JP6015488B2 - 定着部材、定着装置、及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
トナー像への熱伝導が遅くなると、定着部材表面をトナー像の定着温度まで加熱するのに多くの時間が必要となり、高速機の場合には、熱の供給が間に合わなくなる。また、画像形成装置の立ち上がり速度が遅くなってしまうこともある。なお、定着装置の定着部材の温度上昇に対する立ち上がり速度が、電源投入時における画像形成装置全体の立ち上がりの律速になっていることが多い。
<1>、トナーの定着に用いられる定着部材であって、前記定着部材が、基材と、該基材の外周に設けられた弾性層と、該弾性層の外周に設けられた離型層とを備えており、該弾性層がシリコーンゴムと炭素繊維と常温で液状の飽和炭化水素とを含有しており、且つ、該弾性層が空孔部を有することを特徴とする定着部材。
<2>、前記飽和炭化水素が弾性層の成型温度よりも高い沸点を有していることを特徴とする前記<1>に記載の定着部材。
<3>、前記<1>又は<2>のいずれかに記載の定着部材を備えたことを特徴とする定着装置。
<4>、前記<3>に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
図1は、本発明の実施形態の1つの定着部材の構成を示す断面図である。なお、本発明の定着部材は、ローラ、ベルト、シート等、どのような形状でもよい。図1に示す定着部材1は、基材2と、基材2の外周に設けられた弾性層3と、弾性層3の外周に設けられた離型層4とを備えている。定着部材の各層の間には必要に応じてプライマー層を設けてもよい。
図2は、図1における定着部材例の微細構造を拡大して説明する図である。弾性層3は、シリコーンゴム5と炭素繊維6と空孔部7と飽和炭化水素(不図示)とから構成されている。
シリコーンゴム5としては、オルガノシロキサン構造を有するゴムであれば特に限定されずに用いることができる。シリコーンゴムとしては、例えば、KE−1950−30(信越化学工業)、DY35−2083(東レ・ダウコーニング)等が挙げられる。シリコーンゴムの中でも付加型液状シリコーンゴムは90〜140℃程度の温度で硬化し、加工性に優れるため好ましい。
炭素繊維6としては、プリカーサー(炭素繊維の原料を繊維化したもの)を炭素化して得られるものを用いることができる。炭素繊維には製造条件によってピッチ系炭素繊維とPAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維とがある。ピッチ系炭素繊維としては、例えば、GRANOC(R)XN−100−05M、XN−100−15M(日本グラファイトファイバー)、ダイアリード(R)K223QM、K6361M、K223HM(三菱樹脂)、ドナカーボ・ミドルS−2404、S−249、S−241、SG−249(大阪ガスケミカル)等が挙げられる。PAN系炭素繊維としては、例えば、トレカ(R)ミルドファイバーMLD−30、MLD−300、MLD−1000(東レ)、パイロフィル(R)チョップドファイバー(三菱レイヨン)などが挙げられる。ピッチ系炭素繊維はPAN系炭素繊維よりも熱伝導性に優れるため好ましい。また、炭素繊維としては、アスペクト比の大きいカーボンナノチューブを用いることもできる。
空孔部7は、発泡剤や発泡粒子などにより形成することができる。発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、アゾビスイソブチロニトリル、水等が挙げられる。発泡粒子としては、例えば、マツモトマイクロスフェアー(R)F−30、F−36、F−50、F−55、FN−80SDE、F−65DE、F−80DE(松本油脂製薬)、エクスパン(R)053−40、031−40、551DE40d42、920DE40d30、EMC40(B)(日本フィライト)等が挙げられる。発泡剤、発泡粒子は弾性層を加熱成型する際に膨張して空孔部を形成することができる。また、未膨張の発泡粒子を膨張させて既発泡粒子とした後に配合することもできる。既発泡粒子は膨張が完了しているので成型工程で体積や形状が変化しにくく、寸法精度に優れるため好ましい。
空孔部を形成する発泡材料の添加量は、シリコーンゴム100重量部に対して好ましくは0.1〜5重量部、更に好ましくは0.5〜3重量部の範囲である。添加量が0.1重量部未満の場合には熱容量の低減が見られない。また、添加量が5重量部を超える場合には成型した定着部材の強度や表面性(表面粗さ)の低下を招くため好ましくない。
飽和炭化水素としては、鎖式の飽和炭化水素や環式の飽和炭化水素を用いることができる。飽和炭化水素としては、例えば、シクロオクタン(沸点149℃)、ノナン(沸点151℃)、デカン(沸点174℃)、イソデカン(沸点166℃)、シクロデカン(沸点201℃)、ウンデカン(沸点196℃)、ドデカン(沸点216℃)、イソドデカン(沸点177℃)、トリデカン(沸点235℃)、テトラデカン(沸点253℃)、ペンタデカン(沸点270℃)、ヘキサデカン(沸点287℃)、ペンタデカン(沸点303℃)、オクタデカン(沸点317℃)、ノナデカン(沸点330℃)等が挙げられる。飽和炭化水素は反応性が低く安定であり、シリコーンゴムとの相溶性が良く、シリコーンゴムの硬化に影響を及ぼさないため好ましい。飽和炭化水素の中でも炭素数19以下のものは、弾性層と離型層との間にブリードアウトして両層の接着強度を弱めることがないため好ましい。
更に、飽和炭化水素の中でも常温で液状のものは、シリコーンゴムとの相溶性が良く、均一に分散するため好ましい。
弾性層の組成物は、シリコーンゴムに炭素繊維と空孔部を形成する材料と飽和炭化水素とを混合/混錬分散して調製することができる。なお、弾性層には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、目的に応じて、公知の架橋剤、充填剤、導電剤、ゴム及びプラスチック材料用劣化防止剤、耐熱剤等の添加剤を任意に添加することができる。
弾性層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、弾性層の組成物をブレード塗装、ダイ塗装、ディップ塗装などで塗布し、その後、熱や電子線などで硬化する方法が挙げられる。
また、膜厚が4mmを超える場合には熱伝導性の低下や熱容量の増大を招き、画像形成装置の高速化や立ち上がりの迅速性に影響することがある。
基材の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、基材の材料を金型成型する方法が挙げられる。
例えば、離型層の材料をチューブ状にしたものを弾性層に被せる方法、湿式スプレー塗装や粉体塗装した後に焼き付ける方法などが挙げられる。
離型層の膜厚は、好ましくは1〜100μm、更に好ましくは10〜100μmの範囲である。膜厚が1μm未満の場合には離型層の耐久性が劣り、また定着部材表面を十分平滑にすることが難しくなる。一方、膜厚が100μmを超える場合には画像追従性の低下や伝熱抵抗の増大を招くことがあり好ましくない。
図3は、本発明の実施形態の1つの定着装置(ローラ方式)例の構成を示す概略図である。同図において、ローラ方式定着装置10は、本発明の定着部材である定着ローラ11の内部に、加熱手段であるハロゲンランプ等のヒータ12を内蔵している。定着ローラ21には、温度センサー(不図示)が配置されている。加圧ローラ13は、定着ローラ11に圧接されており、記録媒体Pが通過してトナー像Tが定着されるニップ部を形成している。定着ローラ11は、基材である芯金の表面に弾性層と離型層を順次設けてあり、図1、図2における定着部材と同じ構造である。加圧ローラ13は、基材である芯金の表面に耐熱性ゴムで形成された弾性層と離型層を順次設けてある。
ベルト方式定着装置20は、本発明の定着部材である定着ベルト21、定着ローラ22、加熱ローラ23、加圧ローラ24から構成されている。定着ベルト21は定着ローラ22と加熱ローラ23とに張架・支持されている。加圧ローラ24は、定着ベルト21に圧接されており、記録媒体Pが通過してトナー像Tが定着されるニップ部を形成している。
図5は、本発明の実施形態の1つの画像形成装置例の構成を示す概略図である。同図において、画像形成装置30は、トナー像を形成して記録媒体に転写する画像形成部と、記録媒体に転写された画像を定着させる定着装置とを有している。画像形成部は、静電潜像が形成される像担持体31、像担持体31に接触して帯電処理を行う帯電ローラ32、レーザービーム等の露光装置33、像担持体31上に形成された静電潜像にトナーを付着させる現像ローラ34、帯電ローラ32にDC電圧を印加するための電源35、像担持体31上のトナー像を記録媒体Pに転写処理する転写ローラ36、転写処理後の像担持体31をクリーニングするためのクリーニング装置37、像担持体31の表面電位を測定する表面電位計38等を備えている。定着装置39は、本発明に係る定着装置であり、定着ベルト40および加圧ローラ41から構成されている。
シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング製、DY35−2083)100重量部、炭素繊維(日本グラファイトファイバー製、GRANOC(R)XN−100−05M)45重量部、発泡粒子(松本油脂製薬製、マツモトマイクロスフェアー(R)F−65DE)1.0重量部、イソドデカン(沸点177℃)15重量部を分散し、弾性層組成物を調製した。
円筒状のポリイミド基材(直径60mm、厚み50μm)上にシリコーン用プライマーを塗布して乾燥させた。次に、基材上に上記弾性層組成物を塗布し、130℃で10分間加熱硬化させ、厚み300μmの弾性層を形成した。次に、弾性層上にシリコーン用プライマーを塗布して、フッ素樹脂チューブ(グンゼ製、SMT)をかぶせ、200℃で4時間加熱して、厚み20μmの離型層を形成した。
シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング製、DY35−2083)100重量部、炭素繊維(日本グラファイトファイバー製、GRANOC(R)XN−100−05M)45重量部、発泡粒子(松本油脂製薬製、マツモトマイクロスフェアー(R)F−65DE)1.0重量部、シクロデカン(沸点201℃)15重量部を分散し、弾性層組成物を調製した。
円筒状のポリイミド基材(直径60mm、厚み50μm)上にシリコーン用プライマーを塗布して乾燥させた。次に、基材上に上記弾性層組成物を塗布し、130℃で10分間加熱硬化させ、厚み300μmの弾性層を形成した。次に、弾性層上にシリコーン用プライマーを塗布して、フッ素樹脂チューブ(グンゼ製、SMT)をかぶせ、200℃で4時間加熱して、厚み20μmの離型層を形成した。
以上のようにして製作した定着部材について、実施例1と同様にしてベタ画像の光沢ムラを判定した。
シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング製、DY35−2083)100重量部、炭素繊維(日本グラファイトファイバー製、GRANOC(R)XN−100−05M)50重量部、発泡粒子(松本油脂製薬製、マツモトマイクロスフェアー(R)FN−80SDE)1.5重量部、ドデカン(沸点216℃)10重量部を分散し、弾性層組成物を調製した。
以上のようにして製作した定着部材について、実施例1と同様にしてベタ画像の光沢ムラを判定した。
シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング製、DY35−2083)100重量部、炭素繊維(三菱樹脂製、ダイアリード(R)K223HM、平均繊維長50μm)40重量部、発泡粒子(松本油脂製薬製、マツモトマイクロスフェアー(R)FN−80SDE)1.2重量部、テトラデカン(沸点253℃)5重量部を分散し、弾性層組成物を調製した。
以上のようにして製作した定着部材について、実施例1と同様にしてベタ画像の光沢ムラを判定した。
シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング製、DY35−2083)100重量部、炭素繊維(大阪ガスケミカル製、ドナカーボ・ミドルS−249)40重量部、発泡粒子(日本フィライト製、エクスパン(R)920DE40d30)1.2重量部、ヘキサデカン(沸点287℃)2重量部を分散し、弾性層組成物を調製した。
シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング製、DY35−2083)100重量部、炭素繊維(日本グラファイトファイバー製、GRANOC(R)XN−100−05M)45重量部、発泡粒子(松本油脂製薬製、マツモトマイクロスフェアー(R)F−65DE)1.0重量部を分散し、弾性層組成物を調製した。
円筒状のポリイミド基材(直径60mm、厚み50μm)上にシリコーン用プライマーを塗布して乾燥させた。次に、基材上に上記弾性層組成物を塗布し、130℃で10分間加熱硬化させ、厚み300μmの弾性層を形成した。次に、弾性層上にシリコーン用プライマーを塗布して、フッ素樹脂チューブ(グンゼ製、SMT)をかぶせ、200℃で4時間加熱して、厚み20μmの離型層を形成した。
以上のようにして製作した定着部材について、実施例1と同様にしてベタ画像の光沢ムラを判定した。
シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング製、DY35−2083)100重量部、炭素繊維(日本グラファイトファイバー製、GRANOC(R)XN−100−05M)45重量部、発泡粒子(松本油脂製薬製、マツモトマイクロスフェアー(R)F−65DE)1.0重量部、オクタン(沸点126℃)15重量部を分散し、弾性層組成物を調製した。
円筒状のポリイミド基材(直径60mm、厚み50μm)上にシリコーン用プライマーを塗布して乾燥させた。次に、基材上に上記弾性層組成物を塗布し、130℃で10分間加熱硬化させた。更に200℃で4時間加熱して、厚み300μmの弾性層を形成した。
次に、弾性層上にシリコーン用プライマーを塗布して、フッ素樹脂チューブ(グンゼ製、SMT)をかぶせ、200℃で4時間加熱して、厚み20μmの離型層を形成した。
以上のようにして製作した定着部材について、実施例1と同様にしてベタ画像の光沢ムラを判定した。
ランク1:光沢ムラがあり、異常画像である。判定×
ランク2:光沢ムラが認められるが、許容レベルである(異常画像ではない)。判定○
ランク3:光沢ムラなし。判定○
2:基材
3:弾性層
4:離型層
5:シリコーンゴム
6:炭素繊維
7:空孔部
10:ローラ方式定着装置
11:定着ローラ(定着部材)
12:ヒータ
13:加圧ローラ
20:ベルト方式定着装置
21:定着ベルト(定着部材)
22:定着ローラ
23:加熱ローラ
24:加圧ローラ
30:画像形成装置
31:像担持体
32:帯電ローラ
33:露光装置
34:現像装置
35:電源
36:転写ローラ
37:クリーニング装置
38:表面電位計
39:定着装置
40:定着ベルト
41:加圧ローラ
Claims (4)
- トナーの定着に用いられる定着部材であって、前記定着部材が、基材と、該基材の外周に設けられた弾性層と、該弾性層の外周に設けられた離型層とを備えており、該弾性層がシリコーンゴムと炭素繊維と常温で液状の飽和炭化水素とを含有しており、且つ、該弾性層が空孔部を有することを特徴とする定着部材。
- 前記飽和炭化水素が弾性層の成型温度よりも高い沸点を有していることを特徴とする請求項1に記載の定着部材。
- 請求項1又は2のいずれかに記載の定着部材を備えたことを特徴とする定着装置。
- 請求項3に記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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