以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。尚、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。また、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
(光学表示デバイスの生産システム)
以下、本発明の一実施形態に係る光学表示デバイスの生産システムであるフィルム貼合システム1について図面を参照して説明する。本実施形態に係るフィルム貼合システム1は、切断装置が後述するレーザー光照射装置(図8参照)によって構成されている。
図1は、本実施形態のフィルム貼合システム1の概略構成を示す図である。
フィルム貼合システム1は、例えば液晶パネルや有機ELパネルといったパネル状の光学表示部品に、偏光フィルムや反射防止フィルム、光拡散フィルムといったフィルム状の光学部材を貼合するものである。
以下の説明においては、必要に応じてXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。本実施形態においては、光学表示部品である液晶パネルの搬送方向をX方向としており、液晶パネルの面内においてX方向に直交する方向(液晶パネルの幅方向)をY方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向としている。
図1に示すように、本実施形態のフィルム貼合システム1は、液晶パネルPの製造ラインの一工程として設けられている。フィルム貼合システム1の各部は、電子制御装置としての制御装置40により統括制御される。
図2は、液晶パネルPをその液晶層P3の厚さ方向から見た平面図である。液晶パネルPは、平面視で長方形状をなす第1基板P1(素子基板)と、第1基板P1に対向して配置される比較的小形の長方形状をなす第2基板P2(対向基板)と、第1基板P1と第2基板P2との間に封入された液晶層P3とを備える。液晶パネルPは、平面視で第1基板P1の外形状に沿う長方形状をなし、平面視で液晶層P3の外周の内側に収まる領域を表示領域P4とする。
図3は図2のA−A断面図である。液晶パネルPの表裏面には、長尺帯状の第1光学部材シートF1及び第2光学部材シートF2(図1参照、以下、光学部材シートFXと総称することがある。)からそれぞれ切り出した第1光学部材F11及び第2光学部材F12(以下、光学部材F1Xと総称することがある。)が適宜貼合される。本実施形態では、液晶パネルPのバックライト側及び表示面側の両面には、偏光フィルムとしての第1光学部材F11及び第2光学部材F12がそれぞれ貼合される。
表示領域P4の外側には、液晶パネルPの第1及び第2基板を接合するシール剤等を配置する所定幅の額縁部Gが設けられている。
尚、第1光学部材F11及び第2光学部材F12は、後述する第1シート片F1m及び第2シート片F2m(以下、シート片FXmと総称することがある。)から、それぞれその貼合面の外側の余剰部分を切り離すことにより形成されたものである。貼合面については後述する。
図4は液晶パネルPに貼合する光学部材シートFXの部分断面図である。光学部材シートFXは、フィルム状の光学部材本体F1aと、光学部材本体F1aの一方の面(図4では上面)に設けられた粘着層F2aと、粘着層F2aを介して光学部材本体F1aの一方の面に分離可能に積層されたセパレータF3aと、光学部材本体F1aの他方の面(図4では下面)に積層された表面保護フィルムF4aとを有する。光学部材本体F1aは偏光板として機能し、液晶パネルPの表示領域P4の全域とその周辺領域とにわたって貼合される。尚、図示都合上、図4の各層のハッチングは略す。
光学部材本体F1aは、その一方の面に粘着層F2aを残しつつセパレータF3aを分離させた状態で、液晶パネルPに粘着層F2aを介して貼合される。以下、光学部材シートFXからセパレータF3aを除いた部分を貼合シートF5という。
セパレータF3aは、粘着層F2aから分離されるまでの間に粘着層F2a及び光学部材本体F1aを保護する。表面保護フィルムF4aは、光学部材本体F1aと共に液晶パネルPに貼合される。表面保護フィルムF4aは、光学部材本体F1aに対して液晶パネルPと反対側に配置されて光学部材本体F1aを保護する。表面保護フィルムF4aは、所定のタイミングで光学部材本体F1aから分離される。尚、光学部材シートFXが表面保護フィルムF4aを含まない構成であったり、表面保護フィルムF4aが光学部材本体F1aから分離されない構成であったりしてもよい。
光学部材本体F1aは、シート状の偏光子F6と、偏光子F6の一方の面に接着剤等で接合される第1フィルムF7と、偏光子F6の他方の面に接着剤等で接合される第2フィルムF8とを有する。第1フィルムF7及び第2フィルムF8は、例えば偏光子F6を保護する保護フィルムである。
尚、光学部材本体F1aは、一層の光学層からなる単層構造でもよく、複数の光学層が互いに積層された積層構造でもよい。光学層は、偏光子F6の他に、位相差フィルムや輝度向上フィルム等でもよい。第1フィルムF7と第2フィルムF8の少なくとも一方は、液晶表示素子の最外面を保護するハードコート処理やアンチグレア処理を含む防眩などの効果が得られる表面処理が施されてもよい。光学部材本体F1aは、第1フィルムF7と第2フィルムF8の少なくとも一方を含まなくてもよい。例えば第1フィルムF7を省略した場合、セパレータF3aを光学部材本体F1aの一方の面に粘着層F2aを介して貼り合わせてもよい。
次に、本実施形態のフィルム貼合システム1について、詳しく説明する。
図1に示すように、本実施形態のフィルム貼合システム1は、図中右側の液晶パネルPの搬送方向上流側(+X方向側)から図中左側の液晶パネルPの搬送方向下流側(−X方向側)に至り、液晶パネルPを水平状態で搬送する駆動式のローラコンベア5を備えている。
ローラコンベア5は、後述する反転装置15を境に、上流側コンベア6と下流側コンベア7とに分かれる。上流側コンベア6では、液晶パネルPは表示領域P4の短辺を搬送方向に沿うようにして搬送される。一方、下流側コンベア7では、液晶パネルPは表示領域P4の長辺を搬送方向に沿うようにして搬送される。この液晶パネルPの表裏面に対して、帯状の光学部材シートFXから所定長さに切り出した貼合シートF5のシート片FXm(光学部材F1Xに相当)が貼合される。
尚、上流側コンベア6は、後述する第1吸着装置11では、下流側に独立したフリーローラコンベア24を備えている。一方、下流側コンベア7は、後述する第2吸着装置20では、下流側に独立したフリーローラコンベア24を備えている。
本実施形態のフィルム貼合システム1は、第1吸着装置11、第1集塵装置12、第1貼合装置13、第1検出装置41、第1切断装置31、反転装置15、第2集塵装置16、第2貼合装置17、第2検出装置42、第2切断装置32、及び制御装置40を備えている。
第1吸着装置11は、液晶パネルPを吸着して上流側コンベア6に搬送すると共に液晶パネルPのアライメント(位置決め)を行う。第1吸着装置11は、パネル保持部11aと、アライメントカメラ11bと、レールRと、を有する。
パネル保持部11aは、上流側コンベア6により下流側のストッパSに当接した液晶パネルPを上下方向及び水平方向に移動可能に保持すると共に液晶パネルPのアライメントを行う。パネル保持部11aは、ストッパSに当接した液晶パネルPの上面を真空吸着によって吸着保持する。パネル保持部11aは、液晶パネルPを吸着保持した状態でレールR上を移動して液晶パネルPを搬送する。パネル保持部11aは、搬送が終わると吸着保持を解除して液晶パネルPをフリーローラコンベア24に受け渡す。
アライメントカメラ11bは、ストッパSに当接した液晶パネルPをパネル保持部11aが保持し、上昇した状態で液晶パネルPのアライメントマークや先端形状等を撮像する。アライメントカメラ11bによる撮像データは制御装置40に送信され、この撮像データに基づき、パネル保持部11aが作動して搬送先のフリーローラコンベア24に対する液晶パネルPのアライメントがなされる。つまり、液晶パネルPは、フリーローラコンベア24に対する搬送方向、搬送方向と直交する方向、及び液晶パネルPの垂直軸回りの旋回方向でのズレ分を加味した状態でフリーローラコンベア24に搬送される。
ここで、パネル保持部11aによりレールR上を搬送された液晶パネルPは吸着パッド26に吸着された状態でシート片FXmと共に先端部を挟圧ロール23に挟持される。
第1集塵装置12は、第1貼合装置13の貼合位置である挟圧ロール23の、液晶パネルPの搬送上流側に設けられている。第1集塵装置12は、貼合位置に導入される前の液晶パネルPの周辺の塵埃、特に下面側の塵埃を除去するため、静電気の除去及び集塵を行う。
第1貼合装置13は、第1吸着装置11よりもパネル搬送下流側に設けられている。第1貼合装置13は、貼合位置に導入された液晶パネルPの下面に対して、所定サイズにカットした貼合シートF5(第1シート片F1mに相当)の貼合を行う。
第1貼合装置13は、搬送装置22と、挟圧ロール23とを備えている。
搬送装置22は、光学部材シートFXが巻回された原反ロールR1から光学部材シートFXを巻き出しつつ光学部材シートFXをその長手方向に沿って搬送する。搬送装置22は、セパレータF3aをキャリアとして貼合シートF5を搬送する。搬送装置22は、ロール保持部22aと、複数のガイドローラ22bと、切断装置22cと、ナイフエッジ22dと、巻き取り部22eと、を有する。
ロール保持部22aは、帯状の光学部材シートFXを巻回した原反ロールR1を保持すると共に光学部材シートFXをその長手方向に沿って繰り出す。
複数のガイドローラ22bは、原反ロールR1から巻き出した光学部材シートFXを所定の搬送経路に沿って案内するべく光学部材シートFXを巻きかける。
切断装置22cは、搬送経路上の光学部材シートFXにハーフカットを施す。
ナイフエッジ22dは、ハーフカットを施した光学部材シートFXを鋭角に巻きかけてセパレータF3aから貼合シートF5を分離させつつこの貼合シートF5を貼合位置に供給する。
巻き取り部22eは、ナイフエッジ22dを経て単独となったセパレータF3aを巻き取るセパレータロールR2を保持する。
搬送装置22の始点に位置するロール保持部22aと搬送装置22の終点に位置する巻き取り部22eとは、例えば互いに同期して駆動する。これにより、ロール保持部22aが光学部材シートFXをその搬送方向へ繰り出しつつ、巻き取り部22eがナイフエッジ22dを経たセパレータF3aを巻き取る。以下、搬送装置22における光学部材シートFX(セパレータF3a)の搬送方向上流側をシート搬送上流側、搬送方向下流側をシート搬送下流側という。
各ガイドローラ22bは、搬送中の光学部材シートFXの進行方向を搬送経路に沿って変化させると共に、複数のガイドローラ22bの少なくとも一部が搬送中の光学部材シートFXのテンションを調整するべく可動する。
尚、ロール保持部22aと切断装置22cとの間には、図示しないダンサローラが配置されていてもよい。ダンサローラは、光学部材シートFXが切断装置22cで切断される間に、ロール保持部22aから搬送される光学部材シートFXの繰り出し量を吸収する。
図5は、本実施形態の切断装置22cの動作を示す図である。
図5に示すように、切断装置22cは、光学部材シートFXが所定長さ繰り出された際、光学部材シートFXの長手方向と直交する幅方向の全幅にわたって、光学部材シートFXの厚さ方向の一部を切断するハーフカットを行う。本実施形態の切断装置22cは、光学部材シートFXに対してセパレータF3aとは反対側から光学部材シートFXに向かって進退可能に設けられている。
切断装置22cは、光学部材シートFXの搬送中に働くテンションによって光学部材シートFX(セパレータF3a)が破断しないように(所定の厚さがセパレータF3aに残るように)、切断刃の進退位置を調整し、粘着層F2aとセパレータF3aとの界面の近傍までハーフカットを施す。尚、切断刃に代わるレーザー装置を用いてもよい。
ハーフカット後の光学部材シートFXには、その厚さ方向で光学部材本体F1a及び表面保護フィルムF4aが切断されることにより、光学部材シートFXの幅方向の全幅にわたる切込線L1,L2が形成される。切込線L1,L2は、帯状の光学部材シートFXの長手方向で複数並ぶように形成される。例えば同一サイズの液晶パネルPを搬送する貼合工程の場合、複数の切込線L1,L2は光学部材シートFXの長手方向で等間隔に形成される。光学部材シートFXは、複数の切込線L1,L2によって長手方向で複数の区画に分けられる。光学部材シートFXにおける長手方向で隣り合う一対の切込線L1,L2に挟まれる区画は、それぞれ貼合シートF5における一つのシート片FXmとされる。シート片FXmは、液晶パネルPの外側にはみ出るサイズの光学部材シートFXのシート片である。
図1に戻り、ナイフエッジ22dは、上流側コンベア6の下方に配置されて光学部材シートFXの幅方向で少なくともその全幅にわたって延在する。ナイフエッジ22dは、ハーフカット後の光学部材シートFXのセパレータF3a側に摺接するようにこれを巻きかける。
ナイフエッジ22dは、光学部材シートFXの幅方向(上流側コンベア6の幅方向)から見て伏せた姿勢に配置される第1面と、第1面の上方で光学部材シートFXの幅方向から見て第1面に対して鋭角に配置される第2面と、第1面及び第2面が交わる先端部とを有する。
第1貼合装置13において、ナイフエッジ22dは、その先端部に第1光学部材シートF1を鋭角に巻きかける。第1光学部材シートF1は、ナイフエッジ22dの先端部で鋭角に折り返す際、セパレータF3aから貼合シートF5のシート片(第1シート片F1m)を分離させる。ナイフエッジ22dの先端部は、挟圧ロール23のパネル搬送下流側に近接して配置される。ナイフエッジ22dによりセパレータF3aから分離した第1シート片F1mは、第1吸着装置11に吸着された状態の液晶パネルPの下面に重なりつつ、挟圧ロール23の一対の貼合ローラ23a間に導入される。第1シート片F1mは、液晶パネルPの外側にはみ出るサイズの第1光学部材シートF1のシート片である。
一方、ナイフエッジ22dにより、貼合シートF5と分離されたセパレータF3aは巻き取り部22eに向かう。巻き取り部22eは、貼合シートF5と分離されたセパレータF3aを巻き取り、回収する。
挟圧ロール23は、搬送装置22が第1光学部材シートF1から分離させた第1シート片F1mを上流側コンベア6により搬送される液晶パネルPの下面に貼合する。挟圧ロール23は、ライン上を搬送される液晶パネルPの下面に第1シート片F1mを貼合して後述する積層体を形成する。ここで、挟圧ロール23は、特許請求の範囲に記載の貼合装置に相当する。
挟圧ロール23は、互いに軸方向を平行にして配置された一対の貼合ローラ23a,23aを有する(上の貼合ローラ23aは上下する)。一対の貼合ローラ23a,23a間には所定の間隙が形成され、この間隙内が第1貼合装置13の貼合位置となる。
間隙内には、液晶パネルP及び第1シート片F1mが重なり合って導入される。これら液晶パネルP及び第1シート片F1mが、各貼合ローラ23aに挟圧されつつ上流側コンベア6のパネル搬送下流側に送り出される。本実施形態では、挟圧ロール23により液晶パネルPのバックライト側の面に第1シート片F1mが貼合されることにより、第1光学部材貼合体PA1が形成される。ここで、第1光学部材貼合体PA1は、特許請求の範囲に記載の積層体に相当する。
第1検出装置41は、第1貼合装置13よりもパネル搬送下流側に設けられている。第1検出装置41は、液晶パネルPと第1シート片F1mとの貼合面(以下、第1貼合面と称することがある。)の端縁を検出する。
図6は、第1貼合面SA1の端縁EDの検出工程を示す平面図である。
第1検出装置41は、例えば図6に示すように、上流側コンベア6の搬送経路上に設置された検査領域CAにおいて第1貼合面SA1の端縁EDを検出する。検査領域CAは、矩形形状を有する第1貼合面SA1を含む領域である。端縁EDは、ライン上を搬送される液晶パネルPごとに検出される。第1検出装置41によって検出された端縁EDのデータは、図示しない記憶部に記憶される。尚、第1検出装置41の構成については後述する(図21参照)。
第1シート片F1mのカット位置は、第1貼合面SA1の端縁EDの検出結果に基づいて調整される。制御装置40(図1参照)は、記憶部に記憶された第1貼合面SA1の端縁EDのデータを取得し、第1光学部材F11が液晶パネルPの外側(第1貼合面SA1の外側)にはみ出さない大きさとなるように第1シート片F1mのカット位置を決定する。第1切断装置31は、制御装置40によって決定されたカット位置において第1シート片F1mを切断する。
図1に戻り、第1切断装置31は、第1検出装置41よりもパネル搬送下流側に設けられている。第1切断装置31は、端縁EDに沿ってレーザーカットを行うことにより、第1光学部材貼合体PA1から第1貼合面SA1の外側にはみ出た部分の第1シート片F1m(第1シート片F1mの余剰部分)を切り離し、第1貼合面SA1に対応する大きさの光学部材(第1光学部材F11)を形成する。ここで、第1切断装置31は、特許請求の範囲に記載の切断装置に相当する。
ここで、「第1貼合面SA1に対応する大きさ」とは、第1基板P1の外形状の大きさを示す。ただし、表示領域P4の大きさ以上、液晶パネルPの外形状の大きさ以下の領域で、かつ電気部品取り付け部等の機能部分を避けた領域を含む。本実施形態では、平面視矩形状の液晶パネルPにおける前記機能部分を除いた三辺では、液晶パネルPの外周縁に沿って余剰部分をレーザーカットし、前記機能部分に相当する一辺では、液晶パネルPの外周縁から表示領域P4側に適宜入り込んだ位置で余剰部分をレーザーカットしている。例えば、第一貼合面SA1に対応する部分がTFT基板の貼合面の場合、前記機能部分に相当する一辺では前記機能部分を除くよう液晶パネルPの外周縁から表示領域P4側に所定量ずれた位置でカットされる。
尚、液晶パネルPにおける前記機能部分を含む領域(例えば液晶パネルP全体)にシート片を貼合することに限らない。例えば、予め液晶パネルPにおける前記機能部分を避けた領域にシート片を貼合し、その後、平面視矩形状の液晶パネルPにおける前記機能部分を除いた三辺において液晶パネルPの外周縁に沿って余剰部分をレーザーカットしてもよい。
第1切断装置31により第1光学部材貼合体PA1から第1シート片F1mの余剰部分が切り離されることにより、液晶パネルPのバックライト側の面に第1光学部材F11が貼合されてなる第2光学部材貼合体PA2が形成される。第1シート片F1mから切り離された余剰部分は、図示略の剥離装置によって液晶パネルPから剥離され回収される。
反転装置15は、液晶パネルPの表示面側を上面にした第2光学部材貼合体PA2を表裏反転させて液晶パネルPのバックライト側を上面にすると共に、第2貼合装置17に対する液晶パネルPのアライメントを行う。
反転装置15は、第1吸着装置11のパネル保持部11aと同様のアライメント機能を有する。反転装置15には、第1吸着装置11のアライメントカメラ11bと同様のアライメントカメラ15cが設けられている。
反転装置15は、制御装置40に記憶された光学軸方向の検査データ及びアライメントカメラ15cの撮像データに基づき、第2貼合装置17に対する第2光学部材貼合体PA2の部品幅方向での位置決め及び回転方向での位置決めを行う。この状態で、第2光学部材貼合体PA2が第2貼合装置17の貼合位置に導入される。
第2吸着装置20は、第1吸着装置11と同様の構成を備えているため同一部分に同一符号を付して説明する。第2吸着装置20は、第2光学部材貼合体PA2を吸着して下流側コンベア7に搬送すると共に第2光学部材貼合体PA2のアライメント(位置決め)を行う。第2吸着装置20は、パネル保持部11aと、アライメントカメラ11bと、レールRと、を有する。
パネル保持部11aは、下流側コンベア7により下流側のストッパSに当接した第2光学部材貼合体PA2を上下方向及び水平方向に移動可能に保持すると共に第2光学部材貼合体PA2のアライメントを行う。パネル保持部11aは、ストッパSに当接した第2光学部材貼合体PA2の上面を真空吸着によって吸着保持する。パネル保持部11aは、第2光学部材貼合体PA2を吸着保持した状態でレールR上を移動して第2光学部材貼合体PA2を搬送する。パネル保持部11aは、当該搬送が終わると前記吸着保持を解除して第2光学部材貼合体PA2をフリーローラコンベア24に受け渡す。
アライメントカメラ11bは、ストッパSに当接した第2光学部材貼合体PA2をパネル保持部11aが保持し、上昇した状態で第2光学部材貼合体PA2のアライメントマークや先端形状等を撮像する。アライメントカメラ11bによる撮像データは制御装置40に送信され、この撮像データに基づき、パネル保持部11aが作動して搬送先のフリーローラコンベア24に対する第2光学部材貼合体PA2のアライメントがなされる。つまり、第2光学部材貼合体PA2は、フリーローラコンベア24に対する搬送方向、搬送方向と直交する方向、及び第2光学部材貼合体PA2の垂直軸回りの旋回方向でのズレ分を加味した状態でフリーローラコンベア24に搬送される。
第2集塵装置16は、第2貼合装置17の貼合位置である挟圧ロール23の、液晶パネルPの搬送方向上流側に配置されている。第2集塵装置16は、貼合位置に導入される前の第2光学部材貼合体PA2の周辺の塵埃、特に下面側の塵埃を除去するため、静電気の除去及び集塵を行う。
第2貼合装置17は、第2集塵装置16よりもパネル搬送下流側に設けられている。第2貼合装置17は、貼合位置に導入された第2光学部材貼合体PA2の下面に対して、所定サイズにカットした貼合シートF5(第2シート片F2mに相当)の貼合を行う。第2貼合装置17は、第1貼合装置13と同様の搬送装置22及び挟圧ロール23を備えている。
挟圧ロール23の一対の貼合ローラ23a間の間隙内(第2貼合装置17の貼合位置)には、第2光学部材貼合体PA2及び第2シート片F2mが重なり合って導入される。第2シート片F2mは、液晶パネルPの表示領域P4よりも大きいサイズの第2光学部材シートF2のシート片である。
これら第2光学部材貼合体PA2及び第2シート片F2mが、各貼合ローラ23aに挟圧されつつ下流側コンベア7のパネル搬送下流側に送り出される。本実施形態では、挟圧ロール23により液晶パネルPの表示面側の面(第2光学部材貼合体PA2の第1光学部材F11が貼合された面とは反対側の面)に第2シート片F2mが貼合されることにより、第3光学部材貼合体PA3が形成される。ここで、第3光学部材貼合体PA3は、特許請求の範囲に記載の積層体に相当する。
第2検出装置42は、第2貼合装置17よりもパネル搬送下流側に設けられている。第2検出装置42は、液晶パネルPと第2シート片F2mとの貼合面(以下、第2貼合面と称する)の端縁を検出する。第2検出装置42によって検出された端縁のデータは、図示しない記憶部に記憶される。
第2シート片F2mのカット位置は、第2貼合面の端縁の検出結果に基づいて調整される。制御装置40(図1参照)は、記憶部に記憶された第2貼合面の端縁のデータを取得し、第2光学部材F12が液晶パネルPの外側(第2貼合面の外側)にはみ出さない大きさとなるように第2シート片F2mのカット位置を決定する。第2切断装置32は、制御装置40によって決定されたカット位置において第2シート片F2mを切断する。ここで、第2切断装置32は、特許請求の範囲に記載の切断装置に相当する。
第2切断装置32は、第2検出装置42よりもパネル搬送下流側に設けられている。第2切断装置32は、第2貼合面の端縁に沿ってレーザーカットを行うことにより、第3光学部材貼合体PA3から第2貼合面の外側にはみ出た部分の第2シート片F2m(第2シート片F2mの余剰部分)を切り離し、第2貼合面に対応する大きさの光学部材(第2光学部材F12)を形成する。
ここで、「第2貼合面に対応する大きさ」とは、液晶パネルPの表示領域P4の大きさ以上、液晶パネルPの外形状(平面視における輪郭形状)の大きさ以下の大きさを指す。本実施形態では、平面視矩形状の液晶パネルPにおける四辺において、液晶パネルPの外周縁に沿って余剰部分をレーザーカットしている。例えば、第2貼合面に対応する部分がCF基板の貼合面の場合、前記機能部分に相当する部分がないため、液晶パネルPの四辺において液晶パネルPの外周縁に沿ってカットされる。
第2切断装置32により第3光学部材貼合体PA3から第2シート片F2mの余剰部分が切り離されることにより、液晶パネルPの表示面側の面に第2光学部材F12が貼合され、かつ、液晶パネルPのバックライト側の面に第1光学部材F11が貼合されてなる第4光学部材貼合体PA4(光学表示デバイス)が形成される。第2シート片F2mから切り離された余剰部分は、図示略の剥離装置によって液晶パネルPから剥離され回収される。
ここで、第1切断装置31および第2切断装置32は、レーザー光照射装置100(図8参照)によって構成されている。第1切断装置31および第2切断装置32は、液晶パネルPに貼合されたシート片FXmを貼合面の外周縁に沿って無端状に切断する。
第2貼合装置17よりもパネル搬送下流側には、図示略の貼合検査装置が設けられている。貼合検査装置は、フィルム貼合がなされたワーク(液晶パネルP)の図示略の検査装置による検査(光学部材F1Xの位置が適正か否か(位置ズレが公差範囲内にあるか否か)等の検査)がなされる。液晶パネルPに対する光学部材F1Xの位置が適正ではないと判定されたワークは、不図示の払い出し手段によりシステム外に排出される。
尚、本実施形態においてフィルム貼合システム1の各部を統括制御する電子制御装置としての制御装置40は、コンピュータシステムを含んで構成されている。このコンピュータシステムは、CPU等の演算処理部と、メモリやハードディスク等の記憶部とを備える。本実施形態の制御装置40は、コンピュータシステムの外部の装置との通信を実行可能なインターフェースを含む。制御装置40には、入力信号を入力可能な入力装置が接続されていてもよい。上記の入力装置は、キーボード、マウス等の入力機器、あるいはコンピュータシステムの外部の装置からのデータを入力可能な通信装置等を含む。制御装置40は、フィルム貼合システム1の各部の動作状況を示す液晶表示ディスプレイ等の表示装置を含んでいてもよいし、表示装置と接続されていてもよい。
制御装置40の記憶部には、コンピュータシステムを制御するオペレーティングシステム(OS)がインストールされている。制御装置40の記憶部には、演算処理部にフィルム貼合システム1の各部を制御させることによって、フィルム貼合システム1の各部に光学部材シートFを精度よく搬送させるための処理を実行させるプログラムが記録されている。記憶部に記録されているプログラムを含む各種情報は、制御装置40の演算処理部が読み取り可能である。制御装置40は、フィルム貼合システム1の各部の制御に要する各種処理を実行するASIC等の論理回路を含んでいてもよい。
記憶部は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などといった半導体メモリや、ハードディスク、CD−ROM読取り装置、ディスク型記憶媒体などといった外部記憶装置などを含む概念である。記憶部は、機能的には、第1吸着装置11、第1集塵装置12、第1貼合装置13、第1検出装置41、第1切断装置31、反転装置15、第2吸着装置20、第2集塵装置16、第2貼合装置17、第2検出装置42、第2切断装置32の動作の制御手順が記述されたプログラムソフトを記憶する記憶領域、その他各種の記憶領域が設定される。
以下、図7を参照して、液晶パネルPに対するシート片FXmの貼合位置(相対貼合位置)の決定方法の一例を説明する。
まず、図7(a)に示すように、光学部材シートFXの幅方向に複数の検査ポイントCPを設定し、各検査ポイントCPにおいて光学部材シートFXの光学軸の方向を検出する。光学軸を検出するタイミングは、原反ロールR1の製造時でもよく、原反ロールR1から光学部材シートFXを巻き出してハーフカットするまでの間でもよい。光学部材シートFXの光学軸方向のデータは、光学部材シートFXの位置(光学部材シートFXの長手方向の位置および幅方向の位置)と関連付けられて図示略の記憶部に記憶される。
制御装置40は、記憶部から各検査ポイントCPの光学軸のデータ(光学軸の面内分布の検査データ)を取得し、シート片FXmが切り出される部分の光学部材シートFX(切込線CLによって区画される領域)の平均的な光学軸の方向を検出する。
例えば、図7(b)に示すように、光学軸の方向と光学部材シートFXのエッジラインELとのなす角度(ずれ角)を検査ポイントCP毎に検出し、ずれ角のうち最も大きな角度(最大ずれ角)をθmaxとし、最も小さな角度(最小ずれ角)をθminとしたときに、最大ずれ角θmaxと最小ずれ角θminとの平均値θmid(=(θmax+θmin)/2)を平均ずれ角として検出する。そして、光学部材シートFXのエッジラインELに対して平均ずれ角θmidをなす方向を光学部材シートFXの平均的な光学軸の方向として検出する。尚、ずれ角は、例えば、光学部材シートFXのエッジラインELに対して左回りの方向を正とし、右回りの方向を負として算出される。
そして、上記の方法で検出された光学部材シートFXの平均的な光学軸の方向が、液晶パネルPの表示領域P4の長辺または短辺に対して所望の角度をなすように、液晶パネルPに対するシート片FXmの貼合位置(相対貼合位置)が決定される。例えば、設計仕様によって光学部材F1Xの光学軸の方向が表示領域P4の長辺または短辺に対して90°をなす方向に設定されている場合には、光学部材シートFXの平均的な光学軸の方向が表示領域P4の長辺又は短辺に対して90°をなすように、シート片FXmが液晶パネルPに貼合される。
前述した第1切断装置31および第2切断装置32は、液晶パネルPの表示領域P4の外周縁をカメラ等の検出手段で検出し、液晶パネルPに貼合されたシート片FXmを貼合面の外周縁に沿って無端状に切断する。貼合面の外周縁は、貼合面を含む画像を撮像することによって検出される。本実施形態では、貼合面の外周縁に沿って各切断装置31,32によるレーザーカットがなされる。
レーザー加工機の切断線の振れ幅(公差)は切断刃のそれよりも小さく、したがって本実施形態では、切断刃を用いて光学部材シートFXを切断する場合と比べて、貼合面の外周縁に沿って容易に切断することが可能であり、液晶パネルPの小型化及び(又は)表示領域P4の大型化が可能である。これは、近年のスマートフォンやタブレット端末のように、筐体のサイズが制限される中で表示画面の拡大が要求される高機能モバイルへの適用に有効である。
また、光学部材シートFXを液晶パネルPの表示領域P4に整合するシート片にカットした後に液晶パネルPに貼合する場合、シート片及び液晶パネルPそれぞれの寸法公差、並びにこれらの相対貼合位置の寸法公差が重なるため、液晶パネルPの額縁部Gの幅を狭めることが困難になる(表示エリアの拡大が困難になる)。
一方、光学部材シートFXから液晶パネルPの外側にはみ出るサイズの光学部材シートFXのシート片FXmを切り出し、この切り出したシート片FXmを液晶パネルPに貼合した後に貼合面に合わせてカットする場合、切断線の振れ公差のみを考慮すればよく、額縁部Gの幅の公差を小さくすることができる(±0.1mm以下)。この点においても、液晶パネルPの額縁部Gの幅を狭めることができる(表示エリアの拡大が可能となる)。
さらに、シート片FXmを刃物ではなくレーザーでカットすることで、切断時の力が液晶パネルPに入力されず、液晶パネルPの基板の端縁にクラックや欠けが生じ難くなり、ヒートサイクル等に対する耐久性が向上する。同様に、液晶パネルPに非接触であるため、電気部品取り付け部に対するダメージも少ない。
(切断装置)
図8は、切断装置(第1切断装置31及び第2切断装置32)として用いられるレーザー光照射装置100の一例を示す斜視図である。レーザー光照射装置100は、シート片FXmを含む積層体(第1光学部材貼合体PA1又は第3光学部材貼合体PA3)を対象物110とし、シート片FXmの余剰部分を切り離し、貼合面(第1貼合面又は第2貼合面)に対応する大きさの光学部材F1Xを形成する切断処理を行う。
図8に示すように、レーザー光照射装置100は、テーブル101と、レーザー光発振機102と、EBS130(Electrical Beam Shaping:図9参照)を構成する音響光学素子103と、IOR104(Imaging Optics Rail)と、スキャナー105と、移動装置106と、これらの装置を統括制御する制御装置107と、を備えている。
テーブル101は、切断処理が施される対象物110を保持する保持面101sを有する。テーブル101は、保持面101sの法線方向から見て矩形である。保持面101sは、第1の方向(X方向)に長手を有する長方形の第1保持面101s1と、第1保持面101s1に隣接して配置され且つ第1保持面101s1と同一形状の第2保持面101s2と、を有する。すなわち、テーブル101は、第1保持面101s1および第2保持面101s2を有することで、2つの対象物110を同時に保持することが可能とされている。
レーザー光発振機102は、レーザー光Lを発振する部材である。例えば、レーザー光発振機102としては、CO2レーザー光発振機(二酸化炭素レーザー光発振機)、UVレーザー光発振機、半導体レーザー光発振機、YAGレーザー光発振機、エキシマレーザー光発振機等の発振機を用いることができるが、具体的な構成は特に限定されるものではない。前記例示の発振機の中でもCO2レーザー光発振機は、例えば偏光フィルム等の光学部材の切断加工に好適な高出力でレーザー光を発振することができるので、より好ましい。
図9は、EBS130の構成を示す図である。
図9に示すように、EBS130は、レーザー光発振機102から発振されるレーザー光の光路上に配置された音響光学素子103と、音響光学素子103と電気的に接続された駆動ドライバ131と、レーザー光が音響光学素子103を通過するタイミングを制御する制御装置107(後述するレーザー制御部171に相当)と、を有する。
EBS130は、レーザー光の出力が安定するまでレーザー光を遮蔽する。
音響光学素子103は、レーザー光発振機102から発振されたレーザー光を遮蔽するための光学素子である。
音響光学素子103は、例えば、二酸化テルル(TeO2)やモリブデン酸鉛(PbMoO4)などの単結晶またはガラスからなる音響光学媒体に圧電素子を接着したものである。圧電素子に電気信号を加えて超音波を発生させ、この超音波を音響光学媒体中に伝搬させることで、レーザー光の通過と非通過(遮蔽)を制御することができる。
尚、本実施形態では、EBS130の構成部材として音響光学素子103を用いているが、これに限らない。レーザー光発振機102から発振されたレーザー光を遮蔽することができれば、他の光学素子を用いてもよい。
駆動ドライバ131は、制御装置107の制御に基づいて、音響光学素子103に超音波を発生させるための電気信号(制御信号)を供給し、音響光学素子103によるレーザー光の遮蔽時間を調整する。
制御装置107は、例えば、レーザー光発振機102から発振されるレーザー光の立ち上がり部分及び立ち下がり部分が除去されるよう、レーザー光が音響光学素子103を通過するタイミングを制御する。
尚、制御装置107によるタイミング制御はこれに限らない。例えば、制御装置107が、レーザー光発振機102から発振されるレーザー光の立ち上がり部分が選択的に除去されるよう、レーザー光が音響光学素子103を通過するタイミングを制御してもよい。特に、レーザー光発振機102から発振されるレーザー光の立ち下がり部分の幅(時間)がレーザー光の立ち上がり部分の幅(時間)よりも十分に短い場合には、レーザー光の立ち下がり部分を除去する実益が小さい。そのため、このような場合には、レーザー光発振機102から発振されるレーザー光の立ち上がり部分のみを選択的に除去してもよい。
このような構成により、EBS130は、制御装置107の制御に基づいて、レーザー光発振機102から発振されたレーザー光を、出力が安定した状態で射出する。
IOR104は、レーザー光の強度分布のうち対象物110の切断には寄与しない裾の部分を除去する。
図10は、IOR104の内部構成を示す斜視図である。
図10に示すように、IOR104は、EBS130から射出されたレーザー光を集光する第1集光レンズ141と、第1集光レンズ141を保持する第1保持枠142と、第1集光レンズ141によって集光されたレーザー光を絞る絞り部材143と、絞り部材143を保持する保持部材144と、絞り部材143によって絞られたレーザー光を平行化するコリメートレンズ145と、コリメートレンズ145を保持する第2保持枠146と、第1保持枠142、保持部材144及び第2保持枠146を相対移動させる移動機構147と、を有する。
図11は、第1集光レンズ141、絞り部材143及びコリメートレンズ145の配置構成を示す側断面図である。
図11に示すように、絞り部材143には、第1集光レンズ141によって集光されたレーザー光を絞るためのピンホール143hが形成されている。第1集光レンズ141、ピンホール143h及びコリメートレンズ145の各々の中心は、EBS130から射出されたレーザー光の光軸Cと重なる位置に配置されている。
絞り部材143は、第1集光レンズ141の後側焦点の近傍に配置されていることが好ましい。
ここで、「第1集光レンズ141の後側焦点の近傍」とは、絞り部材143の配置位置が第1集光レンズ141の後側焦点から大きく位置ズレしない範囲で、配置位置を若干異ならせてもよいことを意味する。例えば、第1集光レンズ141の中心から第1集光レンズ141の後側焦点までの距離K1と第1集光レンズ141の中心から絞り部材143のピンホール143hの中心までの距離K2との比K1/K2が0.9/1以上1.1/1以下の範囲であれば、絞り部材143が第1集光レンズ141の後側焦点の近傍に配置されているといえる。このような範囲であれば、第1集光レンズ141によって集光されたレーザー光を効果的に絞ることができる。
尚、絞り部材143は、第1集光レンズ141の後側焦点の近傍に配置されていることが好ましいが、絞り部材143の配置位置は、必ずしもこの位置に限定されない。絞り部材143の配置位置は、第1集光レンズ141とコリメートレンズ145との間の光路上であればよく、第1集光レンズ141の後側焦点の近傍に限らない。
図10に戻り、移動機構147は、第1保持枠142、保持部材144及び第2保持枠146の各々を、レーザー光の進行方向と平行な方向に移動させるスライダ機構148と、スライダ機構148を保持する保持台149と、を有する。
例えば、保持部材144を定位置に配置した状態で、第1保持枠142及び第2保持枠146をレーザー光の進行方向と平行な方向に移動させることにより、第1保持枠142、保持部材144及び第2保持枠146の相互の位置決めが行われる。具体的には、絞り部材143をコリメートレンズ145の前側焦点の位置で且つ第1集光レンズ141の後側焦点の位置に配置する。
図8に戻り、スキャナー105は、レーザー光を保持面101sと平行な平面内(XY平面内)で2軸走査する。すなわち、スキャナー105は、テーブル101に対してレーザー光をX方向とY方向に独立に相対移動させる。これにより、テーブル101に保持された対象物110の任意の位置に精度よくレーザー光を照射することが可能となっている。
スキャナー105は、第1照射位置調整装置151と、第2照射位置調整装置154と、を備えている。
第1照射位置調整装置151及び第2照射位置調整装置154は、IOR104から射出されたレーザー光を保持面101sと平行な平面内で2軸走査する走査素子を構成している。第1照射位置調整装置151及び第2照射位置調整装置154としては、例えば、ガルバノスキャナーを用いる。尚、走査素子としては、ガルバノスキャナーに限らず、ジンバルを用いることもできる。
第1照射位置調整装置151は、ミラー152と、ミラー152の設置角度を調整するアクチュエータ153と、を備えている。アクチュエータ153は、Z方向に平行な回転軸を有する。アクチュエータ153は、制御装置107の制御に基づいて、ミラー152をZ軸回りに回転させる。
第2照射位置調整装置154は、ミラー155と、ミラー155の設置角度を調整するアクチュエータ156と、を備えている。アクチュエータ156は、Y方向に平行な回転軸を有する。アクチュエータ156は、制御装置107の制御に基づいて、ミラー155をY軸回りに回転させる。
スキャナー105とテーブル101との間の光路上には、スキャナー105を経由したレーザー光を保持面101sに向けて集光する第2集光レンズ108が配置されている。
例えば、第2集光レンズ108としては、fθレンズを用いる。これにより、ミラー155から第2集光レンズ108に平行に射出されたレーザー光を対象物110に平行に集光させることができる。
尚、スキャナー105とテーブル101との間の光路上に、第2集光レンズ108が配置されていない構成であってもよい。
レーザー光発振機102から発振されたレーザー光Lは、音響光学素子103、IOR104、ミラー152、ミラー155、第2集光レンズ108を経由してテーブル101に保持された対象物110に照射される。第1照射位置調整装置151、第2照射位置調整装置154は、制御装置107の制御に基づいて、レーザー光発振機102からテーブル101に保持された対象物110に向けて照射されるレーザー光の照射位置を調整する。
スキャナー105の制御によるレーザー光の加工領域105s(以下、スキャン領域と称する)は、保持面101sの法線方向から見て矩形である。本実施形態では、スキャン領域105sの面積は、第1保持面101s1及び第2保持面101s2の各々の面積よりも小さい。
図12(a)〜(d)は、EBS130の作用を説明するための図である。
図12(a)は、レーザー光発振機102から発振されるレーザー光の制御信号を示している。
図12(b)は、レーザー光発振機102から発振されたレーザー光そのものの出力特性、即ちレーザー光発振機102から発振されたレーザー光が音響光学素子103を通過する前のレーザー光の出力特性を示している。
図12(c)は、音響光学素子103の制御信号を示している。
図12(d)は、レーザー光発振機102から発振されたレーザー光が音響光学素子103を通過した後のレーザー光の出力特性を示している。
図12(b)、(d)の各々において、横軸は時間、縦軸はレーザー光の強度である。
図13(a)〜(d)は、図12(a)〜(d)において、レーザー光の1つのパルスに着目した図である。
尚、以下の説明では、「レーザー光発振機102から発振されるレーザー光の制御信号」を「レーザー光の制御信号」と称する。「レーザー光発振機102から発振されたレーザー光が音響光学素子103を通過する前のレーザー光の出力特性」を「音響光学素子103通過前のレーザー光の出力特性」と称する。「レーザー光発振機102から発振されたレーザー光が音響光学素子103を通過した後のレーザー光の出力特性」を「音響光学素子103通過後のレーザー光の出力特性」と称する。
図12(a)、図13(a)に示すように、レーザー光の制御信号のパルスPs1は矩形パルスである。図12(a)に示すように、レーザー光の制御信号は、レーザー光発振機102へのON/OFF信号が周期的に切り替えられることにより複数のパルスPs1を発生させる、いわゆるクロックパルスである。
図12(a)、図13(a)において、パルスPs1の山の部分は、レーザー光発振機102へON信号が送られた状態、即ちレーザー光発振機102からレーザー光が発振されるON状態である。パルスPs1の谷の部分は、レーザー光発振機102へOFF信号が送られた状態、即ちレーザー光発振機102からレーザー光が発振されないOFF状態である。
図12(a)に示すように、3つのパルスPs1が短い間隔で配置されることにより1つの集合パルスPL1が形成されている。3つの集合パルスPL1は、3つのパルスPs1の配置間隔よりも長い間隔で配置されている。例えば、隣り合う2つのパルスPs1の間の間隔は1msであり、隣り合う2つの集合パルスPL1の間の間隔は10msである。
尚、本実施形態では、3つのパルスPs1が短い間隔で配置されることにより1つの集合パルスPL1が形成される例を挙げて説明しているが、これに限らない。例えば、2つ又は4つ以上の複数のパルスが短い間隔で配置されることにより1つの集合パルスが形成されていてもよい。
また、複数のパルスが周期的に形成されることに限らず、1つのパルスが長い幅で形成される構成であってもよい。即ち、レーザー光発振機へのON信号からOFF信号まで一定の強度のレーザー光が所定の時間だけ発振される構成であってもよい。
図12(b)、図13(b)に示すように、音響光学素子103通過前のレーザー光の出力特性のパルスPs2は、立ち上がり部分G1と立ち下がり部分G2とを有する波形パルスである。
ここで、立ち上がり部分G1とは、パルスPs2のうちレーザー光の強度がゼロから対象物の切断に寄与する強度に達するまでの期間における部分を意味する。立ち下がり部分G2とは、レーザー光の出力特性のパルスPs2のうちレーザー光の強度が対象物の切断に寄与する強度からゼロに至るまでの期間における部分を意味する。対象物の切断に寄与する強度は、対象物の材質や厚み、レーザー光の出力値によって異なるが、一例として、図13(b)に示すように、レーザー光のピーク強度(100%)の50%の強度とする。
図12(b)、図13(b)に示すように、パルスPs2の立ち上がり部分G1の幅が立ち下がり部分G2の幅よりも長い。つまり、レーザー光発振機102から発振されるレーザー光の立ち上がり部分G1の時間がレーザー光の立ち下がり部分G2の時間よりも長い。例えば、立ち上がり部分G1の幅は45μsであり、立ち下がり部分G2の幅は25μsである。
尚、本実施形態では、パルスPs2の立ち上がり部分G1の幅が立ち下がり部分G2の幅よりも長い例を挙げて説明しているが、これに限らない。例えば、パルスPs2の立ち上がり部分G1の幅が立ち下がり部分G2の幅と概ね等しい場合、パルスPs2の立ち上がり部分G1の幅が立ち下がり部分G2の幅よりも短い場合、においても本発明を適用可能である。
図12(b)に示すように、3つのパルスPs2が図13(a)に示す3つのパルスPs1に対応する位置に配置されることにより1つの集合パルスPL2が形成されている。3つの集合パルスPL2は、図12(a)に示す3つの集合パルスPL1に対応する位置に配置されている。
図12(c)、図13(c)に示すように、音響光学素子103の制御信号のパルスPs3は矩形パルスである。図12(c)に示すように、音響光学素子103の制御信号は、レーザー光が音響光学素子103を通過するタイミングが周期的に切り替えられるように駆動ドライバ131への制御信号が周期的に切り替えられることにより複数のパルスPs3を発生させる、いわゆるクロックパルスである。
図12(c)、図13(c)において、パルスPs3の山の部分は、レーザー光を通過させる状態、即ちレーザー光を透過させる透光状態である。パルスPs3の谷の部分は、レーザー光を通過させない状態、即ちレーザー光を遮蔽する遮光状態である。
図13(c)に示すように、各パルスPs3の谷の部分が図13(b)に示す各パルスPs2の立ち上がり部分G1及び立ち下がり部分G2の双方に重なるように配置されている。
図13(c)に示すように、1つのパルスPs3に着目すると、パルスPs3の前側の谷の部分V1の幅がパルスPs2の立ち上がり部分G1の幅よりも大きく、且つ、パルスPs3の後側の谷の部分V2の幅がパルスPs2の立ち下がり部分の幅と概ね等しい。例えば、パルスPs3の前側の谷の部分V1の幅は45μs、パルスPs3の後側の谷の部分V2の幅は25μsである。このように、EBS130は、早い応答特性を持つスイッチ機能を有する。
これにより、レーザー光の立ち上がり部分G1と立ち下がり部分G2とを除去し、レーザー光の出力特性のパルスPs2のうちレーザー光の強度が対象物の切断に寄与する部分を選択的に取り出すことができる。
その結果、図12(d)、図13(d)に示すように、音響光学素子103通過後のレーザー光の出力特性のパルスPs4は、立ち上がり部分G1と立ち下がり部分G2とを有しない、シャープに突出したパルスとなる。
尚、本実施形態では、パルスPs3の前側の谷の部分V1の幅がパルスPs2の立ち上がり部分G1の幅よりも大きく、且つ、パルスPs3の後側の谷の部分V2の幅がパルスPs2の立ち下がり部分の幅と概ね等しい例を挙げて説明しているが、これに限らない。例えば、パルスPs3の前側の谷の部分V1の幅をパルスPs2の立ち上がり部分G1の幅と概ね等しくしたり、パルスPs3の後側の谷の部分V2の幅をパルスPs2の立ち下がり部分の幅よりも大きくしたりする等、必要に応じて適宜調整することができる。
図14は、IOR104の作用を説明するための図である。
図14の左段の図はピンホール143hを通過する前のレーザー光の強度分布を示す図である。図14の左段上段の図は平面図であり、図14の左段中段の図は斜視図であり、図14の左段下段の図は横軸を位置、縦軸を強度として示す図である。
図14の右段の図はピンホール143hを通過した後のレーザー光の強度分布を示す図である。図14の右段上段の図は平面図であり、図14の右段中段の図は斜視図であり、図14の右段下段の図は横軸を位置、縦軸を強度として示す図である。
図15は、比較例に係るレーザー光照射装置を用いて、対象物である偏光板を切断したときの切断面の拡大図である。
ここで、比較例に係るレーザー光照射装置は、ピンホール143hを通過する前のレーザー光をそのまま用いたレーザー光照射装置、即ちIOR104を備えていないレーザー光照射装置である。
図16は、本実施形態に係るレーザー光照射装置100を用いて、対象物である偏光板を切断したときの切断面の拡大図である。
図14の左段の図に示すように、ピンホール143hを通過する前のレーザー光の強度分布は、ビームの中心部において強度が強く、ビームの外周部において強度の弱い強度分布となっている。ビームの外周部のレーザー光の強度が小さくなると、ビームの外周部は対象物の切断に寄与しなくなる。
この場合、図15に示すように、比較例に係るレーザー光照射装置では、偏光板の切断面がテーパ形状となっていることが確認される。これは、偏光板をカットする際、レーザー光のビーム径の外周部がカットラインに沿う部分に熱影響を与えたことにより、偏光板のカット領域以外の部分が溶解したことが原因と考えられる。
これに対し、図14の右段の図に示すように、ピンホール143hを通過した後のレーザー光の強度分布は、レーザー光の強度分布のうち偏光板の切断には寄与しない裾の部分が除去されることにより、レーザー光の強度分布が理想的なガウシアン分布となる。ピンホール143hを通過した後のレーザー光の強度分布の半値幅は、ピンホール143hを通過する前のレーザー光の強度分布の半値幅よりも狭くなっている。
この場合、図16に示すように、本実施形態に係るIOR104を備えたレーザー光照射装置100では、偏光板の切断面が保持面に垂直になっていることが確認される。これは、偏光板をカットする際、レーザー光の強度分布のうち偏光板の切断に寄与する部分が偏光板に照射されることにより、偏光板のカット領域を選択的に溶断できたことによると考えられる。
図8に戻り、移動装置106は、テーブル101とスキャナー105とを相対移動させる。移動装置106は、第1スライダ機構161と、第2スライダ機構162と、を含む。第1スライダ機構161は、テーブル101を保持面101sに平行な第1の方向(X方向)に移動させるためのものである。第2スライダ機構162は、第1スライダ機構161を保持面101sに平行かつ第1の方向と直交する第2の方向(Y方向)に移動させるためのものである。
このような構成に基づき、移動装置106は、第1スライダ機構161及び第2スライダ機構162(以下、これらを総称してスライダ機構161、162と称する場合もある)の各々が内蔵するリニアモータ(不図示)を作動させてテーブル101を、XYの各方向へ移動させることが可能とされている。
上記スライダ機構161,162内においてパルス駆動されるリニアモータは、当該リニアモータに供給されるパルス信号によって出力軸の回転角度制御を精細に行うことができる。従って、スライダ機構161に支持されたテーブル101のXYの各方向上の位置を高精度に制御できる。尚、テーブル101の位置制御はパルスモータを用いた位置制御に限られず、サーボモータを用いたフィードバック制御や、その他任意の制御方法によって実現することもできる。
制御装置107は、レーザー光発振機102及び音響光学素子103(駆動ドライバ131)を制御するレーザー制御部171と、スキャナー105を制御するスキャナー制御部172と、移動装置106を制御するスライダ制御部173と、を有する。
具体的には、レーザー制御部171は、レーザー光発振機102のON/OFF、レーザー光発振機102から発振されるレーザー光の出力、レーザー光発振機102から発振されたレーザー光Lが音響光学素子103を通過するタイミング、駆動ドライバ131の制御を行う。
スキャナー制御部172は、第1照射位置調整装置151のアクチュエータ153、第2照射位置調整装置154のアクチュエータ156の各々駆動の制御を行う。
スライダ制御部173は、スライダ機構161,162の各々が内蔵するリニアモータの作動の制御を行う。
図17は、レーザー光照射装置100の制御システムの構成を示す図である。
図17に示すように、制御装置107には入力信号を入力可能な入力装置109が接続されている。入力装置109は、キーボード、マウス等の入力機器、あるいは外部の装置からのデータを入力可能な通信装置等を有する。制御装置107は、レーザー光照射装置100の各部の動作状況を示す液晶表示ディスプレイ等の表示装置を含んでいてもよいし、表示装置と接続されていてもよい。
ユーザーが入力装置109に加工データを入力することにより初期設定が完了すると、制御装置107のレーザー制御部171の制御に基づいて、レーザー光発振機102からレーザー光が発振される。この際、制御装置107のスキャナー制御部172の制御に基づいて、スキャナー105を構成するミラーの回転駆動が開始される。これと同時に、制御装置107のスライダ制御部173の制御に基づいて、スライダ機構161,162に設けられたモーターなどの駆動軸の回転数がロータリーエンコーダなどのセンサーにより検出される。
制御装置107は、各々の座標値をリアルタイムで補正して加工データと一致する座標にレーザー光が射出されるように、即ち、レーザー光が対象物110(図8参照)において所望の軌跡を描くように、移動装置106とスキャナー105とを制御する。例えば、レーザー光の走査を主として移動装置106によって行い、移動装置106で精度よくレーザー光の照射位置を制御できない領域をスキャナー105で調整する。
図18は、移動装置106によるテーブル101の動作を説明するための図である。
図18に示すように、テーブル101は、待機位置WP1と、スキャナー105の制御によるレーザー光の切断加工が行われる切断位置WP2と、の間において、第2スライダ機構162により第2の方向(Y方向)に沿って移動する。ここで、待機位置WP1とは、テーブル101の保持面101s上に外部から切断処理が施される対象物110を搬入する際の搬入待機位置、または切断処理が施された対象物110を保持面101s上から外部に搬出するための搬出待機位置を兼ねる。
尚、切断位置WP2とは、Z方向から平面視した場合において、保持面101sに保持された対象物110の少なくとも一部と、スキャナー105によるスキャン領域105s(図8参照)の少なくとも一部とが重なる状態となるテーブル101の第2の方向(Y方向)における位置をいう。
このような構成に基づき、テーブル101は、図18に示したように待機位置WP1において保持面101s(第1保持面101s1および第2保持面101s2)に2つの対象物110が搬入された後、保持面101sに保持した2つの対象物110を切断位置WP2に移動させる。テーブル101は、切断位置WP2において所定の切断処理が施された対象物110を待機位置WP1に移動させた後、待機位置WP1において対象物110を外部へと搬出させる。
テーブル101を用いた切断工程は、待機位置WP1において対象物110を搬入する搬入ステップと、待機位置WP1において搬入された対象物110を切断位置WP2に移動する往路移動ステップと、切断位置WP2にて所定の切断処理を行う切断ステップと、切断ステップ後、対象物110を切断位置WP2から待機位置WP1まで移動させる復路移動ステップと、復路移動ステップの後、対象物110を待機位置WP1から搬出させる搬出ステップと、を含む。
図19は、レーザー光照射装置100による切断処理としてテーブル101を用いた切断工程の動作フローを示す図である。図20は、テーブル101を用いた切断工程の動作を概念的に示した図である。
まず、テーブル101は、待機位置WP1において対象物110を搬入装置115(図18,20参照)から搬入する(図19に示す搬入ステップS1)。尚、搬入装置115は、レーザー光照射装置100の構成要素の一部であってもよいし、レーザー光照射装置100以外の装置の構成要素の一部であってもよい。
本実施形態においては、テーブル101が待機位置WP1から切断位置WP2に移動する前に、切断位置WP2に対する対象物110の相対位置を検出し、検出結果に基づいて相対位置を補正するアライメント処理が行われる(図19に示すアライメントステップS2)。
アライメント後、テーブル101は、待機位置WP1において搬入された対象物110を切断位置WP2に移動する(図19に示す切断位置移動ステップ(往路移動ステップ)S3)。
切断位置WP2への移動後、保持面101sの対象物110に後述するような所定の切断処理を行う(図19に示す切断ステップS4)。切断処理後、テーブル101は、切断処理が施された対象物110を搬出装置116(図18,20参照)に搬出させる待機位置WP1まで移動する(図19に示す搬出位置移動ステップ(復路移動ステップ)S5)。尚、搬出装置116は、レーザー光照射装置100の構成要素の一部であってもよいし、レーザー光照射装置100以外の装置の構成要素の一部であってもよい。
待機位置WP1に移動した後、テーブル101の保持面101sから対象物110が搬出装置116により搬出される(図19に示す搬出ステップS6)。
搬入ステップS1においては、図20(a)に示すように、搬入装置115が待機位置WP1にあるテーブル101の保持面101sに対象物110を搬入する。搬入装置115は、搬入コンベア部115bと、搬入コンベア部115b上の対象物110を吸着保持して搬送する保持部115aを含む。保持部115aは、2つの対象物110を同時に保持した状態で保持面101s(第1保持面101s1および第2保持面101s2)に受け渡し可能である。搬入コンベア部115bは、例えばベルトコンベア等から構成される。
搬入ステップS1の後、アライメントステップS2においては、図20(b)に示すように、対象物検出装置117が待機位置WP1から切断位置WP2に移動するに先立ち、対象物110を検出する。対象物検出装置117は、対象物110を撮像する検出カメラ117aを含み、検出カメラ117aを用いて切断位置WP2に対する対象物110の相対位置を検出する。尚、アライメントステップS2は、例えば、搬入装置115による保持面101sへの搬入精度が極めて高い場合においては、必ずしも必要ではなく、省略しても良く、これによれば対象物検出装置117が不要となるので装置構成の簡略化及び低コスト化を実現できる。
まず、検出カメラ117aは、保持面101sのうち、切断位置WP2側の第1保持面101s1に保持された対象物110を検出する。対象物検出装置117は、検出カメラ117aの検出結果を制御装置107(図17参照)に送信する。制御装置107は、検出カメラ117aからの検出結果に基づいて、切断位置WP2(スキャナー105)に対する対象物110にズレが生じている場合、対象物110の位置を補正するアライメント処理を行う。制御装置107は、位置補正部を駆動し、保持面101sに保持される対象物110の位置を補正する。位置補正部は、例えば、複数のピンを対象物110の少なくとも3つの側面に当接させることで保持面101sに保持される対象物110の位置を補正する。尚、対象物110の位置を補正する際、テーブル101は移動を停止している。
切断位置WP2側の第1保持面101s1に保持された対象物110のアライメントが終了した後、テーブル101は切断位置WP2側に移動する。検出カメラ117aは、切断位置WP3と反対側の第2保持面101s2に保持された対象物110を検出し、制御装置107に検出結果を送信する。制御装置107は、検出カメラ117aからの検出結果に基づいて、切断位置WP2(スキャナー105)に対する対象物110にズレが生じている場合、対象物110の位置を補正するアライメント処理を行う。同様に、制御装置107は、不図示の位置補正部を駆動し、保持面101sに保持される対象物110の位置を補正する。
尚、本実施形態では、待機位置WP1にテーブル101が位置する場合に、アライメントステップS2を行う場合を例に挙げたが、これに限定されず、アライメントステップS2はテーブル101が待機位置WP1から切断位置WP2に移動するまでの途中に行うようにしてもよい。
アライメントステップS2の後、切断位置移動ステップS3においては、図20(c)に示すように、テーブル101が切断位置WP3に移動する。その後、切断ステップS4において、スキャナー105を介してレーザー光を照射することで保持面101sの対象物110に後述するような所定の切断処理が行われる。切断ステップS4において、テーブル101は、第1保持面101s1に保持された対象物110、および第2保持面101s2に保持された対象物110の順に切断処理が行われるように移動する。
切断ステップS4の後、搬出位置移動ステップS5においては、図20(d)に示すように、テーブル101が待機位置WP1に移動する。その後、搬出ステップS6においては、図20(e)に示すように、搬出装置116が待機位置WP1にあるテーブル101の保持面101sから対象物110を搬出する。搬出装置116は、対象物110を吸着保持して搬送する保持部116aと、保持部116aにより保持面101sから搬出された対象物110を受け取る受取部116bとを含む。保持部116aは、2つの対象物110を同時に保持した状態で保持面101s(第1保持面101s1および第2保持面101s2)から搬出可能である。受取部116bは、例えばベルトコンベア等から構成され、保持部116aから受け取った対象物110を所定方向に搬送可能である。
図21は、第1検出装置41の模式図である。
図21に示すように、第1検出装置41は、対象物110の画像を撮像する撮像装置43と、対象物110を挟んで撮像装置43とは反対側から対象物110を照明する照明装置44と、を備えている。
図22は、撮像装置43を用いて対象物110を撮像する様子を示す模式図である。まず、図22(a)に示すように、撮像装置43を用いて、対象物110における液晶パネルPの周辺を撮像する。
スキャナー105(切断装置)は、対象物110が有するシート片FXmを、液晶パネルPが有する表示領域との対向部分である光学部材Fと、光学部材Fの外側の余剰部分と、に切り離す。制御装置107(図17参照)は、撮像装置43で撮像した画像に基づいてスキャナー105を制御する。
対象物110は、液晶パネルPと液晶パネルPに貼合されたシート片FXmとを有している。液晶パネルPは、第2基板P2および第1基板P1で挟持された液晶層P3(図2参照)を有している。また、液晶パネルPは、第2基板P2が第1基板P1よりも平面視面積が小さく、両者を重ね合せたときに第1基板P1の一端側が平面視で露出している。第1基板P1の露出する領域P5には端子部P6が設けられている。
図22(b)は、液晶パネルPの一部平面図である。図2(b)においては、便宜上、第2基板P2の4つの辺EA,EB,EC,EDのうち辺EAを示す。本実施形態の液晶パネルPは、多面取りで製造されている。そのため、図22(b)に示すように第2基板P2の角部(例えば、辺EAの両端の角部C1,C2)近傍EA1,EA2は、辺EAの中央部EA3と比べて、バリや欠けが生じ直線状になっていない。近傍EA1、EA2の長さは、例えば4インチディスプレイ用の液晶パネルにおいては、経験的に5mm程度である。
シート片FXmは、第2基板P2の表面に貼合されている。図に示す対象物110においては、シート片FXmは平面視矩形を有し、第2基板P2よりも広い平面視面積を有している。
このような対象物110について、撮像装置43を用い、第2基板P2を含む撮像領域ARを撮像する。撮像装置43は、第2基板P2の4つの辺EA,EB,EC,EDのうち端子部P6に沿う辺EC(又は辺EA)と平行な方向(第1の方向)に配列された複数の撮像素子を含むラインカメラである。例えば、撮像素子はCCD(Charge Coupled Device)である。撮像装置43は、辺ECに隣接する辺EB(又は辺ED)と平行な方向(第2の方向)に移動して、平面視で第2基板P2を含む画像(以下、対向基板画像と称することがある。)を撮像する。
尚、撮像装置43の移動方向はこれに限らない。例えば、撮像装置43は、辺EB(又は辺ED)と平行な方向に配列された複数の撮像素子を含み、辺EBに隣接する辺EC(又は辺EA)と平行な方向に移動して対向基板画像を撮像してもよい。すなわち、撮像装置43は、第2基板P2の表面の法線方向から見て、第1の方向に配列された複数の撮像素子を含み、第1の方向と直交する第2の方向に移動して対向基板画像を撮像するように構成されていればよい。
その際、図21に示す照明装置44を用い、対象物110を挟んで撮像装置43とは反対側から光Lを照射し、対象物110を照明する。これにより、撮像装置43と同じ側から対象物110を照明した場合と比べ、シート片FXmで生じる反射光によるハレーションを抑制することができ、後述する解析に適した画像を撮像することができる。
撮像装置43で撮像した画像の画像データは、制御装置40に入力され、次の処理(画像処理、演算)がなされる。
(第1の処理)
まず、第1の処理として、画像データから、対象物110が有する液晶パネルPを、図22に示す第2基板P2側から平面視したときの、第2基板P2の輪郭線を強調する処理を行う。
例えば、対象物110を平面視したとき第2基板P2とシート片FXmとが重なっている領域(第1の領域)と、第2基板P2からはみ出たシート片FXmのみの領域(第2の領域)と、では光の透過率が異なるため、撮像した画像においては第1の領域よりも第2の領域の方が明るい像となる。そのため、撮像した画像を二値化すると、第1の領域が明領域(白)、第2の領域が暗領域(黒)となり、明暗の境界として第2基板P2の輪郭線が明らかとなる。
尚、二値化する際の階調値の閾値は、貼合するシート片FXmの種類や、撮像する位置の液晶パネルPの構造等に応じて適切な値が異なるため、適宜予備実験をして設定するとよい。
(第2の処理)
図23は、図22における撮像装置43で撮像した画像のうち角部の近傍を示す模式図である。図23においては、便宜上、辺EAと辺EBとを含む角部の近傍を示す。図23では、第1の領域を符号AR1、第2の領域を符号AR2として示している。第2の処理として、図23に示すように、第1の画像処理において二値化した画像データ(以下、二値化データと称する)に基づいて、第2基板P2の輪郭線(辺)と重なる複数の点Dの座標を検出する。
まず、撮像装置43によって撮像された対向基板画像によって求められる第2基板P2の輪郭線のうち予め設定した基準を満たさない第1の部分を除く。具体的に、図23に示す角部の近傍EA1,EB1(第1の部分)では第2基板P2にバリや欠けが生じ、各辺(図23では辺EA,EB)のそれぞれが直線状となっていない。そのため、点Dの検出の際には、近傍EA1,EB1(角部の近傍として予め定めた範囲)を検出範囲に含まないように設定する。検出範囲から除外する近傍EA1,EB1の範囲は、経験的または実験的に求められる値にしたがって、適宜設定することができる。
次に、各辺(図23では辺EA,EB)のそれぞれにおいて、第2基板P2の輪郭線のうち近傍EA1,EB1を除いた中央部EA3,EB3(第2の部分)について、第2基板P2の輪郭線に重なる複数の点Dの座標を検出する。
検出する座標の座標軸は、例えば、二値化データの左上端を原点とし、画像の右方向を+方向とするX軸、画像の下方向を+方向とするY軸を設定する。尚、撮像装置43で撮像した画像において、第2基板P2の角部を挟む2つの辺(輪郭線)が、撮像される画像の外周の辺と略平行になっていない場合には、適宜画像データ(または二値化データ)から解析に適した任意の領域を切り出す処理(トリミング処理)を行い、処理後の画像について第2の処理を行っても構わない。
点Dの座標を検出する際には、例えば、二値化データに基づく画像のX軸方向の任意の位置(x1)において、上端から+Y方向に階調を検出したときに、白(第1の領域)から黒(第2の領域)に変化する位置のY方向の位置(y1)から、点Dの座標(x1,y1)を求めることができる。このような処理を、第2基板P2の4つの辺EA,EB,EC,EDのそれぞれにおいて行い、各辺において辺に重なる複数の点Dの座標を検出する。
尚、検出する点Dの数は、多い方が望ましいが、後述する演算処理の処理負担が過大とならないような数を設定するとよい。例えば、4つの辺EA,EB,EC,EDそれぞれにおいて、100個の点Dを検出するとよい。
(第3の処理)
第3の処理として、第2の処理で検出した複数の点Dの座標から、点Dと重なる辺に対応する直線を近似して求める。近似としては、通常知られた統計学的手法を用いることができ、例えば、最小二乗法を用いた回帰直線(近似直線)を求める近似方法を挙げることができる。
図24は、第3の処理で求めた近似直線L1を示すグラフであり、近似直線L1をY=0として示した図である。図24においては、便宜状、辺EAにおいて求める近似直線L1を示す。
ここで、図において、+y側にプロットされた点D1や、−y側にプロットされた点D2は、他の点Dと比べて近似直線L1からの離間距離が大きく、近似直線L1の算出結果に大きな影響を与えていると考えられる。このような場合、点D1および点D2を除外した残りの点を用いて、再度近似直線を求めることとしてもよい。
また、除外する点Dは図24に示すように2つとは限らない。近似直線L1と点Dとの距離(図24における点DとのY座標の絶対値)について閾値を定め、Y座標の絶対値が閾値よりも大きい点Dについては除外して再度近似直線を求めることとしても構わない。閾値については、経験的または実験的に求められる値にしたがって、適宜設定することができる。
このようにして求められる近似直線を、撮像した画像に含まれる4辺EA,EB,EC,EDのそれぞれについて行う。以下の説明では、辺EAにおいて求めた近似直線をL1、辺EBにおいて求めた近似直線をL2、辺ECにおいて求めた近似直線をL3、辺EDにおいて求めた近似直線をL4と称することがある。
(第4の処理)
第4の処理として、撮像装置43で撮像した対向基板画像に含まれる4辺についてそれぞれ求めた近似直線L1,L2,L3,L4を用いて、近似直線L1,L2,L3,L4を結んで得られる図形を、第2基板P2の輪郭線(近似輪郭線)として仮定して求める。
図25は、近似輪郭線OLを求めた模式図である。
図25に示すように、第3の処理で求めた近似直線L1,L2,L3,L4を結ぶことで、近似輪郭線OLを求めることができる。
図26は、スキャナー105を用いて対象物110のシート片FXmを切断する様子を示す模式図である。制御装置40は、スキャナー105を制御し、上述のようにして求めた近似輪郭線OLに基づいてレーザー光LBを射出してシート片FXmを切断し、光学部材F1Xと余剰部分FYとを切り離す。
尚、シート片FXmの余剰部分FYの大きさ(液晶パネルPの外側にはみ出る部分の大きさ)は、液晶パネルPのサイズに応じて適宜設定される。例えば、シート片FXmを5インチ〜10インチの中小型サイズの液晶パネルPに適用する場合は、シート片FXmの各辺においてシート片FXmの一辺と液晶パネルPの一辺との間の間隔を2mm〜5mmの範囲の長さに設定する。
図27は、切断処理としてスキャナー105及びテーブル101を用いた切断工程の動作フローを示す図である。尚、図27に示す動作フローは、図19で示した動作フローのうち切断ステップS4の具体的な動作フローである。
まず、保持面101sに対象物110を固定する(図27に示すステップS41)。次に、保持面101sの対象物110について対向基板画像を撮像する(図27に示すステップS42)。次に、撮像した対向基板画像に基づいて、近似輪郭線OLを作成する(図27に示すステップS43)。次に、近似輪郭線OLに基づいて、切断処理を行う(図27に示すステップS44)。切断処理は、スキャナー105とテーブル101とを連動させて行う。すなわち、スキャナー105を制御するとともに(図27に示すステップS441)、テーブル101を制御することにより(図27に示すステップS442)、対象物110におけるシート片FXmの切断処理を行う。
図28は、切断装置としてレーザー光照射装置100を用いてシート片FXmを所定サイズの光学部材F1Xに切断する際、レーザー光をシート片FXm上で矩形状に走査するための制御方法を示す図である。
尚、図28において、符号Trは目的とするレーザー光の移動軌跡(所望の軌跡。以下、レーザー光移動軌跡ということがある)であり、符号Tr1はテーブル101とスキャナー105との相対移動による移動軌跡をシート片FXmに投影した軌跡(以下、光源移動軌跡ということがある)である。光源移動軌跡Tr1は矩形形状を有するレーザー光移動軌跡Trの4つの角部を湾曲させた形状であり、符号K1は角部以外の直線区間であり、符号K2は角部の屈曲区間である。符号Tr2はスキャナー105が光源移動軌跡Tr1上を相対移動しているときにレーザー光の照射位置が第1照射位置調整装置151および第2照射位置調整装置154により光源移動軌跡Tr1と直交する方向にどの程度ずらされるか(調整されているか)を示す曲線(以下、調整曲線ということがある)である。レーザー照射位置のずれ量(調整量)は、光源移動軌跡Tr1と直交する方向における調整曲線Tr2とレーザー光移動軌跡Trとの間の距離で示されている。
図28に示すように、光源移動軌跡Tr1は、角部が湾曲した略矩形の移動軌跡となっている。光源移動軌跡Tr1とレーザー光移動軌跡Trとは概ね一致しており、角部の狭い領域でのみ両者の形状が異なっている。光源移動軌跡Tr1が矩形形状をしていると、矩形の角部でスキャナー105の移動速度が遅くなり、角部がレーザー光の熱によって膨れたり波打ったりすることがある。そのため、図28では、光源移動軌跡Tr1の角部を湾曲させてスキャナー105の移動速度が光源移動軌跡Tr1全体で概ね一定となるようにしている。
制御装置107は、スキャナー105が直線区間K1を移動しているときは、光源移動軌跡Tr1とレーザー光移動軌跡Trとが一致しているので、レーザー光の照射位置を第1照射位置調整装置151および第2照射位置調整装置154により調整せずに、そのままスキャナー105からシート片FXmにレーザー光を照射させる。一方、スキャナー105が屈曲区間K2を移動しているときは、光源移動軌跡Tr1とレーザー光移動軌跡Trとが一致しないので、第1照射位置調整装置151および第2照射位置調整装置154によりレーザー光の照射位置を制御し、レーザー光の照射位置がレーザー光移動軌跡Tr上に配置されるようにする。例えば、スキャナー105が符号M1で示す位置を移動しているときには、第1照射位置調整装置151および第2照射位置調整装置154によりレーザー光の照射位置が光源移動軌跡Tr1と直交する方向N1に距離W1だけずらされる。距離W1は、光源移動軌跡Tr1と直交する方向N1における調整曲線Tr2とレーザー光移動軌跡Trとの距離W2と同じである。光源移動軌跡Tr1はレーザー光移動軌跡Trよりも内側に配置されているが、レーザー光の照射位置が第1照射位置調整装置151および第2照射位置調整装置154によってレーザー光移動軌跡Trよりも外側にずらされるので、それらのずれが相殺してレーザー光の照射位置がレーザー光移動軌跡Tr上に配置されるようになる。
以下、本実施形態に係る切断処理の作用効果について、図29(a)、(b)及び図30(a)、(b)を用いて説明する。
図29(a)、(b)は比較例に係る切断処理の説明図である。図30(a)、(b)は本実施形態に係る切断処理の説明図である。
尚、図29(a)、(b)及び図30(a)、(b)においては、便宜上、対象物110を構成するシート片FXmの図示を省略し、液晶パネルPのみを図示している。
図29(a)に示すように、比較例においては、先ず、外形形状の検出の方法として、平面視において液晶パネルPの四隅(角部)を含む領域CA1,CA2,CA3,CA4のそれぞれを撮像する。次に、図29(b)に示すように、撮像結果に基づいて、液晶パネルPの四隅を求め、求めた四隅をつないだ矩形を液晶パネルPの外周形状とする。
そのため、液晶パネルPにおいて角部にバリや欠けが生じていると、液晶パネルPの外周形状の検出時に、バリや欠けによる影響を受けやすい。その結果、図29(b)に示すように、カットラインが実際の輪郭線から大きくずれてしまう。例えば、領域CA1,CA3においてバリが顕著に生じていると、領域CA1,CA3ではバリの先端部を液晶パネルPの角部として認識してしまう場合がある。この場合、求めた四隅をつないだ台形が液晶パネルPの外周形状とされてしまう。
これに対し、本実施形態においては、図30(a)に示すように、撮像装置43としてラインカメラを用い、撮像装置43を方向Vに移動させて、対向基板画像を撮像する。次に、撮像装置43によって撮像された対向基板画像によって求められる第2基板P2の輪郭線のうち予め設定した基準を満たさない第1の部分(バリや欠けが生じている角部)を除く。次に、各辺のそれぞれにおいて、第2の部分(バリや欠けが生じていない中央部)について、第2基板P2の輪郭線に重なる複数点の座標を検出する。次に、検出した複数点の座標から、近似直線L1,L2,L3,L4を求める。そして、図30(b)に示すように、近似直線L1,L2,L3,L4を結ぶことで、近似輪郭線OLを求める。
そのため、液晶パネルPにおいて角部にバリや欠けが生じていても、液晶パネルPの外周形状の検出時に、バリや欠けによる影響を受けにくい。その結果、図30(b)に示すように、カットラインが実際の輪郭線から大きくずれることを抑制することができる。
以上説明したように、本実施形態の本実施形態のフィルム貼合システム1によれば、第2基板P2の輪郭線のうち予め基準を満たさない部分を除いた部分に基づいてカットライン(近似輪郭線OL)が作成されるため、カットラインが実際の輪郭線から大きくずれることを抑制することができる。これにより、周縁部のバリや欠けによる影響を排除した液晶パネルPの外周形状の検出を行い、この外周形状に合わせた光学部材F1Xの加工が可能となる。
また、狭額縁化された光学表示デバイスを容易に生産することができる。
また、第1切断装置31および第2切断装置32が上述したレーザー光照射装置によって構成されているため、シート片F1m,F2mをシャープに切断でき、カット品質の低下を抑制することができる。
また、制御装置107の制御により、シート片FXmにおいて所望のレーザー光移動軌跡Trを描くように、移動装置106とスキャナー105とが制御される。この構成においては、第1照射位置調整装置151および第2照射位置調整装置154により調整すべきレーザー光の照射区間は狭い屈曲区間K2のみである。それ以外の広い直線区間K1は、移動装置106によるテーブル101の移動によってレーザー光がシート片FXm上を走査される。本実施形態では、レーザー光の走査を主として移動装置106によって行い、移動装置106で精度よくレーザー光の照射位置を制御できない領域のみ第1照射位置調整装置151および第2照射位置調整装置154で調整している。そのため、移動装置106のみ又はスキャナー105のみでレーザー光を走査する場合に比べてレーザー光の照射位置を広い範囲で精度よく制御することができる。
また、液晶パネルPの外側にはみ出るサイズのシート片F1m,F2mを液晶パネルPに貼合した後に、シート片F1m,F2mの余剰部分を切り離すことで、貼合面に対応するサイズの光学部材F11,F12を液晶パネルPの面上で形成することができる。これにより、光学部材F11,F12を貼合面の際まで精度よく設けることができ、表示領域P4外側の額縁部を狭めて表示エリアの拡大及び機器の小型化を図ることができる。
また、液晶パネルPの外側にはみ出るサイズのシート片F1m,F2mを液晶パネルPに貼合することで、シート片F1m,F2mの位置に応じてその光学軸方向が変化する場合でも、この光学軸方向に合わせて液晶パネルPをアライメントして貼合することができる。これにより、液晶パネルPに対する光学部材F11,F12の光学軸方向の精度を向上させることができ、光学表示デバイスの精彩及びコントラストを高めることができる。
また、切断装置31,32が、シート片F1m,F2mをレーザーカットすることで、シート片F1m,F2mを刃物でカットする場合と比べて、液晶パネルPに力が及ばず、クラックや欠けが生じ難くなり、液晶パネルPの安定した耐久性を得ることができる。
また、シート片FXmを第2基板P2の縁に略沿って切断することができ、狭額縁化された液晶パネルPに対して好適に光学部材Fを貼合することができる。さらに、必要に応じて、上述した装置を用いて複数種の光学部材を液晶パネルPに貼合し、液晶パネルPに光学部材が貼合されてなる光学表示デバイスを得ることができる。
また、テーブル101の保持面101sに複数(本実施形態では2つ)の対象物110を保持する構成を採用するため、切断位置WP2に複数の対象物110を順次供給することができる。これにより、対象物110に対する切断処理を効率的に行うことができ、処理量を増大させることができる。
尚、本実施形態においては、近似輪郭線OLに沿ってシート片FXmを切断することとしたが、これに限らず、例えば、近似輪郭線OLの内側の領域であって、液晶パネルPの額縁部と重なる位置においてシート片FXmを切断することとしてもよい。その場合は、制御装置40において、算出される近似輪郭線に基づき、近似輪郭線で描かれる形状よりも所定の大きさだけ小さい形状を真の切断部分として算出した後に、この真の切断部分に沿ってシート片FXmを切断するようにスキャナー105を制御するとよい。
このような真の切断部分を示す形状としては、近似輪郭線OLで描かれる形状を既定の縮尺率で縮小した相似形状であってもよく、近似輪郭線OLで描かれる形状から既定の幅だけ内側に縮めた形状であってもよい。
また、本実施形態においては、撮像装置43を用いて、対象物110が有する液晶パネルPを、第2基板P2側から平面視した画像を撮像することとして図示し、説明したが、これに限らない。
液晶パネルPを多面取りで成形した際には、液晶パネルPを構成する上下基板間に、端部の位置のズレが生じることがある。図3に示す液晶パネルPが、このようなズレを有し、撮像装置43に近い第2基板P2の縁よりも撮像装置43から遠い第1基板P1の縁が外側に配置される場合には、撮像装置43を用いて平面視した画像を撮像すると、第1基板P1の縁が第2基板P2の縁として誤認され、第2基板P2の輪郭線に沿った近似輪郭線を求めることが困難となる。
このような場合、撮像装置43を、第2基板P2の法線に対して第2基板P2の内側に傾斜させ、第2基板P2の内側から第2基板P2の画像を撮像することとするとよい。このように撮像すると、第1基板P1が、第2基板P2に隠れた状態で撮像されるため、第1基板P1の縁を第2基板P2の縁として誤認することなく、第2基板P2の像を確実に撮像することができる。
撮像装置43の傾斜角度は、各液晶パネルPにおける第2基板P2と第1基板P1とのズレ量に応じて都度変更してもよい。また、経験的にズレ量の最大値が分かっている場合には、最大のズレが生じたとしても第2基板P2によって第1基板P1を隠すことができる傾斜角度を求め、得られた傾斜角度だけ撮像装置43を傾斜させて撮像することとするとよい。
また、本実施形態においては、対象物にレーザー光を照射して所定の加工を行う構成として、シート片を切断する構成を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、シート片を少なくとも二つに分割することの他に、シート片に貫通する切れ目を入れることやシート片に所定の深さの溝(切れ込み)を形成すること等も包含されていることとする。
より具体的には、例えば、シート片の端部の切断(切り落とし)、ハーフカット、マーキング加工等も含まれることとする。
また、本実施形態においては、光学部材シートFXをロール原反から引き出し、液晶パネルPに液晶パネルPの外側にはみ出るサイズのシート片FXmを貼合した後、シート片FXmから液晶パネルPの貼合面に対応する大きさの光学部材F1Xに切り出す場合を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ロール原反を用いずに、液晶パネルPの外側にはみ出るサイズに切り出された枚葉状の光学フィルムチップを液晶パネルに貼合する場合においても本発明を適用することができる。
また、本実施形態においては、レーザー光照射装置から照射されるレーザー光の描画軌跡が平面視矩形形状(正方形形状)である場合を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、レーザー光照射装置から照射されるレーザー光の描画軌跡が平面視三角形形状であってもよいし、平面視五角形以上の多角形形状であってもよい。また、これに限らず、平面視星型形状、平面視幾何学的形状であってもよい。また、平面視円形や楕円形等の曲線を含む形状であってもよい。このような描画軌跡においても本発明を適用することが可能である。
また、本実施形態においては、テーブル101が2つの対象物110を保持する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、テーブルが1の対象物110を保持可能な構成であってもよいし、3つ以上の対象物110を保持可能な構成であってもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。