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JP6084432B2 - 水硬化性硬化体 - Google Patents

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Description

本発明は、残コンクリートや戻りクリートから回収されたセメント分を含むコンクリートスラッジ微粉末を結合材とする水硬化性硬化体に関するものである。
建設現場等において打設されるコンクリート、モルタル等は、レディミクストコンクリート工場において製造され、アジテータトラックによって搬送される。建設現場においてはコンクリートは若干の余裕を持って発注されることがあり、この場合コンクリートの一部は打設されないで残る。また建設現場において受入検査で不合格になるコンクリートもある。このようなコンクリートは、いわゆる残コンクリート、あるいは戻りコンクリートとしてアジテータトラックで搬送されて工場に戻されるが、その割合は、工場において製造されるコンクリート全体の2〜3%に達すると報告されている。従来これらは産業廃棄物として処理されてきたが、コストが嵩むし環境負荷にもなるので、有効利用が求められてきた。
特許第4472776号公報 特開2002−254099号公報 特開2009−215151号公報
特許文献1には、残コンクリートや戻りコンクリートから、セメント分を含んだ微粉末、いわゆるコンクリートスラッジ微粉末を製造する方法が記載されている。この方法においては、残コンクリートや戻りコンクリートに所定の水を加えてスラリー状被処理物を得る。そしてスラリー状被処理物から砂利、砂等を分離してスラッジ水を得、さらに湿式サイクロンによってスラッジ水を処理して微砂分を除去し、濃縮スラッジ水を得る。この濃縮スラッジ水をフィルタプレスにかけて脱水ケーキを得、横型の回転ドラムの一方の端部から脱水ケーキを連続的に供給し、回転ドラムには同時に熱風を供給して、脱水ケーキの破砕と乾燥とを実質的に同時に実施し、そして他方の端部から連続的にコンクリートスラッジ微粉末を得るようになっている。従って、均一で高品質のコンクリートスラッジ微粉末を回収することができる。このようなコンクリートスラッジ微粉末の用途として、例えば地盤改良材をあげることができる。
特許文献2にも、詳しくは説明しないが、残コンクリートや戻りコンクリートからコンクリートスラッジ微粉末を回収する方法が記載されている。特許文献2において、コンクリートスラッジ微粉末の用途として、コンクリート用の混和材としての利用や、高流動コンクリート用の粉体材料としての利用があげられている。
特許文献3にも、詳しくは説明しないが、残コンクリートや戻りコンクリートからコンクリートスラッジ微粉末を回収する方法が記載されている。特許文献3においては、普通ポルトランドセメントと高炉スラグと無水せっこうとからなる所定の固化材に、コンクリートスラッジ微粉末を所定の割合で添加し、混練水と共に練混ぜて水硬化性硬化体を得る実施例が記載されている。つまりコンクリートスラッジ微粉末の利用方法として、このような水硬化性硬化体が提案されていると言える。ただし実施例においては、コンクリートスラッジ微粉末は固化材に対して3〜7%が補助的に添加されているに過ぎない。添加されている普通ポルトランドセメントに対する割合で考えると、コンクリートスラッジ微粉末は、普通ポルトランドセメントに対して5.5〜12.7%が添加されているだけである。そうすると、特許文献3において提案されている水硬化性硬化体において、硬化を発現させる主体はあくまでも普通ポルトランドセメントを含む固化剤であると言うことができる。水硬化性硬化体においてコンクリートスラッジ微粉末の利用は補助的な範囲に留まっているし、コンクリートスラッジ微粉末の及ぼす作用も不明である。
特許文献1〜3に記載のように、従来産業廃棄物として処理されていた戻りコンクリートや残コンクリートからセメント分をコンクリートスラッジ微粉末として回収するようにすれば、資源を再利用できるだけでなく、廃棄に要するコストを削減できる。そしてコンクリートスラッジ微粉末には、水和反応が進行していないセメント分が十分残っていて利用価値が高く優れている。しかしながら問題点も見受けられる。具体的には、コンクリートスラッジ微粉末の用途が十分に確立されておらず、需要が十分に無いという問題がある。つまりコンクリートスラッジ微粉末は、地盤改良材としての利用や、粉体材料等としての利用は提案されているが、他の用途が提案されていない。これらの用途はいずれもコンクリートスラッジ微粉末の使用量が少なく、特に粉体材料としての利用は、普通ポルトランドセメントからなる結合材に対する補助的な利用に過ぎない。このように十分な需要を期待することができないので、コンクリートスラッジ微粉末を製造するメリットが小さくなっている。従って、特許文献1〜3に記載のコンクリートスラッジ微粉末の製造方法のように優れた技術があるにも拘わらず、残コンクリートや戻りコンクリートの多くが依然として産業廃棄物として処理されている。
近年、産業界において温室効果ガスの削減目標が設定され、建設業界においてもCOガスの削減が急務になっている。普通ポルトランドセメントは、製造時に多量のCOを排出するので、これを結合材とする水硬化性硬化体、つまりコンクリートも、必然的に多量のCOを排出する製造物と見なされている。これに対して、特許文献1〜3に記載のコンクリートスラッジ微粉末は、COの排出量をゼロと見なすことができる廃棄物から製造されている。従って製造時に動力や熱のエネルギーを要するとしても、コンクリートスラッジ微粉末はCOの排出量はわずかである。そこで、例えば普通ポルトランドセメントに代えてコンクリートスラッジ微粉末を結合材として水硬化性硬化体を得るようにすれば、COの排出量を大幅に削減できそうである。しかしながらコンクリートスラッジ微粉末に、水和反応が進んでいないセメント分が十分残っているからといって、単純に普通ポルトランドセメントの代替品として利用しても、水硬化性硬化体の品質は保証されない。その理由は、コンクリートスラッジ微粉末における水和反応の進行の度合いにバラツキがあることが予想されるので、換言するとコンクリートスラッジ微粉末の品質にバラツキがあることが予想されるので、水硬化性硬化体の強度が十分に得られる保証がないからである。
本発明は上記したような問題点を解決する、水硬化性硬化体を提供することを目的としている。つまり、コンクリートスラッジ微粉末の需要の受け皿となって資源の再利用を促進させると共に、十分な強度を有し、COの排出量を大幅に削減することができる水硬化性硬化体を提供することを目的としている。
本発明は上記目的を解決するために、結合材と、骨材と、必要に応じて添加される混和剤とから練混ぜされて得られる水硬化性硬化体として構成する。結合材はコンクリートスラッジ微粉末のみから構成する。コンクリートスラッジ微粉末は、残コンクリートまたは戻りコンクリートから所定の回収工程によって得られるものである。具体的には、回収工程は、残コンクリートまたは戻りコンクリートに水を加えてスラリーにするスラリー化工程と、該スラリーから砂利、砂、微砂分を除去してスラッジ水を得る分離工程と、該スラッジ水を脱水して脱水ケーキを得る脱水工程と、該脱水ケーキを熱風が吹き込まれる所定の回転ドラムに投入して破砕・乾燥する破砕・乾燥工程とから構成される。そして、コンクリートスラッジ微粉末は、比表面積が8000cm/g以下であるように構成される。
すなわち、請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、結合材と、骨材と、必要に応じて添加される混和剤とから練混ぜされて得られる水硬化性硬化体であって、前記結合材はコンクリートスラッジ微粉末のみからなり、該コンクリートスラッジ微粉末は比表面積が8000cm/g以下であることを特徴とする水硬化性硬化体として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の水硬化性硬化体は、前記骨材が、残コンクリートまたは戻りコンクリートから回収された再生骨材からなることを特徴とする水硬化性硬化体として構成される。
以上のように、本発明は、結合材と、骨材と、必要に応じて添加される混和剤とから練混ぜされて得られる水硬化性硬化体として構成される。そして本発明において結合材はコンクリートスラッジ微粉末のみからなり、コンクリートスラッジ微粉末は、比表面積が8000cm/g以下である。この品質指標は、セメント分の水和反応の進行の度合いを示していると考えることができ、このように比表面積の小さいコンクリートスラッジ微粉末は、水和反応が進行していないセメント分を多量に含んでいることが保証される。つまり普通ポルトランドセメントに近い性能を期待できる。ところで、コンクリートスラッジ微粉末はセメント分を多量に含むにも拘わらず、同量の普通ポルトランドセメントに対してCO排出量が約13%に過ぎない。従って、結合材として普通ポルトランドセメントを使用する場合と比較して、大量のコンクリートスラッジ微粉末を使用しても、CO排出量はわずかで済む。つまり本発明に係る水硬化性硬化体は、所定の品質指標によって選別され、それによって高い品質が保証されたコンクリートスラッジ微粉末が結合材として採用されており、この結合材はCOの排出量の観点から十分な量を使用できるので、水硬化性硬化体は十分な強度が得られる。そしてコンクリートスラッジ微粉末は結合材として使用されるので、コンクリートスラッジ微粉末の大量の需要の受け皿となる。これによって残コンクリートや戻りコンクリートからコンクリートスラッジ微粉末を製造するメリットが大きくなり、資源の再利用を促進させ、産業廃棄物を少なくすることができる。
本発明の実施の形態に係る水硬化性硬化体に使用されるコンクリートスラッジ微粉末の回収工程を示すブロック図である。 本発明の実施の形態に係る水硬化性硬化体に使用されるコンクリートスラッジ微粉末の回収方法を説明する図で、その(ア)(イ)はそれぞれ回収工程の前後に実施する他の工程を示すブロック図である。 残コンクリートや戻りコンクリートから製造されたコンクリートスラッジ微粉末において、練混ぜ時から脱水工程までに要した積算温度と、比表面積の関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る水硬化性硬化体は、残コンクリートまたは戻りコンクリートから回収したセメント分を多く含むコンクリートスラッジ微粉末を使用する。このコンクリートスラッジ微粉末の回収方法、つまり製造方法を説明する。
コンクリートを打設する建設現場では、必要なコンクリートをレディミクストコンクリート工場に発注する。レディミクストコンクリート工場において、普通ポルトランドセメントと、砂利、砂等の骨材と、水と、混和剤とを強制練りミキサによって練混ぜてコンクリートを製造する。製造されたコンクリートはアジテータトラックによって建設現場に搬送する。このように搬送されたコンクリートは、使用されないで一部が残ったり、受け入れ検査で不合格になったりする場合がある。このようなコンクリートは、残コンクリートあるいは戻りコンクリートとして、アジテータトラックによってレディミクストコンクリート工場に戻され、あるいは他の処理設備に送られる。残コンクリートまたは戻りコンクリートは、所定の回収設備によって、図1に示されているように、所定の回収工程によって処理される。
回収工程は、スラリー化工程、分離工程、脱水工程、破砕・乾燥工程からなるが、これらについて説明する。
(1)スラリー化工程
残コンクリートまたは戻りコンクリートに水を加えてスラリー化し、セメント分が加えられた水に十分に溶け込むようにする。このようなスラリーには、アジテータトラックのミキサを洗浄した洗浄排水や、レディミクストコンクリート工場における洗浄排水が含まれていてもよい。
(2)分離工程
分離工程は、スラリー化工程で得られたスラリーから骨材等の固形分を除去する工程である。本実施の形態においては、分離工程は骨材分離工程と、微砂分除去工程とからなる。分離工程は、メッシュの大きさの異なる複数の振動篩によって実施され、スラリー化工程で得られたスラリーを順次処理して砂利、砂等の骨材を分離する。回収された骨材は、再利用に供するために粒径に応じて所定のビンに送られる。骨材が分離されて残った篩下は、セメント分が含まれているスラッジ水になっている。微砂分除去工程は、本実施の形態においては湿式サイクロンによって実施され、スラッジ水から微細な砂、つまり微砂分を除去する工程である。この工程によって微砂分が除去されたスラッジ水は、次の脱水工程で処理されてもよいし、あるいはスラリー化工程において他の残コンクリートや戻りコンクリートをスラリー化する水として再利用されてもよい。後者のようにするとスラッジ水はセメント分が濃縮される。すなわち濃縮スラッジ水になる。スラッジ水、あるいは濃縮スラッジ水は、本実施の形態においては含砂率が10質量%以下になるように、砂利、砂、微砂分が除去され、次の脱水工程に送られる。
(3)脱水工程
スラッジ水あるいは濃縮スラッジ水をフィルタプレスによって処理して脱水し、脱水ケーキを得る。本実施の形態においては脱水ケーキの含水率は、25〜45質量%になるようにする。
(4)破砕・乾燥工程
本実施の形態においては、この工程において横型の回転ドラムを使用する。回転ドラムは、その内周面に被処理物を掻き上げる翼、つまりリフターが複数枚設けられている。またその内部に回転ドラムの回転と独立して高速に回転する破砕攪拌翼が設けられている。そして回転ドラムには、熱風が吹き込まれるようになっている。従って回転ドラムを回転させ、破砕攪拌翼を回転させ、そして熱風を吹き込みながら、回転ドラムの一方の端部から脱水ケーキを連続的に投入する。そうすると脱水ケーキはリフターによって掻き上げられて落下し、破砕攪拌翼によって破砕され、熱風によって乾燥される。つまり破砕と乾燥が実質的に同時に実施される。これによって脱水ケーキは細分化されて表面積が大きくなって速やかに乾燥することができ、セメント分の水和反応が進行しないうちにセメント分を含んだ微粉末、つまりコンクリートスラッジ微粉末を製造することができる。コンクリートスラッジ微粉末は、回転ドラムの他方の端部から連続的に排出される。
本発明においては、このように製造されたコンクリートスラッジ微粉末を、水硬化性硬化体の材料として使用する。コンクリートスラッジ微粉末は、主としてセメント分からなるが、セメント分の水和反応の進み具合にはバラツキがある。換言するとコンクリートスラッジ微粉末の品質にはバラツキがある。本発明においては、水硬化性硬化体の品質が確実に高くなるように、使用するコンクリートスラッジ微粉末の品質に基準を設けている。具体的には品質指標として比表面積を採用し、これが8000cm/g以下となるコンクリートスラッジ微粉末を使用するようにする。この品質のコンクリートスラッジ微粉末を製造する3つの方法について説明する。
コンクリートスラッジ微粉末の品質を確保する第1の方法は、回収工程の後工程で品質を確保する方法である。具体的には、回収工程の後に、図2の(ア)に示されているように分級工程を実施してコンクリートスラッジ微粉末を選別する。コンクリートスラッジ微粉末は、色々な粒径になっているが、比較的粒径の大きい、つまり比較的粗い粒子の微粉末はセメント分の水和反応の進行の度合いが小さい。従って、分級工程によって目の細かいメッシュによって分級し、粒径が比較的大きい粒子だけを選別する。これによって比表面積が8000cm/g以下のコンクリートスラッジ微粉末を選別する。なお、篩下の微粉末は、地盤改良材等に再利用したり、産業廃棄物として廃棄する。
コンクリートスラッジ微粉末の品質を確保する第2の方法、および第3の方法は、図2の(イ)に示されているが、回収工程の前工程に特徴がある。つまり、残コンクリートまたは戻りコンクリート中のセメント分が水和反応が進行しないうちに回収工程を実施し、あるいは水和反応の進行を抑制しておいて回収工程を実施する方法である。セメント分の水和反応は、外気温と、経過時間とによって変化する。そこで、次式によって積算温度(℃・h)を与え、残コンクリートまたは戻りコンクリートが、コンクリートとして練混ぜられたときから、回収工程における脱水工程を開始するまでの積算温度に着目する。
Figure 0006084432
例えばコンクリート練混ぜから脱水工程まで5時間がかかり、その間に1時間毎の平均外気温が、15℃、16℃、16℃、17℃、15℃と変化した場合には、積算温度=(15+10)+(16+10)+(16+10)+(17+10)+(15+10)=129℃・hになる。第2の方法は、この積算温度が130℃・h以下になるように、残コンクリートまたは戻りコンクリートを工場に搬送し、そして回収工程を実施する。積算温度が小さいうちに回収工程を実施すると、セメント分の水和反応の進行の度合いが小さい高品質のコンクリートスラッジ微粉末が得られる。一方、第3の方法は、積算温度が130℃・hを越えることが予想される場合に、コンクリートが残コンクリートまたは戻りコンクリートになることが判明した時点で遅延剤添加工程を実施する方法である。つまり残コンクリートまたは戻りコンクリートを積んだアジテータトラックのミキサに遅延剤を所定量添加して攪拌する。これによってセメント分の水和反応の進行を抑制する。工場に搬送して回収工程を実施する。これによってセメント分の水和反応の進行の度合いが小さいコンクリートスラッジ微粉末を製造することができる。後で実施例の実験において明らかにされるように、第2、3の方法によって得られるコンクリートスラッジ微粉末は、比表面積が8000cm/g以下になる。なお、積算時間が130℃・hを越えない場合であっても、第3の方法を実施して遅延剤を添加することができ、さらに高品質のコンクリートスラッジ微粉末が製造できる。
本発明の実施に係る水硬化性硬化体は、上記のようにして製造された高品質のコンクリートスラッジ微粉末と、骨材と、水と、必要に応じて添加される混和剤とから練混ぜて得る。つまりこのような水硬化性硬化体において従来使用されていた普通ポルトランドセメントの代わりにコンクリートスラッジ微粉末を使用している。コンクリートスラッジ微粉末は、前記したように廃棄物としての残コンクリートや戻りコンクリートから製造されている。つまりCOの排出量がゼロと見なすことができる材料から製造されている。従って回収工程において、動力や熱風などのエネルギーが投入されていても、コンクリートスラッジ微粉末のCOの排出量はわずかであり、同量の普通ポルトランドセメントのCO排出量に対して、約13%の排出量に過ぎない。従って、本発明の実施に係る水硬化性硬化体において、十分な量のコンクリートスラッジ微粉末を使用しても、全体のCO排出量は抑制される。このように比表面積が8000cm/g以下の高品質のコンクリートスラッジ微粉末を十分な量使用できるので、水硬化性硬化体におけるセメント分は多く、硬化した水硬化性硬化体の強度は大きくなる。
○ 実験A
残コンクリートや戻りコンクリートからコンクリートスラッジ微粉末を前記した回収工程によって製造するとき、残コンクリートや戻りコンクリートを練混ぜたときから脱水工程までの積算温度と、得られるコンクリートスラッジ微粉末の品質の関係を調べた。なお、積算温度は前記の「数1」で与え、コンクリートスラッジ微粉末の品質は、比表面積によって判断することにした。積算温度を色々変えたときに、それぞれにおいて製造されたコンクリートスラッジ微粉末の比表面積を以下の表に示す。
Figure 0006084432
この実験の結果を図3のグラフに示す。グラフからコンクリートスラッジ微粉末の比表面積が積算温度が大きくなるに従って単調に大きくなっていることが分かる。比表面積が積算温度の一次関数になっているとして考えると、比表面積が8000cm/g以下のコンクリートスラッジ微粉末を得るには、積算温度が130℃・h以内にする必要があることが分かる。
○ 実験B
残コンクリートまたは戻りコンクリートが発生したときに、練混ぜから脱水工程開始までの積算時間が130℃・hを越えても、事前に遅延剤を投入してセメント分の水和反応の進行を抑制すれば、比表面積が8000cm/g以下のコンクリートスラッジ微粉末を得られる。これを確認するため、残コンクリートまたは戻りコンクリートが発生したタイミングで、グルコン酸ナトリウムを主成分とした遅延剤を添加して、その後回収工程を実施して、得られたコンクリートスラッジ微粉末の品質を調べた。結果を下記表に示す。なお、B1は遅延剤の添加がない場合の実験結果、B2、B3はそれぞれ遅延剤の添加濃度を変えた場合の実験結果である。
Figure 0006084432
積算温度が130℃・hを越える場合であっても、予め残コンクリートまたは戻りコンクリートに遅延剤を添加することによって、製造されるコンクリートスラッジ微粉末の品質が確保され、比表面積を8000cm/g以下にできることが確認できた。
○ 実験C
比表面積の異なるコンクリートスラッジ微粉末を使用して水硬化性硬化体を製造し、それらを硬化させてJIS R 5201で規定される方法によって材齢28日の圧縮強度を調べた。実験結果を以下の表に示す。
Figure 0006084432
C1〜C3は、比表面積が8000cm/g以下のコンクリートスラッジ微粉末を使用している。つまりC1〜C3の水硬化性硬化体は本発明の実施例に該当する。これに対してC4〜C7は比表面積が8000cm/gを超えるコンクリートスラッジ微粉末を使用しており、比較例になっている。建築構造物において一般的に用いられる設計基準強度は21または24N/mmである。レディミクストコンクリート工場にコンクリートが発注されるとき、設計基準強度に気温の補正値や構造体強度補正値を加算して得られる強度、つまり呼び強度が使用されており、呼び強度が30N/mmであれば建築構造物として安全に利用できる。C1〜C3はいずれも圧縮強度が30N/mmを満足している。つまり一般的な建築構造物に安全に利用できる。これに対してC4〜C7は、設計基準強度は概ね合格しているが、呼び強度30N/mmは達成できていない。比表面積が8000cm/g以下のコンクリートスラッジ微粉末を使用して水硬化性硬化体を製造すると、建築構造物に安全に利用できる十分な圧縮強度を備えた水硬化性硬化体が得られることが確認できた。
本発明の実施の形態に係る水硬化性硬化体は色々な変形が可能である。例えば本発明の実施の形態の説明においては、水硬化性硬化体に使用される骨材については格別に説明していないが、例えば残コンクリートや戻りコンクリートから回収された再生骨材が使用されてもよい。

Claims (2)

  1. 結合材と、骨材と、必要に応じて添加される混和剤とから練混ぜされて得られる水硬化性硬化体であって、
    前記結合材はコンクリートスラッジ微粉末のみからなり、
    該コンクリートスラッジ微粉末は比表面積が8000cm/g以下であることを特徴とする水硬化性硬化体。
  2. 請求項1に記載の水硬化性硬化体は、前記骨材が、残コンクリートまたは戻りコンクリートから回収された再生骨材からなることを特徴とする水硬化性硬化体。
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