以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、本発明に係る運転制御装置を、自車両の走行速度を自車の車載装置を介して制御する運転制御システムに適用した場合を例にして説明する。
図1は、本実施形態に係る運転制御装置100を備える運転制御システム1のブロック構成を示す図である。運転制御装置100及びこれを含む運転制御システム1は、車両に搭載されている。運転制御装置100は、自車両周辺の状況に応じて自車両の走行速度を制御する。
図1に示すように、本実施形態の運転制御システム1は、制御装置10と、センサ20と、位置検出装置30と、地図情報40とを備えた運転制御装置100と、車両コントローラ70と、自車両を駆動させる駆動系80とを有する。位置検出装置30及び地図情報40は、車両に搭載されたナビゲーション装置200が備える位置検出装置30及び地図情報40を利用することができる。
本実施形態のセンサ20は、検出対象物の存在及び自車両からの距離を計測する。特に限定されないが、本実施形態では、レーダー検出装置21をセンサ2として用いる。本実施形態のレーダー検出装置21は、77GHz帯のミリ波レーダーを用いる。本実施形態のレーダー検出装置21は、自車両のバンパー部に取り付けられ、自車両の前方200m程度の範囲に存在する他車両等の物体を検出する。本実施形態のレーダー検出装置21の検出範囲の上下の境界は上下±10°程度に設定し、同じく検出範囲の左右の境界は左右±10°程度に設定することができる。この上下左右の検出範囲は、センサ仕様や実際の実験結果に基づいて設定することができる。レーダー検出装置21は、自車両周囲の他車両との距離及び距離の経時的変化に基づく相対速度を検出する。レーダー検出装置21の測距特性については、センサ情報SとしてROMに予め記憶させておくことができる。
センサ20としてはカメラ22及び画像処理装置23を用いることができる。カメラ22は、例えばCCD等の撮像素子を用いたカメラである。レンズは、遠方の先行車両が撮像可能な視野角の狭い望遠レンズでも良いし、カーブや勾配変化に対応するために視野の広い魚眼レンズや、全周囲を撮像可能な全方位カメラ用のレンズを用いても良い。カメラ22の取り付け位置は限定されないが、本実施形態では、自車両の車室内ミラーの近傍に、車両前方向きに設置する。またレンズは、視野角25°〜50°程度の標準レンズでの場合を例に説明する。なおカメラ22のレンズ歪み等の内部パラメータ、及び車両に対する取り付け位置を示す外部パラメータなどの測距特性については、センサ情報SとしてROMに予め記憶させておくことができる。
画像処理装置23は、カメラ22の撮像画像に基づいて、自車両の前方に存在する他車両との距離、及び距離の経時的な変化に基づく相対速度を検出する。対象物の像を含む撮像画像に基づいて対象物までの距離の算出手法は特に限定されず、出願時に知られた技術を用いることができる。
なお、本実施形態のセンサ20は、レーダー検出装置21やカメラ22に限定されず、レーザーレンジファインダ(LRF)、ステレオカメラなどの測距機能を有するものを用いることができる。レーザーレンジファインダ(LRF)は、レーザ光の到達時間を計るタイムオブフライトの手法を用いて、直接対象物体までの距離を算出する。特に限定されないが、レーザーレンジファインダを車両前方に取り付け、例えば前方150°の範囲を0.25°おきに距離情報を取得することにより、2次元の距離情報を取得することができる。
センサ20の検出結果は、制御装置10へ送出される。
位置検出装置30は、GPS(Global Positioning System)を備え、走行中の車両の走行位置(緯度・経度)を検出する。位置情報は、自車両に搭載されたナビゲーション200が備える位置検出装置30から取得することもできる。
本実施形態の地図情報40は、各地点の緯度・経度情報、各地点の高度と道路情報とが対応づけられた情報を含む。道路情報は、少なくとも道路の勾配と道路のカーブ曲率を含む道路形状情報を含む。道路の勾配は、各地点の高度に基づいて求められた各地点間の勾配に係る縦断勾配情報を含むことができる。縦断勾配情報、各地点間においてその地点が属する道路の進行方向に沿う方向の断面の勾配、つまり道路の上り下りの勾配が予め算出された情報である。なお、地図情報40は、自車両に搭載されたナビゲーション200が備える地図情報40を利用することもできる。
本実施形態では、自車両の位置、道路の勾配を含む道路形状情報、センサ20の検出特性、仮想車両VXの大きさなどの情報を蓄積し、これらを用いることにより、死角が生じて先行車両が検出不能となる場面を高い精度で予測することができる。
運転制御装置100の制御装置10は、自車両の駆動系80に指令を送出し、自車両の駆動力を制御するプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)12と、このROMに格納されたプログラムを実行することで、運転制御装置100として機能する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)11と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)13と、を備えるコンピュータである。
本実施形態の制御装置10は、センサ20検出結果と、位置情報とを取得し、地図情報40を参照することにより、自車両の少なくとも駆動力を制御して、ACC(オート・クルーズ・コントロール)機能を実現する電子制御ユニットを備える。この制御装置10は、自車両に搭載される車両コントローラ70として構成することもできる。制御装置10は、自車両の前方に他車両が存在する場合は、車間距離を保つように車速制御を実施する。他方、制御装置10は、前方に他車両が存在しない場合には、一定車速で走行する仮想車両を設定し、仮想車両に対して車間距離を保つように車速制御を実施する。
本実施形態に係る運転制御装置100の制御装置10は、自車状態検出機能と、他車両情報検出機能と、仮想車両情報算出機能と、走行制御機能と、仮想車両検出可否判断機能とを有する。本実施形態の制御装置10は、上記機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実行する。
以下、本実施形態に係る運転制御装置100の各機能について説明する。
まず、制御装置10の自車状態検出機能について説明する。制御装置10は、自車両の現在位置を含む自車両の走行状態を検出する。現在位置は、位置検出装置30から取得する。制御装置10は、自車両が備える各種センサから、自車の車速、加速度、ヨーレート、シフト位置、ブレーキのOn/Offなどの走行状態に関する情報を取得する。自車両の走行状態に関する情報は、車両コントローラ70を介して取得してもよい。
制御装置10の自車状態検出機能は、自車両の姿勢を検出する。自車両の姿勢の検出手法は特に限定されないが、GPSアンテナを異なる位置に2台取り付けて自車両の向きを算出してもよいし、方位計を設けて自車両の向きを検出してもよいし、別のカメラを設けて画像情報に基づいて自車両の姿勢を検出してもよい。なお、画像情報に基づいて自車両の姿勢を検出するにあたり、直線道路を走行している場合には、自車両の前方向を撮像するようにカメラを取り付け、カメラの撮像画像を車両上方の視点から自車両を見下ろした俯瞰画像に変換し、俯瞰画像に含まれる白線又は縁石を認識し、これら白線又は縁石の俯瞰画像上における傾きから、自車両の向きを算出することができる。画像情報に基づいて自車両の姿勢を検出するにあたり、出願時に知られているSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を用いて、予め画像上の特徴点の3次元位置を地図情報40に記憶しておき、地図情報40に保持された画像特徴点と、実際にカメラで撮像画像された画像情報から抽出された特徴点を照合することにより、自車両の位置・姿勢を算出することもできる。
次に、制御装置10の他車両情報検出機能について説明する。本実施形態の制御装置10は、先述したセンサ20を用いて、自車両の位置を基準に設定された所定の検出領域において、自車両以外の他車両の走行情報を検出する。本実施形態の検出領域は、自車両が所定時間経過後に移動する可能性のある、自車両の走行車線の前方領域に設定される。前方領域に加えて、自車両の走行車線に隣接する隣接車線の前方又は後方の領域を検出領域として設定してもよい。自車両の走行方向の前方に設定することができる。検出領域は、センサ20の検出特性に応じて予め設定しておくことができる。
制御装置10は、センサ20の検出結果に基づいて、自車両の前方に存在する先行する他車両が存在するか否かを判断し、前方に他車両が存在する場合には、他車両までの距離と、他車両の相対速度とを含む走行情報を検出する。自車両の前方に他車両が存在しない場合には、前方の他車両が存在しない(不在)という情報と、不在と判断された前のタイミングで存在が検出されていた他車両の走行情報を取得する。他車両の走行情報は、少なくとも他車両の車速を含み、必要に応じて加速度を含む。前方に存在する他車両の走行情報を検出する手法は、特に限定されず、出願時に知られた手法を適宜に用いることができる。
ちなみに、センサ20としてカメラの撮像画像を用いる場合には、撮像画像について画像処理を行い、車両を認識する必要がある。取得した撮像画像に車両の一部だけが写っている場合には、正確に車両認識を行うことは技術的に困難である。このため、カメラの撮像画像に基づいて車両認識を行う場合には、実際の車両の写り具合を考慮する必要がある。本実施形態では、撮像画像における車両の写り具合を評価するため、カメラの撮像範囲(検出領域)と仮想車両領域との重複の度合いを考慮する。写り具合の評価について、以下に二つの手法を例示する。第1の手法としては、車両認識処理を行う際に、車両の一部が欠けた画像(車両の一部しか撮像されていない画像)を用いた車両認識を予め実験し、実験結果に基づいて車両認識が可能であると判断できる条件を事前に設定しておき、その条件が満たされた場合に限って車両認識を実行する。特に限定されないが、車両認識が可能であると判断できる条件としては、例えば、完全な車両の画像面積又は画素数に対して、撮像画像に含まれる一部がかけた車両画像の画像面積又は画素数が何%以上であるという条件などを設定する。また、第2の手法として、仮想車両の画像テンプレートを準備しておき、検出領域と仮想車両領域の重なった部分だけを切り抜いた、実際に見えうる仮想車両の部分的なテンプレート(画像)を作成しておき、そのテンプレート(画像)を用いて車両認識を実施し、認識可否を判定する。
制御装置10は、センサ20が検出領域に他車両と評価できる物体の存在を検出した場合には、他車両が存在すると判断し、その他車両までの距離及びその経時的変化に基づいて他車両の相対速度を検出する。他方、制御装置10は、センサ20が検出領域に他車両と評価できる物体の存在を検出できない場合には、他車両が存在しないと判断する。
ここで、図2A〜図2Cに基づいて、実際には他車両が存在するにもかかわらず、他車両が存在しないと判断されるおそれのある場合を説明する。図2Aに示すように、水平基準Z0に対して上り坂となる道路を自車両Vが走行している場合には、検出領域R,Pは上方にシフトするので、検出領域Pの下側の領域は物体の検出が不能となる死角Bになる。このため、水平基準Z0を走行する他車両VXは、死角Bとなる領域に存在するため、センサ20によって検出されない。
また、図2Bに示すように、水平基準Z0に対して下り坂となる道路を自車両Vが走行している場合には、検出領域R,Pは下方にシフトするので、検出領域Pの上側の領域は物体の検出が不能となる死角Bになる。このため、水平基準Z0を走行する他車両VXは、死角Bとなる領域に存在するため、センサ20によって検出されない。
さらに、図2Cに示すように、センサ20の検出方向X0に対して右折する道路を自車両Vが走行している場合には、検出領域R,Pは車両前方に設定されるので、右折後の道路前方となる、検出領域Pの右側の領域は物体の検出が不能となる死角Bになる。このため、検出方向X0を走行する他車両VXは、死角Bとなる領域に存在するため、センサ20によって検出されない。左折道路においても同様である。
このように、センサ20の検知能力には限界があり、図2A〜図2Cに示すように、勾配が変化する場所やカーブなどでは、センサ20の死角が発生し、仮に前方に他車両が存在しても検知できない場合が存在する。センサ20の死角が生じる場合には、死角が生じるリスクに応じて自車両の走行速度を下げる必要があるが、前掲の従来技術ではこのようなセンサの死角の発生リスクに対応できない。
本実施形態の運転制御装置100では、センサ20により他車両が検出されない場合には、次に説明するように、仮想車両の情報の算出が行われる。
制御装置10の仮想車両情報算出機能について説明する。本実施形態の制御装置10は、車両前方に他車両が検出されない場合には、仮想車両を仮に設定する。そして、本実施形態の制御装置10は、自車両の前方の検出領域に存在し、所定速度で走行すると仮に設定された仮想車両の走行情報を算出する。仮想車両の走行情報は、自車両との位置及び自車両に対する相対速度を少なくとも含む。この仮想車両の走行情報は、設定された「仮想車両領域Q」に仮に他車両VXが存在するという前提で算出される。仮想車両領域Qは、予めセンサ20の検出特性に応じて設定しておくことができる。検出領域P及び仮想車両領域Qの位置情報(座標情報)を予め取得しておけば、後に、検出領域Pと仮想車両領域Qとの位置の比較を幾何学的に容易に行うことができる。
図3A,図3Bは、実際には他車両が存在しない場合に、自車両と同一車線の道路Wの前方を走行すると仮定された仮想車両が存在する仮想車両領域Qの設定例を示す。図3A,図3Bに示すように、仮想車両VX´は、自車両Vから距離Dだけ離隔した位置に存在すると仮定され、仮想車両VX´の高さに応じた高さ位置であり、かつ、仮想車両VX´の後ろ面の大きさに応じた仮想車両領域Qが設定される。図3Aに示すように、検出領域Pの内側に仮想車両領域Qは設定されている。仮想車両領域Qは、自車両から他車両VXを見たときの、他車両VXのリア部の大きさに応じて設定することができる。仮想車両領域Qは、この仮想車両領域Qに包含される内延と、仮想車両領域Qに含まれない外延とを区切る点、線、面を含む境界により定義される。制御装置10は、設定された仮想車両領域Qの位置及びその変化に基づいて、仮想車両VX´の走行情報を算出する。
仮想車両領域Qの位置は予め自車両Vの車高などに基づいて設定することができる。また、仮想車両領域Qの大きさは、一般的な車両Vのリア部の大きさに基づいて設定してもよいが、本実施形態の制御装置10は、他車両情報検出機能によって他車両Vの不検出が判断される直前(仮想車両領域Qが設定される直前)の処理において検出された他車両VXのリア部が検出された領域を、仮想車両領域Qとして設定することができる。これにより、自車両前方を実際に走行する可能性の高い他車両VXの大きさに応じた仮想車両領域Qを設定することができる。
また、本実施形態の制御装置10は、設定した仮想車両領域Qの大きさを状況に応じて変化させる。具体的に、制御装置10は、他車両情報検出機能による他車両の不検出の判断が所定時間以上継続した場合には、仮想車両領域Qを小さくする。他車両情報検出機能により、短い周期で断続的に他車両VXが検出されている場合には、自車両Vの前方を走行する他車両VXの大きさ・位置・速度などが予測可能である。他方、他車両VXの不検出状態が長く継続した場合には、自車両Vの前方を走行する他車両VXの大きさ・位置・速度などが分からない。このため、どのような大きさ・位置・速度の他車両VXが存在しても対応可能なように、仮想車両領域Qを小さく設定する。仮想車両領域Qが小さい場合には、仮想車両VX´が検出される可能性が低くなり、本実施形態により自車両Vの減速制御が行われる可能性を高めることができる。これにより、検出領域Qに隠れていた他車両VXが突然現れても、すでに減速制御が行われているため、適切な対応をすることができる。
本実施形態の制御装置10は、自車状態検出機能により算出される自車両の車速と、検出された自車両の位置と、地図情報40の道路情報を用いて、自車両の前方に、一定車速で走行する仮想車両を設定し、その仮想車両までの距離、仮想車両の車速、及び必要に応じて加速度を算出する。本実施形態の地図情報40は、道路勾配を含む道路情報と、各地点の位置情報とが対応づけられた情報を含む。
設定される仮想車両の初期車速V0は、予め定めた目標車速である。初期車速V0は、一般のACCと同じくドライバーが設定しても良いし、地図情報40に道路ごとの制限車速情報を含ませ、自車両が走行する道路の制限車速から設定しても良い。他車両情報検出機能により先行車両が検出されなくなった後に仮想車両を設定する場合には、直前まで検出されていた先行車両の車速を初期車速V0としてもよい。
設定される仮想車両の初期設定距離D0は、特に限定されないが、事前に定めた接触が予測される所定時間:TTCの初期値TTC0と、自車両の車速を用いて算出しても良いし、ドライバーが予め設定しても良い。他車両情報検出機能により先行車両が検出されなくなった後に仮想車両を設定する場合には、直前まで検出されていた先行車両との車間距離を初期設定距離D0としてもよい。
他車両情報検出機能により検出された実際に存在する他車両の走行情報と、仮想車両情報算出機能により仮に設定された仮想車両の走行情報は、次に説明する自車両の走行制御に用いられる。
制御装置10の走行制御機能について説明する。本実施形態の制御装置10は、他車両情報検出機能により他車両の情報が検出された場合には、その検出された他車両の走行情報に基づいて自車両の走行を制御し、他車両情報検出機能により他車両の情報が検出されなかった場合には仮想車両情報算出機能により算出された仮想車両の走行情報に基づいて自車両の走行を制御する。特に、限定されないが、本実施形態の制御装置10は、他車両情報検出機能により検出された他車両との距離を所定値に保つように、自車両の駆動力(車速・加速度又は制動力を制御する。また、制御装置10は、仮想車両情報算出機能により算出された仮想車両との距離を所定値に保つように、自車両の駆動力(車速・加速度)又は制動力を制御する。検出された他車両又は設定された仮想車両の走行情報(距離・速度)に応じて、自車両の駆動力又は制動力を制御する手法は、特に限定されず、出願時に知られたACCの技術を適宜に用いることができる。
続いて、本実施形態の制御装置10の仮想車両検出可否判断機能について説明する。本実施形態の制御装置10は、道路勾配を含む道路情報と位置情報とが対応づけられた地図情報40を参照し、所定の検出領域P,Rと、仮想車両が検出される領域として仮に設定された仮想車両領域Qとの関係に基づいて、仮想車両VX´が所定の検出領域P,Rにおいて検出可能な検出領域P,Rに存在するか否か、言い換えると、検出不可能である死角領域Bに存在するか否かを判断する。他車両が存在しないと判断されている間は、仮想車両領域Qが設定される。
制御装置10は、自車状態検出機能が算出した自車両の位置と、仮想車両情報算出機能が算出した仮想車両までの距離と、地図情報40から取得される道路勾配を含む道路情報と、予め設定されたセンサ20の検出領域と、予め設定された仮想車両の大きさ情報に基づいて、仮想車両VX´がセンサ20の検出領域に存在するか否かを幾何学的な算出手法により判断する。
図4は、仮想車両VX´がセンサ20の検出領域に存在するか否かを判断する処理手法の一例を説明する。図4に示す例では、カーブ曲率が無く、勾配のある直線路での算出方法を示す。説明の便宜のため、仮想車両は平坦な道路に距離Dで存在し、自車両Vは傾斜αの上り坂の道路に存在する状況を設定する。仮想車両が属する道路から自車両Vのセンサ20の設置位置までの高さhは、道路勾配を含む道路情報とセンサ20の取り付け位置情報などから算出することができる。センサ20の取り付け位置の情報などは、予め制御装置10が記憶しておく。センサ20は車両に対して水平に取り付けられ、上下の検出領域の範囲を±βとする。また、仮想車両VX´の大きさ情報として、後方の面の高さHを持つ。
図4に示す例のように、センサ20の検出領域Pの下端が仮想車両VX´の存在が仮定された仮想車両領域Qの上端より上であれば、検出領域Pに死角が含まれると判断することができる。なお、制御装置10は、センサ20の検出領域Pの境界情報(座標情報)及び仮想車両領域Qの境界情報(座標情報)を少なくとも一時的に記憶する。具体的には、検出領域Pの下端位置は、Dtan(α-β)+hと算出できるので、Dtan(α-β)+h>Hが、仮想車両が死角に入る条件となる。より汎用的なプログラム実装手法としては、道路形状情報と自車位置・姿勢情報を用いて、自車両から距離Dの前方の道路上に高さHの位置に、判断基準を設置し、検出座標系(レーダー座標系・撮像座標系)における判断基準の座標値を算出する。次に、検出座標系において検出中心(レーダー中心・カメラ光軸位置)から判断基準までの角度を算出し、判断基準Xが検出範囲P内に含まれるか否かを判定する。この手法によれば、勾配とカーブが複合する環境でも、適切に死角判定を行うことができる。
ここで、図5A〜図5Cに基づいて、仮想車両VX´が検出領域Pに存在するか否か(言い換えると検出領域Pにおいて検出不可能である死角領域Bに存在するか否か)を判断するために、仮想車両領域Qの位置に応じて定義される判断基準QD,QL,QRについて説明する。
図5Aは判断基準点QDの設定例を示す図である。制御装置10は、仮想車両領域Qの境界上に判断基準点QDを判断基準として設定する。図5Aの(a)には、矩形の仮想車両領域Qの各頂点に判断基準点QD00,QD02,QD22,QD20を設定した例を示す。図5Aの(b)には、矩形の仮想車両領域Qの各辺の中央に判断基準点QD01,QD12,QD21,QD10を設定した例を示す。
図5Bは判断基準線QLの設定例を示す図である。制御装置10は、仮想車両領域Qの境界に沿って判断基準線QLを判断基準として設定する。図5Bの(a)には、矩形の仮想車両領域Qに沿って判断基準線QL1を設定した例を示す。図5Bの(b)には、矩形の仮想車両領域Qの対角線に沿って判断基準線QL21,QL22を設定した例を示す。図5Bの(C)には、矩形の仮想車両領域Qの線対象軸に沿って判断基準線QL31,QL32を設定した例を示す。
図5Cは判断基準領域QRの設定例を示す図である。制御装置10は、仮想車両領域Qの全体又は上下左右端部に沿って判断基準領域QRを判断基準として設定する。図5Cの(a)には、矩形の仮想車両領域Qの全体に判断基準領域QR1を設定した例を示す。図5Cの(b)には、矩形の仮想車両領域Qの左右両端部に判断基準領域QR21,QL22を設定した例を示す。図5Cの(C)には、矩形の仮想車両領域Qの上下端部に判断基準領域QR31,QR32を設定した例を示す。
続いて、図6A〜図6Cに基づいて、判断基準QD,QL,QRに基づいて、仮想車両VX´が検出領域Pに存在するか否か(検出不能な死角領域Bに存在するか否か)を判断する手法を説明する。制御装置10は、設定された判断基準点QD,判断基準線QL及び/又は判断基準領域QRと検出領域Pとを比較し、検出領域Pに含まれる又は含まれない判断基準点QBの数,判断基準線QLの数・長さ,及び/又は判断基準領域QRの面積比に基づいて、仮想車両VX´が所定の検出領域Pにおいて検出可能であるか否かを判断する。
制御装置10は、図6Aに示すように、設定された判断基準点QDと検出領域Pとを比較し、検出領域Pに含まれる又は含まれない判断基準点QDの数に基づいて、仮想車両VX´が所定の検出領域Pにおいて検出可能であるか否かを判断する。判断基準点QDの全て乃至所定割合以上が検出領域Pの領域内に存在すれば、仮想車両VX´は検出領域P内に存在すると判断し、検出は可能である。つまり仮想車両VX´は検出領域Pの死角に存在しないと判断する。他方、判断基準点QDの所定割合以上が検出領域Pの領域外に存在すれば、仮想車両VX´は検出領域P外の死角領域内に存在し、検出は不能であると判断する。図6Aの(a)(b)では、設定された4つの判断基準点QDのうち半分が検出領域Pの領域外に存在するので、仮想車両VX´は検出領域P内には存在せずに、検出領域P外の死角領域内に存在すると判断することができる。
制御装置10は、図6Bに示すように、設定された判断基準線QLと検出領域Pとを比較し、検出領域Pに含まれる又は含まれない判断基準線QLの本数や長さに基づいて、仮想車両VX´が所定の検出領域Pにおいて検出可能であるか否かを判断する。判断基準線QLの全て乃至全長の所定割合以上が検出領域Pの領域内に存在すれば、仮想車両VX´は検出領域P内に存在すると判断し、検出は可能である。つまり仮想車両VX´は検出領域Pの死角に存在しないと判断する。他方、判断基準線QLの所定数以上又は全長の所定割合以上が検出領域Pの領域外に存在すれば、仮想車両VX´は検出領域P内に存在せず(検出領域P外の死角領域内に存在し)、検出は不能であると判断する。図6Bの(a)から(c)では、設定された各判断基準線QL1〜QL4の全長のうち半分以上が検出領域Pの領域外に存在するので、仮想車両VX´は検出領域P内に存在しない(検出領域P外の死角領域内に存在する)と判断することができる。
制御装置10は、図6Cに示すように、設定された判断基準領域QRと検出領域Pとを比較し、検出領域Pに含まれる又は含まれない判断基準領域QRの面積に基づいて、仮想車両VX´が所定の検出領域Pにおいて検出可能であるか否かを判断する。判断基準領域QRの全て乃至全面積の所定割合以上が検出領域Pの領域内に存在すれば、仮想車両VX´は検出領域P内に存在すると判断し、検出は可能である。つまり仮想車両VX´は検出領域Pの死角に存在しないと判断する。他方、判断基準領域QRの所定数以上又は全面積の所定割合以上が検出領域Pの領域外に存在すれば、仮想車両VX´は検出領域P外の死角領域内に存在し、検出は不能であると判断する。図6Cの(a)から(c)では、設定された各判断基準領域QRの全面積のうち半分以上が検出領域Pの領域外に存在するので、仮想車両VX´は検出領域P内に存在しない(検出領域P外の死角領域内に存在する)と判断することができる。
上述した、判断の基準は、任意に定義することができる。例えば、図6Aで示す例では、判断基準点QDの50%以上が検出領域P外に存在することを、仮想車両VXが死角領域Bに存在すると判断するための条件としたが、判断の条件は任意に設定することができる。
図7A,図7Bは、検出領域Pと仮想車両領域Qの上下端部・左右端部との関係に基づいて、仮想車両が検出領域に存在するか否かの判断手法を説明するための図である。
図7Aの(a)に示すように、仮想車両領域Qの下端に位置する判断基準点QD00及びQD20が検出領域Pの上端位置PTよりも上側に位置する場合には、仮想車両VX´が検出領域Pにおいて検出できないと判断する。この状態は、仮想車両領域Qが検出領域Pの外に位置し、仮想車両VX´が検出不能となるからである。それぞれの態様をすべて図示するのは省略するが、仮想車両領域Qの下端に位置する判断基準線QL2,判断基準領域QR32が検出領域Pの上端位置PTよりも上側に位置する場合も同様に、仮想車両VX´が検出領域Pにおいて検出できないと判断する。
図7Aの(b)に示すように、仮想車両領域Qの上端に位置する判断基準点QD02及びQD22が検出領域Pの下端位置PBよりも下側に位置する場合には、仮想車両VX´が検出領域Pにおいて検出できないと判断する。この状態は、仮想車両領域Qが検出領域Pの外に位置し、仮想車両VX´が検出不能となるからである。仮想車両領域Qの下端に位置する判断基準線QL4,判断基準領域QR31が検出領域Pの下端位置PBよりも下側に位置する場合も同様に、仮想車両VX´が検出領域Pにおいて検出できないと判断する。
本手法によれば、例えば勾配が変化する図2Aに示す状況下において、センサ20の検出領域Pの下端と仮想車両領域Qの上端との位置関係に基づいて、死角の発生を簡易に判断することができる。同様に、勾配が変化する図2Bに示す状況下において、センサ20の検出領域Pの上端と仮想車両領域Qの下端との位置関係に基づいて、死角の発生を簡易に判断することができる。
図7Bの(a)に示すように、仮想車両領域Qの左端に位置する判断基準点QD02及びQD00が検出領域Pの右端位置PRよりも右側に位置する場合には、仮想車両VX´が検出領域Pにおいて検出できないと判断する。この状態は、仮想車両領域Qが検出領域Pの外に位置し、仮想車両VX´が検出不能となるからである。それぞれの態様をすべて図示するのは省略するが、仮想車両領域Qの左端に位置する判断基準線QL3,判断基準領域QR21が検出領域Pの右端位置PRよりも右側に位置する場合も同様に、仮想車両VX´が検出領域Pにおいて検出できないと判断する。
図7Bの(b)に示すように、仮想車両領域Qの右端に位置する判断基準点QD22及びQD20が検出領域Pの左端位置PLよりも左側に位置する場合には、仮想車両VX´が検出領域Pにおいて検出できないと判断する。この状態は、仮想車両領域Qが検出領域Pの外に位置し、仮想車両VX´が検出不能となるからである。それぞれの態様をすべて図示することは省略するが、仮想車両領域Qの左端に位置する判断基準線QL1,判断基準領域QR22が検出領域Pの左端位置PLよりも左側に位置する場合も同様に、仮想車両VX´が検出領域Pにおいて検出できないと判断する。
なお、上述した仮想車両VX´が検出不可能であるか否かを判断する手法は、単独で用いてもよいし、複数の手法を組み合わせて用いてもよい。
本手法によれば、例えば道路が右に曲がる図2Cに示す状況下において、センサ20の検出領域Pの右端と仮想車両領域Qの左端との位置関係に基づいて、死角の発生を簡易に判断することができる。同様に、道路が左に曲がる状況下において、センサ20の検出領域Pの左端と仮想車両領域Qの右端との位置関係に基づいて、死角の発生を簡易に判断することができる。
本実施形態の制御装置10の仮想車両検出可否判断機能による判断結果は、走行制御機能の処理に用いられる。
先に説明した制御装置10の走行制御機能は、設定した仮想車両VX´が検出可能な検出領域Pに存在せず、検出不可能な死角領域Bに存在すると判断された場合には、自車両Vの走行速度を減速させる制御を実行する。
自車両Vの走行速度を減速させる一つの手法として、制御装置10は、自車両Vの走行速度を減速させるために、仮想車両VX´の設定速度を低くする。仮想車両VX´の設定速度を低減させる程度は特に限定されず、自車両Vの走行速度に応じて設定することができる。これにより、仮想車両VX´との車間距離を保つ制御又は仮想車両VX´との相対速度を保つ制御において、自車両Vの走行速度が低減されるようになる。
他の手法として、制御装置10は、制御装置10は、自車両Vの走行速度を減速させるために、仮想車両情報算出機能により算出された自車両Vと仮想車両VX´との距離を短くする。仮想車両VX´との車間距離の短縮の程度は特に限定されず、自車両Vの走行速度に応じて設定することができる。これにより、仮想車両VX´との車間距離を保つ制御又は仮想車両VX´との相対速度を保つ制御において、自車両Vの走行速度が低減されるようになる。
続いて、本実施形態の運転制御装置100の制御手順を、図8のフローチャートに基づいて説明する。図8に示す処理内容は、制御装置10の運転制御ECUにおいて、例えば50msec程度の間隔で連続的に行われる。なお、各ステップでの処理の詳細は、上述したとおりであるため、ここでは処理の流れを中心に説明する。
ステップS110において、制御装置10の自車状態検出機能は、自車両の位置、自車両の車速・加速度を含む自車の走行状態を示す情報を検出し、ステップS120へ進む。
ステップS120において、制御装置10の他車両情報検出機能は、自車両の先方を走行する先行他車両の存否、車速・加速度を検出し、ステップS130へ進む。他車両が存在する場合には、自車両から検出される他車両の範囲(大きさ)を検出してもよい。
ステップS130において、制御装置10は、自車両の前方に他車両が存在するか否かを判断する。他車両が存在する場合には、ステップS180へ進み、ステップS120で検出された他車両情報に基づいて運転制御を行う。他方、他車両が存在しない場合にはステップS140へ進む。ステップS140以降においては、仮想車両の走行情報に基づいて運転制御を行う。
ステップS140において、制御装置10の自車状態検出機能により検出された、自車両の位置及び姿勢情報を算出し、ステップS150へ進む。自車両の位置・姿勢を基準として仮想車両の設定、仮想車両領域の位置の評価が行われる。
ステップS150において、制御装置10の仮想車両情報算出機能は自車の前方に設定された所定の検出領域に、所定速度で走行する車両(仮想車両)を仮に設定し、その仮に設定された仮想車両の走行情報を算出し、ステップS160へ進む。
ステップS160において、制御装置10の仮想車両検出可否判断機能は道路勾配を含む道路情報と位置情報とが対応づけられた地図情報40を参照し、所定の検出領域と仮想車両領域との関係に基づいて、仮想車両が検出領域においてセンサ20によって検出不可能であるか否かを上述した手法を用いて判断する。その後、ステップS170へ進む。
ステップS170(ステップS171〜S174)において、制御装置10は、ステップS160の判断結果に基づいて、車両の運転制御に用いる制御パラメータを変更する。ここで変更する制御パラメータは、例えば仮想車両の車速や、仮想車両と自車両との設定車間距離、である。
具体的に、ステップS171において、制御装置10の走行制御機能は、仮想車両が存在する領域として設定された仮想車両領域Qがセンサ20の検出領域Pの範囲内か否かを判定し、仮想車両領域Qが検出領域Pの範囲外である場合は、死角が存在してリスクがある状況であると評価し、ステップS172に進む。他方、仮想車両領域Qが検出領域Pの範囲内である場合は、死角は存在せずリスクの低い状況であると評価し、ステップS173に進む。
ステップS172において、制御装置10は、死角が存在することによるリスクに応じて自車を減速させる必要があるため、仮想車両の設定車速を一定量減速させる。仮想車両の設定車速が減速されれば、仮想車両に追従走行する自車両も減速されることになる。また、制御装置10は、死角が存在することによるリスクに応じて自車を減速させる必要があるため、仮想車両と自車両との車間距離を短くする。仮想車両との車間距離が短くなれば、仮想車両と所定間隔を保って追従走行する自車両は減速されることになる。
ステップS173において、制御装置10は、仮想車両の設定車速が、初期設定値以下か否かを判定し、初期設定値以上の場合には、特に処理はせず、初期設定値以下の場合には、ステップS174に進む。
ステップS174において、制御装置10は、仮想車両がセンサ20の検出範囲P内にも関わらず、設定車速を低く設定している状況なので、設定車速を一定量増加させて、徐々にもとの設定車速に戻す。同様の考え方により、仮想車両との距離を一定量増加させて、徐々にもとの設定距離に戻す。
以上のステップS170の処理のイメージ図を図9に示す。
図9(a)(b)(c)は、ステップS150において仮想車両が設定された場合において、勾配のある走行道路Wを走行する自車両Vと仮想車両VXとの位置関係を示す図である。図9(a)は、タイミングT1における状態を示し、図9(b)は、タイミングT1よりも後のタイミングT2における状態を示し、図9(c)は、タイミングT2よりも後のタイミングT3における状態を示す。
図9(a)に示す状況は、勾配を登り始めた自車両Vに対して、仮想車両VXは自車両Vに搭載されたセンサ20の検出領域Rの範囲内に存在する。このような状態であれば、図8に示すステップS171では、「仮想車両の仮想車両領域は検出領域内」と判断され、ステップS180へ進み、仮想車両の設定車速により走行制御が実行される。
図9(b)に示す状況は、勾配を登り終わる自車両Vに対して、仮想車両VXは自車両Vに搭載されたセンサ20の検出領域Rの範囲外に存在する。図8に示すステップS171では、「仮想車両の仮想車両領域は検出領域外」と判断され、ステップS172へ進み、仮想車両の車速を下げ、又は仮想車両との車間距離を短くする。
図9(c)に示す状況は、勾配を登り切った自車両Vに対して、仮想車両VXは再び自車両Vに搭載されたセンサ20の検出領域Rの範囲内に存在する。このような状態であれば、図8に示すステップS171では、「仮想車両の仮想車両領域は検出領域内」と判断される。このとき、ステップS180へ進み、仮想車両の設定車速により走行制御が実行されてもよいが、図9(c)の状態では、その前のタイミングにおける図9(b)の状態において、車速を下げ又は車間距離を短く処理がなされている。このため、車速が必要以上に低くされ、車間距離が必要以上に短くされている可能性がある。本実施形態では、この状態を是正するためにステップS173、ステップS174の処理を行う。つまり、ステップS173で仮想車両の設定車速が初期設定値以下であるか否かを判断する。現在の設定速度を初期の設定速度と比較することにより、本処理の前に設定車速の低減処理がされているか否かを判断することができる。そして、現在の設定速度が初期の設定速度以下である場合には、仮想車両の設定速度を高くする処理、仮想車両との車間距離を短くする処理を行う。図9(c)に示す状態は、仮想車両は検出領域R内に捉えられており、死角の無いリスクの低い状態である。この処理により、状態の変化に応じて、仮想車両の車速及び仮想車両との距離を適切な設定値に補正(戻す)ことができる。
最後に、図8のステップS180において、制御装置10は、ステップS120で算出した先行する他車両情報、ステップS150で算出した仮想車両情報、又はステップS172,S174(ステップS170)で補正された仮想車両情報に基づいて自車両の走行制御を実行し、処理を終了する。
本発明の第1実施形態の運転制御装置100は、以上のように構成され動作するので、以下の効果を奏する。
[1]本実施形態の運転制御装置100によれば、仮に設定した仮想車両VX’が検出領域の死角領域に存在し、仮想車両VX’が検出領域において検出されないことを条件に自車両を減速させるので、自車両の走行に伴い、検出領域Pの死角を走行していた他車両VXが検出領域の非死角領域に移動したときに、急な減速制御が行われることを防止することができる。本実施形態の運転制御装置100によれば、先行する他車両が検知できなかった場合に、仮想車両を設定して自車両の走行制御をするだけではなく、死角の存在を事前に考慮して自車両を減速させることにより、死角の存在によって検出不能となる場面を予測して適切な走行制御を実現することができる。
[2]本実施形態の運転制御装置100によれば、仮想車両VX’が検出領域Pにおいて検出できないと判断された場合には、仮想車両VX’の設定速度を低くすることにより、死角の存在によって検出不能となる場面を予測して緩やかに自車両を減速させることができる。
[3]本実施形態の運転制御装置100によれば、仮想車両VX’が検出領域Pにおいて検出できないと判断された場合には、自車両Vと仮想車両VX’との距離を短くすることにより、死角の存在によって検出不能となる場面を予測して緩やかに自車両を減速させることができる。
[4]本実施形態の運転制御装置100によれば、仮想車両領域Qの所定位置に判断基準点を判断基準として設定し、検出領域Pに含まれる又は含まれない判断基準点の数に基づいて、仮想車両VX’が検出領域Pにおいて検出可能であるか否か、つまり死角が生じる可能性があるか否かを、高い精度で判断することができる。
[5]本実施形態の運転制御装置100によれば、仮想車両領域Qの所定位置に判断基準線を判断基準として設定し、検出領域Pに含まれる又は含まれない判断基準線の長さに基づいて、仮想車両VX’が検出領域Pにおいて検出可能であるか否か、つまり死角が生じる可能性があるか否かを、高い精度で判断することができる。
[6]本実施形態の運転制御装置100によれば、仮想車両領域Qの所定位置に判断基準領域を判断基準として設定し、検出領域Pに含まれる又は含まれない判断基準領域の面積に基づいて、仮想車両VX’が検出領域Pにおいて検出可能であるか否か、つまり死角が生じる可能性があるか否かを、高い精度で判断することができる。
[7]本実施形態の運転制御装置100によれば、仮想車両領域Qの上端に位置する判断基準が検出領域Pの下端位置よりも下に位置する場合、又は仮想車両領域Qの下端に位置する判断基準が検出領域Pの上端位置よりも上に位置する場合には、仮想車両VX’が検出領域Pにおいて検出できないと判断することにより、仮想車両VX’が検出領域Pにおいて検出可能であるか否かを、高い精度で判断することができる。
[8]本実施形態の運転制御装置100によれば、仮想車両領域Qの左端に位置する判断基準が検出領域Pの右端位置よりも右に位置する場合、又は仮想車両領域Qの右端に位置する判断基準が検出領域Pの左端位置よりも左に位置する場合には、仮想車両VX’が検出領域Pにおいて検出できないと判断することにより、仮想車両VX’が検出領域Pにおいて検出可能であるか否かを、高い精度で判断することができる。
[9]本実施形態の運転制御装置100によれば、他車両の不検出が判断される前に検出された他車両が検出された領域を、仮想車両領域に適用するので、自車両前方を実際に走行する可能性の高い他車両VXの大きさに応じた仮想車両領域Qを設定することができる。
[10]本実施形態の運転制御装置100によれば、他車両VXの不検出状態が長く継続した場合には、自車両Vの前方を走行する他車両VXの大きさ・位置・速度などが分からないため、どのような大きさ・位置・速度の他車両VXが存在しても対応可能なように、仮想車両領域Qを小さく設定する。仮想車両領域Qが小さい場合には、仮想車両VX´が検出される可能性が低くなり、本実施形態により自車両Vの減速制御が行われる可能性が高まる。これにより、検出領域Qに隠れていた他車両VXが突然現れても、すでに減速制御が行われているため、適切な対応をすることができる。
[11]本実施形態の運転制御装置100によれば、自車両の現在位置と、自車両が走行する道路の道路情報と、センサ20の検出に関するパラメータに基づいて算出された自車両の現在位置における検出領域と、設定された仮想車両領域との位置関係に基づいて、仮想車両が所定の検出領域において検出可能であるか否かを判断するので、仮想車両検出可否の判断を高い精度で行うことができる。
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、走行車線の変更、追い越し、合流・分岐などの場面における車線変更における運転制御に本願発明を適用する。本実施形態の基本的な構成は第1実施形態の構成と共通するので、重複した説明を避け、異なる点を中心に説明する。
本実施形態の制御装置10は、第1実施形態と同様に、自車状態検出機能、他車両情報検出機能、仮想車両情報算出機能、仮想車両検出可否判断機能、走行制御機能とを備える。本実施形態の制御装置10の各機能の基本的な処理は、第1実施形態の制御装置10の各機能のそれに対応するので、第1実施形態における説明を援用する。
本実施形態の運転制御装置10は、自車両の走行車線の前方だけではなく、自車両の走行車線に隣接する車線の前方および/又は後方に仮想車両を設定し、車線変更時の走行制御を行う。自車両の走行車線に隣接する車線の前方又は後方のみに仮想車両を設定してもよいが、本実施形態では、隣接車線の前方及び後方に仮想車両を設定する。
このため、本実施形態の制御装置10の他車両情報検出機能は、自車両の走行車線に隣接する車線の前方に設定された所定の第2検出領域において、自車両以外の他車両の走行情報を検出し、必要に応じて、自車両の走行車線に隣接する車線の後方に設定された所定の第3検出領域において、自車両以外の他車両の走行情報を検出する。つまり、車線変更において注意を払うべき隣接車線の前方及び後方の他車両についての情報を検出する。
また、本実施形態の制御装置10の仮想車両情報算出機能は、第2検出領域に所定速度で走行すると仮に設定された仮想車両の走行情報を算出し、必要に応じて、第3検出領域に所定速度で走行すると仮に設定された仮想車両の走行情報を算出する。つまり、車線変更において注意を払うべき隣接車線の前方及び後方の仮想車両についての情報を算出する。仮想車両情報の算出は、他車両が検出されなかった場合に行う。
さらに、本実施形態の制御装置10の仮想車両検出可否判断機能は、仮想車両が第2検出領域において検出不可能であるか否かを判断し、必要に応じて、仮想車両が第3検出領域において検出不可能であるか否かを判断する。
本実施形態の制御装置10の走行制御機能は、車線変更に関する走行の制御をも行う。制御装置10は、他車両情報検出機能により自車両の走行車線に隣接する車線の前方に設定された所定の第2検出領域、隣接車線の後方に設定された第3検出領域において他車両が検出された場合には、その他車両の走行情報に基づいて車線変更の運転の可否、及びその運転の支援制御を行う。また、制御装置10は、他車両情報検出機能により自車両の走行車線に隣接する車線の前方に設定された所定の第2検出領域、隣接車線の後方に設定された第3検出領域において他車両が検出されなかった場合には、仮想車両情報算出機能により算出された仮想車両情報に基づいて車線変更の運転の可否、及びその運転の支援制御を行う
本実施形態の制御装置10は、自車両が走行する車線に隣接する車線の前方の実在する他車両又は仮想車両の位置に、自車両の目標位置(第1目標位置又は第2目標位置)を設定し、出願時に知られた技術であるRRT (Rapidly-exploring Random Tree)などの手法を用いて目標位置へ至る経路を算出する。そして、その算出された経路に沿うように自車両を走行させるために自車両の加減速及びステアリング制御を実行する。他方、自車両が走行する車線に隣接する車線の前方の実在する他車両又は仮想車両との接近乃至接触を避けた経路が生成できない場合、生成した経路を実際に所定時間以内に走行できない場合には、ドライバに車線変更を断念させるため、その車線変更に係る運転操作を禁止する。
本実施形態の車線変更に関する運転制御を図10に基づいて説明する。本実施形態の制御装置10の走行制御機能は、他車両情報検出機能により自車両の走行車線に隣接する車線の前方に設定された所定の第2検出領域において他車両の走行情報が検出されず、かつ仮想車両が第2検出領域において検出可能である場合には、隣接車線の前方は死角が無い状態で他車両が検出されない状態であると判断できるので、通常の運転制御を行う。具体的に、自車両Vの走行車線に隣接する車線上であってその自車両Vから第1距離D1の位置に第1目標位置G1を設定し、第1目標位置G1に至る第1経路RT1を算出し、自車両Vの走行状態及び他車両の走行状態に基づいて、自車両Vが第1経路RT1を経由して第1目標位置G1に所定時間内に到達可能であるか否かを判断する。第1目標位置G1に所定時間内に到達可能である場合には、自車両の走行を制御して第1目標位置G1への移動を支援する。その一方で、自車両Vが第1経路RT1を経由して第1目標位置G1に所定時間内に到達不可能である場合には、自車両Vの走行を制御して第1目標位置G1への移動を禁止する。特に限定されないが、第1距離D1は自車両Vの車速に応じた接触が予測される所定時間:TTCとしてもよい。
また、他車両情報検出機能により自車両Vの走行車線W1に隣接する車線W2の前方に設定された所定の第2検出領域(P1を含む周辺)において他車両の走行情報が検出されず、かつ仮想車両が第2検出領域において検出不可能である場合には、隣接車線の前方に死角がある状態で他車両が検出されていない状態であると判断できるので、通常よりも慎重な運転制御を行う。具体的に、自車両Vの走行車線に隣接する車線上であって自車両Vから第1距離D1よりも短い第2距離D2の位置に第2目標位置G2を設定し、第2目標位置G2に至る第2経路RT2を算出し、自車両Vの走行状態及び他車両の走行状態に基づいて、自車両Vが第2経路RT2を経由して第2目標位置G2に所定時間内に到達可能であるか否かを判断する。第2目標位置G2に所定時間内に到達可能である場合には、自車両Vの走行を制御して第2目標位置G2への移動を支援する。その一方で、自車両Vが第2経路RT2を経由して第2目標位置G2に所定時間内に到達不可能である場合には、自車両Vの走行を制御して第2目標位置G2への移動を禁止する。自車両の操舵量が閾値を超える、又は自車両の加速度が閾値を超える場合には、自車両Vが第2経路RT2を経由して第2目標位置G2に所定時間内に到達することはできないと判断される。第2目標位置G2が手前に設定されることにより、経路の曲がり具合などが大きくなり、自車両の操舵量が閾値を超える、又は自車両の加速度が閾値を超えると判断される可能性が高くなる。つまり、車線変更が許可される可能性が低くなる。
このように、自車両の走行車線の隣接車線の前方に他車両が検出されていない場合であっても、自車両の走行車線の隣接車線の前方に死角が存在する可能性がある場合には、車線変更時の目標位置を手前(自車両に近い位置)に変更することにより、車線変更の条件を通常時よりも厳しくして車線変更の可否を判断するので、より慎重な運転制御を行うことができる。
また、本実施形態の制御装置10の走行制御機能は、他車両情報検出機能により自車両Vの走行車線W1に隣接する車線W2の後方に設定された所定の第3検出領域(Q3の周辺)において他車両の走行情報が検出されず、かつ仮想車両が第3検出領域において検出不可能である場合には、死角がある状態で他車両が検出されていない状態であると判断できるので、通常よりも慎重な運転制御を行う。具体的には、制御装置10は、自車両Vの走行を制御して車線の変更を禁止する。後方から自車両Vに接近する他車両が死角により認識できない場合には、他車両が自車両Vにどれくらい接近しているか又は他車両がどれくらいの速度で接近しているか正確な情報が得られない可能性がある。このため、本実施形態では、隣接車線の後方に死角が存在する場合には、自車両の車線変更を禁止することにより、慎重な運転制御を実現する。なお、図面表記の便宜のために検出領域と目標位置とを同様の場所として示すが、検出領域や目標位置は任意に設定可能であり、これに限定されることはない。
なお、他車両情報検出機能により隣接車線の後方に他車両の走行情報が検出された場合、他車両情報検出機能により隣接車線の後方に他車両の走行情報が検出されなくても、隣接車線の後方に仮想車両が検出可能な場合には、通常の制御手法に従い、他車両又は仮想車両の存在を考慮した車線変更に係る運転を制御する。具体的には、前述したように、第1目標位置へ至る第1経路を算出し、自車両が所定時間以内に第1目標位置へ移動する走行を支援する。
このように、自車両の走行車線の隣接車線の後方に他車両が検出されていない場合であっても、隣接車線の後方に死角が存在する可能性がある場合には、車線変更を禁止することにより、より慎重な運転制御を行うことができる。
続いて、本実施形態の運転制御装置100の制御手順を、図11のフローチャートに基づいて説明する。図11に示す処理内容は、図8に示す第1実施形態のフローチャートと基本的に共通する。ここでは、異なる点を中心に説明する。図11に示す処理は、車線変更を行う場合に実行される。本処理のトリガは特に限定されないが、自車両のウィンカ操作などの入力情報に基づいて実行してもよいし、加速度、車間距離、走行道路の属性(高速道路など)の走行情報に基づいて判断してもよい。
図11に示すステップS210〜250の処理は、図8におけるステップS110〜150の処理と共通する。
本実施形態において、ステップS230で接車線上の前方車両及び/又は後方車両が検出された場合にはステップS280へ進む。ステップ280の運転制御は、車線変更に係る運転制御処理である。特に限定されないが、ステップS280において制御装置10は、検出された前方車両及び後方車両とが所定距離未満の接近を避けて車線変更が可能であるか否かを判断し、可能である場合には車線変更の運転を実行させる。他方、前方車両及び後方車両との所定距離未満の接近を避けて車線変更が不可能である場合には車線変更を禁止する。
具体的に、自車両の走行車線に隣接する車線上であってその自車両から第1距離の位置に第1目標位置を設定し、自車両が第1目標位置に至る第1経路を算出し、自車両の走行状態及び他車両の走行状態に基づいて自車両が第1経路を経由して第1目標位置に所定時間内に到達可能である場合には、自車両の走行を制御して第1目標位置への移動を支援する。他方、自車両が第1経路を経由して第1目標位置に所定時間内に到達不可能である場合には、自車両の走行を制御して第1目標位置への移動を禁止する。
本処理における運転制御の内容は、特に限定されず、出願時に知られた手法を適宜に適用することができる。
また、本実施形態では、隣接車線上の前方車両及び/又は後方車両が検出されなかった場合には、ステップS240へ進み、ステップS240からS260の処理を行う。ステップS260において、制御装置10は、自車両の走行車線に隣接する車線の前方に設定された所定の第2検出領域、自車両の走行車線に隣接する車線の後方に設定された第3検出領域において仮想車両が検出可能であるか否かを判断する。ステップS271において、制御装置10は、車両の走行車線に隣接する車線の前方に設定された所定の第2検出領域に仮想車両が検出不可能であると判断した場合にはステップS272へ進む。ステップS260,271における仮想車両の検出可否の手法は第1実施形態と同じである。
ステップS272において、制御装置10は、通常の運転制御において設定される第1目標位置よりも近くに第2目標位置を設定する。具体的に、制御装置10は、自車両の走行車線に隣接する車線上であって自車両から第1距離よりも短い第2距離の位置に第2目標位置を設定する。その後は、ステップ280へ進み、制御装置10は、第2目標位置に至る第2経路を算出し、自車両の走行状態及び他車両の走行状態に基づいて、自車両が第2経路を経由して第2目標位置に所定時間内に到達可能である場合には、自車両の走行を制御して第2目標位置への移動を支援する。
ステップS271において隣接車線の前方に仮想車両が検出された場合には、ステップS273へ進み、隣接車線の後方についても仮想車両が検出可能であるか否かを判断する。ステップS273において隣接車線の後方についても仮想車両が検出可能である、つまり死角が無いと判断された場合には、ステップS280へ進み、検出可能な仮想車両との関係に基づいて運転制御(車線変更制御)を実行する。仮想車両の存在を考慮した車線変更に係る運転制御は、上述した現実の他車両の存在を考慮した車線変更に係る運転制御の手法と同じである。
ステップS273において、隣接車線の後方において仮想車両が検出不可能であると判断された場合には、ステップS274に進む。ステップS274において、制御装置10は、自車両の走行を制御して第2目標位置への移動を禁止する処理を実行する。この処理はステップS280の運転制御の一態様である。
以上のように構成され動作する本実施形態の運転制御装置100は、以下の効果を奏する。
[1]本実施形態の運転制御装置100によれば、実測データにおいて、自車両の走行車線の隣接車線の前方に他車両が検出されていない場合であっても、隣接車線の前方における仮想車両の有無に基づいて死角が存在する可能性があると判断された場合には、車線変更時の目標位置を手前(自車両に近い位置)に変更することにより、車線変更の条件を通常時よりも厳しくして車線変更の可否を判断するので、ドライバにより慎重な車線変更をさせるように運転制御を行うことができる。
[2]本実施形態の運転制御装置100によれば、このように、自車両の走行車線の隣接車線の後方に他車両が検出されていない場合であっても、隣接車線の後方に死角が存在する可能性がある場合には車線変更を禁止するので、より慎重な運転制御を行うことができる。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
すなわち、本明細書では、本発明に係る運転制御装置の一態様として、車両コントローラ70と、駆動系80と、ナビゲーション装置200とともに、運転制御システム1を構成する運転制御装置100を例にして説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本明細書では、自車状態検出手段と、他車両情報検出手段と、仮想車両情報算出手段と、走行制御手段と、仮想車両検出可否判断手段と、を備える運転制御装置の一例として、自車状態検出機能と、他車両情報検出機能と、仮想車両情報算出機能と、走行制御機能と、仮想車両検出可否判断機能とを実行する制御装置10を備える運転制御装置100を例にして説明するが、これに限定されるものではない。