JP6079849B2 - 導電性フィルムの製造方法及び導電性フィルム - Google Patents
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Description
ところが、ガラス基板を使用した透明導電性薄板は可撓性に劣るため、近年、ポリエステル(PET)フィルムやポリエチレンナフタレート(PEN)等の可撓性樹脂からなる基材フィルム上に、真空蒸着法やスパッタリング法でITO等からなる導電膜を設けた導電性フィルムが主に使用されてきた。
これに対し、例えば、金属ナノワイヤーを含む透明導電性層を基板上に設けた透明導電体が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
特許文献1に記載の透明導電体は、金属ナノワイヤーを分散溶媒中に分散させた水性分散物を基板上、好ましくは基材上に設けた親水性ポリマー層上に塗設し、乾燥させることで透明導電性層を形成し製造され、当該方法で製造された透明導電体は、基材中又は親水性ポリマー層中に金属ナノワイヤーが埋め込まれた状態となっている。
しかしながら、このような透明導電体では、金属ナノワイヤーが埋め込まれた基材等の表面が硬化された状態になかったため、耐溶剤性及び耐擦傷性に劣るという問題があった。
ところが、硬化膜を透明導電膜上に設けた透明導電性フィルムにおいて、硬化層の厚みが厚いと、表面抵抗が高くなり、また、透明導電膜のエッチングに長時間を要するため、透明導電膜上に設ける硬化膜の厚みは薄くする必要があった。
しかしながら、硬化膜を薄く形成することは難しいため、成膜性の良いポリマー材料を特に選択して用いることが多く、このような成膜性の良いポリマー材料からなる硬化膜は硬度に劣り、仮に高硬度モノマーを使用しても膜が薄いことで硬化が不完全となり耐擦傷性が不充分となる問題があった。
しかしながら、近年、画像表示装置等に要求される光学的性能は益々高レベルとなってきているため、導電性フィルムにも優れた光学的性能、特に低ヘイズ値で光透過性能に極めて優れることが求められるが、転写法により導電膜が設けられた従来の導電性フィルムは、このような光学的性能が充分とは言い難いものであった。
また、上記導電性繊維状フィラーは、繊維径が200nm以下であり、繊維長が1μm以上であることが好ましい。
また、上記転写フィルムは、上記導電性層の上記離型フィルム側と反対側の表面に存在する上記導電性繊維状フィラーを構成する導電材料元素の割合が、原子組成百分率で0.15〜5.00at%であることが好ましい。
また、本発明において、上記被転写体は、樹脂層であることが好ましい。
本発明者らは、鋭意検討した結果、被転写体上に導電性層が設けられた導電性フィルムを製造する方法において、離型フィルム上に導電性繊維状フィラーを含む導電性層が設けられた転写シートを用いること、特に好適には上記導電性繊維状フィラーが導電性層の表面から突出した状態の転写フィルムを用いることで、低ヘイズ値と高光透過性とを両立させた導電性フィルムを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本転写工程では、離型フィルム上に少なくとも導電性層を有する転写フィルムを使用する。
上記被転写体としては、導電性層を設けることのできる部材であれば特に限定されず、例えば、ガラス、樹脂、金属、セラミック等の任意の材料からなる基材や、これらの基材上に形成された樹脂層や粘着層等の被転写層等が挙げられる。
なかでも、上記導電性層を用いてLCD等のディスプレイや、タッチパネル、太陽電池等の透明電極を設けるための基材フィルム上に形成された樹脂層であることが好ましい。
すなわち、上記導電性フィルムは、樹脂層上に上記導電性層を有する構造であることが好ましい。
なお、本明細書において、「樹脂」とは、特に言及しない限り、モノマー、オリゴマー、ポリマー等も包含する概念である。
また、トリアセチルセルロースの代替基材として旭化成ケミカルズ社製のFVシリーズ(低複屈折率、低光弾性率フィルム)も好ましい。
上記電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、アクリレート系等の官能基を有する化合物等の1又は2以上の不飽和結合を有する化合物が挙げられる。1の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。2以上の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の多官能化合物等を挙げることができる。なかでも、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)及びペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)が好適に用いられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを指すものである。また、本発明では、上記電離放射線硬化型樹脂として、上述した化合物をPO、EO等で変性したものも使用できる。
上記電離放射線硬化型樹脂と併用して使用することができる溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。上記熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、透明性や耐候性という観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
上記熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。
上記光重合開始剤としては特に限定されず、公知のものを用いることができ、具体例には、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、アシルホスフィンオキシド類が挙げられる。また、光増感剤を混合して用いることが好ましく、その具体例としては、例えば、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
上記レベリング剤としては、例えば、シリコーンオイル、フッ素系界面活性剤等が、樹脂層がベナードセル構造となることを回避することから好ましい。溶剤を含む樹脂組成物を塗工し、乾燥する場合、塗膜内において塗膜表面と内面とに表面張力差等を生じ、それによって塗膜内に多数の対流が引き起こされる。この対流により生じる構造はベナードセル構造と呼ばれ、形成する樹脂層にゆず肌や塗工欠陥といった問題の原因となる。
また、紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
上記離型フィルムとしては特に限定されないが、例えば、未処理のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好適に用いられる。未処理のPETフィルムは、上述した被転写体に導電性層を転写させる際に導電性層の離型性に優れ、また、他の材料からなるフィルム、例えば、表面処理PETフィルムやCOPフィルム等と比較して安価に入手が可能で、本発明の導電性フィルムの製造方法の製造コストの高騰を防止することができる。
本発明において、上記導電性層は、上記導電性繊維状フィラーの他にバインダー樹脂を含有していてもよく、この場合、上記導電性繊維状フィラーの一部は、上記導電性層の離型フィルム側と反対側の表面から突出していることが好ましい。
このような導電性層を有する転写フィルムを用いることで、本発明の導電性フィルムの製造方法により製造される導電性フィルムを低ヘイズ値で高光透過性能を有するものとすることができる。
また、上記バインダー樹脂中に導電性繊維状フィラーを有する構成とすることで、形成する導電性層の耐擦傷性が特に優れたものとなる。
また、上記導電性層が上記バインダー樹脂を含有する場合、該導電性層における上記バインダー樹脂の硬化物(以下、バインダー樹脂層ともいう)の厚みは、上記導電性繊維状フィラーの繊維径未満であることが好ましい。上記バインダー樹脂層の厚みが導電性繊維状フィラーの繊維径以上であると、導電性繊維状フィラーの接点にバインダー樹脂が入る量が多くなって導電性層の導通が悪化し、目標の抵抗値を得られないことがある。
上記バインダー樹脂層の厚みとしては具体的には、200nm以下であることが好ましい。上記バインダー樹脂層の厚みが200nmを超えると、導電性繊維状フィラーの繊維径を、後述する好適な範囲を超えて太くする必要があるため、製造する導電性フィルムのヘイズが上昇し、全光線透過率が低下することがあり、光学的に不適である。
上記バインダー樹脂層の厚みは50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることが更に好ましい。
一方、上記導電性層が上記バインダー樹脂を含有しない場合、該導電性層は導電性繊維状フィラーにより構成されるので、その厚み方向の断面には導電性繊維状フィラーの存在する箇所と存在しない箇所とが観察される。導電性繊維状フィラーの存在する箇所には該導電性繊維状フィラーが単独で積層されている所と2個以上が積層された所とがあり得るが、導電性繊維状フィラーが存在しない箇所(すなわち、厚みが0nmの箇所)があることから、該導電性層の厚みを下記定義に沿って測定すると、上記バインダー樹脂を含有しない導電性層の厚みも、通常、導電性繊維状フィラーの繊維径未満となる。
なお、上記導電性層の厚みは、例えば、SEM、STEM、TEM等の電子顕微鏡を用い、1000〜50万倍にて上記導電性層の断面を観察して厚みを測定した任意の10カ所の平均値として求めることができる。
上記繊維径が200nmを超えると、製造する導電性フィルムのヘイズ値が高くなったり光透過性能が不充分となったりすることがある。上記導電性繊維状フィラーの繊維径の好ましい下限は導電性層の導電性の観点から10nmであり、上記繊維径のより好ましい範囲は15〜180nmである。
また、上記導電性繊維状フィラーの繊維長が1μm未満であると、充分な導電性能を有する導電性層を形成できないことがあり、凝集が発生してヘイズ値の上昇や光透過性能の低下を招く恐れがあることから、上記繊維長の好ましい上限は500μmであり、上記繊維長のより好ましい範囲は3〜300μmであり、更に好ましい範囲は10〜30μmである。
なお、上記導電性繊維状フィラーの繊維径、繊維長は、例えば、SEM、STEM、TEM等の電子顕微鏡を用い、1000〜50万倍にて上記導電性繊維状フィラーの繊維径及び繊維長を測定した10カ所の平均値として求めることができる。
上記導電性炭素繊維としては、例えば、気相成長法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、ワイヤーカップ、ワイヤーウォール等が挙げられる。これらの導電性炭素繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。
後述するように上記転写フィルムを用いた導電性層の転写は、導電性層側面と被転写体とが対向するように積層させ、押圧を加えて行うが、上記導電性繊維状フィラーが導電性層の離型フィルム側と反対側の表面(すなわち、導電性層の被転写体に押圧される面)から突出していることで、該突出した導電性繊維状フィラーは、被転写体に埋め込まれた状態で転写され、その結果、得られる導電性フィルムの耐溶剤性が向上し、エッチング等により導電パターンの形成等を好適に行うことができる。また、導電性フィルムの耐擦傷性も優れたものとなる。
なお、上記導電性層の反対面から突出した導電性繊維状フィラーの垂直距離は、例えば、SEM、STEM、TEM等の電子顕微鏡を用い、1000〜50万倍にて上記導電性層の反対面の観察を行い、上記導電性層の反対面の平坦な箇所から突出した導電性繊維状フィラーの先端までの垂直距離を測定した10カ所の平均値として求めることができる。
なお、上記導電性層の反対面に存在する導電性繊維状フィラーを構成する導電材料元素の割合は、X線光電子分光分析法を用い、以下の条件により測定できる。
加速電圧:15kV
エミッション電流:10mA
X線源:Alデュアルアノード
測定面積:300×700μmφ
表面から深さ10nmを測定
n=3回の平均値
なお、このような反対面を有する導電性層は、該反対面に導電性繊維状フィラーに起因し、耐溶剤性及び耐擦傷性、更には低ヘイズ値で極めて高い光透過率を達成できる程度の凹凸形状が形成されていることが好ましい。
上述のように転写フィルムにおける導電性層は、離型フィルム側と反対側の表面から導電性繊維状フィラーの一部が突出し、該突出した導電性繊維状フィラーが被転写体に埋め込まれることが好ましいが、上記被転写体が未硬化状態の塗膜であることで、このような導電性繊維状フィラーの埋め込みをより好適に行うことができる。
なお、導電性フィルムは、上述した転写フィルムを用いて導電性層を被転写体に転写させることで製造できるが、該転写フィルムは、例えば、上記導電性層の離型フィルム側と反対側面上に被覆樹脂層が形成されており、該被覆樹脂層ごと上述した方法で転写フィルムによる導電性層の転写がなされてもよい。この場合、上記導電性層は、上記被覆樹脂層を介して被転写体に転写された構造となる。上記被覆樹脂層としては特に限定されず、例えば、上述した樹脂層と同様の材料からなるものが挙げられる。
なお、上記処理工程は、上記転写工程の前に行ってもよく、上記転写工程の後に行ってもよく、更に、上記転写工程において離型フィルムを剥離させる前に行ってもよい。
上記処理工程において紫外線を照射する場合、例えば、より導電性に優れた導電性フィルムを得られることから、公知のフラッシュランプを用いることが好ましい。UVから可視光までの波長を有したフラッシュランプから発せられる光は、導電性層表面を集中して加熱させることができるため、従来の熱源と較べ、導電性層の下側に配置された層や基材フィルム等への熱影響を極めて小さくする、すなわち、表層のみ瞬間加熱させることができ、好ましい。
また、紫外線照射の条件としては特に限定されないが、50〜3000mJ程度の紫外線を照射することが好ましい。
なお、上記ヘイズ値は、内部ヘイズ値と表面ヘイズ値との合計であり、JIS K−7136(2000)に従って測定された値である。測定に使用する機器としては、反射・透過率計HM−150(村上色彩技術研究所)が挙げられる。
また、上記全光線透過率は、JIS K−7361−1(1997)に従って測定された値である。測定に使用する機器としては、反射・透過率計HM−150(村上色彩技術研究所)が挙げられる。
また、上記導電性繊維状フィラー由来のへイズ値は、4%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5%以下であり、更に好ましくは1.0%以下である。なお、上記導電性繊維状フィラー由来のヘイズ値は、導電性繊維状フィラーを含まない以外は上述した導電性層と同様のフィルムの両面に、高透明性接着剤転写テープ(Optically Clear Adhesive Tape:OCA)を用いてガラスに貼り合わせて作製したサンプル0について測定したヘイズをH0とし、導電性繊維状フィラーを含む上述した導電性層の両面にOCAを用いてガラスに貼り合わせて作製したサンプル1について測定したヘイズをH1とし、H1−H0で求められるヘイズを導電性繊維状フィラー由来へイズ値とした。
この導電性繊維状フィラー由来へイズ値の測定の際のガラスは、1.1mm厚のソーダガラスを用い、OCAは3M社製のOCA、8146−2(テープ厚50μm)を使用してサンプルを用いる。
また、本発明の導電性フィルムは、耐擦傷性に優れたものである。例えば、学振磨耗試験機を用いて、上記導電性層の被転写体側と反対側表面を、1kg/4cm2の治具に装着したウェスを5往復させた後において、上記導電性層の被転写体側と反対側表面で、傷の発生や著しい抵抗値の上昇がみられないことが好ましい。
表面から押し込み量が100nmでのマルテンス硬度が150N/mm2未満であると、本発明の導電性フィルムの製造過程において容易に傷付くことがあり、3000N/mm2を超えると、エッチングレートが遅くなったり、曲げに対して割れが発生する問題が生じやすくなったりする。上記表面から押し込み量が100nmでのマルテンス硬度のより好ましい下限は200N/mm2であり、より好ましい上限は1000N/mm2であり、更に好ましい下限は250N/mm2、更に好ましい上限は500N/mm2である。
なお、本明細書において、上記マルテンス硬度とは、フィッシャー社製の超微小硬さ試験システム「ピコデンター」を用いて測定した表面から押し込み量が100nmでのマルテンス硬度である。
また、本発明の導電性フィルムにおいて、上記表面からの押込み量が500〜1000nmにおいて、マルテンス硬さが、20〜1000N/mm2であることが好ましい。このようなマルテンス硬度を有することで、本発明の導電性フィルム全体の硬度バランスがよくなり、本発明の導電性フィルムのエッチングレートや密着性等の特性を良好にすることが容易となる。なお、上記表面からの押込み量が500〜1000nmは、上記導電性層と該導電性層の最表面側と反対側に設けられた下層との界面より下側、すなわち、下層側の深さである。
なお、製造時の条件等によっては、本発明の導電性フィルムの上記下層に溶剤や何らかの樹脂成分などが溶解、浸透などすることもあり、それによって上記導電性層のマルテンス硬度と比較し、柔らかすぎても上記表面からの押込み量が諸物性に影響する場合がある。よって、上述した表面から押込み量が100nmにおけるマルテンス硬度に対し、本発明の導電性フィルム全体のマルテンス硬度バランスも適当な範囲であることがより好ましい。
なお、文中、「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り、質量基準である。
(転写フィルムの作製)
離型フィルムとして、厚さ50μmのポリエステルフィルム(A4100、東洋紡社製)を用い、該ポリエステルフィルムの未処理面に、下記導電性層用組成物を10mg/m2となるよう塗布して塗膜を形成し、70℃で1分乾燥後、UV50mJで紫外線照射を行い、導電性層を形成し、転写フィルムを作製した。
還元剤としてエチレングリコール(EG)を、形態制御剤兼保護コロイド剤としてポリビニルピロリドン(PVP:PVP:平均分子量130万、アルドリッチ社製)を使用し、下記に示した核形成工程と粒子成長工程とを分離して粒子形成を行い、銀ナノワイヤー分散液を調製した。
反応容器内で160℃に保持したEG液100mLを攪拌しながら、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:1.0モル/L)2.0mLを、一定の流量で1分間かけて添加した。
その後、160℃で10分間保持しながら銀イオンを還元して銀の核粒子を形成した。反応液は、ナノサイズの銀微粒子の表面プラズモン吸収に由来する黄色を呈しており、銀イオンが還元されて銀の微粒子(核粒子)が形成されたことを確認した。
続いて、PVPのEG溶液(PVP濃度:3.0×10−1モル/L)10.0mLを一定の流量で10分間かけて添加した。
上記核形成工程を終了した後の核粒子を含む反応液を、攪拌しながら160℃に保持し、硝酸銀のEG溶液(硝酸銀濃度:1.0×10−1モル/L)100mLと、PVPのEG溶液(PVP濃度:3.0×10−1モル/L)100mLを、ダブルジェット法を用いて一定の流量で120分間かけて添加した。
本粒子成長工程において、30分毎に反応液を採取して電子顕微鏡で確認したところ、核形成工程で形成された核粒子が時間経過に伴ってワイヤ状の形態に成長しており、粒子成長工程における新たな微粒子の生成は認められなかった。最終的に得られた銀ナノワイヤーについて、電子顕微鏡写真を撮影し、300個の銀ナノワイヤー粒子像の長軸方向及び短軸方向の粒径を測定して算術平均を求めた。短軸方向の平均粒径は100nm、長軸方向の平均長さは40μmであった。
粒子成長工程を終了した反応液を室温まで冷却した後、分画分子量0.2μmの限外濾過膜を用いて脱塩水洗処理を施すとともに、溶媒をエタノールに置換した。最後に液量を100mLまで濃縮して銀ナノワイヤーのEtOH分散液を調製した。
基材フィルムとして、厚さ50μmのポリエステルフィルム(A4100、東洋紡社製)を用い、該ポリエステルフィルムのプライマー処理面に、下記組成のハードコート層用組成物を乾燥後の厚みが2μmとなるように塗布して塗膜を形成し、該塗膜を70℃で1分乾燥させ、基材フィルム上にハードコート層が形成された被転写体を作製した。
(ハードコート層用組成物)
KAYARAD PET−30(ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、日本化薬社製) 30質量%
イルガキュア184(BASF社製) 1.5質量%
MEK 50質量%
シクロヘキサノン 18.5質量%
その後、転写フィルムの離型フィルムを剥離させ、被転写体に導電性層が転写された導電性フィルムを得た。
転写フィルムの作製において、導電性層用組成物1の塗布量を12mg/m2となるよう変更した以外は、参考例1と同様にして転写フィルムを作製し、その後、作製した転写フィルムを用いた以外は、参考例1と同様にして導電性フィルムを得た。
参考例1で得られた銀ナノワイヤーEtOH分散液に希釈溶剤を加え、銀ナノワイヤー濃度0.1質量%になるように配合し、導電性層用組成物2を調製した。なお、希釈溶剤の30質量%はシクロヘキサノンとした。
転写フィルムの作製において、導電性層用組成物2を用い塗布量を12mg/m2となるよう変更した以外は、参考例1と同様にして転写フィルムを作製し、その後、作製した転写フィルムを用いた以外は、参考例1と同様にして導電性フィルムを得た。
転写フィルムの作製において、導電性層用組成物2を用い塗布量を15mg/m2となるよう変更した以外は、参考例1と同様にして転写フィルムを作製し、その後、作製した転写フィルムを用いた以外は、参考例1と同様にして導電性フィルムを得た。
転写フィルムの作製において、導電性層用組成物2を用い塗布量を25mg/m2となるよう変更した以外は、参考例1と同様にして転写フィルムを作製し、その後、作製した転写フィルムを用いた以外は、参考例1と同様にして導電性フィルムを得た。
転写フィルムの作製において、導電性層用組成物2を用い塗布量を50mg/m2となるよう変更した以外は、参考例1と同様にして転写フィルムを作製し、その後、作製した転写フィルムを用いた以外は、参考例1と同様にして導電性フィルムを得た。
実施例3と同様にして作製した転写フィルムの離型フィルムを剥離させた後、紫外線を追加で照射(600mJ)して導電性フィルムを得た。
実施例3と同様にして作製した転写フィルムの導電性層上に、下記組成の被覆樹脂層用組成物を、乾燥後の厚みが100nmとなるよう塗布し、70℃で1分間乾燥後、紫外線照射(10mJ)することで、被覆樹脂層を形成し、転写フィルムを作製した。その後、作製した転写フィルムを用いた以外は、参考例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(被覆樹脂層用組成物)
KAYARAD PET−30(ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、日本化薬社製) 5質量%
イルガキュア184(BASF社製) 0.25質量%
MEK 70質量%
シクロヘキサノン 24.75質量%
参考例1と同様にして作製した転写フィルムを、そのまま導電性フィルムとした。
参考例1と同様にして作製した転写フィルムの導電性層上に、実施例8と同様の組成の被覆樹脂層用組成物を、乾燥後の厚みが30nmとなるよう塗布し、70℃で1分間乾燥後、紫外線照射(600mJ)することで、被覆樹脂層を形成し、導電性フィルムを得た。
被覆樹脂層用組成物を、乾燥後の厚みが100nmとなるよう塗布をした以外は、比較例2と同様にして、導電性フィルムを得た。
被覆樹脂層用組成物を、乾燥後の厚みが5μmとなるよう塗布をした以外は、比較例2と同様にして、導電性フィルムを得た。
転写フィルムの作製において、導電性層用組成物1の塗布量を75mg/m2となるよう変更した以外は、参考例1と同様にして転写フィルムを作製し、その後、作製した転写フィルムを用いた以外は、参考例1と同様にして導電性フィルムを得た。
村上色彩技術研究所製のヘイズメーター(HM150)を用い、JIS K7105に準拠する方法で、導電性フィルムの全光線透過率を測定した。
村上色彩技術研究所製のヘイズメーター(HM150)を用い、JIS K7105に準拠する方法で、導電性フィルムのヘイズ値を測定した。
表1に示したように、導電性繊維状フィラーを含まない以外は実施例に係る導電性層と同様にして作製した実験例1に係る基材の両面に、高透明性接着剤転写テープ(Optically Clear Adhesive Tape:OCA)を用いてガラスに貼り合わせて作製したサンプル0について測定したヘイズをH0とし、各実施例、比較例及び参考例に係る導電性層の両面にOCAを用いてガラスに貼り合わせて作製したサンプル1について測定したヘイズをH1とし、H1−H0で求められるヘイズを導電性繊維状フィラー由来へイズ値とした。
JIS K7194:1994(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)に準拠して、三菱化学社製ロレスターGP(MCP−T610型)を用いて、各導電性フィルムの導電性層の被転写体側と反対側表面の抵抗値(シート抵抗)を測定した。
各導電性フィルムの導電性層の被転写体側と反対側表面における導電性材料元素(Ag)の割合を、以下の条件でX線光電子分光分析法を用いて原子組成百分率で測定した。
なお、測定は、下記に記載の通り、表面から深さ10nmの測定値をもって、表面の導電性材料元素の割合とした。
加速電圧:15kV
エミッション電流:10mA
X線源:Alデュアルアノード
測定面積:300×700μmφ
表面から深さ10nmを測定
n=3の平均値(任意の3箇所)
微小硬さ試験機(ピコテンダー硬度測定機、フィッシャー社製)を用い、下記測定条件で各導電性フィルムの導電層の表面硬度を測定した。
最大荷重:40mN
荷重アプリケーション:20s
表面からの押し込み量:1000nm、100nm、10nmで測定
各測定n=5の平均値(それぞれ任意の5箇所)
学振磨耗試験機を用いて、導電性フィルムの導電性層の被転写体側と反対側表面の耐溶剤性を以下の条件で評価を行った。
1kg/4cm2の治具に装着したウェスに、IPAを含ませたものとPMAを含ませたものとをそれぞれ用意し、各ウェスを、各導電性フィルムの導電性層の被転写体側と反対側表面を5往復後の表面抵抗値と見た目とを評価した。
なお、5往復の評価長さは50mm、擦り速度は100mm/secであり、見た目は蛍光灯反射で表面の傷を目視確認した。
学振磨耗試験機を用いて、導電性フィルムの導電性層の被転写体側と反対側表面の耐擦傷性を以下の条件で評価を行った。
1kg/4cm2の治具に装着したウェスを、各導電性フィルムの導電性層の被転写体側と反対側表面を5往復後のシート抵抗と見た目とを評価した。
なお、5往復のストロークは50mm、評価長さは100mm/secであり、見た目は蛍光灯反射で表面の傷を目視確認した。
リン硝酢酸水溶液(SEA−5、関東化学株式会社製)を35℃に加温し、導電性フィルムを2分間浸し、その後の導電性層の被転写体側と反対側面の抵抗値を測定した。
実施例、比較例及び参考例で得られた各導電性層塗工面を外側にして、φ4mmの金属棒に巻きつけた後のシート抵抗値を上述した方法で測定し、目視にてクラック発生の有無を確認した。
一方、比較例1に係る導電性フィルムは、離型フィルム上に導電性層を塗布しただけの構成であったため、耐溶剤性及び耐擦傷性に劣っていた。また、導電性層上に薄膜の被覆樹脂層を設けた比較例2に係る導電性フィルムは、耐溶剤性及び耐擦傷性に劣っており、厚膜の被覆樹脂層を設けた比較例3に係る導電性フィルムは、耐擦傷性が劣るとともに、エッチング適性にも劣っていた。また、極めて厚膜の被覆樹脂層を設けた比較例4に係る導電性フィルムは、シート抵抗に劣っていた。また、比較例5に係る導電性フィルムは、導電性層用組成物の塗布量が多いため、全光線透過率が低く、ヘイズ(及び導電性繊維状フィラー由来ヘイズ)の値が小さかった。
Claims (5)
- 被転写体上に導電性層が設けられた導電性フィルムの製造方法であって、
離型フィルム上に少なくとも前記導電性層を有する転写フィルムを用いて、前記導電性層を前記被転写体に転写する転写工程を有し、
前記導電性層は、導電性繊維状フィラーを含有するものであり、
前記導電性フィルムは、ヘイズ値が5%以下であり、全光線透過率が80%以上であり、
前記導電性繊維状フィラーは、前記被転写体に埋め込まれた状態で転写され、
前記導電性フィルムは、表面から押し込み量が100nmでのマルテンス硬度が150〜3000N/mm 2 であり、前記表面から押込み量が5〜10nmでのマルテンス硬度が1000〜40000N/mm 2 であり、前記表面からの押込み量が500〜1000nmにおいて、マルテンス硬度が、20〜1000N/mm 2 であり、
前記導電性繊維状フィラーは、金属繊維及び金属被覆合成繊維からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記導電性層は、バインダー樹脂を含有しない
ことを特徴とする導電性フィルムの製造方法。 - 導電性層の厚みが導電性繊維状フィラーの繊維径未満である請求項1記載の導電性フィルムの製造方法。
- 導電性繊維状フィラーは、繊維径が200nm以下であり、繊維長が1μm以上である請求項1又は2記載の導電性フィルムの製造方法。
- 転写フィルムは、導電性層の離型フィルム側と反対側の表面に存在する導電性繊維状フィラーを構成する導電材料元素の割合が、原子組成百分率で0.15〜5.00at%である請求項1、2又は3記載の導電性フィルムの製造方法。
- 被転写体は、樹脂層である請求項1、2、3又は4記載の導電性フィルムの製造方法。
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