以下に、本願の開示する通信制御装置、無線通信システム、及び無線通信方法の実施例を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この実施例により、本願の開示する通信制御装置、無線通信システム、及び無線通信方法が限定されるものではない。
まず、本願の開示する一実施例に係る無線通信システムの構成を説明する。図1は、無線通信システムの全体構成を示す図である。図1に示す様に、無線通信システム1は、コアネットワークN1と、RNC(Radio Network Controller)10と、n(nは自然数)台のBTS(Base Transceiver Station)20−1、20−2、…、20−nと、4機の移動局UE1、UE2、UE3、UE4とを有する。各移動局UE1、UE2、UE3、UE4は、各BTS20−1、20−2、…、20−nとの間で、例えば、W−CDMAによる双方向の無線通信を行う。また、各BTS20−1、20−2、…、20−nは、RNC10と有線接続されており、RNC10は、更に上位のネットワークであるコアネットワークN1と有線接続されている。コアネットワークN1と、RNC10と、BTS20−1、20−2、…、20−nとは、双方向に、各種信号やデータの送受信を行う。
図2は、無線通信システム1の機能構成を示す図である。図2に示す様に、無線通信システム1の構成要素の内、RNC10は、IubIF部11と、輻輳通知受信部12と、RLC制御部13と、IuIF部14とを有する。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能な様に接続されている。IubIF部11は、BTSに対するパケット送信処理、及びBTSからのパケット受信処理を実行する。輻輳通知受信部12は、BTSの送信した輻輳通知パケットP1を受信した場合、該パケットを基に、輻輳発生状態または非輻輳状態を示す「輻輳状態」と、該輻輳状態に該当するBTS及びセクタの情報とを解析し、該解析結果を送信レート制御部132に通知する。
RLC制御部13は、再送率監視部131と送信レート制御部132とを有する。再送率監視部131は、RLCレイヤにおける再送率(以下、必要に応じて「RLC再送率」と記す。)を移動局毎に監視し、該再送率と所定の閾値との比較結果を、送信レート制御部132に通知する。例えば、再送率監視部131は、上限閾値と下限閾値とを設定しておき、上記再送率が上限閾値を超過した場合、「閾値超過」を送信レート制御部132に通知する。一方、再送率監視部131は、上記再送率が閾値超過の状態から下限閾値以下に移行したことを契機として、「閾値以下」を送信レート制御部132に通知する。
送信レート制御部132は、輻輳通知受信部12と再送率監視部131とから入力される情報に基づき、再送率の高い移動局に対する送信レートの制御を行う。輻輳通知受信部12から輻輳の発生が通知された場合、輻輳の発生しているセクタに収容され、かつ、再送率が上限閾値を超過した移動局を対象として、レート制御を実行する。このレート制御は、疎通レートの上限値に対する割合で実行される。ここで、疎通レートとは、移動局の使用可能な全回線帯域である。例えば、疎通レートの上限値が1Mbpsであり、かつ、高再送率移動局に対するレート制御の割合が50%と規定されている場合、疎通レートの上限値は、0.5Mbpsに低減制御される。また、送信レート制御部132は、輻輳通知受信部12から非輻輳が通知された場合、上述のレート制御を解除する。IuIF部14は、コアネットワークN1へのパケット送信処理、及びコアネットワークN1から送信されるパケットの受信処理を実行する。
続いて、基地局としてのBTSの構成を説明するが、以降、説明の便宜上、BTS20−1、20−2、…、20−nを纏めて、BTS20と記載するものとする。BTS20は、無線IF部21と、輻輳監視部22と、輻輳通知送信部23と、IubIF部24とを有する。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能な様に接続されている。無線IF部21は、移動局UE1〜UE6に対するパケットの送信処理(例えば、デジタル信号から無線信号への変換処理)と、移動局UE1〜UE6から送信されたパケットの受信処理(例えば、無線信号からデジタル信号への変換処理)とを実行する。輻輳監視部22は、BTS20の輻輳状態をセクタ毎に監視する。例えば、輻輳監視部22は、セクタAが輻輳発生状態にあると判定した場合、輻輳通知送信部23に対し、「輻輳発生」と、輻輳の発生したセクタの識別子である「A」とを通知する。輻輳監視部22は、非輻輳状態と判定した場合にも同様に、輻輳通知送信部23に「非輻輳」を通知する。輻輳通知送信部23は、輻輳監視部22から輻輳状態または非輻輳状態の通知を受けると、該状態を示す輻輳通知パケットP1を、RNC10に送信する。IubIF部24は、RNCへのパケット送信処理、及びRNCから送信されるパケットの受信処理を実行する。
図3は、BTS20からRNC10へ送信される輻輳通知パケットP1のフレームフォーマットを示す図である。図3に示す様に、輻輳通知パケットP1には、輻輳状態格納領域P1aと輻輳箇所格納領域P1bとセクタ番号格納領域P1cとが設けられている。輻輳状態格納領域P1aは、BTS20からRNC10へ通知される状態が、非輻輳状態(通常状態)と輻輳発生状態との内、何れの状態であるかを示す情報格納領域である。例えば、輻輳状態格納領域P1aに“0”の値が設定されている場合には、通知される輻輳状態は「非輻輳状態」であり、“1”の値が設定されている場合には、通知される輻輳状態は「輻輳発生状態」である。輻輳箇所格納領域P1bは、輻輳状態が「輻輳発生状態」である場合に、輻輳の発生している箇所(輻輳箇所)を示す情報格納領域である。例えば、輻輳箇所格納領域P1bに“0”の値が設定されている場合には、輻輳箇所は「BTS」であり、“1”の値が設定されている場合には、輻輳箇所は「セクタ」である。セクタ番号格納領域P1cは、輻輳の発生しているセクタの識別番号を示す情報格納領域である。例えば、セクタ番号格納領域P1cに“♯2”の値が設定されている場合には、「BTS20−1のセクタC」に輻輳が発生していることを示し、“♯4〜♯6”の値が設定されている場合には、「BTS20−2のセクタE、F、G」に輻輳が発生していることを示す。RNC10は、BTS20から受信された輻輳通知パケットP1を参照することで、何れのBTSの何れのセクタが如何なる輻輳状態にあるかを容易に把握することができる。
次に、図4及び図5を参照して、無線通信システム1のハードウェア構成を説明する。図4は、RNC10のハードウェア構成を示す図である。図4に示す様に、RNC10は、ハードウェアの構成要素として、IubIF10aとプロセッサ10bとメモリ10cと電子回路10dとIuIF10eとを有する。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能な様に接続されている。
IubIF10aは、有線回線によりBTS20と有線通信を行うためのインタフェース装置である。プロセッサ10bは、データを処理する装置であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等を含む。メモリ10cは、データを記憶する装置であり、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含む。電子回路10dは、例えば、LSI(Large Scale Integration)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を含む。IuIF10eは、網側ネットワークに接続された有線回線を介して、コアネットワークの上位装置(例えば、xGSN:serving/gateway GPRS Support Node)と有線通信を行うためのインタフェース装置である。
また、RNC10の機能構成とハードウェア構成との対応関係につき、IubIF部11は、上述したIubIF10aにより実現される。輻輳通知受信部12と再送率監視部131と送信レート制御部132とは、上述したプロセッサ10bによりそれぞれ実現される。IuIF部14は、上述したIuIF10eにより実現される。
図5は、BTS20のハードウェア構成を示す図である。図5に示す様に、BTS20は、ハードウェアの構成要素として、無線IF20aとプロセッサ20bとメモリ20cと電子回路20dとIubIF20eとを有する。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能な様に接続されている。
無線IF20aは、移動局UE1〜UE6と無線通信を行うためのインタフェース装置であり、例えば、アンテナA1を含む。プロセッサ20bは、データを処理する装置であり、例えば、CPU、DSP等を含む。メモリ20cは、データを記憶する装置であり、例えば、RAM、ROM等を含む。電子回路20dは、例えば、LSI、FPGA、ASIC等を含む。IubIF20eは、有線回線によりRNC10と有線通信を行うためのインタフェース装置である。
また、BTS20の機能構成とハードウェア構成との対応関係につき、無線IF部21は、上述した無線IF20aにより実現される。輻輳監視部22と輻輳通知送信部23とは、上述したプロセッサ20bによりそれぞれ実現される。IubIF部24は、上述したIubIF20eにより実現される。
ここで、動作説明の前提として、レート制御の契機となるRLC再送率、及び輻輳状態通知の契機となる送信バッファの滞留量(以下、「送信バッファ滞留量」と記す。)について、説明する。図6Aは、RNC10のメモリ10cに保持されるRLC再送率閾値参照テーブルT1内のデータ格納例を示す図である。RLC再送率は、RLC PDU(Protocol Data Unit)単位での送信PDU数に対する再送PDU数の比率である。例えば、BTS20がUE1に対して100個のRLC PDUを送信した場合に、100個の内20個が到達せず、再送RLC PDU数が20個であった場合には、RLC再送率は、“20%”となる。このRLC再送率は、所定時間(例えば、過去1s)の間に送信されたRLC PDUを対象として算出され、所定周期(例えば、100ms周期)で算出される。
図6Aに示す様に、RLC再送率閾値参照テーブルT1には、レート制御を開始する契機となる「RLC再送率」の上限閾値として“30%”が設定され、レート制御を解除する契機となる「RLC再送率」の下限閾値として“15%”が設定されている。また、“30%”の上限閾値に対応付けられて、“50%”の「レート制御率」が設定されている。従って、RNC10の送信レート制御部132は、再送率監視部131から、移動局UE1のRLC再送率が“30%”を超過したことの通知を受けると、該移動局UE1に対し、レートを“50%”低下させる制御を行う。これに対し、“レート制御なし”が、“15%”の下限閾値に対応付けられて設定されている。従って、RNC10の送信レート制御部132は、再送率監視部131から、移動局UE1のRLC再送率が“15%”以下となったことの通知を受けると、該移動局UE1に対するレート制御を終了(解除)する。その結果、移動局UE1の「レート制御率」は、“50%”から、初期値である“100%”に戻る。なお、RLC再送率閾値参照テーブルT1における各設定値は、RLC再送率が上限閾値を超過した移動局の数やトラフィック量、あるいは無線通信システム1の収容可能容量等に応じて、適宜変更可能である。
図6Bは、BTS20のメモリ20cに保持される輻輳状態閾値参照テーブルT2内のデータ格納例を示す図である。セクタ単位の輻輳状態は、BTS20がセクタ単位で使用する送信バッファ滞留量により定義される。図6Bに示す様に、輻輳状態閾値参照テーブルT2には、セクタ単位の送信バッファ滞留量の上限閾値を表す“輻輳発生閾値”として“80%”が設定されており、上記送信バッファ滞留量の下限閾値を表す“非輻輳閾値”として“30%”が設定されている。BTS20の輻輳監視部22は、送信バッファ滞留量を所定周期(例えば、100ms)で監視する。輻輳監視部22は、所定回数(例えば、3周期)連続で、セクタ単位の送信バッファ滞留量が、輻輳発生閾値の“80%”を超過した場合、“輻輳発生状態”と判定する。一方、輻輳監視部22は、“輻輳発生状態”時において所定回数(例えば、3周期)連続で、セクタ単位の送信バッファ滞留量が、非輻輳閾値の“30%”以下となった場合、“非輻輳状態”と判定する。なお、輻輳状態閾値参照テーブルT2における各設定値は、送信バッファ滞留量が輻輳発生閾値(上限閾値)を超過したセクタの数やトラフィック量、あるいは送信バッファ容量等に応じて、適宜変更可能である。
次に、無線通信システム1の動作を説明する。説明の前提として、本実施例では、特に、図2に示したセクタBの輻輳状態が“非輻輳状態”から“輻輳発生状態”に遷移した後に、再び“非輻輳状態”に遷移する場合を想定し、無線通信システム1が、移動局UE3に対するレート制御を実行する際の動作シーケンスについて説明する。図7は、実施例1に係る無線通信システム1の動作を説明するためのシーケンス図である。図7において斜線の施されたセクタB内の移動局UE3が、本動作シーケンスにおいて、送信レート低減制御の対象となる。
まずS101では、コアネットワークN1と各移動局UE1〜UE6とは、RNC10とBTS20とを介して、パケットの送受信を行っている。各移動局UE1、UE2は、BTS20の通信エリア(セル)の一部を構成するセクタAにそれぞれ在圏する。同様に、各移動局UE3、UE4はセクタBにそれぞれ在圏し、各移動局UE5、UE6はセクタCにそれぞれ在圏する。S102でコアネットワークN1から送出された移動局UE3宛のパケットは、RNC10とBTS20とを経由して、セクタBに在圏する移動局UE3に到達する(S103)。このとき、セクタBの輻輳状態は“非輻輳状態”であるため、送信レート制御部132によるレート制御は実行されていない。
その後、セクタBに輻輳が発生し、BTS20の輻輳監視部22が、セクタBで発生した輻輳を検知すると(S104)、輻輳監視部22は、輻輳通知送信部23に対し、輻輳通知パケットP1(図7のドット部分)の送信を指示する。輻輳通知送信部23は、該指示に従い、輻輳通知パケットP1をRNC10宛に送信する(S105)。輻輳通知パケットP1には、輻輳状態P1aとして“輻輳発生”状態が、輻輳箇所P1bとして“セクタ”が、セクタ番号P1cとして“B”がそれぞれ設定されている。
RNC10は、輻輳通知受信部12により輻輳通知パケットP1を受信すると、該受信により輻輳の発生を検知する。次に、輻輳通知受信部12は、輻輳通知パケットP1の解析結果として、セクタBにおける輻輳の発生を、送信レート制御部132に通知する(S106)。該通知を受けた送信レート制御部132は、BTS20のセクタBが現在輻輳発生状態にあることを検知し、その結果、セクタBに収容されている移動局UE3、UE4が、レート制御対象の候補となる。
S107では、RNC10の再送率監視部131は、送信レート制御部132に対し、移動局UE3のRLC再送率が上限閾値を超過したことを通知する。これにより、送信レート制御部132は、セクタB配下の移動局UE3が再送率の上限閾値を超過したことを検知し、その結果、上記レート制御対象の候補(移動局UE3、UE4)の内、移動局UE3が、レート制御の対象となる移動局に決定される。
以降、コアネットワークN1から送出される移動局UE3宛のパケットがRNC10により受信されると(S108)、送信レート制御部132は、S103での送信レートと比較して低いレート(例えば、50%)により、移動局UE3宛のパケットを、IubIF部11に送信させる(S109)。
なお、移動局UE4は、移動局UE3と同様、輻輳発生状態にあるセクタBに在圏することから、レート制御対象であるが、RLC再送率が上限閾値を超えていないため、移動局UE4に対するレート制御は実行されない。
S110では、RNC10の再送率監視部131が、移動局UE3のRLC再送率が下限閾値以下となったことを送信レート制御部132に通知する。これに伴い、RNC10は、コアネットワークN1から新たに受信されたパケットを移動局UE3に転送する際(S111)、S109で開始された移動局UE3に対するレート制御を解除する(S112)。これにより、RNC10から移動局UE3へのパケットの送信レートは、例えばレート制御率50%に低減された状態から、レート制御率100%の初期状態に戻る。
その後、RNC10の再送率監視部131が、送信レート制御部132に対し、再び、移動局UE3のRLC再送率が上限閾値を超過したことを通知すると(S113)、送信レート制御部132は、移動局UE3を、レート制御の対象移動局に決定する。以降、RNC10がコアネットワークN1から受信した(S114)移動局UE3宛のパケットは、送信レート制御部132により低減制御された低いレート(例えば、50%)で、RNC10のIubIF部11から移動局UE3に向けて送出される(S115)。
その後、セクタBの輻輳が解消し、BTS20の輻輳監視部22が、セクタBの非輻輳状態を検知すると(S116)、輻輳監視部22は、輻輳通知送信部23に対し、輻輳通知パケットP1の送信を指示する。輻輳通知送信部23は、該指示に従い、輻輳通知パケットP1をRNC10宛に送信する(S117)。輻輳通知パケットP1には、S105と異なり輻輳状態P1aとして“非輻輳”状態が、輻輳箇所P1bとして“セクタ”が、セクタ番号P1cとして“B”がそれぞれ設定されている。
RNC10は、輻輳通知受信部12により輻輳通知パケットP1を受信すると、該受信により輻輳の解消を検知する。次に、輻輳通知受信部12は、輻輳通知パケットP1の解析結果として、セクタBにおける輻輳の解消を、送信レート制御部132に通知する(S118)。該通知を受けた送信レート制御部132は、BTS20のセクタBが現在非輻輳状態にあることを検知する。その結果、現在セクタBに収容されている移動局UE3、UE4は共に、レート制御対象の候補から除外される。
以降、RNC10は、コアネットワークN1から新たに受信されたパケットを移動局UE3に転送する際(S119)、S115で開始された移動局UE3に対するレート制御を解除し(S120)、輻輳発生前と同一のレート(レート制御率100%)で、移動局UE3へのパケット送信を行う。
図8は、実施例1における、セクタBの輻輳状態と移動局UE3のRLC再送率とに応じたレート制御の有無をタイミング毎に示す図である。図8に示す様に、図7に示した制御タイミングt11〜t16の内、「セクタBの輻輳状態」が“非輻輳”状態であるタイミングt11、t16、あるいは、「移動局UE3のRLC再送率」が“上限閾値以下”であるタイミングt11、t12、t14では、レート制御は実行されず、タイミングt13、t15においてのみレート制御が実行される。すなわち、RNC10の送信レート制御部132は、「セクタBの輻輳状態」が“輻輳発生”状態であり、かつ、「移動局UE3のRLC再送率」が“上限閾値超過”である場合に、移動局UE3宛のパケットの送信レートを低減させる制御を行う。
以上説明した様に、実施例1に係る無線通信システム1は、RNC10と、RNC10と通信するBTS20とを有する。BTS20の輻輳通知送信部23は、移動局UE3の在圏するセクタBにおける輻輳の発生をRNC10に通知する。RNC10は、輻輳通知受信部12と再送率監視部131と送信レート制御部132とを有する。輻輳通知受信部12は、BTS20からの上記通知により、上記輻輳の発生を検知する。再送率監視部131は、移動局UE3へのパケットの再送率を監視する。送信レート制御部132は、輻輳通知受信部12により上記輻輳の発生が検知された場合、上記再送率に応じて、移動局UE3へのパケットの送信レート(送信速度)を変更する制御を行う。送信レート制御部132は、例えば、上記再送率が高い程、上記送信レートが低くなる様に、移動局UE3に対する制御を行う。
上述した様に、無線通信システム1は、RLC再送率を移動局毎に監視し、RLC再送率が所定の上限閾値を超過した移動局のレート制御を実行する。このとき、無線通信システム1は、回線が輻輳状態でない場合にまでレート制御を実行すると、各移動局UE1〜UE6の実効レートが低下するのみでメリットが生じないため、回線が輻輳状態である対象についてのみ、RLC再送率に応じたレート制御を実行する。具体的には、無線通信システム1は、RLC再送率が高い移動局のパケットレートの上限値を、一定の割合で低減制御する。その後、パケットレートが低減された状態でRLC再送率が低下し、下限閾値以下となった場合、無線通信システム1は、該当する移動局のパケットレートの低減制御を解除する。また、無線通信システム1は、制御対象が輻輳状態から通常状態に復帰した場合にも、レート制御を解除する。
以下、図9、図10を参照して、無線通信システム1の奏する効果を説明する。無線通信システム1は、セクタ、BTS10、RNC20の内、所定範囲(本実施例では特にセクタ)毎に輻輳を監視し、輻輳が有る場合には、該範囲内の高再送率移動局に対してレート制御を実行する。これにより、無線通信システム1は、RNC20と移動局UE1〜UE6との間の回線帯域に占める再送パケットの割合を低減することができる。その結果、回線の利用効率を向上することが可能となる。
図9は、レート制御の前後における実効レートを再送率の異なる移動局毎に比較した図である。図10は、レート制御の前後における実効レートを回線単位で比較した図である。図9及び図10において、上述の疎通レート(移動局の使用可能な全回線帯域)は、実効レートと再送レートとの合計値により表される。これら何れの図においても、RLC再送率の高い移動局のパケットレートの低減に伴い、低減した分、使用可能な無線帯域に余裕が生じる。このため、無線通信システム1は、該無線帯域を、レート制御の対象となっていない低再送率の移動局に割り当てることができる。その結果、図9及び図10に示す様に、疎通レートに占める再送レートの比率は制御前よりも減少し、その分実行レートが増加することとなる。
具体的には、図9に示す様に、高再送率の移動局に関し、再送率が50%の場合を想定すると、疎通レートが1.5Mbpsである場合の再送レートは、0.5Mbpsと算出される。従って、残りの1.0Mbps(=1.5Mbps−0.5Mbps)が、高再送率の移動局の使用する実効レートとなる。低再送率の移動局に関しても同様に、再送率が5%と想定すると、疎通レートが1.5Mbpsである場合の再送レートは、約0.07Mbpsと算出される。従って、残りの約1.43Mbpsが、低再送率の移動局の使用する実効レートとなる。その後、RNC10のRLC制御部13が、高再送率移動局の疎通レートを従前の1/3に低減する制御を行う。該制御後においても再送率(50%、5%)は維持されるため、1/3の低減制御に伴い、高再送率の移動局の再送レートは、約0.17Mbpsに減少する。一方、低再送率の移動局の再送レートは約0.12Mbpsに増加するものの、実効レートも約1.43Mbpsから約2.38Mbpsに増加するため、全体として、実効レートは、増加することとなる。すなわち、実効レートの割合の高い低再送率移動局の実効レートの増加幅が、実効レートの割合の低い高再送率移動局の実効レートの減少幅を上回るため、全回線帯域(疎通レート)に占める実効レートの比率は、上昇することとなる。
より具体的には、図10に示す様に、高再送率移動局に対する低減制御を実行する前は、約2.43Mbpsであった実効レートは、低減制御の実行後には、約2.71Mbpsまで増加することとなる。併せて、全回線帯域(疎通レート)に占める実効レートの比率についても、上記低減制御の実行後には、従前の約0.81(=2.43÷3.0)から、約0.90(=2.71÷3.0)に上昇することとなる。これに伴い、再送率は、従前の約23%から約11%に減少することとなる。従って、全回線帯域の内、パケットの再送に使用される回線帯域は減少し、その減少分を、通常のパケット送信に使用される回線帯域に充当することが可能となる。その結果、回線の利用効率が向上する。
次に、実施例2について説明する。実施例2に係る無線通信システムの構成は、図2に示した実施例1における無線通信システムの構成と同様である。また、実施例2におけるRNC、BTSの各構成は、図2に示した実施例1におけるRNC10、BTS20の各構成と同様である。図11は、実施例2に係る無線通信システム1の機能構成を示す図である。図11に示す様に、実施例2では、実施例1と共通する構成要素には、同一の参照符号を用いると共に、その詳細な説明は省略する。但し、実施例2では、BTSが複数存在するため、各BTS及びその構成要素の参照番号の末尾に識別番号を付し、例えば、BTS20−1、20−2、輻輳監視部22−1、22−2と記載する。実施例2が実施例1と異なる点は、輻輳状態の検知対象となる領域である。具体的には、実施例1では、輻輳状態の検知対象は、セクタ(無線帯域)であり、RNC10は、セクタ単位で、輻輳状態が輻輳発生状態、非輻輳状態の何れであるかを検知するものとした。これに対し、実施例2では、輻輳状態の検知対象は、BTS自体であり、RNC10は、輻輳状態が何れの状態であるかを、BTS毎に検知する。
RLC再送率閾値参照テーブルの構成については、実施例1と同様である(図6A参照)ため、その説明は省略する。図12は、BTS20−1のメモリ20c−1に保持される輻輳状態閾値参照テーブルT3内のデータ格納例を示す図である。BTS単位の輻輳状態は、BTS20−1がRNC10から受信するパケットのバッファ滞留量(以下、「受信バッファ滞留量」と記す。)により定義される。図12に示す様に、輻輳状態閾値参照テーブルT3には、BTS単位の受信バッファ滞留量の上限閾値を表す“輻輳発生閾値”として“60%”が設定されており、上記受信バッファ滞留量の下限閾値を表す“非輻輳閾値”として“20%”が設定されている。BTS20−1の輻輳監視部22−1は、受信バッファ滞留量を所定周期(例えば、100ms)で監視する。輻輳監視部22−1は、所定回数(例えば、3周期)連続で、BTS単位の受信バッファ滞留量が、輻輳発生閾値の“60%”を超過した場合、“輻輳発生状態”と判定する。一方、輻輳監視部22−1は、“輻輳発生状態”時において所定回数(例えば、3周期)連続で、BTS単位の受信バッファ滞留量が、非輻輳閾値の“20%”以下となった場合、“非輻輳状態”と判定する。なお、輻輳状態閾値参照テーブルT3における各設定値は、受信バッファ滞留量が輻輳発生閾値(上限閾値)を超過したBTSの数や各BTSのトラフィック量、あるいは受信バッファ容量等に応じて、適宜変更可能である。
次に、実施例2における無線通信システム1の動作を、実施例1との相違点を中心として説明する。説明の前提として、本実施例では、特に、図11に示したセクタE、Fを通信エリアとするBTS20−2の輻輳状態が“非輻輳状態”から“輻輳発生状態”に遷移した後に、再び“非輻輳状態”に遷移する場合を想定し、無線通信システム1が、移動局UE4に対するレート制御を実行する際の動作シーケンスについて説明する。図13は、実施例2に係る無線通信システム1の動作を説明するためのシーケンス図である。図13において斜線の施されたセクタE、Fの内、セクタE内の移動局UE4が、本動作シーケンスにおいて、送信レート低減制御の対象となる。
図13は、実施例1に係る動作の説明において参照した図7と、同様の処理を含むことから、共通するステップには、末尾が同一の参照符号を付すと共に、その詳細な説明は省略する。具体的には、図13のステップS201〜S220の各処理は、図7に示したステップS101〜S120の各処理にそれぞれ対応する。
S205では、輻輳通知送信部23−2は、輻輳監視部22−2からの輻輳通知パケットP2(図13のドット部分)送信指示に従い、輻輳通知パケットP2をRNC10宛に送信する(S205)。輻輳通知パケットP2には、輻輳状態P2aとして“輻輳発生”状態が、輻輳箇所P2bとして“BTS”がそれぞれ設定されている。RNC10は、輻輳通知受信部12により輻輳通知パケットP2を受信すると、該受信により輻輳の発生を検知する。次に、輻輳通知受信部12は、輻輳通知パケットP2の解析結果として、BTS20−2における輻輳の発生を、送信レート制御部132に通知する(S206)。該通知を受けた送信レート制御部132は、BTS20−2自体が現在輻輳発生状態にあることを検知し、その結果、BTS20−2に収容されている移動局UE4〜UE6が、レート制御対象の候補となる。なお、非輻輳状態の通知に際しても、上述した輻輳発生状態の通知と同様の処理が実行される(S217、S218)。
移動局UE4以外の移動局UE1〜UE3、UE5、UE6は、移動局UE4と同様、輻輳発生状態にあるBTS20−2のセルに在圏することから、レート制御対象ではあるが、RLC再送率が上限閾値を超えていない。このため、RNC10の送信レート制御部132は、他の移動局UE1〜UE3、UE5、UE6に対するレート制御を実行しない。
図14は、実施例2における、BTS20−2の輻輳状態と移動局UE4のRLC再送率とに応じたレート制御の有無をタイミング毎に示す図である。図14に示す様に、図13に示した制御タイミングt21〜t26の内、「BTS20−2の輻輳状態」が“非輻輳”状態であるタイミングt21、t26、あるいは、「移動局UE4のRLC再送率」が“上限閾値以下”であるタイミングt21、t22、t24では、レート制御は実行されず、タイミングt23、t25においてのみレート制御が実行される。すなわち、RNC10の送信レート制御部132は、「BTS20−2の輻輳状態」が“輻輳発生”状態であり、かつ、「移動局UE4のRLC再送率」が“上限閾値超過”である場合に、移動局UE4宛のパケットの送信レートを低減させる制御を行う。
以上説明した様に、実施例2に係る無線通信システム1によれば、セクタ単位の輻輳状態に限らず、BTS単位で検知及び通知された輻輳状態を基に、再送率の高い移動局に対するレート制御を実行及び解除することができる。
次に、実施例3について説明する。実施例3に係る無線通信システムの構成は、RNC10が、輻輳通知受信部12に代わり輻輳監視部15を有し、自装置の輻輳を自ら監視する点を除き、図2に示した実施例1における無線通信システムの構成と同様である。図15は、実施例3に係る無線通信システム1の機能構成を示す図である。図15に示す様に、実施例3では、実施例1と共通する構成要素には、同一の参照符号を用いると共に、その詳細な説明は省略する。但し、実施例3では、BTSが複数存在するため、各BTS及びその構成要素の参照番号の末尾に識別番号を付し、例えば、BTS20−1、20−2、20−3と記載する。実施例3が実施例1、2と異なる点は、輻輳状態の検知対象となる領域である。具体的には、実施例1では、輻輳状態の検知対象は、セクタ(無線帯域)であり、RNC10は、セクタ単位で、輻輳状態が輻輳発生状態、非輻輳状態の何れであるかを検知するものとした。また、実施例2では、輻輳状態の検知対象は、BTS自体であり、RNC10は、輻輳状態が何れの状態であるかを、BTS毎に検知するものとした。これに対し、実施例3では、輻輳状態の検知対象は、RNC単位であり、RNC10は、RNC10自体の輻輳状態が何れの状態であるかを検知する。
本実施例3に係るRNC10は、BTS20−1、20−2、20−3を含む多数(例えば、100台程度)のBTSを配下に有線接続する。RNC10は、IubIF部11と、輻輳監視部15と、RLC制御部13と、IuIF部14とを有する。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能な様に接続されている。IubIF部11は、BTSに対するパケット送信処理、及びBTSからのパケット受信処理を実行する。輻輳監視部15は、自RNC装置の輻輳状態を監視し、輻輳が発生した場合または輻輳発生状態が解消した場合に、送信レート制御部132に対し、その旨の通知を行う。
RLC制御部13は、再送率監視部131と送信レート制御部132とを有する。再送率監視部131は、RLC再送率を移動局毎に監視し、該再送率と所定の閾値との比較結果を、監視結果として送信レート制御部132に通知する。例えば、再送率監視部131は、上限閾値と下限閾値とを設定しておき、上記再送率が上限閾値を超過した場合、「閾値超過」を送信レート制御部132に通知する。一方、再送率監視部131は、上記再送率が閾値超過の状態から下限閾値以下に低下したことを契機として、「閾値以下」を送信レート制御部132に通知する。
送信レート制御部132は、輻輳監視部15から入力される情報に基づき、再送率の高い移動局に対する送信レートの制御を行う。輻輳監視部15から“輻輳発生状態”が通知された場合、RNC10に収容され、かつ、再送率が上限閾値を超過した移動局を対象として、レート制御を実行する。このレート制御は、実施例1と同様、上述した疎通レートの上限値に対する割合で実行される。また、送信レート制御部132は、輻輳監視部15から“非輻輳状態”が通知された場合、上述のレート制御を解除する。IuIF部14は、コアネットワークN1へのパケット送信処理、及びコアネットワークN1から送信されるパケットの受信処理を実行する。
RLC再送率閾値参照テーブルの構成については、実施例1と同様である(図6A参照)ので、その説明は省略する。図16は、RNC10のメモリ10cに保持される輻輳状態閾値参照テーブルT4内のデータ格納例を示す図である。RNC単位の輻輳状態は、RNC10がコアネットワークN1から受信するパケットの受信バッファ滞留量により定義される。図16に示す様に、輻輳状態閾値参照テーブルT4には、RNC単位の受信バッファ滞留量の上限閾値を示す“輻輳発生閾値”として“50%”が設定されており、上記受信バッファ滞留量の下限閾値を示す“非輻輳閾値”として“10%”が設定されている。RNC10の輻輳監視部15は、受信バッファ滞留量を所定周期(例えば、100ms)で監視する。輻輳監視部15は、所定回数(例えば、3周期)連続で、上記受信バッファ滞留量が、上限閾値としての輻輳発生閾値“50%”を超過した場合、“輻輳発生状態”と判定する。一方、輻輳監視部15は、“輻輳発生状態”時において所定回数(例えば、3周期)連続で、上記受信バッファ滞留量が、下限閾値としての非輻輳閾値“10%”以下となった場合、“非輻輳状態”と判定する。なお、輻輳状態閾値参照テーブルT4における各設定値は、RNC10のトラフィック量や、受信バッファの容量等に応じて、適宜変更可能である。
次に、実施例3における無線通信システム1の動作を、実施例1との相違点を中心として説明する。説明の前提として、本実施例では、特に、図15に示したBTS20−1、20−2、20−3を配下に有するRNC10の輻輳状態が“非輻輳状態”から“輻輳発生状態”に遷移した後に、再び“非輻輳状態”に遷移する場合を想定する。そして、無線通信システム1が、BTS20−3のセルに在圏する移動局UE5に対してレート制御を実行する際の動作シーケンスについて説明する。図17は、実施例3に係る無線通信システム1の動作を説明するためのシーケンス図である。図17において斜線の施されたRNC10の収容する全ての移動局の内、特にRLC再送率の高い移動局UE5が、本動作シーケンスにおいて、送信レート低減制御の対象となる。
実施例3における無線通信システム1の動作は、輻輳状態を監視する主体が、BTS20の輻輳監視部22(図7参照)からRNC10の輻輳監視部15に変更となる点を除き、実施例1と同様である。すなわち、図17は、実施例1に係る動作の説明において参照した図7と、同様の処理を含むことから、共通するステップには、末尾が同一の参照符号を付すと共に、その詳細な説明は省略する。具体的には、図17のステップS301〜S304、S307〜S316、S319、S320の各処理は、図7に示したステップS101〜S104、S107〜S116、S119、S120の各処理にそれぞれ対応する。
S304では、RNC10の輻輳監視部15は、輻輳状態の監視により輻輳の発生を検知すると、RNC10における輻輳の発生を、送信レート制御部132に通知する。該通知を受けた送信レート制御部132は、RNC10自体が現在輻輳発生状態にあることを検知し、その結果、RNC10に収容されている移動局UE1〜UE6が、レート制御対象の候補となる。この様に、実施例3では、BTS20−1、20−2、20−3からの輻輳状態の通知は不要となる。なお、非輻輳状態の通知に際しても、上述した輻輳発生状態の通知と同様の処理が実行される(S316)。
移動局UE5以外の移動局UE1〜UE4、UE6は、移動局UE5と同様、輻輳発生状態にあるRNC10配下の領域に在圏することから、レート制御対象ではあるが、RLC再送率が上限閾値を超えていない。このため、RNC10の送信レート制御部132は、他の移動局UE1〜UE4、UE6に対するレート制御を実行しない。
図18は、実施例3における、RNC10の輻輳状態と移動局UE5のRLC再送率とに応じたレート制御の有無をタイミング毎に示す図である。図18に示す様に、図17に示した制御タイミングt31〜t36の内、「RNC10の輻輳状態」が“非輻輳”状態であるタイミングt31、t36、あるいは、「移動局UE5のRLC再送率」が“上限閾値以下”であるタイミングt31、t32、t34では、レート制御は実行されず、タイミングt33、t35においてのみレート制御が実行される。すなわち、RNC10の送信レート制御部132は、上述した様に、「RNC10の輻輳状態」が“輻輳発生”状態であり、かつ、「移動局UE5のRLC再送率」が“上限閾値超過”である場合に、移動局UE5宛のパケットの送信レートを低減させる制御を行う。
以上説明した様に、実施例3に係る無線通信システム1によれば、セクタ単位、BTS単位の輻輳状態に限らず、RNC単位で検知及び通知された輻輳状態を基に、再送率の高い移動局に対するレート制御を実行及び解除することができる。
上述した様に、無線通信システム1において、輻輳通知受信部12は、各移動局UE1〜UE6の接続する各BTS20−1、20−2、20−3のセクタ単位、または、各BTS20−1、20−2、20−3単位、または、RNC10単位で、上記輻輳の発生を検知する。すなわち、パケットレートの低減制御に先立ち輻輳状態を監視する対象は、セクタ単位、BTS単位、RNC単位の何れかを任意に選択及び変更可能であり、何れが選択されるかによって、レート制御の対象となる移動局のユーザは異なる。図19は、輻輳箇所に応じたレート制御の対象範囲を説明するための図である。図19に示す様に、例えば、BTS20−1のセルの内、セクタAが輻輳している場合(C1参照)、無線通信システム1は、セクタAに収容されている移動局のみをレート制御対象とする。すなわち、同一のBTS20−1に収容されている移動局であっても、セクタA以外のセクタB、C、D内に在圏する移動局は、制御対象としない。同様に、例えば、BTS20−2自体が輻輳している場合(C2参照)、無線通信システム1は、BTS20−2の形成する全てのセクタE〜Hに収容されている移動局をレート制御対象とする。換言すれば、同一のRNC10配下に接続されたBTSに収容されている移動局であっても、BTS20−2以外のBTS20−1の形成セルに在圏する移動局は、制御対象とはならない。また、RNC10自体が輻輳している場合(C3参照)には、RNC10の収容する全ての移動局(セクタA〜Hに在圏する移動局)が、RLC再送率によるレート低減制御の対象となる。
なお、図19では、各BTS20−1、20−2毎に、4つのセクタが形成される場合を例示したが、セクタの数は、4に限らず、任意の値を採ることができる。
次に、実施例4について説明する。実施例4に係る無線通信システムの構成は、RNC10が、無線通信品質監視部16を新たに有する点を除き、図2に示した実施例1における無線通信システムの構成と同様である。図20は、実施例4に係る無線通信システム1の機能構成を示す図である。図20に示す様に、実施例4では、実施例1と共通する構成要素には、同一の参照符号を用いると共に、その詳細な説明は省略する。実施例4が実施例1と異なる点は、RNC10が、BTS20と移動局UE1〜UE6との間の無線区間の伝送品質(以下、「無線通信品質」と記す。)の監視を行う点である。具体的には、実施例1では、RNC10は、輻輳状態にある領域内の移動局の内、再送率が上限閾値を超える移動局をレート制御の対象とした。これに対し、実施例4では、RNC10は、再送率が上限閾値を超える移動局の全てをレート制御の対象とするのではなく、これらの移動局の内、無線通信品質が上限閾値以上の移動局については、レート制御の対象から除外する制御を行う。
本実施例4に係るRNC10は、BTS20を含む複数のBTSを配下に有線接続する。RNC10は、IubIF部11と、輻輳通知受信部12と、RLC制御部13と、IuIF部14と、無線通信品質監視部16とを有する。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能な様に接続されている。IubIF部11は、BTS20に対するパケット送信処理、及びBTS20からのパケット受信処理を実行する。輻輳通知受信部12は、輻輳通知パケットP3をBTS20から受信した場合、輻輳状態と該輻輳状態の監視対象の領域情報(例えば、セクタ、BTSの識別番号)とを解析し、該解析結果を、送信レート制御部132に通知する。
RLC制御部13は、再送率監視部131と送信レート制御部132とを有する。再送率監視部131は、RLC再送率を移動局毎に監視し、該再送率と所定の閾値との比較結果を、監視結果として送信レート制御部132に通知する。例えば、再送率監視部131は、上限閾値と下限閾値とを設定しておき、上記再送率が上限閾値を超過した場合、「閾値超過」を送信レート制御部132に通知する。一方、再送率監視部131は、上記再送率が閾値超過の状態から下限閾値以下に低下した場合、「閾値以下」を送信レート制御部132に通知する。送信レート制御部132は、輻輳通知受信部12と再送率監視部131とから入力される情報に基づき、再送率の高い移動局に対する送信レートの制御を行う。輻輳通知受信部12から“セクタBの輻輳発生状態”が通知された場合、セクタBに収容され、かつ、再送率が上限閾値を超過した移動局を対象として、レート制御を実行する。このレート制御は、実施例1と同様、上述した疎通レートの上限値に対する割合で実行される。また、送信レート制御部132は、輻輳通知受信部12から“セクタBの非輻輳状態”が通知された場合、上述のレート制御を解除する。IuIF部14は、コアネットワークN1へのパケット送信処理、及びコアネットワークN1から送信されるパケットの受信処理を実行する。
無線通信品質監視部16は、監視対象の移動局から通知される無線通信品質(例えば、Ec/NO:Energy chip/NOise)が上限閾値以上である場合、送信レート制御部132に対し、「閾値以上」を通知する。一方、無線通信品質監視部16は、上記無線通信品質が下限閾値以下である場合、送信レート制御部132に対し、「閾値以下」を通知する。例えば、無線通信品質を表す指標としては、上記Ec/NOに限らず、受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)、CSI(Channel State Information)、CQI(Channel Quality Indicator)、SIR(Signal to Interference Ratio)等を用いてもよい。
RLC再送率閾値参照テーブル、及び輻輳状態閾値参照テーブルの構成については、実施例1と同様である(図6A、図6B参照)ので、その説明は省略する。図21は、実施例4において、RNC10のメモリ10cに保持される無線通信品質閾値参照テーブルT5内のデータ格納例を示す図である。図21に示す様に、無線通信品質閾値参照テーブルT5には、移動局から通知される無線通信品質の上限閾値を示す“α”が設定されており、上記無線通信品質の下限閾値を示す“β”が設定されている。
RNC10の無線通信品質監視部16は、例えば、移動局UE3とBTS20との間の無線通信品質を監視する。無線通信品質監視部16は、該監視結果としての無線通信品質が上限閾値“α”以上である場合には、移動局UE3をレート制御の対象外とし、上記無線通信品質が上限閾値“α”未満である場合には、移動局UE3をレート制御の対象とする。また、無線通信品質監視部16は、上記無線通信品質が上限閾値“α”以上となった後は、下限閾値“β”以下となるまで継続して、移動局UE3をレート制御の対象から除外する。すなわち、移動局UE3は、上記無線通信品質が一旦上限閾値以上となってから下限閾値以下となるまでの期間、送信レートの低減制御の対象外となるが、該期間以外の間は、送信レートの低減制御の対象となる。なお、無線通信品質閾値参照テーブルT5における各設定値は、無線通信品質が上限閾値以上となった移動局の数やトラフィック量、あるいはBTS20周辺の通信環境(例えば、干渉や障害物の有無、ノイズ等)に応じて、適宜変更可能である。
次に、実施例4における無線通信システム1の動作を、実施例1との相違点を中心として説明する。説明の前提として、本実施例では、特に、図20に示したBTS20を配下に有するRNC10の輻輳状態が“非輻輳状態”から“輻輳発生状態”に遷移した後に、再び“非輻輳状態”に遷移する場合を想定する。そして、無線通信システム1が、BTS20のセルに在圏する移動局UE3に対してレート制御を実行する際の動作シーケンスについて説明する。図22は、実施例4に係る無線通信システム1の動作を説明するためのシーケンス図である。図22において斜線の施されたセクタB内の移動局UE3が、本動作シーケンスにおいて、送信レート低減制御の対象となる。
実施例4における無線通信システム1の動作は、移動局UE3がRNC10に対して無線通信品質(Ec/NO)を通知する点を除き、実施例1と同様である。すなわち、図22は、実施例1に係る動作の説明において参照した図7と、同様の処理を含むことから、共通するステップには、末尾が同一の参照符号を付すと共に、その詳細な説明は省略する。具体的には、図22のステップS401〜S409、S414〜S420の各処理は、図7に示したステップS101〜S109、S114〜S120の各処理にそれぞれ対応する。
S421では、移動局UE3は、自局の測定した無線通信品質をBTS20経由でRNC10に通知する。該通知を受けたRNC10は、無線通信品質監視部16により、移動局UE3の無線通信品質の増減を監視し、該無線通信品質の値が上限閾値α以上となった場合に、その旨を送信レート制御部132に通知する(S422)。移動局UE3による無線通信品質の通知処理は、以降も継続して実行される(S423)。その後、一旦上限閾値α以上となった無線通信品質が、下限閾値β以下となった場合には、RNC10の無線通信品質監視部16は、その旨を送信レート制御部132に通知する(S424)。
ここで、移動局UE3以外の移動局UE1、UE2、UE4〜UE6は、移動局UE3と同様、輻輳発生状態にあるセクタBの領域に在圏することから、レート制御対象ではあるが、RLC再送率が上限閾値を超えていない。このため、RNC10の送信レート制御部132は、他の移動局UE1、UE2、UE4〜UE6に対するレート制御を実行しない。
図23は、実施例4における、セクタBの輻輳状態と移動局UE3のRLC再送率と無線通信品質とに応じたレート制御の有無をタイミング毎に示す図である。図23に示す様に、図22に示した制御タイミングt41〜t46の内、「セクタBの輻輳状態」が“非輻輳”状態であるタイミングt41、t42、t46、あるいは、「移動局UE3のRLC再送率」が“上限閾値以下”であるタイミングt41〜t43、あるいは、「移動局UE3の無線通信品質」が“上限閾値以上”であるタイミングt42〜t44では、レート制御は実行されず、タイミングt45においてのみレート制御が実行される。すなわち、RNC10の送信レート制御部132は、上述した様に、「セクタBの輻輳状態」が“輻輳発生”状態であり、かつ、「移動局UE3のRLC再送率」が“上限閾値超過”であることに加え、「移動局UE3の無線通信品質」が“上限閾値未満”である場合に、移動局UE3宛のパケットの送信レートを低減させる制御を行う。
以上説明した様に、実施例4に係る無線通信システム1によれば、輻輳状態、再送率は元より、移動局UE1〜UE6とBTS20との間の無線通信品質を考慮して、レート低減制御を実行する。例えば、BTS20において移動局UE3宛のパケットが欠落した場合、BTS20、移動局UE3間の無線通信品質が良好であっても、移動局UE3へのパケット送信に再送信が発生することがある。再送率が高いことを理由として、この様な場合にまで、RNC10が、送信レートを低下させるのは、効率的な回線利用を実現する観点から好ましくない。すなわち、上記無線通信品質が良好な場合、再送率の上昇は一過性のものに過ぎないと推測されることから、この様な場合にまで、RNC10が、移動局UE3への送信レートを低下させると、却って、回線帯域に占める実効レートの比率を低下させてしまうこととなる。そこで、本実施例では、RNC10は、上記無線通信品質が上限閾値以上の場合には、再送率が上限閾値を超過した状態でも、瞬間的な再送率の上昇である可能性が高いため、送信レートの変更(増減制御)は行わず、従前の送信レートを維持して、移動局UE3に対するパケット送信を行う。これにより、無線通信システム1は、レート制御に伴うRNC10の処理負荷を抑制しつつ、回線利用効率を向上することができる。その結果、無線通信システム1は、より効果的に、回線利用の効率化を図ることができる。
次に、実施例5について説明する。上述した実施例1〜4では、無線通信方式としてW−CDMAを想定して説明したが、上記各実施例に係る送信レート制御技術は、LTEに対しても適用可能である。すなわち、上述した実施例1〜4に係る送信レート制御技術は、RNC10やBTS20に限らず、LTEにおいてこれらの機能を併せもつeNB(evolutional Node B)によっても実現することができる。
実施例5に係る無線通信システムの構成は、移動局との通信に際してBTSが介在しない点、及びコアネットワークとの通信に際してS−GW(Serving-GateWay)が介在する点を除き、図15に示した実施例3における無線通信システムの構成と同様である。また、実施例5におけるeNBの構成は、図15に示した実施例3におけるRNC10の構成と同様である。図24は、実施例5に係る無線通信システム2の機能構成を示す図である。図24に示す様に、実施例5では、実施例3と共通する構成要素には、末尾が同一の参照符号を用いると共に、その詳細な説明は省略する。具体的には、図24のコアネットワークN2とeNB40と無線IF部41とRLC制御部43とS1IF部44とは、図15に示したコアネットワークN1とRNC10とIubIF部11とRLC制御部13とIuIF部14とに、それぞれ対応する。また、再送率監視部431と送信レート制御部432とはそれぞれ、再送率監視部131と送信レート制御部132とに対応する。更に、UE1〜UE6は、それぞれUE7〜UE12に対応する。
実施例5が実施例3と異なる点は、適用される無線通信方式(システム)である。具体的には、実施例3では、W−CDMAの適用を想定したのに対し、実施例5では、LTEの適用された無線通信システム2での送信レート制御を想定する。RLC再送率閾値参照テーブルの構成については、実施例3と同様である(図16参照)ため、その説明は省略する。図25は、実施例5において、eNB40のメモリ40cに保持される輻輳状態閾値参照テーブルT6内のデータ格納例を示す図である。各セクタI、J、Kの輻輳状態は、eNB40がセクタ単位で使用する送信バッファにおけるパケット滞留量(以下、「送信バッファ滞留量」と記す。)により定義される。図25に示す様に、輻輳状態閾値参照テーブルT6には、セクタ単位の送信バッファ滞留量の上限閾値を表す“輻輳発生閾値”として“80%”が設定されており、上記送信バッファ滞留量の下限閾値を表す“非輻輳閾値”として“30%”が設定されている。
eNB40の輻輳監視部45は、送信バッファ滞留量を所定周期(例えば、100ms)で監視する。輻輳監視部45は、所定回数(例えば、3周期)連続で、セクタ単位の送信バッファ滞留量が、輻輳発生閾値である“80%”を超過した場合、“輻輳発生状態”と判定する。一方、輻輳監視部45は、“輻輳発生状態”時において所定回数(例えば、3周期)連続で、セクタ単位の送信バッファ滞留量が、非輻輳閾値である“30%”以下となった場合、“非輻輳状態”と判定する。なお、輻輳状態閾値参照テーブルT6における各設定値は、送信バッファ滞留量が輻輳発生閾値(上限閾値)を超過したセクタの数や各セクタのトラフィック量、あるいは送信バッファ容量等に応じて、適宜変更可能である。
次に、実施例5における無線通信システム2の動作を、実施例3との相違点を中心として説明する。説明の前提として、本実施例では、特に、図24に示したセクタJの輻輳状態が“非輻輳状態”から“輻輳発生状態”に遷移した後に、再び“非輻輳状態”に遷移する場合を想定し、無線通信システム2が、移動局UE10(図24参照)に対するレート制御を実行する際の動作シーケンスについて説明する。図26は、実施例5に係る無線通信システム2の動作を説明するためのシーケンス図である。図26において斜線の施されたセクタJ内の移動局UE10が、本動作シーケンスにおいて、送信レート低減制御の対象となる。
図26は、実施例3に係る動作の説明において参照した図17と、同様の処理を含むことから、共通するステップには、末尾が同一の参照符号を付すと共に、その詳細な説明は省略する。具体的には、図26のステップS501〜S504、S507〜S516、S519、S520の各処理は、図17に示したステップS301〜S304、S307〜S316、S319、S320の各処理にそれぞれ対応する。
S504では、eNB40の輻輳監視部45は、輻輳状態の監視により、セクタJでの輻輳の発生を検知すると、該輻輳の発生を、送信レート制御部432に通知する。該通知を受けた送信レート制御部432は、セクタJが現在輻輳発生状態にあることを検知し、その結果、セクタJに在圏している移動局UE9、UE10が、レート制御対象の候補となる。なお、非輻輳状態の通知に際しても、上述した輻輳発生状態の通知と同様の処理が実行される(S516)。
移動局UE10以外の移動局UE7〜UE9、UE11、UE12の内、移動局UE9は、移動局UE10と同様、輻輳発生状態にあるセクタJ内に在圏することから、レート制御対象ではあるが、RLC再送率が上限閾値を超えていない。このため、eNB40の送信レート制御部432は、移動局UE9に対するレート制御を実行しない。
図27は、実施例5における、セクタJの輻輳状態と移動局UE10のRLC再送率とに応じたレート制御の有無をタイミング毎に示す図である。図27に示す様に、図26に示した制御タイミングt51〜t56の内、「セクタJの輻輳状態」が“非輻輳”状態であるタイミングt51、t56、あるいは、「移動局UE10のRLC再送率」が“上限閾値以下”であるタイミングt51、t52、t54では、レート制御は実行されず、タイミングt53、t55においてのみレート制御が実行される。すなわち、eNB40の送信レート制御部432は、「セクタJの輻輳状態」が“輻輳発生”状態であり、かつ、「移動局UE10のRLC再送率」が“上限閾値超過”である場合に、移動局UE10宛のパケットの送信レートを低減させる制御を行う。
以上説明した様に、実施例5に係る無線通信システム2によれば、無線通信方式としてW−CDMAを採る無線通信システム1に限らず、LTEを採る無線通信システム2においても、セクタ単位で検知及び通知された輻輳状態を基に、再送率の高い移動局に対するレート制御を実行及び解除することができる。
(変形例1)
実施例5に係る無線通信システム2は、以下に説明する変形態様を採ることもできる。具体的には、実施例5では、eNB40は、セクタ単位で輻輳状態を判定するものとしたが、変形例1では、eNB40の自装置単位で輻輳状態の判定を行う。図28は、実施例5の変形例1において、eNB40のメモリ40cに保持される輻輳状態閾値参照テーブルT7内のデータ格納例を示す図である。eNB40の輻輳状態は、S−GW30(図24参照)からeNB40に送信されるパケットの受信バッファにおけるパケット滞留量(以下、「受信バッファ滞留量」と記す。)により定義される。図28に示す様に、輻輳状態閾値参照テーブルT7には、eNB単位の受信バッファ滞留量の上限閾値を表す“輻輳発生閾値”として“60%”が設定されており、上記受信バッファ滞留量の下限閾値を表す“非輻輳閾値”として“20%”が設定されている。
eNB40の輻輳監視部45は、受信バッファ滞留量を所定周期(例えば、100ms)で監視する。輻輳監視部45は、所定回数(例えば、3周期)連続で、eNB単位の受信バッファ滞留量が、輻輳発生閾値である“60%”を超過した場合、“輻輳発生状態”と判定する。一方、輻輳監視部45は、“輻輳発生状態”時において所定回数(例えば、3周期)連続で、eNB単位の受信バッファ滞留量が、非輻輳閾値である“20%”以下となった場合、“非輻輳状態”と判定する。なお、輻輳状態閾値参照テーブルT7における各設定値は、eNB40のトラフィック量や、受信バッファの容量等に応じて、適宜変更可能である。
なお、変形例1に係る無線通信システム2の動作は、実施例5における無線通信システム2の動作と同様であるので、その説明は省略する。上述した様に、変形例1に係る無線通信システム2によれば、セクタ単位の輻輳状態に限らず、eNB単位で検知及び通知された輻輳状態を基に、再送率の高い移動局に対するレート制御を実行及び解除することができる。
なお、上記各実施例では、無線通信システム1のRNC10は、RLC再送率の上限閾値超過を契機として、レート制御を開始した後、下限閾値以下を契機として、開始されたレート制御を解除するものとした。しかしながら、RNC10は、上述の様な閾値超過の有無に基づき、二者択一的にレート制御の有無を決定する(図6A参照)のではなく、RLC再送率の値に応じて、レート制御率を段階的に変更するものとしてもよい。例えば、RNC10は、RLC再送率が高い程、レート制御によるレートの下げ幅を大きくし、RLC再送率が低い程、レート制御によるレートの下げ幅を小さくする制御を行う。より具体的には、RLC再送率が“50%”の移動局に対しては、送信レート制御部132は、レート制御率“30%”のレート制御を行うことで、レートの下げ幅が“70(=100−30)%”となる様に、送信レートを低減させる。また、送信レート制御部132は、RLC再送率が“30%”の移動局に対し、レート制御率“50%”のレート制御を行うことで、レートの下げ幅が“50(=100−50)%”となる様に、送信レートを低減させる。更に、送信レート制御部132は、RLC再送率が“10%”の移動局に対し、レート制御率“80%”のレート制御を行うことで、レートの下げ幅が“20(=100−80)%”となる様に、送信レートを低減させる。これにより、無線通信システム1に収容される各移動局への再送状況に応じた木目細やかなレート制御が可能となり、回線利用効率が更に向上する。
あるいは、BTS20の輻輳監視部22が輻輳の程度をセクタ単位で監視し、該輻輳の程度(以下、「輻輳度」と記す。)に応じて、レート制御率を段階的に変更するものとしてもよい。例えば、RNC10は、輻輳度が高い程、レート制御によるレートの下げ幅を大きくし、輻輳度が低い程、レート制御によるレートの下げ幅を小さくする制御を行う。かかる態様によっても、輻輳度に応じたレート制御率の段階的制御により、無線通信システム1配下に形成された各セクタ毎の輻輳状況に応じた木目細やかなレート制御が実現される。その結果、回線利用効率が更に向上する。更に、RNC10の送信レート制御部132は、上述した再送状況に応じたレート制御と輻輳状況に応じたレート制御とを組み合わせて、レート制御率を段階的に決定するものとしてもよい。これにより、RNC10は、各移動局の在圏するセクタの通信環境に応じて、より実態に即したレート制御を行うことができる。その結果、無線通信システム1の順応性が向上する。
また、上記各実施例では、無線通信システム1、2は、輻輳の発生している領域のみをレート制御の対象とし、輻輳の発生していないセクタ、BTS、RNC、eNBをレート制御の対象から除外するものとした。しかしながら、無線通信システム1、2は、必ずしも、非輻輳状態にある領域内の全移動局をレート制御の対象から除外する必要はなく、これらの移動局の再送率に対し、所定の係数a(0≦a<1)による重み付けを付与してもよい。例えば、RNC10の再送率監視部131は、図19において非輻輳状態にあるセクタB、C、Dに在圏する移動局のRLC再送率に対して“0.5”を乗算する一方、輻輳発生状態にあるセクタAに在圏する移動局のRLC再送率については、そのまま使用する。あるいは、再送率監視部131は、輻輳発生状態にあるセクタAに在圏する全移動局のRLC再送率に対し、所定の係数b(1<b、例えばb=2.0)を乗算することによって、重み付けを行う。
上述の態様によれば、非輻輳状態にある領域内の移動局と、輻輳状態にある領域内の移動局とのRLC再送率が同一であっても、相対的には、輻輳状態にある領域内の移動局の方が、上限閾値を超過し易くなる。その結果、輻輳状態にある領域内の移動局の方が、送信レート制御の対象として選定され易くなる。併せて、非輻輳状態にある領域においても、再送率の極めて高い移動局に対しては、送信レートの低減制御が可能となる。これにより、RNC10は、将来発生し得る輻輳を未然に防止することができる。従って、上記各実施例と同様、回線帯域の効率的な利用が実現可能となる。
また、上記各実施例では、移動局として、携帯電話、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)を想定して説明したが、本発明は、移動局に限らず、BTSやeNBとの間でパケットの送受信を行う様々な通信機器に対して適用可能である。再送の対象となるパケットに関しても、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)のパケットに限らず、データリンク層のフレーム、ATM(Asynchronous Transfer Mode)のセル等、他のPDUに対しても、上記各実施例を適用することができる。
更に、上記各実施例及び変形例において、無線通信システム1の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的態様は、図示のものに限らず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することもできる。例えば、図2に示したIubIF部11と輻輳通知受信部12、または輻輳通知送信部23とIubIF部24を、それぞれ1つの構成要素として統合してもよい。あるいは、送信レート制御部132が、再送率監視部131の機能を包含するものとしてもよい。また、これとは反対に、RNC10の送信レート制御部132に関し、例えば、輻輳の有無とRLC再送率とを用いてレート制御の要否を判定する部分と、該判定結果に従い実際に送信レートを低減制御する部分とに分散してもよい。また、メモリ10c、20cを、RNC10、BTS20の外部装置として、ネットワークやケーブル経由で接続する様にしてもよい。
また、上記説明では、個々の実施例及び変形例毎に個別の構成、及び動作を説明した。しかしながら、各実施例に係る無線通信システム1、2は、他の実施例や変形例に特有の構成要素を併せて有するものとしてもよい。また、実施例、変形例毎の組合せについても、2つに限らず、3つ以上の組合せ等、任意の形態を採ることが可能である。例えば、実施例4に係る無線通信品質を考慮したレート制御技術は、実施例1に限らず、他の実施例2、3、5や変形例1に対しても適用可能である。