図1ないし図4は、本発明の切削インサートの第1の実施形態の外観を示し、図5ないし図8はこの第1の実施形態の切削インサートを取り付けた本発明の刃先交換式切削工具の一実施形態の外観を示す。さらに、図9ないし図12はこの一実施形態の刃先交換式切削工具において切削インサートが取り外された状態の工具本体の外観を示す。
本実施形態の切削インサートはインサート本体1を有する。インサート本体1は、超硬合金、サーメット、表面被覆超硬合金、および表面被覆サーメット等から選択される硬質材料により、多角形の板状、詳しくは多角形面が四角形状をなす板状、さらに詳しくは多角形面が概略平行四辺形状をなす板状に形成され、周回り方向に各一対の鋭角コーナ部Aと鈍角コーナ部Bとが交互に配置される一対の平行四辺形面2と、それらの辺稜部をつなぐ一対の長側面3および一対の短側面4とを備えている。
これら一対の平行四辺形面2は互いに、一方の平行四辺形面2がすくい面とされたときに、他方の平行四辺形面2が後述するインサート取付座の底面に着座する着座面とされる。なお、この例のインサート本体1は平行四辺形状の多角形面を有するが、多角形面は長方形であっても良い。その場合には、一方の対角線の両端部を平行四辺形面2の鈍角コーナ部、他方の対角線の両端部を鋭角コーナ部と見なせばよい。
インサート本体1には、上記一対の平行四辺形面2の中心同士を結ぶインサート中心線Cを中心とした断面円形の取付孔5が形成され、この取付孔5は上記インサート中心線C方向(インサート本体1の厚さ方向)にインサート本体1を貫通している。取付孔5の中央部には、図14や図15に示すように、一段縮径する一定幅かつ突出量が一定の、環状をなす縮径部5Aが形成されている。縮径部5Aは、インサート中心線C方向中央部が幅狭のインサート中心線Cを中心とした円筒面状とされるとともに、その両側にはインサート中心線Cに沿った断面が凸曲線状をなす部分が形成されている。
インサート本体1は、インサート中心線C方向の中心でこのインサート中心線Cと直交して長側面3に略平行に延びる対称線(図示略)と、この対称線とインサート中心線Cとに直交して長側面3の中心を通る対称線Nとに関して、それぞれ180°回転対称形状に形成されている。すなわち、インサート本体1は、表裏反転対称形状とされている。また、インサート本体1は、上記中心線Cに関しても180°回転対称形状に形成されている。従って、図2に示すように一方の平行四辺形面2に対向する方向から見たときに、この一方の平行四辺形面2の鋭角コーナ部A側の位置には他方の平行四辺形面2の鈍角コーナ部Bが位置し、また一方の平行四辺形面2の鈍角コーナ部B側の位置には他方の平行四辺形面2の鋭角コーナ部Aが位置することになる。
上記一対の平行四辺形面2の辺稜部のうち一対の長側面3との交差稜線部、すなわち平行四辺形面2の長辺稜部には、それぞれ主切刃6Aが形成されている。インサート中心線C方向に平行四辺形面2に対向する方向から見て、主切刃6Aは略直線状とされている。また、一対の平行四辺形面2の辺稜部のうち一対の短側面4との交差稜線部、すなわち平行四辺形面2の短辺稜部の鋭角コーナ部A側には、それぞれ副切刃6Bが形成されている。インサート中心線C方向に平行四辺形面2に対向する方向から見て、副切刃6Bは主切刃6Aに対して僅かに鈍角に交差する方向に延びる直線状とされている。
さらに、長側面3と短側面4との交差稜線部は全長に亙って断面円弧状に面取りされており、平行四辺形面2の辺稜部のうち鋭角コーナ部Aには、上記断面円弧状に面取りされた部分に、インサート中心線C方向に平行四辺形面2に対向する方向から見て略1/4円弧状をなすコーナ刃6Cが形成されている。コーナ刃6Cは、主切刃6Aと副切刃6Bとに接するように連なっている。また、平行四辺形面2の鈍角コーナ部Bも円弧状に面取りされている。
主切刃6Aは、長側面3に対向する側面視において図3に示すように、コーナ刃6C(鋭角コーナ部A)から離間して鈍角コーナ部Bに向かうに従い上記インサート中心線C方向に漸次後退するように、すなわち主切刃6Aが辺稜部に形成された平行四辺形面2とは反対側の平行四辺形面2側に向かうように、略一定の傾斜角で略直線状に傾斜させられている。従って、図3に示すように、長側面3も略平行四辺形状をなしてその長手方向(図3において上下方向)に向かうに従いインサート中心線C方向に傾斜するとともに、この長側面3に対向する側面視において、1つの平行四辺形面2に形成される一対の主切刃6Aは、X字状に交差するように配設される。
また、副切刃6Bも、短側面4に対向する側面視において図4に示すように、コーナ刃6C(鋭角コーナ部A)から離間するに従い上記インサート中心線C方向に漸次後退して反対側の平行四辺形面2側に向かうように、略一定の傾斜角で略直線状に傾斜させられている。さらに、コーナ刃6Cは側面視においては、上記1/4円弧を略二等分する位置にインサート中心線C方向の突端を有して主切刃6Aと副切刃Bとに接するように連なる凸曲線状とされている。
なお、平行四辺形面2の辺稜部のうち短側面4との交差稜線部の副切刃6B以外の部分は、平行四辺形面2に対向する方向から見たときには図2に示すように、副切刃6Bと鈍角に交差するとともに平行四辺形面2の鈍角コーナ部Bに形成された円弧状の面取りに接する略直線状とされている。また、短側面4に対向する側面視では図4に示すように、副切刃6Bから離間するに従い、同側面視で副切刃6Bがなす上記傾斜角よりも急傾斜でインサート中心線C方向に直線状に漸次後退した後、凹曲線部を介してインサート中心線Cに略垂直な方向に延びて鈍角コーナ部Bに連なるようにされている。
また、一対の平行四辺形面2には、主切刃6A、副切刃6B、およびコーナ刃6Cの内側に、内方に向かうに従いインサート中心線C方向に漸次後退するポジすくい面2Aが形成されている。本実施形態では、このポジすくい面2Aは平行四辺形面2の全周に亙って略一定の幅で形成されていて、副切刃6Bおよびコーナ刃6Cに直交する断面においては、インサート中心線Cに垂直な方向に対する傾斜角が略一定とされる。
一方、このポジすくい面2Aは、主切刃6Aに沿ってコーナ刃6C(鋭角コーナ部A)から離間するに従っては、平行四辺形面2に対向する方向から見て該主切刃6Aに直交してインサート中心線C方向に延びる断面においてインサート中心線Cに垂直な方向に対する傾斜角が漸次小さくなるようにされている。すなわち、このポジすくい面2Aは、主切刃6Aに対しては鋭角コーナ部A側から鈍角コーナ部B側に向かうに従いすくい角が漸次小さくなるようにされた捩れ面状とされている。
さらに、一対の平行四辺形面2において、このポジすくい面2Aと上記取付孔5の開口部との間には、一対の当接面7が形成されている。そして、これら一対の当接面7は、各平行四辺形面2において、それぞれ一対のインサート側仮想平面Pに沿って配設されており、これら一対のインサート側仮想平面Pは、上記一対の当接面7が形成された上記平行四辺形面2上に延びる、1つの平行四辺形面2に対して1つのインサート側仮想直線Lをそれぞれ含むとともに、このインサート側仮想直線Lに沿った方向から見て図3に示すように、該インサート側仮想直線Lを交点としてX字状に互いに交差する方向に配置されている。
すなわち、これら一対のインサート側仮想平面Pは、上記インサート側仮想直線Lを含む1つの平面をこのインサート側仮想直線Lに交差する分割線を有するようにして2つに分割し、こうして分割された2つの平面をインサート側仮想直線L回りに捩って、該インサート側仮想直線L方向視にX字状に交差するように角度をもたせた構成とされている。そして、一対の当接面7は、それぞれこれら一対のインサート側仮想平面P上に位置するように配設されている。
さらに、インサート本体1の上記長側面3と短側面4のうち、上記一対の当接面7が配設されたインサート側仮想平面Pの上記インサート側仮想直線Lが延びる二方向のうちの一の方向を向く、1つの平行四辺形面2に対して1つの側面には、後述するインサート取付座の1つの壁面に形成された被当接部に当接可能な当接部8が形成されている。本実施形態では、図3に示すように平行四辺形面2に対向する方向から見て、インサート側仮想直線Lは一対の長側面3間に亙って延びており、従って当接部8はこの長側面3に形成される。
また、本実施形態ではインサート本体1が上記インサート中心線Cに関して180°回転対称形状とされており、従って一対の平行四辺形面2上にそれぞれ延びる一対のインサート側仮想直線Lは、このインサート中心線Cに直交することになる。そして、このようにインサート中心線Cに関して180°回転対称形状に形成された本実施形態の切削インサートでは、上記インサート側仮想直線Lが延びる二方向のうちの他の方向を向く、1つの平行四辺形面2に対して他の1つの長側面3にも、インサート本体1をインサート中心線C回りに180°回転させたときに上記被当接部に当接可能な、他の当接部8が形成されている。
さらに、本実施形態の切削インサートにおいて、各平行四辺形面2のインサート側仮想直線Lは、インサート中心線Cに沿って該平行四辺形面2と対向する方向から見て、長側面3に直交する方向に延びている。従って、これらのインサート側仮想直線Lは、こうしてインサート中心線C方向に平行四辺形面2に対向する方向から見て図2に示すように、長側面3の中心を通る上記対称線Nと重なり合うことになる。
また、一対の当接面7が配設される上記一対のインサート側仮想平面Pはそれぞれ、各平行四辺形面2において、その長側面3との交差稜線部に形成された一対の主切刃6Aに隣接するように配置されている。さらに、インサート側仮想直線L方向視において一対のインサート側仮想平面PがなすX字の傾斜の向きは、各インサート側仮想平面Pが隣接する側の主切刃6Aが長側面3に対向する方向から見たときになすX字と同じ向きとされている。
さらにまた、本実施形態における一対の当接面7はそれぞれ、上記一対のインサート側仮想平面Pに沿って配置される互いに離間した複数(本実施形態では2つ)の当接面部7A、7Bによって構成されている。ここで、これらの当接面部7A、7Bは、上記ポジすくい面2Aの略内縁と取付孔5の開口部との間において平行四辺形面2の各一対の鋭角コーナ部A側と鈍角コーナ部B側とに配設されている。すなわち、一対のインサート側仮想平面Pのそれぞれにおいて、当接面部7A、7Bはインサート側仮想直線Lを挟んでその両側に配設され、従って一対の当接面7もそれぞれインサート側仮想直線Lを跨いでその両側に延設される。
このうち、インサート側仮想直線L方向視に一対のインサート側仮想平面PがなすX字のインサート中心線C方向に突出する側に配置される第1の当接面部7Aは、平行四辺形面2の鋭角コーナ部A側に形成されて該鋭角コーナ部Aにおけるポジすくい面2Aの内縁に対し突出する第1の凸部9A上に形成されている。この第1の凸部9Aは、平行四辺形面2に対する方向から見て図2に示すように、副切刃6Bのコーナ刃6Cと反対側の端部の内方から取付孔5の開口部の手前に亙って、各第1の凸部9Aが形成された側の鋭角コーナ部Aに連なる主切刃6Aと略平行に延びるように形成されている。
詳しくは、第1の凸部9Aは、主切刃6Aに略平行な方向の両端部は円錐台をその中心線に沿って半割とした形状とされるとともに、その間の部分はこの両端部に表面が滑らかに連なり、この第1の凸部9Aが延びる方向に直交する断面が図16や図17に示すように略等脚台形状をなすように形成されている。そして、この第1の凸部9Aのインサート中心線C方向の突端面部分が上記第1の当接面部7Aとされて、この第1の当接面部7Aは上記インサート側仮想平面Pに沿った平面状、または突端がインサート側仮想平面Pに沿うようにされた上記断面が曲率半径の大きな凸曲線をなす曲面状とされている。
また、上記X字においてインサート中心線C方向に後退する側に配置される第2の当接面部7Bも、平行四辺形面2の鈍角コーナ部B側において該鈍角コーナ部Bにおけるポジすくい面2A内縁に対して突出する第2の凸部9B上に形成されている。ただし、この第2の凸部9Bの鈍角コーナ部Bにおけるポジすくい面2A内縁に対する突出量は、上記第1の凸部9Aの鋭角コーナ部Aにおけるポジすくい面2A内縁に対する突出量よりも小さくされている。
詳しくは、第2の凸部9Bは、平行四辺形面2に対向する方向から見て、この平行四辺形面2の一対の鈍角コーナ部Bを結ぶ対角線方向に向けて延び、第1の凸部9Aが延びる方向に直交する断面が図16や図17に示すように第1の凸部9Aよりもインサート中心線C方向に偏平した等脚台形状をなしていて、この第2の凸部9Bの平面状の突端面が第2の当接面部7Bとされている。また、この第2の当接面部7Bおよび第2の凸部9Bは、平行四辺形面2に対向する方向から見ても、上記対角線方向内側に向かうに従い漸次幅広となる台形状を呈している。
そして、これら第1、第2の凸部9A、9B上に形成された第1、第2の当接面部7A、7Bは、図14ないし図17に示すように、それぞれが隣接した側の主切刃6Aに隣接する各1つのインサート側仮想平面P上に配置されて、各一対の当接面7を構成するようになされている。なお、取付孔5の開口部は、インサート中心線C方向において第1、第2の当接面部7A、7Bの中間位置に形成されており、このうち第2の当接面部7Bと取付孔5開口部との間には、インサート中心線Cを中心とする外形略円錐面状のボス部2Bが形成されている。
ここで、図14に示すようにこのインサート側仮想直線Lに沿った方向から見たときの一対のインサート側仮想平面Pの傾斜角θは、それぞれインサート中心線Cに直交する平面に対して互いに等しく、5°〜25°の範囲とされている。なお、一対のインサート側仮想平面Pが隣接する側の主切刃6Aのインサート側仮想直線Lに沿った方向から見たときのインサート中心線Cに直交する平面に対する傾斜角も5°〜25°の範囲とされている。ただし、この主切刃6Aの傾斜角は、インサート側仮想平面Pの傾斜角θと等しくても、等しくなくてもよく、本実施形態では僅かに異なる角度とされている。
一方、上述のように当接部8が形成されるインサート本体1の長側面3には主切刃6Aの逃げ面(主逃げ面)が形成され、また短側面4には副切刃6Bの逃げ面(副逃げ面)が形成される。このうち、短側面4には、一対の平行四辺形面2同士で互いに一方の平行四辺形面2の副切刃6Bから他方の平行四辺形面2側に向けて順に、第1副逃げ面4Aと、第2副逃げ面4Bと、ネガ面4Cとが形成されている。
第1副逃げ面4Aは、一方の平行四辺形面2の副切刃6Bに連なり、他方の平行四辺形面2側に向かうに従い漸次インサート本体1の外側に僅かに突き出すように傾斜するとともに、第2副逃げ面4は、同じく他方の平行四辺形面2側に向かうに従い第1副逃げ面の傾斜よりも急傾斜で逆に漸次インサート本体1の内側に後退するように形成されていて、これら第1、第2副逃げ面4A、4Bは長側面3に対向する方向から見て図3に示すように略凸曲面をなすようにされている。また、ネガ面4Cは、第2副逃げ面4Bからインサート中心線Cに略平行に延びて、他方の平行四辺形面2の副切刃6Bから延びる第1副逃げ面4A、第2副逃げ面4B、およびネガ面4Cと交差させられ、この他方の平行四辺形面2の副切刃6Bのコーナ刃6Cとは反対側の端部から鈍角コーナ部Bの間に達するように形成されていて、平行四辺形面2に対向する方向から見て、副切刃6Bのコーナ刃6Cの反対側の端部に連なるネガ面4C同士が凹V字状をなすようにされている。
なお、図4に示すように短側面4に対向する方向から見た側面視において、第1副逃げ面4Aと第2副逃げ面4Bとの交差稜線部は副切刃6Bに略平行に延びている一方、第2副逃げ面4Bと、この第2副逃げ面4Bから他方の平行四辺形面2側に向けて延びるネガ面4Cとの交差稜線部はインサート中心線Cに垂直な方向に延びている。また、同側面視において、第1副逃げ面4Aとネガ面4Cとの交差稜線部は副切刃6Bのコーナ刃6Cと反対側の端部からインサート中心線Cに略平行に延びているとともに、ネガ面4C同士の交差稜線部は短側面4の中央部においてインサート中心線Cに沿って延びており、これらの交差稜線部を結ぶように、第2副逃げ面4Bと他方の平行四辺形面2側から延びるネガ面4Cとの交差稜線部はインサート中心線C方向中央部に向けて斜めに延びている。
さらに、長側面3には、一対の平行四辺形面2からそれぞれインサート中心線C方向の中央部に向けて順に、この長側面3と一対の平行四辺形面2との交差稜線部に形成された主切刃6Aに連なる一対の上述した主逃げ面3Aと、これらの主逃げ面3Aに連なり、インサート中心線C方向中央部側に向けてインサート本体1の外側に向けて凸となる凸曲面状をなすように湾曲した一対の凸曲面部3Bと、これらの凸曲面部3Bに連なって長側面3のインサート中心線C方向中央部に位置し、インサート本体1の内側に凹む凹曲面状に湾曲した1つの凹曲面部3Cが形成されている。
そして、本実施形態における上記当接部8は、長側面3のうちでも上記凸曲面部3Bに形成されている。さらに、1つの長側面3に形成された一対の凸曲面部3Bのうちでも、一方の平行四辺形面2がすくい面とされて、その長辺稜部に形成された一対の主切刃6Aのうち一方の主切刃6Aが切削に使用されるときには、上記一方の平行四辺形面2においてこの一方の主切刃6Aとは反対側の他方の主切刃6Aに主逃げ面3Aを介して連なる凸曲面部3Bに形成された当接部8が、後述する被当接部に当接させられる。
また、長側面3に対向する側面視において図3に示すように、主逃げ面3Aは、該主逃げ面3Aが連なる主切刃6Aに沿ってこの主切刃6Aの鋭角コーナ部Aから鈍角コーナ部Bに向かうに従いインサート中心線C方向の幅が漸次小さくなるとともに、一対の凸曲面部3Bは各凸曲面部3Bが連なる側の鋭角コーナ部Aから鈍角コーナ部Bに向かうに従いインサート中心線C方向の幅が僅かに漸次大きくなり、上記1つの凹曲面部3Cは中心線C方向の幅が略一定となるようにされている。
これら主逃げ面3A、凸曲面部3B、および凹曲面部3Cは全体として、長側面3と同様に長側面3の長手方向に向かうに従いインサート中心線C方向に傾斜させられている。なお、凸曲面部3Bがなす湾曲の曲率半径と凹曲面部3Cがなす湾曲の曲率半径は長側面3の長手方向に向けてそれぞれ略一定とされ、すなわちこれら凸曲面部3Bと凹曲面部3Cとは凸凹の円筒面状に形成されている。
これに対して、主逃げ面3Aは、平行四辺形面2に対向する方向から見て主切刃6Aに直交してインサート中心線C方向に延びる断面においては、主切刃6Aから離間するに従いインサート本体1の外側に向けて僅かに突出するように傾斜して形成され、ただしそのインサート中心線C方向に対する傾斜角が主切刃6Aに沿ってコーナ刃6C(鋭角コーナ部A)から離間するに従い漸次小さくなるようにされている。
すなわち、この主逃げ面3Aは、このように平行四辺形面2に対向する方向から見て主切刃6Aに直交してインサート中心線C方向に延びる断面において、インサート中心線C方向に垂直な平面となす角度が、主切刃6Aに沿ってコーナ刃6C(鋭角コーナ部A)から鈍角コーナ部B側に向かうに従い漸次小さくなるようにされて、主切刃6Aに対する逃げ角が正角側に漸次大きくなるようにされた捩れ面状とされている。従って、凸曲面部3Bは、本実施形態ではインサート中心線C方向中央部に向けて主逃げ面3から一旦インサート本体1の外側に突出した後、内側に向かう凸曲面状とされる。
また、本実施形態の切削インサートでは、インサート中心線Cに沿って平行四辺形面2に対向する方向から見て図2や図24に示すように、一対の平行四辺形面2がインサート中心線C回りに僅かに回転させられて捩られるように形成されており、これによって主切刃6Aが一対の平行四辺形面2同士でずれて交差するようにされている。より詳しくは、図24に示すように平行四辺形面2に対向する方向から見て、一対の平行四辺形面2同士で互いに、一方の平行四辺形面2の鋭角コーナ部A側の主切刃6Aから他方の平行四辺形面2の鈍角コーナ部Bがインサート本体1の外側に僅かにはみ出すように、主切刃6Aが形成される長辺稜部が互いに交差させられている。
さらに、主逃げ面3A自体は、図18に示すように主切刃6Aに連なる凸円弧状をなす第1主逃げ面3aと、この第1主逃げ面3aのインサート中心線C方向中央部側に連なる断面直線状の第2主逃げ面3bとから構成されている。本実施形態では、第1主逃げ面3aのインサート中心線C方向の幅は略一定とされ、第2主逃げ面3bの幅が鋭角コーナ部Aから鈍角コーナ部Bに向かうに従い漸次小さくなることにより、主逃げ面3Aの上記幅が鋭角コーナ部Aから鈍角コーナ部Bに向けて小さくされている。
なお、主逃げ面3A自体は、上述のような捩れ面であれば、工具本体11に取り付けた状態で次述する軸線Oに直交する断面において図21に示すように主逃げ面3A上のいずれの位置でも逃げ角βが一定となる、いわゆるエキセントリック(偏心)逃げ面であってもよく、あるいは図22に示すように円板型砥石Gの外周面によって形成されるような凹曲線状をなす、いわゆるコンケーブ逃げ面であってもよく、さらには同図22に示す直線状をなす直線二番面であってもよい。
図5ないし図8は、上記切削インサートを着脱可能に備えた本発明の一実施形態の刃先交換式切削工具を示しており、図9ないし図12は、この刃先交換式切削工具から切削インサートを取り外した状態を示している。この刃先交換式切削工具は、刃先交換式の転削工具、特にエンドミルであり、工具本体11を有する。工具本体11は、鋼材等から形成され、軸線Oを中心とした多段円柱状をなし、このうち後端側部分(図5および図9において上側部分。図7、図8および図10、図11においては右部分)がシャンク部11Aとされ、先端部が切刃部11Bとされている。
このような刃先交換式切削工具は、シャンク部11Aが工作機械の主軸に把持されて、工具本体11が軸線O回りに工具回転方向Tに回転されつつ、上記軸線Oに交差する方向(通常は軸線Oに垂直な方向)に送り出されることにより、切刃部11Bに取り付けられた上記切削インサートの切刃(主切刃6A、副切刃6B、およびコーナ刃6C)によって被削材を切削してゆく。
切刃部11Bの外周には、その先端面すなわち工具本体11の先端面に開口して後端側に延びるチップポケット12が、周方向に複数(本実施形態では2つ)等間隔に、すなわち軸線Oを挟んで互いに反対側に形成されている。さらに、これらのチップポケット12の工具回転方向T側を向く壁面には、図9ないし図12に示すように切刃部11Bの先端面と外周面とに開口して上記切削インサートが取り付けられるインサート取付座13が、上記壁面から工具回転方向Tの後方側に一段凹むように形成されている。
インサート取付座13は、工具回転方向Tを向く底面14と、工具本体11の外周側を向く壁面15と、工具本体11の先端側を向く壁面16とを有する。インサート本体1の一対の平行四辺形面2のうち、一方の平行四辺形面2がすくい面として工具回転方向Tに向けられたときに、他方の平行四辺形面2が着座面として底面14に着座させられる。壁面15は、上記底面14の工具本体11内周側の縁部から外周側に向けて立ち上がって、チップポケット12の工具回転方向Tを向く上記壁面に連なる。壁面16は、上記底面14の工具本体11後端側の縁部から工具回転方向T側に向けて立ち上がって、チップポケット12の工具回転方向Tを向く壁面に連なる。
ただし、底面14と壁面15、16との交差稜線部および壁面15、16同士の交差稜線部は、上記着座面とされた他方の平行四辺形面2のそれぞれ工具本体11内周側に配置される主切刃6Aと、工具本体11後端側に配置される副切刃6Bと、後端内周側に配置されるコーナ刃6Cと、さらに上記主切刃6Aに連なる長側面3の他方の平行四辺形面2側の主逃げ面3A、凸曲面部3B、および凹曲面部3Cとの干渉を避けるため、凹溝状をなす逃げ部17Aによって切り欠かれている。
底面14と切刃部11Bの外周面および先端面との交差稜線部にも、同じく着座面とされた平行四辺形面2の工具本体11外周側に配置される主切刃6A、先端側に配置される副切刃6B、先端外周側に配置されるコーナ刃6C、および、その内側のポジすくい面2A等との干渉を避けるために、面取り状の逃げ部17Bが形成されている。
底面14の中央部には、上述のようにインサート取付座13にインサート本体1が着座させられた状態で、すくい面とされた一方の平行四辺形面2側から取付孔5に挿通されたクランプネジ18がねじ込まれるネジ孔14Aが形成されている。図10に示すように、ネジ孔14Aは、底面14への開口部から孔底側(工具回転方向Tの後方側)に向かうに従い工具本体後端側に向かうように僅かに傾斜させられている。インサート本体1は、ネジ孔14Aにねじ込まれたクランプネジ18の頭部裏面が取付孔5の上記縮径部5Aを押圧することにより、インサート取付座13に取り付けられる。底面14のネジ孔14Aの周りにも、着座面とされる平行四辺形面2側のボス部2Bとの干渉を避けるための凹状の逃げ部17Cが形成されている。
底面14には、着座面とされた平行四辺形面2の上記一対の当接面7が当接可能とされた一対の被当接面19が、図14および図15に示すようにそれぞれ一対の取付座側仮想平面Qに沿って形成されている。ここで、本実施形態では、上記一対の被当接面19も、第1の実施形態の切削インサートにおける当接面7と同様に、図9および図10あるいは図14および図15に示されるように、上記一対の取付座側仮想平面Qに沿って配置される互いに離間した複数(本実施形態では2つ)の被当接面部19A、19Bによって構成されている。
また、上記一対の取付座側仮想平面Qも、一対のインサート側仮想平面Pと同様に、底面14上に延びる1つの取付座側仮想直線Mをそれぞれ含むとともに、この取付座側仮想直線Mに沿って見たときにX字状に互いに交差する方向に配設されている。そして、こうして取付座仮想直線M方向視に見たときの一対の取付座側仮想平面Qの傾斜の向きおよび交差角は、インサート側仮想直線L方向視に見たときの着座面とされる平行四辺形面2の一対のインサート側仮想平面Pの傾斜の向きおよび交差角と等しくされていて、すなわち一対の取付座側仮想平面QがなすX字は一対のインサート側仮想平面PがなすX字と相補的なX字状とされている。
さらに、これら一対の取付座側仮想平面Qに含まれる1つの取付座側仮想直線Mは、ネジ孔14Aの中心線と直交し、底面14に対向する方向から見て底面14から立ち上がる壁面15、16のうち1つの壁面に交差するように延びている。本実施形態では、取付座側仮想直線Mは工具本体11の外周側を向く壁面15に交差させられていて、この壁面15に、切削インサートの当接部8と当接させられる被当接部20が形成される。
この被当接部20は、底面14の工具本体11内周側の縁部から外周側に立ち上がる壁面15の略中央部に、壁面15に対向する方向から見て工具本体11の先端側から後端側に向かうに従い外周側に向かうように傾斜して延びるとともに、工具本体11の内周側から外周側に向かうに従い工具回転方向T側にも僅かに傾斜した平面状に形成されている。ここで、壁面15に対向する方向から見たときのネジ孔14Aの中心線に対する被当接部20の傾斜は、インサート本体1の長側面3に対向する方向から見たときのインサート中心線Cに対する当接部8(凸曲面部3B)の傾斜と向きが反対で、傾斜角が略等しいものとされている。なお、被当接部20の中央部には切欠20Aが形成されている。
また、取付座側仮想直線Mは、ネジ孔14Aの中心線方向に底面14に対向する方向から見て、工具本体11の軸線Oに略直交する方向、あるいは工具本体11の内周側に向かうに従い先端側に向かうように極僅かに傾斜して延びており、被当接部20はこの取付座仮想直線Mに直交する方向に延びている。すなわち、この取付座側仮想直線Mがネジ孔14Aの中心線方向視に被当接部20に対してなす交差角は、切削インサートのすくい面とされる平行四辺形面2側からインサート中心線C方向視に見たときの着座面とされる平行四辺形面2におけるインサート側仮想直線Lが、この着座面に対する当接部8が形成された凸曲面部3B(すくい面とされる平行四辺形面2側の凸曲面部3B)に対してなす交差角と等しくされる。
従って、上記一対の被当接面19は、本実施形態では底面14の工具本体11外周側と内周側とに配設されることになる。このうち、外周側の被当接面19は図11および図14に示すように工具本体11後端側に向かうに従い僅かに工具回転方向Tの後方側に向かうように傾斜している一方、内周側の被当接面19は図11および図15に示すように外周側の被当接面19よりも大きな角度で工具本体11後端側に向かうに従い工具回転方向Tの前方側(工具本体11の外周側)に向かうように傾斜している。
また、一対の被当接面19の各2つの被当接面部19A、19Bは、底面14においてネジ孔14Aの工具本体11先端外周側と後端外周側および後端内周側と先端内周側に配設されている。すなわち、一対の取付座側仮想平面Qのそれぞれにおいて、被当接面部19A、19Bは取付座側仮想直線Mを挟んでその両側に配設され、従って一対の被当接面19もそれぞれ取付座側仮想直線Mを跨いでその両側に配設される。なお、一対の被当接面19のそれぞれ工具本体11先端側の被当接面部19A、19B同士の間と、工具本体11後端側の被当接面部19A、19B同士の間には、図16および図17に示すようにインサート本体1の上記第1、第2の凸部9A、9Bとの干渉を避けるための逃げ部17Dが形成されている。
このように形成されたインサー取付座13に、上記切削インサートは上述のように、そのインサート本体1の一方の平行四辺形面2をすくい面として工具回転方向Tに向けるとともに、一方の長側面3を工具本体11外周側に、一方の短側面4を工具本体11先端側に向け、他方の平行四辺形面2が底面14に着座させられる。このとき、本実施形態では、合計4つの上記被当接面部19A、19Bに他方の平行四辺形面2の合計4つの当接面部7A、7Bがそれぞれ当接され、すなわち一対の当接面8が一対の被当接面19に、互いのインサート側仮想平面Pおよびインサート側仮想直線Lを取付座側仮想平面Qおよび取付座側仮想直線Mと一致させるようにして当接させられる。
この状態で、インサート本体1は、インサート中心線Cがネジ孔14Aの中心線と平行とされ、互いに一致させられた取付座側仮想直線Mおよび他方の平行四辺形面2におけるインサート側仮想直線Lに沿った方向への移動のみが許容され、それ以外の方向には拘束される。そこで、こうしてインサート本体1を着座させたまま、この他方の平行四辺形面2におけるインサート側仮想直線Lに沿って、上記一方の長側面3とは反対の他方の長側面3側に向けて、すなわち工具本体11の内周側に向けて、インサート本体1を移動させると、図16および図17に示すように壁面15の被当接部20に他方の長側面3の一方の平行四辺形面2側の当接部8が当接してインサート本体1が位置決めされる。
すなわち、(1)この他方の長側面3の一方の平行四辺形面2側の当接部8と他方の平行四辺形面2のインサート側仮想直線Lとがインサート中心線C方向視になす交差角と、インサート取付座13の壁面15に形成された被当接部20と取付座側仮想直線Mとがネジ孔14Aの中心線方向視になす交差角が、互いに等しくされている。(2)当接部8が形成される凸曲面部3Bは長側面3の長手方向に亙って断面が略一定の曲率半径の凸曲線をなす凸曲面とされ、被当接部20は工具本体11の外周側に向かうに従い工具回転方向T側に僅かに傾いた傾斜平面状とされている。上記(1)、(2)の理由により、図16および図17に示すように傾斜平面状の被当接部20に凸曲面状の当接部8が切欠20Aを除いて長側面3の全長に亙って当接し、インサート本体1が安定して位置決めされる。
さらに、こうして位置決めされた状態で、インサート本体1の取付孔5の中心線であるインサート中心線Cは、ネジ孔14Aの中心線に対して、僅かに工具本体11の外周側に偏心させられている。従って、クランプネジ18を取付孔5から挿入してネジ孔14Aにねじ込むと、クランプネジ18の頭部裏面によって、取付孔5の縮径部5Aのうち工具本体11の内周側に位置する部分が押圧される。これにより、インサート本体1は、クランプネジ18により、底面14に押し付けられるとともに、他方の長側面3における一方の平行四辺形面2側の凸曲面部3Bに形成された当接部8が壁面15の被当接部20にも押し付けられるようにして、インサート取付座13に着脱可能に固定される。
このようにインサート取付座13に固定された状態で、すくい面とされる一方の平行四辺形面2の工具本体11外周側に向けられた切削に使用される主切刃6Aは、工具本体11の軸線Oを中心とする円筒面上に略位置させられ、あるいは極小さなバックテーパが与えられ、正の軸方向すくい角と、ポジすくい面2Aによって望ましくは正または0°の径方向すくい角とが与えられる。また、この主切刃6Aに連なる主逃げ面3Aにも正または0°の逃げ角が与えられる。なお、この主切刃6Aの裏側の、着座面とされる他方の平行四辺形面2の工具本体11外周側に向けられた主切刃6Aは、上記切削に使用される主切刃6Aの軸線O回りの回転軌跡である上記円筒面の内側に配置されて被削材の加工面と干渉することがないようにされ、切削には使用されない。
一方、上記切削に使用される主切刃6Aにコーナ刃6Cを介して連なる、切削に使用される副切刃6Bは軸線Oに垂直な平面上に略位置させられ、略0°の径方向すくい角と、ポジすくい面2Aによって正の軸方向すくい角が与えられ、さらに第1、第2副逃げ面4A、4Bにも正の逃げ角が与えられる。なお、着座面とされる他方の平行四辺形面2の工具本体11先端側に向けられる副切刃6Bは、切削に使用される副切刃6Bが位置する上記軸線Oに垂直な平面よりも工具本体11後端側に位置して、やはり切削に使用されることはない。
第1の実施形態の切削インサート、およびこれを取り付けた一実施形態の刃先交換式切削工具においては、上述のようにインサート本体1がインサート取付座13の底面14に形成された一対の被当接面19と、工具本体11の外周側を向く壁面15に形成された被当接部20とによって拘束されて固定され、工具本体11の先端側を向くインサート取付座13の壁面16はこの切削インサートの取り付けに関与することがない。すなわち、1つの平行四辺形面2に対してインサート側仮想直線Lが延びる方向のうち一方向については、本実施形態では1つの長側面3の1つのみの当接部8が、インサート取付座13の1つの壁面15の1つの被当接部20に当接させられる。
このため、図9ないし図11に示したように、インサート取付座13の工具本体11後端側に大きなチップポケット12を形成することにより、壁面16が小さくなったり、図14に示すように工具本体11後端側に向けられた他方の短側面4と壁面16との間に間隔が空いたり、場合によっては壁面16自体が形成されなかったりしても、切削インサートの取り付けに支障が生じることはない。従って、大きなチップポケット12を形成しても安定して切削インサートを保持することができ、大きなチップポケット12によって切屑排出性の向上を図ることができる。
また、図5ないし図12に示した実施形態の刃先交換式切削工具では、工具本体11先端部の切刃部11Bに軸線O方向においては1つのインサート取付座13しか形成されていない。しかし、本発明はこれに限定されず、インサート取付座13の後端側に、1または複数のインサート取付座13を形成して、工具の多刃化を図ることもできる。このような場合でも、上記切削インサートおよび刃先交換式切削工具によれば、上述のようにインサート取付座13の後端側に壁面16を形成する必要が無いことから、軸線O方向に隣接するインサート取付座13を近接して形成することができる。
例えば、軸線O方向後端側に隣接するインサート取付座13をインサート本体1の厚さ分程度、工具回転方向Tの後方側にずらして形成することにより、1列のインサート取付座13に取り付けられた切削インサートによって、主切刃6Aの回転軌跡が連続した切刃列を形成することも可能となる。このため、このような切刃列を1つの工具本体11により多く設けることが可能となって、切削効率の向上を図ることができる。
また、本実施形態の切削インサートは、そのインサート本体1が表裏反転対称形状とされていて、1つの主切刃6Aや副切刃6B、コーナ刃6Cに摩耗が生じたりしたときはインサート本体1を反転させてインサート取付座13に取り付け直すことにより、すくい面とされていた一方の平行四辺形面2を着座面とするとともに着座面とされていた他方の平行四辺形面2をすくい面として、この他方の平行四辺形面2の辺稜部に形成された主切刃6Aや副切刃6B、コーナ刃6Cを使用することができる。
このとき、新たな着座面とされた平行四辺形面2に対しては、工具本体11内周側に位置させられた新たな長側面3の新たにすくい面とされた平行四辺形面2側の凸曲面部3Bに当接部8が形成されて、インサート取付座13の壁面15の被当接部20に当接させられる。すなわち、こうしてインサート本体1を反転させることにより、反対側の長側面3の当接部8をインサート取付座13の壁面15の被当接部20に当接させることが可能である。
本実施形態では、インサート本体1がインサート中心線Cに関しても180°回転対称に形成されており、このインサート中心線C回りに180°回転させることにより、1つの平行四辺形面2をすくい面としたまま、その一対の長短側面3、4との交差稜線部と鋭角コーナ部Aに形成された各一対の主切刃6A、副切刃6B、およびコーナ刃6Cをそれぞれ使用することができる。すなわち、本実施形態の切削インサートでは合計4回の主切刃6A、副切刃6B、およびコーナ刃6Cの使い回しが可能となる。
このとき、着座面とされた1つの他方の平行四辺形面2に対しては、インサート側仮想直線Lが延びる方向のうち、先とは逆側の長側面3の当接部8がインサート取付座13の壁面15の被当接部20に当接可能とされる。こうしてインサート本体1をインサート中心線C回りに180°回転させてインサート取付座13に取り付けたときと、インサート本体1を表裏反転させて取り付けたときでは、同一の長側面3の一対の凸曲面部3Bに形成された当接部8がそれぞれ被当接部20に当接させられる。
すなわち、表裏一対の平行四辺形面2のうち、一方の平行四辺形面2におけるインサート側仮想直線L方向のうちの一方向を向く1つの長側面3と、1つの他方の平行四辺形面2に対してのインサート側仮想直線L方向のうち他の方向を向く1つの長側面3とが、同一の長側面3とされ、この長側面3の一対の凸曲面部3Bに当接部8がそれぞれ形成されることになる。
なお、第1の実施形態の切削インサートでは、このように平行四辺形面2に対向する方向から見てインサート側仮想直線Lがインサート本体1の長側面3に交差するようにされて、この長側面3に当接部8が形成されるとともに、一実施形態の刃先交換式切削工具では、インサート取付座13の工具本体11外周側を向く壁面15に取付座側仮想直線Mが交差させられて被当接部20が形成されているが、インサート側仮想直線Lをインサート本体1の短側面4に交差させてこの短側面4に当接部8を形成するとともに、インサート取付座13においても取付座側仮想直線Mを工具本体11先端側を向く壁面16に交差させて、この壁面16に被当接部20を形成するようにしてもよい。
この場合には、インサート取付座13における工具本体11外周側を向く壁面15が切削インサートの取り付けに関与しないようにすることができ、この壁面15を小さくしたり、壁面15の内周側の工具本体11の肉厚を小さくしたり、壁面15と長側面3との間に間隔をあけたり、場合によっては壁面15そのものを不要としたりすることができる。このため、チップポケット12の容量をインサート取付座13の内周側に大きく確保して切屑排出性の向上を図ったり、極小径の刃先交換式切削工具であっても周方向に多数のインサート取付座13を設けて、より多くの切削インサートを取り付けることにより切削効率を高めたりすることができる。
ただし、特に上記実施形態であるエンドミルのような刃先交換式切削工具では、工具本体11の外周側に向けられる主切刃6Aから工具本体11内周側に作用する切削負荷の方が、工具本体11先端側に向けられた副切刃6Bから工具本体11後端側に作用する切削負荷よりも大きくなるので、この大きな切削負荷を、当接面積を大きく確保することができるインサート本体1の長側面3とインサート取付座13の工具本体11外周側を向く壁面15に形成された当接部8と被当接部20で受けるようにするのが、切削インサートの取付安定性を維持する上で望ましい。
また、第1の実施形態の切削インサートでは、一対の当接面7が、インサート側仮想直線Lに沿って見たときにX字状に交差する一対のインサート側仮想平面P上に形成されていて、それぞれこのインサート側仮想直線Lを跨いでその両側に配設されるとともに、実施形態の刃先交換式切削工具でも、インサート取付座13の一対の被当接面19が、取付座側仮想直線Mに沿って見たときにインサート側仮想平面Pと相補的なX字状に交差する一対の取付座側仮想平面Q上に形成されて、やはり取付座側仮想直線Mを跨いでその両側に配設されている。
このため、インサート側仮想直線Lと取付座側仮想直線Mの両側で当接面7と被当接面19とを当接させてこれらインサート側仮想直線Lと取付座側仮想直線Mを高精度に一致させることができ、これに伴いインサート本体1のインサート取付座13への取付精度の向上を図って、引いては高精度の切削加工を促すことができる。また、こうしてX字状に配設された一対の当接面7がインサート側仮想直線Lの両側で一対の被当接面19により支持されるので、インサート本体1の取付安定性の向上も図ることができる。
さらに、本実施形態の切削インサートでは、インサート取付座13の壁面15に形成された被当接部20が上述のような傾斜平面状であるのに対して、インサート本体1の当接部20は長側面3の長手方向に延びる断面が略一定の曲率半径とされた凸曲面部3Bに形成されている。このため、例えばインサート本体1がその製造誤差などによって長側面3に略平行に延びる上記対称線回りに僅かに傾いて取り付けられても、この傾きは凸曲面部3Bの湾曲に沿ったものとなるので、当接部8を被当接部20に確実に当接させることができる。
また、本実施形態では、主切刃6Aに連なるポジすくい面2Aが鋭角コーナ部A側から鈍角コーナ部B側に向かうに従いすくい角が漸次小さくなるようにされた捩れ面状とされるとともに、主逃げ面3Aは鋭角コーナ部Aから離間して鈍角コーナ部B側に向かうに従い逃げ角が正角側に漸次大きくなるようにされた捩れ面状とされている。従って、上述のように主切刃6Aに正の軸方向すくい角を与えてインサート本体1を取り付けたときには、図19および図20に示すように主切刃6Aの径方向すくい角αと逃げ角βを主切刃6Aの全長に亙って略一定とするとともに主切刃6Aの刃物角も略一定とすることが可能となり、部分的に切削抵抗が増大したり刃先強度が低下したりして主切刃6Aが損傷したりするのを防ぐことができる。
ところで、このように主逃げ面3Aが捩れ面状に形成されている場合において、平行四辺形面2に対向する方向から見て略直線状をなす主切刃6Aが例えば図26に示すように一対の平行四辺形面2同士で重なり合っていると、主切刃6Aの鋭角コーナ部A側から鈍角コーナ部B側に向けて主逃げ面3Aの逃げ角が正角側に漸次大きくなるのに伴い、主逃げ面3Aのインサート中心線C方向内側でのインサート本体1の外側に向けた突出量は漸次小さくなるため、図27に示すように一方の平行四辺形面2の鋭角コーナ部A側の主切刃6Aの主逃げ面3Aに連なる凸曲面部3Bと、他方の平行四辺形面2の鈍角コーナ部B側の主切刃6Aの主逃げ面3Aに連なる凸曲面部3Bとをそのまま延長すると、長側面3の長手方向においてこれらの凸曲面部3Bが交差する位置がインサート中心線C方向にずれてしまう。
そして、このような場合には、鈍角コーナ部B側の主切刃6Aの主逃げ面3Aに連なる凸曲面部3Bが小さくなったり、場合によっては主切刃6Aの鈍角コーナ部B側に凸曲面部3Bを形成すること自体ができなくなったりしてしまう。従って、これに伴いこの凸曲面部3Bに形成されるべき当接部8も小さくなったり、鈍角コーナ部Bに当接部8を設けることができなくなったりするために被当接部20への当接面積も小さくなって、インサート本体1を安定してインサート取付座13に取り付けることが困難となるおそれが生じる。
その一方で、無理に凸曲面部3Bの幅を確保しつつ捩れ面状の主逃げ面3Aと一対の平行四辺形面2との交差稜線部に主切刃6Aを形成しようとすると、一方の平行四辺形面2側の主切刃6Aを基準としたときに、他方の平行四辺形面2側の主切刃6Aを平行四辺形面2に対向する方向から見て一方の平行四辺形面2側の主切刃6Aと互いに重なり合うように形成することが困難となるおそれがある。また、凸曲面部3Bがなす湾曲の曲率半径を長側面3の長手方向に向けて変化させたり、場合によっては凸曲面部3B自体や被当接部20も捩れ面状に形成したりしなければならなくなって、インサート本体1の当接部8やインサート取付座13の被当接部20の形状の複雑化を招くおそれもある。
そこで、本実施形態の切削インサートでは、このような問題を解決するために、図2や図24に示したように一対の平行四辺形面2をインサート中心線C回りに僅かに回転させて捩るように形成しており、これによって平行四辺形面2に対向する方向から見て主切刃6Aが一対の平行四辺形面2同士でずれるようにしている。すなわち、図24に示すように平行四辺形面2に対向する方向から見て、一対の平行四辺形面2同士で互いに、一方の平行四辺形面2の鋭角コーナ部A側の主切刃6Aから他方の平行四辺形面2の鈍角コーナ部Bがインサート本体1の外側に僅かにはみ出すように、主切刃6Aが形成される長辺稜部が交差させられている。
言い換えれば、本実施形態の切削インサートは、刃先交換式切削工具のインサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートであって、以下のいずれかの構成を備えるものである。
(A)刃先交換式切削工具のインサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートであって、
一対の多角形面と、その周囲に配置される複数の側面とを有する多角形板状のインサート本体を備え、
上記一対の多角形面は互いに、一方の多角形面がすくい面とされたときに他方の多角形面が上記インサート取付座の底面に着座する着座面とされ、
少なくとも1つの上記側面の上記一対の多角形面と交差する一対の辺稜部には切刃がそれぞれ形成され、
上記インサート本体は、上記少なくとも1つの側面の中心を通る対称線に関して180°回転対称である形状を有し、
上記少なくとも1つの側面には、上記一対の多角形面がすくい面とされたときの上記切刃の逃げ面が上記一対の多角形面側にそれぞれ形成され、
これらの逃げ面は、上記切刃が形成された辺稜部において、上記一対の多角形面の周回り方向に互い違いの一方のコーナ部から他方のコーナ部に向かうに従い、上記切刃に対する逃げ角が正角側に漸次大きくなる捩れ面状に形成されるとともに、
上記切刃が形成された上記一対の辺稜部は、上記多角形面に対向する方向から見て、一方の辺稜部の上記他方のコーナ部が他方の辺稜部の外側にはみ出すように互いに交差させられている。
(B)上記(A)において、上記インサート本体の上記多角形面はいずれも四角形状をなし、
上記インサート本体は、互いに反対側に配置される一対の長側面と、互いに反対側に配置される一対の短側面を有し、
上記一対の長側面の上記一対の多角形面と交差する上記辺稜部に主切刃がそれぞれ形成され、
この主切刃の逃げ面が捩れ面状に形成されるとともに、上記主切刃が形成された上記辺稜部が上記一対の多角形面に対向する方向から見て互いに交差させられている。
(C)上記(B)において、上記主切刃は、上記長側面に対向する方向から見て、上記多角形面の上記一方のコーナ部から上記他方のコーナ部に向かうに従い、上記一対の多角形面の中心を通るインサート中心線方向に漸次反対側の多角形面側に向かうように傾斜している。
(D)上記(B)または(C)において、上記インサート本体の上記多角形面は、一対の鈍角コーナ部と一対の鋭角コーナ部を有する平行四辺形状をなし、
上記各多角形面の上記鋭角コーナ部に、上記主切刃に連なるコーナ刃がそれぞれ形成され、
上記各多角形面の上記各短側面と交差する上記辺稜部の上記鋭角コーナ部側には、上記コーナ刃に連なる副切刃がそれぞれ形成され、
上記逃げ面は、上記鋭角コーナ部から上記鈍角コーナ部に向かうに従い、上記主切刃に対する逃げ角が正角側に漸次大きくなる捩れ面状に形成されるとともに、
上記主切刃が形成された上記一対の辺稜部は、上記一対の多角形面に対向する方向から見て、一方の辺稜部の上記鈍角コーナ部が他方の辺稜部の外側にはみ出すように互いに交差させられている。
(E)上記(D)において、上記主切刃は、上記長側面に対向する方向から見て、平行四辺形状をなす上記多角形面の上記鋭角コーナ部から上記鈍角コーナ部に向かうに従い、上記一対の多角形面の中心を通るインサート中心線方向に漸次反対側の多角形面側に向かうように傾斜している。
(F)上記(A)〜(E)のいずれか1つにおいて、上記インサート本体は、上記一対の多角形面の中心を通るインサート中心線に関して180°回転対称である形状を有して、上記切刃が形成された少なくとも一対の上記側面を備え、
これら一対の側面には互いに、一方の側面の上記切刃が切削に使用されるときに、上記インサート取付座の壁面に形成された被当接部に当接する当接部が他方の側面に形成されている。
また、上記実施形態の刃先交換式切削工具は、以下の構成を備えている。
(G)刃先交換式切削工具であって、
軸線回りに回転される工具本体と、
上記工具本体の先端部外周に、着脱可能に取り付けられた、上記(A)〜(F)のうちいずれか1つの切削インサートとを具備し、
上記工具本体には、上記切削インサートが取り付けられる1または2以上の上記インサート取付座が、上記底面を工具回転方向に向けて形成され、
上記切削インサートは、上記少なくとも1の側面を上記工具本体の外周側に向けるとともに、この側面のすくい面とされた上記多角形面と交差する辺稜部の上記一方のコーナ部を上記工具本体の先端側に向け、この辺稜部に形成された上記切刃に正の軸方向すくい角が与えられるとともに、この切刃の上記軸線回りの回転軌跡の内側に、上記側面の着座面とされる上記多角形面と交差する辺稜部が位置するように、上記インサート取付座に取り付けられている。
(H)上記(G)において、上記切刃は、上記少なくとも1の側面に対向する方向から見て、上記多角形面の上記一方のコーナ部から上記他方のコーナ部に向かうに従い、上記一対の多角形面の中心を通るインサート中心線方向に漸次反対側の多角形面側に向かうように傾斜しており、
上記切削インサートは、上記インサート中心線が着座面とされる上記多角形面側に向かうに従い上記工具本体の後端側に向けて傾斜するように、上記インサート取付座に取り付けられている。
従って、このように構成された本実施形態の切削インサートでは、鋭角コーナ部A側から鈍角コーナ部B側に向けて捩れ面状とされた主逃げ面3Aのインサート中心線C方向中央部側でのインサート本体1の外側に向けた突出量が漸次小さくなるのに対し、この鈍角コーナ部B側では主切刃6A自体が反対側の平行四辺形面2の鋭角コーナ部A側の主切刃6Aに対してインサート本体1の外側に僅かにはみ出すようにされているので、互いの凸曲面部3Bとの交差稜線のインサート本体1の外側への突出位置を略等しくすることができる。
このため、本実施形態の切削インサートによれば、上述のように凸曲面部3Bがなす湾曲の曲率半径が長側面3の長手方向に亙って略一定であっても、鈍角コーナ部B側でこの凸曲面部3Bの幅が小さくなりすぎたり、凸曲面部3Bを設けることができなくなったりするのを防いで、当接部8と被当接部20との当接面積を確保し、インサート取付座13への安定した取付を図ることができる。また、インサート本体1の当接部8やインサート取付座13の被当接部20の形状の複雑化を招くこともない。
さらに、本実施形態では、こうして一対の平行四辺形面2がインサート中心線C回りに捩られているのに対して、コーナ刃6Cを介して連なる主切刃6Aと副切刃6Bとは平行四辺形面2に対向する方向から見て鈍角に交差する方向に配置されているので、着座面とされた他方の平行四辺形面2の工具本体11先端側に向けられる副切刃6Bは、すくい面とされる一方の平行四辺形面2の工具本体11先端側に向けられて切削に使用される副切刃6Bが位置する上記軸線Oに垂直な平面に対し、工具本体11の内周側に向かうに従い後端側に向かうように傾斜して後退させることができる。従って、この他方の平行四辺形面2の副切刃6Bが一方の平行四辺形面2の副切刃6Bによって形成された仕上げ面に干渉するのを確実に防止することができ、これにより仕上げ面精度の向上を図るとともに、例えば工具本体11を軸線O方向にも送り出して被削材を斜めに掘り下げるランピング加工を行うことも可能となる。
加えて、本実施形態では主切刃6Aが鋭角コーナ部Aから鈍角コーナ部Bに向かうに従いインサート中心線C方向に後退するように傾斜して形成されており、インサート取付座13の底面14に形成されたネジ孔14Aが上述のように孔底側(工具回転方向Tの後方側)に向かうに従い工具本体11の後端側に向かうように僅かに傾斜させられていて、これに伴いインサート中心線Cも着座面とされる平行四辺形面2側に向けて工具本体11の後端側に向かうようにインサート本体1が取り付けられていても、切削に使用される主切刃6Aには正の軸方向すくい角を与えることができる。そして、こうしてインサート本体1が傾斜して取り付けられることによっても、着座面とされた平行四辺形面2の工具本体11先端側の副切刃6Bを、切削に使用される副切刃6Bが位置する上記平面に対して後退させることができるので、仕上げ面への干渉をより確実に防ぐとともにランピング加工を円滑に行うことが可能となる。
なお、図24に示すように、こうしてインサート中心線C回りに回転させて捩られるようにずらされる一対の平行四辺形面2同士のずれ角γは、1°〜10°程度とされるのが望ましい。このずれ角γが1°より小さいと上記効果が奏功されないおそれがある一方、10°より大きいと、着座面とされた他方の平行四辺形面2の工具本体11外周側に位置する鈍角コーナ部Bが、すくい面とされた一方の平行四辺形面2の主切刃6Aにより形成される被削材の加工面と干渉するおそれが生じる。
さらに、このように一対の平行四辺形面2が捩られて、平行四辺形面2に対向する方向から見たときに、主切刃6Aが形成された長側面3の一対の辺稜部が、一方の辺稜部の鈍角コーナ部Bが他方の辺稜部の外側にはみ出すように互いに交差させられている場合に、上記インサート側仮想直線Lは厳密には、同じく平行四辺形面2に対向する方向から見たときに上記対称線Nに垂直で一対の辺稜部の鈍角コーナ部Bに外接する仮想長側面に直交することになる。ただし、本実施形態では、こうして平行四辺形面2に対向する方向から見たときに、インサート側仮想直線Lが長側面3または上記仮想長側面に直交する方向に延びていて上記対称線Nと重なり合うようにされているが、上記対称線Nに対して±10°程度の範囲内であれば傾斜していてもよい。
また、図18に示すように工具本体11の軸線Oに直交する断面において、主切刃6Aの径方向すくい角αは0°〜20°の範囲とされるのが望ましい。さらに、この図18に示したように、主逃げ面3Aを工具本体11の軸線Oに直交する断面において主切刃6Aに連なる凸円弧状をなす第1主逃げ面3aと、この第1主逃げ面3aのインサート中心線C方向中央部側に連なる断面直線状の第2主逃げ面3bとから構成した場合には、主切刃6Aの位置で上記凸円弧に接する接線がなす第1主逃げ面3aの逃げ角β1は0°〜15°の範囲、第2主逃げ面3bの逃げ角β2はβ1〜β1+20°の範囲、第1主逃げ面3aの半径Rは主切刃6Aの外径(直径)Dに対してD/2〜2×Dの範囲、第1主逃げ面3aの幅Wは0.03×D〜0.15×Dの範囲とされるのが望ましい。
さらに、第1の実施形態の切削インサートでは、各当接面7が、上記インサート側仮想平面Pに沿って互いに離間した複数の当接面部7A、7Bによって構成されている。このため、例えばインサート本体1の寸法が小さくて一対の平行四辺形面2の面積も限られている場合に、本実施形態のようにインサート本体1をインサート取付座13に固定するための取付孔5が平行四辺形面2に開口しているようなときでも、一対の当接面7(当接面部7A、7B)をそれぞれ確実にインサート側仮想直線Lの両側に配置することができ、上述したインサート本体1の取付精度や取付安定性の一層の向上を図ることができる。
ただし、インサート本体1の寸法が大きくて平行四辺形面2にも大きな面積を確保することができる場合などには、図28ないし図31に示す本発明の第2の実施形態の切削インサートのように、一対の当接面7がそれぞれ一対のインサート側仮想平面Pに沿って連続して形成されていてもよい。なお、この第2の実施形態において、第1の実施形態と共通する要素には同一の符号を配して説明を省略する。
この第2の実施形態の切削インサートでは、インサート本体1の一対の平行四辺形面2においてポジすくい面2Aの内側に、それぞれ連続する一対の当接面7が、平行四辺形面2に対向する方向から見てその一対の長辺稜部に形成された主切刃6Aに沿うように形成されている。これらの当接面7も、第1の実施形態と同じく、隣接する主切刃6Aの傾斜に合わせて平行四辺形面2の鋭角コーナ部Aから鈍角コーナ部Bに向かうに従いインサート中心線C方向に漸次後退するようにされている。
なお、互いの当接面7同士でインサート中心線C方向に突出した部分と後退した部分との間には、段差面7Cが形成されている。また、当接面7がインサート中心線C方向に突出した鋭角コーナ部A側の部分ではポジすくい面2Aとの間にも段差面7Dが形成されている。一方、当接面7がインサート中心線C方向に後退した側では、第1の実施形態と同様に取付孔5の開口部との間にボス部2Bが形成されている。さらに、この第2の実施形態では、副切刃6Bからインサート中心線C方向内側に向かうに従い凸曲面をなしつつ後退する第1副逃げ面4Aだけが形成されてネガ面4Cに交差させられている。
このような第2の実施形態の切削インサートも、上記一実施形態の刃先交換式切削工具の工具本体11に形成されたインサート取付座13に取り付けることができる。この場合には、インサート取付座13の一対の被当接面19が互いに離間した複数の被当接面部19A、19Bにより構成されているため、当接面7への当接も互いに離間した複数箇所となる。
ただし、インサート取付座13の底面14の面積も大きく確保できる場合には、一対の被当接面19も取付座側仮想平面Qに沿って連続したものとしてもよく、このようなインサート取付座13に第2の実施形態の切削インサートを取り付けたときには、互いの当接面積を大きくして一層の取付安定性の向上を図ることができる。また、このような連続した被当接面19を有するインサート取付座13に第1の実施形態の切削インサートを取り付けてもよい。
なお、これら第1、第2の実施形態では、短側面4はインサートの取り付けに関与することがないため、この短側面4の副逃げ面4A、4Bと一対の平行四辺形面2との交差稜線部に形成される副切刃6Bやコーナ刃6Cの形状を異なるものとしても、そのまま同じインサート取付座13に取り付けることが可能となる。従って、上述のように軸線O方向に複数のインサート取付座13を形成した場合に、最先端のインサート取付座13に取り付けられる切削インサートは、例えば副逃げ面4A、4Bの上記長手方向へのせり出し量を大きくして半径の大きなコーナ刃6Cを形成した切削インサートとしても取付可能である。すなわち、1つの工具本体11に異なる半径のコーナ刃6Cを有する複数種の切削インサートを取り付けることができるから、肩削りの際に異なる半径の隅部を形成するような場合でも、1つの工具本体11で対応することが可能となる。
また、第1、第2の実施形態では、上述のように主逃げ面3Aが捩れ面状とされるとともに、平行四辺形面2に対向する方向から見て主切刃6Aが形成される長側面3の一対の長辺稜部が交差させられているが、本発明においては、図26に示したように平行四辺形面2に対向する方向から見て上記一対の長辺稜部が重なり合うようにされていてもよく、この場合には長側面3全体がインサート中心線Cに平行に延びる平面状のネガ逃げ面とされていて、同じく平面状の被当接部20に当接可能な当接部8とされていてもよい。