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JP6040539B2 - インクセットおよび記録装置 - Google Patents

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JP6040539B2 JP2012043156A JP2012043156A JP6040539B2 JP 6040539 B2 JP6040539 B2 JP 6040539B2 JP 2012043156 A JP2012043156 A JP 2012043156A JP 2012043156 A JP2012043156 A JP 2012043156A JP 6040539 B2 JP6040539 B2 JP 6040539B2
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Description

本発明は、インクセットおよび記録装置に関する。
光透過性を有する被記録媒体、例えば光透過性を有する樹脂フィルム、に印刷をする場合には、白色インクによって下地層としての白地の印刷層を形成し、形成された白地の上に所定の着色インクによって画像を形成することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、光透過性を有する被記録媒体を介して印刷された画像を視認する場合であっても、光透過性を有する被記録媒体上に着色インクによって形成された画像への遮光層として、白色インクによる所定の画像が記録され、着色インクにより記録された画像の透過性を抑制することも知られている。
特開2008−248008号公報
しかし、上述の特許文献1において背景用インク組成物としての白色インクと、着色用インク組成物とが隣接もしくは重なって記録された場合の各インク組成物の境界部、すなわち白色インクと、着色用インク組成物との接触部では、インク組成物の物性の違いによるブリードといわれる混色あるいは滲みが発生してしまう虞があった。
そこで、背景用インク組成物と、着色用インク組成物と、の境界におけるブリードを抑制し、さらに背景用インク組成物の凝集も抑制することができるインクセットと、そのインクセットを被記録媒体へ記録する適正な記録モードを有する記録装置を提供する。
本発明は、少なくとも上述の課題の一つを解決するように、下記の形態または適用例として実現され得る。
〔適用例1〕本適用例のインクセットは、背景用顔料を含む背景用インク組成物と、着色顔料を含む着色インク組成物と、を含むインクセットであって、前記背景用インク組成物の表面張力をS1(mN/m)、前記着色インク組成物の表面張力をS2(mN/m)とした場合に、
−5<(S1−S2)<4
であり、前記背景用インク組成物と前記着色インク組成物とを、被記録媒体上で隣接させて記録する第1モード、または前記着色インク組成物が記録された画像に対して前記背景用インク組成物を記録する第2モードに用いられることを特徴とする。
着色インク組成物と比べて顔料の沈降速度が大きい背景用顔料を含む背景用インク組成物によって、着色用インク組成物により形成されるカラー画像に隣接もしくは重ね合わせた画像を記録形成する場合、カラー画像に背景用顔料が混色、もしくは沈み込む現象、いわゆるブリードが発生する。これにより、画像の鮮明度が低下したり、カラー画像の色彩が損ねられたりすることがあった。しかし、本適用例のインクセットによれば、背景用インク組成物と着色用インク組成物との表面張力の差を、−5を超えて4未満にすることにより、背景用インク組成物が着色用インク組成物により形成されるカラー画像に対して凝集することを抑制することができる。これによって、例えばカラー画像上に形成される背景用インク組成物による画像の記録、すなわち第2モードにおいてはカラー画像上に濡れ拡がりやすく均一な背景画像が形成され、背景用インク組成の乾燥が促進され、背景用顔料がカラー画像へ沈降することを抑制することができる。同様に、第1モードであっても、カラー画像との隣接境界での背景用インク組成物の凝集を抑制することができ、カラー画像への混色を抑制することができる。
〔適用例2〕上述の適用例において、前記S1が28(mN/m)以下であることを特徴とする。
上述の適用例によれば、第1モードにおける被記録媒体への濡れ性が良好に保たれ、被記録媒体上での背景用インク組成物の凝集を抑制することができる。
〔適用例3〕上述の適用例において、前記背景用顔料は、下記の式(1)に示す沈降速度vが2.0×10−6(cm/s)以上である、ことを特徴とする。
v={(ρ−ρ)gR}/(18η) (1)
上記式(1)における、vは沈降速度ρは顔料の密度、ρ は溶媒の密度gは重力加速度Rは顔料の直径ηは溶媒の粘度ある。
上述の式(1)はストークスの式と言われ、上述の適用例によれば、ストークスの式によって算出される沈降速度が早い背景用顔料は、第2モードの際に、下地の画像との滲みを起こしやすい。しかし、本適用例の発明によれば、当該不具合を良好に防止出来る。
〔適用例4〕上述の適用例において、前記背景用インク組成物と前記着色インク組成物とが、デービス法により算出されたHLB値が4.2〜7.8の範囲内であるグリコールエーテル類、ポリエーテルシロキサン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤からなる群から選択される一種以上を含むことを特徴とする。
上述の適用例によれば、インクを濡れ拡がりやすくすることができる。
〔適用例5〕本適用例の記録装置は、上述の適用例のインクセットと、前記第1モードと、前記第2モードと、を備えたことを特徴とする。
本適用例の記録装置によれば、混色、もしくは沈み込みであるブリードが抑制された記録物を形成することができる記録装置を得ることができる。
〔適用例6〕上述の適用例において、前記第2モードにおいて、前記背景用インク組成物が記録される時の前記着色インク組成物が記録された画像の乾燥率は、40%以上90%以下であることを特徴とする。
上述の適用例によれば、背景用インク組成物のカラー画像上での凝集を抑制することができ、背景用顔料の沈み込みが抑制された記録物を形成することができる記録装置を得ることができる。
〔適用例7〕上述の適用例において、前記背景用インク組成物を記録した画像に対して前記着色インク組成物を記録する第3モードを備えることを特徴とする。
上述の適用例によれば、背景用インク組成物により形成された背景画像上に着色用インク組成物によりカラー画像を形成しても、着色用インク組成物の凝集が抑制されるため、例えば光透過性基材を被記録媒体とした場合であっても、所望の着色用インク組成物による色彩を得ることができる。
〔適用例8〕上述の適用例において、前記第2モードにおける、前記背景用インク組成物が記録される時の前記着色インク組成物が記録された画像の乾燥率は、前記第3モードにおける、前記着色インク組成物が記録される時の前記背景用インク組成物が記録された画像の乾燥率よりも高いことを特徴とする。
上述の適用例によれば、着色用インク組成物によるカラー画像に対する背景用インク組成物の表面張力は、被記録媒体上、例えば光透過性樹脂フィルム上、に対する表面張力より高くなるが、カラー画像の乾燥率を高めることにより、背景用インク組成物のカラー画像に対する表面張力の上昇を抑制することができる。したがって、カラー画像上での背景用インク組成物の凝集を抑制することができる。
〔適用例9〕上述の適用例において、前記記録装置は、被記録媒体上に記録された前記背景用インク組成物、または前記着色用インク組成物を乾燥させる乾燥手段を備え、前記乾燥手段による前記第2モードにおける前記背景用インク組成物による記録前の前記着色インク組成物による記録の乾燥時間が、前記乾燥手段による前記第3モードにおける前記着色インク組成物による記録前の前記背景用インク組成物による記録の乾燥時間より長いことを特徴とする。
上述の適用例によれば、記録装置に乾燥手段を備えることにより、乾燥率を乾燥時間により制御することができる。したがって、第2モードにおけるカラー画像の乾燥時間を、第3モードにおけるカラー画像の乾燥時間より長くすることにより、第2モードにおけるカラー画像の乾燥率を高めることができる。これによりカラー画像上での背景用インク組成物の凝集を抑制することができる。
インクジェット式記録装置を示す概略斜視図。 インクジェット式記録装置による記録物を模式図的に示す拡大断面図であり、(a)は第1モード、(b)は第2モード、(c)は第3モードによる記録物。 実施例を示す表。
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1時視形態に係る記録装置としてのインクジェット式記録装置100を示す概略斜視図である。図1に示すように、インクジェット式記録装置100は、キャリッジ101を備えている。キャリッジ101は、キャリッジモーター102により駆動されるタイミングベルト103を介し、ガイド部材104に案内されてプラテン105の軸方向に往復移動する。記録媒体200は、図示しない搬送機構によってキャリッジ101とプラテン105との間に向かって送られる。
キャリッジ101の被記録媒体200に対向する位置には、インクジェット式記録ヘッド300が搭載されている。また、インクジェット式記録ヘッド300の上部には、インクジェット式記録ヘッド300に、液体としてのインクを供給する背景用インク組成物としての白色系インクが収容された白色系インクカートリッジ106および着色インク組成物としてのカラーおよびブラックインクが収容されたカラーおよびブラックインクカートリッジ107が着脱可能に装填されている。被記録媒体200は、印字等領域Pに配置されて、インクジェット式記録ヘッド300によってインクが吐出され、文字、画像等が記録される。文字、画像等が記録された被記録媒体200は、記録物210として排出される。
また、図1に示すように、被記録媒体200が配置されない非印字等領域である、例えば、ホームポジションHには、キャップ部材や吸引手段等を有するクリーニング手段である、例えば、キャッピング手段120、吸引ポンプ130、そしてワイピング部材140が配置されている。
第1実施形態に係るインクジェット式記録装置100による、被記録媒体200への記録方法の概略を説明する。インクジェット式記録装置100は、図2(a)に示す記録物210aを形成する第1モード、図2(b)に示す記録物210bを形成する第2モード、および図2(c)に示す記録物210cを形成する第3モード、の記録モードを備えている。
図2(a)に示す記録物210aは、被記録媒体200上に白色系画像Pwとカラー画像Pcと、が隣接して形成されている。図2(b)に示す記録物210bは、被記録媒体200上にカラー画像Pcが形成され、カラー画像Pc上に白色系画像Pwが重なって形成されている。図2(c)に示す記録物210cは、被記録媒体200上に白色画像Pwが形成され、白色系画像Pw上にカラー画像Pcが重なって形成されている。
インクジェット式記録装置100による記録方法は、記録モードを選択する記録モード選択工程と、選択された記録モードに基づく初めに記録画像を形成する第1記録工程と、第1記録工程によって形成された画像を乾燥する乾燥工程と、乾燥工程の後に選択された記録モードに基づく次の記録画像を形成する第2記録工程と、を備えている。
(記録モード選択工程)
記録モード選択工程は、第1モード、第2モードおよび第3モードのいずれかを選択し、インクジェット式記録装置100に備える図示しない操作部により記録モードを選択指定する方法、もしくはインクジェット式記録装置100に接続された図示しないパーソナルコンピューターによって記録モードを選択指定する方法などによって記録モードを選択指定する。
(第1記録工程)
記録モード選択工程によって選択された記録モードに基づき、所定のインクを被記録媒体200上にインクジェット法で画像が形成、記録される。第1モードまたは第3モードが選択された場合の第1記録工程では、背景用画像の一例として白色系画像Pwが形成される(以下、背景用画像の一例として白色系画像Pwにより説明する)。記録媒体200は、印刷本紙等の塗工紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、金属、ガラスから選択される一種であるのが好ましい。これらの記録媒体200はインク非吸収性または低吸収性であり、ブリストー(Bristow)法において、接触開始から30msecまでの水吸収量が1ml/m2以下のものである。
背景用インクは、1気圧下相当の沸点が280℃以上のアルキルポリオールを実質的に含有しないことが好ましい。例えば、1気圧下相当の沸点が188℃のプロピレングリコールは含んでもよいが、1気圧下相当の沸点が280℃以上のグリセリン、1気圧下相当の沸点が280℃以上のポリエチレングリコール、1気圧下相当の沸点が280℃以上のポリプロピレングリコール等は含まない。また、背景用インクは、背景用として用いられるインクであれば特に限定されないが、白色系インク又は光輝性インクである事が好ましい。白色系インクに含まれる、白色系顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニア、中空樹脂粒子の微粒子を含む顔料を用いることができる。ここで、優れた白色度から酸化チタンの微粒子を含むのが好ましい。白色系顔料の平均粒子径は、特に限定されないが100nm以上1μm以下が好ましく、200nm以上400nm以下であるのがさらに好ましく、250nm以上380nm以下であるのが一層好ましく、最も好ましくは260nm以上350nm以下である。なお、これらの微粒子は、酸化珪素、アルミナ等でコーティングされた微粒子であってもよい。
光輝性インクは、光輝性顔料を含有するものである。光輝性顔料としては、媒体に付着されたときに光輝性を呈しうるものであれば特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、および銅からなる群より選択される1種または2種以上の合金(金属顔料ともいう)や、パール光沢を有するパール顔料を挙げることができる。パール顔料の代表例としては、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。
また、背景用顔料としては、下記式(2)に示す「ストークスの式」によって得られる沈降速度vが2.0×10-6(cm/s)以上であることが好ましい。ストークスの式によって算出される沈降速度が早い背景用顔料は、第2モードの際に、下地の画像との滲みを起こしやすい。しかし、本願の発明によれば、当該不具合を良好に防止出来る。
v={(ρ−ρ)gR}/(18η) (2)
上記式(2)における、vは沈降速度ρは顔料の密度、ρ は溶媒の密度gは重力加速度Rは顔料の直径ηは溶媒の粘度ある。


第1記録工程で記録される白色系画像Pwは、記録媒体200に形成されるべた画像であってもよいし、カラーおよびブラックインクによって着色画像が形成される位置に合わせて白色系画像Pwを形成してもよい。白色系画像Pwに記録される着色画像の十分な視認性を得るには、白色系インクを用いて形成する白色系画像Pwの白色度は73以上、より好ましくは75以上がよい。ここで、背景用画像(実施形態においては白色系画像Pw)の記録に使用される白色系顔料量は0.8g/m2以上、より好ましくは1.0g/m2以上であるのが好ましい。
また、白色系インクの表面張力は、30mN/m以下であることが好ましく、28mN/m以下であることがより好ましい。さらに、後述する着色インクとの表面張力の差は、背景用インク組成物としての白色系インクの表面張力をS1(mN/m)、着色インク組成物の表面張力をS2(mN/m)とした場合に、
−5<(S1−S2)<4
であることが好ましい。
第2モードにおける第1記録工程では、着色インクを用いてインクジェット法によりカラー画像Pcが形成される。着色インクは、色材を含有し、1気圧下相当の沸点が280℃以上のアルキルポリオールを実質的に含有しない。ここで、着色インクの表面張力は、30mN/m以下であるのが好ましく、28mN/m以下であることがより好ましく、一層好ましくは26mN/m以下でり、さらに好ましくは10mN/m以上28mN/m以下であり、最も好ましくは10mN/m以上26mN/m以下である。
(乾燥工程)
本願発明において、第2記録工程の前には、活性化エネルギー線(例えば、紫外線)照射工程や乾燥工程を設けても良い。乾燥工程を設けた場合に、乾燥工程は、第1記録工程で形成された白色系画像Pwもしくはカラー画像Pcを乾燥させる。乾燥の方法としては、自然乾燥、加熱乾燥を用いることができる。加熱乾燥としては、温風乾燥、熱源による直接接触のヒーター乾燥、活性化エネルギー線(例えば赤外線)による乾燥等が挙げられる。なお、乾燥工程は、第1記録工程と同時に行われても良い。
第1記録工程において白色系画像Pwが形成される、すなわち第1モードおよび第3モードの場合には、白色系画像の乾燥率を40%〜90%(好ましくは55%〜90%)となるように乾燥することが好ましい。また、第1記録工程においてカラー画像Pcが形成される、すなわち第2モードの場合には、カラー画像Pcの乾燥率を40%〜90%(好ましくは55%〜90%)となるように乾燥することが好ましい。なお、乾燥工程で達成する乾燥率は、第2記録工程で吐出される着色インクが第1記録工程によって形成された白色系画像Pwもしくはカラー画像Pcに到達するまでに達成されていればよい。したがって、乾燥工程は、第1記録工程で記録媒体200に白色系画像Pwもしくはカラー画像Pcが記録されて、第2記録工程で着色インクもしくは白色系インクが白色系画像Pwもしくはカラー画像Pcに到達するまでの工程であり、第1記録工程から第2記録工程までの間の自然乾燥も乾燥工程に含まれる。
乾燥率は以下の方法によって、算出することが可能である。被記録媒体にインクを付与して画像形成したときの被記録媒体の質量が、乾燥率0%に相当する。そして、所定の乾燥条件下で画像を乾燥させ、被記録媒体の質量変化が実質的に止まった時点が、乾燥率100%に相当する。これら2つのデータ及び乾燥時間を変更させて得たデータ(中間乾燥率)から、同一の乾燥条件下において、被記録媒体の質量変化及び乾燥率の変化を表すことができる。このようにして得られた結果、背景色の画像形成から有色(白色を除く。)の画像形成までの時間、第2記録工程時の被記録媒体の質量などから、乾燥率を算出することができる。なお、乾燥温度が随時変化する場合には、質量を基準に乾燥率を算出するのが好ましい。
第1記録工程において形成された画像の乾燥工程における乾燥時間は、第3モードの第1記録工程によって形成される白色系画像Pwの乾燥時間、第2モードの第1記録工程によって形成されるカラー画像Pcの乾燥時間を長くすることが好ましい。このように乾燥することにより、後述する第2モードの第2記録工程において被記録媒体200上に形成されたカラー画像Pc上に白色系画像Pwを形成する白色系インクをインクジェット法によって重ねた場合に、カラー画像Pcへの白色系画像Pwのブリード、すなわち混色、滲みなどを抑制することができる。背景用顔料は、着色インクに用いられる着色顔料よりも沈降速度が速い傾向にあるため、第2モードにおける滲みは、第3モードにおける滲みよりも大きい傾向にある。よって、第3モードにおける乾燥状態を高める事が好ましいからである。
(第2記録工程)
選択された記録モードに基づき、第1記録工程において形成された白色形画像Pwもしくはカラー画像Pcに対して、カラー画像Pcもしくは白色系画像Pwが形成される。
第1モードが選択された場合、第2記録工程では図2(a)に示すように白色形画像Pwに隣接するようにカラー画像Pcが形成され、記録物210aを得ることができる。第2モードが選択された場合、第2記録工程では図2(b)に示すようにカラー画像Pc上に白色形画像Pwが重ねて形成され、記録物210bを得ることができる。また、第3モードが選択された場合、第2記録工程では図2(c)に示すように白色形画像Pw上にカラー画像Pcが重ねて形成され、記録物210cを得ることができる。
(背景用インクと着色インクの他の添加剤)
背景用インクまたは着色インクの少なくとも一方が、デービス法により算出されたHLB(Hydrophile Lipophile Balance)値が4.2〜7.8の範囲内であるグリコールエーテル類、ポリエーテルシロキサン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤からなる群から選択される一種以上を含んでなるのが好ましい。当該添加剤を含むことにより、表面張力が低下し、記録媒体200に対しての濡れ性が良好となる。記録媒体200上よりも、画像上に記録した場合の方が一般的にインクは濡れにくい性質を示す。よって、表面張力を低下させるために、上述の添加剤を添加する事が好ましい。
・グリコールエーテル
背景用インクまたは着色インクの少なくとも一方が、前述のHLB値範囲を満たすグリコールエーテル類を含むことで、記録媒体200の種類の影響をあまり受けずに濡れ性、浸透速度を制御することできる。これにより、記録媒体200、特にインク非吸収性または低吸収性の記録媒体200に対して濃淡ムラが少ない鮮明な画像を記録することができる。
ここで、実施形態において用いられるグリコールエーテル類のHLB値は、デービスらが提唱した化合物の親水性を評価する値であり、たとえば文献「J.T.Davies and E.K.Rideal,“Interface Phenomena”2nd ed.Academic Press,New York 1963」中で定義されているデービス法により求められる数値で、下記式(3)によって算出される値をいう。
HLB値=7+Σ[1]+Σ[2] (3)
(但し、[1]は親水基の基数を表し、[2]は疎水基の基数を表す。)
表1に、代表的な親水基および疎水基の構造、基数を例示する。
Figure 0006040539
グリコールエーテル類は、デービス法により算出されたHLB値が4.2〜7.8の範囲内であり、5.8〜7.8の範囲内であることがより好ましく、さらに好ましくは5.8〜7.1の範囲内である。HLB値が4.2未満であるとグリコールエーテル類の疎水性が高まり、主溶媒が水の場合、水との親和性が低下してインクの保存安定性が低下する場合がある。一方、HLB値が7.8より大きくなると、記録媒体200への濡れ性・浸透性の効果が減少し、画像の濃淡ムラが目立つ場合がある。特に、疎水表面であるインク非吸収性または低吸収性の記録媒体200への濡れ性の効果は顕著に低下する傾向がある。
このようなグリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノイソオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独または2種以上を混合して使用することができる。
例示したグリコールエーテル類の中でも、そのグリコールエーテル類中に含まれるアルキル基が分岐構造を有することがより好ましい。アルキル基が分岐構造を有するグリコールエーテル類を含有することで、特にインク非吸収性または低吸収性の記録媒体200に対して濃淡ムラが少ない鮮明な画像を記録することができる。具体的には、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、エチレングリコールモノイソオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル等が挙げられる。
グリコールエーテル類中に含まれるアルキル基の分岐構造の中でも、発色性をさらに高める観点から、2−メチルペンチル基、2−エチルペンチル基、2−エチルヘキシル基がさらに好ましく、2−エチルヘキシル基が特に好ましい。具体的には、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル等が挙げられ、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル等が特に好ましい。
グリコールエーテル類の含有量は、記録媒体200への濡れ性および浸透性を向上させて濃淡ムラを低減させる効果や、インク保存安定性および吐出信頼性を確保する観点から、インク組成物全量に対して0.05質量%以上6質量%以下の範囲で含まれることが好ましい。0.05質量%未満であると、インク組成物の濡れ性、浸透性、乾燥性が乏しくなってしまい、鮮明な画像が得られにくく、また印刷濃度(発色性)が不充分である場合がある。また、6質量%よりも大きくなると、インクの粘度が高くなりヘッドの目詰まりが発生したり、インク組成物中に完全に溶解しないことにより保存安定性が得られなかったりする場合がある。グリコールエーテル類は難水溶性のものが効果的であり、その含有量は、インク組成物全量に対して0.1質量%以上2質量%以下の範囲で含まれることがより好ましい。
・ポリエーテルシロキサン系界面活性剤
白色系インクまたは着色インクの少なくとも一方は、ポリエーテルシロキサン系界面活性剤を含有すると好ましい。好ましい界面活性剤としては、下記式(4)に示すものを用いることが出来る。式(4)において、R1〜R7は、独立して、炭素数が1から6のアルキル基、好ましくはメチル基を表す。jおよびkは、独立して1以上の整数を表すが、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4、もっとも好ましくは1または2でありj=k=1あるいはk=j+1を満足することが好ましい。また、gは0以上の整数を表し、好ましくは1〜3であり、もっとも好ましくは1である。さらに、pおよびqはそれぞれ0以上の整数を表し、好ましくは1〜5を表す。但しp+qは1以上の整数であり、好ましくはp+qは2以上4以下である。
Figure 0006040539
式(4)の化合物としてのポリエーテルシロキサン系界面活性剤のもっとも好ましい形態は、R1〜R7はすべてメチル基を表し、jが1〜2を表し、kが1〜2を表し、gが1〜2を表し、pが1以上5以下の整数を表し、qが0を表すものである。
こうしたポリエーテルシロキサン系界面活性剤の添加量は適宜決定されてよいが、0.03重量%〜3重量%が好ましく、より好ましくは0.1重量%以上2、重量%以下程度であり、さらに好ましくは0.2重量%以上、1重量%以下程度である。0.2重量%以上1重量%以下であると、上述のグリコールエーテル類との併用によって、弾きやすいメディアにおいて塗りつぶしが良好となる。
ポリエーテルシロキサン系界面活性剤は、特に限定されないが、グリセリンを20質量%、1,2−ヘキサンジオールを10質量%、ポリエーテルシロキサン系界面活性剤を0.1質量%、および水を69.9質量%含む水溶液とした場合に、その水溶液の1Hzの動的表面張力が26mN/m以下ものを使用することが好ましい。例えば、バブルプレッシャー動的表面張力計BP2(KRUS社製)を用いて測定することができる。
ポリエーテルシロキサン系界面活性剤は商業的に入手可能で、市販されているものを用いてもよく、例えば、オルフィンPD−501(日信化学工業株式会社製)、オルフィンPD−570(日信化学工業株式会社製)、BYK−347(ビックケミー株式会社製)、BYK−348(ビックケミー株式会社製)等を用いることができる。
また、ポリエーテルシロキサン系界面活性剤として、式(5)で示されるものを用いる
ことができる。
Figure 0006040539
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは7〜11の整数を表し、mは30〜50の整数を表し、nは3〜5の整数を表す。)で表される一種または二種以上の化合物を含んでなるか、または、式(5)の化合物において、式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは9〜13の整数を表し、mは2〜4の整数を表し、nは1〜2の整数である一種または二種以上の化合物を含んでなることがより好ましい。また、式(5)の化合物において、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは6〜18の整数を表し、mは0の整数を表し、nは1の整数である一種または二種以上の化合物を含んでなることがより好ましい。さらに、式(5)の化合物において、Rは水素原子を表し、aは2〜5の整数を表し、mは20〜40の整数を表し、nは3〜5の整数である一種または二種以上の化合物を含んでなることがより好ましい。このような特定のポリオルガノシロキサン系界面活性剤を使用することにより、被記録媒体200として非吸収性のものに印刷した場合であっても、インクのブリードがより改善される。
式(5)の化合物においては、Rがメチル基である化合物を使用することによって、さらにインクのビーディングが改善できる。また、式(5)の化合物においては、Rが水素原子である化合物を併用することにより、さらにインクのブリーディングが改善できる。Rがメチル基の界面活性剤は、好ましくは0.01質量%〜1.0質量%、より好ましくは0.05質量%〜0.70質量%含有される。
式(5)の化合物においては、Rがメチル基の化合物とRが水素原子の化合物との配合割合を適宜、調整することにより、さらにブリーディングやビーディングのない高品質な画像が実現でき、また顔料種や樹脂量により流動性が異なる場合の調整剤として効果的である。
・フッ素系界面活性剤
また、背景用インクおよび着色インクには、フッ素系界面活性剤を用いてもよい。フッ素系界面活性剤は、WO2010/050618およびWO2011/007888に開示されている通り、低吸収性、非吸収性の記録媒体200に対して良好な濡れ性を奏する溶剤として知られており、本願発明において、上述のグリコールエーテル類及びポリエーテルシロキサン類と併用して好ましく用いることが出来る。フッ素系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばパーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物などが挙げられる。これらの中でも、一般式(6)〜(11)で表される化合物が信頼性の観点からも特に好ましく、式(6)、(7)、(8)、(11)で表されるものが一層好ましい。
Figure 0006040539
ただし、式(6)中、mは0〜10の整数、nは0〜40の整数を表す。
Figure 0006040539
ただし、式(7)中、Rfはフッ素含有基を表し、CF3、CF2CF3をなどが挙げられる。m,nおよびpは、それぞれ整数を表し、mは6〜25の整数を表し、nは1〜4の整数を表し、pは1〜4を表す。
Figure 0006040539
ただし、式(8)中、M+はLi+,Na+,K+,NH4 +のいずれかを表す。
Figure 0006040539
ただし、式(9)中、Rfは、CF3、C25、C37、C49のいずれかを表し、M+は、Li+,Na+,K+,NH4 +のいずれかを表す。
Figure 0006040539
ただし、式(10)中、Rfは、CF3、C25、C37、C49のいずれかを表し、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表し、M+は、Li+,Na+,K+,NH4 +のいずれかを表す。
Figure 0006040539
ただし、式(11)中、M+は、Li+,Na+,K+,NH4 +のいずれかを表す。
フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えばS・144、S・145(旭硝子株式会社製);FC・170C、FC・430、フロラード・FC4430(住友スリーエム株式会社製);FSO、FSO・100、FSN、FSN・100、FS・300(Dupont社製);FT・250、251(株式会社ネオス製)などが挙げられる。これらの中でも、Dupont社製のFSO、FSO・100、FSN、FSN・100、FS・300が良好な印字品質、保存性を提供でき好ましい。これらノニオン系のフッ素系界面活性剤である前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
被記録媒体200が、ポリ塩化ビニルの場合、白色系インクが、ピロリドン類、スルホキシド類、イミダゾリジノン類、アミドエーテル類から選択される一種以上の非プロトン性極性溶媒を含むのが好ましい。ピロリドン類の代表例としては、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンがあり、スルホキシド類の代表例としてはジメチルスルホキシドがあり、イミダゾリジノン類の代表例としては、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンがある。
また、アミドエーテル類としては、下記一般式(12)で示される溶剤が該当する。
Figure 0006040539
式(12)中、R1は、炭素数1〜4のアルキル基であることが好適である。「炭素数1〜4のアルキル基」は、直鎖状または分岐状のアルキル基であることができ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基であることができる。R1が炭素数1〜4のアルキル基の式(12)で示される溶剤は、インク組成物に適度な擬塑性を付与することでき、これによりインクの良好な吐出安定性を確保することができる。また、R1が炭素数1〜4のアルキル基の式(12)で示される溶剤は、塩化ビニル系樹脂と相互作用するため、塩化ビニル系樹脂を含有する被記録媒体200の表面にインクを強固に定着させることができる。
式(12)で示される溶剤のHLB値は、10.5以上20.0以下、好ましくは12.0以上18.5以下である。式(9)で示される溶剤のHLB値が前記範囲内にあると、インクに適度な擬塑性を付与できる点および塩化ビニル系樹脂との相互作用の点でより好適となる。なお、式(9)で示される溶剤のHLB値とは、有機概念図における無極性値(I)と有機性値(O)との比(以下、単に「I/O値」ともいう)から下式により算出された値である。
HLB値=(無極性値(I)/有機性値(O))×10
具体的には、I/O値は、藤田穆著、「系統的有機定性分析混合物編」、風間書房、1974年;黒木宣彦著、「染色理論化学」、槙書店、1966年;井上博夫著、「有機化合物分離法」、裳華房、1990年、の各文献に基づいて算出することができる。
・その他の添加剤
界面活性剤としては上述のポリエーテルシロキサン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤以外のものであってもよい。つまり、アニオン性界面活性剤(たとえばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ラウリルリン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩等)、ノニオン性界面活性剤(たとえばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)であってもよい。
背景用インク組成物および着色インク組成物はアルカンジオールを含有していても良い。アルカンジオールとしては、1,2−アルキルジオールの他、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール等の両末端のジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、3−(2−メトキシフェノキシ)−1−2−プロパンジオール等の分鎖構造のジオールを用いることが出来る。中でも、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4〜8の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。この中でも炭素数が6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体200への浸透性が特に高いため、より好ましい。
その他、例えばエタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1以上4以下のアルキルアルコール類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン等を含んでいても良い。
背景用インク組成物および着色インク組成物は、水を50質量%以上含む水系インク、有機溶剤を50質量%以上含む溶剤系インク、活性化エネルギー線重合性化合物を50質量%以上含む活性化エネルギー線硬化型インクのいずれであっても良いが、本願の課題が顕著に生じうる観点から、水系インク又は溶剤系インクが好ましい。
(実施例)
インクジェット式記録装置100として「インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製、ノズル解像度180dpi)」を用い、該プリンターの被記録媒体案内部に温度可変のヒーターを取り付ける改造を施した。なお、加熱温度は45℃であった。また、被記録媒体200としては、ルミラー(登録商標)S10−100μm(東レ株式会社製、光透過性PETフィルム)を用いた。
そして、図3に示す表に記載した組成の背景用インク組成物としての白色系インクおよび着色インク組成物としてのシアン顔料を含むカラーインクを用い、上述の被記録媒体200上に、図2(a)に示す第1モード、および図2(b)に示す第2モードによって記録物210a,210bを作成し、評価した。評価の基準は表2に示す。
なお、白色系インクの顔料には二酸化チタンを用い、二酸化チタンの分散液は次の方法により製造した。ガラス転移温度40℃、質量平均分子量10,000、酸価150mgKOH/gの固形アクリル酸/n−ブチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体の25質量部をジエチレングリコールジエチルエーテル75質量部の混合溶液に溶解させて樹脂固形分25質量%の高分子分散剤溶液を得た。
前記高分子分散剤溶液の36質量%にジエチレングリコールジエチルエーテル19質量%を加え混合し、二酸化チタン分散用樹脂ワニスを調製し、さらに二酸化チタン(CR−90、アルミナシリカ処理(アルミナ/シリカ 0.5)、体積基準の平均粒子径300nm、吸油量21ml/100g、石原産業(株)製)45質量%を加えて撹拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行ない、二酸化チタン分散液を得た。
また、カラーインク組成物に含むシアン顔料は、下記の方法によって分散させた。水溶性樹脂(メタクリル酸/ブチルアクリレート/スチレン/ヒドロキシエチルアクリレート=25/50/15/10の質量比で共重合したもの。重量平均分子量12,000)40部を水酸化カリウム7部、水23部およびトリエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル30部の混合液に投入し、80℃で加熱および撹拌して溶解し、水溶性樹脂溶液を調整する。この溶液(固形分43%)1.75kgに、ピグメントブルー15:3を3.0kg、エチレングリコール1.5kgおよび水8.75kgを配合し、混合撹拌機で撹拌しプレミキシングを行う。この顔料混合液を0.5mmのジルコニアビーズを85%充填した1.5リットルの有効容積を有する多ディスク型羽根車を備えた横型のビーズミルで多パス方式により分散を行った。具体的には、ビーズ周速を8m/秒、1時間に30リットルの吐出量で2パス行い、顔料混合液を得た。次に0.05mmのジルコニアビーズを95%充填した1.5リットルの有効容積を有する横型のアニュラー型のビーズミルで循環分散を行った。スクリーンは0.015mmのものを使用し、ビーズ周速を10m/秒で、顔料分散混合液量10kgを循環量300リットル/時で4時間分散処理を行い、顔料固形分20%の顔料分散液を得た。
図2(b)に示すカラー画像の乾燥率は約70%であり、図2(c)に示す白色系画像の乾燥率は約75%であった。また、表面張力は表面張力計CBVP−Z(協和界面科学株式会社製)を用い、測定した。
表2に評価の基準を示す。表2に示すように評価の基準は次の通りである。
1)非記録媒体200上のインクの凝集ムラ
被記録媒体200上に吐出されたインクの凝集の程度をデューティー(duty)で評価する。dutyとは、下記式(12)で算出される値である。
duty(%)={(実印字ドット数)/(縦解像度)×(横解像度)}×100
式中、「実印字ドット数」とは、単位面積当たりの実印字ドット数、「縦解像度」および「横解像度」とは、縦横それぞれの単位長さ当たりの解像度である。duty100%は、画素に対する単色インクの最大インク質量を意味する。duty100%において凝集の無い状態を「A」評価とし、duty50%でも凝集が発生する状態を「C」評価とする3段階評価とした。
2)インク重ね合わせ時の凝集ムラ
図2(b)に示す第2モードによって形成される記録物210bの形態において、カラー画像Pc上に白色系画像Pwを形成した場合の白色系インクの凝集ムラを評価する。評価は、上述のduty値による。duty100%において凝集の無い状態を「A」評価とし、duty50%でも凝集が発生する状態を「C」評価とする3段階評価とした。
3)白色系画像Pwとカラー画像Pcとの混色
図2(a)に示す記録物210aにおいて、白色系画像Pwとカラー画像Pcとの境界部における混色、いわゆる横方向ブリードを評価する。duty100%において混色の無い状態を「A」評価とし、duty50%でも混色が発生する状態を「C」評価とする3段階評価とした。
4)カラー画像Pcへの白色系インクの沈み込み
図2(b)に示す記録物210bにおいて、カラー画像Pc上に白色系画像Pwを形成する白色系インクが吐出された場合に、白色系インクのカラー画像Pcへの沈み込み、いわゆる縦方向ブリードを評価する。沈み込みの無い状態を「A」評価とし、被記録媒体200の被記録面の反対面より視認できる沈み込みが発生する状態を「C」評価とする3段階評価とした。
Figure 0006040539
そして、上述の評価基準である、「非記録媒体200上のインクの凝集ムラ」「インク重ね合わせ時の凝集ムラ」「白色系画像Pwとカラー画像Pcとの混色」「カラー画像Pcへの白色系インクの沈み込み」のいずれにも「C」評価が無いこととする。
図3に示すように、白色系インクの表面張力(S1)とカラーインクの表面張力(S2)との差が−4以上2以下となる実施例1〜4において良好な結果が得られた。しかし、白色系インクの表面張力(S1)とカラーインクの表面張力(S2)との差が−5以下であった比較例1、および白色系インクの表面張力(S1)とカラーインクの表面張力(S2)との差が3以上であった比較例2では、「C」評価項目があった。
100…インクジェット式記録装置、101…キャリッジ、102…キャリッジモーター、103…タイミングベルト、104…ガイド部材、105…プラテン、106…白色系インクカートリッジ、107…カラーおよびブラックインクカートリッジ、120…キャッピング手段、130…吸引ポンプ、140…ワイピング部材、200…記録媒体、210…記録物、300…インクジェット式記録ヘッド。

Claims (3)

  1. 水を50質量%以上含む水系インクで第1の顔料を含む第1のインク組成物と、水を50質量%以上含む水系インクで第2の顔料を含む第2のインク組成物とを備えたインクセットであって、
    前記第1のインク組成物は光透過性を有する被記録媒体上にインクジェットで吐出されるカラー画像を形成し、
    前記第2のインク組成物は前記第1のインク組成物によるカラー画像上にインクジェットで吐出される背景用画像を形成するのに用いられるものであり、
    前記第2のインク組成物の表面張力をS1(mN/m)、前記第1のインク組成物の表面張力をS2(mN/m)とした場合に、
    −5<(S1−S2)<4
    であり、
    前記第2のインク組成物に含まれる前記第2の顔料の沈降速度は前記第1のインク組成物に含まれる前記第1の顔料より速く、
    前記第2の顔料は、下記の式に示す沈降速度vが2.0×10 −6 (cm/s)以上である
    v={(ρ−ρ)gR}/(18η)
    (上記式における、vは沈降速度ρは顔料の密度、ρ は溶媒の密度gは重力加速度、Rは顔料の直径ηは溶媒の粘度ある)
    ことを特徴とするインクセット。
  2. 前記第1のインク組成物と前記第2のインク組成物とが、デービス法により算出されたHLB値が4.2〜7.8の範囲内であるグリコールエーテル類、ポリエーテルシロキサン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤からなる群から選択される物質を含む、
    ことを特徴とする請求項1に記載のインクセット。
  3. 請求項1のインクセットの第1のインク組成物を光透過性を有する被記録媒体に吐出し前記被記録媒体上のカラー画像を形成し、その上に前記インクセットの第2のインク組成物を吐出して背景用画像を形成するインクジェット式記録ヘッドと、前記被記録媒体を搬送する搬送機構と、背景用画像形成前に前記カラー画像を乾燥させる手段とを備え、前記乾燥手段は前記背景用画像形成時の前記カラー画像の乾燥率を40%以上90%以下とするものであることを特徴とする記録装置。
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