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JP6054051B2 - 高密度リポ蛋白(hdl)中のコレステロール(−c)の亜分画定量方法 - Google Patents

高密度リポ蛋白(hdl)中のコレステロール(−c)の亜分画定量方法 Download PDF

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JP6054051B2 JP2012090423A JP2012090423A JP6054051B2 JP 6054051 B2 JP6054051 B2 JP 6054051B2 JP 2012090423 A JP2012090423 A JP 2012090423A JP 2012090423 A JP2012090423 A JP 2012090423A JP 6054051 B2 JP6054051 B2 JP 6054051B2
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Description

本発明は、高密度リポ蛋白(HDL)中のコレステロール(-C)の亜分画定量方法に関する。
HDLは、動脈硬化壁を含めた各組織からコレステロールを受け取るので細胞内に蓄積したコレステロールの除去作用に関係し、冠動脈硬化症をはじめとする各種動脈硬化症の危険予防因子であり、その血中レベルは動脈硬化性疾患の発症予知に有用な指針となることが知られている。
HDLはアポタンパクとよばれるタンパク質と、リン脂質、コレステロール、中性脂肪といった脂質成分の複合体であるが、その成分の一つであるアポリポタンパク質E(ApoE)の含量比率の違いからApoE-Containing HDLとApoE deficient HDLの亜分画に分類することが出来る。ApoE-Containing HDLは、コレステロール引き抜き能が強く、抗血小板作用もあり、HDLの中でも超善玉リポタンパクとして注目されている。最近では、スタチンに次ぐ脂質異常症治療薬として、HDL-Cを上昇させるコレステロールエステル輸送蛋白(CETP)阻害薬に期待が寄せられているCETP阻害薬はHDLのうち特にApoE-Containing HDLを主に増加させることが知られている。
HDL-Cの測定方法としては、例えば超遠心分離によってHDLを他のリポ蛋白と分離した後、コレステロール測定に供する方法や、電気泳動によって分離した後に脂質の染色を行なってその発色強度を測定する方法等が知られている。しかしながら、これらの方法は、いずれも操作が煩雑であり、多数の検体を処理できない等の問題があり、日常的にはほとんど用いられていない。
HDL-Cの測定方法として、検体に沈殿剤を加えてHDL以外のリポ蛋白質を凝集させ、これを遠心分離によって取り除き、分離されたHDLのみを含む上清中のコレステロールを測定する方法がある。この方法では使用する沈殿剤の種類によってHDLの亜分画に対する反応性が異なることが知られており、リンタングステン酸−マグネシウムやデキストラン硫酸−マグネシウム、ヘパリン−カルシウムを沈殿剤として用いた方法ではApoE-Containing HDLはVLDL、LDL等のリポタンパクと共に凝集し、遠心分離により沈殿分画として取り除かれるため、HDL分画として測定できない。一方、ヘパリン−マンガンやポリエチレングリコール(PEG)を用いた方法ではApoE-Containing HDLは凝集せずHDLとして測定される。いずれにしろこの沈殿剤を使用してHDLを分離し定量する方法は、超遠心法や電気泳動法に比較して簡便であるものの、沈殿剤を加えて分離する操作を含むため、簡便性で満足できるものでなく、また比較的多量の検体量を必要とする。
近年ではHDL-Cを定量する簡便な方法として、沈殿剤を用いた前処理操作なく、自動分析装置でHDL-Cを定量する方法が知られており、コレステロールエステラーゼやコレステロールオキシダーゼ酵素を化学修飾し、シクロデキストリン等の包接化合物存在下においてHDL-Cを特異的に捕える方法(特許文献1を参照)やHDL以外のリポ蛋白と凝集体や複合体を形成させ、その後にHDL中のコレステロールを酵素的反応で捕える方法(特許文献2及び3を参照)、HDLに特異的に作用するHLBが13〜14の界面活性剤を用いる方法(特許文献4を参照)等が知られている。
特開平7-301636号公報 特開平8-131197号公報 特開平8-201393号公報 WO98/26090
以上に述べた方法はHDL−コレステロール(HDL-C)(以下、コレステロールを-Cで表す場合がある)を測定できるものの、HDL亜分画に対する反応性が異なり、HDLを亜分画に分けて考えた場合、ApoE deficient HDLコレステロール(ApoE deficient HDL-C)、ApoE-Containing HDLコレステロール(ApoE-Containing HDL-C)をそれぞれ部分的にも、又はほとんど測定できず、ApoE deficient HDL-C、ApoE-Containing HDL-Cを分別して定量できないという問題があった。
本発明の目的は、煩雑な分画分離操作を必要とせず、全HDL-CやApoE-Containing HDL-C、ApoE deficient HDL-C等のHDL亜分画中のコレステロールを別々又は同時に定量する方法を提供することである。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル誘導体からなる界面活性剤の濃度により、HDL亜分画であるApoE deficient HDL-C、ApoE-Containing HDL-Cの反応性が異なり、ApoE deficient HDL-C、ApoE-Containing HDL-Cに反応するこれらの界面活性剤の濃度を調節することにより、ApoE deficient HDL-C、ApoE-Containing HDL-C、総HDL-Cをそれぞれ別々又は同時に定量できることを見出した。また、これらの界面活性剤の濃度を調節することによりApoE-Containing HDL-C、ApoE deficient HDL-C、を分別して別々に測定することができ、さらに全HDL-C(ApoE-Containing HDL-C及びApoE deficient HDL-Cを含む)も測定することができる。また、3つの試薬を用いる汎用自動分析装置を用いて3工程で測定を行う場合、第1工程ではHDL以外のリポ蛋白中コレステロールを反応系外に導き、続く第2工程で用いる第2試薬中、及び第3工程で用いる第3試薬中においてこれらの界面活性剤濃度の条件を変更することにより、ApoE-Containing HDL-C、ApoE deficient HDL-C及び全HDL-Cを単独で、又はこれらの複数、すなわち2種又は3種を同時に測定できることを見出した。
さらに、第1工程と第2工程の条件を合わせた第1試薬中でApoE-Containing HDL以外のリポ蛋白中コレステロールを反応系外に導き、続く第2試薬にてApoE-Containing HDL-Cを測定することにより2つの試薬を用いる汎用自動分析装置を用いて2工程でApoE-Containing HDL-Cを測定できることを見出し、本発明を完成した。
このように、本発明の方法により、被検試料中の粒子サイズが大きいApoE-deficient HDL-C及びApoE-ContainingHDL-Cをそれぞれ定量することができ、さらにこれらの亜分画HDL-Cを含む全HDL-Cを定量することができる。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 被検試料中に、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル誘導体からなる界面活性剤を終濃度0.05〜0.10%の濃度で加え、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼを作用させ、発生した過酸化水素を定量することによりApoE deficient HDL中のコレステロールを酵素的に分別定量する方法。
[2] 被検試料中に、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル誘導体からなる界面活性剤を終濃度0.15〜0.75%となるように加え、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼを作用させ、発生した過酸化水素を定量することによりApoE-Containing HDL中のコレステロールを酵素的に分別定量する方法。
[3] 被検試料中に、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル誘導体からなる界面活性剤を終濃度0.05〜0.10%の濃度で加え、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼを作用させ、発生した過酸化水素を定量し、ApoE deficient HDL中のコレステロールを酵素的に分別定量し、次いで、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル誘導体からなる界面活性剤を終濃度0.15〜0.75%となるように加え、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼを作用させ、発生した過酸化水素を定量することによりApoE-Containing HDL中のコレステロールを酵素的に分別定量する方法。
[4] (i) 被検試料中のHDL以外のリポ蛋白中コレステロールを反応系外に導き、(ii) [1]の方法によりApoE deficient HDL中のコレステロールを分別定量し、(iii) さらに[2]の方法によりApoE-Containing HDL中のコレステロールを酵素的に分別定量することを含むHDL亜分画中のコレステロールを測定する方法。
[5] [1]の方法により得られたApoE deficient HDL中のコレステロールの定量値及び[2]の方法により得られたApoE-Containing HDL中のコレステロールの定量値により総HDL-コレステロールを定量する[1]〜[3]のいずれかの方法。
[6] 汎用の自動分析装置にて1回のサンプリングによりApoE deficient HDL中のコレステロール、ApoE-Containing HDL中のコレステロール、及び総HDL-コレステロールを同時に定量する[1]〜[5]のいずれかの方法。
[7] 被検試料中に、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル誘導体からなる界面活性剤を終濃度0.05〜0.10%の濃度で加え、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼを作用させ、発生した過酸化水素を消去することによりApoE-Containing HDL以外のHDL中のコレステロールを反応系外に導き、次いでポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル誘導体からなる界面活性剤を終濃度0.15〜0.75%となるように加え、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼを作用させ、発生した過酸化水素を定量することによるApoE-Containing HDL中のコレステロールを定量するApoE-Containing HDL中のコレステロールの定量方法。
本発明の方法においては、HDLに反応する界面活性剤を低濃度(終濃度0.05〜0.10%)で用いることにより、HDLの亜分画であるApoE-deficient HDLのみを反応させ、 ApoE-deficient HDL-Cを測定し、第2工程ではApoE-Containing HDL-Cの反応性が高い濃度範囲、すなわち、界面活性剤を高濃度(終濃度0.15〜0.75%)で用いることにより、HDLの亜分画であるApoE-Containing HDLのみを反応させることにより、ApoE-Containing HDL-C及びApoE deficient-Cを定了する本発明の方法により、被検試料中の粒子サイズが大きいApoE-deficient HDL-C及びApoE-ContainingHDL-Cをそれぞれ定量することができ、さらにこれらの亜分画HDL-Cを含む全HDL-Cを定量することができる。taining HDL-Cのみを測定することができる。
HDL試料に対して、本発明の実施例1の方法により測定した場合のPT-DS-Mg法に対する差(%バイアス)を示す図である。 HDL試料に対して、本発明の実施例2の方法により測定した場合の13%PEG沈殿法に対する差(%バイアス)を示す図である。 HDL試料に対して、本発明の実施例3の方法により測定した場合の13%PEG沈殿法(a)、PT-DS-Mg沈殿法(b)、13%PEG沈殿法とPT-DS-Mgの差(c)に対する相関性を示す図である。 HDL試料に対して、本発明の実施例4の方法により測定した場合の13%PEG沈殿法とPT-DS-Mgの差に対する相関性を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
リポ蛋白中に含まれるコレステロールとしては、エステル型コレステロール(コレステロールエステル)及び遊離型コレステロールがある。本明細書において、単に「コレステロール」という場合には、これらの両者を包含する。
リポ蛋白は大きくVLDL、LDL及びHDLの分画に分けられる。このうち、HDLはApoEの含量比率の違いからApoE-Containing HDLとApoE deficient HDLの亜分画に分類することが出来る。通常、ApoE-Containing HDLはHDL中にApoEを含有したもの、ApoE deficient HDLはApoEを含有しないものを示す。HDLをApoE-Containing HDLとApoE deficient HDLに分けているのは、これらのリポ蛋白では動脈硬化に対する作用機序が異なるので、分別測定する必要があったからである。すなわち、ApoE-Containing HDLはコレステロール引き抜き能が強く、抗血小板作用もあり、HDLの中でも善玉として作用している。また、脂質異常症治療薬としてHDL-Cを上昇させるCETP阻害薬でも主にApoE-Containing HDLが上昇することが知られている。また、ApoEが存在するか又は含有量が多いHDLをApoE-rich HDLと呼ぶことがあるが、これもApoE-containing HDLに含まれる。HDL内部に存在するApoE含有量の分布は連続しているので、リポ蛋白中のApoE含有比により、明確にApoE-Containing HDLとApoE deficient HDLを区別できるものではないが、後述のように例えばApoE含有量を指標にクロマトグラフィー等によりHDLを分画した場合、特定のApoE含量を定め、その値によりApoE-Containing HDLとApoE-deficient HDLを区別すればよい。
またHDLは密度の違いによってHDL2とHDL3に分類することができ、それぞれについてApoE 含有量の違う、ApoE-Containing HDL2、及びApoE-Containing HDL3が存在する。また粒子サイズの大きい大型のHDLには通常存在するアポリポタンパクA1(ApoA1)が欠損しており、ApoEが多数存在するものがあるが、これもApoE-Containing HDLに含まれる。リポ蛋白粒子サイズの直径は、報告者により異なるがVLDLが30nm〜80nm(30nm〜75nm)で、LDLが22nm〜28nm(19nm〜30nm)、HDLが直径7〜10nmである。比重は、VLDLが1.006以下、LDLが1.019〜1.063、HDLが1.063〜1.21である。
本発明の方法においては、ApoE containing HDL中のコレステロール、ApoE-deficient HDL中のコレステロール、及びApoE containing HDLとApoE-deficient HDLを含む全HDL中のコレステロールの測定を目的とする。
本発明の方法において測定に供される被検試料としては、HDL、LDL、VLDL及びCM等のリポ蛋白を含む可能性がある試料であればいずれのものでもよく、例えば、血清、血漿等の体液やその希釈物を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
本発明の方法は通常、自動分析装置を用いて行われる。本発明の方法は、第1工程及び第2工程の2工程、又は第1工程、第2工程及び第3工程の3工程で行うことができる。2工程からなる方法及び3工程からなる方法として以下の方法が例示され、それぞれの方法の各工程で以下の反応が起こる。
(1) 第1工程でApoE-deficient HDL-Cを測定し、第2工程でApoE-Containing HDL-Cを測定する2工程からなる方法。
(2) 第1工程でHDL以外のリポ蛋白(CM、VLDL、LDL)を反応系外に導き、第2工程でApoE-deficient HDL-Cを測定し、第3工程でApoE-Containing HDL-Cを測定する3工程からなる方法。(2)の方法においては、第2工程及び第3工程より総HDL-Cを測定する。該方法は、後記の実施例3の方法である。
(3) 第1工程でApoE-Containing HDL-C以外のリポ蛋白(CM、VLDL、LDL、ApoE-deficient HDL-C)を反応系外に導き、第2工程でApoE-Containing HDL-Cを測定する2工程からなる方法。該方法は後記の実施例4の方法である。
(1)の2工程からなる方法の詳細は以下のとおりである。
第1工程で界面活性剤をApoE-deficient HDLに反応性が高い濃度範囲、すなわち、界面活性剤を低濃度(終濃度0.05〜0.10%)で用いApoE-deficient HDL-Cを測定し、第2工程ではApoE-Containing HDLの反応性が高い濃度範囲、すなわち、界面活性剤を高濃度(終濃度0.15〜0.75%)で用いApoE-Containing HDL-Cを測定する。第1工程でApoE deficient HDL-Cの反応が起こり、第2工程でApoE-Containing HDL-Cの反応が起こる。第1工程での吸光度増加分からApoE deficient HDL-C濃度を定量することができ、また、第2工程での吸光度増加分からApoE-Containing HDL-C濃度を定量することができ、さらに第1工程及び第2工程での総吸光度増加分から総HDL-C濃度を定量することができる。
本方法では、試料中にHDL以外のリポ蛋白が存在していても、ApoE deficient HDL-C濃度及びApoE-Containing HDL-C濃度を定量することができ、さらに総HDL-C濃度を定量することができる。
ApoE deficient HDL-C濃度及びApoE-Containing HDL-C濃度をより特異的に測定するために、以下の(2)や(3)の方法のように、あらかじめHDL以外のリポ蛋白を反応系外に導くことができる。
(2)の3工程からなる方法の詳細は以下のとおりである。
第1工程ではCM、VLDL、LDL等の測定対象外のリポ蛋白を反応系外へ導く。その結果、第2工程以降の工程ではApoE-containing HDL及びApoE-deficient HDLの亜分画HDLを含むHDLが反応することになる。すなわち、コレステロールエステラーゼを被検試料と反応させ、生じたコレステロールをコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ等のコレステロール反応酵素の存在下で反応させ反応系外へ導く。この際、反応系外へ導こうとするリポ蛋白に反応性を有する特定の界面活性剤の存在下で反応を起こさせてもよい。
ここで、リポ蛋白のコレステロールを反応系外に導くとはCM、VLDL及びLDL並びに測定対象以外の亜分画HDLなどのリポ蛋白に含まれるコレステロールが、測定対象であるHDL-C又は亜分画HDL-Cの定量に影響を及ぼさないように、上記リポ蛋白に含まれるコレステロールを消去、凝集させたり、後の工程で反応しないよう阻害すること等を言う。
消去とは被検試料中のリポ蛋白コレステロールを分解し、その分解物が次の工程において検出されないようにすることを意味する。リポ蛋白コレステロールを消去するための方法としては、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼを作用させ発生した過酸化水素を、カタラーゼを用いて水と酸素に分解する方法が挙げられる。また、及びペルオキシダーゼを用いて水素供与体と発生した過酸化水素を反応させ無色キノンに転化してもよいが、これらに限定されるものではない。
また、リポ蛋白がブロックされ酵素と反応しない場合もあり、この場合もリポ蛋白のコレステロールを反応系外に導くという。ここで、ブロックとは、界面活性剤等がリポ蛋白に結合(保護)し酵素のリポ蛋白への反応が起こらなくなることをいう。例えば、(2)の方法において、LDLは第1工程から第3工程のいずれの工程でも反応しない。この場合もLDLが反応系外に導かれたという。
第2工程では、測定対象であるApoE-containing HDL及びApoE-deficient HDLを含むHDLに反応性を有する界面活性剤の存在下でコレステロールエステラーゼを被検試料と反応させる。生じたコレステロールをコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ等のコレステロール反応酵素の存在下で反応させ、発生した過酸化水素をキノン色素に転化させキノン色素を吸光度測定により測定することにより測定対象を酵素的に定量することができる。
用いる界面活性剤の濃度により、界面活性剤のApoE deficient HDL及びApoE-Containing HDLに対する反応性は異なる。例えば、実施例1に示すように、界面活性剤が低濃度(終濃度0.05〜0.10%)の場合、ApoE deficient HDL に対する反応性は高いが、ApoE-Containing HDLに対する反応性は低い。一方、界面活性剤濃度が高濃度(0.15〜0.75%)の場合、ApoE deficient HDLだけでなくApoE-Containing HDLも反応を示す。従って、界面活性剤を上記の低濃度の範囲で用いた場合、ApoE deficient HDLのみが反応し、ApoE deficient HDL-Cのみの定量が可能となる。ここで、界面活性剤の終濃度とは、各工程において、その工程で添加する試薬を添加したときの反応系全体における界面活性剤の濃度をいう。例えば、上記の(2)の方法において、第1工程で180μlの第1試薬と数μlの試料を添加し、第2工程で60μlの第2試薬を添加し、第3工程で60μlの第3試薬を添加する場合であって、第2試薬にD1%の界面活性剤が含まれ、第3試薬にD2%の界面活性剤が含まれている場合、第2試薬を添加したときの第2工程における界面活性剤終濃度は、(D1×1/4)%で表すことができ、第3試薬を添加したときの第3工程における界面活性剤の終濃度は、{(D1×1/4)×4/5+D2×1/5}%で表すことができる。また、上記の(3)の方法において、第1工程で180μlの第1試薬と数μlの試料を添加し、第2工程で60μlの第2試薬を添加する場合であって、第1試薬にD3%の界面活性剤が含まれ、第2試薬にD4%の界面活性剤が含まれている場合、第1試薬を添加したときの第1工程における界面活性剤終濃度は、D3%で表すことができ、第2試薬を添加したときの第2工程における界面活性剤の終濃度は、{(D3×3/4)+ D4×1/4}%で表すことができる。
第3工程において、界面活性剤を上記の高濃度の範囲で用いた場合、ApoE-Containing HDLが反応し、ApoE-Containing HDL-Cを定量することができる。この際、第2工程でApoE deficient HDL-Cに対してのみ反応し、ApoE deficient HDL-Cの量に応じて過酸化水素が発生し、キノン色素が生じる。第3工程で高濃度の界面活性剤を用いた場合、ApoE-Containing HDLが反応し、ApoE-Containing HDL-Cの量に応じてさらに過酸化水素が発生し、キノン色素が生じる。第2工程に対して、第3工程で認められる、ApoE-Containing HDL-Cの反応により生じたキノン色素による吸光度の増加分をApoE-Containing HDL-Cとして定量することができる。また第2工程及び第3工程の両工程の界面活性剤とApoE deficient HDL-C及びApoE-Containing HDL-Cとの反応により生じたキノン色素による吸光度の増加分を合算することによりApoE deficient HDL-C及びApoE-Containing HDL-Cを含む総HDL-Cを定量することができる。
このように、ApoE deficient HDL-C及びApoE-Containing HDL-Cを特異的に測定するためにApoE deficient HDL-C、ApoE-Containing HDL-Cを反応させ定量する工程の前に、CM、VLDL、LDL等の測定対象外のリポ蛋白を反応系外へ導く工程を加えることができる。この方法においては、第1工程ではHDL以外のリポ蛋白を反応系外へ導き、第2工程でApoE deficient HDL -Cの反応が起こり、第3工程でApoE-Containing HDL-Cの反応が起こる。第2工程での吸光度増加分からApoE deficient HDL -C濃度を定量することができ、また、第3工程での吸光度増加分からApoE-Containing HDL-C濃度を定量することができ、さらに第2工程及び第3工程での総吸光度増加分から総HDL-C濃度を定量することができる。
本発明では汎用の自動分析装置を用いてそれぞれ第1工程、第2工程、第3工程で異なる組成の試薬を用いる。第1工程、第2工程、第3工程で用いる試薬を第1試薬、第2試薬、第3試薬と呼ぶ。このように3種類の試薬を用いることにより一回の被検試料のサンプリングで、一連の反応を起こさせ、吸光度を測定することによりでApoE deficient HDL -C、ApoE-Containing HDL-C、及び総HDL-C濃度を算出することができる。
汎用の自動分析装置としては、日立7180、TBA200FR、AU640、BM6050等を用いることができる。
(3)の2工程からなる方法の詳細は以下のとおりである。
第1工程では、ApoE-Containing HDL-C以外のリポ蛋白中コレステロール(CM、VLDL、LDL、ApoE-deficient HDL-C)を反応系外に導く。上記(2)の方法では、第1工程でCM、VLDL、LDL等の測定対象外のリポ蛋白を反応系外へ導くが、本方法においては、第1工程において、さらに界面活性剤をApoE-deficient HDL-Cに反応性が高い濃度範囲、すなわち、界面活性剤を低濃度(終濃度0.05〜0.10%)で用いればよい。すなわち、本方法においては、ApoE-Containing HDL-C以外のリポ蛋白中コレステロールを反応系外に導くことになる。第2工程では、ApoE-Containing HDL-Cを測定する。ApoE-Containing HDL-Cの測定には、(2)の方法と同様に、界面活性剤濃度が高濃度(0.15〜0.75%)で用いればよい。本法においては、第2工程でApoE-Containing HDL-Cの量に応じてキノン色素が生じ、該キノン色素による吸光度を測定することにより、ApoE-Containing HDL-Cを定量することができる。
この反応では第1試薬を第1工程で、第2試薬を第2工程で使用するため、2試薬のみでApoE-Containing HDL-Cを測定することができる。
上記のように、本発明のApoE deficient HDLやApoE-Containing HDLのHDL亜分画のコレステロールを反応させ、測定あるいは反応系外に導く工程では、HDLに反応する界面活性剤を用いる。ApoE deficient HDL-Cを分解し定量する工程では、界面活性剤を低濃度で使用するのが好ましく、その濃度範囲は上記のように終濃度で0.05〜0.10%であり、好ましくは終濃度で0.075〜0.10%である。一方、ApoE-Containing HDL-Cを分解し定量する工程では、界面活性剤を高濃度で使用するのが好ましく、その濃度範囲は上記のように終濃度で0.15〜0.75%であり、好ましくは終濃度で0.15〜0.5%である。
上述の3工程からなる(2)の方法では、HDLに反応する界面活性剤を第2工程では低濃度で用い、第3工程では高濃度で用いればよい。2工程からなる(3)の方法では、HDLに反応する界面活性剤を第1工程では低濃度で用い、第2工程では高濃度で用いればよい。2工程からなる(1)の方法では、第1工程では低濃度で用い、第2工程では高濃度で用いればよい。
本発明の方法においては、ApoE deficient HDL及びApoE-Containing HDLを含む HDLに反応する界面活性剤を用いる。HDLに反応する界面活性剤としては、ApoE-Containing HDL反応率/ApoE deficient HDL反応率比が0.7以上、1.3未満の界面活性剤、好ましくはApoE-Containing HDL反応率/ApoE deficient HDL反応率比が0.8以上、1.2未満の界面活性剤が挙げられる。ここで、界面活性剤のリポ蛋白への反応性は、該界面活性剤の存在下でリポ蛋白にコレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼを作用させた場合に、コレステロールの反応する程度を指標に評価することができる。具体的には、例えば、リポ蛋白と反応させる試薬に種々の界面活性剤を含ませ測定を行うことによりその界面活性剤のリポ蛋白に対する反応性を測定することができる。ApoE-containing HDLに対する界面活性剤の反応量とApoE-deficient HDLに対する界面活性剤の反応量を測定し、それぞれの試料中の総コレステロール量との比(以下、「ApoE-containing HDL反応率/ApoE-deficient HDL反応率比」と言う)を求めればよい。それより、ApoE-containing HDL反応率/ApoE-deficient HDL反応率比を算出することができる。
HDLに反応する界面活性剤として、具体的には、陰イオン界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが、非イオン界面活性剤としてはポリオキシエチレンモノラウレート、ラウリルアルコールアルコキシレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル誘導体、分子量1700未満のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、HLB13.0以上14.5未満のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが、両性界面活性剤としてはアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタインが好ましく、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル誘導体が特に好ましい。
具体的な界面活性剤の例として、陰イオン界面活性剤としては、ニューレックスソフト60-N、ニューレックスパウダーF、ニューレックスペーストH(以上日本油脂社製)、ネオペレックスNo.1-F、ネオペレックス G-65、エマール NC-35(以上、花王社製)、非イオン界面活性剤の例として、アデカトールLB70、アデカトール LB-103、アデカトール LB-93(以上旭電化社製)、ディスパノールK-3、ノニオンL-4、ノニオンMN-811、ノニオンNS-210、ノニオンNS-212、ナイミーンL-202、プロノン102、プロノン204(以上日本油脂社製)、ノニポール85、ノニポール95、ノニポール100、ノニポール120(以上三洋化成社製)、エマルゲンB66(花王)、両性界面活性剤の例としてアンヒトール24B(花王社製)、ニッサンアノンBF、ニッサンアノンGLM-R-LV、ニッサンアノンLG(以上日本油脂社製)等が挙げられる。
このうち、エマルゲンB66等がポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル誘導体である。
本発明の方法においては、被検試料中のHDL亜分画のコレステロールを測定するために、上記の方法(2)や(3)のように、最初にHDL以外のリポ蛋白を消去することにより反応系外に導く。HDL以外のリポ蛋白を消去する方法として、カタラーゼを用いる方法、及び無色キノンを形成する方法を挙げることができる。すなわち、HDLに作用する界面活性剤の非存在下において、被検試料にコレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼを作用させ、生じたHDL以外のリポ蛋白由来の過酸化水素を除去する。コレステロールエステラーゼの作用により、リポ蛋白中のエステル型コレステロールが加水分解されて遊離型コレステロールと脂肪酸が生じる。次いで、この生じた遊離型コレステロールと元々リポ蛋白中に存在する遊離型コレステロールがコレステロールオキシダーゼの作用で酸化されてコレステノンと過酸化水素が生じる。この生じた過酸化水素を除去することによりリポ蛋白を消去することができる。過酸化水素を除去する方法としては、カタラーゼを作用させて水と酸素に分解する方法、及びペルオキシダーゼの作用により、例えばDAOS(N−エチル−N−(2−ヒドロキシスルホプロピル)−3,5−ジメチオキシアニリン)のような、過酸化水素と反応して無色キノンを生じるフェノール系又はアニリン系水素供与体化合物と反応させて過酸化水素を無色キノンに転化する方法等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
HDL以外のリポ蛋白を反応系外に導く工程においては、HDLに作用する界面活性剤の非存在下において行なえばよい。こうすることにより、HDLはほとんど反応せず、LDL、VLDL-CM等のリポ蛋白のみが反応し、LDL、VLDL-CM等の他のリポ蛋白中のコレステロールのみが消去、又は保護され反応系外に導かれる。この結果、次の第2工程において、HDLに反応する界面活性剤を用いることにより、総HDL又はApoE-Containing HDL及び/又はApoE-deficient HDLのHDL亜分画中のコレステロールが選択的に定量される。
上記の方法(2)及び(3)の、HDL以外のリポ蛋白を反応系外に導く工程、あるいはApoE-Containing HDL-C以外のリポ蛋白を反応系外に導く第1工程の反応液中のコレステロールエステラーゼの濃度は0.2〜1.0U/ml程度が好ましく、また、コレステロールオキシダーゼの濃度は0.1〜0.7U単位/ml程度が好ましい。さらに、カタラーゼの濃度は40〜100U/ml程度が好ましく、ペルオキシダーゼの濃度は0.4〜1.0U/ml程度が好ましい。また、過酸化水素と反応して無色キノンを生じる化合物の濃度は0.4〜0.8mmol/l程度が好ましい。
上記の方法(2)及び(3)の第1工程の反応は、pH5〜8の緩衝液中で行なうことが好ましく、緩衝液としてはリン酸、グリシン、トリス及びグッドの緩衝液が好ましい。特にグッドの緩衝液であるBis-Tris、PIPES、MOPSO、BES、HEPES及びPOPSOが好ましく、緩衝液の濃度は10〜500mM程度が好ましい。
上記の方法(2)及び(3)の第1工程で、HDL以外のリポ蛋白の消去効率を高めるために、反応液中に2価の金属イオンを含ませてもよい。2価の金属イオンとしては銅イオン、鉄イオン及びマグネシウムイオンを好ましく使用することができるが、特にマグネシウムイオンが好ましい。2価の金属イオンの濃度は5〜200mM程度が好ましい。例えば、塩化マグネシウムを添加すればよい。
さらに、上記の方法(2)及び(3)の第1工程の反応液中には、任意的に、リポ蛋白加水分解酵素を加えることもできる。この酵素を加えることにより、特にVLDL中のコレステロールが反応し易くなるので好ましい。この酵素の反応液中の濃度は、5.0〜10.0U/ml程度が好ましい。
上記の方法(1)、(2)及び(3)の各工程の反応温度は25℃〜40℃程度が適当であり、37℃が最も好ましい。また、反応時間は2〜10分間程度でよい。
本発明の方法において発生したコレステロールの酵素的な定量方法自体はこの分野において周知であり、例えば上記の方法(2)及び(3)の第1工程と同様、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼの作用によりコレステロールエステル及び遊離型コレステロールから過酸化水素を発生させ、発生した過酸化水素を定量することにより行なうことができる。過酸化水素の定量は、例えば、ペルオキシダーゼの存在下で、過酸化水素と反応してキノン色素を形成する化合物と反応させ、生じたキノン色素の量を吸光度測定等により測定することにより行なうことができる。キノン色素は、例えば過酸化水素と4−アミノアンチピリン及びフェノール系若しくはアニリン系水素供与体を用いることにより形成させることができる。
水素供与体化合物のうちアニリン系水素供与体化合物として、N‐(2‐ヒドロキシ‐3‐スルホプロピル)‐3,5‐ジメトキシアニリン(HDAOS)、N-エチル-N-スルホプロピル-3‐メトキシアニリン(ADPS)、N-エチル-N-スルホプロピルアニリン(ALPS)、N-エチル-N-スルホプロピル-3,5‐ジメトキシアニリン(DAPS)、N‐スルホプロピル‐3,5‐ジメトキシアニリン(HDAPS)、N-エチル-N-スルホプロピル‐3,5‐ジメチルアニリン(MAPS)、N-エチル-N-スルホプロピル-3‐メチルアニリン(TOPS)、N-エチル-N‐(2‐ヒドロキシ‐3‐スルホプロピル)‐3‐メトキシアニリン(ADOS)、N-エチル-N‐(2‐ヒドロキシ‐3‐スルホプロピル)アニリン(ALOS)、N-エチル-N‐(2‐ヒドロキシ‐3‐スルホプロピル)-3,5‐ジメトキシアニリン(DAOS)、N-エチル-N‐(2‐ヒドロキシ‐3‐スルホプロピル)-3,5‐ジメチルアニリン(MAOS)、N-エチル-N‐(2‐ヒドロキシ‐3‐スルホプロピル)‐3‐メチルアニリン(TOOS)及びN‐スルホプロピルアニリン(HALPS)等が挙げられる。
キノン色素を生成する化合物の濃度は、特に限定されないが、反応混合物全体に対し、例えば4−アミノアンチピリンでは、好ましくは0.1〜2.0mM、さらに好ましくは0.5〜1.5mMであり、フェノール系又はアニリン系水素供与体化合物では0.5〜2.0mmol/Lが好ましい。また、ペルオキシダーゼの濃度は、特に限定されないが、反応混合物全体に対し、0.4〜5U/mlが好ましい。なお、キノン色素を形成させる工程の好ましい反応条件(反応温度、反応時間、緩衝液、pH)は、HDL以外のリポ蛋白を反応系外に導く工程、あるいはApoE-Containing HDL-C以外のリポ蛋白を反応系外に導く工程の好ましい反応条件と同じである。
なお、HDL以外のリポ蛋白を反応系外に導く工程、あるいはApoE-Containing HDL-C以外のリポ蛋白を反応系外に導く工程において、生じた過酸化水素をカタラーゼで分解する場合には、後のキノン色素を形成させる工程ではこのカタラーゼを阻害する必要があるので、第2工程において例えばアジ化ナトリウムのようなカタラーゼ阻害剤を用いてカタラーゼを阻害する。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、下記例において、「%」は特に断りがない限り「重量%」を示す。
実施例1
HDL亜分画測定における界面活性剤濃度の効果を確認するために、下記の組成を有する試薬を調製した。
第1試薬
BES緩衝液 pH7.0 100 mmol/l
HDAOS 0.7 mmol/l
コレステロールエステラーゼ 1.4 U/ml
コレステロールオキシダーゼ 0.8 U/ml
カタラーゼ 600 U/ml
塩化マグネシウム 10 mmol/l
第2試薬
BES緩衝液 pH7.0 100 mmol/l
4−アミノアンチピリン 4.0 mmol/l
コレステロールオキシダーゼ 2.4 U/ml
ペルオキシダーゼ 2.4 U/ml
アジ化ナトリウム 0.1%
界面活性剤(ポリオキシエチレンベンジルフェニル誘導体)
0.2, 0.4, 0.6, 0.8, 1.0, 1.5, 2.0, 3.0%
第2試薬中の界面活性剤濃度を0.2〜3.0%の範囲で変動させた試薬を用いてApoE deficient HDL-C濃度141.8mg/mlを含む高HDL-C試料(Total HDL-C 195.8mg/ml)を測定し、ApoE-deficient HDLに対する反応性を測定した。試料2.4μlに第1試薬180μlを混和し、37℃で5分間反応させた後に、第2試薬60μlを37℃で5分間反応させ、主波長/副波長=600nm/700nmとして吸光度差を測定し、検量線よりコレステロール濃度を求めた。反応液中の界面活性剤の最終濃度は0.05〜0.75%であった。比較対照としてApoE-Containing HDL-Cを測定せずにApoE-deficient HDL-Cのみを測定できるリンタングステン酸-デキストラン硫酸-マグネシウム沈殿法(PT-DS-Mg法)(BIOCHEMICAL MEDICINE AND METABOLIC BIOLOGY 46, 329-343 (1991))を用いて同様の試料を測定した。
用いる試料の容積は試薬の容積に対して微量であるので試料の容積を無視した場合、第1試薬と第2試薬の容積比は3:1である。従って、C1%の界面活性剤を含む第2試薬を添加したときの界面活性剤の終濃度はC1×1/4%となる。本実施例では、第2試薬における濃度が0.2〜3.0%であるので、終濃度は0.05〜0.75%となる。
結果を図1に示す。図1は界面活性剤の最終濃度に対する結果を%バイアスで示している。%バイアスは、(実施例測定値-基準法測定値)/基準法測定値×100により求めることができる。
図1に示されるように、第2試薬中の界面活性剤濃度が0.2〜0.4%(終濃度0.05〜0.10%)の場合、HDL-C高値検体においてPT-DS-Mg法に対する測定値の%バイアスが±2%以内となる。これに対し、第2試薬の界面活性剤濃度が0.6〜3.0%(終濃度0.15〜0.75%)では測定値が上昇し、ApoE-deficient HDL-C以外のHDL亜分画(ApoE-Containing HDL-C)と反応していることがわかる。
実施例2
試薬やその他の条件は実施例1と同様とし、比較対照法としてApoE-Containing HDL-C を含めた総HDL-Cを測定できる13%PEG法(J Lipid Research 38, 1204-16: 1997)を用いて高HDL-C試料(Total HDL-C 195.8mg/ml)を測定した。
結果を図2に示す。図2は界面活性剤の終濃度に対する結果を%バイアスで示している。
図2に示されるように、第2試薬中の界面活性剤濃度が0.2〜0.4 %(終濃度0.05〜0.08%)の場合、HDL-C高値検体において13%PEG法に対する測定値の%バイアスが-2%以下となる。これに対し、第2試薬の界面活性剤濃度が0.6〜3.0%(終濃度0.15〜0.75%)では測定値が上昇し、13%PEG法に対する測定値の%バイアスが±2%以内となる。このことから高濃度の界面活性剤存在下では、ApoE-Containing HDL-Cを含めた総HDL-Cと反応していることがわかる。
実施例3
第1工程(第1試薬を添加)はHDL以外のリポ蛋白を反応系外に導く工程、第2工程(第2試薬を添加)はApoE-deficient HDL-Cを測定する工程、第3工程(第3試薬を添加)はApoE-Containing HDL-Cを測定する工程で用いる試薬として、以下の試薬を調製した。
第1試薬
BES緩衝液 pH7.0 100 mmol/l
HDAOS 0.7 mmol/l
コレステロールエステラーゼ 1.4 U/ml
コレステロールオキシダーゼ 0.8 U/ml
カタラーゼ 600 U/ml
塩化マグネシウム 10 mmol/l
第2試薬
BES緩衝液 pH7.0 100 mmol/l
4−アミノアンチピリン 4.0 mmol/l
ペルオキシダーゼ 2.4 U/ml
アジ化ナトリウム 0.1%
界面活性剤(ポリオキシエチレンベンジルフェニル誘導体) 0.2%
第3試薬
BES緩衝液 pH7.0 100 mmol/l
界面活性剤(ポリオキシエチレンベンジルフェニル誘導体) 1.0%
分析装置として日立7180を用い、試料2.4μlに第1試薬180μlを混和し、37℃で5分間反応させた後に、第2試薬60μlを37℃で5分間反応させ、その後第3試薬60μlを37℃で5分間反応させた。主波長/副波長=600nm/700nm、測光ポイントをApoE-deficient HDL-C:Δ22-8、ApoE-Containing HDL-C:Δ27-22、総HDL-C:Δ27-9として吸光度差を測定し、キャリブレーションより求めたファクターを乗じてコレステロール濃度(mg/dL)を算出した。比較対照法として、ApoE-deficient HDL-C測定法として(PT-DS-Mg法)、ApoE-Containing HDL-Cを含めた総HDL-C測定法として13%PEG法を測定した。ApoE-Containing HDL-Cは13%PEG法よりPT-DS-Mg法を減ずることにより計算にて求めた。試料としてHDL-C濃度の異なるヒト血清を使用した。
第2試薬を添加したときの反応液中の界面活性剤の終濃度は0.2×1/4=0.05%であり、第3試薬を添加した時の反応液中の界面活性剤の終濃度は0.05×4/5+1.0×1/5=0.24%であった。
結果を図3に示す。図3は本発明の方法で測定した値と13%PEG沈殿法(a)、PT-DS-Mg沈殿法(b)、13%PEG沈殿法とPT-DS-Mgの差(c)との間の相関を示す。
図3a〜cに示されるように、本発明法によって求めたApoE-deficient HDL-C、ApoE-Containing HDL-C、総HDL-Cは比較対照法とそれぞれ良好な相関性(y = x + 0.5 , r = 0.999 , y = x + 0.4 , r = 0.991 , y = x + 3.0 , r = 0.999 )を示した。
実施例4
第1工程(第1試薬を添加)はApoE-Containing HDL以外のリポ蛋白を反応系外に導く工程、第2工程(第2試薬を添加)はApoE-Containing HDL-Cを測定する工程で用いる試薬として、以下の試薬を調製した。
第1試薬
BES緩衝液 pH7.0 100 mmol/l
HDAOS 0.7 mmol/l
コレステロールエステラーゼ 0.8 U/ml
コレステロールオキシダーゼ 1.6 U/ml
カタラーゼ 600 U/ml
塩化マグネシウム 10 mmol/l
界面活性剤(ポリオキシエチレンベンジルフェニル誘導体) 0.067%
第2試薬
BES緩衝液 pH7.0 100 mmol/l
4−アミノアンチピリン 4.0 mmol/l
ペルオキシダーゼ 2.4 U/ml
アジ化ナトリウム 0.1%
界面活性剤(ポリオキシエチレンベンジルフェニル誘導体) 1.0%
本発明における測定条件は実施例1と同様とした。すなわち、試料2.4μlに第1試薬180μlを混和し、37℃で5分間反応させた後に、第2試薬60μlを37℃で5分間反応させ、主波長/副波長=600nm/700nmとして吸光度差を測定し、検量線よりコレステロール濃度を求めた。比較対照法として、ApoE-Containing HDL-C濃度をApoE-Containing HDL-Cは13%PEG法よりPT-DS-Mg法を減ずることにより計算にて求めた。試料としてHDL-C濃度の異なるヒト血清を使用した。
第1試薬を添加したときの反応液中の界面活性剤の最終濃度は0.067%であり(試料の容積は小さいので無視した)、第2試薬を添加した時の反応液中の界面活性剤の最終濃度は0.067×4/5+1.0×1/5=0.254%であった。
結果を図4に示す。図4はHDL試料に対して、本発明の実施例4の方法により測定した場合の13%PEG沈殿法とPT-DS-Mgの差に対する相関性を示す。
図4に示されるように、本発明法によって求めたApoE-Containing HDL-Cは比較対照法と良好な相関性(y = x + 1.4 , r = 0.984)を示した。

Claims (2)

  1. 被検試料中に、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル誘導体からなる界面活性剤を終濃度0.05〜0.10%の濃度で加え、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼを作用させ、発生した過酸化水素を定量し、ApoE deficient HDL中のコレステロールを酵素的に分別定量し、次いで、前記のポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル誘導体からなる界面活性剤と同じ界面活性剤を終濃度0.15〜0.75%となるように加え、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼを作用させ、発生した過酸化水素を定量することによりApoE-Containing HDL中のコレステロールを酵素的に分別定量する方法。
  2. 被検試料中に、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル誘導体からなる界面活性剤を終濃度0.05〜0.10%の濃度で加え、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼを作用させ、発生した過酸化水素を除去することによりApoE-Containing HDL以外のHDL中のコレステロールを反応系外に導き、次いで前記のポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル誘導体からなる界面活性剤と同じ界面活性剤を終濃度0.15〜0.75%となるように加え、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼを作用させ、発生した過酸化水素を定量することによるApoE-Containing HDL中のコレステロールを定量するApoE-Containing HDL中のコレステロールの定量方法。
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