JP5996403B2 - 耐熱鋼およびその製造方法 - Google Patents
耐熱鋼およびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5996403B2 JP5996403B2 JP2012262820A JP2012262820A JP5996403B2 JP 5996403 B2 JP5996403 B2 JP 5996403B2 JP 2012262820 A JP2012262820 A JP 2012262820A JP 2012262820 A JP2012262820 A JP 2012262820A JP 5996403 B2 JP5996403 B2 JP 5996403B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- less
- resistant steel
- creep rupture
- temperature
- content
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Turbine Rotor Nozzle Sealing (AREA)
Description
Cは、焼入性を確保し、マルテンサイト変態を促進させる。また、Cは、合金中のFe、Cr、MoなどとM23C6型の炭化物を形成したり、Nb、V、NなどとMX型炭窒化物を形成して、析出強化により高温クリープ強度を高める。そのため、Cは、不可欠な元素である。Cは、耐力の向上にも寄与するとともに、δフェライトやBNの生成の抑制にも不可欠な元素である。これらの効果を発揮させるために、Cを0.05%以上含有することが必要である。一方、Cの含有率が0.2%を越えると、炭化物および炭窒化物の凝集や粗大化が起こりやすくなり、高温クリープ破断強度が低下する。そのため、Cの含有率を0.05〜0.2%とした。同様の理由により、Cの含有率を0.08〜0.13%とすることがさらに好ましい。
Siは、溶鋼の脱酸剤として有効な元素である。Siの含有率が0.1%を超えると、鋼塊内部の偏析が増加するとともに、焼戻し脆化感受性が極めて高くなる。そして、切欠靭性が損なわれ、高温に長時間保持することにより、析出物形態の変化が助長され、靭性が経時劣化する。そのため、Siの含有率を0.1%以下とした。また、溶鋼の脱酸剤としての効果を発揮させるために、Siを0.01%以上含有することが好ましい。すなわち、好ましいSiの含有率を0.01〜0.1%とする。
Mnは、溶解時の脱酸剤や脱硫剤として有効であり、焼入性を高めて強度を向上させることにも有効な元素である。これらの効果を発揮させるために、Mnを0.1%を超えて含有することが必要である。一方、MnはSと結びついてMnSの非金属介在物を形成して、靭性を低下させるとともに、靭性の経時劣化を助長するとともに、高温クリープ破断強度を低下させる。そのため、Mnの含有率を0.7%以下とし、さらに、0.15%未満とすることがより好ましい。
Niの含有率が1%を超えると、炭化物やラーべス相の凝集や粗大化が助長され、高温クリープ破断強度を低下させたり、焼戻脆性を助長させる。そのため、Niの含有率を1%以下とした。同様の理由から、Niの含有率を0.5%以下とすることがより好ましく、0.2%未満とすることがさらに好ましい。ここで、Niは、オーステナイト安定化元素であり、靭性向上に有効である。この効果を発揮するために、Niを0.02%以上含有することが好ましい。
Crは、耐酸化性および高温耐食性を高め、M23C6型炭化物やM2X型炭窒化物による析出強化により高温クリープ破断強度を高めるために必要不可欠の元素である。これらの効果を発揮させるために、Crを8.5%以上含有することが必要である。
Moは、合金中に固溶してマトリックスを固溶強化させるとともに、微細炭化物や微細なラーベス相を生成して高温クリープ破断強度を向上させるため、有用な元素である。しかしながら、Moの含有率が1%を超えると、δフェライトを生成して、靭性を著しく低下させる。そのため、Moの含有率を1%以下とした。また、Moを0.5%を超えて含有した場合、高温での組織安定性が飛躍的に向上する。上記した効果を発揮させるために、Moを0.02%以上含有することが好ましい。特に、長時間クリープ特性を重視する場合、Moを0.5%を超えて含有することが好ましい。
Vは、微細な炭化物や炭窒化物を形成して、高温クリープ破断強度を向上させるのに有効な元素である。この効果を発揮させるために、Vを0.05%以上含有することが必要である。一方、Vの含有率が0.3%を超えると、炭化物の過度の析出が生じ、高温クリープ破断強度を低下させる。そのため、Vの含有率を0.05〜0.3%とした。同様の理由により、Vの含有率を0.15〜0.25%とすることがさらに好ましい。
Coは、δフェライトの生成を抑制し、固溶強化により高温引張強度や高温クリープ破断強度を向上させる。これは、Coの添加によってAc1変態点がほとんど変わらないからである。一方、Coは、Wの固溶限を減少させることにより、ラーベス相やμ相の凝集粗大化を促進し、長時間クリープ強度の低下を引き起こす。そのため、長時間クリープ強度を重視した本耐熱鋼では、Co含有率を2%以下とした。同様の理由から、Coの含有率を1%以下とすることがより好ましい。また、上記したCoの効果を発揮するために、Coを0.5%以上含有することが好ましい。
Wは、M23C6型炭化物の凝集や粗大化を抑制する。また、Wは、合金中に固溶してマトリックスを固溶強化させ、ラス境界等にラーベス相を分散析出させるため、高温引張強度や高温クリープ破断強度の向上に有効な元素である。これらの効果を発揮させるために、Wを1%以上含有することが必要である。一方、Wの含有率が5%を超えると、δフェライトや粗大なラーベス相が生成しやすくなり、延性や靭性が低下するとともに、高温クリープ破断強度も低下する。そのため、Wの含有率を1〜5%とした。同様の理由により、Wの含有率を3%を超え5%以下とすることがより好ましい。
Nは、C、Nb、Vなどと結びついて炭窒化物を形成し、高温クリープ破断強度を向上させる。Nの含有率が0.01%未満では、十分な引張強度や高温クリープ破断強度を得ることができない。一方、Nは、Bとの結びつきが強く、Nの含有率が0.015%以上では、BNの窒化物が生成することにより鋼塊の製造が困難となる。さらに、熱間加工性が悪化するとともに、延性や靭性も低下する。また、BN相の析出によって、高温クリープ破断強度に有効な固溶Bの含有量が減少するので、高温クリープ破断強度が低下する。そのため、Nの含有率を0.01〜0.015%未満とした。同様の理由により、Nの含有率を0.01〜0.014%未満とすることがより好ましい。
Nbは、室温での引張強度の向上に有効であるとともに、微細炭化物や炭窒化物を形成し、高温クリープ破断強度を向上させる。また、Nbは、微細なNbCを生成して結晶粒の微細化を促進し、靭性を向上させる。Nbの一部は、V炭窒化物と複合したMX型炭窒化物を析出して、高温クリープ破断強度を向上させる効果もある。これらの効果を発揮させるために、Nbを0.01%以上含有することが必要である。一方、Nbの含有率が0.15%を超えると、粗大な炭化物や炭窒化物が析出し、延性や靭性を低下させる。そのため、Nbの含有率を0.01〜0.15%とした。同様の理由により、Nbの含有率を0.01〜0.08%とすることがより好ましい。
Bは、微量の添加で焼入性が増大し、靭性が向上する。また、Bは、オーステナイト結晶粒界およびその下部組織のマルテンサイトパケット、マルテンサイトブロック、マルテンサイトラス内における、炭化物、炭窒化物およびラーベス相の凝集や粗大化を高温下で長時間に亘って抑制する効果を有している。さらに、Bは、WやNbなどと複合添加することによって、高温クリープ破断強度を向上させるのに有効な元素である。これらの効果を発揮させるために、Bを0.003%以上含有することが必要である。一方、Bの含有率が0.03%を超えると、BとNが結合してBN相が析出し、熱間加工性が損なわれたり、高温クリープ破断延性や靭性が大きく低下する。また、BN相の析出により、高温クリープ破断強度に有効な固溶Bの含有量が減少するため、高温クリープ破断強度が低下する。そのため、Bの含有率を0.003〜0.03%とした。同様の理由により、Bの含有率を0.005〜0.015%とすることがより好ましい。
P、SおよびAlは、実施の形態の耐熱鋼においては、不可避的不純物に分類されるものである。これらの不可避的不純物は、可能な限りその残存含有率を0%に近づけることが好ましい。
実施の形態の耐熱鋼においては、マトリックス中にMX型炭窒化物を微細に析出させて高温クリープ破断強度を向上させるために、Nbを0.01〜0.15%含有している。
焼戻処理によって、上記した焼入処理によって生じた残留オーステナイト組織を分解し、焼戻マルテンサイト組織とし、炭化物や炭窒化物をマトリックス中に均一に分散析出させるとともに転位組織を適正レベルに回復させる。これによって、必要とする、高温クリープ破断強度、破断延性および靭性が得られる。
表1は、材料特性評価に用いた各試料(試料1〜試料56)の化学組成成分を示す。なお、試料1〜試料48は、実施の形態の耐熱鋼の実施例であり、試料49〜試料56は、実施の形態の耐熱鋼の化学組成範囲にない耐熱鋼であり、比較例である。
ここでは、クリープ破断特性に及ぼす焼入処理および焼戻処理の影響を調べた。表1に示した試料15の化学組成の材料について焼入処理および焼戻処理の影響を調べた。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.05〜0.2%、Si:0.1%以下、Mn:0.1%を超え0.7%以下、Ni:1%以下、Cr:8.5〜10%未満、Mo:1%以下、V:0.05〜0.3%、Co:2%以下、W:1〜5%、N:0.01〜0.014%未満 、Nb:0.01〜0.15%、B:0.003〜0.03%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
JIS Z 2271に準ずるクリープ破断試験による、625℃、20kgf/mm 2 の条件での破断時間が2000時間以上であり、625℃、15kgf/mm 2 の条件での破断時間が10000時間以上であることを特徴とする耐熱鋼。 - 質量%で、C:0.05〜0.2%、Si:0.1%以下、Mn:0.15%以下、Ni:1%以下、Cr:8.5〜10%未満、Mo:1%以下、V:0.05〜0.3%、Co:2%以下、W:3%を超え5%以下 、N:0.01〜0.015%未満、Nb:0.01〜0.15%、B:0.003〜0.03%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
JIS Z 2271に準ずるクリープ破断試験による、625℃、20kgf/mm 2 の条件での破断時間が2000時間以上であり、625℃、15kgf/mm 2 の条件での破断時間が10000時間以上であることを特徴とする耐熱鋼。 - 質量%で、Moが0.5%を越え1%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の耐熱鋼。
- 請求項1乃至3のいずれか1項記載の耐熱鋼の製造方法であって、
1040〜1120℃の温度で焼入処理を施し、
540〜600℃の温度で第1段焼戻処理および650〜750℃の温度で第2段焼戻処理を施すことを特徴とする耐熱鋼の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012262820A JP5996403B2 (ja) | 2012-11-30 | 2012-11-30 | 耐熱鋼およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012262820A JP5996403B2 (ja) | 2012-11-30 | 2012-11-30 | 耐熱鋼およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2014109043A JP2014109043A (ja) | 2014-06-12 |
JP5996403B2 true JP5996403B2 (ja) | 2016-09-21 |
Family
ID=51029858
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012262820A Expired - Fee Related JP5996403B2 (ja) | 2012-11-30 | 2012-11-30 | 耐熱鋼およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5996403B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113789484A (zh) * | 2021-08-16 | 2021-12-14 | 共享铸钢有限公司 | 一种马氏体耐热钢 |
Family Cites Families (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5574953B2 (ja) * | 2010-12-28 | 2014-08-20 | 株式会社東芝 | 鍛造用耐熱鋼、鍛造用耐熱鋼の製造方法、鍛造部品および鍛造部品の製造方法 |
JP2012219682A (ja) * | 2011-04-07 | 2012-11-12 | Hitachi Ltd | 蒸気タービン用ロータシャフトと、それを用いた蒸気タービン |
-
2012
- 2012-11-30 JP JP2012262820A patent/JP5996403B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2014109043A (ja) | 2014-06-12 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5574953B2 (ja) | 鍛造用耐熱鋼、鍛造用耐熱鋼の製造方法、鍛造部品および鍛造部品の製造方法 | |
CN102560275B (zh) | 耐热铸钢及其制造方法、汽轮机的铸造部件及其制造方法 | |
KR102037086B1 (ko) | 지열 발전 터빈 로터용 저합금강 및 지열 발전 터빈 로터용 저합금 물질, 및 이들의 제조 방법 | |
JPH0734202A (ja) | 蒸気タービン用ロータ | |
JP5838933B2 (ja) | オーステナイト系耐熱鋼 | |
JP3358951B2 (ja) | 高強度・高靱性耐熱鋳鋼 | |
JP3483493B2 (ja) | 圧力容器用鋳鋼材及びそれを用いる圧力容器の製造方法 | |
CN101565798A (zh) | 一种铁素体系耐热钢及其制造方法 | |
US20030185700A1 (en) | Heat-resisting steel and method of manufacturing the same | |
JP6547599B2 (ja) | オーステナイト系耐熱鋼 | |
JP2011042812A (ja) | 強靭性に優れた鍛鋼品の製造法 | |
JP5869739B1 (ja) | 地熱発電用タービンロータ材及びその製造方法 | |
JP5265325B2 (ja) | クリープ強度に優れる耐熱鋼およびその製造方法 | |
JP4266194B2 (ja) | 耐熱鋼、耐熱鋼の熱処理方法および高温用蒸気タービンロータ | |
JP2016065265A (ja) | 蒸気タービン動翼用耐熱鋼および蒸気タービン動翼 | |
JP5981357B2 (ja) | 耐熱鋼および蒸気タービン構成部品 | |
JP5996403B2 (ja) | 耐熱鋼およびその製造方法 | |
JP3819848B2 (ja) | 耐熱鋼及びその製造方法 | |
JP4177136B2 (ja) | 含B高Cr耐熱鋼の製造方法 | |
JPH05113106A (ja) | 高純度耐熱鋼および高純度耐熱鋼からなる高低圧一体型タービンロータの製造方法 | |
JPH1036944A (ja) | マルテンサイト系耐熱鋼 | |
JP4672433B2 (ja) | 耐熱鋳造合金およびその製造方法 | |
JP2948324B2 (ja) | 高強度・高靭性耐熱鋼 | |
JP2016065280A (ja) | 耐熱鋼および蒸気タービン構成部品 | |
JP2012237049A (ja) | 耐熱鋼および蒸気タービン構成部品 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20150721 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20160322 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20160329 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20160427 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20160726 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20160824 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 5996403 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |