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JP6096895B2 - 切削インサートおよび切削工具ならびにそれを用いた切削加工物の製造方法 - Google Patents

切削インサートおよび切削工具ならびにそれを用いた切削加工物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、切削インサートおよび切削工具ならびにそれを用いた切削加工物の製造方法に関する。
金属等の被削材を加工する切削工具は、ホルダとホルダに装着される切削インサートとを備える。
例えば、特開2008−73827号公報(特許文献1)に開示された切削インサートは、上面および側面の交差部に配置され、上面における第1辺および第2辺の間のコーナー部に位置するコーナー切刃と、上面における第1辺に位置する第1切刃と、上面に切刃に沿って位置するすくい面とを備えている。さらに、この切削インサートは、その上面におけるコーナー切刃の近傍に突出部を有している。
また、コーナー部の二等分線に垂直な方向において、この突出部におけるコーナー切刃側の先端部の幅が、コーナー切刃の幅に比べて小さくなっている。
コーナー切刃近傍に上記のような突出部を配置することで、コーナー切刃および第1切刃を用いて被削材を切削する際にコーナー切刃によって切削された切り屑を突出部に接触させ、切り屑の進行方向を変えることができる。そのため、カール状の切り屑の生成を促進させることができる。
しかしながら、上記のような切削インサートでは、例えば、送り量を小さくし、コーナー切刃のみを用いる場合のような切込み量が小さい切削条件下においては下記の問題点があった。すなわち、送り量を小さくすることで、切り屑の厚みが薄くなるので、切り屑の排出方向が不安定になる可能性がある。また、切り込み量を小さくすることで、切り屑がコーナー切刃の幅に比べて小さい突出部の先端部に接触しやすくなる。そのため、カール状の切り屑の進行方向が安定せず、不安定な切り屑が生成される可能性があるという問題点があった。
本発明の実施形態に係る切削インサートは、多角形状であって、コーナー部ならびに該コーナー部にそれぞれ隣接する第1辺および第2辺を有する上面と、該上面に対応する多角形状の下面と、前記上面および前記下面の間に位置する側面とを有するインサート本体と、前記上面および前記側面の交差部に位置し、前記コーナー部に位置するコーナー切刃、前記第1辺に位置する第1切刃および前記第2辺に位置する第2切刃を有する切刃と、前記上面において前記切刃に沿って位置しており、前記切刃から離れるにつれて下方に向かって傾斜するすくい面と、前記上面における前記すくい面の内側に位置しており、上方に向かって隆起する第1隆起部とを備え、該第1隆起部は、前記コーナー部の二等分線上に位置して前記コーナー切刃に向かって突出するとともに、上面視した場合に前記コーナー切刃に向かうにつれて前記二等分線に垂直な方向における幅が小さくなる突出部を有し、該突出部の先端側に位置する第2隆起部を有し、該第2隆起部は、第1切刃側に第1端部、第2切刃側に第2端部を備え、前記突出部から前記第1端部および前記第2端部に向かって延在し、前記コーナー部側の外周縁が、上面視した場合に前記コーナー部側に凸となる凸曲線形状であり、前記第1端部は、前記コーナー部から最も離れており、かつ、前記第1切刃の最も近くに位置し、前記第2端部は、前記コーナー部から最も離れており、かつ、前記第2切刃の最も近くに位置することを特徴とする。
本発明の一実施形態に係る切削インサートの斜視図である。 図1に示す切削インサートの上面図である。 図2に示す切削インサートをX方向から見た側面図である。 図1に示す切削インサートにおけるコーナー部の近傍を示す斜視図である。 図4に示す切削インサートを拡大した斜視図である。 図2に示す切削インサートにおけるコーナー部の近傍を拡大した上面図である。 図6と同じ領域を示す上面図である。 図6のI−I線に沿った断面図である。 (a)は図6のII−II線に沿った断面図であり、(b)は図6のIII−III線に沿った断面図である。 本発明の一実施形態に係る切削工具の斜視図である。 (a)〜(d)は、本発明の一実施形態の切削加工物の製造方法を示す工程図である。
<切削インサート>
図1〜図9を参照して、本発明に係る一実施形態の切削インサート1について説明する。
切削インサート1を構成するインサート本体は、多角形状の上面2と、上面2に対応する多角形状の下面3と、上面2および下面3の間に位置する側面4とを有している。上面2は多角形状であって、コーナー部21と、このコーナー部21の一端に隣接する第1辺22と、コーナー部21の他端に隣接する第2辺23とを有している。本実施形態の切削インサート1は、図2に示すように、上面視した形状が四角形状、より具体的には菱形状である。
本実施形態の切削インサート1における菱形状の上面2における長手方向(図2における上下方向)の幅は、例えば15〜25mm程度に設定される。また、長手方向に直交する方向(図2における左右方向)の幅は、例えば10〜22mm程度に設定される。菱形状の下面3における長手方向および長手方向に直交する方向の幅は、上面2の大きさに合わせて設定される。切削インサート1の厚みは、例えば3〜7mm程度に設定される。このとき、厚みとは、切削インサート1を側面視した場合に、上面2のうち最も上方に位置する部分と下面3のうち最も下方に位置する部分までの上下方向(図3における左右方向)の幅を意味している。
切削インサート1の材質としては、例えば、超硬合金またはサーメットなどが挙げられる。超硬合金の組成としては、例えば、炭化タングステン(WC)にコバルト(Co)の粉末を加えて焼結して生成されるWC−Co、WC−Coに炭化チタン(TiC)を添加したWC−TiC−Co、あるいはWC−TiC−Coに炭化タンタル(TaC)を添加したWC−TiC−TaC−Coがある。また、サーメットは、セラミック成分に金属を複合させた焼結複合材料であり、具体的には、炭化チタン(TiC)、または窒化チタン(TiN)を主成分としたチタン化合物が挙げられる。
切削インサート1の表面は、化学蒸着(CVD)法または物理蒸着(PVD)法を用いて被膜でコーティングされていてもよい。被膜の組成としては、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)、炭窒化チタン(TiCN)またはアルミナ(Al)などが挙げられる。
また、本実施形態の切削インサート1には、上面2の中心から下面3の中心にかけて貫通する貫通孔Tが形成されている。貫通孔Tは、切削インサート1を切削工具のホルダにネジ止め固定する際にネジを挿入するために設けられている。なお、切削インサート1をホルダに固定する方法としては、上記のネジ止め固定による方法に代えて、クランプ構造を採用してもよい。
貫通孔Tが上面2の中心から下面3の中心にかけて形成されていることから、貫通孔Tの中心軸は、上下方向に延びている。そこで以下において、本実施形態の切削インサート1における各構成部位の上下方向の位置を評価するため、中心軸に対して直交し、上面2と下面3との間に位置する基準面Sを設定する。本実施形態においては、基準面Sは下面3に対して平行に位置している。
また、本実施形態の切削インサート1は、図4に示すように、すくい面5と、切刃6と、第1隆起部71と、第2隆起部72と、第3隆起部73とを有している。
切刃6は、上面2および側面4の交差部に位置しており、コーナー部21、第1辺22および第2辺23に沿って形成されている。切刃6は、コーナー部21に位置するコーナー切刃61、第1辺22に位置する第1切刃62および第2辺23に位置する第2切刃63を有している。
なお、本実施形態の切削インサート1は、上面2および側面4の交差部に切刃6が形成された、いわゆる片面仕様の切削インサート1である。しかしながら、切削インサートとしては、上面および側面の交差部ならびに下面および側面の交差部に切刃が形成された、いわゆる両面仕様の切削インサートであっても何ら問題ない。
また、本実施形態においては、切刃6が上面2の全周に沿って形成されている。さらに、切刃6は、基準面Sに略平行となるように形成されている。
本実施形態のように、切刃6が基準面Sに略平行である場合には切刃6の強度を高く維持することができるため、切刃6の欠損を抑制することができる。なお、切刃6は、本実施形態において示す構成に限定されるものではなく、例えば、コーナー部21から離れるにつれて下面3に近付くように傾斜していてもよい。
なお、下面3に近付くように傾斜するとは、下方に傾斜することと同義である。一方、下面3から遠ざかるように傾斜するとは、上方に傾斜することと同義である。特に断らない限り、以下においても同様である。
すくい面5は、上面2のうち切刃6よりも内側であって切刃6に沿って位置している。言い換えれば、すくい面5は、コーナー部21、第1辺22および第2辺23に沿って位置している。切刃6で切削された被削材の切り屑は、すくい面5上を流れる。すくい面5は、切刃6から離れるにしたがって下方に向かって傾斜している。例えば、図8に示すように、本実施形態のすくい面5は、コーナー切刃61から内側に向かうにつれて下方に傾斜している。なお、図8は、図6に示すI−I線の断面図であるが、図6のI−I線はコーナー部21の二等分線上に位置している。
また、本実施形態のすくい面5は、基準面Sに対する傾斜角度が切刃6から離れるにつれて小さくなる曲面である。なお、すくい面5は、基準面Sに対する傾斜角度が一定である斜面でもよい。
第1隆起部71、第2隆起部72および第3隆起部73は上面2に位置している。
第1隆起部71は、上面2におけるすくい面5の内側に位置しており、上方に向かって隆起している。なお、上方に向かって隆起しているとは、すくい面5の下端よりも基準面Sからの高さが高くなるように設けられている状態を意味している。また、第1隆起部71は、すくい面5よりも上面2の内側に位置しているが、その全体がすくい面5から離れているわけではなく、一部がすくい面5に対して連続している。
図8に示すように、コーナー部21の二等分線を含み、基準面Sに対して直交する断面において、第1隆起部71は、基準面Sに対して平行な上面部分71aおよび上面部分71aよりもコーナー切刃61側に位置して、コーナー切刃61に近付くにつれて下方に傾斜する先端面部分71bを有している。なお、図8に示すように、この先端面部分71bは平坦な傾斜面である。
本実施形態における第1隆起部71は、コーナー部21の二等分線を含むように位置する突出部71cを有している。突出部71cは、コーナー部21の二等分線を含むようにコーナー部21の二等分線上に位置している。また、突出部71cは、コーナー切刃61に向かって突出している。
さらに、突出部71cは、上面視した場合においてコーナー切刃61に向かうにつれてコーナー部21の二等分線に直交する方向における幅が小さくなっている。また、突出部71cは、コーナー部21の二等分線を含み、基準面Sに直交する断面において、基準面Sからの高さが、コーナー切刃61に向かうにしたがって低くなっている。すなわち、本実施形態においては、先端面部分71bに対応する領域を含むように突出部71cが位置している。突出部71cは先細りの形状になっている。突出部71cは、第1隆起部71における上記の条件を満たす領域を指している。本実施形態における突出部71cは、その一部がすくい面5に対して連続している。
第2隆起部72は、突出部71cの先端側に位置しており、突出部71cから第1切刃62および第2切刃63に向かって延在している。第2隆起部72は、第1隆起部71の先端部分に接続されている。そのため、上面視した場合での、コーナー部21の二等分線に直交する方向における第2隆起部72の幅W72が、突出部71cにおける第2隆起部72との接続部分での上記二等分線に直交する方向の幅W71cよりも大きくなっている。図7には、第2隆起部72の幅W72および突出部71cにおける第2隆起部72との接続部分の幅W71cが示されている。なお、以下では特に断らない限り、幅とは上面視した場合にコーナー部21の二等分線に直交する方向における幅を意味する。
本実施形態における第2隆起部72の上端の基準面Sからの高さは、第1隆起部71における上面部分71aの高さよりも低い。このとき、図9(b)に示すように、本実施形態では、第2隆起部72の上端が1点ではなく、上面視においてコーナー部21の側に凸となる凸曲線に沿って位置している。すなわち、この凸曲線上においては第2隆起部72の基準面Sからの高さが一定になっている。図9(b)は図6のIII−III線に沿った断面図であり、基準面Sからの第2隆起部72の上端の高さを表す図である。
本実施形態においては、第2隆起部72はすくい面5上に位置している。すなわち、突出部71cの一部がすくい面5に連続するように延在しているため、第2隆起部72がすくい面5上に形成されている。第2隆起部72がすくい面5上に位置していることによって、厚みが薄くすくい面5を伝ってくる切り屑を第2隆起部72において安定してカールさせることができる。
また、第2隆起部72は、上面視した場合においてコーナー部21の側の外周縁がコーナー部21の側に凸となる凸曲線形状である。凸曲線形状としては、放物線形状または楕円弧形状であってもよいが、本実施形態では、第2隆起部72における上記の外周縁が、コーナー部21の側に凸となる円弧形状である。
このとき、コーナー切刃61の曲率半径に比べて第2隆起部72における上記の外周縁の曲率半径が大きいことが好ましい。本実施形態では、コーナー切刃61の曲率半径は、例えば0.2mm〜0.8mmの範囲に設定されている。これ対して、第2隆起部72における上記の外周縁の曲率半径は、例えば0.3mm〜1.2mmの範囲に設定されている。なお、上記の曲率半径はあくまで例示であり、製品サイズ、用途などに合わせて適宜変更可能である。
第3隆起部73は、突出部71c上に位置しており、突出部71cに接続されている。このとき、第3隆起部73は、第2隆起部72にも接続されている。本実施形態における第3隆起部73は、上面視した場合における外周縁が略円形状である。
第3隆起部73におけるコーナー部21の側の外周縁は、コーナー切刃61に向かうにつれてコーナー部21の二等分線に直交する方向における幅が小さくなっている。すなわち、第3隆起部73は、コーナー切刃61に向かうにつれてコーナー部21の二等分線に直交する方向における幅が小さくなる部分を備えている。このように、第3隆起部73はコーナー切刃61に近付くにつれて先細りとなる形状である。また、第3隆起部73の幅は第1隆起部71の幅に比べて小さくなっている。
また、図8に示すように、コーナー部21の二等分線を含み、基準面Sに対して直交する断面において、第3隆起部73は、コーナー切刃61に近付くにつれて下方に傾斜する凸曲線形状の上面部分73aを有している。また、第1隆起部71の先端面部分71bおよび第3隆起部73の上面部分73aは、凹曲線で滑らかに接続されている。
第3隆起部73の先端は、第2隆起部72に接続されている。また、図8に示すように、コーナー部21の二等分線を含み、基準面Sに対して直交する断面において、第3隆起部73は、第2隆起部72に近付くにつれて下方に傾斜している。このとき、第3隆起部73および第2隆起部72は凹曲線で滑らかに接続されている。第3隆起部73における上面部分73aの上端の基準面Sからの高さは、図8に示すように、第1隆起部71における上面部分71aの高さよりも低く、また、図9(a)にも示すように、第2隆起部72における上端の高さよりも高い。なお、図9(a)は図6のII−II線に沿った断面図であり、基準面Sからの第1隆起部71、第2隆起部72および第3隆起部73の高さを表す図である。
本実施形態では、第2隆起部72が、突出部71cから第1切刃62および第2切刃63に向かって延在している。そのため、コーナー部21の二等分線に直交する方向において、第2隆起部72の両端が、突出部71cにおける第2隆起部72との接続部分の両端および第3隆起部73における第2隆起部72との接続部分の両端よりもコーナー部21の二等分線から離れて位置している。
切削インサート1は、被削材を切削する際に、これら第1隆起部71、第2隆起部72および第3隆起部73を用いることで切り屑の形状または進行方向を制御できる。具体的には、本実施形態の切削インサート1は、次のような切り屑排出性を有する。
本実施形態の切削インサート1では、第2隆起部72が突出部71cから第1切刃62および第2切刃63に向かって延在している。また、上面視した場合においてコーナー部21の側の第2隆起部72の外周縁がコーナー部21の側に凸となる凸曲線形状である。そのため、コーナー切刃61の一部(例えばコーナー切刃61の半分以下の範囲)のみを用いるような極めて小さい切込み量の切削条件下において、突出部71cの先端部分と比較して相対的に幅W72が広い第2隆起部72に切り屑を安定して接触させることができる。したがって、切り屑の進行方向が安定するので、安定したカール状に切り屑を生成しやすくなる。
さらに、本実施形態においては第2隆起部72の上記の外周縁が、コーナー切刃61の曲率半径に比べて曲率半径が大きく、コーナー刃61側に凸となる円弧形状である。これにより、上記のような極めて小さい切込み量の切削条件下において、送り量を大きくした場合であっても、安定してカール状の切り屑の生成を促進できる。
本実施形態の第2隆起部72は、図6に示すように、コーナー部21の二等分線(図6のI−I線)を基準とした一方側(図6の右側)での第2隆起部72における上記の外周縁の曲率半径と他方側(図6の左側)での第2隆起部72における上記の外周縁の曲率半径が同じであるが、これには限られない。すなわち、コーナー部21の二等分線の一方側での上記の外周縁の曲率半径と他方側での上記の外周縁の曲率半径とを異ならせてもよい。
図7に示すように、第2隆起部72は、上面視した場合に、コーナー部21の二等分線に直交する方向における幅W72が、コーナー切刃61の上記二等分線に直交する方向の幅W61よりも大きくなっている。そのため、本実施形態の切削インサート1では、コーナー切刃61の大部分(例えば、コーナー切刃61の半分以上コーナー切刃61の全部以下の範囲)を用いるような小さい切込み量の切削条件下においても、切り屑が上記の第2隆起部72に安定して接触する。そのため、第2隆起部72によって切り屑の進行方向が安定するので、安定したカール状に切り屑を生成しやすくなる。
また、上記のような小さい切込み量の切削条件下で、送り量を大きくした場合においては、第3隆起部73によって切り屑の挙動を制御できる。具体的には、本実施形態の切削インサート1は、第2隆起部72に接続され、第2隆起部72における上端の高さよりも上端の高さが高い第3隆起部73を有している。そのため、切り屑が第2隆起部72を乗り越えたとしても、切り屑を第3隆起部73に接触させることができるので、第3隆起部73でカール状の切り屑の生成を促進できる。このとき、送り量を大きくすることによって切り屑の厚みが大きくなるので切り屑の挙動が安定する。そのため、コーナー切刃61の上記二等分線に直交する方向での第3隆起部73の幅が第2隆起部72の幅よりも小さいが、第3隆起部73においてカール状の切り屑の生成を促進できる。
特に、第3隆起部73および第2隆起部72が凹曲線で滑らかに接続されていることから、第2隆起部72を乗り越えた切り屑の挙動を第3隆起部73において安定して制御することができる。
また、上記のような小さい切込み量の切削条件下で、送り量をさらに大きくした場合においては、突出部71cによって切り屑の挙動を制御できる。具体的には、本実施形態の切削インサート1は、第2隆起部72に接続され、第2隆起部72および第3隆起部73における上端の高さよりも上端の高さが高い突出部71cを有している。そのため、送り量がさらに大きい場合において切り屑が第2隆起部72だけでなく第3隆起部73を乗り越えたとしても、切刃6によって切削された切り屑を突出部71cに接触させることができる。
より具体的には、厚みの厚い切り屑が第2隆起部72だけでなく第3隆起部73に乗り上げたとしても、この切り屑を突出部71cが位置する第1隆起部71の平坦な傾斜面である先端面部分71bに接触させることができるので、平坦な傾斜面によって切り屑の進行方向を変えることができ、カール状の切り屑の生成を促進できる。
このとき、第3隆起部73は、コーナー切刃61に向かうにつれてコーナー部21の二等分線に直交する方向における幅が小さくなる部分を備えている。送り量がさらに大きい場合には、切り屑が第3隆起部73に強く接触するので、第3隆起部73においては切り屑がカールしにくくなる。
しかしながら、第3隆起部73の上記幅がコーナー切刃61に向かうにつれて小さくなっていることによって、送り量がさらに大きい場合に切り屑が第3隆起部73に乗り上げやすくなる。これにより、切り屑が突出部71cに向かいやすくなるので、突出部71cにおいてカール状の切り屑を安定して生成することができる。
また、切削インサート1では、コーナー切刃61および第1切刃62(第2切刃63)の一部を用いるような大きい切込み量の切削条件下においては、次のような切り屑排出性を有する。
上記のような大きい切込み量の切削条件下であって送り量が小さい場合には切り屑の厚みが比較的薄いが、上記の第2隆起部72によって、切り屑の進行方向を安定させることができるので、安定したカール状に切り屑を生成しやすくなる。
一方、上記のような小さい切込み量の切削条件下で、送り量を大きくした場合においては、突出部71cによって切り屑を制御できる。
以上のように、本実施形態の切削インサート1では、送り量および切込み量が小さい切削条件下において良好に切り屑の挙動を制御することができ、加えて、第1隆起部71、第2隆起部72および第3隆起部73を用いることで、広範な切削条件下でも優れた切り屑排出性を発揮することができる。
第2隆起部72の両端部と第1隆起部71との間には、第2隆起部72の両端部における上端および第1隆起部71の上端よりも基準面Sからの高さが低いすくい面5の下端が位置している。そのため、第2隆起部72の両端部と第1隆起部71との間には、第2隆起部72から第1隆起部71に向かって下方に傾斜して、再び上方へ傾斜する凹部Cが設けられている。凹部Cが形成されることによって、第2隆起部72を乗り越えて凹部Cの上を通り、第1隆起部71に向かって進む切り屑が凹部Cにおいてカールされるので、カール状の切り屑の生成を促進しやすくなる。
また、図8に示すように、切削インサート1では、コーナー部21の二等分線を含み、基準面Sに対して直交する断面における第1隆起部71の基準面Sに対する傾斜角度を角度α71、第2隆起部72の基準面Sに対する傾斜角度を角度α72、第3隆起部73の基準面Sに対する傾斜角度を角度α73とした場合に、第1隆起部71の傾斜角度α71は第2隆起部72の傾斜角度α72および第3隆起部73の傾斜角度α73よりも大きい。図8に示す断面において第2隆起部72および第3隆起部73よりも上面2の内側に位置する第1隆起部71の傾斜角度α71が大きいことで、切り屑が第2隆起部72および第3隆起部73に乗り上げて第3隆起部73を通過しても、傾斜角度α71の大きな第1隆起部71で切り屑の進行方向を変えることができるので、カール状の切り屑を生成しやすくなる。
なお、本実施形態では、第3隆起部73の傾斜角度α73は、第2隆起部72の傾斜角度α72よりも大きくなっている。
また、図9(b)に示すように、本実施形態における切削インサート1では、第2隆起部72が、コーナー部21の側に凸となる凸曲線に沿って位置する、基準面Sからの高さが一定の上端を有しているが、第2隆起部72の形状は、これには限定されない。例えば、コーナー部21の二等分線に垂直な方向における両端部における基準面Sからの高さが、中央部における基準面Sからの高さより高くてもよい。
例えば、第2隆起部72の中央部における基準面Sからの高さが、第2隆起部72の両端部における基準面Sからの高さよりも高いと、送り量をさらに大きくした場合のような切削条件下において、切り屑が第2隆起部72をスムーズに乗り越えることができず、切削インサート1に負荷が加わりやすくなる可能性がある。
これに対して、第2隆起部72の両端部における基準面Sからの高さが、第2隆起部72の中央部における基準面Sからの高さよりも高いことで、送り量をさらに大きくした場合のような切削条件下において、切り屑が第2隆起部72を乗り越えやすくなるので、切削インサート1に過度の負荷が加わることを低減できる。加えて、上記のような極めて小さい切込み量の切削条件下で、送り量をさらに大きくした場合に、切り屑の進行方向を制御しやすくなる。
なお、本実施形態の切削インサート1は、図2に示すように、上面視した場合の上面2の形状が菱形状の四角形状であるが、このような形態には限られない。例えば、上面視した場合の上面2の形状が三角形状、五角形状、六角形状または八角形状のような多角形状であってもよい。
また、上面視した場合の形状が四角形状であるとは、厳密に四角形であることを要求するものではなく、上面2の外周の主要部分が4辺からなる構成であって、例えば、コーナー部21が部分的に曲線形状となっていてもよい。
<切削工具>
次に、図10を参照して、本発明の一実施形態の切削工具101について説明する。
本実施形態の切削工具101は、図10に示すように、上記実施形態に代表される切削インサート1と、切削インサート1が装着されたホルダ102とを具備している。本実施形態のホルダ102は棒形状であって、一方の端部に切削インサート1が装着されるインサートポケットを有している。切削インサート1は、切刃6がホルダ102の外周よりも外側に突出するように装着される。
本実施形態においては、切削インサート1は、ネジ103によって、インサートポケットに固定されている。すなわち、切削インサート1の貫通孔にネジ103を挿入し、このネジ103の先端をインサートポケットに形成されたネジ孔(図示せず)に挿入してネジ部同士を螺合させることによって、切削インサート1がホルダ102に装着されている。
ホルダ102としては、鋼、鋳鉄などを用いることができる。特に、これらの部材の中で靱性の高い鋼を用いることが好ましい。
<切削加工物の製造方法>
次に、図11を参照して、本発明の一実施形態の被削材201を切削することによる切削加工物の製造方法について図面を用いて説明する。
本実施形態の製造方法は、以下の工程を備えている。すなわち、
図11(a)に示すように、被削材201を回転させた状態で上記実施形態に代表される切削工具101を被削材201に相対的に近付ける工程と、
図11(b)に示すように、回転している被削材201に切削工具101の切刃6を接触させる工程と、
図11(c)に示すように、切削工具101の切削インサート1の切刃6を被削材201から離す工程と、
図11(d)に示すように、切削工具101を被削材201から離す工程と、
を備えている。
本実施形態の切削加工物の製造方法は、被削材201が円筒形状であって、この円筒形状の被削材201の内側に切削工具101を挿入し、被削材201の内面を切削工具101によって切削する、いわゆる内径加工による切削加工物の製造方法である。なお、切削加工物の製造方法は、内径加工によるものに限られず、被削材201の外面を加工するいわゆる外径加工による切削加工物の製造方法でもよい。
本実施形態の切削加工物の製造方法においては、切削インサート1が、上記の特徴的構成を備えた第1隆起部、第2隆起部および第3隆起部を有していることから、幅広い送り量の切削加工に対応することが可能となる。
なお、図11においては、回転軸を固定した状態で被削材201を回転させるとともに、切削工具101を近付けているが、当然ながらこのような形態に限定されるものではない。
例えば、図11(a)の工程において、被削材201を切削工具101に近付けてもよい。同様に、(c)の工程において、被削材201を切削工具101から遠ざけてもよい。切削加工を継続する場合には、被削材201を回転させた状態を保持して、被削材201の異なる箇所に切削インサート1の切刃6を接触させる工程を繰り返せばよい。使用している切刃6が摩耗した際には、切削インサート1を貫通孔の中心軸に対して180度回転させる、あるいは上下反転させて、未使用の切刃6を用いればよい。
なお、被削材201の材質の代表例としては、炭素鋼、合金鋼、ステンレス、鋳鉄、または非鉄金属などが挙げられる。
以上、本発明に係る実施形態について例示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることは言うまでもない。
1 切削インサート
2 上面
21 コーナー部
22 第1辺
23 第2辺
3 下面
4 側面
5 すくい面
6 切刃
61 コーナー切刃
62 第1切刃
63 第2切刃
71 第1隆起部
71a 上面部分
71b 先端面部分
71c 突出部
72 第2隆起部
73 第3隆起部
73a 上面部分
101 切削工具
102 ホルダ
201 被削材
C 凹部
T 貫通孔
S 基準面

Claims (10)

  1. 多角形状であって、コーナー部ならびに該コーナー部にそれぞれ隣接する第1辺および第2辺を有する上面と、該上面に対応する多角形状の下面と、前記上面および前記下面の間に位置する側面とを有するインサート本体と、
    前記上面および前記側面の交差部に位置し、前記コーナー部に位置するコーナー切刃、前記第1辺に位置する第1切刃および前記第2辺に位置する第2切刃を有する切刃と、
    前記上面において前記切刃に沿って位置しており、前記切刃から離れるにつれて下方に向かって傾斜するすくい面と、
    前記上面における前記すくい面の内側に位置しており、上方に向かって隆起する第1隆起部とを備え、
    該第1隆起部は、前記コーナー部の二等分線を含むように位置して前記コーナー切刃に向かって突出するとともに、上面視した場合に前記コーナー切刃に向かうにつれて前記二等分線に直交する方向における幅が小さくなる突出部を有し、
    該突出部の先端側に位置する第2隆起部を有し、
    該第2隆起部は、第1切刃側に第1端部、第2切刃側に第2端部を備え、前記突出部から前記第1端部および前記第2端部に向かって延在し、前記コーナー部側の外周縁が、上面視した場合に前記コーナー部側に凸となる凸曲線形状であり、
    前記第1端部は、前記コーナー部から最も離れており、かつ、前記第1切刃の最も近くに位置し、
    前記第2端部は、前記コーナー部から最も離れており、かつ、前記第2切刃の最も近くに位置する切削インサート。
  2. 上面視した場合に、前記第2隆起部における前記二等分線に直交する方向の幅は、前記コーナー切刃における前記二等分線に直交する方向の幅よりも大きい請求項1に記載の切削インサート。
  3. 上面視した場合に、前記第2隆起部における前記外周縁および前記コーナー切刃が円弧形状であって、前記外周縁の曲率半径が前記コーナー切刃の曲率半径よりも大きい請求項1または2に記載の切削インサート。
  4. 前記第2隆起部は、前記すくい面上に位置している請求項1〜3のいずれか1つに記載の切削インサート。
  5. 前記上面の中心および前記下面の中心を結ぶ中心軸に対して直交し、前記上面よりも下
    方に位置する基準面を設けた場合において、
    前記第2隆起部は、前記第1端部から前記第2端部にかけて前記基準面からの高さが一定である請求項1〜4のいずれか1つに記載の切削インサート。
  6. 前記上面の中心および前記下面の中心を結ぶ中心軸に対して直交し、前記上面よりも下方に位置する基準面を設けた場合において、
    前記第2隆起部は、前記二等分線上に位置する中央部における前記基準面からの高さよりも前記第1端部および前記第2端部における前記基準面からの高さが高い請求項1〜4のいずれか1つに記載の切削インサート。
  7. 記突出部上に位置して前記第2隆起部に接続され、前記コーナー切刃に向かうにつれて前記二等分線に直交する方向における幅が小さくなる部分を備えた第3隆起部をさらに有する請求項1〜6のいずれか1つに記載の切削インサート。
  8. 前記第1端部および前記第2端部と、前記第1隆起部との間には凹部が形成されている請求項1〜7のいずれか1つに記載の切削インサート。
  9. 先端側にインサートポケットを有するホルダと、
    前記切刃が前記ホルダの先端から突出するように前記インサートポケットに装着された、請求項1〜8のいずれか1つに記載の切削インサートとを具備した切削工具。
  10. 被削材を回転させる工程と、
    回転している前記被削材に請求項9に記載の切削工具における前記切刃を接触させる工程と、
    回転している前記被削材から前記切削工具を離す工程とを備えた切削加工物の製造方法。
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