JP6144032B2 - 鉄筋コンクリート構造物の補強構造 - Google Patents
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Description
段落とし構造とは、鉄筋コンクリート構造物の柱部分や壁部分等の縦構造体と鉄筋コンクリート構造物の下部構造体との接合部に応力が集中し、縦構造体の高さ方向の中間部分には上記接合部に比べて応力が集中しにくいとの考え方に基づいた従来の鉄筋コンクリート構造物設計手法による構造であって、鉄筋コンクリート構造物中の主鉄筋の量が、縦構造体と下部構造体との接合部分を含む下部構造体から縦構造体の所定の高さ位置までと、当該所定の高さ位置よりも高い位置にある部分とで異なるように構成されている。
即ち、段落とし構造を備えた鉄筋コンクリート構造物とは、鉄筋コンクリート構造物の縦構造体と下部構造体との接合部分を含む下部構造体から縦構造体の所定の高さ位置までに配筋された主鉄筋の量よりも、当該所定の高さ位置よりも高い位置にある部分に配筋された主鉄筋の量を減らした構造を備えた鉄筋コンクリート構造物のことを言う。尚、当該所定の高さ位置は、カットオフ位置(段落とし位置)と呼ばれ、当該カットオフ位置は、鉄筋コンクリート構造物毎の構造計算により決められる。
ここで、主鉄筋の量が減らされていない下部構造体から縦構造体の所定のカットオフ位置までの部分を「段落としされていない部分」と言い、当該「段落としされていない部分」である縦構造体のカットオフ位置までの部分と比べて主鉄筋の量が減らされているカットオフ位置よりも高い位置にある縦構造体の上方部分を「段落としされている部分」と言う。
このような段落とし構造を備えた鉄筋コンクリート構造物では、地震力を受けて、段落としされている部分が爆裂圧潰したり破断折損するような破壊被害が生じている。
そこで、段落とし構造を備えた鉄筋コンクリート構造物を補強することが必要となっている。
当該段落とし構造を備えた鉄筋コンクリート構造物において、鉄筋コンクリート構造物の外表面を形成する外周を鋼板で巻き立てたり(特許文献1等参照)、鉄筋コンクリート構造物の外表面を形成する外周を筒状の鋼板で覆う(特許文献2等参照)ようにして補強する補強構造が知られている。
本発明は、段落とし構造を備えた鉄筋コンクリート構造物の補強構造において、コストを低減でき、さらに、鉄筋コンクリート構造物の補強後に地震等によって当該鉄筋コンクリート構造物が損傷した場合において、当該損傷した鉄筋コンクリート構造物の損傷部の位置や損傷の程度を外部から容易に確認することができ、補強後に損傷した場合の補強対策を容易かつ的確に行える鉄筋コンクリート構造物の補強構造を提供する。
補強棒が、鉄筋コンクリート構造物を貫通しないように鉄筋コンクリート構造物に取付けられた棒材の鉄筋コンクリート構造物の外表面より突出する端部に連結固定されて鉄筋コンクリート構造物の外表面に取付けられたことにより、鉄筋コンクリート構造物に固定されているので、補強板を鉄筋コンクリート構造物の外表面に簡単に取付けることができ、容易に施工できる。
鉄筋コンクリート構造物を挟んで互いに対向するように配置された一対の補強棒が、鉄筋コンクリート構造物を貫通するように設けられた棒材の両方の端部に連結固定されて鉄筋コンクリート構造物の外表面に取付けられたことにより、鉄筋コンクリート構造物に固定されているので、鉄筋コンクリート構造物を貫通するように設けられた棒材により鉄筋コンクリート構造物の曲げ補強効果が向上する。
実施形態1に係る段落とし構造を備えた鉄筋コンクリート構造物の補強構造は、図1に示すように、段落とし構造を備えた鉄筋コンクリート構造物1(以下、特に必要のない限り単に鉄筋コンクリート構造物1という)の外表面2に補強棒3を間隔を隔てて複数個取付けた構成である。
各補強棒3は、補強棒3の延長方向が鉄筋コンクリート構造物1の主鉄筋55の延長方向に沿った方向に延長して、前述した段落とし構造を備えた鉄筋コンクリート構造物1の段落としされていない部分50の外表面2と段落としされている部分51(段落としされていない部分50よりも主鉄筋55の量が減らされている部分)の外表面2とを跨ぐように配置される。そして、補強棒3の両方の端部4;4が、段落としされている部分51の外表面2と段落としされていない部分50の外表面2とに取付けられることで、各補強棒3が、鉄筋コンクリート構造物1の段落としされていない部分50と段落としされている部分51とに固定される。
尚、図中、56はせん断補強筋である。
例えば、補強棒固定孔6は一方の帯板15の長手方向に沿って所定の間隔を隔てて複数個形成され、複数の補強リブ18;18…は各補強棒固定孔6の孔縁近傍に設けられ、1つの補強棒固定孔6を挟むように配置される一対の補強リブ18;18が複数組設けられる。また、互いに隣り合う一対の補強リブ18;18と一対の補強リブ18;18との間に位置する他方の帯板16に1つ以上の棒材固定孔9が形成される。
そして、この貫通孔10に棒材7を貫通させて、この貫通孔10から突出する棒材7の両方の端部8;8を互いに向かい合う面積の大きい方の一対の外側面にそれぞれ配置された取付手段5の棒材固定孔9に通して棒材7の端部8;8に形成されているねじ部11にナット12を挿入し、当該ナット12を締結する。また、補強棒3の両方の端部4;4を外側面の上下に配置されるそれぞれ別々の取付手段5の補強棒固定孔6に通して補強棒3の端部4;4に形成されているねじ部21にナット22を挿入し、当該ナット12を締結する。
実施形態1の場合、橋脚1Aの互いに向かい合う面積の大きい方の一対の外側面の上下に設けられる上下の取付手段5;5に、複数の補強棒3;3…が鉄筋コンクリート構造物1の外周面の周方向に沿って間隔を隔てて互いに隣り合うように配置されて取付けられている。即ち、複数の補強棒3;3…の端部4を1つの長尺な取付手段5を用いて鉄筋コンクリート構造物1に固定しており、鉄筋コンクリート構造物1と複数の補強棒3;3…との一体性が高まるので、補強効果が向上する。
鉄筋コンクリート構造物1の外表面2に不陸があって、互いに対向する鉄筋コンクリート構造物1の外表面2と補強棒3の板面との間に隙間が生じる場合には、当該隙間にモルタル等の図外の充填材(グラウト)を充填する。これにより、外表面2に補強棒3との結合力が高まり、鉄筋コンクリート構造物1と補強棒3との一体性が高まるので、補強効果が向上する。
また、複数の補強棒3;3…が鉄筋コンクリート構造物1の外表面2に間隔を隔てて配置された構成としたので、鉄筋コンクリート構造物1の外表面2に補強棒3と補強棒3との間の外表面2を外部から容易に確認できるようになり、鉄筋コンクリート構造物1の補強後に地震等によって当該鉄筋コンクリート構造物1が損傷した場合において、当該損傷した鉄筋コンクリート構造物1の損傷部の位置や損傷の程度を外部から容易に確認することができ、補強後に損傷した場合の補強対策を容易かつ的確に行えるようになる。尚、鉄筋コンクリート構造物1の外表面2に取付けられる互いに隣り合う補強棒3と補強棒3との間の間隔は、鉄筋コンクリート構造物1の補強後に地震等によって損傷した鉄筋コンクリート構造物1の損傷部の位置や損傷の程度を外部から容易に確認することができる程度の寸法に設定すればよい。
また、鉄筋コンクリート構造物1を挟んで互いに対向するように配置された一対の補強棒3;3が、鉄筋コンクリート構造物1を貫通するように設けられた棒材7の両端部8;8に取付手段5を介して連結固定されて鉄筋コンクリート構造物1の外表面2に取付けられたことにより、鉄筋コンクリート構造物1に固定されているので、鉄筋コンクリート構造物1を貫通するように設けられた棒材7により鉄筋コンクリート構造物1の曲げ補強効果が向上する。
また、実施形態1の補強構造が施された鉄筋コンクリート構造物1によれば、当該鉄筋コンクリート構造物1に地震時の垂直衝撃応力が加わった場合、鉄筋コンクリート構造物1に固定された各補強棒3;3…の下端よりも下方に位置する段落としされていない部分50に損傷が生じるように構成されたので、損傷した段落としされていない部分50の補修作業を容易に行えるようになる。
また、棒材7としてPC鋼棒を用い、当該PC鋼棒を緊張させて貫通孔10に設置することでプレストレスを導入すれば、曲げ補強効果がより向上するので、好ましい。
尚、補強棒3、棒材7として、炭素繊維で強化された棒材や鉄筋棒等を用いてもよい。
実施形態1では、鉄筋コンクリート構造物1を挟んで互いに対向するように配置された一対の補強棒3;3が、鉄筋コンクリート構造物1を貫通する貫通孔10に通された棒材7の両方の端部8;8に取付手段5を介して連結固定されたことで、鉄筋コンクリート構造物1に固定された構造を示したが、補強棒3が、鉄筋コンクリート構造物1を貫通しないように鉄筋コンクリート構造物1に取付けられた図外の棒材の鉄筋コンクリート構造物1の外表面2より突出する端部に取付手段5を介して連結固定されて鉄筋コンクリート構造物1の外表面2に取付けられたことにより、鉄筋コンクリート構造物1に固定された構造としてもよい。
実施形態2の補強構造に使用する上記棒材としては、例えば、あと施工アンカーを用い、鉄筋コンクリート構造物1に取付けられた当該あと施工アンカーの鉄筋コンクリート構造物1の外表面2より突出する端部に取付手段5の棒材固定孔9を通して当該端部に形成された図外のねじ部にナットを締結することで補強棒3を当該取付手段5を介して当該端部に連結固定する。
実施形態2の場合、補強棒3を鉄筋コンクリート構造物1の外表面2に簡単に取付けることができ、容易に施工できる。また、鉄筋コンクリート構造物1を貫通する貫通孔10を形成しないので、施工手間が削減される。
即ち、取付手段は、補強棒の一端部及び他端部にそれぞれ取付けられ、補強棒の一端部に設けられた取付手段が段落としされている部分の外表面に取付けられ、補強棒の他端部に設けられた取付手段が段落としされていない部分の外表面に取付けられる構成であればよい。
5 取付手段、7 棒材、8 棒材の端部、50 段落としされていない部分、
51 段落としされている部分。
Claims (3)
- 段落とし構造を備えた鉄筋コンクリート構造物の段落としされている部分の外表面と段落としされていない部分の外表面とを跨ぐように複数の補強棒が間隔を隔てて互いに隣り合うように配置され、補強棒の一端部及び他端部にそれぞれ取付手段を設け、補強棒の一端部に設けられた取付手段が段落としされている部分の外表面に取付けられ、補強棒の他端部に設けられた取付手段が段落としされていない部分の外表面に取付けられたことにより、複数の各補強棒が段落としされている部分と段落としされていない部分とに固定されており、
取付手段は、一方の帯板と他方の帯板とを有した断面L字形状に形成され、他方の帯板が鉄筋コンクリート構造物の外表面に取付けられ、補強棒の端部が一方の帯板に取付けられていることを特徴とする段落とし構造を備えた鉄筋コンクリート構造物の補強構造。 - 補強棒が、鉄筋コンクリート構造物を貫通しないように鉄筋コンクリート構造物に取付けられた棒材の鉄筋コンクリート構造物の外表面より突出する端部に連結固定されて鉄筋コンクリート構造物の外表面に取付けられたことにより、鉄筋コンクリート構造物に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の段落とし構造を備えた鉄筋コンクリート構造物の補強構造。
- 鉄筋コンクリート構造物を挟んで互いに対向するように配置された一対の補強棒が、鉄筋コンクリート構造物を貫通するように設けられた棒材の両方の端部に連結固定されて鉄筋コンクリート構造物の外表面に取付けられたことにより、鉄筋コンクリート構造物に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の段落とし構造を備えた鉄筋コンクリート構造物の補強構造。
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