請求項1に記載の発明は、複数の貯蔵室と、前記貯蔵室を冷却する冷気を生成する冷却器と、前記冷却器で生成された冷気を強制的に貯蔵室に送風する送風機と、前記送風機から吐出された冷気を各室へ分配する分配風路と、前記分配風路と前記貯蔵室との間に位置する前仕切部材と、前記分配風路と前記冷却器との間に位置する後仕切部材とを備える冷蔵庫において、前記分配風路内に、前記前仕切部材および前記後仕切部材の両方により構成される冷気ガイド部を有するもので、前記前仕切部材は、前記送風機に対向する面に前記分配風路内側に向かって突出した面からなる冷気整流部を有することを特徴とする。これにより、分配風路の外殻を構成する前仕切部材および後仕切部材が冷気の流れを決定するガイドの役割も果たすため、風路を構成する部品点数を最小限に抑えることができ冷気がスムーズに流れる非常に滑らかな分配風路内を構成することができ送風効率を向上させることにより消費電力を低減することが可能となる。また、前仕切部材および後仕切部材のみで構成することができるため、材料費、加工工数が増えないだけでなく、送風効率を低下させる風路断面積の小型化を行うことなく仕切部材全体の体積を小さくすることが可
能となり、貯蔵空間を増加させることができるためユーザの使い勝手を向上させることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記分配風路の下流部は複数の風路に分岐され、前記複数の貯蔵室に連通する複数の吐出口を有し、前記冷気ガイド部は前記送風機に対向する位置に設けられた第一の面と、前記第一の面に隣接しない風路に隣接する第二の面とを有することを特徴とする。これにより、送風機より吐出された冷気を複数ある貯蔵室へそれぞれ必要な量の冷気を分配し効率よく導くことができるため、送風ロスを増加させることなく各室を所定の温度に冷却することが可能となる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記第一の面と前記第二の面とは鋭角を構成することを特徴とする。これにより、送風機の吐出冷気が渦を作りやすいコーナー部などを廃止することが可能となるため、より効率よく各室への送風を行うことができる冷蔵庫を提供することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の発明において、前記第一の面と前記第二の面とが連続した面で構成されたことを特徴とする。これにより、分配風路下流部の分岐点が一本の線となるため、面により冷気を分岐させることがなくなり、送風機から吐出された冷気は確実にどちらかの先端風路へと導かれることにより、よどみや渦など送風効率を低下させる減少を防止することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項2から4に記載の発明において、前記第一の面と前記第二の面は、前記前仕切部材または前記後仕切部材の少なくともどちらか一方に形成されたリブにより構成されたことを特徴とする。これにより、冷気ガイド部の中を中空とすることが可能となり、さらに材料費を抑えることが可能となる。また、仕切部材を整形する金型の設計変更を容易に行うことができるため、貯蔵室のレイアウト変更に伴う風路の改良や、風路の修正や調整の際のコストを下げることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項2から4に記載の発明において、前記第一の面と前記第二の面は、前記前仕切部材または前記後仕切部材の少なくともどちらか一方に形成された凹凸部により構成されたことを特徴とする。これにより、冷気ガイド部を中空とし材料費を抑えながらも、冷気ガイド部内に回りこむ冷気の無駄な流れを防止することができるため、よりスムーズな風路を提供することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記凹凸部は一体で形成される前記前仕切部材または前記後仕切部材の基準面に対し、冷蔵庫本体前後方向について前記分配風路の内側に突出していることを特徴とする。これにより、分配風路内の無効空間に冷気が流れることを防止することができるためより効率的な送風が可能となる。また、風路内に突出させることで、分配風路の外側への突出を最小限に抑えることができ、仕切部材全体の占める容積を小さくすることが可能となり貯蔵室容積をより大きくすることができる。
請求項8に記載の発明は、請求項2ないし7のいずれか一項に記載の発明において、前記冷気整流部は略円形を有し、前記第一の面は前記冷気整流部と略同心円となる曲線を有することを特徴とする。これにより、送風機の回転に伴う冷気の旋回方向の速度に合わせて冷気ガイド部を構成することが可能となり冷気を失速させることなく吐出口まで導くことができる。
請求項9に記載の発明は、請求項1から8に記載の発明において、前記冷蔵庫は前記複数の貯蔵室へ冷気を送る風路内に、開口面積を調節できるダンパを備えたことを特徴とする。これにより、ダンパにより所定の貯蔵室への送風量を状況に応じて調整することが可能となるため、各貯蔵室の温度を独立して制御できるためより緻密に温度調整ことができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における冷蔵庫の正面図、図2は図1におけるA−A断面図、図3は実施の形態1における冷蔵庫本体要部正面拡大図、図4は図3におけるB−B断面図、図5は図3におけるC−C断面図である。
図1から図5において、冷蔵庫100の冷蔵庫本体である断熱箱体101は、主に鋼板を用いた外箱102と、ABSなどの樹脂で成型された内箱103と、外箱102と内箱103との間の空間に発泡充填される硬質発泡ウレタンなどの発泡断熱材とで構成され、周囲と断熱され、複数の貯蔵室に区画されている。最上部に第一の貯蔵室としての冷蔵室104、その冷蔵室104の下部に第四の貯蔵室としての第二の冷凍室105と第五の貯蔵室としての製氷室106が横並びに設けられ、その第二の冷凍室105と製氷室106の下部に第二の貯蔵室としての第一の冷凍室107、そして最下部に第三の貯蔵室としての野菜室108が配置される構成となっている。
冷蔵室104は、回転扉である冷蔵室右扉104aと冷蔵室左扉104bを備え、内部には、冷蔵室棚104cや冷蔵室ケース104dが適切に配設され、貯蔵空間を整理し易く構成している。一方、その他の貯蔵室は引き出し式扉を有し、それぞれ第二の冷凍室扉105aには第二の冷凍室ケース105bが、製氷室扉106aには製氷室ケース106bが、第一の冷凍室扉107aには上段冷凍室ケース107bおよび下段冷凍室ケース107cが、野菜室扉108aには上段野菜室ケース108bおよび下段冷凍室ケース108cが、それぞれ扉に取り付けられたフレームに載置される。
冷蔵室104は冷蔵保存のために凍らない温度である冷蔵温度帯に設定されており、通常1℃から5℃とし、野菜室108は冷蔵室104と同等の冷蔵温度帯もしくは若干高い温度設定の野菜温度帯2℃から7℃としている。第一の冷凍室107は冷凍温度帯に設定されており、冷凍保存のために通常−22℃から−15℃で設定されているが、冷凍保存状態の向上のために、例えば−30℃や−25℃の低温で設定されることもある。
第二の冷凍室105は、第一の冷凍室107と同等の冷凍温度帯または若干高い温度設定−20℃から−12℃である。製氷室106は、冷蔵室104内の貯水タンク(図示せず)から送られた水で室内上部に設けられた自動製氷機(図示せず)で氷を作り、製氷室ケース106bに貯蔵する。
断熱箱体101の天面部は冷蔵庫の背面方向に向かって階段状に凹みを設けた形状であり、この階段状の凹部に機械室101aを形成して、機械室101aに、圧縮機109、水分除去を行うドライヤ(図示せず)等の冷凍サイクルの高圧側構成部品が収容されている。すなわち、圧縮機109を配設する機械室101aは、冷蔵室104内の最上部の後方領域に食い込んで形成されることになる。
このように、手が届きにくくデッドスペースとなっていた断熱箱体101の最上部の貯蔵室後方領域に機械室101aを設けて圧縮機109を配置することにより、従来の冷蔵庫で、使用者が使いやすい断熱箱体101の最下部にあった機械室のスペースを貯蔵室容量として有効に転化することができ、収納性や使い勝手を大きく改善することができる。
冷凍サイクルは、圧縮機109と凝縮器と減圧器であるキャピラリーと冷却器112とを順に備えた一連の冷媒流路から形成されており、冷媒として炭化水素系冷媒である例えばイソブタンが封入されている。
圧縮機109はピストンがシリンダ内を往復動することで冷媒の圧縮を行う往復動型圧縮機である。断熱箱体101に、三方弁や切替弁を用いる冷凍サイクルの場合は、それらの機能部品が機械室101a内に配設されている場合もある。
また、本実施の形態では冷凍サイクルを構成する減圧器をキャピラリーとしたが、パルスモーターで駆動する冷媒の流量を自由に制御できる電子膨張弁を用いてもよい。
なお、本実施の形態における、以下に述べる発明の要部に関する事項は、従来一般的であった断熱箱体101の最下部の貯蔵室後方領域に機械室を設けて圧縮機109を配置するタイプの冷蔵庫に適用しても構わない。
第一の冷凍室107の背面には冷気を生成する冷却室110が設けられ、第二の冷凍室105および製氷室106、第一の冷凍室107からなる貯蔵室と冷却室110とを区画するために仕切部材111が構成されている。冷却室110内には、冷却器112が配設されており、貯蔵室と熱交換して温められた空気と熱交換し、冷気を生成している。仕切部材111は、貯蔵室側の外殻をなす前仕切部材120と冷却室側の外殻をなす後仕切部材121とから構成され、後仕切部材121は、送風機113を備える。前仕切部材120と後仕切部材121との間の空間は各貯蔵室に向けて冷気を分岐させる分配風路122である。
送風機113は、吐出面からみて時計回りをする軸流ファンである。以下、冷蔵庫の左右方向の位置を指定する場合、送風機113の回転方向を基準とする。回転方向が反時計回りの送風機を使用する場合は、左右を反転させることで同様の効果を得ることができる。
送風機113の吐出面は冷蔵庫100の正面に対し角度を持って取り付けられ、冷気は斜め上向きに吹き上げるように配設されている。前仕切部材120の送風機113に対向する部分は、送風機113側に突出した冷気整流部120aを構成する。冷気整流部120aは送風機113の回転軸を中心軸とする略円錐台形状をしている。冷気整流部120
aの先端は送風機113の吐出面に平行な面で構成され、その径は送風機113のボス径と略同径である。
分配風路122は、左上冷気ガイド部123、右上冷気ガイド部124、左下冷気ガイド部125、右下冷気ガイド部126により、下流部を4つの風路に分岐する。左上冷気ガイド部123と右上冷気ガイド部124との間は冷蔵室用風路122a、右上冷気ガイド部124と右下冷気ガイド部126との間は第二の冷凍室用風路122b、右下冷気ガイド部126と左下冷気ガイド部125との間は第一の冷凍室用風路122c、左下冷気ガイド部125と左上冷気ガイド部123との間は製氷室用風路122dである。仕切部材111を冷蔵庫100に組み付けた状態で冷蔵室用風路122aは冷蔵室104とその他の貯蔵室を断熱区画する仕切壁118に設けられた冷蔵室接続風路118aに連通し、第二の冷凍室用風路122b及び製氷室用風路122dは仕切壁118と仕切部材111との間に構成される第二の冷凍室用吐出口127および製氷室用吐出口128にそれぞれ連通する。冷蔵室接続風路118aはダンパ119を有し、冷蔵室104へ流れる風量を調節する。また、冷蔵室接続風路118aはダンパ119の下流に野菜室108へ冷気を導く野菜室接続風路118bを備え、ダンパを通った冷気の一部が野菜室用吐出口129から野菜室108へ流れ込む。また、前仕切部材120に設けられた第一の冷凍室用吐出口120bは第一の冷凍室用風路122cの中程から先端に亘って点在し、第一の冷凍室107へ冷気を導入する。
ここで、ダンパ119は冷蔵室接続風路118a内だけでなく、分配風路122内や、冷蔵室104内に設けられた専用風路または吐出口に設けても良い。さらに、必要に応じて第二の冷凍室用風路122b、第一の冷凍室用風路122c、製氷室用風路122dや第二の冷凍室用吐出口127、製氷室用吐出口128、第一の冷凍室用吐出口120b、野菜室用吐出口129に備えることで、さらに精度良く各室の温度を調節することができる。
なお、本実施の形態では第二の冷凍室用風路122bおよび第一の冷凍室用風路122c、製氷室用風路122dは、それぞれ第二の冷凍室105、第一の冷凍室107、製氷室106の専用の風路であるが、冷蔵庫100の貯蔵室レイアウトや分配風路122外の風路構成、各室の温度帯などの条件に合わせて冷蔵室用風路122aのように複数の貯蔵室に連通する兼用構造としてもよく、逆に冷蔵室用風路122aを分配風路122内で冷蔵室104に連通する風路と野菜室108に連通する風路とに分割してもよい。
第一の冷凍室用吐出口120bは冷気整流部120aの中心よりも下方で、且つ、上段冷凍室ケース107bの奥面上端の上方、および、上段冷凍室ケース107bの下面よりも下方で、且つ下段冷凍室ケース107c奥面上端の上方の二箇所に位置し、上段冷凍室ケース107bおよび下段冷凍室ケース107cに冷気を吹き込む。なお、第一の冷凍室用吐出口120b形状は第一の冷凍室107のレイアウトや想定する貯蔵物によって適切に設計されるが、横長の孔を一段または複数段設けることで、第一の冷凍室107全体に冷気をムラなく届けることが容易になる。
また、冷却器112の下部空間には冷却時に冷却器112やその周辺に付着する霜や氷を除霜するためのガラス管製のラジアント加熱手段114が設けられ、さらにその下部には除霜時に生じる除霜水を受けるためのドレンパン115、その最深部から庫外に貫通したドレンチューブ116が構成され、その下流側の庫外に蒸発皿117が構成されている。なお、ラジアント加熱手段114の代わりに冷却器112に取り付けたパイプヒータなど他形状の加熱手段を用いたり、ラジアント加熱手段114と他形状の加熱手段を併用したりしても構わない。
左上冷気ガイド部123は前仕切部材120と一体に構成された前ガイド部123aと後仕切部材121と一体に形成された後ガイド部123bからなり、仕切部材111の上端側が最も広く下に向かう程狭くなる略三角形の形状を有している。
前ガイド部123aは、前仕切部材120の一部が分配風路側に突出したガイド凸部123cからなり、ガイド凸部123cの最突出面の外周にはガイド凸部123c側面の延長形状を有するガイドリブ123dを備える。
前ガイド部123aは、下先端部を境としてファンに対向する側に位置する内側面123e(第一の面)及び製氷室用風路122dに面する外側面123f(第二の面)の二面を有する。内側面123eは冷気整流部120aの円錐の中心軸を中心とする略円筒の一部からなる基準面を有し冷蔵室104へ冷気を導く冷蔵室用風路122aの側壁をなし、外側面123fは略鉛直方向に伸び前仕切部材120基準面に略垂直に形成された略平面をからなり製氷室106へ冷気を導く製氷室用先端風路122bの側壁をなす。
ガイド凸部123cの付け根は緩やかなR(半径1mm以上、望ましくは半径3mm以上)を有し、冷気整流部120aの裾と滑らかに接続する。前ガイド部123aの下先端部は内側面123eと外側面123fの交差する辺であり、送風機113吐出面の中心点を通る水平面よりも上側に位置する。
後ガイド部123bは、後仕切部材121の前ガイド部123aに対向する位置に設けられたリブにより構成され、前ガイド部123aのガイドリブ123d内に丁度収まる形状を有する。ガイド凸部123cと後ガイド部123bとの隙は1〜3mm程度である。
なお、ガイド凸部123cと後ガイド部123bとの隙は小さい程冷気が入り込みにくく風路抵抗を小さくすることができ、大きいほど左上冷気ガイド部123内にできた結露が内部に溜まることを防止することができるため、冷蔵庫100内における分配風路122の位置や各貯蔵室の温度帯などによって最適値を選択することが望ましい。
また、右下冷気ガイド部126は前仕切部材120に設けられた中空リブにより構成され、第二の冷凍室用風路122bの下側壁をなす上面126a(第一の面)と第一の冷凍室用風路122cの右上側壁をなす下面126b(第二の面)を有する。同様にして右上冷気ガイド部124および左下冷気ガイド部125も、前仕切部材120に設けられた中空リブであり、互いに異なる風路に面する二つの面(第一の面と第二の面)を有する。
なお、右上冷気ガイド部124、左下冷気ガイド部125、右下冷気ガイド部126は前仕切部材120に設けられた凸部や中実リブ、後仕切部材121に設けられたリブおよび凸部で形成しても良い。
なお、本実施の形態における、以下に述べる発明の要部に関する事項は、いずれの貯蔵室においても回転扉を有し、内箱103に貯蔵ケースが載置される構造を有するタイプの冷蔵庫に適用しても構わない。
以上のように構成された本実施の形態の冷蔵庫100について、以下その動作、作用を説明する。
まず、冷凍サイクルの動作について説明する。庫内の設定された温度に応じて制御装置(図示せず)からの信号により冷凍サイクルが動作して冷却運転が行われる。圧縮機109の動作により吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器(図示せず)である程度凝縮液化し、さらに冷蔵庫本体である断熱箱体101の側面や背面、また断熱箱体101の前面間口
に配設された冷媒配管(図示せず)などを経由し断熱箱体101の結露を防止しながら凝縮液化し、キャピラリーチューブ(図示せず)に至る。その後、キャピラリーチューブでは圧縮機109への吸入管(図示せず)と熱交換しながら減圧されて低温低圧の液冷媒となって冷却器112に至る。
ここで、冷却室110では、送風機113の動作により集められた各貯蔵室内の空気が、冷却器112により液冷媒と熱交換され、冷却器112内の冷媒は蒸発気化する。この時、貯蔵室から戻ってきた空気は、冷却室110内で再び各貯蔵室を冷却するための冷気となる。低温の冷気は送風機113から分配風路122を通り、風路やダンパを用いて分流され、冷蔵室104、第二の冷凍室105、製氷室106、第一の冷凍室107、野菜室108をそれぞれの目的温度帯に冷却する。
送風機113は、冷蔵庫100正面から見て時計回りに回転する軸流ファンであることから、吐出された冷気は時計回りに旋回しながら放射状に広がるように円錐状に流れる。したがって、冷気整流部120aを吐出冷気の流れに合わせた形状にすることで、渦を発生させることなく、冷気を分配風路122にスムーズに送り出すことができる。また、軸流ファンの吐出側では、中心にファンに向かって戻る気流が発生するが、冷気整流部120aの円錐台上面径をファンのボス径と略同径とすることで、この戻り気流を抑制することができるため、送風機113より冷気に与えられたエネルギを無駄なく送風に生かすことができる。
吐出冷気の作る円錐面と送風機113の回転軸のなす角は送風機113の送る流量や回転数により異なるため、冷気整流部120aの円錐面の角度を変えることで、設計流量に応じた最適設計を行うことができる。例えば、羽根径が90から110mmの送風機113を1200から3000rpm前後で回転させ、0。5から1。0m3/minの風量を得る場合、実験に因れば、回転軸と冷気整流部120aの円錐面とのなす角は50から85°が望ましい。半径方向に広がるにつれ徐々に送風機113との距離を大きくすることで、吐出冷気の持つ運動エネルギを圧力エネルギとして効率よく回収することができるため、送風機113の仕事を増やすことなく吐出圧力を高めることができる。本実施の形態のように、貯蔵室が多く、送風回路が多岐にわたり、ダンパ119のように風路抵抗になる部品を多く必要とする風路では、送風機113の仕事が大きくなるため、冷気整流部120aの果たす役割はより大きいものとなる。
冷気整流部120aに沿って広がった冷気のうち、左下冷気ガイド部125と左上冷気ガイド部123との間に流れ出た冷気は、分配風路122左側側壁と外側面123fとの間に形成された製氷室用風路122dを通り製氷室用吐出口128より製氷室106に送風され、左上冷気ガイド部123と右上冷気ガイド部124との間に流れ出た冷気は、内側面123eに沿って冷蔵室用風路122aを通り冷蔵室接続風路118aおよび野菜室接続風路118bより冷蔵室104および野菜室108へ送風され、右上冷気ガイド部124と右下冷気ガイド部126との間に流れ出た冷気は、上面126aおよび分配風路122右側側面に沿って第二の冷凍室用吐出口127より第二の冷凍室105へ送風され、残りの冷気は第一の冷凍室用吐出口120bより第一の冷凍室107へ送風される。このようにして、分配風路122内に吐出された冷気は下流部にて各室への風路に分岐され一定量を各吐出口から各貯蔵室へ送風することが可能となる。
このとき、各冷気ガイド部の第一の面と第二の面とは平行でなく吐出冷気の流れに従って徐々に広がる形状をしているため、冷気は徐々に各吐出口に向くように方向修正される。従って、冷気の急激な流れの変化をなくすことができ送風損失を抑えることが可能となる。また、冷気ガイド部は二つの先端風路の間に存在するため、両側の冷気の流れは違う方向を向いていることから、冷気ガイド部がそれぞれの流れに合わせた側壁を有すること
で二つの流れの間に存在する風路の無効空間、つまり渦など冷気の乱れを発生させる空間を削減することができるため送風効率を向上させることができる。
また、内側面123eは冷気整流部120aの円錐形状と同軸の円筒形状を持つため、冷気の持つ回転方向の減速を極力低減することができるとともに、内側面123e上のあらゆる点において送風機113からの距離が略一定になるため、面に当たる風量は略均一となり場所による冷気の圧力差を最小限にすることができるため冷気の送風損失を低減することができる。
さらに、全ての冷気ガイド部および冷気整流部120aは前仕切部材120に一体に形成されているため、冷気整流部120aから各先端風路、各吐出口までの風路を滑らかな一枚の面によって構成することが可能となる。送風機より吐出された冷気は冷気整流部120aにあたり冷気整流部120aに沿って流れているため、部品勘合部に見られる段差や隙間にぶつかることなく吐出口まで流れることが可能となり、送風ロスを最低限に抑えることができる。
左上冷気ガイド部123は前ガイド部123aだけでなく後ガイド部123bも含まれるが、後ガイド部123bは前ガイド部123aよりも内側に収まる形状のため、前仕切部材120表面に沿って流れてきた冷気も左上冷気ガイド部123内に入ることなく、比較的滑らかに流れることができる。冷気の一部が左上冷気ガイド部123内に侵入してしまった際も、前ガイド部123aはガイド凸部123cとガイドリブ123dによって構成されており左上冷気ガイド部123内の空間は小さいため冷気の乱れを小さく抑え送風効率の低下を抑制することができる。さらに、前仕切部材120と後仕切部材121との両方により左上冷気ガイド部123を構成することで、分配風路122の奥行き寸法が大きい場合でもそれぞれの部品の奥行き寸法を大きくすることなく、冷気ガイド部を構成することが可能となるため、奥行き寸法が大きく送風損失の小さい風路を、安価に加工性を損なうことなく構成することができる。
このとき、左上冷気ガイド部123は送風機113より吐出された冷気が殆ど直接ぶつかることになるため、送風機113の稼働中は左上冷気ガイド部123内の空気が冷却され左上冷気ガイド部123内に氷結する恐れがある。しかしながら、左上冷気ガイド部123の下先端部において、ガイドリブ123dと後ガイド部123bとの隙間は2mm程度存在するため、左上冷気ガイド部123内の氷結が溶解した際に隙間より排出されるため氷結が成長し左上冷気ガイド部123を変形させる事態を防止することができる。
なお、これらの結露が左上冷気ガイド部123周辺に溜まることを抑制するため、ガイド凸部123cおよびガイドリブ123d、後ガイド部123bの下先端部は、水捌けを促すように傾斜をつけることが望ましい。
次に除霜時の作用について説明する。冷却中に冷却器112やその周辺に付着した霜や氷を溶かすために、冷蔵庫100は定期的に冷却を中断しラジアント加熱手段114を加熱することで冷却室110内を加熱する。このとき冷却室110内の空気も暖められ冷却室110上方に上り、暖気の一部は送風機113の羽根の間を抜けて分配風路122内へ進入する。分配風路122内に漏れた暖気はさらに上に上昇する。このとき本実施の形態では、左上冷気ガイド部123の下先端部が送風機113の中心点を含む水平面よりも上側に設置されているため、暖気は冷蔵室用風路122aだけでなく製氷室用風路122dにも上ることができる。これにより分配風路122内の暖気が流れ込むことができる容積を大きくでき、分配風路122からさらに貯蔵室へと流れ込む暖気の量を低減することができるため、貯蔵室に保存している貯蔵物の温度上昇を抑えることができユーザの使い勝手を向上することができる。さらに暖気が貯蔵室内で冷却され貯蔵室内に結露や着霜する
ことを低減でき、ユーザの快適性を向上できる。
以上のように、本実施の形態では、分配風路122内に、前仕切部材120により一体に構成される冷気ガイド部を有することにより、冷気整流部120aから下流部までの風路を滑らかな一枚の面によって構成することが可能となる。送風機より吐出された冷気は冷気整流部120aにあたり冷気整流部120aに沿って流れているため、部品勘合部に見られる段差や隙間にぶつかることなく吐出口まで流れることが可能となり、送風ロスを最低限に抑えることができる。さらには、冷気ガイド部を前仕切部材120および後仕切部材121のみで構成することができるため、材料費、組立工数が増えないだけでなく、送風効率を低下させる風路断面積はそのままで仕切部材111全体の体積を小さくすることが可能となり、貯蔵空間を増加させることができるためユーザの使い勝手を向上させることができる。さらに、前仕切部材120と後仕切部材121との両方により左上冷気ガイド部123を構成することで、分配風路122の奥行き寸法が大きい場合でもそれぞれの部品の奥行き寸法を大きくすることなく、冷気ガイド部を構成することが可能となるため、奥行き寸法が大きく送風損失の小さい風路を、安価に加工性を損なうことなく構成することができる。
さらに、分配風路122の下流部は複数の風路に分岐され、複数の貯蔵室に連通する複数の吐出口を有し、冷気ガイド部は送風機113に対向する位置に設けられた第一の面と、第一の面に隣接しない風路に隣接する第二の面とを有することにより、送風機113より吐出された冷気を複数ある貯蔵室へそれぞれ必要な量の冷気を分配し効率よく導くことができるため、送風ロスを増加させることなく各室を所定の温度に冷却することが可能となる。
また、第一の面と第二の面とは、互いに平行でない部分を有することにより、仕切部材111の形に関係なく各貯蔵室へ向かう風路の数や形を決定することができるため、送風機113の吐出冷気が渦を作りやすいコーナー部などを廃止することが可能となるため、より効率よく各室への送風を行うことができる冷蔵庫を提供することができる。
前ガイド部123aは前仕切部材120に形成されたガイド凸部123cで構成されることにより、冷気ガイド部を中空とし材料費を抑えながらも、左上冷気ガイド部123の内部容積を小さくすることで回りこむ冷気の無駄な流れを抑制することができるため、よりスムーズな風路を提供することができる。
前仕切部材120は、送風機113に対向する面に分配風路122内側に向かって突出した面からなる冷気整流部120aを有することにより、送風機113より吐出された冷気は冷気整流部120aによって放射状に整流され分配風路122内に流れ込むため、送風機113と前仕切部材120との間に発生する渦を抑制することができスムーズに冷気を送風することが可能となる。
さらに、冷気整流部120aは略円錐形を有し、内側面123eは冷気整流部120aと同じ中心軸周りの略円筒の一部により構成されていることにより、送風機113の回転に伴う冷気の回転方向の速度に合わせて冷気ガイド部を構成することが可能となり冷気を失速させることなく吐出口まで導くことができる。
冷蔵室用風路122aは冷蔵室接続風路118aに連通し、冷蔵室接続風路118a内には冷気の流量を調節する開口面積を調節できるダンパ119を備えたことにより、ダンパ119により冷蔵室104および野菜室108への送風量を状況に応じて調整することが可能となるため、冷蔵室104および野菜室108の温度を冷凍温度帯に冷却される他の貯蔵室と独立して制御できるためより緻密に温度調整ことができる。
内側面123eと外側面123fの接点である左上冷気ガイド部123の下先端部は、送風機113の中心点を含む水平面よりも上側に設置されていることにより、除霜中に送風機113の羽根の間から漏れ出た暖気が上へ上がる際に冷蔵室用風路122aだけでなく製氷室用風路122dにも入ることができるため分配風路122内により多くの暖気を溜め込むことが可能となり、貯蔵室まで漏れる暖気の量を少なくすることが可能となる。
(実施の形態2)
図6は本発明の実施の形態2の仕切部材正面図である。
なお、実施の形態1と同様の構成および同様の技術思想が適用できる部分については、説明を省略するが、不具合がない限り実施の形態1の構成に本実施の形態を組み合わせて適用することが可能である。
図6において、仕切部材211は図2の仕切部材111と同様にして第二の冷凍室105および製氷室106、第一の冷凍室107からなる貯蔵室と冷却室110とを区画するために構成される。仕切部材211は、貯蔵室側の外殻をなす前仕切部材120と冷却室側の外殻をなす後仕切部材121とから構成され、後仕切部材121は、送風機113を備える。前仕切部材120と後仕切部材121との間の空間は各貯蔵室に向けて冷気を分岐させる分配風路122である。
分配風路122は、左上冷気ガイド部223、右上冷気ガイド部124、左下冷気ガイド部125、右下冷気ガイド部226により、下流部を4つの風路に分岐する。
左上冷気ガイド部223は前仕切部材120に設けられたリブにより構成され、冷蔵室用風路122aの左側壁をなす内側面223e(第一の面)と製氷室用風路122dの右側壁をなす外側面223f(第二の面)を有する。左上冷気ガイド部223は略鉛直方向に伸び前仕切部材120基準面に略垂直に形成された略平面を持つ薄板リブであり、仕切部材211の上端側は冷蔵室用風路122a側に湾曲するように広がるR形状を有する。
右下冷気ガイド部226は前仕切部材120に設けられた中空リブにより構成され、第二の冷凍室用風路122bの下側壁をなす上面226a(第一の面)と第一の冷凍室用風路122cの右上側壁をなす下面226b(第二の面)を有する。上面226aおよび下面226bは仕切部材211の右側から中心方向へ伸びており、その根元は略平行であるが徐々に近づき先端部にて接続される。
以上のように構成された本発明の実施の形態2における冷蔵庫について、以下その動作を説明する。
送風機113により分配風路122に吐出された冷気は、左上冷気ガイド部223により冷蔵室用風路122aおよび製氷室用風路122dに分流される。このとき左上冷気ガイド部223は薄板リブで構成されているため、分岐点には渦などが発生するスペースがないため、スムーズに分留することができる。また、左上冷気ガイド部の上端はR形状を有しているため冷蔵室用風路122aの上部のコーナー部がなくなりなだらかな流路を形成する。これにより冷気はスムーズに冷蔵室接続風路118aへ導かれるため、送風効率を向上させることができる。
なお、左上冷気ガイド部223の薄板リブは左側に凸の形状を有する弧の形状でも良く、時計回りに旋回する送風機113より吐出される回転成分速度を持つ冷気の流れに沿わせることでよりスムーズに分留することができる。
また、分配風路122に吐出された冷気は、右下冷気ガイド部226により第二の冷凍室用風路122bおよび第一の冷凍室用風路122cに分流される。このとき右下冷気ガイド部226の先端部は上面226aおよび下面226bの交線であり右下冷気ガイド部226の幅は徐々に広がるため、冷気は必ずどちらかの風路に分流された後徐々に方向が修正されるため冷気の流れを乱しにくく送風効率を向上させることができる。
以上のように、本実施の形態では、内側面223eと外側面223fとが互いに平行でなく上部が広がる形状を有することにより、下流部の風路がコーナー部を持たず冷気をスムーズに流すことができるため送風効率を向上させることが可能となる。
また、右下冷気ガイド部226の先端部は上面226aおよび下面226bの交線であり右下冷気ガイド部226の幅は徐々に広がることにより、冷気は必ずどちらかの風路に分流された後徐々に方向が修正されるため冷気の流れを乱しにくく送風効率を向上させることが可能となる。
(実施の形態3)
図7は本発明の実施の形態3の冷蔵庫本体要部正面拡大図である。
なお、実施の形態1または2と同様の構成および同様の技術思想が適用できる部分については、説明を省略するが、不具合がない限り実施の形態1の構成に本実施の形態を組み合わせて適用することが可能である。
図7において、仕切部材311は図2の仕切部材111と同様にして第二の冷凍室105および製氷室106、第一の冷凍室107からなる貯蔵室と冷却室110とを区画するために構成される。仕切部材311は、貯蔵室側の外殻をなす前仕切部材120と冷却室側の外殻をなす後仕切部材121とから構成され、後仕切部材121は、送風機113を備える。前仕切部材120と後仕切部材121との間の空間は各貯蔵室に向けて冷気を分岐させる分配風路122である。
分配風路122は、左上冷気ガイド部123、右上冷気ガイド部124、左下冷気ガイド部125、右下冷気ガイド部126により、下流部を4つの風路に分岐する。左上冷気ガイド部123と右上冷気ガイド部124との間が冷蔵室用風路122a、右上冷気ガイド部124と右下冷気ガイド部126との間が第二の冷凍室用風路122b、右下冷気ガイド部126と左下冷気ガイド部125との間が第一の冷凍室用風路122c、左下冷気ガイド部125と左上冷気ガイド部123との間が製氷室用風路122dである。
冷蔵室用風路122a、第二の冷凍室用風路122b、製氷室用風路122dの際下流部である上端には、それぞれツインダンパ319a、第二の冷凍室用ダンパ319b、製氷室用ダンパ319cを備える。
なお、各ダンパは前仕切部材120または後仕切部材121のいずれかに固定すれば良いが、前仕切部材120と後仕切部材121とで挟み込むように固定することで余分な部品が必要ないため、風路抵抗だけでなく部品点数、組立工数ともに最小限に抑えることが可能となる。また、各ダンパと前仕切部材120および後仕切部材121との間にスポンジテープなどの部品を挟むことで、吸音や吸振などの役目を果たし高品位な冷蔵庫100を提供できるだけでなく、ダンパの周辺からの冷気漏れを抑制することができる。
仕切部材311を冷蔵庫100に組み付けた状態で冷蔵室用風路122aの先のツインダンパ319aの一方の開口部である冷蔵室用開口部319aaは仕切壁118に設けら
れた冷蔵室接続風路318aに連通し、他方の開口部である野菜室用開口部319abは同じく仕切壁118に設けられた野菜室接続風路318bに連通する。第二の冷凍室用風路122b及び製氷室用風路122dの先の第二の冷凍室用ダンパ319bおよび製氷室用ダンパ319cはそれぞれ仕切壁118と仕切部材311との間に構成される第二の冷凍室用吐出口127および製氷室用吐出口128にそれぞれ連通する。
以上のように構成された本発明の実施の形態2における冷蔵庫について、以下その動作を説明する。
送風機113により分配風路122に吐出された冷気は、各冷気ガイド部により分流され各貯蔵室へ向かう風路へと流れる。冷蔵室用風路122a、第二の冷凍室用風路122b、製氷室用風路122dはそれぞれツインダンパ319a、第二の冷凍室用ダンパ319b、製氷室用ダンパ319cを有するため、各ダンパを制御することで冷蔵室104、第二の冷凍室105、製氷室106、野菜室108へ流れる冷気の量を調節することができ、各貯蔵室の温度を独立して調節することが可能となり、細かい温度調節が可能となる。また、一室だけの貯蔵物が増えた場合など、その貯蔵室だけを冷却することができため消費電力を最小限に抑えることも可能である。
なお、第一の冷凍室107は最も温度帯が低いため本実施の形態ではダンパを設けていないが、必要に応じて第一の冷凍室用風路122cまたは第一の冷凍室用吐出口120bにダンパを設けることで、更に繊細に温度調節を行うことができる。
以上のように、本実施の形態では、冷蔵室用風路122a、第二の冷凍室用風路122b、製氷室用風路122dはそれぞれツインダンパ319a、第二の冷凍室用ダンパ319b、製氷室用ダンパ319cを有するため、各ダンパを制御することで冷蔵室104、第二の冷凍室105、製氷室106、野菜室108へ流れる冷気の量を調節することができ、各貯蔵室の温度を独立して調節することが可能となり、細かい温度調節が可能となる。