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JP6098954B2 - Iii族窒化物結晶の製造装置及び製造方法 - Google Patents

Iii族窒化物結晶の製造装置及び製造方法 Download PDF

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JP6098954B2 JP2015130221A JP2015130221A JP6098954B2 JP 6098954 B2 JP6098954 B2 JP 6098954B2 JP 2015130221 A JP2015130221 A JP 2015130221A JP 2015130221 A JP2015130221 A JP 2015130221A JP 6098954 B2 JP6098954 B2 JP 6098954B2
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Description

本開示は、III族窒化物結晶の製造装置及び製造方法に関する。
III族窒化物結晶の製造装置として、III族酸化物を原料とする製造方法が考案されている(例えば、特許文献1)。
この製造方法における反応系を説明する。Gaを加熱し、この状態で、水素ガスを導入する。導入された水素ガスは、Gaと反応して、GaOガスを生成させる(下記式(I))。生成されたGaOガスと、アンモニアガスとを反応させて、種基板上にGaN結晶を生成する(下記式(II))。
Ga+2H→GaO+2HO (I)
GaO+2NH→2GaN+HO+2H (II)
特開2009−234800号公報
しかしながら、上記従来の方法では、種基板以外の場所においても式(II)の反応が起こり、GaN結晶が析出してしまうことがあった。特に、ガスの流路の上流側で析出した結晶は、ガスの流れによって移動して種基板に付着する場合があり、生成するGaN結晶の品質低下を招く原因となっていた。
そこで本開示は、高品質な結晶育成を可能にするIII族窒化物結晶の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本開示におけるIII族窒化物結晶の製造装置は、チャンバと、
前記チャンバ内に窒素元素含有ガスを供給する窒素元素含有ガス供給口と、
前記窒素元素含有ガスと混合するようにIII族元素の化合物ガスを前記チャンバ内に供給する化合物ガス供給口と、
混合された前記化合物ガスと前記窒素元素含有ガスとを前記チャンバ外に排出する排出口と、
前記化合物ガスと前記窒素元素含有ガスとの混合点の下流側、かつ、前記排出口の上流側で種基板を保持するためのホルダと、
前記種基板を加熱する第1ヒータと、
前記混合点から前記種基板に至るまでの空間を前記第1ヒータよりも高温で加熱する第2ヒータと、
を備えることを特徴とする。
また、上記目的を達成するために、本開示における製造方法は、本開示のIII族窒化物結晶の製造装置を用いることを特徴とする。
本開示におけるIII族窒化物結晶の製造装置及び製造方法により、高品質な結晶の製造が可能である。
本実施の形態における製造装置の模式的断面図。 本実施の形態における製造装置の他の模式的断面図。 本実施の形態における製造装置の変形例の模式的模式図。 本実施の形態における製造装置の他の変形例の模式的模式図。
本開示の第1の態様に係るIII族窒化物結晶の製造装置は、チャンバと、
前記チャンバ内に窒素元素含有ガスを供給する窒素元素含有ガス供給口と、
前記窒素元素含有ガスと混合するようにIII族元素の化合物ガスを前記チャンバ内に供給する化合物ガス供給口と、
混合された前記化合物ガスと前記窒素元素含有ガスとを前記チャンバ外に排出する排出口と、
前記化合物ガスと前記窒素元素含有ガスとの混合点の下流側、かつ、前記排出口の上流側で種基板を保持するためのホルダと、
前記種基板を加熱する第1ヒータと、
前記混合点から前記種基板に至るまでの空間を前記第1ヒータよりも高温で加熱する第2ヒータと、を備える。
第2の態様に係るIII族窒化物結晶の製造装置は、上記第1の態様において、前記種基板および前記ホルダを取り囲むリングを備え、
前記第2ヒータは、前記リングを加熱してもよい。
第3の態様に係るIII族窒化物結晶の製造装置は、上記第2の態様において、前記ホルダと前記リングとの間に空気層を備えてもよい。
第4の態様に係るIII族窒化物結晶の製造装置は、上記第1から第3のいずれかの態様において、前記第2ヒータは、前記化合物ガスと前記窒素元素含有ガスとの反応物が析出しない温度で加熱し、
前記第1ヒータは、前記化合物ガスと前記窒素元素含有ガスとの反応物が析出する温度で加熱してもよい。
第5の態様に係るIII族窒化物結晶の製造装置は、上記第1から第4のいずれかの態様において、前記混合点から前記種基板までの距離が40mm以上かつ50mm以下であってもよい。
第6の態様に係るIII族窒化物結晶の製造装置は、上記第1から第5のいずれかの態様において、前記第1ヒータと前記第2ヒータの温度差は、50℃以上かつ100℃以下であってもよい。
第7の態様に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、上記第1から第6の態様のIII族窒化物結晶の製造装置を用いてIII族窒化物結晶を製造する。
第8の態様に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、上記第7の態様において、前記化合物ガスは、前記III族元素の酸化物ガスであってもよい。
第9の態様に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、上記第8の態様において、前記化合物ガスは、前記III族元素を含む物質を酸化又は還元して生成してもよい。
以下、図面を参照しながら、本開示の実施の形態におけるIII族窒化物結晶の製造装置及びIII族窒化物結晶の製造方法について詳細に説明する。なお、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
(実施の形態)
図1に、本実施の形態に係るIII族窒化物結晶の製造装置の模式的断面図を示す。同図において、わかりやすくするために、各構成部材の大きさ、比率等は実際とは異なっている。本製造装置は、チャンバ101内に、III族酸化物の還元物ガス供給口として機能する石英管115が配置されている。石英管115の右側はチャンバ101の内壁に固定され、還元性ガス導入管111から還元性ガスが導入される。また、石英管115の内部にはIII族酸化物原料載置部105を有する。III族酸化物原料の形状は、反応を促進するために、通過する還元性ガスとの接触面積が広い形状が好ましい。ここではIII族酸化物原料として例えば純度4N以上のGaの粉末を用いる。
還元性ガスとしては、一酸化炭素ガス、メタンガス、エタンガス等の炭化水素系ガスや、水素ガス、硫化水素ガス、又は、二酸化硫黄ガスがある。ここでは、還元性ガスに水素ガスを採用する。また、ガスは加熱されてチャンバ101内に供給されることが好ましいが、常温でも構わない。ガスの流量は種基板102のサイズに応じて変更する。さらに、石英管115の周囲には原料加熱手段104が設けられ、この石英管115内で上記の反応式(I)の反応が行われる。これにより、石英管115から、III族酸化物の還元物ガスがチャンバ101内に供給される。すなわち、石英管115の先端部115aが、III族酸化物の還元物ガスをチャンバ101内に供給する還元物ガス供給口として機能する。
一方、チャンバ101内には、ホルダ109に種基板102が載置されている。ホルダ109は基板回転機構を備えたものでもよい。種基板102を10〜100rpmの回転数で回転させると、成長する結晶の平坦性を向上できる。
チャンバ101の外部には、種基板102を加熱する基板加熱ヒータ112(第1ヒータ)および、種基板102より上流側の空間あるいは種基板102およびホルダ109を取り囲むように配置されたリング116を加熱する基板上流部加熱ヒータ113(第2ヒータ)が配置されている。
基板上流部加熱ヒータ113は、先端部115aからリング116までの範囲の空間を加熱する。窒素元素含有ガスは、窒素元素含有ガス供給口100よりチャンバ101内に導入される。
窒素元素含有ガスとしては、アンモニアガス、ヒドラジンガス、アルキルアミンガスがある。これらの中でも、安全性、生産コストを考慮するとアンモニアガスを採用するのが好ましい。
リング116は、種基板102およびホルダ109の周囲を取り囲むように配置されており、リング116が、種基板102よりも高温を維持することにより、種基板102の周囲への付着物の析出を防止する効果がある。ホルダ109およびリング116の材質は、例えば、熱伝導率の高いカーボンやシリコンカーバイドである。特にリング116には、ホルダ109の材質よりも高い熱伝導率を示す材質を用いることが好ましい。あるいは、リング116の材質として、サファイアなどの耐熱性の高い材質を用いることが好ましい。また、リング116としては、リングを採用するのが最適であるが、C状部材のように一部に開放された領域を有する部材を採用してもよい。但し、リング116にC状部材を採用する場合、温度制御および気流制御の観点から、開放領域は上流側に位置させず、下流側に配置するのが望ましい。
なお、種基板102およびホルダ109に対して、リング116は離間して設けられる。すなわち、ホルダ109とリング116との間に空気層116aが配される。この空気層116aにより、高温になったリング116の温度が種基板102およびホルダ109に移動するのを防止し、種基板102を所望の温度に保持できる。また、ホルダ109が基板回転機構を備えている場合には、空気層116aにより、ホルダ109とリング116との干渉が抑制され、円滑な基板回転が実現できる。この際、空気層116aとして、0.5mm以上10mm以下であることが好ましい。0.5mm未満では、ホルダ109とリング116との干渉により円滑な基板回転が困難になり、10mmを上回ると、種基板102とリング116の距離が大きくなって中間に温度の低い領域が形成されてしまうため、本開示における空気層116aの効果が発揮されなくなる。
石英管115から供給されるIII族酸化物の還元物ガスと窒素元素含有ガス供給口100から供給される窒素元素含有ガスとは、チャンバ101内で混合され、種基板102の主面を経由してチャンバ101左端に位置する排出口108に至る。混合されたガスにより、上記の反応式(II)の反応が行われる。すなわち、III族酸化物の還元物ガスと窒素元素含有ガスとの混合点の下流側、かつ、排出口108の上流側で種基板102を保持するためにホルダ109が採用される。
なお、本装置において、III族酸化物の還元物ガスと窒素元素含有ガスとの混合点は、石英管115の先端部115aに位置する。この先端部115aで、III族酸化物の還元物ガスと窒素元素含有ガスとが出会い、混合される。
一方、チャンバ101内壁の右下側には、バックグラウンドガス導入管110が配される。導入されるバックグラウンドガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、クリプトンガス等の不活性ガスを適用できる。コストを考慮するとバックグラウンドガスには窒素ガスが最適である。
チャンバ101の形状としては、例えば、円柱状、四角柱状、三角柱状、これらを組合せた形状を採用できる。チャンバ101を構成する材質としては、例えば、石英、アルミナ、チタン酸アルミニウム、ムライト、タングステン、モリブデンがある。本実施の形態においては、チャンバ101の形状に四角柱状、材質として石英を採用する。
また、石英管115、窒素元素含有ガス供給口100、バックグラウンドガス導入管110、排出口108もチャンバ101と同じ材料で構成される。また、これら管、供給口、導入管、排出口の断面形状は円形に限られず、多角形状でもよい。
原料加熱手段104、基板加熱ヒータ112、および、基板上流部加熱ヒータ113としては、例えば、セラミックヒータやカーボンヒータなどの抵抗加熱器、又は、高周波加熱装置もしくは集光加熱器を採用できる。また、これらの温度制御は、コンピュータ等の制御部により実現される。制御部には、回路基板が搭載され、当該回路基板にはプロセッサ又は別個のデバイスが設けられる。これらのプロセッサ又はデバイスには所定のプログラムが記憶され、当該プログラムにより所定の処理が実行される。
上記の装置構造により、種基板102の上流においての結晶の析出を抑制し、高品質な単結晶を種基板102上に成長させることができる。このメカニズムを以下に説明する。
III族窒化物のような昇華反応をする結晶は、ある一定の温度に対し、気体として存在できる量(飽和量)が決まっており、飽和量を超えた分だけ、その空間に存在する固体上に析出する。このとき、種基板102上で析出した場合のみ単結晶となり、それ以外の部材(例えばチャンバ101内壁)上では多結晶やアモルファスとして析出してしまう。
そこで、本装置のように、III族酸化物の還元物ガスと窒素元素含有ガスとが混合される点である混合点から種基板102に至るまでのガス流路(空間)を基板上流部加熱ヒータ113にて加熱する。このとき、基板加熱ヒータ112よりも高温となるように基板上流部加熱ヒータ113を制御する。これにより、種基板102以外の部分に多結晶が析出せず、目的とする種基板102上にのみ単結晶を成長させることができる。
ここで、ある気体のある温度における、気体として存在できる分圧に対する現在の分圧を過飽和度と定義する。混合ガスに関して、基板加熱ヒータ112の温度では過飽和度x1は1<x1<1.2、基板上流部加熱ヒータ113の温度では過飽和度x2が0.8<x2<1である。これらの範囲を満たす温度、すなわち、基板加熱ヒータ112による加熱は混合されたIII族酸化物の還元物ガスと窒素元素含有ガスとの反応物が析出する温度とする。一方、基板上流部加熱ヒータ113による加熱は混合されたIII族酸化物の還元物ガスと窒素元素含有ガスとの反応物が析出しない温度とする。これにより、種基板102以外の場所への結晶の析出を防ぎ、高品位な結晶を種基板102上に成長させることができる。なお、III族酸化物の還元物ガスと窒素元素含有ガスとの反応物が析出する温度は例えば1200℃、III族酸化物の還元物ガスと窒素元素含有ガスとの反応物が析出しない温度は例えば1260℃〜1300℃である。
本装置では、排出口108から排気することによりガスの流れを作るため、チャンバ101内の圧力を、9.5×10〜9.9×10Paの範囲とする。このようにチャンバ101の内圧を(大気圧に比べ)負圧下に保持することで、ガスの流れをスムースにし、種基板102以外の場所での余計な析出を防止できる。一方、排出口108の口径を絞ることで、チャンバ101内の圧力を、1.0×10〜5.0×10Paの範囲としてもよい。チャンバ101の内圧を(大気圧に比べ)正圧下に保持することで、反応を促進できる。
ここで、本装置構造を破線I−Iで切り取り、上面から見た模式的断面図を図2に示す。種基板102の周辺にリング116が位置し、それよりも上流側に窒素元素含有ガス供給口100および石英管115の先端部が位置している。窒素元素含有ガス供給口100、石英管115および排出口108の幅は、種基板102の直径と同じかそれ以上に大きい。
なお、図3に示すように、基板上流部加熱ヒータ113は、リング116とその高さ方向の空間部分のみを加熱する形状でもよい。窒素元素含有ガスおよびバックグラウンドガスに拡散しにくいものを用いる場合、III族酸化物還元物ガスとの混合がやや遅く、窒化した後横向きの流れを持つため、リング116の上流の部分に結晶は析出しにくい。しかし、流れに垂直な遮蔽物であるリング116には衝突する。この衝突による析出を防ぐため、リング116およびその高さ方向の空間部分を加熱する。これにより、省エネルギー化を実現しつつ、高品位な単結晶を製造できる。
なお、ガスの拡散性は、ガス成分の分子量に影響を受け、分子量が大きいほど低下する(拡散しにくくなる)。これを踏まえ、分子量の大きい窒素を拡散しにくいガスとして利用する。具体的には、拡散しにくい窒素元素含有ガスとしてアンモニアガス、バックグラウンドガスとして、窒素ガスを適用する。
また、図4に示すように、種基板102とリング116を分けてプレート加熱する形状でも良い。
また、種基板102より下流の部分において、温度が低過ぎると、ガスの残留物が結晶化してチャンバ101内壁にこびりつき、メンテナンス性を著しく悪化させる場合がある。このため、チャンバ101の種基板102下流部全体を加熱することにより、残留物を気体のままチャンバ101外に排出させてもよい。これにより、装置寿命の延長およびメンテナンス性の向上がもたらされる。
なお、III族窒化物結晶の場合、III族酸化物の還元物ガスと窒素元素含有ガスとが混合されてから単結晶が析出されるまでに、所定の反応時間が必要である。所定の反応時間が経過する前に析出すると、多結晶となる場合がある。そこで、窒素元素含有ガス供給口100から供給される窒素元素含有ガスと、石英管115から供給されるIII族酸化物の還元物ガスとの混合点から種基板102に至るまでの直線距離を40mm以上かつ50mm以下とする。この距離が、混合したガスが反応する時間と空間を確保するのに最適であることを発明者らは見出しているからである。なお、直線距離が40mm未満の場合、ガスの反応が不十分となり、反応中間生成物が種基板102上に多結晶として析出してしまう。一方、直線距離が50mmを超えると、窒素元素含有ガスが拡散して混合ガス中の濃度が薄くなってしまい、種基板102の全面に単結晶を育成することができない。
また、基板加熱ヒータ112の(ガスの流路方向における)長さは種基板102の直径+1以上かつ10mm以下であることが好ましい。基板加熱ヒータ112の長さが種基板102の直径+1mm未満の場合は、種基板102端部の温度が下がりきらないため、基板上流部加熱ヒータ113で暖められたガスが種基板102の端部では冷却されず、結晶が析出しない。一方、基板加熱ヒータ112の長さが種基板102の直径+10mmより大きい場合は、基板上流部加熱ヒータ113と種基板102との距離が広がり過ぎ、その間で結晶が析出してしまう。
また、基板加熱ヒータ112と基板上流部加熱ヒータ113とによる加熱の温度差は、50℃以上かつ100℃以下であることが望ましい。この温度差が50℃未満の場合、多結晶の析出を抑制する効果を発揮できない。一方、温度差が100℃を超える場合、種基板102の反りが発生する。本実施の形態において、周辺部に熱電対を設置した基板加熱ヒータ112を1200℃、基板上流部加熱ヒータ113を1260℃〜1300℃に設定する。なお、ここでいう温度差とは、種基板102上の最低温度部と基板上流部加熱ヒータ113による加熱部の最高温度部との温度差をいう。
なお、基板加熱ヒータ112と基板上流部加熱ヒータ113は、チャンバ101の外壁を囲うように連続的に設けてもよい。この場合、各ヒータを分割して設けてもよい。
また、基板上流部加熱ヒータ113の直上30mm以内の位置にIII族酸化物の還元物ガスと窒素元素含有ガスとの混合ガスの流路を配するのがより好ましい。ガスの流路が基板上流部加熱ヒータ113の直上30mmよりも高い位置にある場合、基板上流部加熱ヒータ113の輻射加熱効果が弱く、多結晶の析出が生じるからである。
また、窒素元素含有ガス供給口100の噴き出し口は、石英管115の噴出し口よりも上方に位置するのが好ましい。III族酸化物の還元物ガスの比重は窒素元素含有ガスの比重よりも重いため、石英管115の噴出し口を上にした場合、窒素元素含有ガスを種基板102に到達させにくくなるからである。
また、図1の結晶育成空間である種基板102からチャンバ101の天井までの高さが30mm以上かつ60mm以下の範囲であることが好ましい。結晶育成空間の高さが30mm未満の場合、ガスが移動できる空間が狭すぎるため多結晶化が促進されてしまう。一方、結晶育成空間の高さが60mmを超える場合は、窒素元素含有ガスが拡散してしまい、種基板102上における窒素含有ガス濃度を維持することができない。
本装置は、Ga以外のIII族酸化物を用いる場合にも適用できる。III族の元素がIn(インジウム)の場合には例えばIn、III族の元素がAl(アルミニウム)の場合には例えばAlを採用できる。また、III族の元素がB(ボロン)の場合には例えばB、III族の元素が、Tl(タリウム)の場合には例えばTlを採用できる。
なお、本実施の形態において、右側を上流、左側を下流として説明したが、左右を反転させた装置構成でもよい。
また、窒素元素含有ガス供給口100は、チャンバ101の天井を貫通するように設けても良い。この場合、窒素元素含有ガス供給口100が下流に向けて斜めに配されてもよい。
なお、上記のIII族窒化物結晶の製造装置を用いてIII族酸化物結晶を製造する製造方法を実施できる。この製造方法により、高品質なIII族酸化物結晶を製造できる。
なお、GaなどのIII族元素の酸化物は、大気中で安定な材料であるため取り扱いが容易という利点がある。一方、GaなどのIII族元素の酸化物の代わりに、Ga等のIII族元素の金属を準備し、このIII族元素の金属に酸化性ガスを供給することで、III族元素の化合物ガスであるGaO等を発生させてもよい。この場合、III族酸化物原料載置部105にIII族元素の金属を配置し、還元性ガス導入管111から酸化性ガスを供給することで、III族元素の化合物ガスとしてGaOが発生する。このとき、石英管115は、窒素元素含有ガスと混合するように化合物ガスをチャンバ101内に供給する化合物ガス供給口として機能する。なお、酸化性ガスとしては、HOガス、Oガス、COガス、およびCOガス等の酸化剤を適用できる。なお、III族酸化物原料載置部105に配置する原料がGa(酸化物)またはGa(金属)のいずれの場合であっても、本開示において、同じ化合物ガスであるGaO(III族元素の酸化物ガス)が生成される。この際、本開示において、化合物ガスは、III族元素を含む物質を酸化又は還元して生成される。これにより、高効率な製造方法、及び装置を実現できる。
ここで、GaなどのIII族元素の金属は、III族元素の酸化物よりも一般的に低コストで高純度の材料が入手可能であるという利点がある。さらに、Gaなど一部のIII族元素の金属は、低温で液体になるため連続的に材料を供給する機構を設けやすいことや、酸化物ガス生成時にHOが発生しないため、III族窒化物結晶の結晶品質の低下を抑制できる、などの利点も挙げられる。
(実施例1)
実施例1におけるIII族窒化物結晶の製造装置の構成は、図1に示した通りである。本実施例において、種基板の直径を170mm、基板上流部加熱ヒータの長さを45mmとし、基板加熱ヒータの長さを種基板の直径+6mmとした。また、基板加熱ヒータによる加熱温度を1200℃、基板上流部加熱ヒータによる加熱温度を1270℃とした。また、基板上流部加熱ヒータの直上15mmの高さにIII族酸化物の還元物ガスと窒素元素含有ガスとの混合点を配した。また、III族酸化物の還元物ガスおよび窒素元素含有ガスは水平に噴きつける構造とした。さらに、結晶育成空間の高さは45mmとした。本実施の形態では、原料ガスにGaOを0.05l/m、還元性ガスに水素を10l/m、窒素元素含有ガスにアンモニアを5l/mで供給し、種基板の回転数を10rpmとした。
(実施例2)
基板上流部加熱ヒータの長さを、リング116と同じ長さとし、それ以外は実施例1と同じ条件で結晶を育成した。
(実施例3)
基板上流部加熱ヒータの長さを40mmとし、それ以外は実施例1と同じ条件で結晶を育成した。
(実施例4)
基板加熱ヒータの加熱温度を1200℃、基板上流部加熱ヒータの加熱温度を1300℃として、それ以外は実施例1と同じ条件で結晶を育成した。
(実施例5)
基板上流部加熱ヒータの直上30mmの高さに混合点を配し、それ以外は実施例1と同じ条件で結晶を育成した。
(比較例1)
基板上流部加熱ヒータを無くし、それ以外は実施例1と同じ条件で結晶を育成した。
(比較例2)
基板加熱ヒータの加熱温度を1200℃、外周部加熱ヒータの加熱温度を1230℃として温度差を30℃とし、それ以外は実施例1と同じ条件で結晶を育成した。
(比較例3)
混合点から基板までの距離を30mmとし、それ以外は実施例1と同じ条件で結晶を育成した。
(比較例4)
混合点から基板までの距離を60mmとし、それ以外は実施例1と同じ条件で結晶を育成した。
ここでは、各条件でそれぞれ10個ずつ成長させた結晶に対して評価を行った。評価方法としては、X線ロッキングカーブ半値幅を評価した。具体的には、X線ロッキングカーブ半値幅が100秒以下の結晶を品質の良い単結晶とし、各条件で成長させたサンプルに占める品質の良い単結晶の割合を単結晶化率として、この単結晶化率が80%以上となった条件を良好と判断した。実施例および比較例の単結晶化率を表1に示す。全ての実施例において、高品質な単結晶が成長したことを確認できた。加えて、全ての実施例が、全ての比較例を上回る品質を示した。
Figure 0006098954
以上のように、本開示を用いれば、パワー半導体やヘテロ接合高速電子デバイス、LEDやレーザーなどの光電子デバイスに適用可能な高品質な結晶を製造できる。
100 窒素元素含有ガス供給口
101 チャンバ
102 種基板
104 原料加熱手段
105 III族酸化物原料載置部
108 排出口
109 ホルダ
110 バックグラウンドガス導入管
111 還元性ガス導入管
112 基板加熱ヒータ
113 基板上流部加熱ヒータ
115 石英管
116 リング

Claims (9)

  1. チャンバと、
    前記チャンバ内に窒素元素含有ガスを供給する窒素元素含有ガス供給口と、
    前記窒素元素含有ガスと混合するようにIII族元素の化合物ガスを前記チャンバ内に供給する化合物ガス供給口と、
    混合された前記化合物ガスと前記窒素元素含有ガスとを前記チャンバ外に排出する排出口と、
    前記化合物ガスと前記窒素元素含有ガスとの混合点の下流側、かつ、前記排出口の上流側で種基板を保持するためのホルダと、
    前記種基板を加熱する第1ヒータと、
    前記混合点から前記種基板に至るまでの空間を前記第1ヒータよりも高温で加熱する第2ヒータと、
    前記種基板および前記ホルダを取り囲み、かつ、前記種基板よりも高温を維持するリングと、を備える、III族窒化物結晶の製造装置。
  2. 記第2ヒータは、前記リングを加熱する、請求項1に記載のIII族窒化物結晶の製造装置。
  3. 前記ホルダと前記リングとの間に空気層を備える、請求項2に記載のIII族窒化物結晶の製造装置。
  4. 前記第2ヒータは、前記化合物ガスと前記窒素元素含有ガスとの反応物が析出しない温度で加熱し、
    前記第1ヒータは、前記化合物ガスと前記窒素元素含有ガスとの反応物が析出する温度で加熱する、請求項1から3のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶の製造装置。
  5. 前記混合点から前記種基板までの距離が40mm以上かつ50mm以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶の製造装置。
  6. 前記第1ヒータと前記第2ヒータの温度差は、50℃以上かつ100℃以下である請求項1から5のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶の製造装置。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶の製造装置を用いてIII族窒化物結晶を製造する製造方法。
  8. 前記化合物ガスは、前記III族元素の酸化物ガスである、請求項7に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
  9. 前記化合物ガスは、前記III族元素を含む物質を酸化又は還元して生成される、請求項8に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
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