト13の本体構造部分として設けられるとともに、ハウジング11に対して保持される部分として設けられている。
リード部13bは、コネクタ1の幅方向に沿って並ぶように、複数設けられている。各リード部13bは、グランド本体部13aから片持ち状に突出して設けられている。そして、リード部13bは、グランド本体部13aにおいて、コネクタ1が基板に実装される際に基板に対して対向する部分における複数個所に設けられている。コネクタ1が基板に実装される際には、各リード部13bが、基板におけるグランド側の導電部に対してはんだ付けされることになる。
ケーブル接続部13cは、コネクタ1の幅方向に沿って並ぶように、複数設けられている。各ケーブル接続部13cは、グランド本体部13aから片持ち状に突出して設けられている。そして、ケーブル接続部13cは、グランド本体部13aにおいて、コネクタ1が基板に実装される際に基板とは反対側に配置される部分における複数個所に設けられている。
また、ケーブル接続部13cは、ハウジング11の挿入口21の内側で露出した状態で配置されている。そして、ケーブル接続部13cは、ハウジング11の内側において、フレキシブルケーブル100の端部100aが挿入口21に挿入された際に端部100aにおけるシールド部103の導電板103bに対して接触して電気的に接続されるように、配置されている。尚、ケーブル接続部13cは、フレキシブルケーブル100の端部100aにおいて、導体露出部105で外部に露出した導体101と反対側に配置されたシールド部103の導電板103bに対して、接触する。
カバー保持部13dは、カバー14を回転自在に保持する部分として設けられている。このカバー保持部13dは、グランド本体部13aにおける幅方向(コネクタ1の幅方向と平行な方向)の両側に設けられている。そして、各カバー保持部13dは、グランド本体部13aの幅方向の両側に設けられた側壁部分においてその側壁部分の一部が円弧状に切り欠かれるように形成された凹み部分として設けられている。この円弧状の凹み部分としてのカバー保持部13dに対して、図1及び図2に示されるように、カバー14の各回転軸部14bが嵌め込まれて保持される。これにより、カバー14の各回転軸部14bが、カバー保持部13dに対して回転自在に保持される。即ち、カバー14が、グランドコンタクト13に対して回転自在に保持されている。
弾性係止部22は、ハウジング11に固定された部材であるグランドコンタクト13に設けられている。弾性係止部22は、一対で設けられ、グランドコンタクト13における幅方向の両側にそれぞれ設けられている。そして、弾性係止部22は、ハウジング11の挿入口21の内側に挿入されたフレキシブルケーブル100の端部100aと当接することで、弾性変形するように構成されている。更に、弾性係止部22は、フレキシブルケーブル100の端部100aがハウジング11の挿入口21の奥側に挿入されると、上記のように弾性変形した後に弾性回復することでフレキシブルケーブル100の係止部106に対して係止するように構成されている。尚、弾性係止部22の具体的構造については、後述する。
図1及び図2に示すカバー14は、絶縁性の樹脂材料で形成されている。カバー14には、カバー本体部14a、一対の回転軸部(14b、14b)、一対のカム部(23、23)が設けられている。カバー本体部14aは、その幅方向(コネクタ1の幅方向と平行な方向)に延びる平板状の部分として設けられている。そして、カバー本体部14aは、カバー14の本体構造部分を構成するとともに、ハウジング11に対して、挿入口21に挿入されたフレキシブルケーブル100の端部100aを覆うことが可能なように配置されている。
回転軸部14bは、一対で設けられ、カバー14の幅方向の両側にそれぞれ設けられている。そして、各回転軸部14bは、前述のように、グランドコンタクト13の各カバー保持部13dに対して回転自在に保持されている。これにより、カバー14は、ハウジング11に固定された部材であるグランドコンタクト13に対して回転自在に保持されている。
また、カバー14は、グランドコンタクト13に対して回転自在に保持されていることで、ロック位置とロック解除位置との間で回転可能なように構成されている。ロック位置は、ハウジング11の内側に挿入されたフレキシブルケーブル100の端部100aが係止部106にてグランドコンタクト13の弾性係止部22に対して係止されることで端部100aのロックが可能な位置として構成されている。尚、図1、図2及び後述の図12では、カバー14がロック位置に位置している状態が図示されている。一方、ロック解除位置は、フレキシブルケーブル100の端部100aの弾性係止部22に対する係止が外れることで端部100aのロックの解除が可能な位置として構成されている。尚、後述の図13乃至図15では、カバー14がロック解除位置に位置している状態が図示されている。ロック位置では、カバー14のカバー本体部14aは、コネクタ1が実装される基板に対して略平行に延びるように配置される。一方、ロック解除位置では、カバー本体部14aは、基板に対して略垂直な方向に沿って延びるように配置される。即ち、カバー14は、ロック位置とロック解除位置との間で、略90度に亘って回転するように構成されている。
次に、図10乃至図18を参照しつつ、コネクタ1にフレキシブルケーブル100が接続される接続作業、及び、コネクタ1とフレキシブルケーブル100との接続が解除される接続解除作業、に伴うコネクタ1の作動について説明する。また、同図を参照しつつ、グランドコンタクト13の弾性係止部22、カバー14のカム部23、カバー14とハウジング11とに亘って設けられる保持部24、についても説明する。
尚、図10乃至図12は、コネクタ1にフレキシブルケーブル100が接続される状態を説明するための斜視図であって、一部断面を含む図である。図13乃至図15は、コネクタ1とフレキシブルケーブル100との接続が解除される状態を説明するための斜視図であって、一部断面を含む図である。図16は、図12の一部を拡大して示す図である。図17は、図13の一部を拡大して示す図である。図18は、図14の一部を拡大して示す図である。
コネクタ1にフレキシブルケーブル100が接続される接続作業が図示しない作業者によって行われる際には、図10に示されるように、まず、フレキシブルケーブル100の端部100aが、ハウジング11の挿入口21に挿入される。このとき、カバー14は、ロック位置の状態であり、また、後述する弾性係止部22は、フレキシブルケーブル100の係止部106とはまだ係止していない状態である。
図10に示される状態から、フレキシブルケーブル100の端部100aが挿入口21の更に奥側に挿入されると、図11に示されるように、弾性係止部22が端部100aと当接し、弾性変形することになる。そして、図11に示される状態から、フレキシブルケーブル100の端部100aが挿入口21の更に奥側に挿入されると、図12に示されるように、弾性係止部22が弾性変形した後に弾性回復し、フレキシブルケーブル100の係止部106に対して係止することになる。図10乃至図12に示される状態では、カバー14は、フレキシブルケーブル100の端部100aのロックが可能なロック位置に位置したままである。そして、図12に示されるロック位置の状態では、フレキシブルケーブル100の端部100aが係止部106にて弾性係止部22に係止されてこの端部100aがコネクタ1から抜けないようにロックされている。
また、図12に示されるロック位置では、フレキシブルケーブル100の端部100aにおける導体露出部105にて露出した各導体101が、コネクタ1における各信号コンタクト12の接点部12cに対して接触する。これにより、フレキシブルケーブル100の複数の導体101とコネクタ1の複数の信号コンタクト12とがそれぞれ電気的に接続された状態となる。
また、図12に示されるロック位置では、フレキシブルケーブル100の端部100aにおける導体露出部105と反対側に配置されたシールド部103の導電板103bが、コネクタ1におけるグランドコンタクト13のケーブル接続部13cに対して接触する。これにより、フレキシブルケーブル100のシールド部103とコネクタ1のグランドコンタクト13とが電気的に接続された状態となる。
ここで、グランドコンタクト13に設けられた弾性係止部22について説明する。図12における弾性係止部22の近傍を拡大した図16によく示されるように、弾性係止部22は、アーム部22a、カム当接部22b、突起部22cを備えて構成されている。尚、グランドコンタクト13の幅方向の両側に設けられた弾性係止部22は、グランドコンタクト13の幅方向における中心に対して線対称に設けられ、同様の構造である。このため、図16を参照しつつ一方の弾性係止部22について説明し、他方の弾性係止部22についての説明を省略する。
アーム部22aは、一対で設けられ、グランド本体部13aから互いに平行に突出するように設けられている。そして、各アーム部22aは、グランド本体部13aに一体に形成されるとともに、グランド本体部13aから片持ち状に突出するように設けられている。また、グランド本体部13aから片持ち状に突出する各アーム部22aは、コネクタ1が実装される基板側の反対側に向かって半円弧状に折り返されるように屈曲形成されている。また、各アーム部22aは、可撓性を有し、先端側にカム当接部22bが一体に形成されている。
カム当接部22bは、平板状の部分として設けられ、一対のアーム部22aの先端側に一体に設けられている。このカム当接部22bは、カバー14における後述のカム部23に対して接触する部分として設けられている。また、カム当接部22bに対しては、カバー14の回転に伴って、カム部23における接触箇所が変化する。これにより、カム当接部22bは、揺動するように駆動される。
突起部22cは、カム当接部22bに対して、コネクタ1が実装される基板と反対側に向かって略直角に屈曲形成された部分として設けられている。そして、突起部22cは、カム当接部22bの平坦な面に対して略垂直に台形状或いは三角形状に突出する部分として設けられている。更に、突起部22cには、台形状或いは三角形状に突出する部分の縁部であって、カム当接部22bの平坦な面に対して傾斜して直線状に延びる傾斜縁部22dが設けられている。
また、突起部22cは、ハウジング11の挿入口21の内側に露出した状態で配置されている。そして、突起部22cにおける傾斜縁部22dは、コネクタ1が実装される基板側に向かって且つハウジング11の挿入口21の入口側に向かって傾斜するように設けられている。これにより、傾斜縁部22dは、ハウジング11の挿入口21から挿入されるフレキシブルケーブル105の端部100aに対して傾斜した面にて滑らかに摺動しながら当接可能なように配置されている。
弾性係止部22が上述の構造を備えているため、図10に示されるようにフレキシブルケーブル100の端部100aがハウジング11の挿入口21に挿入されると、まず、端部100aの先端部分が突起部22cの傾斜縁部22dに当接する。そして、フレキシブルケーブル100の端部100aが挿入口21の奥側に挿入されると、端部100aに対して傾斜縁部22dが摺動しながら突起部22cが基板側に向かって接近する方向に変位する。このとき、アーム部22aが基板側に向かって撓むように弾性変形し、突起部22cとともにカム当接部22bも基板側に向かって接近する方向に変位する。
上記により、フレキシブルケーブル100の端部100aが挿入口21に挿入されると、カバー14がロック位置の状態のまま、弾性係止部22が弾性変形し、端部100aが突起部22cを乗り越えるようにして挿入口21の奥側まで進行する。そして、図12に示される状態となり、フレキシブルケーブル100の係止部106が突起部22cに対応する位置まで移動すると、弾性係止部22が弾性回復し、突起部22cが係止部106に対して係止する。これにより、カバー14がロック位置の状態のまま、フレキシブルケーブル100の端部100aのロックが完了することになる。
次に、コネクタ1とフレキシブルケーブル100との接続が解除される接続解除作業に伴うコネクタ1の作動について説明する。コネクタ1とフレキシブルケーブル100との接続が解除される接続解除作業が図示しない作業者によって行われる際には、図13及び図14に示されるように、カバー14をハウジング11及びグランドコンタクト13に対して回転させる操作が作業者によって行われる。尚、図13及び図14においては、コネクタ1における異なる位置での断面が図示されている。
上記の操作においては、作業者は、例えば、カバー本体部14aにおける幅方向の中央部分の縁部に一方の手の指を引っ掛けるようにして、カバー14をハウジング11及びグランドコンタクト13に対して回転させる。上記の操作により、カバー14は、回転軸部14bにて、グランドコンタクト13のカバー保持部13dに対して回転し、コネクタ1は、図13及び図14に示される状態となる。
図13及び図14に示される状態となると、カバー14は、フレキシブルケーブル100の端部100aの弾性係止部22に対する係止が後述のカム部23の作動によって解除されるロック解除位置に位置した状態となる。そして、図15に示されるように、フレキシブルケーブル100の端部100aが、ハウジング11の挿入口21から抜き出され、コネクタ1とフレキシブルケーブル100との接続が解除される接続解除作業が完了することになる。尚、フレキシブルケーブル100の端部100aがハウジング11から抜き出されると、作業者によって、カバー14がロック位置に向かって回転される操作が行われる。これにより、コネクタ1の状態は、図10に示される状態と同様の状態となる。
ここで、カバー14に設けられたカム部23について説明する。カム部23は、一対で設けられ、カバー本体部14aにおける幅方向の両端部分のそれぞれに設けられている。一対のカム部(23、23)は、同様に構成されるため、図13におけるカム部23の近傍を拡大した図17を参照しつつ一方のカム部23について説明し、他方のカム部23についての説明を省略する。
カム部23は、カバー本体部14aに対して、コネクタ1が実装される基板側に向かって略直角に突出する板状の部分として設けられている。そして、カム部23において基板側に向かって突出する先端側の縁部分には、曲率半径が変化する円弧状の曲面部分を有するカム面25が形成されている。
カム面25には、ロック位置当接部25aと、ロック解除位置当接部25bとが設けられている。ロック位置当接部25aは、カム面25において、カバー14が、図1、図2、図10、図12に示されるロック位置の状態のときに、弾性係止部22のカム当接部22bに当接する部分として構成されている。ロック解除位置当接部25bは、カム面25において、カバー14が、図13乃至図15に示されるロック解除位置の状態のときに、弾性係止部22のカム当接部22bに当接する部分として構成されている。
カム部23は、カバー14とともにハウジング11及びグランドコンタクト13に対して回転し、弾性係止部22のカム当接部22bに対する当接位置をずらしながらカム当接部22bに対して摺動する。そして、カム部23は、カバー14の回転中心位置P(図17にて一点鎖線の交点で示す回転中心位置)から弾性係止部22のカム当接部22bに当接する個所までの距離の寸法が、ロック位置よりもロック解除位置において大きく設定されている。即ち、回転中心位置Pからロック位置当接部25aまでの距離の寸法よりも、回転中心位置Pからロック解除位置当接部25bまでの距離の寸法のほうが大きく設定されている。尚、回転中心位置Pは、回転軸部13dの中心線と一致することになる。
上記の構成により、カム部23は、図10及び図12に示すロック位置において、カム当接部22bにロック位置当接部25aにて当接し、カム当接部22bを基板と略平行な状態に維持するように構成されている。即ち、カム部23は、ロック位置において、弾性係止部22における突起部22cの係止部106に対する係止を許容するように構成されている。これにより、カバー14がロック位置の状態では、フレキシブルケーブル100の端部100aがコネクタ1にロックされた状態が維持される。
一方、カム部23は、図13乃至図15に示すロック解除位置において、カム当接部22bにロック解除当接部25bにて当接し、カム当接部22bを基板に向かって接近する方向に変位させるように構成されている。即ち、カム部23は、ロック解除位置において、弾性係止部22の突起部22cと係止部106との係止が外れる方向に弾性係止部22のカム当接部22bを押圧して付勢するように構成されている。
次に、カバー14とハウジング11とに亘って設けられる保持部24について説明する。保持部24は、ハウジング11に対してカバー14をロック解除位置に保持する機構として設けられている。保持部24は、一対で設けられ、コネクタ1における幅方向の両側に設けられている。一対の保持部(24、24)は、同様に構成されるため、図14における保持部24の近傍を拡大した図18を参照しつつ一方の保持部24について説明し、他方の保持部24についての説明を省略する。
保持部24は、カバー14と、ハウジング11とにおいて、ロック解除位置で互いに係止し合う部分として設けられている。本実施形態では、保持部24は、ロック解除位置で互いに係止し合う部分であって、カバー14の縁部分であるカバー側縁部分24a及びハウジング11の縁部分であるハウジング側縁部分24bとして設けられている。また、ハウジング側縁部分24bは、カバー側縁部分24aの内側からカバー側縁部分24aに係止するように配置されている。即ち、ハウジング側縁部分24bは、カバー14が回転する際におけるカバー側縁部分24aの回転半径の内側に配置されている。
図13乃至図15に示されるロック解除位置の状態では、作業者がカバー14を保持していなくても、上記の保持部24によって、カバー14が、ハウジング11に対してロック解除位置に保持される。このため、図15に示されるように、作業者は、カバー14をロック解除位置に手で保持する必要がなく、保持部24によってカバー14がロック解除位置に保持された状態で、フレキシブルケーブル100の端部100aをコネクタ1から抜き出すことができる。
以上説明したように、本実施形態によると、コネクタ1にフレキシブルケーブル100が接続される接続作業が行われる際には、カバー14がロック位置の状態で、ハウジング11の内側にフレキシブルケーブル100が挿入される操作が作業者によって行われる。これにより、フレキシブルケーブル100の端部100aに当接した弾性係止部22が一旦弾性変形した後に弾性回復し、弾性係止部22がフレキシブルケーブル100の係止部106と係止する。このとき、ロック位置の状態のカバー14におけるカム部23によって弾性係止部22の係止部106に対する係止が許容されている。このため、フレキシブルケーブル100が弾性係止部22に係止されてロックされた状態が維持される。よって、接続作業における操作性に関する制約が緩和され、作業者は、ハウジング11にフレキシブルケーブル100を挿入するという1回の操作で、接続作業を容易に行うことができる。
一方、コネクタ1とフレキシブルケーブル100との接続が解除される接続解除作業が行われる際には、作業者によって、カバー14がロック位置の状態からロック解除位置の状態までハウジング11に対して回転操作される操作が行われる。そして、カバー14がロック解除位置の状態まで回転すると、カム部23が弾性係止部22を押圧して付勢し、弾性係止部22とフレキシブルケーブル100の係止部106との係止が解除される。また、この状態では、保持部24がハウジング11に対してカバー14をロック解除位置に保持した状態が維持される。このため、作業者は、フレキシブルケーブル100の弾性係止部22に対する係止が外れてロックが解除された状態で、容易にフレキシブルケーブル100をハウジング11から抜き出す操作を行うことができる。よって、作業者は、一方の手でロックを解除する機構を操作した状態を維持しながら他方の手でフレキシブルケーブルをコネクタから抜き出す操作を行うような同時に両手を用いた接続解除作業を行う必要がない。即ち、本実施形態のコネクタ1によると、接続解除作業における操作性に関する制約が緩和され、作業者は、接続解除作業を1つの手のみを用いて容易に行うことができる。
また、コネクタ1によると、カム部23は、カバー14に設けられ、カバー14の回転中心位置Pから弾性係止部22に当接する箇所までの距離の寸法がロック位置よりもロック解除位置で大きく設定された構造で構成されている。このため、ロック位置において弾性係止部22の係止部106に対する係止を許容し、ロック解除位置において弾性係止部22と係止部106との係止が外れる方向に弾性係止部22を押圧して付勢する機構を極めて簡素な構造で実現することができ、コネクタ1の構造の簡素化を図ることができる。
従って、本実施形態によると、コネクタ1にフレキシブルケーブル100が接続される接続作業及びコネクタ1とフレキシブルケーブル100との接続が解除される接続解除作業における操作性に関する制約を緩和し、作業者が接続作業及び接続解除作業を容易に行うことができる簡素な構造のコネクタ1を提供することができる。
また、コネクタ1によると、ロック解除位置でカバー14とハウジング11とが係止する部分が保持部24を構成する。このため、ハウジング11に対してカバー14をロック解除位置に保持する保持部24を、カバー14とハウジング11との一部を有効的に活用して簡素な構造で実現することができる。また、コネクタ1によると、カバー14及びハウジング11の縁部分を有効的に活用して更に簡素な構造の保持部24を実現することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
(1)前述の実施形態では、弾性係止部が、ハウジングに固定された部材としてのグランドコンタクトに設けられた形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。弾性係止部が、ハウジングに一体に設けられた形態が実施されてもよい。また、グランドコンタクトが設けられていない形態が実施されてもよい。また、弾性係止部が、ハウジングに固定されたグランドコンタクト以外の部材に対して設けられた形態が実施されてもよい。例えば、弾性係止部が、ハウジングに固定された補強金具に設けられた形態が実施されてもよい。また、弾性係止部が、ハウジングの周囲を覆うように設けられた金属製のシールド部材に設けられた形態が実施されてもよい。
(2)前述の実施形態では、カバーが、ハウジングに固定された部材としてのグランドコンタクトに対して回転自在に保持された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。カバーが、ハウジングに対して回転自在に保持された形態が実施されてもよい。また、カバーが、ハウジングに固定されたグランドコンタクト以外の部材に対して回転自在に保持された形態が実施されてもよい。例えば、カバーが、ハウジングに固定された補強金具に対して回転自在に保持された形態が実施されてもよい。また、カバーが、ハウジングの周囲を覆うように設けられた金属製のシールド部材に対して回転自在に保持された形態が実施されてもよい。
(3)前述の実施形態では、保持部が、カバーとハウジングとにおいて、ロック解除位置で互いに係止し合う部分として設けられた形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。保持部が、カバーとハウジングに固定された部材とにおいて、ロック解除位置で互いに係止し合う部分として設けられた形態が実施されてもよい。
また、保持部の変形例として、図19に示される形態が実施されてもよい。図19は、変形例に係るコネクタを説明するための断面図である。図19の断面図では、変形例に係るコネクタについて、ロック解除位置の状態におけるコネクタの幅方向に垂直な断面であって、カム部23の位置における断面が図示されている。尚、図19の変形例についての説明では、前述の実施形態と同様に構成される要素については、同一の符号を付すことで、或いは同一の用語を用いることで、重複する説明を省略する。
図19の変形例に係るコネクタにおいては、保持部は、カム部23と弾性係止部22とにおいて、ロック解除位置で互いに当接する部分として設けられる。そして、保持部は、カム部23と弾性係止部22とにおいて、ロック解除位置で弾性係止部22からカム部23に作用する付勢力F(図19にて矢印Fで示す方向の力)によってカバー14に作用するモーメントとしてカバー14をロック位置に向かって回転させる方向と反対方向に向かって回転させる方向のモーメントG(図19にて矢印Gで示す方向のモーメント)を生じさせる位置に設けられている。即ち、ロック解除位置の状態でカム部23において弾性係止部22のカム当接部22bからの付勢力Fが作用するロック解除位置当接部25bの位置が、カム部23の回転中心位置Pよりも、ハウジング11の挿入口21側に配置されている。
図19の変形例に係るコネクタによると、カバー14がロック解除位置の状態では、カバー14をロック位置方向と反対方向に回転させる方向のモーメントGが生じるように、弾性係止部22からの付勢力Fがカム部23に作用する。これにより、カバー14が、ロック位置方向に回転することなく、ハウジング11に対してロック解除位置に保持される。よって、ハウジング11に対してカバー14をロック解除位置に保持する保持部を、カム部23及び弾性係止部22の一部を有効的に活用して簡素な構造で実現することができる。
また、保持部の他の変形例として、図20に示される形態が実施されてもよい。図20は、変形例に係るコネクタを説明するための断面図である。図20の断面図では、変形例に係るコネクタについて、ロック解除位置の状態におけるコネクタの幅方向に垂直な断面であって、カム部23の位置における断面が図示されている。尚、図20の変形例についての説明では、前述の実施形態と同様に構成される要素については、同一の符号を付すことで、或いは同一の用語を用いることで、重複する説明を省略する。
図20の変形例に係るコネクタにおいては、保持部26は、弾性係止部22に設けられた凹部26aと、カム部23に設けられた凸部26bと、を有して構成されている。凹部26aは、弾性係止部22のカム当接部22bにおいて凹み形成された部分として設けられている。凸部26bは、カバー14がロック解除位置の状態で凹部26aに嵌まり込む突出部分として設けられている。尚、この変形例では、凹部26aが、カム部23及び弾性係止部22の一方である弾性係止部22に設けられ、凸部26bが、カム部23及び弾性係止部22の他方であるカム部23に設けられる形態を例示したが、この通りでなくてもよい。凹部26aがカム部23に設けられ、凸部26bが弾性係止部22に設けられた形態が実施されてもよい。
図20の変形例に係るコネクタによると、カバー14がロック解除位置の状態では、カム部23及び弾性係止部22の一方の凹部26aと他方の凸部26bとが互いに嵌り合うことで、ハウジング11に対してカバー14がロック解除位置に保持される。よって、ハウジング11に対してカバー14をロック解除位置に保持する保持部26を、カム部23及び弾性係止部22に凹凸を形成した簡素な構造で実現することができる。
(4)また、ハウジング、端子、カバー、弾性係止部、保持部、カム部、の形状については、前述の実施形態で例示した形態に限らず、種々変更して実施してもよい。例えば、弾性係止部のアーム部は、半円弧状に折り返された形状でなくてもよく、ステップ状に屈曲形成された形状に設けられてもよい。