JP6079885B2 - グラブボックス - Google Patents
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Description
本発明は車載用のグラブボックスに関する。
車両のインストルメントパネルに配設されるグラブボックスとしては種々のものが知られている。一般的なグラブボックスは、ケース部とグラブリッドとを備える。ケース部は箱状をなし、グラブリッドはケース部に対して位置変化する。具体的には、グラブリッドはケース部の開口を開閉する。グラブリッドがケース部の開口を開くと(つまり、グラブリッドが開位置に配置されると)、ケース部の内部が外界に露出する。つまりこのときグラブボックスが開かれる。また、グラブリッドがケース部の開口を閉じると(つまり、グラブリッドが閉位置に配置されると)、ケース部の内部が外界から隔離される。つまりこのときグラブボックスが閉じられる。
ところで、一般的なグラブボックスには、グラブリッドを閉位置にロックするためのロック機構が設けられている。この種のグラブボックスにおけるロック機構は、グラブリッドをケース部に対してロックする。このロックは解除可能である。ロック機構としては特許文献1に紹介されているような閂式のものが一般的である。特許文献1に紹介されているロック機構は、往復動可能な2つの可動側係合部と、ノブ状の入力部と、入力部に従動するとともに入力部の動作を各可動側係合部に伝達するリンク機構と、2つの可動側係合部に各々対応する2つの固定側係合部と、を備える。各可動側係合部はグラブリッドに設けられ、各固定側係合部はケース部に設けられる。ユーザーが操作ノブを操作すると、リンク機構が動作して2つの可動側係合部が各々動作し、各々の可動側係合部と固定側係合部とが係合するか、または、両者の係合が解除される。ところで、何らかの原因により、一方の可動側係合部(第1可動側係合部と呼ぶ)と一方の固定側係合部(第1固定側係合部と呼ぶ)との相対位置にばらつきが生じ、第1可動側係合部と第1固定側係合部との距離が目標値よりも大きくなることが考えられる。このような場合には、第1可動側係合部と第1固定側係合部との係合代が十分でなくなり、第1可動側係合部と第1固定側係合部とが安定して係合し難くなる。ひいては、ロック機構によるグラブリッドのロック性能が十分でなくなる場合がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、2つの可動側係合部によりグラブリッドを閉位置にロックする閂型のロック機構を持つグラブボックスであって、ロック性能に優れるものを提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明のグラブボックスは、開口を持つ箱状をなすケース部と、
前記ケース部に対して変位可能であり、前記開口を閉じる閉位置に配置され得るグラブリッドと、
前記グラブリッドを前記閉位置にロックするロック機構と、を備え、
前記ロック機構は、
前記ケース部と前記グラブリッドとの一方に設けられている第1固定側係合部と、前記ケース部と前記グラブリッドとの他方に設けられている第1可動側係合部と、で構成されている第1係合部と、
前記ケース部と前記グラブリッドとの一方に設けられている第2固定側係合部と、前記ケース部と前記グラブリッドとの他方に設けられている第2可動側係合部と、で構成されている第2係合部と、
前記グラブリッドに対して相対的に状態変化可能である入力部と、
前記入力部、前記第1可動側係合部、および、前記第2可動側係合部を接続する変換部と、を備え、
前記第1可動側係合部は、前記第1固定側係合部と係合する第1ロック位置と、前記第1固定側係合部との係合が解除する第1解除位置と、の間をスライド移動可能であり、
前記第2可動側係合部は、前記第2固定側係合部と係合する第2ロック位置と、前記第2固定側係合部との係合が解除する第2解除位置と、の間をスライド移動可能であり、
前記変換部は、前記第1ロック位置と前記第1解除位置との間の前記第1可動側係合部のスライド量が、前記第2ロック位置と前記第2解除位置との間の前記第2可動側係合部のスライド量よりも大きくなるように、前記入力部の動作を前記第1可動側係合部および前記第2可動側係合部に伝達するものである。
前記ケース部に対して変位可能であり、前記開口を閉じる閉位置に配置され得るグラブリッドと、
前記グラブリッドを前記閉位置にロックするロック機構と、を備え、
前記ロック機構は、
前記ケース部と前記グラブリッドとの一方に設けられている第1固定側係合部と、前記ケース部と前記グラブリッドとの他方に設けられている第1可動側係合部と、で構成されている第1係合部と、
前記ケース部と前記グラブリッドとの一方に設けられている第2固定側係合部と、前記ケース部と前記グラブリッドとの他方に設けられている第2可動側係合部と、で構成されている第2係合部と、
前記グラブリッドに対して相対的に状態変化可能である入力部と、
前記入力部、前記第1可動側係合部、および、前記第2可動側係合部を接続する変換部と、を備え、
前記第1可動側係合部は、前記第1固定側係合部と係合する第1ロック位置と、前記第1固定側係合部との係合が解除する第1解除位置と、の間をスライド移動可能であり、
前記第2可動側係合部は、前記第2固定側係合部と係合する第2ロック位置と、前記第2固定側係合部との係合が解除する第2解除位置と、の間をスライド移動可能であり、
前記変換部は、前記第1ロック位置と前記第1解除位置との間の前記第1可動側係合部のスライド量が、前記第2ロック位置と前記第2解除位置との間の前記第2可動側係合部のスライド量よりも大きくなるように、前記入力部の動作を前記第1可動側係合部および前記第2可動側係合部に伝達するものである。
本発明のグラブボックスは、下記の(1)〜(5)の何れかを備えるのが好ましく、複数を備えるのがより好ましい。
(1)前記変換部は回転体を備え、
前記第1可動側係合部は、前記変換部に接続される第1接続部を備え、
前記第2可動側係合部は、前記変換部に接続される第2接続部を備え、
前記回転体は、回転軸と、前記第1可動側係合部に直接または間接的に接続される第1回転接続部と、前記第2可動側係合部に直接または間接的に接続される第1回転接続部と、を備え、
前記回転体の回転軸と前記第1接続部との距離は、前記回転軸と前記第2接続部との距離よりも長い。
(2)前記変換部は回転体を備え、
前記回転体は、回転軸と、前記回転軸の径方向外側に位置する第1回転接続部と、前記第1回転接続部と離間するとともに前記回転軸の径方向外側に位置する第2回転接続部を持ち、
前記第1可動側係合部は、前記第1回転接続部に接続される第1接続部を備え、
前記第2可動側係合部は、前記第2回転接続部に接続される第2接続部を備え、
前記回転体の回転軸と前記第1回転接続部との距離と、前記回転軸と前記第2回転接続部との距離とは、同じであり、
前記第1ロック位置と前記第1解除位置との間を移動する際の、前記第1可動側係合部のスライド方向における前記第1回転接続部の直線移動距離は、前記第2ロック位置と前記第2解除位置との間を移動する際の、前記第2可動側係合部のスライド方向における前記第2回転接続部の直線移動距離よりも大きい請求項1に記載のグラブボックス。
(3)前記回転体はピニオンであり、
前記第1接続部および前記第2接続部はそれぞれラック状をなし、
前記第1回転接続部は前記第1接続部に噛合する歯列状をなし、前記第2回転接続部は前記第2接続部に噛合する歯列状をなす。
(4)前記第1可動側係合部のスライド方向と前記第2可動側係合部のスライド方向とは平行である。
(5)前記入力部は、前記グラブリッドに設けられ、
前記第1可動側係合部の長手方向の長さは、前記第2可動側係合部の長手方向の長さよりも長い。
(1)前記変換部は回転体を備え、
前記第1可動側係合部は、前記変換部に接続される第1接続部を備え、
前記第2可動側係合部は、前記変換部に接続される第2接続部を備え、
前記回転体は、回転軸と、前記第1可動側係合部に直接または間接的に接続される第1回転接続部と、前記第2可動側係合部に直接または間接的に接続される第1回転接続部と、を備え、
前記回転体の回転軸と前記第1接続部との距離は、前記回転軸と前記第2接続部との距離よりも長い。
(2)前記変換部は回転体を備え、
前記回転体は、回転軸と、前記回転軸の径方向外側に位置する第1回転接続部と、前記第1回転接続部と離間するとともに前記回転軸の径方向外側に位置する第2回転接続部を持ち、
前記第1可動側係合部は、前記第1回転接続部に接続される第1接続部を備え、
前記第2可動側係合部は、前記第2回転接続部に接続される第2接続部を備え、
前記回転体の回転軸と前記第1回転接続部との距離と、前記回転軸と前記第2回転接続部との距離とは、同じであり、
前記第1ロック位置と前記第1解除位置との間を移動する際の、前記第1可動側係合部のスライド方向における前記第1回転接続部の直線移動距離は、前記第2ロック位置と前記第2解除位置との間を移動する際の、前記第2可動側係合部のスライド方向における前記第2回転接続部の直線移動距離よりも大きい請求項1に記載のグラブボックス。
(3)前記回転体はピニオンであり、
前記第1接続部および前記第2接続部はそれぞれラック状をなし、
前記第1回転接続部は前記第1接続部に噛合する歯列状をなし、前記第2回転接続部は前記第2接続部に噛合する歯列状をなす。
(4)前記第1可動側係合部のスライド方向と前記第2可動側係合部のスライド方向とは平行である。
(5)前記入力部は、前記グラブリッドに設けられ、
前記第1可動側係合部の長手方向の長さは、前記第2可動側係合部の長手方向の長さよりも長い。
本発明のグラブボックスにおいては、第1可動側係合部のスライド量を第2可動側係合部のスライド量よりも大きくしたことで、ロック機構によるグラブリッドのロック性能を向上させ得る。つまり、寸法精度のばらつき等により第1可動側係合部と第1固定側係合部との距離が目標値よりも大きくなった場合にも、第1可動側係合部を大きくスライドさせることで、第1可動側係合部と第1固定側係合部とを信頼性高く係合させ得る。
以下、本発明のグラブボックスを具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1のグラブボックスが車両に搭載されている様子を模式的に表す斜視図を図1に示す。また、実施例1のグラブボックスを模式的に表す説明図を図2に示し、実施例1のグラブボックスを模式的に表す要部拡大説明図を図3および図4に示す。具体的には、図2は第1可動側係合部が第1ロック位置にあり、かつ、第2可動側係合部が第2ロック位置にあるグラブボックスを示す。図3は図2の要部拡大図である。図4はグラブリッドが閉位置にあり、第1可動側係合部が第1解除位置にあり、かつ、第2可動側係合部が第2解除位置にあるグラブボックスを示す。以下、実施例1において、上、下、前、後とは図1に示す上、下、前、後を指す。なお、前は車両進行方向の先側に相当する。後は車両進行方向の後側、つまり、車室内側に相当する。
実施例1のグラブボックスが車両に搭載されている様子を模式的に表す斜視図を図1に示す。また、実施例1のグラブボックスを模式的に表す説明図を図2に示し、実施例1のグラブボックスを模式的に表す要部拡大説明図を図3および図4に示す。具体的には、図2は第1可動側係合部が第1ロック位置にあり、かつ、第2可動側係合部が第2ロック位置にあるグラブボックスを示す。図3は図2の要部拡大図である。図4はグラブリッドが閉位置にあり、第1可動側係合部が第1解除位置にあり、かつ、第2可動側係合部が第2解除位置にあるグラブボックスを示す。以下、実施例1において、上、下、前、後とは図1に示す上、下、前、後を指す。なお、前は車両進行方向の先側に相当する。後は車両進行方向の後側、つまり、車室内側に相当する。
図1および図2に示すように、実施例1のグラブボックスは、ケース部1と、グラブリッド2と、ロック機構3とを備える。ロック機構3は、グラブボックスの後側(つまり車室内側)からは視認されないが、図2に示すように、グラブリッド2の内部に設けられている。ロック機構3は、第1固定側係合部40と、第2固定側係合部45と、第1可動側係合部50と、第2可動側係合部55と、入力部60と、変換部65と、を備える。
ケース部1は、車両のインストルメントパネル90に組み付けられている。具体的には、ケース部1は開口11を持つ箱状をなし、開口11をインストルメントパネル90の意匠面(つまり後面、車室内に露出する面)に向けている。なお、実施例1においては、ケース部1はインストルメントパネル90と別体であり、インストルメントパネル90に組み付けられている。しかし、ケース部1は全体として箱状をなせば良く、例えば、インストルメントパネル90等の車両構成部材でケース部1の少なくとも一部を構成しても良い。
グラブリッド2は、ケース部1の開口11を開閉可能な形状をなす。例えばグラブリッド2は、内部に物品を収容可能な箱状をなしても良いし、単なる板状をなし開口11を開閉するだけでも良い。グラブリッド2が箱状をなす場合、ケース部1はグラブリッド2を内部に収容可能であるのが良い。グラブリッド2は開口11を閉じる閉位置(図1)と、開口11を開く開位置(図略)との間を位置変化可能である。具体的には、実施例1のグラブボックスにおけるグラブリッド2は、図略のガイド機構により案内されて、開位置と閉位置との間を回動する。
実施例1のグラブボックスにおいて、ロック機構3の入力部60は、グラブリッド2に設けられている。入力部60はノブ状をなす。グラブリッド2における運転席側の領域には開口21が設けられ、入力部60は当該開口21の内部に配設されている。入力部60はグラブリッド2に対して揺動可能である。入力部60は、ユーザーが当該入力部60を手前側(つまり後側、車室内側)に向けて引くか、或いは、奥側(つまり前側、車室外側)に押すことで動作する。入力部60の前側部分はグラブリッド2の前面側(つまり背面側、ケース部1の内部側)に露出している。そして、入力部60の前側部分には図略の歯列が設けられている。
図2〜図4に示すように、第1固定側係合部40および第2固定側係合部45は、ケース部1の側部に設けられている。具体的には、第1固定側係合部40および第2固定側係合部45は、各々、左右方向に貫通する係合孔(41、46)を持つ枠状をなす。第1固定側係合部40はケース部1の左側壁(図略)に設けられ、第2固定側係合部45はケース部1の右側壁(図略)に設けられている。実施例1のグラブボックスにおいては、第1固定側係合部40および第2固定側係合部45はケース部1に設けられている。また、後述するように、第1可動側係合部50および第2可動側係合部55はグラブリッド2に設けられている。
第1可動側係合部50および第2可動側係合部55は、略棹状をなし、左右方向にスライド可能であるように、グラブリッド2の内部にそれぞれ取り付けられている。第1可動側係合部50は、第2可動側係合部55よりも長尺であり、グラブリッド2の左側部分に配置されている。第1可動側係合部50の左端部は、略爪状をなし、第1固定側係合部40の係合孔41に対面している。第2可動側係合部55は、グラブリッド2の右側部分に配置されている。第2可動側係合部55の右端部もまた略爪状をなし、第2固定側係合部45の係合孔46に対面している。第1可動側係合部50は、第1固定側係合部40と係合する第1ロック位置(図2、図3)と、第1固定側係合部40との係合が解除される第1解除位置(図4)と、の間をスライド移動する。また、第2可動側係合部55は、第2固定側係合部45と係合する第2ロック位置(図2、図3)と、第2固定側係合部45との係合が解除される第2解除位置(図4)と、の間をスライド移動する。なお、第1可動側係合部50および第2可動側係合部55は、後述する変換部65によって同期する。さらに、第1可動側係合部50は、後述する第1ピニオン部66と噛合する第1ラック51を持つ。第2可動側係合部55は、後述する第2ピニオン部67と噛合する第2ラック56を持つ。
変換部65は、3つのピニオン部(第1ピニオン部66、第2ピニオン部67および図略の第3ピニオン部)が同軸的に一体化されたピニオン68からなる。第1ピニオン部66は第2ピニオン部67よりも大径である。第3ピニオン部は上述した入力部60の歯列(図略)と噛合している。したがって、入力部60が揺動すると、ピニオン68が回転駆動される。実施例1のグラブボックスにおいては、入力部60に駆動されたピニオン68は、図2中時計回りに回転する。
第1ラック51は、第1ピニオン部66に噛合するラック状をなす。第2ラック56は、第2ピニオン部67に噛合するラック状をなす。
以下、実施例1のグラブボックスにおけるロック機構3の動作を説明する。
図1に示すようにグラブリッド2がケース部1の開口を閉じる閉位置に配置されている時には、図2に示すように、第1可動側係合部50が第1固定側係合部40と係合し、第2可動側係合部55が第2固定側係合部45と係合する。したがって、このときグラブリッド2とケース部1とは相対的に位置変化し得ない。つまり、グラブリッド2は閉位置にロックされる。
ユーザーが入力部60を引くと、ピニオン68が図2中時計回りに回転する。つまりこのとき、ピニオン68を構成する第1ピニオン部66および第2ピニオン部67は図2中時計回りに回転する。すると、第1ピニオン部66に噛合している第1ラック51が図2中右方向にスライドし、第1ラック51に一体化されている第1可動側係合部50もまた図2中右方向にスライドする。その一方で、第2ピニオン部67に噛合している第2ラック56は図2中左方向にスライドし、第2ラック56に一体化されている第2可動側係合部55もまた図2中左方向にスライドする。すると、第1可動側係合部50と第1固定側係合部40との係合が解除されるとともに、第2可動側係合部55と第2固定側係合部45との係合が解除されて、ロック機構3によるグラブリッド2のロックが解除される。つまり、このときグラブリッド2は位置変化可能になり、ケース部1の開口11を開き得る。
ところで、図1に示すように入力部60をグラブリッド2に設ける場合、実施例1のグラブボックスのように、グラブリッド2における長手方向の一方側に偏った位置に入力部60を配置する場合がある。グラブボックスは、一般に車両の助手席側に配設されるが、入力部60をグラブリッド2における運転席側の位置に設ければ、運転者が入力部60を操作し易くなるからである。この場合、入力部60と第1固定側係合部40との位置、および、入力部60と第2固定側係合部45の位置に応じて、第1可動側係合部50および第2可動側係合部55の長手方向の長さを設定する必要がある。つまり、第1可動側係合部50の長手方向の長さを第2可動側係合部55の長手方向の長さよりも長くする必要がある。
実施例1のグラブボックスにおいては、第1可動側係合部50の長手方向の長さは、第2可動側係合部55の長手方向の長さよりも大きい。また、入力部60から第1固定側係合部40までの距離は、入力部60から第2固定側係合部45までの距離よりも大きい。さらに、変換部65から第1固定側係合部40までの距離は、入力部60から第2固定側係合部45までの距離よりも大きい。このため、第1可動側係合部50と第1固定側係合部40との相対位置は、第2可動側係合部55と第2固定側係合部45との相対位置に比べてずれ易くなると考えられる。実施例1のグラブボックスにおいては、材料の大部分が樹脂で占められている。大型の樹脂部材は寸法精度高く成形し難いため、比較的大型の部材である第1可動側係合部50もまた寸法精度高く成形し難い。また、比較的大型の部材であるケース部1もまた寸法精度高く成形し難い。このため、第1可動側係合部50と、ケース部1に設けられている第1固定側係合部40と、の相対位置は比較的ずれ易い。
したがって、第1可動側係合部50と第1固定側係合部40との距離は、予め定めた距離よりも大きくなる可能性があり、この場合、第1可動側係合部50のストローク(スライド量)が、第1可動側係合部50と第1固定側係合部40とが係合するのに十分でなくなる可能性がある。つまり、第2可動側係合部55と第2固定側係合部45とが係合しても、第1可動側係合部50と第1固定側係合部40とが係合しない可能性がある。換言すると、この種のグラブボックスにおいては、一方の係合部のみが係合して他方の係合部が十分に係合しない現象(所謂、ロックの片掛かり現象)が生じる可能性がある。
上述したロックの片掛かり現象を抑制するためには、第1可動側係合部50と第1固定側係合部40との相対位置の誤差分の余裕をもたせて、第1可動側係合部50のスライド量を第2可動側係合部55のスライド量よりも大きくすれば良いと考えられる。
実施例1のグラブボックスにおいては、ピニオン68が同軸かつ異径の2つのピニオン68(第1ピニオン部66、第2ピニオン部67)で構成されている。そして、第1ピニオン部66と第1ラック51との噛合部分からピニオン68の回転軸69までの距離は、第2ピニオン部67と第2ラック56との噛合部分から回転軸69までの距離に比べて大きい。このため、ピニオン68が回転したときの第1ラック51の移動距離は、第2ラック56の移動距離に比べて大きくなり、第1可動側係合部50のスライド量は第2可動側係合部55のスライド量に比べて大きくなる。つまり、図4に示すように、変換部65は、第1可動側係合部50のスライド量L1が第2可動側係合部55のスライド量L2よりも大きくなるように、入力部60の動作を第1可動側係合部50および第2可動側係合部55に伝達する。このため、実施例1のグラブボックスによると、上述したロックの片掛かり現象を回避あるいは抑制して、ロック機構3によってグラブリッド2を閉位置に信頼性高くロックし得る。つまり、実施例1のグラブボックスはロック性能に優れる。
実施例1のグラブボックスにおいては、グラブリッド2を閉位置に配置した後に入力部60を押すと、ピニオン68が図2中反時計回りに回転し、第1可動側係合部50が左方向にスライドし、かつ第2可動側係合部55が右方向にスライドする。そして、第1可動側係合部50が第1固定側係合部40と係合し、かつ、第2可動側係合部55が第2固定側係合部45と係合することで、グラブリッド2が再度閉位置にロックされる。しかし、例えば実施例1のグラブボックスに、第1可動側係合部50を左方に向けて付勢し、第2可動側係合部55を右方に向けて付勢する付勢手段を設けることもできる。この場合、グラブリッド2を閉位置に配置するだけで、ロック機構3によりグラブリッド2を閉位置に自動的にロックできる。
入力部60の位置は、車両室内のレイアウトに応じて適宜設定すれば良く、例えば、グラブリッド2の略中央部に設けても良い。或いは、インストルメントパネル90におけるグラブリッド2の周縁部に設けても良い。さらに、実施例1における入力部60はノブ型のものであったが、例えば、ユーザーが押圧操作することで動作するプッシュスイッチ型の入力部60を本発明のグラブボックスに適用しても良い。
また、入力部60は、グラブリッド2に対して相対的に状態変化可能であれば良い。ここでいう状態変化とは、入力部60の少なくとも一部が状態変化することを指す。つまり、閉位置にロックされているグラブリッド2に対して入力部60の少なくとも一部が相対的に位置変化すれば、グラブリッド2をロックしている第1可動側係合部50、第1固定側係合部40、第2可動側係合部55および第2固定側係合部45の少なくとも一つに対して入力部60の少なくとも一部が相対的に位置変化し、変換部65を介してこれらの部材の少なくとも一つに動力を伝達できる。
実施例1においては、第1固定側係合部40および第2固定側係合部45はケース部1に設けられるとともに、第1可動側係合部50および第2可動側係合部55はグラブリッド2に設けられている。しかし、本発明のグラブボックスにおいては、第1固定側係合部40と第1可動側係合部50との一方をケース部1に設けるとともに他方をグラブリッド2に設ければ良い。そして、第2固定側係合部45と第2可動側係合部55との一方をケース部1に設けるとともに他方をグラブリッド2に設ければ良い。つまり、第1固定側係合部40および第2固定側係合部45をグラブリッド2に設け、第1可動側係合部50および第2可動側係合部55をケース部1に設けても良い。さらには、第1固定側係合部40と第2固定側係合部45との一方をケース部1に設けるとともに他方をグラブリッド2に設けても良い。例えば、第1固定側係合部40をケース部1に設けるとともに第2固定側係合部45をグラブリッド2に設けるのであれば、第1可動側係合部50をグラブリッド2に設けるとともに第2可動側係合部55をケース部1に設ければ良い。
その他、グラブボックスは、グラブリッド2を自動的または半自動的に開閉させるための開閉駆動機構を備えても良い。この場合、ロック機構3の動作と開閉駆動機構の動作との少なくとも一部が同期するようにするのが好ましい。
(実施例2)
実施例2のグラブボックスは、ピニオンの形状が異なること以外は実施例1のグラブボックスと同じものである。実施例2のグラブボックスを模式的に表す要部拡大説明図を図5に示す。
実施例2のグラブボックスは、ピニオンの形状が異なること以外は実施例1のグラブボックスと同じものである。実施例2のグラブボックスを模式的に表す要部拡大説明図を図5に示す。
図5に示すように、実施例2のグラブボックスにおける変換部65は1つのピニオン68で構成されている。このピニオン68は2つの歯列(第1歯列61、第2歯列62)を備える。第1歯列61は第1ラック51と噛合し、第2歯列62は第2ラック56と噛合している。そして、第1歯列61と回転軸69との距離は、第2歯列62と回転軸69との距離よりも大きい。このため、実施例2のグラブボックスにおいても、実施例1のグラブボックスと同様に、ピニオン68が回転したときの第1ラック51の移動距離は、第2ラック56の移動距離に比べて大きくなる。そして、このときの第1可動側係合部50のスライド量は第2可動側係合部55のスライド量に比べて大きくなる。よって、実施例2のグラブボックスもまた、ロック性能に優れる。
(実施例3)
実施例3のグラブボックスは、変換部がリンク機構で構成されていること、および、入力部の構造以外は実施例1のグラブボックスと同じものである。実施例3のグラブボックスを模式的に表す要部拡大説明図を図6および図7に示す。入力部を模式的に表す分解斜視図を図8に示す。なお、図6は第1可動側係合部が第1ロック位置にあり、かつ、第2可動側係合部が第2ロック位置にあるグラブボックスを示す。図7は第1可動側係合部が第1解除位置にあり、かつ、第2可動側係合部が第2解除位置にあるグラブボックスを示す。
実施例3のグラブボックスは、変換部がリンク機構で構成されていること、および、入力部の構造以外は実施例1のグラブボックスと同じものである。実施例3のグラブボックスを模式的に表す要部拡大説明図を図6および図7に示す。入力部を模式的に表す分解斜視図を図8に示す。なお、図6は第1可動側係合部が第1ロック位置にあり、かつ、第2可動側係合部が第2ロック位置にあるグラブボックスを示す。図7は第1可動側係合部が第1解除位置にあり、かつ、第2可動側係合部が第2解除位置にあるグラブボックスを示す。
図6に示すように、変換部65は、回転体70、2つのリンクピン(第1回転接続部71、第2回転接続部72)、2つのリンク孔(第1接続部73、第2接続部74)、2つのガイドピン(第1ガイドピン75、第2ガイドピン76)、および、2つのガイド孔(第1ガイド孔77、第2ガイド孔78)で構成されている。
回転体70は、グラブリッド2の内部においてグラブリッド2に軸支されている。回転体70には2つのリンクピン(第1回転接続部71、第2回転接続部72)が一体形成されている。回転体70の回転軸69と第1回転接続部71との距離は、回転軸69と第2回転接続部72との距離よりも大きい。実施例3のグラブボックスにおいては、第1回転接続部71と回転軸69と第2回転接続部72とは直線的に配列している。換言すると、第1回転接続部71、回転軸69および第2回転接続部72は同一直線上に配置されている。また、第1回転接続部71と回転軸69とを通る直線と、回転軸69と第2回転接続部72とを通る直線との交差角は、180°である。
第1可動側係合部50には第1接続部73が貫通形成されている。第1接続部73には第1回転接続部71が挿入されている。第2可動側係合部55には第2接続部74が貫通形成されている。第2接続部74には第2回転接続部72が挿入されている。
第1ガイドピン75および第2ガイドピン76は、回転体70に一体形成されている。グラブリッド2には第1ガイド孔77および第2ガイド孔78が陥没形成されている。第1ガイド孔77および第2ガイド孔78は、回転軸69を中心とした円弧状をなす。第1ガイド孔77には第1ガイドピン75が挿入され、第2ガイド孔78には第2ガイドピン76が挿入されている。第1ガイドピン75は第1ガイド孔77内をスライド可能であり、第2ガイドピン76は第2ガイド孔78内をスライド可能である。第1ガイドピン75、第1ガイド孔77、第2ガイドピン76および第2ガイド孔78に案内されて、回転体70は安定して回転する。なお、回転体70が所定角度回転すると、第1ガイドピン75と第1ガイド孔77の溝端部とが係合し、第2ガイドピン76と第2ガイド孔78の溝端部とが係合する。このため、第1ガイドピン75、第1ガイド孔77、第2ガイドピン76および第2ガイド孔78は回転体70のストッパとしても機能する。
実施例3のグラブボックスにおいても、入力部60に従動して回転体70が回転する。このときの回転体70の回転方向は、図6中時計回り方向である。回転体70が回転すると、回転体70に一体に形成されている第1回転接続部71および第2回転接続部72が、回転体70の回転軸69を中心とした円弧上を時計回り方向に移動する。第1可動側係合部50には、第1回転接続部71に係合する第1接続部73が設けられている。また、第2可動側係合部55には第2回転接続部72に係合する第2接続部74が設けられている。このため、第1可動側係合部50は第1回転接続部71に引っ張られて位置変化し、第2可動側係合部55は第2回転接続部72に引っ張られて位置変化する。したがって、第1可動側係合部50は左右方向に略直線的にスライドする(図7)。同様に、第2可動側係合部55もまた左右方向に略直線的にスライドする。
実施例3のグラブボックスにおいては、回転体70の回転軸69と第1回転接続部71との距離が、回転軸69と第2回転接続部72との距離よりも大きい。このため、回転体70の回転に伴う第1回転接続部71の移動距離は、第2回転接続部72の移動距離よりも大きく、第1回転接続部71に従動する第1可動側係合部50のスライド量L1は、第2回転接続部72に従動する第2可動側係合部55のスライド量L2よりも大きい。よって、実施例3のグラブボックスもまた、ロック性能に優れる。
ところで、図8に示すように、実施例3のグラブボックスにおける入力部60はプッシュボタン8とベース部9とで構成されている。プッシュボタン8はベース部9の後側(つまり車室内側)に配置されている。より具体的には、ベース部9にはプッシュボタン8の外形に対応する凹部90が設けられている。凹部90は前側に向けて陥没し、プッシュボタン8は凹部90の内部に配置される。また、プッシュボタン8には、ベース部9に向けて突出する第1ボス部81が設けられている。さらに、第1ボス部81の径方向外側には、2つの立壁(入力壁部85と呼ぶ)が設けられている。凹部90には、第1ボス部81に対応する位置に、第2ボス部91が設けられている。第2ボス部91は、第1ボス部81よりも大径の筒状(実施例3では略円筒状)をなし、凹部90の前面からさらに前側(つまり、後述する回転体70側、プッシュボタン8の押圧方向の先側)に向けて突出している。第1ボス部81は第2ボス部91の内部に挿入される。また、凹部90には、入力壁部85に対応する位置に、入力壁部85を挿通可能な2つの貫通孔92が設けられている。各貫通孔92には、各々対応する入力壁部85が挿入される。プッシュボタン8とベース部9との間にはコイルスプリングからなる第1付勢手段89が介在している。より具体的には、第1付勢手段89は第1ボス部81の外側に装着されている。第1付勢手段89の一端部はプッシュボタン8における前面に着座し、第1付勢手段89の他端部はベース部9(より具体的には凹部90)における後面に着座している。第1付勢手段89は、プッシュボタン8を後ろ方向、つまり、ベース部9から離れる方向に付勢する。
プッシュボタン8には、さらに、キーシリンダ82が設けられている。キーシリンダ82は、図略のキーを差し込むための差し込み口(図略)を持つ。ベース部9の凹部90には、キーシリンダ82に対応する位置に、キーシリンダ82の外形に対応する形状のキーシリンダベース93が陥没形成されている。キーシリンダ82はキーシリンダベース93の内部に配置される。キーシリンダ82には、キーシリンダベース93に向けて突起するキーロック第1係合部83が設けられている。キーシリンダベース93には。貫通孔状のキーロック第2係合部94が設けられている。図略のキーをキーシリンダ82に差し込み回転させると、キーシリンダ82はキーに従動して、図8に示すロック解除位置と、当該ロック解除位置から90°回転したロック位置(図略)と、の間を回転可能である。ロック解除位置において、キーシリンダ82のキーロック第1係合部83は、キーシリンダベース93のキーロック第2係合部94に対面する。つまり、このときキーロック第1係合部83はキーロック第2係合部94内に退避可能であるため、プッシュボタン8をベース部9に向けて押圧すると、プッシュボタン8はベース部9に近づく方向に移動する。つまり、このときプッシュボタン8は押圧操作可能である。キーシリンダ82がロック位置に配置されると、キーロック第1係合部83はキーシリンダベース93の底面に対面する。したがって、このときキーロック第1係合部83は退避不可能となる。つまりこのとき、プッシュボタン8をベース部9に向けて押圧すると、キーロック第1係合部83がキーシリンダベース93の底面に当接する。このためプッシュボタン8はベース部9に近づくことができない。換言すると、このときプッシュボタン8は押圧操作不可能である。このように、キーシリンダ82にキーを差し込みかつ回転させることで、プッシュボタン8を押圧操作可能にするロック解除位置と、プッシュボタン8を押圧操作不可能にするロック位置と、の間でキーシリンダ82を状態変化させることができる。
第2ボス部91の周縁部には3つの位置決めリブ95が設けられている。また、第2ボス部91の突出端部には3つの第1抜け止め係合部96が設けられている。各第1抜け止め係合部96は略短冊状をなし、第2ボス部91の外周面から径方向外方に向けて突出している。また、隣接する第1抜け止め係合部96同士は、第2ボス部91の周方向に離間している。第1抜け止め係合部96と位置決めリブ95とは、第2ボス部91の軸方向(図8中前後方向)に離間している。そして、第1抜け止め係合部96と位置決めリブ95との間には、回転体70が保持される。
実施例3のグラブボックスにおいては、回転体70には貫通孔状をなす軸受79が設けられている。軸受79には第2ボス部91が挿通されている。したがって、第2ボス部91は、実質的には、回転体70の回転軸69を構成している。軸受79の内面には、3つの第2抜け止め係合部97が設けられている。各第2抜け止め係合部97は、略短冊状をなし、軸受79の内周面から径方向内方に向けて突出している。また、隣接する第2抜け止め係合部97は軸受79の周方向に離間している。隣接する第2抜け止め係合部97の周方向距離は、第1抜け止め係合部96の周方向長さよりも僅かに大きい。したがって第1抜け止め係合部96は、回転体70を第2ボス部91に挿通する際に、隣接する第2抜け止め係合部97の間を通過可能である。第1抜け止め係合部96が第2抜け止め係合部97間を通過した後に回転体70を所定角度回転させれば、第1抜け止め係合部96と第2抜け止め係合部97とが係合し、回転体70が第2ボス部91に保持される。なお、第2ボス部91は回転体70の回転軸69であり、回転体70は第2ボス部91に対して回転可能に保持される。
回転体70の第1回転接続部71は、第1可動側係合部50の第1接続部73に挿通されている。回転体70の第2回転接続部72は第2可動側係合部55の第2接続部74に挿通されている。ベース部9には第1バネ座部87が設けられ、回転体70には第2バネ座部88が設けられている。第1バネ座部87には引きバネからなる第2付勢手段84の一端が取り付けられている。第2バネ座部88には第2付勢手段84の他端が取り付けられている。第2付勢手段84は、伸長して付勢力を蓄積した状態で第1バネ座部87および第2バネ座部88に取り付けられ、回転体70を図8中反時計回り方向に付勢する。そして、回転体70に取り付けられている第1可動側係合部50を第1ロック位置に向けて付勢するとともに、回転体70に取り付けられている第2可動側係合部55を第2ロック位置に向けて付勢する。したがって、グラブリッド2が閉位置に配置されるとともにプッシュボタン8が押圧操作されていないときには、第2付勢手段84の付勢力によって、第1可動側係合部50は第1固定側係合部40と係合し、第2可動側係合部55は第1固定側係合部45と係合する。つまりこのときグラブリッド2は閉位置にロックされる。
ところで、プッシュボタン8に設けられている2つの入力壁部85は、突出高さの徐変するテーパ壁状をなす。具体的には、2つの入力壁部85は、略円筒状をなす第1ボス部81の径方向外側に配置されるとともに、互いに離間している。各入力壁部85の突出方向は、第1ボス部81の突出方向(つまり第1ボス部81の軸方向)と略一致している。そして各入力壁部85は、第1ボス部81を中心とする円の周方向に沿って僅かに湾曲している。さらに、各入力壁部85の突出高さは、第1ボス部81を中心とする時計回り方向の先側から後側に向けて徐々に高くなっている。一方、回転体70には、各入力壁部85の突出端面86にそれぞれ当接可能な2つの当て面98が設けられている。各入力壁部85における突出端側の一部は、プッシュボタン8が押圧操作されていないときにも、貫通孔92に挿通されている。そして、各入力壁部85において突出高さの高い部分(時計回り方向の後側部分)はこのとき貫通孔92を経てベース部9の前側に露出し、回転体70の当て面98に当接している。ユーザーがプッシュボタン8を押圧操作すると、プッシュボタン8とベース部9とが近接する。すると、入力壁部85の突出端面86のなかで突出高さの比較的小さい部分、つまり、時計回り方向の先側に位置する部分が、徐々に貫通孔92を経てベース部9の前側に露出する。このため、回転体70の当て面98は入力壁部85の突出端面86によって時計回り方向の後側から先側に向けて押圧される。換言すると、このとき回転体70は時計回りに押圧され回転駆動される。すると、回転体70に取り付けられている第1可動側係合部50は第1解除位置に向けてスライドし、回転体70に取り付けられている第2可動側係合部55は第2解除位置に向けてスライドする。このため、グラブリッド2のロックは解除される。
実施例3のグラブボックスにおける入力部60は、簡単な構造からなり、回転体70を容易に回転駆動できる。
なお、実施例3のグラブボックスにおける入力壁部85は、回転体70の回転方向に沿った湾曲形状をなしているが、入力壁部85の形状は回転体70を回転駆動可能なテーパ壁状であれば良く、これに限定されない。例えば入力壁部85は突出高さの徐変する平板状であっても良い。
(実施例4)
実施例4のグラブボックスは、変換部がリンク機構で構成されていること以外は実施例1のグラブボックスと概ね同じものである。また、実施例4のグラブボックスは、第1回転接続部と回転軸との距離と、第2回転接続部と回転軸の距離が等しい点で実施例3のグラブボックスと異なる。実施例4のグラブボックスを模式的に表す要部拡大説明図を図9および図10に示す。なお、図9は第1可動側係合部が第1ロック位置にあり、かつ、第2可動側係合部が第2ロック位置にあるグラブボックスを示す。図10は第1可動側係合部が第1解除位置にあり、かつ、第2可動側係合部が第2解除位置にあるグラブボックスを示す。
実施例4のグラブボックスは、変換部がリンク機構で構成されていること以外は実施例1のグラブボックスと概ね同じものである。また、実施例4のグラブボックスは、第1回転接続部と回転軸との距離と、第2回転接続部と回転軸の距離が等しい点で実施例3のグラブボックスと異なる。実施例4のグラブボックスを模式的に表す要部拡大説明図を図9および図10に示す。なお、図9は第1可動側係合部が第1ロック位置にあり、かつ、第2可動側係合部が第2ロック位置にあるグラブボックスを示す。図10は第1可動側係合部が第1解除位置にあり、かつ、第2可動側係合部が第2解除位置にあるグラブボックスを示す。
図9に示すように、変換部65は、回転体70、2つのリンクピン(第1回転接続部71、第2回転接続部72)、2つのリンク孔(第1接続部73、第2接続部74)、1つのガイドピン(第1ガイドピン75)、および、1つのガイド孔(第1ガイド孔77)で構成されている。
回転体70は、実施例3のグラブボックスと同様に、グラブリッド2の内部においてグラブリッド2に軸支されている。回転体70には2つのリンクピン(第1回転接続部71、第2回転接続部72)が一体形成されている。回転体70の回転軸69と第1回転接続部71との距離は、回転軸69と第2回転接続部72との距離と略同じである。なお、実施例4のグラブボックスにおいては、第1回転接続部71と回転軸69と第2回転接続部72とは、直線的に配列していない。具体的には、実施例4のグラブボックスにおいて、第1回転接続部71と回転軸69とを通る直線と、回転軸69と第2回転接続部72とを通る直線との交差角(劣角)は、約140°である。
第1可動側係合部50には第1接続部73が貫通形成されている。第1接続部73は貫通孔状をなす。第1接続部73には第1回転接続部71が挿入されている。第2可動側係合部55には第2接続部74が貫通形成されている。第2接続部74には第2回転接続部72が挿入されている。なお、第1回転接続部71を貫通孔状にし、第1接続部73をピン状にしても良い。同様に、第2回転接続部72を貫通孔状にし、第2接続部74をピン状にしても良い。
第1可動側係合部50は、図9に示す第1ロック位置と、図10に示す第1解除位置と、の間をスライド移動する。また、第2可動側係合部55は、図9に示す第2ロック位置と、図10に示す第2解除位置と、の間をスライド移動する。第1可動側係合部50のスライド方向および第2可動側係合部55のスライド方向は、実施例1〜実施例3のグラブボックスと同様に、左右方向である。
第1ガイドピン75はグラブリッド2に一体形成され、第1ガイド孔77は回転体70に陥没形成されている。第1ガイド孔77は回転軸69を中心とした円弧状をなす。第1ガイド孔77には第1ガイドピン75が挿入されている。第1ガイドピン75は第1ガイド孔77内をスライド可能である。
実施例4のグラブボックスでは、入力部60に従動して、回転体70が図10中反時計回り方向に回転する。すると、回転体70に一体に形成されている第1回転接続部71および第2回転接続部72が、回転体70の回転軸69を中心とした円弧上を反時計回り方向に移動する。実施例4においては、回転軸69と第1回転接続部71との径方向距離、および、回転軸69と第2回転接続部72との径方向距離―は等しい。したがって、回転体70の周方向(つまり、回転軸69を中心とする円弧方向)における第1回転接続部71の移動距離および第2回転接続部72の移動距離は等しい。しかし、図10に示すように、このときの第1回転接続部71および第2回転接続部72の移動距離を、第1可動側係合部50および第2可動側係合部55のスライド方向(つまり直線方向、左右方向)に投影すると、第1回転接続部71の移動距離L01が第2回転接続部72の移動距離L02を大きく上回る。したがって、実施例4のグラブボックスにおいても、第1可動側係合部50のスライド量L1は第2可動側係合部55のスライド量L2よりも大きく、実施例4のグラブボックスもまたロック性能に優れる。
なお、実施例4のグラブボックスにおいては、第1可動側係合部50は第1回転接続部71を中心として揺動しつつ全体としてスライドする。同様に、第2可動側係合部55は第2回転接続部72を中心として揺動しつつ全体としてスライドする。しかし、例えば第1接続部73および第2接続部74の形状を適宜変更すれば、第1可動側係合部50および第2可動側係合部55がスライドだけして揺動しないようにもできる。例えば、第1接続部73を、第1可動側係合部50のスライド方向に直交する長孔状にすれば、第1回転接続部71が第1接続部73内をスライドする。このようにすれば、第1可動側係合部50はスライドするだけで揺動しない。同様に、第2可動側係合部55の揺動を回避するためには、第2接続部74を、第2可動側係合部55のスライド方向に直交する長孔状にし、第2回転接続部72が第2接続部74内をスライドするようにすれば良い。
ところで、第1可動側係合部50および第2可動側係合部55のスライド方向に直交する方向(図9紙面中上下方向)において、第1回転接続部71の移動量は、第2回転接続部72の移動量に比べて小さい。つまり、第1可動側係合部50の揺動量は、第2可動側係合部55の揺動量に比べて比較的小さい。換言すると、実施例4のグラブボックスにおいては、2つの可動側係合部(第1可動側係合部50、第2可動側係合部55)の揺動量が異なる。また、実施例4のグラブボックスにおいては、第1可動側係合部50と、ケース部1に設けられている第1固定側係合部40と、の距離は比較的大きく、第1可動側係合部50と第1固定側係合部40との相対位置は比較的ズレ易い。実施例4のグラブボックスにおいては、このように、位置ズレし易い側の可動側係合部(実施例4では第1可動側係合部50)の揺動量を小さくしたことで、可動側係合部と固定側係合部との配置精度を高め、ロックの片掛かりを抑制し得る。
また、実施例4のグラブボックスにおいては、第2可動側係合部55の揺動量は比較的大きい。しかし、図9に示すように、第2可動側係合部55をガイドするガイド部99をグラブボックスに設け、このガイド部99に第2可動側係合部55を第2固定側係合部45に向けて案内する傾斜面99aを設けることで、第2可動側係合部55と第2固定側係合部45との配置精度を向上させ、第2可動側係合部55と第2固定側係合部45とを信頼性高く係合させ得る。
(実施例5)
実施例5のグラブボックスは、回転体および入力部の形状以外は実施例3のグラブボックスと概ね同じものである。実施例5のグラブボックスを模式的に表す要部拡大説明図を図11および図12に示す。なお、図11は第1可動側係合部が第1ロック位置にあり、かつ、第2可動側係合部が第2ロック位置にあるグラブボックスを示す。図12は第1可動側係合部が第1解除位置にあり、かつ、第2可動側係合部が第2解除位置にあるグラブボックスを示す。
実施例5のグラブボックスは、回転体および入力部の形状以外は実施例3のグラブボックスと概ね同じものである。実施例5のグラブボックスを模式的に表す要部拡大説明図を図11および図12に示す。なお、図11は第1可動側係合部が第1ロック位置にあり、かつ、第2可動側係合部が第2ロック位置にあるグラブボックスを示す。図12は第1可動側係合部が第1解除位置にあり、かつ、第2可動側係合部が第2解除位置にあるグラブボックスを示す。
実施例5のグラブボックスにおいて、回転体70にはストッパ部70aが設けられている。ストッパ部70aは回転体70の径方向に突出する形状をなす。ストッパ部70aの突出端部は、回転体70の径方向における最も外側に位置している。ストッパ部70aは回転体70と一体に回転する。
入力部60は、実施例3のグラブボックスにおける入力部60と同様に、プッシュボタン8およびベース部9で構成されている。ベース部9には、キーシリンダベース93の代わりに開口(図略)が形成されている。図略の開口は、プッシュボタン8のキーシリンダ82に対応する位置にある。
プッシュボタン8はキーシリンダ82を備える。図略のキーをキーシリンダ82に差し込み回転させると、キーシリンダ82はキーに従動して、図11に示すロック位置と図12に示すロック解除位置との間を回転可能である。キーシリンダ82には前側に向けて突起するキーロック第1係合部83が設けられている。キーロック第1係合部83はキーシリンダ82と一体的に回転する。キーロック第1係合部83は、ベース部9に設けられている図略の開口を経て、ベース部9の前側に露出している。
キーシリンダ82がロック位置にあるときのキーロック第1係合部83と回転体70の回転軸69との距離は、キーシリンダ82がロック解除位置にあるときのキーロック第1係合部83と回転軸69との距離に比べて小さい。このため図11に示すように、ロック位置において、キーシリンダ82のキーロック第1係合部83は回転体70のストッパ部70aに係合し、回転体70の回転を妨げる。つまりこのとき、ユーザーがプッシュボタン8を押圧操作しても回転体70は回転せず、第1可動側係合部55および第2可動側係合部50はスライド移動できず、ロック機構3によるグラブリッド2のロックは維持される。実施例5のグラブボックスは、キーシリンダ82と回転体70とを直接係合させることで回転体70をロックし、ひいてはロック機構3によるグラブリッド2のロックを維持する点で実施例3のグラブボックスと異なる。しかし、このような実施例5のグラブボックスにおいても、キー(図略)とキーシリンダ82とを用いてグラブリッド2のロック状態を維持および解除可能である。
一方、ロック解除位置においては、キーシリンダ82のキーロック第1係合部83は回転体70のストッパ部70aに当接しない。このため、このとき回転体70は回転可能となり、ユーザーがプッシュボタン8を押圧操作すると、ロック機構3によるグラブリッド2のロックは解除される。
なお、実施例5のグラブボックスにおける入力部60、変換部65、第1可動側係合部55、第1固定側係合部40、第2可動側係合部50および第2固定側係合部45は、実施例3のグラブボックスにおけるこれら各部材と略同じ形状であり、略同じ動作をする。このため、実施例5のグラブボックスにおいても、ロックの片掛かり現象は抑制される。
本発明のグラブボックスは、各種車両用のグラブボックスとして好ましく使用できる。
1:ケース部 2:グラブリッド 3:ロック機構
40:第1固定側係合部 45:第2固定側係合部 50:第1可動側係合部
55:第2可動側係合部 60:入力部 65:変換部
68:ピニオン 69:回転軸 70:回転体
71:第1回転接続部 72:第2回転接続部 73:第1接続部
74:第2接続部
40:第1固定側係合部 45:第2固定側係合部 50:第1可動側係合部
55:第2可動側係合部 60:入力部 65:変換部
68:ピニオン 69:回転軸 70:回転体
71:第1回転接続部 72:第2回転接続部 73:第1接続部
74:第2接続部
Claims (6)
- 開口を持つ箱状をなすケース部と、
前記ケース部に対して変位可能であり、前記開口を閉じる閉位置に配置され得るグラブリッドと、
前記グラブリッドを前記閉位置にロックするロック機構と、を備え、
前記ロック機構は、
前記ケース部と前記グラブリッドとの一方に設けられている第1固定側係合部と、前記ケース部と前記グラブリッドとの他方に設けられている第1可動側係合部と、で構成されている第1係合部と、
前記ケース部と前記グラブリッドとの一方に設けられている第2固定側係合部と、前記ケース部と前記グラブリッドとの他方に設けられている第2可動側係合部と、で構成されている第2係合部と、
前記グラブリッドに対して相対的に状態変化可能である入力部と、
前記入力部、前記第1可動側係合部、および、前記第2可動側係合部を接続する変換部と、を備え、
前記第1可動側係合部は、前記第1固定側係合部と係合する第1ロック位置と、前記第1固定側係合部との係合が解除する第1解除位置と、の間をスライド移動可能であり、
前記第2可動側係合部は、前記第2固定側係合部と係合する第2ロック位置と、前記第2固定側係合部との係合が解除する第2解除位置と、の間をスライド移動可能であり、
前記変換部は、前記第1ロック位置と前記第1解除位置との間の前記第1可動側係合部のスライド量が、前記第2ロック位置と前記第2解除位置との間の前記第2可動側係合部のスライド量よりも大きくなるように、前記入力部の動作を前記第1可動側係合部および前記第2可動側係合部に伝達するグラブボックス。 - 前記変換部は回転体を備え、
前記第1可動側係合部は、前記変換部に接続される第1接続部を備え、
前記第2可動側係合部は、前記変換部に接続される第2接続部を備え、
前記回転体は、回転軸と、前記第1可動側係合部に直接または間接的に接続される第1回転接続部と、前記第2可動側係合部に直接または間接的に接続される第1回転接続部と、を備え、
前記回転体の回転軸と前記第1接続部との距離は、前記回転軸と前記第2接続部との距離よりも長い請求項1に記載のグラブボックス。 - 前記変換部は回転体を備え、
前記回転体は、回転軸と、前記回転軸の径方向外側に位置する第1回転接続部と、前記第1回転接続部と離間するとともに前記回転軸の径方向外側に位置する第2回転接続部を持ち、
前記第1可動側係合部は、前記第1回転接続部に接続される第1接続部を備え、
前記第2可動側係合部は、前記第2回転接続部に接続される第2接続部を備え、
前記回転体の回転軸と前記第1回転接続部との距離と、前記回転軸と前記第2回転接続部との距離とは、同じであり、
前記第1ロック位置と前記第1解除位置との間を移動する際の、前記第1可動側係合部のスライド方向における前記第1回転接続部の直線移動距離は、前記第2ロック位置と前記第2解除位置との間を移動する際の、前記第2可動側係合部のスライド方向における前記第2回転接続部の直線移動距離よりも大きい請求項1に記載のグラブボックス。 - 前記回転体はピニオンであり、
前記第1接続部および前記第2接続部はそれぞれラック状をなし、
前記第1回転接続部は前記第1接続部に噛合する歯列状をなし、前記第2回転接続部は前記第2接続部に噛合する歯列状をなす請求項2に記載のグラブボックス。 - 前記第1可動側係合部のスライド方向と前記第2可動側係合部のスライド方向とは平行である請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のグラブボックス。
- 前記入力部は、前記グラブリッドに設けられ、
前記第1可動側係合部の長手方向の長さは、前記第2可動側係合部の長手方向の長さよりも長い請求項1〜請求項5の何れか一項に記載のグラブボックス。
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