以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
[第1の形態]
図1に,本形態の画像形成装置1の概略構成を示す。画像形成装置1は,中間転写ベルト30を有する,いわゆるタンデム型のカラープリンターである。中間転写ベルト30は,導電性を有する無端状のベルト部材であり,その図1中両端部がローラー31,32によって支持されている。画像形成時には,図1中右側のローラー31が,図中矢印で示すように反時計回りに回転駆動される。これにより,中間転写ベルト30および図1中左側のローラー32はそれぞれ,図中に矢印で示す方向に従動回転する。
中間転写ベルト30のうち,図1中右側のローラー31に支持されている部分の外周面には,2次転写ローラー40が設けられている。2次転写ローラー40は,中間転写ベルト30へ向けて軸と垂直の方向(図1中左向き)に圧接されている。中間転写ベルト30と2次転写ローラー40とが接触している部分には,中間転写ベルト30上のトナー像を用紙Pに転写させる2次転写ニップN1が形成されている。2次転写ローラー40は,画像形成時には,回転する中間転写ベルト30への圧接による摩擦力によって従動回転する。
また,中間転写ベルト30のうち,図1中左側のローラー32に支持されている部分の外周面には,ベルトクリーナー41が設けられている。ベルトクリーナー41は,中間転写ベルト30の表面に付着しているトナーを回収するためのものである。つまり,ベルトクリーナー41は,2次転写ニップN1において用紙Pに転写されなかった転写残トナー等を回収するためのものである。
中間転写ベルト30の図1中下部には左から右に向かって順に,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の画像形成部10Y,10M,10C,10Kが配置されている。画像形成部10Y,10M,10C,10Kはいずれも,該当色のトナー像を形成して中間転写ベルト30上に転写するためのものである。画像形成部10Y,10M,10C,10Kはいずれも,その構成は同じである。このため,図1では,画像形成部10Yによって代表して符号をつけている。
画像形成部10Y,10M,10C,10Kは,円筒状の静電潜像担持体である感光体11,および,その周囲に配置された帯電装置12,露光装置13,現像装置14,1次転写ローラー15を有している。帯電装置12は,感光体11の表面を均一に帯電させるためのものである。露光装置13は,該当色の画像データに基づいたレーザー光を感光体11の表面に照射させ,静電潜像を形成するためのものである。現像装置14は,収容しているトナーを感光体11の表面に付与するためのものである。
1次転写ローラー15は,感光体11と中間転写ベルト30を挟んで対向する位置に配置されている。1次転写ローラー15は,中間転写ベルト30へ向けて軸と垂直の方向(図1中下向き)に圧接されている。この圧接により,中間転写ベルト30と感光体11とが接触している部分にはそれぞれ,各色の感光体11上のトナー像を中間転写ベルト30上に転写させる1次転写ニップが形成されている。
なお,本形態の画像形成部10Y,10M,10C,10Kは,感光体11上の未転写トナーを現像装置14により回収するクリーナーレス方式のものである。しかし,感光体11上から中間転写ベルト30上に転写されなかったトナーを回収するための感光体クリーナーを有していてもよい。感光体クリーナーとしては,板状でその一端部が感光体11の外周面に接触しているものが例示される。あるいは,その他のクリーニング部材,例えば固定ブラシ,回転ブラシ,ローラーまたはそれらのうちの複数の部材を組み合わせたものを使用することができる。
また,中間転写ベルト30の図1中上方には,各色のトナーを収容したトナーボトル20Y,20M,20C,20Kが配置されている。これらに収容されている各色のトナーはそれぞれ,各色の現像装置14へと適宜補給される。
画像形成装置1の下部には,給紙カセット51が装着されている。給紙カセット51の図1中右側より上方に向かっては,搬送経路50が設けられている。そして,給紙カセット51に積載により収容された用紙Pは,その最上部のものより1枚ずつ給紙ローラー52によって搬送経路50に送り出されるようになっている。
給紙カセット51より送り出された用紙Pの搬送経路50には,1対のレジストローラー53,2次転写ニップN1,定着ニップN2,排紙ローラー54がこの順で配置されている。搬送経路50のさらに下流側には,画像形成の完了した用紙Pが排出される排紙部55が設けられている。レジストローラー53は,用紙Pを2次転写ニップN1へ送り出すタイミングを微調整するためのものである。定着ニップN2は,用紙Pに転写されたトナー像を定着させる定着処理を行うためのものであり,定着処理部70によって形成されている。
図2により,本形態の定着処理部70について説明する。定着処理部70は,図2に示すように,加圧ローラー71,定着ローラー72,加熱ローラー73,ヒーター74,定着ベルト75,温度センサー76により構成されている。このうち,加圧ローラー71以外の定着ローラー72,加熱ローラー73,ヒーター74,定着ベルト75,温度センサー76は,用紙Pのトナー像を坦持している面の側に配置されている。定着処理部70は,搬送経路50を搬送される用紙Pに,トナー像を定着させるための定着処理を行うものである。
図2に示すように,定着ローラー72と加熱ローラー73とには,定着ベルト75が巻き掛けられている。ヒーター74は,加熱ローラー73の内部に設けられている熱源である。温度センサー76は,加熱ローラー73の温度を検出するためのものである。このため,定着ローラー72,加熱ローラー73,ヒーター74,定着ベルト75,温度センサー76は加熱側の構成である。一方,加圧ローラー71は,定着ベルト75を挟んで定着ローラー72と対向する位置に配置されている。加圧ローラー71は定着ベルト75の外周面に圧接されており,その接触している部分に定着ニップN2が形成されている。このため,加圧ローラー71は加圧側の構成である。
定着ローラー72は,定着処理の実行時には,図2中に矢印で示すように反時計回りに駆動される。この定着ローラー72の回転により,加圧ローラー71,加熱ローラー73および定着ベルト75はそれぞれ従動回転される。また,加熱ローラー73は,温度センサー76が検出する温度が所定の温度となるように,ヒーター74によって加熱される。これにより,定着ベルト75や定着ローラー72の温度についても上昇する。そして,用紙Pは,定着ニップN2を通過する際には,加熱されつつ加圧される。この定着処理により,用紙Pにはトナー像が定着される。
また,本形態の画像形成装置1は,図1に示すように,両面搬送経路60を有している。両面搬送経路60は,一度,搬送経路50を通過した用紙Pを再度,搬送経路50に搬送するためのものである。これにより,画像形成装置1は,用紙Pの両面に画像を形成することができる。なお,搬送経路50,両面搬送経路60の各所には,用紙Pの到達や通過を検出するためのセンサーが設けられている。
図2に,画像形成装置1の制御構成の概略を示す。画像形成装置1は,各部の制御を行うために,エンジン部2とコントローラー部3とを有している。エンジン部2は,全体の制御処理を行うCPU4と,本体に付属されている不揮発性メモリ5とを有している。
不揮発性メモリ5には,例えば,ローラー31の回転速度や各感光体11の回転速度,用紙Pの搬送速度などの各値が記憶されている。また,定着ニップN2における定着ベルト75と加圧ローラー71との許容される温度差の上限値である上限温度差TDlimなども記憶されている。上限温度差TDlimについては,後に詳述する。
CPU4は,不揮発性メモリ5に記憶されている値に基づいて,画像形成装置1の各部を制御することにより画像形成のジョブの実行を行う。すなわち,ジョブの実行時には,感光体11やローラー31,用紙Pの搬送に係る各ローラー等の回転を制御する。また,温度センサー76の検出温度が定着処理を行うための所定の温度に保たれるように,ヒーター74による加熱の制御等も行う。さらに,CPU4は,搬送中の用紙Pの実際の位置を,搬送経路50および両面搬送経路60の各所に設置されたセンサーより取得している。よって,CPU4は,搬送を制御することによる用紙Pの目標位置と,搬送経路50などのセンサーより取得する実際の位置とを比較することにより,用紙Pのジャムの発生などを検出することができる。さらに,本形態のCPU4は,入力された画像形成ジョブの情報より,後に詳述するシミュレーションによって,定着ニップN2の位置における定着ベルト75および加圧ローラー71の温度をそれぞれ算出することができる。
またエンジン部2は,画像形成装置1の各種負荷6を制御するとともに,各ユニット付属の不揮発性メモリ7の書き込みや読み出しを行う。各種負荷6には例えば,トナーボトルやイメージングユニットなどが含まれる。そして,各ユニット付属の不揮発性メモリ7について,例えばトナーボトルに付属のメモリにはトナー残量など,イメージングユニットに付属のメモリには印刷枚数などが記憶されている。
また,コントローラー部3は,外部のパソコンなどに接続されて指示入力を受けるものである。例えば,画像形成指令をパソコンから受信することにより,画像形成装置1には画像形成ジョブが発生する。さらに,エンジン部2とコントローラー部3とで,ドットカウンター値などの各種の情報がやりとりされる。
次に,本形態の画像形成装置1による,通常の画像形成動作の一例について簡単に説明する。以下の説明は,給紙カセット51に収容されている用紙Pに,4色のトナーを用いてカラー画像を形成するカラーモードにおける画像形成動作の一例である。カラー画像の形成時には,中間転写ベルト30および各色の感光体11はそれぞれ,図1に矢印で示す向きに所定の周速度で回転される
そして,感光体11の外周面は,帯電装置12によりほぼ一様に帯電される。帯電された感光体11の外周面には,露光装置13によって画像データに応じた光が投射され,静電潜像が形成される。この露光装置13による露光の開始が,画像形成の開始である。続いて,静電潜像は現像装置14によって現像され,感光体11上にはトナー像が形成される。各色のトナー像は,1次転写ローラー15の圧接により形成されている1次転写ニップにおいて,中間転写ベルト30上に転写(1次転写)される。これにより,中間転写ベルト30上には,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像がこの順で重ね合わされる。そして,重ね合わされた4色のトナー像は,中間転写ベルト30の回転によって2次転写ニップN1に搬送される。
一方,給紙カセット51に収容されている用紙Pは,最上部のものから1枚ずつ搬送経路50に引き出される。引き出された用紙Pは,搬送経路50に沿って2次転写ニップN1に搬送される。用紙Pの2次転写ニップN1への突入タイミングは,中間転写ベルト30上のトナー像の2次転写ニップN1への突入タイミングと一致するように,レジストローラー53により微調整される。これにより,2次転写ニップN1において,重ね合わされた4色のトナー像が用紙Pに転写(2次転写)される。
トナー像が転写された用紙Pは,さらに搬送経路50の下流側へと搬送される。つまり,用紙Pは,定着ニップN2を通過することによってトナー像の定着処理がなされた後,排紙ローラー54によって排紙部55に排出される。なお,2次転写ニップN1を通過した後も中間転写ベルト30上に残留する転写残トナーは,ベルトクリーナー41によって回収される。これにより,中間転写ベルト30上から除去される。
なお,用紙Pに対して両面印刷を行う場合,搬送経路50を通過することにより第1面に画像の形成された用紙Pは,排紙ローラー54によって表裏を反転させつつ両面搬送経路60に搬送される。つまり,本形態の画像形成装置1では,排紙ローラー54が用紙Pの表裏を反転させる反転部を兼ねている。そして,両面搬送経路60を通過した用紙Pは再度,搬送経路50に搬送される。これにより,用紙Pの第1面とは反対の第2面に画像を形成することができる。このようにして両面に画像が形成された用紙Pはその後,排紙部55へと排出される。
ここで画像形成装置1は,形成する画像に応じて定着処理部70の温度を異なる温度とするスマート定着制御を行うことのできるものである。具体的には,本形態のスマート定着制御では,形成する画像におけるトナー像のトナーの付着量に応じて,ヒーター74による加熱を制御する。すなわち,トナーの付着量が少ないトナー像を担持している用紙Pが定着ニップN2を通過するときには,トナーの付着量が多いトナー像を担持している用紙Pが定着ニップN2を通過するときよりも,低い温度で加熱するようにヒーター74を制御する。トナーの付着量が少ないときには,トナーの付着量が多いときよりも,低い温度の加熱でトナー像を用紙Pに定着させることができるからである。
そして,スマート定着制御により,トナーの付着量が少ないトナー像を担持している用紙Pに対して定着処理を行う場合には,消費電力を抑えることができる。なお,本形態の画像形成装置1では,トナーの付着量の多いカラー画像の定着処理を行う場合には,定着ニップN2における用紙Pの加熱温度を,予め定めた定着温度T1とした通常モードで定着処理を行う。これに対し,トナーの付着量の少ないモノクロ画像の定着処理を行う場合には,用紙Pの加熱温度を通常モードの定着温度T1よりも低い定着温度T2とした低温モードで定着処理を行う。つまり,画像形成装置1は,定着処理部70の温調モードを,温度の異なる通常モードと低温モードとの間で切り替えつつ定着処理を行うものである。
なお,本形態では,カラー画像を形成するときにはモノクロ画像を形成するときよりもトナー像におけるトナーの付着量が多いとみなして温調モードの切り替えを行っている。しかし,通常モードと低温モードとのいずれで定着処理を行うかは,その他の情報により判断してもよい。その判断には,形成する画像がカラー画像またはモノクロ画像のいずれであるかの他,形成する画像の文字幅や文字サイズ,画像の濃度などの情報を用いることができる。さらに,通常モードと低温モードとのいずれで定着処理を行うかは,形成されるトナー像のトナーの付着量についての情報により総合的に判断することとしてもよい。また,例えば,光沢画像を形成するときなどにおいては,トナーの付着量が少ない場合であっても,定着温度を高く設定することがある。よって,通常モードと低温モードとのいずれで定着処理を行うかは、トナーの付着量についての情報以外の情報を考慮して決定することもできる。
スマート定着制御の例について図4により説明する。図4は,複数の画像A,B,Cをこの順で形成するときの定着処理部70の温度の変化について説明するための図である。図4では,左から右に向かって時間の経過を示している。また,画像A,Cはモノクロ画像であり,画像Bはカラー画像である。このため,画像A,Cについては低温モードで定着処理を行い,画像Bについては通常モードで定着処理を行う。
まず,CPU4は,図4に示すように,画像形成ジョブの実行時には,画像A,B,Cの印字コマンドをこの順で発する。なお,各画像の印字コマンドは,印字コマンドに係る画像と,その画像の次の画像についてのマップデータなどの画像形成に係る情報に基づいて生成されたものである。つまり,画像Aの印字コマンドは画像Aおよび画像Bの情報に基づいて,画像Bの印字コマンドは画像Bおよび画像Cの情報に基づいてそれぞれ生成されたものである。画像Cの印字コマンドについては,画像Cの情報のみに基づくものである。なお,画像Cの後に次の画像形成を行う場合,その画像の情報を考慮して画像Cの印字コマンドを生成すればよい。
次に,各画像の印字コマンドに基づいて,画像形成部10の露光装置13によって感光体11上への露光が開始される。その後,現像された各画像はそれぞれ,2次転写ニップN1において用紙Pへと転写され,定着ニップN2を通過する。図4には,画像Aについての露光が開始されてから,画像Aの先端が定着ニップN2へ到達するまでの時間をt1で示している。また,搬送により,ある位置に画像Aの先端が到達してから,その同じ位置に画像Bの先端が到達するまでの時間をt2により示している。時間t1,t2はともに,画像Aの印字コマンドを発する際に既知の値である。画像Aの印字コマンドは,画像Aおよび画像Bの情報に基づくものだからである。
ここで,画像Aについては低温モードで,画像Bについては通常モードでそれぞれ定着処理がなされる。ただし,トナーの付着量の少ないモノクロ画像である画像Aについては,低温モードの定着温度T2よりも高い温度で定着処理がなされたとしても,画像の品質が低下してしまうことはない。一方,画像Bについては,通常モードの定着温度T1よりも低い温度で定着処理がなされた場合,画像品質が低下してしまうおそれがある。用紙Pにトナー像を良好に定着させるためには,トナー像のトナーの付着量に応じて適切に加熱する必要があるからである。
よって,画像形成装置1では,図4に示すように,画像Bの先端が定着ニップN2に到達するときには,定着ニップN2における加熱温度が通常モードの定着温度T1となるようにヒーター74が制御される。ここで,図4に示すように,定着ニップN2における加熱温度を画像Bの先端が到達するまでに定着温度T1まで上昇させるためには,時間t3が必要である。時間t3は,定着ニップN2における加熱温度を定着温度T2から定着温度T1まで上昇させるために必要とする最短の時間である。よって以下,t3を最短昇温時間とする。このため,画像Bの先端が定着ニップN2に到達するときよりも最短昇温時間t3だけ早くに,温調モードは低温モードから通常モードに切り替えられる。
なお,最短昇温時間t3についても,画像Aの印字コマンドを発する際に既知の値である。また,時間t1,t2,t3が既知であることから,図4にΔtで示す,画像Aの露光を開始するときから,温調モードを低温モードから通常モードに切り替えるときまでの時間についても,画像Aの印字コマンドを発する際に既知の値である。また,図4における時間t1,t2,t3および時間Δtは,形成される画像の品質を通常程度として,できるだけ生産性を高くした場合のものである。
そして,図4に示すように,画像Aが転写された用紙Pは,通常モードに切り替えられた後の,定着ニップN2における加熱温度が定着温度T2から定着温度T1まで上昇している間に,定着ニップN2を通過することとなる。
そして,昇温中の定着ニップN2における加熱温度は,低温モードにおける定着温度T2以上である。このため,昇温中の定着ニップN2を通過したことにより,画像Aの画像品質が低下してしまうことはない。しかし,昇温中の定着ニップN2を通過した画像Aに係る用紙Pに,その後の搬送においてジャムが発生してしまう程度のカールが生じてしまうことがあった。
次に,昇温中の定着ニップN2を通過した用紙Pにカールが発生することについて説明する。図5は,低温モードにおける定着ニップN2へ用紙Pを通過させた場合の定着処理部70の温度を示すグラフ図である。図5の横軸は時間を,縦軸は温度を示している。また,図5には,定着処理部70の温度について,温度センサー76の検出温度を二点鎖線により,定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度を実線により,加圧ローラー71の定着ニップN2付近の温度を破線により示している。
定着ベルト75および加圧ローラー71の定着ニップN2付近の温度は,それぞれの位置に温度を検出するためのセンサーを設け,そのセンサーによって検出した。そして,図5は,低温モードの定着温度T2とした状態の定着ニップN2へ用紙Pを通過させた場合の,各センサーによって検出された温度を示したものである。
図5に示すように,定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度は,定着温度T2に維持されている。前述したように,定着ベルト75は,用紙Pのトナー像を坦持している面の側の構成である。そして,定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度が定着温度T2であることにより,用紙Pに担持されているトナー像に低温モードで定着処理を行うことができる。
なお,定着ベルト75は,定着ニップN2を通過した用紙Pに熱が奪われることによって温度が低下する。しかし,その低下した温度の分,ヒーター74による加熱を受け,定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度は,用紙Pが定着ニップN2を通過している間も,ほぼ定着温度T2に維持されている。また,温度センサー76の検出温度は,定着温度T2よりもやや高い温度に維持されている。これは,温度センサー76の検出位置が,定着ニップN2よりもヒーター74に近い位置だからである。
加圧ローラー71の定着ニップN2付近の温度は,用紙Pが定着ニップN2へ到達する前において,定着温度T2よりやや低い温度に維持されている。加圧ローラー71は,熱源を有しておらず,定着ベルト75からの伝熱により加熱されているからである。図5には,用紙Pが定着ニップN2へ到達する前における定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度と加圧ローラー71の定着ニップN2付近の温度との差を,温度差TD1として示している。
また,図5に示すように,加圧ローラー71の定着ニップN2付近の温度は,用紙Pが定着ニップN2を通過することにより低下している。加圧ローラー71は,定着ニップN2を通過した用紙Pによって熱が奪われているからである。また,用紙Pが定着ニップN2を通過している間,その用紙Pによって定着ベルト75からの伝熱が遮られるからである。
加圧ローラー71の温度は,用紙Pが定着ニップN2を通過している間,低下し続け,用紙Pの後端が定着ニップN2に到達したとき,最も低くなっている。その用紙Pの後端が定着ニップN2に到達したときの定着ニップN2付近における定着ベルト75の温度と加圧ローラー71の温度との差を,温度差TD2として示している。
用紙Pの後端が定着ニップN2に到達したときの温度差TD2は,用紙Pが定着ニップN2に到達する前の温度差TD1よりも大きいものである。また,定着ニップN2の付近における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差は,定着ニップN2を通過する用紙Pの先端から後端に掛けて大きくなっている。そして,用紙Pにおいては,定着ニップN2における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差が大きいほど,その定着ニップN2を通過した後に大きなカールが発生する。つまり,図5において,定着ニップN2を通過した用紙Pの後端側では,先端側よりも大きなカールが発生する。ただし,図5に示す温度差TD2はそれほど大きなものではなく,定着ニップN2を通過した用紙Pに,その後の搬送においてジャムが発生してしまう程の大きなカールが生じてしまうことはない。
次に,図6に,昇温中の定着ニップN2へ用紙Pを通過させた場合の定着処理部70の温度を示す。すなわち,図6は,低温モードから通常モードに切り替えられた後の,定着ニップN2の加熱温度が定着温度T2から定着温度T1まで上昇している間に,用紙Pが定着ニップN2を通過したときのものである。そしてこの図6の場合には,図5の場合とは異なり,図4において説明したように,用紙Pに,その後の搬送においてジャムが発生してしまう程度のカールが生じてしまうことがある。
図6に示すように,定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度は,用紙Pが定着ニップN2へと到達する前に,定着温度T2から上昇し始めている。そして,用紙Pは,定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度が定着温度T2から定着温度T1まで上昇している間に,定着ニップN2を通過している。
一方,加圧ローラー71の定着ニップN2付近の温度は,用紙Pが定着ニップN2を通過することにより低下し,用紙Pの後端が定着ニップN2に到達したときに最も低くなっている。図6には,用紙Pの後端が定着ニップN2に到達したときの定着ニップN2付近における定着ベルト75の温度と加圧ローラー71の温度との差を,温度差TD3として示している。
そして,図6に示すように,用紙Pの後端が定着ニップN2に到達したときの温度差TD3は,用紙Pが定着ニップN2に到達する前の温度差TD1よりも大きいものである。また,定着ニップN2の付近における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差は,定着ニップN2を通過する用紙Pの先端から後端に掛けて大きくなっている。このため,図6においても,定着ニップN2を通過した用紙Pの後端側では,先端側よりも大きなカールが発生する。
また,図5では,前述したように,定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度が定着温度T2で一定に維持されたまま,加圧ローラー71の定着ニップN2付近の温度が低下している。一方,図6では,定着ベルト75の定着ニップN2の温度が定着温度T2から上昇しているのに対して,加圧ローラー71の定着ニップN2付近の温度が低下している。このため,図6では,用紙Pの後端が定着ニップN2に到達したときの温度差TD3は,図5の温度差TD2よりも大きくなっている。つまり,図6に示す場合には,図5に示す場合よりも,大きなカールが発生する。そして,図6の場合には,定着ニップN2を通過した用紙Pに,その後の搬送においてジャムが発生してしまう程の大きなカールが生じることがある。
そこで,本形態の画像形成装置1は,用紙Pに大きなカールが生じることを抑制するため,定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差が大きくならないように定着処理を行う。すなわち,用紙Pが定着ニップN2を通過中している間,定着ニップN2の位置における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差が,不揮発性メモリ5に記憶されている上限温度差TDlimを超えないように各部を制御する温度差制限制御を行う。上限温度差TDlimは,前述したように,定着ニップN2における定着ベルト75と加圧ローラー71との許容される最大の温度差であり,用紙Pのカールを,定着ニップN2を通過後の搬送においてジャムが発生しない程度に抑制することのできる温度である。上限温度差TDlimは,予め実験を行うことなどにより取得することができる。
本形態では,まず,温度差制限制御に先立ち,CPU4において,定着ニップN2を用紙Pが通過している間の定着ニップN2における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差を推定するシミュレーションを行う。このシミュレーションは,図4と同様,用紙Pの厚さやサイズ,用紙Pの搬送速度,ヒーター74による加熱の程度など,画像形成に係るジョブにおいて既知の情報より時間t1,t2,t3および時間Δtを求めつつ行うことができる。具体的には,画像形成に係る露光が開始される前に,用紙Pが定着ニップN2を通過している間の定着ニップN2における定着ベルト75および加圧ローラー71のそれぞれの温度を求め,その求めた温度により,温度差を推定することができる。
そして,推定した温度差が上限温度差TDlimを超えてしまっている場合,温度差制限制御を行いつつ,用紙Pの定着処理を行う。本形態の温度差制限制御では,定着ニップN2における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差が,上限温度差TDlimを超える前に,ヒーター74による加熱を停止させる。そのヒーター74の加熱を停止するタイミングについては,上記のシミュレーションにおいて,CPU4により求めることができる。例えば,シミュレーションにおける定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差が上限温度差TDlimを超えるタイミングよりも予め定めた時間だけ前に,ヒーター74による加熱を停止させることが考えられる。あるいは,シミュレーションにおける用紙Pの後端が定着ニップN2に到達したときの加圧ローラー71の温度に上限温度差TDlimを加算する。さらに,その加算により求めた温度に定着ベルト75の温度が到達するタイミングよりも前に,ヒーター74の加熱を停止させることが考えられる。
本形態の温度差制限制御を行った場合の定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度を,図7に太い実線で示している。図7に示すように,用紙Pが定着ニップN2に突入後,その用紙Pの後端が定着ニップN2を通過する前に,温度差制限制御によってヒーター74の加熱を停止していることで,その加熱を停止している間の定着ベルト75の温度の上昇が抑えられている。また,ヒーター74による加熱を停止した場合の用紙Pの後端が定着ニップN2へ到達したときの温度差TD4を,図7に示している。
図7に示すように,温度差TD4は,温度差制限制御を行わず,ヒーター74による加熱を停止しなかったときの温度差TD3よりも低く抑えられている。また,図7に示すように,温度差TD4は,上限温度差TDlimよりも低く抑えられている。よって,本形態では,用紙Pの後端側に大きなカールを生じさせることなく,定着処理を行うことができる。これにより,定着ニップN2を通過後の用紙Pの搬送におけるジャムの発生を抑制することができる。
また,図7の例では,用紙Pの後端が定着ニップN2を通過したときに,停止していたヒーター74による加熱を再開している。そして,定着ニップN2おける加熱温度が通常モードの定着温度T1となった以降に,次の用紙Pを定着ニップN2へ通すことができる。つまり,図4の例においては,画像Aに係る用紙Pが定着ニップN2を通過し,定着ニップN2による加熱温度が通常モードの定着温度T1となった以降に,画像Bに係る用紙Pを定着ニップN2へ通すことができる。
また,上記のシミュレーションおよび温度差制限制御は,印字コマンドの生成時に,その印字コマンドに係る画像についての定着温度が,その画像の次の画像についての定着温度よりも低いと判断される場合にのみ行うこととしてもよい。つまり,スマート定着制御における定着温度が,印字コマンドに係る画像とその画像の次の画像とで同じである場合や,次の画像の定着温度の方が低い場合には,シミュレーションおよび温度差制限制御を行わないこととしてもよい。
また本形態では,上記のように,定着ニップN2を用紙Pが通過している間の定着ニップN2における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差を推定し,推定した温度差に基づいて温度差制限制御を行っている。しかし,例えば,定着ベルト75と加圧ローラー71とに,その定着ニップN2付近の温度を検出する温度センサーをそれぞれ設けた構成では,用紙Pが定着ニップN2を通過中に,定着ベルト75と加圧ローラー71との実際の温度を検出することができる。また,その検出した定着ニップN2付近の定着ベルト75と加圧ローラー71との実際の温度により,実際の温度差を求めることができる。
定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度を検出するためには,例えば,図2のように定着ローラー72として中空のものを用い,その定着ローラー72の内側の定着ニップN2に近い位置に二点鎖線で示す温度センサー77を設けておけばよい。また,加圧ローラー71についても同様,中空の加圧ローラー71の内側の定着ニップN2に近い位置に二点鎖線で示す温度センサー78を設けておけばよい。
そして,温度センサー77,78の検出温度の差により温度差を求めつつ,その求めた温度差が上限温度差TDlimよりも低く抑えられるようにヒーター74による加熱を制御する温度差制限制御を行うことができる。具体的には,用紙Pが定着ニップN2を通過しているときの温度差が上限温度差TDlim以下に定めた閾値である加熱停止温度差まで高くなったときに,ヒーター74による加熱を停止すればよい。またこの場合には,温度差を推定するシミュレーションを行う必要はない。なお,温度センサー77,78の検出温度はともに,厳密には,実際の定着ニップN2における定着ベルト75の温度および加圧ローラー71の温度とはわずかに異なる。よって,温度センサー77,78の検出温度を補正した温度を,定着ニップN2における定着ベルト75の温度および加圧ローラー71の温度としてもよい。
また,画像Aに係る用紙Pが定着ニップN2を通過している間にヒーター74による加熱を一時的に停止させることにより,通常モードの定着温度T1へ到達するまでに多少,時間がかかることとなる。しかし,ヒーター74による加熱の停止時間はそれほど長いものではないため,画像形成の生産性を大きく低下させることはない。すなわち,画像形成の生産性を高く維持しつつ,用紙Pのカールを抑制することができる。
また,温度差制限制御は,両面印刷における第1面への画像形成時に行うことが好ましい。前述したように,両面印刷では,定着ニップN2を通過した用紙Pはその後,表裏を反転させて両面搬送経路60へと搬送される。その表裏が反転されることにより,用紙Pの第2面への画像形成時には,第1面への画像形成時とは先端と後端とが反対になる。つまり,用紙Pの第1面への画像形成時には後端であった端は,表裏が反転された第2面への画像形成時には先端となる。
そして,用紙Pの先端側に大きなカールが発生している場合,その先端を,例えば,両面搬送経路60に沿って配置されている搬送ローラーのニップへ通すことができないおそれがある。よって,用紙Pの第1面への画像形成時における後端側のカールが大きいことにより,表裏が反転された後の第2面への画像形成時にジャムが発生するおそれがある。そして,両面印刷においては,温度差制限制御によって第1面への画像形成時における後端側のカールを抑制することにより,表裏を反転した用紙Pの第2面への画像形成を,ジャムを発生させることなく良好に行うことができるからである。
これに対し,第1面への画像形成のみを行う場合,および,第1面への画像形成後の第2面への画像形成時においては,定着ニップN2にて用紙Pの搬送方向の後端側にカールが生じたとしても,その後の搬送におけるジャムの発生頻度はそれほど高くない。なお,第1面への画像形成のみを行う場合,および,第1面への画像形成後の第2面への画像形成時においても,温度差制限制御を行うこととしてもよい。用紙Pのカールを抑制することができることに変わりはないからである。すなわち,画像形成が完了した用紙Pの排紙部55上での集積を良好に行うことができるからである。また,画像形成が完了した複数の用紙Pにより,高品質な製本を行うことができるからである。
また,上限温度差TDlimは,例えば,画像形成に用いる用紙Pの種類によって異なる値とすることが好ましい。例えば,厚さの厚い種類の用紙Pほど,コシが強く,カールが生じた場合にジャムが発生しやすくなる。このため,厚みのある用紙Pほど,カールが低減されることが好ましいからである。表1は,画像形成装置1において,用紙Pのカールを搬送においてジャムが発生しない程度に抑制することのできる上限温度差TDlimを,用紙Pの種類ごとに示したものである。
表1に示すように,厚みのある用紙Pほど,上限温度差TDlimとして低い値を用い,カールを抑制することが好ましい。なお,以下の表1は本形態の画像形成装置1における一例であり,例えば,異なる画像形成装置によっては上限温度差TDlimとして異なる温度差の値を用いることができる。
また,上記の表1に示す上限温度差TDlimは,用紙Pが定着ニップN2を通過する際の条件によって補正することができる。用紙Pの後端が定着ニップN2に到達したときの定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差は,その用紙Pの定着ニップN2の通過の際の条件によって異なる値になるからである。例えば,用紙Pの後端が定着ニップN2に到達したときの定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差は,その用紙Pの搬送方向についての長さが短いものであるときほど小さな値になる。用紙Pの搬送方向の長さが短いほど,用紙Pの全体により加圧ローラー71が奪われる熱量が少なくなるからである。よって,用紙Pとして,その搬送方向の長さが短いものを用いるときほど,上限温度差TDlimが低くなるように補正をすることができる。用紙Pの搬送方向の長さにより上限温度差TDlimを補正する補正値の例として,表2を示している。
また,用紙Pの後端が定着ニップN2に到達したときの定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差は,その用紙Pの定着ニップN2を通過する際の速度が速いときほど小さな値になる。用紙Pの定着ニップN2の通過の際の搬送速度が速いときほど,用紙Pの全体により加圧ローラー71が奪われる熱量は少なくなるからである。よって,用紙Pの搬送速度が速いときほど,上限温度差TDlimが低くなるように補正をすることができる。用紙Pの搬送速度により上限温度差TDlimを補正する補正値の例として,表3を示している。
さらに,用紙Pの後端が定着ニップN2に到達したときの定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差は,用紙Pが定着ニップN2を通過中の加熱温度の上昇速度を遅くしたときほど小さなものとなる。用紙Pの先端が定着ニップN2へ到達したときの定着ベルト75の温度と,その用紙Pの後端が定着ニップN2へ到達したときの定着ベルト75の温度との差が小さくなるからである。加えて,用紙Pの後端が定着ニップN2に到達したときの定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差は,低温モードの定着温度T2と通常モードの定着温度T1との差が小さいほど小さなものとなる傾向にある。よって,上限温度差TDlimは,これら定着ニップN2における用紙Pの加熱温度の上昇速度や,低温モードと通常モードとの加熱温度の差による補正を行うこともできる。
また,用紙Pのカールの程度は,当然,環境の温度や湿度による影響を受ける。よって,画像形成装置1に環境の温度や湿度を検出するセンサーを設け,そのセンサーの検出値により上限温度差TDlimの補正を行うこともできる。よって,上記の用紙Pの種類やその搬送方向の長さ,用紙Pの定着ニップN2を通過する際の搬送速度などの条件と上限温度差TDlimとの関係を予め実験などにより取得し,その関係を上限温度差テーブルとして不揮発性メモリ5に記憶させておけばよい。そして,画像形成時には,上限温度差TDlimとして,その画像形成に該当する条件により不揮発性メモリ5の上限温度差テーブルを参照して定めた値を用いて温度差制限制御を実行すればよい。
[第2の形態]
第2の形態について説明する。本形態においても,画像形成装置1の構成などは,上記の第1の形態と同じである。また,第2の形態でも,定着処理部70による定着処理において,スマート定着制御を行う。これにより,定着ニップN2へ用紙Pが通過する際には,定着ニップN2の位置における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差が大きくなってしまうことがある。よって,定着ニップN2を通過した用紙Pの後端側には,その後の搬送においてジャムが生じるほどの大きなカールが発生するおそれがある。
このため,第2の形態においても,定着ニップN2を通過した用紙Pに大きなカールが発生しないように,定着ニップN2における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差を低く抑えるための温度差制限制御を行う。そして,第2の形態では,第1の形態とは異なる温度差制限制御を行う。詳細には,本形態の温度差制限制御では,定着ニップN2における用紙Pの加熱温度の上昇速度を調整することにより行う。
また,本形態においても,まず,CPU4において,画像形成ジョブの実行前にそのジョブの情報に基づいて,定着ニップN2を用紙Pが通過している間の定着ニップN2における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差をシミュレーションにより推定する。そして,推定した温度差が上限温度差TDlimを超えてしまっている場合,温度差制限制御を行いつつ,用紙Pの定着処理を行う。本形態の温度差制限制御では,ヒーター74による加熱を制限しつつ,定着ニップN2における用紙Pの加熱温度を上昇させる。
本形態の温度差制限制御について,図8により詳細に説明する。図8においても,モノクロ画像である画像Aに係る用紙Pとカラー画像である画像Bに係る用紙Pとが,この順で定着ニップN2を通過する場合の定着処理部70の温度を示したものである。図8では,第2の形態に係る温度差制限制御を行った場合について,実線により定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度を,破線により加圧ローラー71の定着ニップN2付近の温度をそれぞれ示している。
また,二点鎖線により,温度差制限制御を行わなかった場合の定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度を示している。二点鎖線で示す定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度は,ヒーター74による加熱を制限せずに,定着ニップN2における用紙Pの加熱温度を定着温度T2から定着温度T1まで最短昇温時間t3(図4)で上昇させたときのものである。つまり,二点鎖線で示す定着ベルト75の定着ニップ75付近の温度は,シミュレーションによるものである。
本形態においても,画像Aの露光が開始されてから時間Δt経過時に,温調モードが低温モードから通常モードに切り替えられている。モノクロ画像である画像Aの次の画像Bがカラー画像であるからである。また,温調モードが低温モードから通常モードに切り替えられたことにより,画像Aに係る用紙Pが定着ニップN2を通過中に,定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度は上昇している。
そして,本形態では,図8に示すように,温度差制限制御を行った場合の定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度は,二点鎖線で示す温度差制限制御を行わなかった場合のものと比較して緩やかに上昇している。温度差制限制御により,シミュレーションのときよりも,ヒーター74による加熱を制限しているからである。
このため,温度差制限制御を行った場合の定着ニップN2付近における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差TD5は,温度差制限制御を行わなかった場合の温度差TD3よりも低く抑えられている。また,図8に示すように,温度差TD5は,上限温度差TDlimよりも低く抑えられている。よって,本形態においても,用紙Pの後端側に大きなカールを生じさせることなく,定着処理を行うことができる。これにより,定着ニップN2を通過後の用紙Pの搬送におけるジャムの発生を抑制することができる。
[第3の形態]
第3の形態について説明する。本形態においても,画像形成装置1の構成などは,上記の形態と同じである。また,第3の形態でも,定着処理部70による定着処理において,スマート定着制御を行う。これにより,定着ニップN2へ用紙Pが通過する際には,定着ニップN2の位置における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差が大きくなってしまうことがある。よって,定着ニップN2を通過した用紙Pの後端側には,その後の搬送においてジャムが生じるほどの大きなカールが発生するおそれがある。
このため,第3の形態においても,定着ニップN2を通過した用紙Pに大きなカールが発生しないように,定着ニップN2における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差を低く抑えるための温度差制限制御を行う。そして,第3の形態では,上記の形態とは異なる温度差制限制御を行う。詳細には,本形態の温度差制限制御では,上記の形態よりも低温モードから通常モードへの切り替えタイミングを早くする。
また,本形態においても,まず,CPU4において,画像形成ジョブの実行前にそのジョブの情報に基づいて,定着ニップN2を用紙Pが通過している間の定着ニップN2における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差をシミュレーションにより推定する。そして,推定した温度差が上限温度差TDlimを超えてしまっている場合,温度差制限制御を行いつつ,用紙Pの定着処理を行う。本形態の温度差制限制御は,低温モードから通常モードへの切り替えタイミングを早めつつ,定着ニップN2における用紙Pの加熱温度を上昇させる。
本形態の温度差制限制御について,図9により詳細に説明する。図9においても,モノクロ画像である画像Aに係る用紙Pとカラー画像である画像Bに係る用紙Pとが,この順で定着ニップN2を通過する場合の定着処理部70の温度を示したものである。図9では,第3の形態に係る温度差制限制御を行った場合について,実線により定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度を,破線により加圧ローラー71の定着ニップN2付近の温度をそれぞれ示している。
また,図9に示すように,第3の形態では,画像Aの露光が開始されてから時間Δt1経過時に,温調モードが低温モードから通常モードに切り替えられている。すなわち,本形態では,図4により説明した時間Δtよりも時間αだけ早くに,温調モードが低温モードから通常モードに切り替えられている。時間αは,時間Δt未満の時間に設定することができる。また,時間Δtは,シミュレーションにおける温調モードの切り替えタイミングである。
すなわち,本形態の温度差制限制御では,温調モードを低温モードから通常モードに切り替えるタイミングがシミュレーションにおけるタイミングよりも早められている。これにより,定着ベルト75の定着ニップN2における温度を,上記の形態と比較して早く,定着温度T1まで上昇させることができる。よって,画像Aの次の画像Bに係る用紙Pを,上記の形態よりも早いタイミングで定着ニップN2へ通過させることが可能となる。
また,温調モードが低温モードから通常モードに切り替えられたことにより,画像Aに係る用紙Pが定着ニップN2を通過中に,定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度は上昇している。そして,本形態の温度差制限制御では,図9に示すように,用紙Pが定着ニップN2に突入後,その用紙Pの後端が定着ニップN2を通過する前に,ヒーター74の加熱を停止している。このヒーター74による加熱の停止については,上記の第1の形態の図7により説明したものと同様である。すなわち,ヒーター74による加熱を一時的に停止させることにより,用紙Pの後端が定着ニップN2へ到達したときの温度差TD6を,上限温度差TDlimよりも低く抑えている。これにより,用紙Pの後端側に大きなカールを生じさせることなく定着処理を行うことができ,定着ニップN2を通過後の用紙Pの搬送におけるジャムの発生を抑制することができる。
よって,本形態の温度差制限制御では,定着ニップN2付近における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差TD6を上限温度差TDlimよりも低く抑えつつ,画像形成の生産性を高めることができる。なお,上記の説明では,第1の形態と同様にヒーター74による加熱を一時的に停止させることにより(図7),温度差TD6を,上限温度差TDlimよりも低く抑えている。しかし,第2の形態と同様にヒーター74による加熱を制限することにより(図8),温度差TD6を,上限温度差TDlimよりも低く抑えることも可能である。
[第4の形態]
第4の形態について説明する。本形態においても,画像形成装置1の構成などは,上記の形態と同じである。また,第4の形態でも,定着処理部70による定着処理において,スマート定着制御を行う。これにより,定着ニップN2へ用紙Pが通過する際には,定着ニップN2の位置における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差が大きくなってしまうことがある。よって,定着ニップN2を通過した用紙Pの後端側には,その後の搬送においてジャムが生じるほどの大きなカールが発生するおそれがある。
このため,第4の形態においても,定着ニップN2を通過した用紙Pに大きなカールが発生しないように,定着ニップN2における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差を低く抑えるための温度差制限制御を行う。そして,第4の形態では,上記の形態とは異なる温度差制限制御を行う。詳細には,本形態の温度差制限制御では,用紙Pの搬送速度を調整することにより行う。
また,本形態においても,まず,CPU4において,画像形成ジョブの実行前にそのジョブの情報に基づいて,定着ニップN2を用紙Pが通過している間の定着ニップN2における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差をシミュレーションにより推定する。そして,推定した温度差が上限温度差TDlimを超えてしまっている場合,温度差制限制御を行いつつ,用紙Pの定着処理を行う。本形態の温度差制限制御では,定着ニップN2に到達する前の用紙Pの搬送速度を,通常時の搬送速度よりも遅くする。
本形態の温度差制限制御について,図10により詳細に説明する。図10においても,モノクロ画像である画像Aに係る用紙Pとカラー画像である画像Bに係る用紙Pとが,この順で定着ニップN2を通過する場合の定着処理部70の温度を示したものである。また,実線により定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度を,破線により加圧ローラー71の定着ニップN2付近の温度をそれぞれ示している。
また,図10に示すように,第4の形態では,図4により説明した画像Aの露光を開始してから画像Aの先端が定着ニップN2へ到達するまでの時間t1経過時よりも遅くに,に,画像Aの先端が定着ニップN2へ到達している。時間t1は,シミュレーションにおける画像Aの露光を開始してから画像Aの先端が定着ニップN2へ到達するまでの時間である。つまり,画像Aに係る用紙Pを定着ニップN2へ通過させるタイミングを,シミュレーションにおけるタイミングよりも遅くしている。
具体的には,第4の形態では,画像Aに係る用紙Pの後端が定着ニップN2を通過する前に,定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度が定着温度T1に到達するようにしている。そして,画像Aに係る用紙Pが定着ニップN2を通過している間に,定着温度T1に達した定着ベルト75の温度がそれ以上上昇していないことにより,定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差TD7は小さいものである。これにより,本形態では,温度差TD7が上限温度差TDlimよりも低く抑えられている。
また,画像Aに係る用紙Pを定着ニップN2へ通過させるタイミングをシミュレーションにおける時間t1経過時よりも遅くするため,本形態では,定着ニップN2に到達する用紙Pの搬送速度をシミュレーション時よりも遅くしている。具体的には,画像Aに係る用紙Pの搬送速度を,その先端が2次転写ニップN1に到達する前,あるいは,後端が2次転写ニップN1を通過してから先端が定着ニップN2に到達する前に,シミュレーション時の搬送速度よりも遅い搬送速度に切り替えてしている。用紙Pが2次転写ニップN1を通過中に搬送速度を遅く変化させた場合,用紙Pに転写されている画像Aにノイズが発生してしまうおそれがあるからである。つまり,画像Aの2次転写ニップN1における用紙Pへの転写を適切に行いつつ,温度差TD7を上限温度差TDlimよりも低く抑えることができる。よって,本形態においては,形成される画像の品質を高く保ちつつ,用紙Pのカールを低減して定着ニップN2を通過後の用紙Pの搬送におけるジャムの発生を抑制することができる。なお,画像Aに係る用紙Pの搬送速度をシミュレーション時よりも一時的に遅くした後,その用紙Pの先端が定着ニップN2に到達する前に,シミュレーション時の搬送速度に戻すこととしてもよい。または,画像Aに係る用紙Pの先端が2次転写ニップN1に到達する前,あるいは,後端が2次転写ニップN1を通過してから先端が定着ニップN2に到達する前に,その用紙Pの搬送を一時的に止めることとしてもよい。
[第5の形態]
第5の形態について説明する。本形態においても,画像形成装置1の構成などは,上記の形態と同じである。また,第5の形態でも,定着処理部70による定着処理において,スマート定着制御を行う。これにより,定着ニップN2へ用紙Pが通過する際には,定着ニップN2の位置における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差が大きくなってしまうことがある。よって,定着ニップN2を通過した用紙Pの後端側には,その後の搬送においてジャムが生じるほどの大きなカールが発生するおそれがある。
このため,第5の形態においても,定着ニップN2を通過した用紙Pに大きなカールが発生しないように,定着ニップN2における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差を低く抑えるための温度差制限制御を行う。そして,第5の形態では,上記の形態とは異なる温度差制限制御を行う。詳細には,本形態の温度差制限制御は,上記の形態よりも低温モードから通常モードへの切り替えタイミングを遅くすることにより行う。
また,本形態においても,まず,CPU4において,画像形成ジョブの実行前にそのジョブの情報に基づいて,定着ニップN2を用紙Pが通過している間の定着ニップN2における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差をシミュレーションにより推定する。そして,推定した温度差が上限温度差TDlimを超えてしまっている場合,温度差制限制御を行いつつ,用紙Pの定着処理を行う。本形態の温度差制限制御は,低温モードから通常モードへの切り替えタイミングを遅くすることにより行う。
本形態の温度差制限制御について,図11により詳細に説明する。図11においても,モノクロ画像である画像Aに係る用紙Pとカラー画像である画像Bに係る用紙Pとが,この順で定着ニップN2を通過する場合の定着処理部70の温度を示したものである。また,実線により定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度を,破線により加圧ローラー71の定着ニップN2付近の温度をそれぞれ示している。
また,図11に示すように,第5の形態では,画像Aの露光が開始されてから時間Δt2経過時に,温調モードが低温モードから通常モードに切り替えられている。すなわち,本形態では,図4により説明した時間Δtよりも時間βだけ遅く,温調モードが低温モードから通常モードに切り替えられている。時間Δtは,シミュレーションにおける温調モードの切り替えタイミングである。すなわち,本形態の温度差制限制御では,温調モードを低温モードから通常モードに切り替えるタイミングがシミュレーションにおけるタイミングよりも遅くされている。
また,第5の形態では,図11に示すように,画像Aに係る用紙Pが定着ニップN2を通過している間,温調モードは低温モードとされている。このため,画像Aに係る用紙Pが定着ニップN2を通過中に,定着ベルト75の定着ニップN2付近の温度は定着温度T2で一定に維持されている。
そして,画像Aに係る用紙Pが定着ニップN2を通過している間の定着ベルト75の温度が定着温度T2に維持されていることにより,定着ニップN2における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差TD8は小さいものである。よって,本形態では,温度差TD8が上限温度差TDlimよりも低く抑えられている。また,画像Aに係る用紙Pの後端が定着ニップN2を通過した後には,通常モードに切り替えられていることにより,定着ベルト75の温度が定着温度T1まで上昇している。なお,温調モードの切り替えは,画像Aに係る用紙Pの後端が定着ニップN2に到達するよりも前に行ってもよい。この場合,時間Δt2を,温度差TD8が上限温度差TDlimを超えないことを条件として求めればよい。
[第6の形態]
第6の形態について説明する。本形態においても,画像形成装置1の構成などは,上記の形態と同じである。また,第6の形態でも,定着処理部70による定着処理において,スマート定着制御を行う。これにより,定着ニップN2へ用紙Pが通過する際には,定着ニップN2の位置における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差が大きくなってしまうことがある。よって,定着ニップN2を通過した用紙Pの後端側には,その後の搬送においてジャムが生じるほどの大きなカールが発生するおそれがある。
このため,第6の形態においても,定着ニップN2を通過した用紙Pに大きなカールが発生しないように,定着ニップN2における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差を低く抑えるための温度差制限制御を行う。そして,第6の形態では,上記の形態とは異なり,複数の画像を連続して形成する際の画像の形成順序を入れ替えつつ温度差制限制御を行う。
本形態においては,図4に示すように,画像A,画像B,画像Cの3つの画像形成を行う場合について説明する。また,本形態においても,画像Aおよび画像Cはモノクロ画像であり,画像Bはカラー画像である。よって,スマート定着制御により,画像Aおよび画像Cに係る用紙Pについては低温モードの定着温度T2により定着処理を行い,画像Bに係る用紙Pについては通常モードの定着温度T1により定着処理を行う。
そして,このような場合であっても,通常,印字コマンドは,図4に示すように,画像A,画像B,画像Cの順に発する。つまり,通常であれば,用紙P1の第1面に画像Aを形成し,用紙P1が両面搬送経路60を通過している間に,用紙Pの第1面に画像Bを形成する。また,画像Bを形成後,用紙P1の第2面に画像Cを形成する。
しかし,本形態では,画像の印字コマンドの生成時に,その印字コマンドに係る画像の前の画像についての温調モードの情報をも考慮する。そして,印字コマンドを生成する画像とその画像の次の画像との印字コマンドを発する順序を入れ替えて画像形成を行うか否かを判断する。
このことについて,画像Bの印字コマンドの生成時について説明する。まず,画像Bの印字コマンドを生成する場合,画像Bの前の画像Aおよび画像Bの次の画像Cの温調モードにおける定着温度がともに,画像Bの温調モードにおける定着温度よりも低いか否かを判断する。また,画像Aおよび画像Cについての定着温度がともに画像Bについての定着温度よりも低い場合,画像Bが用紙Pの第1面へ形成されるものであるか否かを判断する。さらに,画像Bが用紙Pの第1面へ形成されるものである場合,画像Cが,すでに第1面への画像形成がなされた用紙Pの第2面へ形成されるものであるか否かを判断する。そして,画像Cが用紙Pの第2面へ形成されるものである場合,画像Bと画像Cとの順序を入れ替え,画像Cを形成した後,画像Bの形成を行う。そして,画像Cの定着処理においては,画像Bの温調モードにおける定着温度が,画像Cの温調モードにおける定着温度よりも高いため,温度差制限制御を実行する。
次に,画像Aおよび画像Cをそれぞれ同一の用紙Pの第1面および第2面に形成し,画像Bを画像Aおよび画像Cとは異なる用紙Pの第1面に形成する場合について,図12により具体的に説明する。ここで,画像Aおよび画像Cを形成する用紙Pを用紙P1とする。つまり,用紙P1の第1面に画像Aを形成し,用紙P1の第2面に画像Cを形成する。また,画像Bについては,用紙P1とは異なる用紙P2の第1面に形成する。
まず,画像Aについては,最初に形成される画像であるため,画像Aおよび画像Bについての情報により印字コマンドを生成する。また,画像Aの印字コマンドでは,画像Bが通常モード,画像Aが低温モードである。このため,図12に示すように,画像Aの露光が開始されてから時間Δt経過時に,温調モードが低温モードから通常モードに切り替えられている。そして,画像Aを第1面に担持した用紙P1が定着ニップN2を通過しているときには,上記第1の形態に係る図7と同様に,ヒーター74による加熱を停止させる温度差制限制御が行われている。このため,画像Aを第1面に担持した用紙P1の後端における定着ニップN2の定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差TD9は,上限温度差TDlimよりも低く抑えられている。また,定着ニップN2を通過することにより第1面に画像Aが形成された用紙P1は,表裏が反転された後,両面搬送経路60へと搬送される。さらに,第1面に画像Aが形成された用紙P1が定着ニップN2を通過した後,停止していたヒーター74による加熱が再開されている。
次に,画像Bの印字コマンドは,画像A,画像B,画像Cの情報により生成される。ここで,画像Bの前の画像Aおよび画像Bの次の画像Cの温調モードはともに低温モードであるため,これらの定着温度は,通常モードである画像Bの定着温度T1よりも低い定着温度T2である。また,画像Bは用紙P2の第1面へ形成されるものである。さらに,画像Cは,すでに第1面へ画像Aの形成がなされた用紙P1の第2面へ形成されるものである。このため,画像Bと画像Cとの順序を入れ替え,画像Bよりも先に,画像Cを形成すると判断される。
そして,画像Cの印字コマンドでは,入れ替えられたことによる後の画像Bが通常モードであり,その定着温度T1は,低温モードの画像Cの定着温度T2よりも高いものである。このため,図12に示すように,画像Cを第2面に担持した用紙P1が定着ニップN2を通過しているときには,上記第1の形態に係る図7と同様に,ヒーター74による加熱を停止させる温度差制限制御が行われている。このため,画像Cを第2面に担持した用紙P1の後端における定着ニップN2の定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差TD10は,上限温度差TDlimよりも低く抑えられている。また,第2面に画像Cが形成された用紙P1が定着ニップN2を通過した後,停止していたヒーター74による加熱が再開されている。そして,定着ニップN2における定着ベルト75が通常モードの定着温度T1へと到達した後,画像Bを第1面に担持した用紙P2が定着ニップN2を通過している。
よって,本形態においても,両面に画像Aおよび画像Cが形成される用紙P1のカールを低減してジャムの発生を抑制するとともに,画像Bの用紙P2の第1面への定着処理を良好に行うことができる。なお,本形態では,画像の形成順序を入れ替えつつ,温度差制限制御を第1の形態(図7)と同様に行うこととして説明している。しかし,第1の形態に限らず,第2〜第5の形態(図8〜図11)のうちのいずれかと同様の温度差制限制御を行ってもよい。
以上詳細に説明したように上記の形態の画像形成装置1では,スマート定着制御を行う。また,スマート定着制御行いつつ,用紙Pが定着ニップN2を通過している間の定着ニップN2における定着ベルト75と加圧ローラー71との温度差が,上限温度差TDlimを超えないように画像形成を行う温度差制限制御を実行する。これにより,定着処理における消費電力を低減するとともに,カールの発生が抑制されている。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。従って本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,本発明は,カラープリンターに限らず,複写機などにも適用可能である。また例えば,画像形成装置1は,上記の第1〜第5の形態で説明したそれぞれ異なる温度差制限制御のうち,画像形成の生産性や定着処理部70での消費電力の観点より好ましい温度差制限制御を選択して行うものであってもよい。また例えば,スマート定着制御において,温調モードは,通常モードと低温モードとに限らず,通常モードよりも定着温度の高いモードや,低温モードよりも定着温度の低いモードを設けてもよい。