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JP6051031B2 - 高力ボルト及びその製造方法 - Google Patents

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隆司 山口
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Description

本発明は、土木、建築等の接合部に使用される高力ボルト及びその製造法に関する。
現在、土木建築分野ではF10T(JIS B 1186)及びS10T(JSSII09)の高力ボルト(引張強さが1000〜1100MPa)による摩擦接合が主流であるが、超高層建築物をはじめとする部材の厚肉化や高強度化に対して、より一層のボルトの高強度化が求められている。
最近ではF10Tの約1.5倍に相当する軸力の導入が可能なF14T超高力ボルト(引張強さ1400MPa〜1600MPa)が製品化され、建築分野での利用実績が増えている(例えば、非特許文献1)。
さらに、1700MPa超級の超高力ボルトが実用化されれば、接合部の更なるコンパクト化が可能となり、鋼構造物のデザインも変革できる。すなわち、ボルトの超高強度化によって、省資源化、省力化、省エネルギー化そしてCO削減という大きな波及効果が期待できる。
ところが引張強さが1200MPaを超えた低合金鋼(炭素以外の合金元素の添加量が10%以下)では、遅れ破壊が深刻な問題であり、高力ボルトの高強度化の大きな妨げとなっている。
遅れ破壊とは、大気腐食によって水素が発生し、鋼材中に侵入して鋼材が脆化して起こる破壊で、時間遅れ破壊の略称である。室温において鋼中で応力集中部に拡散集積する水素、いわゆる拡散性水素が遅れ破壊の原因である。この遅れ破壊のため、F14T超高力ボルトが開発されるまでの約30年間、土木建築用高力ボルトの高強度化はF10TおよびS10Tの高力ボルトで頭打ち状態であった。
前述のF14Tボルトでは、拡散性水素の許容量が大きな鋼材の開発と遅れ破壊の起こりにくいボルト形状の開発により耐遅れ破壊性能の向上が図られている(特許文献1、非特許文献1)。具体的には、Mo、Vの炭窒化物等の鋼中水素をトラップする粒子をマトリクス中に微細に分散させて許容水素量を大きくした鋼材を素材とすると共に、ボルトの(1)ねじ形状の開発、(2)ボルト軸からねじ部への移行部形状の改良、(3)ボルト頭部首下曲率半径rの増大、(4)ナットの形状変更した、従来のF10TおよびS10Tの高力ボルトとは異なる独自の形状が開示されている。
なお、許容水素量とは、ある荷重負荷条件下で、その水素量以下では素材が遅れ破壊しない拡散性水素量の許容値を示し、耐遅れ破壊性能を比較するためのひとつの指標である。
一方、特許文献2では、C、Si,Mn,Cr,Moの添加量の規定と共に、焼戻処理温度を500℃〜Ae1と規定することで耐遅れ破壊特性に優れた1800MPa級機械構造用鋼が製造できることが開示されている。
ところが、上記機械構造用鋼材から既存のF10Tボルトと同じねじ形状の高力ボルトを製造した場合には、ボルトの大気暴露試験でボルトのねじ部を起点とした遅れ破壊が頻繁に発生するという問題点もあった(非特許文献2)。しかも引張強度が1800MPaの超高強度鋼材では切欠靭性が低く、ボルトの引張変形能が低いという問題点もあった。
図1に示すように、高力ボルトは、頭部1、軸部2、ねじ部3の部位で構成され、ねじ部3で応力の集中がとくに大きく、しかも高軸力のボルト締め付けに際しては塑性ひずみも大きくなるため、ねじ部3を起点として遅れ破壊が起こることは良く知られている。
特許文献3では、頭部1をねじ部3よりも高い温度で温間成形して軸部2から頭部1にかけてボルトの強度が傾斜的に低くなるように制御することで引張強さが1800MPaレベルでありながら延性、遅れ破壊特性に優れ、しかも優れた耐衝撃性を有するボルトが開示されている。ただボルト成形は温間域で行われるため従来の冷間成形プロセスと比べてボルトの量産性に課題がある。
高力ボルト接合における高強度化技術の最前線、2008年度日本建築学会大会(広島)、構造部門(鋼構造)、パネルディスカッション資料、(2008)、p.1 工業材料、第57巻、(2009)、p.34
特開2002−276637号公報 特開2003−073769号公報 特開2011−058576号公報
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、F10TボルトおよびS10Tボルトの1.7倍に相当する軸力の導入が可能で、耐遅れ破壊特性に優れた土木・建築用の高力ボルト製品を提供するものである。
本発明者らは、上記の事情に鑑みて種々研究した結果、1700MPaの超高鋼材であってもボルトねじ部3への応力集中を小さくすれば、水素許容量を大きくして耐遅れ破壊特性を向上できることを知見し、ボルトの軸部2の最適化を図ってボルト軸部2でボルトの変形を担わせればボルト製品の引張変形性能を改善するとともに高軸力のボルト締め付けの際の高力ボルトねじ部3における塑性ひずみおよび応力集中を低減できることを見出した。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは、以下の通りである。
本発明の高力ボルトは、質量%で
C:0.35〜0.70%、
Si:0.50〜2.50%、
Mn:0.10〜1.00%、
Cr:0.30〜3.00%、
Mo:0.50〜1.50%、
Al:0.001〜0.1%
を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、かつボルト頭部1からねじ部3までの部位の90体積%以上が焼戻マルテンサイト組織から成る内部金属組織を有すると共に、上記部位の引張強さが1700MPa以上であり、当該高力ボルトの軸部2において、次式(1)で表される軸部形状パラメータSが0.85以上1.25未満の値であることを特徴とする。
S=Ab/Ae ・・・ (1)
(式中のAbは軸部の有効断面積、Aeはねじ部の有効断面積を示す)
また、本発明の高力ボルトの製造方法は、上記高力ボルトの製造に際して、素材をボルトへ成形した後、850℃〜1050℃の温度範囲内でオーステナイト化処理を施した後に焼入れして、内部金属組織の90体積%以上をマルテンサイト組織とした後に、500〜650℃の温度範囲で焼戻処理を施すことを特徴としている。
本発明によれば従来F10Tの1.7倍以上の軸力を導入可能で、素材をボルトへ成形後の焼入れおよび焼戻処理で遅れ破壊特性、とくに引張変形性能に優れた高力ボルトを提供することができ、産業上の貢献が期待できる。
これは、(1)ボルトの軸部2の有効断面積(Ab)とねじ部の有効断面積(Ae)の比率を調整して、ボルトの軸心方向の高張力に対してはねじ部3よりもボルト軸部2が先行して降伏変形することで遅れ破壊の発生点となるねじ部3への応力集中及び塑性ひずみの発生を低減し、かつボルト製品の延性を高めたことによるものである。なお、本発明において、ねじ部の有効断面積(Ae)とは、JIS B 1180の別表1中に規定された有効面積を意味する。また、軸部2の有効断面積(Ab)とは、軸部の最小径で算出される断面積を意味する。
ボルトの概略図である。 切欠試験片の形状及び寸法(mm)を示す図である。 切欠底の応力集中係数と切欠引張強さの関係を示すグラフである。 切欠引張強さと拡散性水素量との関係を示すグラフである。 水素割れ感受性試験手順の概略図である。 ボルトの形状を示す図である。 加力概要図である。 ボルト製品の荷重変位関係図である。
本発明における引張強さが1700MPa以上の高力ボルトは、(1)ボルトの軸部2の有効断面積(Ab)とねじ部の有効断面積(Ae)の比、すなわちS値を0.85以上で1.25未満の値として、ボルトの軸心方向の高張力に対してはねじ部3よりもボルト軸部2が先行して降伏変形することで遅れ破壊の発生点となるねじ部3への応力集中及び塑性ひずみの発生を低減し、ボルト製品の延性も高めることで実現できる。
〔ボルト軸部形状〕
既存のF10T及びS10Tのボルトの場合、前記(1)式におけるS値は1.25から1.28の値であり、ボルト首下軸部の断面積(Ab)がねじ部の有効断面積(Ae)よりも大きいためボルトに張力を付加するとボルトはねじ部で破断する。
本発明のボルトの場合、S値が1.25未満の値となるようなボルト軸部の形状である。このようなボルトではS値を1.25未満とすることでボルトねじ部3への応力集中を低減できる。より好ましくはS値を1.05以下とすることで終局時に軸部破断が生じるため、ねじ部破断が生じるボルトに比べて変形能力が著しく向上する。一方でS値が小さくなりすぎるとボルトに導入できる張力も低くなるため、S値は0.85以上とするのが望ましい。
〔化学成分〕
本発明の高力ボルトは、質量%で
C:0.35〜0.70%、
Si:0.50〜2.50%、
Mn:0.10〜1.00%、
Cr:0.30〜3.00%、
Mo:0.50〜1.50%、
Al:0.001〜0.1%
を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなることを特徴とするものである。
以下に、本発明ボルトの化学成分の限定理由について述べる。
C:
Cは炭化物粒子を形成し、強度増加に最も有効な成分であるが、0.70質量%を超えると靱性劣化を招くことから、含有量を0.70質量%とした。強度増加を充分に期待するためには、0.35質量%以上、好ましくは、0.40質量%以上、より好ましくは0.50質量%を含有させる。
Si:
Siは脱酸及びフェライト中に固溶して鋼の強度を高めるとともにセメンタイトを微細に分散させるのに有効な元素である。
従って、脱酸材として添加したもので鋼中に残るものも含め、含有量を0.50質量%以上とする。高強度化を図る上で上限は特に制限しないが、鋼材の冷間鍛造性及び加工性を考慮すれば、2.5質量%以下、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%とすることが好ましい。
Mn:
Mnはオーステナイト化温度を低下させオーステナイトの微細化に有効であるとともに、焼入れ性並びにセメンタイト中に固溶してセメンタイトの粗大化を抑制するのに有効な元素である。
0.10質量%未満では所望の効果が得られないため、0.10質量%以上と定めた。より好ましくは0.2質量%以上を含有させる。高強度化を図る上で上限は特に制限しないが、得られる鋼材の靭性を考慮すれば、1.00質量%以下とすることが好ましい。
Cr:
Crは焼入れ性向上に有効な元素であるとともにセメンタイト中に固溶してセメンタイトの成長を遅滞させる作用が強い元素である。また、比較的多く添加することでセメンタイトよりも熱的に安定な高Cr炭化物を形成したり、耐食性を向上させる、本発明では重要な元素のひとつでもある。
したがって、少なくとも0.30質量%以上含有させる必要がある。好ましくは0.80質量%以上であって、より好ましくは1.00質量%以上を含有させる。ただし、Crを多く添加しすぎると焼入れ処理の際に多くの粗大な炭化物が未固溶で残存し、機械的性質を劣化させる。よってその上限を3.00質量%以下とした。
Mo:
Moは本発明において鋼の高強度化に有効な元素であり、鋼の焼入れ性向上を向上させるだけでなく、セメンタイト中にも少量固溶してセメンタイトを熱的に安定にする。とくにセメンタイトとはまったく別個に基地相中に新しく転位上に合金炭化物を核生成することで2次硬化を起こして鋼を強化する。しかも形成された合金炭化物は微細粒化に有効であると共に水素トラップサイトとしても有効である。
したがって、好ましくは0.50質量%以上、より好ましくは1.00質量%以上を含有させるが、高価な元素であるとともに過剰な添加は粗大な未固溶炭化物または金属間化合物を形成して靱性を劣化させるため、添加量の上限を1.50質量%に定めた。
なお、W、VについてもMoと同様な効果を示すため、Moの一部をこれらの元素で置き換えることも可能である。
Alは脱酸およびOやNなどの元素と酸化物や窒化物などを形成して基地組織を微細化するのに有効な元素である。ただし過剰な添加は靱性を低下させるため、0.1質量%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.04質量%以下とすることが好ましい。
PやSは粒界強度を低下させるため極力取り除きたい元素であり、それぞれ0.01質量%以下とすることが好ましい。
なお、上記以外の元素についても、本発明の効果を下げない範囲で各種の元素が含有されることが許容される。
〔ボルト製品の調質処理〕
1700MPa以上のボルト引張強さを得るためには、素材をボルトへ成形した後、焼入れおよび焼戻処理を施す必要がある。
以下に、本発明におけるボルト製品の調質処理条件の限定理由について述べる。なお、ここでボルト引張強さは、ボルト製品からJIS Z 2201で規定される形状及び寸法に切削加工された引張試験片の常温での引張強さとする。
上記化学成分よりボルト製品のオーステナイト化温度としては850℃以上が必要である。ただしオーステナイト化温度が高すぎると基地結晶粒組織が粗大化し、ボルトの靭性が低下してしまう。したがってオーステナイト化温度の上限を1050℃以下に定めた。 オーステナイト化温度としては好ましくは1000℃以下、さらに好ましくは950℃以下とする。なお、オーステナイト化時間はボルト製品の形状や大きさによって異なるため条件は特に限定しないが、ボルト製品がオーステナイト化温度に達した後、10分から90分の範囲内であることが望ましい。
オーステナイト化後の焼入れ条件はボルト製品の形状や大きさによって異なるため条件は特に限定しないが、焼入れによって(1)ボルトねじ底部等に焼割れが生じないこと、(2)焼入れままのボルト製品を構成する基地金属組織の90体積%以上がマルテンサイト組織からなることが不可欠である。その理由は、基地金属組織の90体積%未満の場合は、引き続く焼戻処理によって、1700MPa以上の引張強さが得られないためである。
前記焼入れまま組織において、1700MPa以上の引張強さでボルトの靭性や耐遅れ破壊特性を担保するには500℃以上で焼戻処理を施す必要がある。高温で焼戻処理を施すほど靭性は向上するが、引張強さは低下する。よって、焼戻温度の上限を650℃と定めた。とくに上記Mo添加の効果を有効に利用するには、その焼戻温度としては好ましくは530℃以上、より好ましくは550℃以上とする。なお、焼戻時間はボルト製品の形状や大きさによって異なるため条件は特に限定しないが、ボルト製品が焼戻温度に達した後、30分から90分の範囲内であることが望ましい。
以下、本発明の実施例について説明する。
この実施例における供試鋼材の化学成分を表1、熱処理条件および常温での引張変形特性を表2に示す。
表1において鋼材A,B,Cは本発明範囲内の化学成分の鋼材、D,Eは発明成分範囲外の鋼材である。なお、比較鋼のD鋼はF10T高力ボルト用鋼としても使用されるJIS−SCM440鋼に相当する。
Figure 0006051031
Figure 0006051031
発明鋼A、発明鋼Bは500℃以上の焼戻温度で1700MPa以上の引張強さを得ることができるが、比較鋼Dは、Si、Mo量が、比較鋼Eは、Mo量がそれぞれ本発明の下限より少なく焼戻軟化抵抗が小さいため500℃以上の焼戻処理では1700MPa以上の引張強さを得ることができなかった。ただし、発明鋼Aでも焼戻マルテンサイト体積率が90%未満になると、1700MPa以上の引張強さを得ることができなくなった。
なお、用いた引張試験片はJIS Z 2201に規定のJIS4号または14号A丸棒試験片であり、引張試験片方法はJIS Z 2241に準じた。
図2は、ねじ底部の形状を模擬した切欠を入れた引張試験片の形状および寸法を示す。
表3に、切欠き底の曲率半径rと応力集中係数の関係を示す。
Figure 0006051031
例えば、図3は発明鋼A、発明鋼B、並びに比較鋼Dの切欠試験片の応力集中係数と切欠引張強さとの関係を示す。なお、ここでは万能型引張試験を用いて、クロスヘッドスピードが0.5mm/minで試験片を破断するまで引張試験した。比較鋼Dと比べて、発明鋼A,Bの方で切欠引張強さの応力集中係数依存性が高く、応力集中係数を低くすることによってより高い切欠引張強さを得ることができる。
例えば、図4は、前記切欠試験について、発明鋼A、比較鋼D、比較鋼Eの水素割感受性試験の結果である。なお、本試験の手順を図5に示す。鋼中の水素量は昇温脱離分析法により測定し、100℃/時間で試験片を加熱し300℃までに放出される水素量を拡散性水素量として定義した。
同じ負荷荷重で拡散性水素の許容量を比べた場合、例えば負荷荷重1400MPaでは、図中に矢印で示すように比較鋼D、比較鋼Eよりも発明鋼Aの方で水素許容量が高い。発明鋼Aでは切欠底の応力集中係数を小さくすること、すなわちねじ部への応力集中を小さくすることでさらに水素許容量を高くできる。
発明鋼Bの直径22mmの棒材について、鋼材に球状化焼鈍処理を施した後、種々の軸形状でトルシア型ボルトを作製した。ボルト頭部は既存のボルトフォーマーにより冷間で作製した。ボルト成形体は940℃で1時間のオーステナイト化処理後、焼入れし、540℃で1時間の焼戻処理を施した。ボルト製品から切り出したJIS4号試験片の引張強さが1815MPaであった。
図6は、首下形状を変えたボルトの形状を示す。なお、ねじ形状は既存のF10TやS10Tボルトと同じである。
図7に加力概要図を示す。加力はアムスラー型万能試験機により圧縮力を加え、冶具を介して試験体に引張力を作用させた。変位計を鋼板の4辺に取付け、上下の鋼板の相対変位を試験体が破断するまで測定した。なお、試験は、事前にキャリブレーション試験を行い、張力管理により、締め付けを行って、ボルト製品のねじ部の降伏耐力の0.75倍に相当する初期張力(=0.75×降伏強さ×Ae)を導入した。
この試験により、ボルトの変位量と荷重の関係を調査した(図8)。なお、図中の荷重変位曲線の右端が破断点である。荷重変位関係より、S値が1.25及び1.05の試験体では終局時にねじ部破断が生じている。ただし、S値が1.05では1.25のボルトと比べて最大変位が改善されており、これはボルトのねじ部3への応力集中が緩和されていることを示している。
さらに、S値が1.00から0.85の試験体では終局時に軸部破断が生じており、ねじ部3への応力集中が緩和されることに加えて、耐力が維持されかつ変形能力も大きいことが分かる。発明ボルトが優れたエネルギー吸収能力を発揮していることが認められる。なお、S値が0.8では最大荷重が430kNまで低下している。
表4は、ボルトの引張変形特性とS値(=Ab/Ae)との関係を示す。
Figure 0006051031
既存のF10TボルトのS値は1.25から1.28である。S値を本発明の1.25未満、0.85以上の範囲内とすることでボルト製品の引張強さをあまり損なうことなくボルトの変形能を上げることができる。
本発明の高力ボルトを使用すれば、従来の1000〜1100MPa級の高力ボルトに比べて、(1)接合部のコンパクト化かつ軽量化、(2)より高強度かつ厚肉鋼板のボルト接合が可能になり、設計の自由度が増す。その結果、省資源化、省力化、省エネルギー化、そしてCO削減を念頭に置いた新しい土木建築構造物が開発できる。
1 頭部
2 軸部
3 ねじ部

Claims (2)

  1. 質量%で
    C:0.35〜0.70%、
    Si:0.50〜2.50%、
    Mn:0.10〜1.00%、
    Cr:0.30〜3.00%、
    Mo:0.50〜1.50%、
    Al:0.001〜0.1%
    を含有し、残部がFe及び不可避不純物から成る高力ボルトであって、ボルト頭部からねじ部までの部位における内部金属組織の90体積%以上が焼戻マルテンサイト組織であると共に、当該部位の引張強さが1700MPa以上であり、次式(1)で表される軸部形状パラメータSが0.85以上1.25未満の値であることを特徴とする高力ボルト。
    S=Ab/Ae ・・・ (1)
    (式中のAbは軸部の有効断面積、Aeはねじ部の有効断面積を示す)
  2. 請求項1に記載の高力ボルトの製造方法であって、素材をボルトに成形した後、850℃〜1050℃の温度範囲内でオーステナイト化処理を施した後に焼入れして内部金属組織の90体積%以上をマルテンサイト組織とした後、500℃〜650℃の温度範囲で焼戻処理を施すことを特徴とする高力ボルトの製造方法。
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