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JP6016390B2 - 真空ポンプおよび真空ポンプの製造方法 - Google Patents

真空ポンプおよび真空ポンプの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、駆動機の回転軸に取付けられるロータを有する真空ポンプに関する。
一般に、駆動機に取り付けられるケーシング本体と、このケーシング本体に形成されて当該ケーシング本体の両端に開口を有する中空形状のシリンダ室と、駆動機の回転軸に設けられて当該シリンダ室内を回転駆動されるロータと、シリンダ室の開口を塞ぐ一対のサイドプレートとを備える真空ポンプが知られている。この種の真空ポンプは、例えば、自動車のブレーキ倍力装置を作動させるための真空を発生させるために使用され、ケーシングのシリンダ室内でロータを電動モータ等の駆動機で駆動することによって真空を得ることができる(例えば、特許文献1参照)。
米国特許第6491501号明細書
ところで、自動車のブレーキ倍力装置を作動させるような小型の真空ポンプでは、小型で軽量のロータが使用されているため、ロータは回転軸に対して固定されておらず、回転軸の軸方向に移動自在に設けられていた。さらに、ロータは回転軸の先端部に設けられているため、駆動機を駆動させてロータを回転させた場合、このロータが回転に伴い回転軸の先端側に移動して突出しやすい状況にあった。このため、真空ポンプの運転中に、ロータが前側(回転軸の先端側)のサイドプレートと接触することにより、これらロータ及びサイドプレートが摩耗で損傷し、真空ポンプの耐久性が低下するといった問題が想定された。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成でロータ及びサイドプレートの損傷を抑制して真空ポンプの耐久性の低下を防止することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、駆動機の回転軸に設けられてシリンダ室内を回転駆動されるロータを備える真空ポンプにおいて、前記回転軸は、先端部に軸方向に設けられた穴部を備え、当該回転軸を前記ロータの軸孔に挿入した状態で、前記穴部に圧入されて前記ロータを前記回転軸に固定させる圧入部材を備え、前記ロータの軸孔は、前記回転軸が挿入される挿入部と、この挿入部よりも前記ロータの前端側に位置し、前記回転軸よりも径の小さい小径部とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、回転軸に設けられた穴部に圧入部材が圧入されるため、回転軸の一部が拡げられるように変形し、当該回転軸とロータとを固定することにより、ロータが回転軸のラジアル方向及びスラスト方向に移動することが規制される。このため、ロータとサイドプレートとの接触が簡単な構成で防止されることにより、当該ロータ及びサイドプレートの摩耗が抑制され、真空ポンプの耐久性を向上させることができる。
また、ロータの前端側の軸孔は、回転軸よりも径が小さく形成されることにより、このロータを回転軸に対して前後反対に組み付けることが防止され、組み付け効率の向上を図ることができる。
この構成において、本発明は、前記圧入部材は、圧入方向の先端側に向けて縮径していることを特徴とする。この構成によれば、圧入部材を回転軸の穴部へ容易に圧入することができ、組み付け作業を容易に行うことができるとともに、回転軸に対するロータのスラスト方向への移動を確実に規制することができる。
また、本発明は、駆動機に取り付けられるケーシング本体と、このケーシング本体に形成されて当該ケーシング本体の両端に開口を有する中空形状のシリンダ室と、前記駆動機の回転軸に設けられて前記シリンダ室内を回転駆動されるロータと、前記シリンダ室の前記開口を塞ぐ一対のサイドプレートとを備える真空ポンプの製造方法において、 前記回転軸は、先端部に軸方向に設けられた穴部を備え、当該回転軸を前記ロータの軸孔に挿入した状態で、前記穴部に圧入されて前記ロータを前記回転軸に固定させる圧入部材を備え、前記ロータの軸孔は、前記回転軸が挿入される挿入部と、この挿入部よりも前記ロータの前端側に位置し、前記回転軸よりも径の小さい小径部とを備え、前記駆動機側に位置する前記サイドプレートに当接するまで前記ロータを前記回転軸に挿入し、この状態で前記圧入部材を圧入荷重が所定の閾値を超えるまで、前記回転軸の前記穴部に圧入して当該ロータを前記回転軸に固定させたことを特徴とする。
この構成によれば、回転軸に設けられた穴部に圧入部材が圧入されるため、回転軸の一部が拡げられるように変形し、当該回転軸とロータとを固定することにより、ロータが回転軸のラジアル方向及びスラスト方向に移動することが規制される。このため、ロータとサイドプレートとの接触が簡単な構成で防止されることにより、当該ロータ及びサイドプレートの摩耗が抑制され、真空ポンプの耐久性を向上させることができる。
また、回転軸に対するロータの位置決めを容易に行うことができ、圧入部材を所定の基準値を超えるまで、回転軸の穴部に圧入することにより、この基準値を超えたか否かでロータの組み付けが完了したことを容易に判断することができ、熟練者でなくてもポンプの組み付け作業を短時間で行うことができる。
また、前記ロータの軸孔は、前記回転軸が挿入される挿入部と、この挿入部よりも前記ロータの前端側に位置し、前記回転軸よりも径の小さい小径部とを備えることで、ロータの前端側の軸孔は、回転軸よりも径が小さく形成されることにより、このロータを回転軸に対して前後反対に組み付けることが防止され、組み付け効率の向上を図ることができる。
本発明によれば、前記回転軸は、先端部に軸方向に設けられた穴部を備え、当該回転軸を前記ロータの軸孔に挿入した状態で、前記穴部に圧入されて前記ロータを前記回転軸に固定させる圧入部材を備えたため、圧入部材が穴部に圧入されることで回転軸の一部が拡げられるように変形し、当該回転軸とロータとを固定することにより、ロータが回転軸のラジアル方向及びスラスト方向に移動することが規制される。このため、ロータとサイドプレートとの接触が簡単な構成で防止されることにより、当該ロータ及びサイドプレートの摩耗が抑制され、真空ポンプの耐久性を向上させることができる。
本実施形態に係る真空ポンプを使用したブレーキ装置の概要図である。 真空ポンプの側部部分断面図である。 真空ポンプをその前側から見た図である。 ロータと出力軸との連結構造を示す部分側断面図である。 ロータと出力軸との連結構造を示す分解側面図である。 変形例にかかるロータと出力軸との連結構造を示す部分側断面図である。
以下、図面を参照して、本発明に係る好適な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る真空ポンプ1を負圧源として使用したブレーキ装置100の概要図である。ブレーキ装置100は、例えば、自動車等の車両の左右の前輪に取り付けられたフロントブレーキ2a,2b、及び左右の後輪に取り付けられたリアブレーキ3a,3bを備えている。これらの各ブレーキは、マスターシリンダ4とブレーキ配管9によりそれぞれ接続されており、マスターシリンダ4からブレーキ配管9を介して送られる油圧によって各ブレーキが作動する。
また、ブレーキ装置100は、ブレーキペダル5と連結されたブレーキブースター(ブレーキ倍力装置)6を備え、このブレーキブースター6には、空気配管8を介して、真空タンク7及び真空ポンプ1が直列に接続されている。ブレーキブースター6は、真空タンク7内の負圧を利用してブレーキペダル5の踏力を倍力するものであり、小さな踏力でマスターシリンダ4のピストン(図示せず)を移動させることにより、十分なブレーキ力を引き出せるようになっている。
真空ポンプ1は、車両のエンジンルーム内に配置され、真空タンク7内の空気を車両外部へ排出し、当該真空タンク7内を真空状態とする。なお、自動車等に用いる真空ポンプ1の使用範囲は、例えば、−60kPa〜−80kPaである。
図2は、真空ポンプ1の側部部分断面図であり、図3は、図2の真空ポンプ1をその前側(同図中の右側)から見た図である。ただし、図3は、シリンダ室Sの構成を示すべく、ポンプカバー24、サイドプレート26等の部材を取り外した状態を図示している。なお、以下では、説明の便宜上、図2および図3の上部にそれぞれ矢印で示す方向が、真空ポンプ1の上下前後左右を示すものとして説明する。また、前後方向については軸方向、左右方向については幅方向ともいう。
図2に示すように、真空ポンプ1は電動モータ(駆動機)10と、この電動モータ10を駆動源として作動するポンプ本体20とを備えており、これら電動モータ10及びポンプ本体20が一体に連結された状態で自動車等の車体に固定支持されている。
電動モータ10は、略円筒形状に形成されたケース11の一方の端部(前端)の略中心からポンプ本体20側(前側)に向かって延びる出力軸(回転軸)12を有している。出力軸12は、ポンプ本体20を駆動する駆動軸として機能するものであり、前後方向に延びる回転中心X1を基準として回転する。出力軸12の先端部12Aには、ポンプ本体20のロータ27が一体に回転可能に連結される。
電動モータ10は、電源(図示略)の投入により、出力軸12が、図3中の矢印R方向(反時計回り)に回転し、これによりロータ27を、回転中心X1を中心として同方向(矢印R方向)に回転させるようになっている。
ケース11は、有底円筒形状に形成されたケース本体60と、このケース本体60の開口を塞ぐカバー体61とを備え、ケース本体60は、開口の周縁部60Aが外方に折り曲げて形成されている。カバー体61は、ケース本体60の開口と略同径に形成された円板部(壁面)61Aと、この円板部61Aの周縁から軸方向に環状に延出し、ケース本体60の内周面に嵌まる円筒部61Bと、この円筒部61Bの周縁を外方に折り曲げて形成した屈曲部61Cとを備えて一体に形成される。円板部61A及び円筒部61Bは、ケース本体60内に進入し、屈曲部61Cがケース本体60の周縁部60Aに当接して固定されている。これにより、電動モータ10には、ケース11の一方の端部(前端)が内側に窪み、ポンプ本体20がインロー嵌合により取り付けられる嵌合穴部63が形成される。
また、円板部61Aの略中央には、出力軸12が貫通する貫通孔61Dと、この貫通孔61Dの周囲にケース本体60の内側に延びる円環状のベアリング保持部61Eとが形成され、このベアリング保持部61Eの内周面61Fに、上記出力軸12を軸支するベアリング62の外輪が保持される。
ポンプ本体20は、図2に示すように、電動モータ10のケース11の前側に形成された嵌合穴部63に嵌合されるケーシング本体22と、このケーシング本体22内に一体に鋳込まれてシリンダ室Sを形成するシリンダ部23と、当該ケーシング本体22を前側から覆うポンプカバー24とを備えている。本実施形態ではケーシング本体22、シリンダ部23及びポンプカバー24を備えて、真空ポンプ1のケーシング31を構成している。
ケーシング本体22は、例えば、アルミニウム等の熱伝導性の高い金属材料を用いて、図3に示すように、前側から見た形状が上記した回転中心X1を略中心とした上下方向に長い略矩形に形成されている。ケーシング本体22の上部には、このケーシング本体22に設けられたシリンダ室S内に連通する連通孔22Aが形成され、この連通孔22Aには真空吸込ニップル30が圧入されている。この真空吸込ニップル30は、図2に示すように、上向きに延びる直管であり、当該真空吸込ニップル30の一端30Aには、外部機器(例えば、真空タンク7(図1参照))から負圧空気を供給するための管またはチューブが接続される。
ケーシング本体22には、前後方向に延びる軸心X2を基準とした孔部22Bが形成され、この孔部22Bに円筒状に形成されたシリンダ部23が一体に鋳込まれている。具体的には、シリンダ部(シリンダライナ)23を金型にセットした状態で、この金型に注湯することにより当該シリンダ部23を一体に鋳込んだケーシング本体22(ケーシング31)が鋳造される。なお、本実施形態では、シリンダ部23をケーシング本体22に一体に鋳込む構成としているが、これに限るものではなく、シリンダ部23を予め鋳造されたシリンダ本体22の孔部22Bに圧入する構成としても良い。
軸心X2は、上述の電動モータ10の出力軸12の回転中心X1に対して平行で、かつ、図2に示すように、回転中心X1に対して左側斜め上方に偏心している。本構成では、回転中心X1を中心とするロータ27の外周面27Bが、軸心X2を基準に形成されているシリンダ部23の内周面23Aに接するように軸心X2が偏心されている。
シリンダ部23は、ロータ27と同一の金属材料(本実施形態では、鉄)で形成されている。この構成では、シリンダ部23とロータ27とは熱膨張係数が同じなので、シリンダ部23及びロータ27の温度変化にかかわらず、ロータ27が回転した際の当該ロータ27の外周面27Bとシリンダ部23の内周面23Aとの接触を防止できる。なお、シリンダ部23及びロータ27は、略同じ程度の熱膨張係数を有する金属材料であれば、異なる材料を用いても構わない。
また、ケーシング本体22に形成された孔部22Bにシリンダ部23を一体に鋳込むことにより、ケーシング本体22の前後方向の長さ範囲内でシリンダ部23を収容することができるため、このシリンダ部23がケーシング本体22から突出することが防止され、ケーシング本体22の小型化を図ることができる。
更に、ケーシング本体22はロータ27よりも熱伝導性の高い材料で形成されている。これによれば、ロータ27及びベーン28が回転駆動した際に発生した熱がケーシング本体22に速やかに伝達できることにより、ケーシング本体22から十分に放熱することができる。
シリンダ部23には、上記したケーシング本体22の連通孔22Aとシリンダ室S内とを繋ぐ開口23Bが形成されており、真空吸込ニップル30を通じた空気は、連通孔22A,開口23Bを通じてシリンダ室S内に供給される。このため、本実施形態では、真空吸込ニップル30、ケーシング本体22の連通孔22A及びシリンダ部23の開口23Bを備えて吸気経路32が形成される。また、ケーシング本体22及びシリンダ部23の下部には、これらケーシング本体22及びシリンダ部23を貫通し、シリンダ室Sで圧縮された空気が吐出される吐出口22C,23Cが設けられている。
シリンダ部23の後端および前端には、それぞれシリンダ室Sの開口を塞ぐサイドプレート25,26が配設されている。これらサイドプレート25,26は、その直径がシリンダ部23の内周面23Aの内径よりも大きく設定されており、シールリング25A,26Aにより付勢されて、シリンダ部23の前端及び後端にそれぞれ押し付けられている。これにより、シリンダ部23の内側は、真空吸込ニップル30に連なる開口23B及び吐出口23C,22Cを除いて、密閉されたシリンダ室Sが形成される。
シリンダ室Sには、ロータ27が配設されている。ロータ27は、電動モータ10の回転中心X1に沿って延びる円柱形状を有し、ポンプ本体20の駆動軸である出力軸12が挿通される軸孔27Aを有すると共に、この軸孔27Aから径方向に離れた位置に、複数のガイド溝27Cが軸孔27Aを中心とする等角度間隔で周方向に間隔を空けて設けられる。
ロータ27の前後方向の長さは、シリンダ部23のシリンダ室Sの長さ、すなわち、上述の2枚にサイドプレート25,26の相互に対向する内面間の距離と略等しく設定され、ロータ27とサイドプレート25,26との間は略閉塞されている。
また、ロータ27の外径は、図3に示すように、ロータ27の外周面27Bが、シリンダ部23の内周面23Aのうちの右斜め下方に位置する部分と微小なクリアランスを保つように設定されている。これにより、図3に示すように、ロータ27の外周面27Bと、シリンダ部23の内周面23Aとの間には、三日月形状の空間が構成される。
ロータ27には、三日月形状の空間を区画する複数(本例では5枚)のベーン28が設けられている。ベーン28は、板状に形成されていて、その前後方向の長さは、ロータ27と同様、2枚のサイドプレート25,26の相互に対向する内面間の距離と略等しくなるように設定されている。これらベーン28は、ロータ27に設けられたガイド溝27Cから出没自在に配設されている。各ベーン28は、ロータ27の回転に伴い、遠心力によってガイド溝27Cに沿って外側へ突出し、その先端をシリンダ部23の内周面23Aに当接させる。これにより、上述の三日月形状の空間は、相互に隣接する2枚のベーン28,28と、ロータ27の外周面27Bと、シリンダ部23の内周面23Aとによって囲まれる5つの圧縮室Pに区画される。これら圧縮室Pは、出力軸12の回転に伴うロータ27の矢印R方向の回転に伴い、同方向に回転し、その容積が、開口23B近傍で大きく、一方、吐出口23Cで小さくなる。つまり、ロータ27,ベーン28の回転により、開口23Bから1つの圧縮室Pに吸入された空気は、ロータ27の回転に伴って回転しつつ圧縮されて、吐出口23Cから吐出される。
本構成では、シリンダ部23は、図2に示すように、このシリンダ部23の軸心X2が回転中心X1に対して左側斜め上方に偏心してケーシング本体22に形成されている。このため、ケーシング本体22内には、シリンダ部23が偏心したのと反対の方向に大きなスペースを確保することができ、このスペースにはシリンダ部23の周縁部に沿って、吐出口23C、22Cに連通する膨張室33が形成されている。
膨張室33は、シリンダ部23の下方から出力軸12の上方に至るまで、当該シリンダ部23の周縁部に沿った大きな閉空間として形成され、ポンプカバー24に形成された排気口24Aに連通している。この膨張室33に流入した圧縮空気は、当該膨張室33内で膨張、分散して当該膨張室33の隔壁にぶつかって乱反射する。これにより、圧縮空気の音エネルギが減衰されるため、排気する際の騒音及び振動の低減を図ることができる。本実施形態では、ケーシング本体22及びシリンダ部23にそれぞれ形成された吐出口22C,23C、膨張室33及び排気口24Aを備えて排気経路37を構成する。
本実施形態では、シリンダ部23をロータ27の回転中心X1から偏心して配置することにより、ケーシング本体22にはシリンダ部23の上記回転中心X1側の周縁部に大きなスペースを確保することができる。このため、このスペースに大きな膨張室33を形成することにより、ケーシング本体22に膨張室33を一体に形成することができるため、当該膨張室33をケーシング本体22の外部に設ける必要がなく、ケーシング本体22の小型化を図ることができ、ひいては真空ポンプ1の小型化を図ることができる。
ポンプカバー24は、前側のサイドプレート26にシールリング26Aを介して配置され、ケーシング本体22にボルト66で固定されている。ケーシング本体22の前面には、図2に示すように、シリンダ部23や膨張室33を囲んでシール溝22Dが形成され、このシール溝22Dには環状のシール材67が配置されている。ポンプカバー24には、膨張室33に対応する位置に排気口24Aが設けてある。この排気口24Aは、膨張室33に流入した空気を機外(真空ポンプ1の外部)に排出するためのものであり、この排気口24Aは、機外からポンプ内への空気の逆流を防止するためのチェックバルブ29が取り付けられている。
上記したように、真空ポンプ1は、電動モータ10とポンプ本体20とを連結して構成されており、電動モータ10の出力軸12に連結されたロータ27及びベーン28がポンプ本体20のシリンダ部23内で摺動する。このため、ポンプ本体20を電動モータ10の出力軸12の回転中心X1に合わせて組み付けることが重要である。
このため、本実施形態では、電動モータ10は、ケース11の一端側に出力軸12の回転中心X1を中心とした嵌合穴部63が形成されている。一方、ケーシング本体22の背面には、図2に示すように、シリンダ室Sの周囲に後方へ突出した円筒状の嵌合部22Fが一体に形成されている。この嵌合部22Fは、電動モータ10の出力軸12の回転中心X1と同心に形成されており、電動モータ10の嵌合穴部63にインロー嵌合する外径に形成されている。
このため、本構成では、電動モータ10の嵌合穴部63にケーシング本体22の嵌合部22Fを嵌め込むだけで、簡単に中心位置を合わせることができ、電動モータ10とポンプ本体20との組み付け作業を容易に行うことができる。また、ケーシング本体22の背面には、嵌合部22Fの周囲にシール溝22Eが形成され、このシール溝22Eには環状のシール材35が配置されている。
ところで、自動車のブレーキ装置に使用されるような小型の真空ポンプでは、一般に、小型で軽量のロータが使用されており、さらに、ポンプの組み付け作業の効率化を図るためにロータは出力軸に対して固定されておらず、出力軸の軸方向に移動自在に設けられていた。これに加えて、ロータは、電動モータの出力軸の先端に、いわゆる片持支持されているため、ロータを回転させた場合、このロータが回転に伴い出力軸の先端側に突出しやすい状況にあった。このため、従来の構成では、真空ポンプの運転中に、ロータが前側のサイドプレートと接触することにより、これらロータ及びサイドプレートが摩耗で損傷し、真空ポンプの耐久性が低下するといった問題が想定される。
この問題を解消するために、ロータと出力軸とをスプラインにより連結し、このロータをラジアル方向に固定するとともに、出力軸の先端部にプッシュナットを取り付け、当該ロータが軸(スラスト)方向に移動することを規制する構成が考えられる。
この構成では、プッシュナットにより、ロータが回転に伴い出力軸の先端側に突出することを簡単に防止することができる利点がある。
しかし、プッシュナット自体の剛性が低いため、ロータの応力によってプッシュナットが弾性変化することにより、弾性変化分だけロータが軸方向に移動する。これによれば、ロータがシリンダ室内でわずかに移動することにより、真空ポンプの性能にバラつきが生じうるという問題が想定された。このため、本構成では、ロータ27と出力軸12との連結構造に特徴を有する。
図4は、ロータ27と出力軸12との連結構造を示す部分側断面図であり、図5は、図4の連結構造を示す分解側面図である。
出力軸12は、先端部12Aに軸方向に穿設された穴部12Bを備える。ロータ27を軸方向に貫通する軸孔27Aに出力軸12を挿入した状態で、上記穴部12Bにはテーパピン(部材)70が圧入される。これにより、出力軸12の先端部12Aが拡径され、出力軸12とロータ27とが一体に回転可能に連結される。
ここで、本実施形態では、テーパピン70は、鉄などの剛性高い金属材料で形成されるとともに、図5に示すように、圧入方向の先端側に向けて徐々に縮径するテーパ面70Aを備えた形状を呈している。このため、テーパピン70を穴部12Bに圧入した場合、出力軸12は、先端面12C側がより拡径した状態となるため、ロータ27が出力軸12の先端側へ移動することを規制することができる。
一方、ロータ27の軸孔27Aは、出力軸12の先端部12Aが嵌る軸保持部(挿入部)27Dと、この軸保持部27Dよりも縮径した小径部27Eとを備え、この小径部27Eと軸保持部27Dとの間に段差部27Fが形成されている。
軸保持部27Dは、出力軸12の先端部12Aと略同一径に形成されるとともに、ロータのロータ27の全長の半分よりも長く形成されている。これにより、ロータ27は、全長の半分以上に亘って出力軸12の先端部12Aと嵌合しているため、このロータ27の傾斜が防止される。
また、軸保持部27Dの長さは、出力軸12の先端部12Aの長さ(具体的には、電動モータ側のサイドプレート25から先端面12Cまでの長さ)よりも大きく形成され、図4に示すように、出力軸12の先端面12Cと、ロータ27の軸孔27Aの段差部27Fとの間には、わずかな隙間tが形成されるようになっている。これによれば、ロータ27を出力軸12に挿入した場合、ロータ27がサイドプレート25に当接する前に、出力軸12の先端面12Cが段差部27Fに当接することが防止され、組み付け作業を効率良く行うことができる。
また、小径部27Eの内径Dは、図4に示すように、出力軸12の外径よりも小さく、かつ、穴部12Bの内径よりも大きく形成されている。この構成によれば、万一、ロータ27を反対側(すなわち小径部27E側)から出力軸12に挿入しようとしても、小径部27Eは、出力軸12の外径よりも小さく形成されているため、前後反対に組み付けることが防止され、組み付け効率の向上を図ることができる。特に、本構成のように、出力軸12の穴部12Bにテーパピン70を圧入してロータ27を固定する構成では、前後を誤って組み付けた状態でテーパピン70が圧入されると、分解することが困難となるため、組み付けを防止することは非常に重要となる。
また、本実施形態では、テーパピン70は、このテーパピン70を穴部12Bに圧入した際に、当該テーパピン70がロータ27の前端面27Gか突出しない程度の長さに設定されている。
次に、ロータ27の組み付け手順を説明する。
まず、出力軸12をロータ27の軸孔27Aに挿し込み。この場合、ロータ27の長さ寸法は、シリンダ室S(図2)の長さと略同一に設定されているため、ロータ27の後端面27Iが後ろ側のサイドプレート25に当接するまで挿し込むことにより、このロータ27の前端面27Gとシリンダ室Sの開口とが略面一となる。
続いて、出力軸12の穴部12Bにテーパピン70を圧入する。ロータ27をサイドプレート25に当接するまで、ロータ27を出力軸12に挿し込むと、図4に示すように、出力軸12の先端面12Cがロータ27の小径部27Eの近くに位置する。
この状態で、テーパピン70の縮径された先端部を、小径部27Eを通じて、穴部12B内に嵌め込み、このテーパピン70を、圧入荷重を計測できる専用の治具(図示略)を用いて、圧入荷重が所定の閾値(例えば100N)を超えるまで圧入する。これにより、出力軸12が拡径することにより、ロータ27が後ろ側のサイドプレート25とテーパピン70とで挟まれることで位置決めされる。
本実施形態では、ロータ27をサイドプレート25に当接するまで出力軸12に挿し込むといった簡単な作業で、出力軸12に対するロータ27の位置決めを容易に行うことができ、さらに、テーパピン70を所定の基準値を超えるまで穴部12Bに圧入することにより、この基準値を超えたか否かでロータ27の組み付けが完了したことを容易に判断することができ、熟練者でなくてもポンプの組み付け作業を短時間で行うことができる。
以上、説明したように、本実施形態によれば、電動モータ10に取り付けられるケーシング本体22と、このケーシング本体22に形成されて当該ケーシング本体22の両端に開口を有する中空形状のシリンダ室Sと、電動モータ10の出力軸12に、当該出力軸12とともにシリンダ室S内を回転駆動されるロータ27と、シリンダ室Sの開口を塞ぐ一対のサイドプレート25,26とを備え、出力軸12は、先端部12Aに軸方向に設けられた穴部12Bを備え、当該出力軸12をロータ27の軸孔27Aに挿入した状態で、穴部12Bに圧入されてロータ27を出力軸12に固定させるテーパピン70を備えたため、テーパピン70が穴部12Bに圧入されることで出力軸12の一部が拡径されるように変形し、当該出力軸12とロータ27とを固定することにより、ロータ27が出力軸12のラジアル方向及びスラスト方向に移動することが規制される。このため、ロータ27とサイドプレート25,26との接触が簡単な構成で防止されることにより、当該ロータ27及びサイドプレート25,26の摩耗が抑制され、真空ポンプ1の耐久性を向上させることができる。
さらに、本実施形態では、ロータ27がシリンダ室S内で軸方向に移動することが防止されるため、この移動に基づく真空ポンプ1の性能にバラつきを抑えることができる。
また、本実施形態によれば、電動モータ側に位置する後側のサイドプレート25に当接するまでロータ27を出力軸12に挿入し、この状態で、テーパピン70を所定の基準値を超えるまで出力軸12の穴部12Bに圧入して当該ロータ27を出力軸12に固定させたため、ロータ27をサイドプレート25に当接するまで出力軸12に挿入するといった簡単な作業で、出力軸12に対するロータ27の位置決めを容易に行うことができる。さらに、テーパピン70を所定の基準値を超えるまで出力軸12の穴部12Bに圧入することにより、この基準値を超えたか否かでロータ27の位置決めが完了したことを容易に判断することができ、熟練者でなくてもポンプの組み付け作業を短時間で行うことができる。
また、本実施形態によれば、ロータ27の軸孔27Aは、出力軸12が嵌入されて保持される軸保持部27Dと、この軸保持部27Dよりもロータ27の前端面27G側に位置し、出力軸12よりも径の小さい小径部27Eとを備えるため、ロータ27の前端側の軸孔27Aは、出力軸12よりも径が小さく形成されることにより、このロータ27を出力軸12に対して前後反対に組み付けることが防止され、組み付け効率の向上を図ることができる。
また、テーパピン70は、圧入方向の先端側に向けて徐々に縮径した形状を呈しているため、テーパピン70を出力軸12の穴部12Bへ容易に圧入することができ、組み付け作業を容易に行うことができるとともに、出力軸12に対するロータ27のスラスト方向への移動を確実に規制することができる。
以上、本発明を実施するための最良の実施の形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。例えば、上記した実施形態では、圧入部材として、テーパピン70を採用した構成について説明したが、これに限るものではなく、図6に示すように、鉄等の剛性の高い金属材料で形成されたボール状部材(圧入部材)80を出力軸12の穴部12Bに圧入する構成としても良い。他の構成については、上記した構成と同一であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
ボール状部材80は、球形に形成された部材であり、テーパピン70と比べて、成形されたボール状部材80の直径管理を細かく行う必要があるが、穴部12Bに圧入する際の圧入方向を都度確認する必要がないため、組み付け作業を容易に行うことができるという利点がある。
1 真空ポンプ
6 ブレーキブースター(ブレーキ倍力装置)
7 真空タンク
9 ブレーキ配管
10 電動モータ(駆動機)
11 ケース
12 出力軸(回転軸)
12A 先端部
12B 穴部
12C 先端面
20 ポンプ本体
22 ケーシング本体
23 シリンダ部
25 サイドプレート
26 サイドプレート
27 ロータ
27A 軸孔
27D 軸保持部(挿入部)
27E 小径部
27G 前端面
27I 後端面
28 ベーン
70 テーパピン(圧入部材)
80 ボール状部材(圧入部材)
100 ブレーキ装置

Claims (3)

  1. 駆動機の回転軸に設けられてシリンダ室内を回転駆動されるロータを備える真空ポンプにおいて、
    前記回転軸は、先端部に軸方向に設けられた穴部を備え、当該回転軸を前記ロータの軸孔に挿入した状態で、前記穴部に圧入されて前記ロータを前記回転軸に固定させる圧入部材を備え、
    前記ロータの軸孔は、前記回転軸が挿入される挿入部と、この挿入部よりも前記ロータの前端側に位置し、前記回転軸よりも径の小さい小径部とを備えることを特徴とする真空ポンプ。
  2. 前記圧入部材は、圧入方向の先端側に向けて縮径していることを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
  3. 駆動機に取り付けられるケーシング本体と、このケーシング本体に形成されて当該ケーシング本体の両端に開口を有する中空形状のシリンダ室と、前記駆動機の回転軸に設けられて前記シリンダ室内を回転駆動されるロータと、前記シリンダ室の前記開口を塞ぐ一対のサイドプレートとを備える真空ポンプの製造方法において、
    前記回転軸は、先端部に軸方向に設けられた穴部を備え、当該回転軸を前記ロータの軸孔に挿入した状態で、前記穴部に圧入されて前記ロータを前記回転軸に固定させる圧入部材を備え、
    前記ロータの軸孔は、前記回転軸が挿入される挿入部と、この挿入部よりも前記ロータの前端側に位置し、前記回転軸よりも径の小さい小径部とを備え、
    前記駆動機側に位置する前記サイドプレートに当接するまで前記ロータを前記回転軸に挿入し、この状態で前記圧入部材を圧入荷重が所定の閾値を超えるまで、前記回転軸の前記穴部に圧入して当該ロータを前記回転軸に固定させたことを特徴とする真空ポンプの製造方法。
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