以下、実施例を図面を用いて説明する。
A.第1実施例:
A−1.現金取引処理システムの構成:
A−2.紙幣入金処理:
A−3.紙幣出金処理:
A−4.取り忘れ回収処理:
B.第2実施例:
C.変形例:
A.第1実施例:
A−1.現金取引処理システムの構成:
図1は、本発明の実施例における現金取引処理システム100の概略構成を示す説明図である。現金取引処理システム100は、紙幣および硬貨といった現金を取引できる現金自動取引装置(以下、「ATM」とも呼ぶ)10と、サーバとしてのホストコンピュータ50と、ATM10とホストコンピュータ50とを接続するネットワークNTと、を備える。ATM10とホストコンピュータ50とは、ネットワークNTを介して、入金取引の電子文書や出金取引の電子文書といった取引処理の電子文書を表わす情報をやり取りする。なお、図1には、ホストコンピュータ50がネットワークNTを介して1台のATM10と接続されている様子が示されているが、ホストコンピュータ50は、複数のATM10と接続されてもよい。
図2は、ATM10の内部構成を概略的に示す説明図である。ATM10は、例えば、金融機関、小売店および公共施設に設置され、利用者の操作に基づいて入出金等の所定の取引を行なう装置である。図1および図2に示すように、ATM10は、機能部として、回線接続部11と、カード機構17と、明細票機構18と、顧客パネル20と、係員パネル21と、紙幣機構部40と、記憶部30と、制御部60と、を備えている。なお、図1では、図2に示す回線接続部11と、係員パネル21と、紙幣機構部40と、記憶部30と、制御部60と、の図示が省略されている。
回線接続部11は、LANカードなどで構成されて、ネットワークNTに接続してホストコンピュータ50と各種情報の送受信を行なう。カード機構17は、種々のカード(例えば、クレジットカードやキャッシュカード等)の受付および排出を行なう。また、カード機構17は、カードに含まれる磁気ストライプまたはICチップに記録されたデータの読み取りおよび書き込み動作の処理を行なう。明細票機構18は、現金取引処理システム100における利用者の取引内容を明細票に印字し、印字した明細書を排出する。
顧客パネル20は、顧客である利用者の指等による接触位置の座標を取得するポインティングデバイスであり、指等の接触によって利用者からの指示を受け付ける。また、顧客パネル20は、顧客へのガイダンスメッセージを表示するディスプレイである。係員パネル21は、ATM10に内蔵されたポインティングデバイスである。係員パネル21は、金融機関の係員の指等による接触位置の座標を取得し、指等の接触によって係員からの指示を受け付ける。顧客パネル20および係員パネル21は、他の実施例において利用者や係員の音声を認識することで、指示を受け付けることができてもよい。
制御部60は、CPUやメモリ等で構成され、CPUがメモリに格納されたプログラムを読み込んで、各部の動作を制御して各種処理を行なう。制御部60のメモリには、ATM10を制御するためのプログラムやデータが記憶されている。
紙幣機構部40は、入出金される紙幣に対して各種処理を行なう。図3は、紙幣機構部40の詳細を示す説明図である。図2および図3に示すように、紙幣機構部40は、紙幣入出口22と、紙幣識別部41と、紙幣一時保留部46と、紙幣収納カセット47と、紙幣回収部48と、を有している。紙幣入出口22と、紙幣識別部41と、紙幣一時保留部46と、紙幣収納カセット47と、紙幣回収部48と、のそれぞれは、搬送機構である搬送路P1〜P19と、ゲートg1〜g9と、で接続されている。
紙幣入出口22は、シャッタを備え、紙幣の受付および排出を行なう。紙幣入出口22のシャッタが開くことにより、利用者および金融機関の係員等は、紙幣の挿入および取出を行なうことができる。紙幣入出口22に紙幣が入金されると、入金された紙幣(以下、「入金紙幣」とも呼ぶ)は、搬送路P1を通り、ゲートg1によって搬送路P2から紙幣識別部41を介して搬送路P3および搬送路P4に導かれ、ゲートg2によって搬送路P5に導かれ、ゲートg3によって紙幣一時保留部46へと搬送される。また、紙幣収納カセット47に収納されている紙幣が出金される場合には、例えば、紙幣収納カセット47_5に収納されている紙幣は、搬送路P11を通り、ゲートg4によって搬送路P10および搬送路P8に導かれ、ゲートg1によって搬送路P2に導かれてから紙幣識別部41を介して搬送路P3および搬送路P4を通り、ゲートg2によってP7に導かれて、紙幣入出口22へと搬送される。入金紙幣および出金される紙幣(以下、「出金紙幣」とも呼ぶ)は、紙幣一時保留部46、紙幣収納カセット47、および、紙幣回収部48のいずれかに搬送される前に、紙幣識別部41を経由するように搬送される。また、紙幣入出口22は、紙幣入出口22の内部に紙幣が存在するか否かを判定できる赤外線センサを有している。なお、紙幣入出口22は、請求項における紙幣取出口に相当する。紙幣入出口22のシャッタが開いて、紙幣入出口22内に紙幣がある状態は、請求項における紙幣が取出可能な状態である。
紙幣一時保留部46は、入金紙幣を取引が成立するまでの間に一時的にまとめて収納する。紙幣回収部48は、紙幣識別部41によって本物の紙幣であると判別されなかった紙幣や、出金されたにもかかわらず、利用者が取り忘れて紙幣入出口22に残された紙幣や、汚れや損傷がひどくて金種を判別できない紙幣等を回収して収納する。紙幣収納カセット47は、紙幣を金種別に積層された状態で収納する収納カセットであり、紙幣を環流させるために用いられる。紙幣収納カセット47は、金種別に分けられた紙幣収納カセット47_1、47_2、47_3、47_4、および、47_5から構成されている。なお、紙幣一時保留部46は、請求項における紙幣保留部に相当し、紙幣収納カセット47は、請求項における紙幣収納部に相当する。
紙幣識別部41は、ATM10内を搬送される入金紙幣および出金紙幣を識別する。図2に示すように、紙幣識別部41は、光学センサ42と、磁気センサ43と、記番号判定部44と、向き判定部45と、から構成されている。光学センサ42は、搬送される紙幣の画像を取得するCCDイメージセンサ(Charge-Coupled Device image sensor)である。磁気センサ43は、搬送される紙幣の磁気特性を取得するセンサである。磁気センサ43により取得された紙幣の磁気特性は、制御部60による紙幣が本物であるか否かの判定に用いられる。記番号判定部44は、光学センサ42が取得した紙幣の画像に基づいて、当該紙幣の紙幣に記載されている固有の番号(以降、「紙幣の記番号」と呼ぶ)を識別する。向き判定部45は、光学センサ42が取得した紙幣の画像に基づいて、当該紙幣の向きを判定する。なお、紙幣識別部41は、請求項における紙幣情報取得部に相当する。
図4および図5は、判定された紙幣の向きの概略を示す説明図である。図4には、紙幣の向きが表向きか裏向きかの判定(以下、「表裏の判定」とも呼ぶ)が行なわれた結果の一覧が示されている。図5には、紙幣の向きが上向きか下向きかの判定(以下、「上下の判定」とも呼ぶ)が行なわれた結果の一例が示されている。図4に示すように、向き判定部45は、紙幣の画像に基づいて、光学センサ42を搬送されたときの紙幣が表向きか裏向きかを判定する。本実施例では、光学センサ42が紙幣の画像を取得し、取得した画像に人物像が写っている場合には紙幣の向きが表向きであると判定され、人物像が写っていない場合には紙幣の向きが裏向きであると判定される。なお、他の実施例では、必ずしも人物像が写っているか否かによって表裏の判定が行なわれなくてもよく、例えば、紙幣の表または裏のみに存在する特徴部分が検出されることで表裏の判定が行なわれてもよい。
また、向き判定部45は、図5に示すように、取得された紙幣の画像に基づいて、光学センサ42を搬送されたときの紙幣の向きが上向きか下向きかを判定する。本実施例では、図3に示す搬送路P2から搬送路P3、または、搬送路P3から搬送路P2へと搬送される紙幣に対して、向き判定部45は、上下の判定を行なう。なお、紙幣識別部41によって判定された紙幣の情報を紙幣情報とも呼ぶ。
図2に示す記憶部30は、例えば、ハードディスク装置により構成されている。記憶部30には、紙幣情報記憶テーブル31が構築されている。記憶部30は、入金紙幣または出金紙幣における各紙幣の記番号と、向きと、紙幣が搬送された順序と、を紙幣情報記憶テーブル31に記憶する。紙幣が搬送された順序は、入出金時に紙幣が紙幣識別部41を搬送された順番を示している。紙幣の向きは、紙幣の表裏の向きと上下の向きとを含んでいる。なお、紙幣を搬送した順序は、請求項における並び順に相当するが、他の実施例では、並び順は、紙幣入出口22における紙幣が並んでいる順番であってもよいし、ATM10の内部構造に基づいて設定される順番であってもよい。また、紙幣の記番号、向き、および、紙幣が搬送された順序を、合わせて紙幣情報とも呼ぶ。
図6は、記憶部30に記憶された紙幣情報の一例を示す説明図である。図6には、紙幣情報記憶テーブル31に記憶された紙幣が搬送された順序と、紙幣の記番号と、紙幣の表裏の判定結果と、紙幣の上下の判定結果と、が一覧で示されている。例えば、搬送された順序が「2」である紙幣は、搬送された順序が「1」である紙幣の次に紙幣識別部41へと搬送され、紙幣の記番号が「BB222222B」であり、紙幣の向きが表向き、かつ、上向きである。なお、出金時には、搬送された順序の順番通りに紙幣が並べられて紙幣入出口22から排出される。また、入金時には、紙幣入出口22内に並べられた紙幣の順番通りに紙幣がATM10内へと搬送される。
A−2.紙幣入金処理:
図7は、紙幣入金処理の流れを示す説明図である。図7には、ATM10の利用者からの紙幣の入金の取引処理が受け付けられて、カード機構17にカードが挿入されて、紙幣入出口22に紙幣が投入された後の処理が示されている。
紙幣入金処理では、初めに、制御部60が、入金を受け付けると紙幣入出口22のシャッタを閉じ、顧客パネル20に「計数中」と表示させ、入金額を確認する(ステップS11)。次に、制御部60が入金紙幣を1枚ずつ順番に搬送し、紙幣識別部41が搬送された紙幣が本物であるか否かを判定する(ステップS12)。なお、本実施例では、紙幣が本物であるか否かの判定はされるが、紙幣が偽物であるか否かの判定はされない。具体的には、本物ではないと判定された紙幣には、偽物の紙幣と、本物の紙幣ではあるが紙幣の損傷や汚れが激しいために判定できない紙幣と、が含まれる。紙幣が本物であると判定された場合には(ステップS13:YES)、制御部60は、入金紙幣を紙幣一時保留部46に収納して保留する(ステップS14)。ステップS13の処理において、紙幣が本物ではないと判定された場合には(ステップS13:NO)、制御部60は、入金紙幣を、再度、紙幣入出口22へと搬送する(ステップS15)。
ステップS14、または、ステップS15の処理の後に、制御部60は、全ての入金紙幣に対して、紙幣が本物であるか否かの判定が行われたか判断する(ステップS16)。判定が行なわれていない入金紙幣があると判断された場合には(ステップS16:NO)、制御部60は、判定が行なわれていない入金紙幣に対してステップS13以降の処理を行なう。ステップS16において、判定が行なわれていない入金紙幣がないと判断された場合には(ステップS16:YES)、制御部60は、本物の紙幣ではないと判定されて紙幣入出口22へと搬送された紙幣があるか否かを判断する(ステップS17)。
紙幣入出口22へと搬送された紙幣があると判断された場合には(ステップS17:YES)、制御部60は、本物ではないと判定された入金紙幣を利用者に返却するために紙幣入出口22のシャッタを開く(ステップS18)。次に、制御部60は、「紙幣を確認してください」のメッセージと、確認ボタンと、キャンセルボタンと、を顧客パネル20に表示させる(ステップS19)。制御部60は、確認ボタン、または、キャンセルボタンをタッチする利用者の操作の検出を監視する(ステップS20)。確認ボタンがタッチされる操作が検出されると(ステップS20:確認)、制御部60は、ステップS11以降の処理を行なう(ステップS11)。ステップS20の処理において、キャンセルボタンがタッチされる操作が検出されると(ステップS20:キャンセル)、制御部60は、紙幣入出口22のシャッタを閉じて、本物であると判定されて紙幣一時保留部46に保留されていた全ての入金紙幣を紙幣入出口22に搬送する。制御部60は、紙幣入出口22のシャッタを開いて、利用者が紙幣入出口22に返却された入金紙幣を取り出せる状態にして、カード機構17にカードを排出させ(ステップS21)、紙幣入金処理を終了する。
ステップS17の処理において、紙幣入出口22へと搬送された入金紙幣がないと判断された場合には(ステップS17:NO)、制御部60は、計数した合計の金額と、確認ボタンと、キャンセルボタンと、を顧客パネル20に表示させる(ステップS22)。制御部60は、確認ボタン、または、キャンセルボタンをタッチする利用者の操作の検出を監視する(ステップS23)。キャンセルボタンがタッチされる操作が検出されると(ステップS23:キャンセル)、制御部60は、紙幣一時保留部46に収納されていた全ての入金紙幣を紙幣入出口22に搬送して利用者に返却して、カード機構17にカードを排出させ(ステップS21)、紙幣入金処理を終了する。
ステップS23の処理において、確認ボタンがタッチされる操作が検出されると(ステップS23:確認)、制御部60は、紙幣一時保留部46に収納していた紙幣を、金種ごとに別々に分けて紙幣収納カセット47に収納する(ステップS24)。次に、制御部60は、カード機構17にカードを排出させ、入金処理の取引を記載した明細票を明細票機構18に作成させて、排出させる(ステップS25)。次に、制御部60は、回線接続部11およびネットワークNTを介して、入金取引を示す情報をホストコンピュータ50へと送信し(ステップS26)、入金取引処理を終了する。
A−3.紙幣出金処理:
図8は、紙幣出金処理の流れを示す説明図である。図8には、ATM10の利用者から紙幣の出金の取引処理が受け付けられて、カード機構17にカードが挿入され、顧客パネル20に出金額および暗証番号が入力され、ホストコンピュータ50と取引に関わる情報が送受信された後の処理が示されている。
紙幣出金処理では、初めに、制御部60が、紙幣収納カセット47から出金額に相当する紙幣を一枚ずつ繰り出して紙幣入出口22へと搬送する(ステップS31)。制御部60は、搬送された出金紙幣に対して、搬送された順序と、紙幣の記番号と、紙幣の表裏の向きと、紙幣の上下の向きと、を紙幣識別部41によって判定する(ステップS32)。記憶部30は、紙幣識別部41が判定した紙幣情報を記憶する(ステップS33)。次に、制御部60は、全ての出金紙幣に対してステップS31からステップS33までの処理を行なったかを判断する(ステップS34)。ステップS31からステップS33までの処理が行なわれていない出金紙幣があると判断された場合には(ステップS34:NO)、紙幣機構部40は、ステップS31からステップS33までの処理を行なっていない紙幣に対して当該処理を行なう。
ステップS34の処理において、ステップS31からステップS33までの処理が行なわれていない出金紙幣がないと判断された場合には(ステップS34:YES)、制御部60は、カード機構17に出金処理のために受け付けたカードを排出させ、出金処理の取引を記載した明細票を明細票機構18に作成させて、排出させる(ステップS35)。次に、制御部60は、利用者に出金紙幣を排出するために紙幣入出口22のシャッタを開く(ステップS36)。次に、制御部60は、「紙幣を取り出してください」のメッセージを顧客パネル20に表示させる(ステップS37)。制御部60は、紙幣入出口22に紙幣が残っていないと判定されるまで待機する(ステップS38)。
紙幣入出口22に紙幣が残っていないと判定された場合には(ステップS38:NO)、制御部60は、紙幣入出口22のシャッタを閉める(ステップS40)。次に、制御部60は、回線接続部11およびネットワークNTを介して、出金取引を示す情報をホストコンピュータ50へと送信し(ステップS41)、出金取引処理を終了する。
ステップS38の処理において、紙幣入出口22に紙幣が残っていると判定された場合には(ステップS38:YES)、制御部60は、紙幣入出口22に紙幣が残っている状態で予め設定された所定の時間が経過したか否かを判断する(ステップS39)。所定の時間が経過していないと判断された場合には(ステップS39:NO)、引き続き、制御部60は、紙幣入出口22のシャッタを開いた状態で待機する(ステップS38)。ステップS39の処理において、紙幣入出口22に紙幣が残っている状態で所定の時間が経過したと判断された場合には(ステップS39:YES)、制御部60は、利用者が紙幣入出口22に残っている紙幣を取り忘れたと判断して、後述の取り忘れ回収処理を行ない(ステップS50)、出金取引処理を終了する。
A−4.取り忘れ回収処理:
図9は、取り忘れ回収処理の流れを示す説明図である。取り忘れ回収処理は、出金取引処理で紙幣入出口22に紙幣が取り残された場合に行なわれる。取り忘れ回収処理では、初めに、制御部60が、紙幣入出口22に残っている紙幣(以下、「残存紙幣」とも呼ぶ)がある状態で紙幣入出口22のシャッタを閉める(ステップS51)。次に、制御部60は、顧客パネル20に「処理中」のメッセージを表示する(ステップS52)。
次に、制御部60は、紙幣入出口22の残存紙幣を一枚ずつ繰り出して紙幣回収部48に回収する(ステップS53)。制御部60は、搬送された残存紙幣に対して、搬送された順序と、紙幣の記番号と、紙幣の表裏の向きと、紙幣の上下の向きと、を紙幣識別部41によって判定する(ステップS54)。記憶部30は、紙幣識別部41が判定した紙幣情報を記憶する(ステップS55)。次に、制御部60は、全ての残存紙幣に対して紙幣情報を記憶したか否かを判断する(ステップS56)。紙幣情報が記憶されていない残存紙幣があると判断された場合には(ステップS56:NO)、制御部60は、紙幣情報が記憶されていない紙幣に対して、ステップS53からステップS55までの処理を行なう。
ステップS56の処理において、紙幣情報が記憶されていない残存紙幣がないと判断された場合には(ステップS56:YES)、制御部60は、出金紙幣の紙幣情報と、残存紙幣の紙幣情報と、が同じであるか否かの相違判断を行なう(ステップS57)。相違判断では、出金紙幣が搬送された順序と、残存紙幣が搬送された順序と、のそれぞれを対応させて各紙幣の記番号、表裏の向き、および、上下の向きが比較されて判断される。例えば、出金紙幣の内で1番目に搬送された紙幣と、残存紙幣の内で1番目に搬送された紙幣と、の紙幣情報が比較された後、出金紙幣の内で2番目に搬送された紙幣と、残存紙幣の内で2番目に搬送された紙幣と、が比較され、搬送された順番通りに紙幣情報が比較される。
図10から図12は、出金紙幣の紙幣情報と残存紙幣の紙幣情報とが異なる一例を示す説明図である。図10には、出金紙幣の記番号と残存紙幣の記番号とが異なる紙幣情報が示されている。図10に示すように、出金紙幣が搬送された順序が1番目の紙幣の記番号が「AA111111A」であり、残存紙幣が搬送された順序が1番目の紙幣の記番号が「EE555555E」であるため、この場合には、出金紙幣と残存紙幣とにおいて、1番目に搬送された紙幣の紙幣情報が異なると判断される。
図11には、出金紙幣と残存紙幣との全体の紙幣の記番号が同じであるものの、紙幣の順序が異なる紙幣情報が示されている。図11に示すように、出金紙幣の記番号は、搬送された順序が1番目から順番に、「AA111111A」、「BB222222B」、「CC333333C」、「DD444444D」であり、残存紙幣の記番号は、搬送された順序が1番目から順番に、「BB222222B」、「CC333333C」、「DD444444D」、「AA111111A」である。そのため、この場合には、出金紙幣と残存紙幣とにおいて、1番目から4番目までに搬送された紙幣の紙幣情報のそれぞれが異なると判断される。
図12には、出金紙幣の紙幣情報と残存紙幣の紙幣情報とが搬送された順番通りに比較された場合に、出金紙幣の記番号と残存紙幣の記番号とが一致するものの、出金紙幣の上下の向きと残存紙幣の上下の向きとが異なる紙幣情報が示されている。図12に示すように、搬送された出金紙幣の順序が3番目の紙幣の向きが上向きであり、搬送された残存紙幣の順序が3番目の紙幣の向きが下向きであるため、この場合には、出金紙幣と残存紙幣とにおいて、3番目に搬送された紙幣の紙幣情報が異なると判断される。
図9のステップS58の処理において、出金紙幣の紙幣情報と残存紙幣の紙幣情報とが同じであると判断された場合には(ステップS58:YES)、制御部60は、顧客パネル20に表示させた「処理中」の表示を取り消し、ATM10を取引可能な状態に移行させ(ステップS59)、取り忘れ回収処理を終了する。なお、カード機構17にカードが取り残されている場合には、制御部60は、取り残されたカードをATM10に回収して保留した後、取引可能な状態に移行させる。
ステップS58の処理において、出金紙幣の紙幣情報と残存紙幣の紙幣情報とが異なると判断された場合には(ステップS58:NO)、制御部60は、顧客パネル20に表示させた「処理中」の表示を「取扱中止」へと変更すると共に、係員パネル21に「取り忘れ回収異常」を表示させ、ATM10における利用者からの取り扱いを中止させ(ステップS60)、取り忘れ回収処理を終了する。
本実施例では、出金紙幣の紙幣情報と、紙幣回収部48に回収された残存紙幣の紙幣情報と、を比較している。そのため、例えば、出金紙幣の全部または一部が不正行為によって偽札に交換されて所定の時間が経過した場合に、従来では、単に紙幣入出口22に取り忘れられた残存紙幣として紙幣回収部48に回収されたが、本実施例では、出金紙幣と残存紙幣とが異なると判断されると、ATM10における取り扱いが中止される。よって、ATM10において、何らかの不正行為が行われた場合には、続けて取り扱いが行なわれないため、更なる不正行為を防止できる。また、出金紙幣の紙幣情報と残存紙幣の紙幣情報との相違判断は、紙幣が搬送された順序、各紙幣の記番号、表裏の向き、および、上下の向きによって行なわれるため、偽札を検出できる識別装置等が紙幣識別部41とは別にATM10に搭載されなくてもよいため、ATM10のコストを抑制した上で不正行為を検出できる。
以上説明したように、本実施例おけるATM10では、紙幣入出口22に紙幣が残っている状態で所定の時間が経過したと判断された場合には、残存紙幣が紙幣回収部48に回収される。制御部60は、出金紙幣の紙幣情報と、残存紙幣の紙幣情報と、が同じであるか否かの相違判断を行なう。相違判断には、出金紙幣が搬送された順序と、残存紙幣が搬送された順序と、のそれぞれを対応させて各紙幣の記番号、表裏の向き、および、上下の向きの比較が含まれている。そのため、本実施例におけるATM10では、コストを抑制した上で残存紙幣の交換といった不正行為を検出できる。
また、本実施例におけるATM10では、出金紙幣の紙幣情報と残存紙幣の紙幣情報とが異なると判断された場合に、制御部60は、ATM10において、利用者からの取り扱いを中止させる。そのため、本実施例のATM10では、残存紙幣に対して何らかの不正行為のおそれが検出された場合に、それ以降の取り扱いが中止されるため、未然に更なる不正行為の発生を防止できる。
B.第2実施例:
図13は、第2実施例におけるATM10の内部構成を概略的に示す説明図である。第2実施例では、第1実施例と比較して、記憶部30に記番号ブラックリストテーブル39が構築されている点が異なる。記憶部30は、ATM10で取り扱いを行なわない紙幣の記番号を記番号ブラックリストテーブル39に記憶する。
図14は、第2実施例における紙幣入金処理の流れを示す説明図である。第2実施例の紙幣入金処理では、第1実施例と比較して、記番号ブラックリストテーブル39に記憶された記番号と同じ記番号の紙幣が、ATM10では取り扱われない点が異なる。そのため、図14に示す紙幣入金処理では、図7に示す紙幣入金処理に対して、ステップS91およびステップS92の処理が追加されている点が異なり、他のステップで行なわれる処理は同じである。
第2実施例の紙幣入金処理では、ATM10への入金紙幣の真偽が1枚ずつ判定され(ステップS72)、紙幣が本物であると判定された場合には(ステップS73:YES)、制御部60は、本物であると判定された紙幣の記番号が記憶部30に記憶されている紙幣の記番号と同じであるか否かを照合する(ステップS91)。本物であると判定された入金紙幣の記番号が記憶部30に記憶されていない場合には(ステップS92:NO)、制御部60は、入金紙幣を紙幣一時保留部46に収納して保留する(ステップS74)。ステップS92の処理において、本物であると判定された入金紙幣の記番号が記憶部30に記憶されている場合には(ステップS92:YES)、制御部60は、紙幣入出口22に入金紙幣を搬送する(ステップS75)。
図15は、第2実施例における取り忘れ回収処理の流れを示す説明図である。第2実施例における取り忘れ処理では、第1実施例と比較して、出金紙幣の紙幣情報と残存紙幣の紙幣情報とが異なる場合に、記憶部30が、残存紙幣の内、出金紙幣と異なる残存紙幣の記番号を記番号ブラックリストテーブル39に記憶する点が異なる。そのため、図15に示す取り忘れ処理では、図9に示す取り忘れ処理に対して、ステップS121の処理が追加されている点が異なり、他のステップで行なわれる処理は同じである。
第2実施例における取り忘れ処理では、ステップS108の処理において、出金紙幣の紙幣情報と残存紙幣の紙幣情報とが異なると判断された場合には(ステップS108:NO)、記憶部30は、出金紙幣の紙幣情報と異なる残存紙幣の記番号を記番号ブラックリストテーブル39に記憶する(ステップS121)。出金紙幣の紙幣情報と残存紙幣の紙幣情報とにおいて、紙幣の記番号、表裏の向き、および、上下の向きの少なくとも1つが異なる場合に、記憶部30は、異なる残存紙幣の記番号を記番号ブラックリストテーブル39に記憶する。例えば、図10に示す例では、記憶部30は、残存紙幣が搬送された順序が1番目の紙幣の記番号である「EE555555E」を記番号ブラックリストテーブル39に記憶する。また、図11に示す例では、出金紙幣の搬送された順序と、残存紙幣の搬送された順序と、のそれぞれを比較すると、全ての残存紙幣の記番号が出金紙幣の記番号と異なるため、記憶部30は、「BB222222B」、「CC333333C」、「DD444444D」、および、「AA111111AA」の残存紙幣の記番号を記番号ブラックリストテーブル39に記憶する。
図15のステップS121において、出金紙幣と異なる残存紙幣の記番号が記憶されると、制御部60は、顧客パネル20における「処理中」の表示を「取扱中止」へと変更すると共に、「取り忘れ回収異常」を係員パネル21に表示させ、ATM10を利用者からの取り扱いを中止させ(ステップS110)、取り忘れ回収処理を終了する。
以上説明したように、第2実施例におけるATM10では、制御部60は、出金紙幣が搬送された順序と残存紙幣が搬送された順序とのそれぞれを対応させて各紙幣の紙幣情報を比較する。その結果、紙幣の記番号、紙幣の表裏、および、紙幣の上下方向の少なくとも1つが異なる場合に、記憶部30は、異なる残存紙幣の記番号を記番号ブラックリストテーブル39に記憶する。そのため、第2実施例におけるATM10では、出金紙幣の紙幣情報と残存紙幣の紙幣情報とが異なる場合に、不正行為が検出されるだけでなく、不正行為に使用されたと予測される同一の紙幣の記番号と同じ記番号の紙幣の取り扱いを中止させるので、ATM10で取り扱われる偽札を少なくできる。
C.変形例:
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成の一部について、他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くこともできる。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
また、上記実施例では、出金紙幣の紙幣情報と残存紙幣の紙幣情報において、紙幣の記番号と、搬送された順序と、紙幣の表裏の向きと、上下の向きと、の少なくとも1つが異なる場合には、出金紙幣の紙幣情報と残存紙幣の紙幣情報とが異なると判断されたが、判断の方法についてはこれに限られず、種々変形可能である。例えば、制御部60は、出金紙幣と残存紙幣とのそれぞれについて、各紙幣の記番号と搬送された順序との組み合わせ、または、各紙幣の記番号と紙幣の表裏の向きもしくは上下の向きとの組み合わせに基づいて、出金紙幣と残存紙幣とを比較してもよい。この変形例のATM10では、出金紙幣と残存紙幣とのそれぞれについて、紙幣の記番号、搬送された順序、紙幣の表裏の向き、および、上下の向きの全ての紙幣情報が取得されなくても、不正行為を検出できる。よって、紙幣の真偽を識別する機能を有さずに、よりコストを抑制した上で不正行為を検出できるATM10を提供できる。
また、上記実施例では、出金紙幣の枚数および券種と、残存紙幣の枚数および券種と、が同じである場合の紙幣情報の相違判断について説明したが、出金紙幣に対して、残存紙幣の枚数および券種の少なくとも一方が異なる場合に、取り忘れ処理が行なわれてもよい。図16は、出金紙幣の枚数と残存紙幣の枚数とが異なる紙幣情報の一例を示す説明図である。図16には、記番号が「AA111111A」の紙幣のみATM10の利用者に抜き取られた、または、残存紙幣の内の何枚かが出金紙幣に対して交換されている状態が示されている。この場合には、第2実施例における取り忘れ処理と同じように、制御部60は、出金紙幣の搬送された順序と残存紙幣の搬送された順序とのそれぞれを対応させて比較して、紙幣の記番号の相違が判定されてもよい。図16に示す例では、記番号が「BB222222B」、「CC333333C」、および、「DD444444D」の残存紙幣が出金紙幣とは異なると判断される。
また、出金紙幣の枚数と残存紙幣の枚数とが異なる、もしくは、出金紙幣の金額の合計と残存紙幣の金額の合計とが異なる場合に、制御部60は、取り忘れ処理とは異なる処理を行なってもよい。例えば、この場合に、制御部60は、残存紙幣の全てを特定の収納部に保管し、係員パネル21に警告を表示させる処理を行なってもよい。
また、上記第2実施例における取り忘れ処理では、出金紙幣の紙幣情報と残存紙幣の紙幣情報とにおいて、搬送された順序および紙幣の記番号の組み合わせが異なる場合に、残存紙幣の記番号が記憶部30の記番号ブラックリストテーブル39に記憶されたが、必ずしも異なる残存紙幣の記番号の全てが記憶されなくてもよい。図17は、出金紙幣の紙幣情報と残存紙幣の紙幣情報とが異なる紙幣情報の一例を示す説明図である。図17に示す残存紙幣の紙幣情報では、出金紙幣に対して、3番目および4番目の搬送された順序が入れ替わり、3番目の記番号が「DD444444D」の紙幣の上下の向きが変わっている。しかし、制御部60は、出金紙幣に対して、置き換えられた残存紙幣が「DD444444D」の記番号の紙幣であるのか、「CC333333C」の記番号の紙幣であるのか、両方の紙幣なのか、判断できない。そのため、この場合には、残存紙幣における紙幣の表裏の向きおよび紙幣の上下の向きの少なくとも一方が出金紙幣に対して異なる場合に、当該異なる紙幣の記番号のみが記憶部30の記番号ブラックリストテーブル39に記憶される。この変形例では、記憶部30は、紙幣の上下の向きが異なる記番号が「DD444444D」の紙幣の記番号を記番号ブラックリストテーブル39に記憶する。
また、上記実施例では、出金紙幣が搬送された順序と、残存紙幣が搬送された順序と、のそれぞれを対応させて各紙幣の記番号、表裏の向き、および、上下の向きが比較されたが、比較の方法はこれに限られず、種々変形可能である。例えば、出金紙幣が搬送された順序と、残存紙幣が搬送された順序と、のそれぞれを対応させて、優先的に記番号が全ての残存紙幣に対して判定された後に、表裏の向きと上下の向きとが判定されてもよい。
また、上記実施例では、取り忘れ処理において、出金紙幣の紙幣情報と残存紙幣の紙幣情報とが異なる場合には、係員パネル21に「取り忘れ回収異常」が表示されたが、表示される内容についてはこれに限られず、種々変形可能である。例えば、出金紙幣の紙幣情報と残存紙幣の紙幣情報とにおいて、異なる紙幣の記番号が係員パネル21に表示されてもよい。この変形例のATM10では、係員パネル21を見ることで、異なる紙幣の記番号を確認できるため、利便性が向上する。
なお、他の実施例では、光学センサ42は、例えば、CMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor image sensor)であってもよいし、他のセンサであってもよい。なお、他の実施例では、紙幣識別部41は、光学センサ42と磁気センサ43との少なくとも1つを備えなくてもよく、他のセンサを備えてもよい。