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JP5994087B2 - カーボンナノチューブ撚糸およびその製造方法 - Google Patents

カーボンナノチューブ撚糸およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、カーボンナノチューブ撚糸およびその製造方法に関する。
カーボンナノチューブは、力学特性、電気特性、熱特性等に優れているとされ、電界放出型ディスプレイ、導電性フィラー等をはじめ、様々な産業への利用および応用が期待されている。この中でも特に、カーボンナノチューブの繊維を紡績したカーボンナノチューブ撚糸については、カーボンナノチューブの導電性を活用し、導電線等への展開が期待されている。
そこで、近年、カーボンナノチューブ撚糸を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1及び2)。
特許文献1には、炉芯管の一端からキャリアガスと共に供給された炭素源ガスと触媒金属源ガスとから生成した不連続カーボンナノファイバーを、炉芯管内に配置された排出管内で集束させる工程、及び排出管の内部又は排出管の外部で集束された糸に撚りをかける工程とを有するカーボンナノファイバースライバー糸状糸の製造方法が記載されている。
非特許文献1においては、化学気相成長法で基板上にカーボンナノチューブを高密度・高配向に成長させ、モーターの回転軸の先に爪楊枝製のスピンドル(錘)を装着し、該スピンドルの先端に複数本のカーボンナノチューブを接続した状態で、該スピンドルを回転させながら該スピンドルの先端がカーボンナノチューブの集合体が成長した基板から離れることで、カーボンナノチューブからなる撚糸を形成する方法が記載されている。
非特許文献2においては、加熱したガスフロー反応装置の上部からキャリアガスと共に炭素源(アセトンとエタノールとの混合物)及び触媒(フェロセン及びチオフェン)を供給し、生成したカーボンナノチューブ集合体を反応装置の外部に出した後、水で収縮し、赤外線ヒーターで乾燥させて巻き取ることにより連続多層カーボンナノチューブ糸を製造する方法が記載されている。
特開2001−115348号公報
Zhangら, Science, 306, 1358-1361, 2004 Xiao-Hua Zhongら, Adv. Mater., 21, 1-5, 2009
しかしながら、上記特許文献1、非特許文献1又は2に記載された方法で製造されたカーボンナノチューブ撚糸は、力学特性(引張り強度及び伸び)が不十分であり、実用には適さなかった。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、力学特性に優れたカーボンナノチューブ撚糸およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を行った結果、カーボンナノチューブ撚糸を構成するカーボンナノチューブバンドル間に隙間があり、この隙間によりカーボンナノチューブバンドル間の相互作用が阻害され、力学特性の向上の妨げになっていることに気づき、カーボンナノチューブ撚糸に液体中で500kgf/cm(49MPa)以上の圧力を作用させることにより、カーボンナノチューブバンドルを効率よく凝集させることができ、これによって、カーボンナノチューブバンドル間の相互作用が高まり、その結果としてカーボンナノチューブ撚糸の力学特性が向上することを見いだした本発明者らは、かかる知見に基づき更に研究を行った結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下のカーボンナノチューブ撚糸およびその製造方法を提供する。
1. カーボンナノチューブからなる糸に撚りを掛けた後、液体中で500kgf/cm以上の圧力を作用させる、カーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
2. 前記圧力が、500〜5,000kgf/cmである、上記項1に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
3. 前記液体が、水、炭素数が1〜5の低級アルコール、アセトン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル及びテトラヒドロフランからなる群から選択される少なくとも1種である、上記項1又は2に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
4. 前記液体が、水である、上記項3に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
5. 液体中で500kgf/cm以上の圧力を作用させたカーボンナノチューブ撚糸に、さらに撚りを掛ける、上記項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
6. 追加する撚り回数が、1,000〜5,000T/mである、上記項5に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
7. 液体中で圧力を作用させる前に、カーボンナノチューブ撚糸を液体で処理する、上記項1〜6のいずれかに記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
8. カーボンナノチューブからなる糸に撚りを掛けた後、架橋剤を含む液体中で500kgf/cm以上の圧力を作用させ、その後に電子線照射を行う、上記項1〜7のいずれかに記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
9. 上記項1〜8のいずれかに記載の方法により製造されたカーボンナノチューブ撚糸。
本発明によれば、力学特性に優れたカーボンナノチューブ撚糸およびその製造方法を提供することができる。本発明の方法によれば、実用に適した力学特性を有するカーボンナノチューブ撚糸が製造でき、得られたカーボンナノチューブ撚糸は、特に伸び率が大きいことから、補強材、導電体、導熱体等として利用可能である。
本発明で使用することができるカーボンナノチューブ撚糸製造装置1の概略構成図である。 基板からカーボンナノチューブを引き出すための引き出し具を説明するための模式図である。 液体中で高圧処理するために用いる高圧液体処理具を説明するための概略構成図である。 カーボンナノチューブ撚糸に撚りを追加するために用いる装置の概略構成図である。 カーボンナノチューブ撚糸に電子線を照射する方法を説明する模式図である。 本発明で使用することができるカーボンナノチューブ撚糸製造装置1’の概略構成図である。 カーボンナノチューブ撚糸に電子線を照射する方法の別の態様を説明する模式図である。 カーボンナノチューブ集合体の高さの測定方法を説明するSEM写真である。 カーボンナノチューブ撚糸の撚り角度を説明するSEM写真である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法は、カーボンナノチューブからなる糸に撚りを掛けた後、液体中で500kg/cm以上の圧力を作用させることを特徴とする。以下、液体中で500kg/cm以上の圧力を作用させる処理を「高圧液体処理」という場合もある。
この方法によれば、カーボンナノチューブからなる糸に撚りを掛けた後に高圧液体処理を行うので、ハンドリング性がよくなり、カーボンナノチューブ撚糸を構成するカーボンナノチューブバンドルが効率よく凝集し、カーボンナノチューブバンドル間の相互作用を強くすることができるので、力学特性に優れたカーボンナノチューブ撚糸を製造することができる。
本発明は、主にカーボンナノチューブ撚糸を形成した後に行う後工程を特定するものである。よって、カーボンナノチューブから構成された糸に撚りを掛けたものであれば、カーボンナノチューブの種類、形態、撚糸の製造方法を問わず、本発明に使用することができる。例えば、撚糸を構成するカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、又は多層のカーボンナノチューブのいずれでもよく、これらの混合物であってもよい。また、これらカーボンナノチューブの形態についても、糸にすることができればどのような形態でもかまわない。カーボンチューブから糸を作り、得られた糸に撚りを掛ける方法も、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
カーボンナノチューブの形態の中では、容易にカーボンナノチューブ撚糸を形成しやすいため、基板上に化学気相成長させた集合体であることが好ましい。以下、この基板上に化学気相成長させたカーボンナノチューブの集合体から、カーボンナノチューブを引き出し、一方向に配列して連続的につながったカーボンナノチューブからなる糸(以下、「カーボンナノチューブ糸」と称す。)を形成して、さらにこのカーボンナノチューブ糸を撚り掛けてカーボンナノチューブ撚糸を形成する方法について説明する。
まず、基板上に形成されるカーボンナノチューブの集合体について説明する。
基板は、限定的でなく、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、プラスチック基板、ガラス基板、シリコン基板、鉄、銅等の金属又はこれらの合金を含む金属基板等を用いることができる。これらの基板の表面には、二酸化ケイ素膜が積層されていてもよい。本発明では、特に、シリコン基板に、熱酸化又は蒸着による二酸化ケイ素膜を形成し、該二酸化ケイ素膜上に、触媒層を積層した基板を用いることが好ましい。触媒層は、好ましくは、鉄を蒸着又はスパッタリングすること等により形成され得る。これにより、高密度かつ高配向で形成されたカーボンナノチューブ集合体を製造できる。
基板上に化学気相成長させるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、又は多層のカーボンナノチューブのいずれでもよく、これらの混合物であってもよい。
また、これらカーボンナノチューブの形態は特に限定されるものではないが、容易にカーボンナノチューブ撚糸を形成しやすいため、好ましくは、基板上に高密度かつ高配向で形成された集合体であることが望ましい。なお、高密度とは、基板上のカーボンナノチューブの嵩密度が20mg/cm程度以上、好ましくは30mg/cm程度以上、さらに好ましくは50mg/cm程度以上であることを示す。この範囲より嵩密度が小さいと、隣接するカーボンナノチューブの分子間の相互作用が弱くなり、引き出し特性が悪くなるおそれがある。高配向とは、カーボンナノチューブ同士が隣接しながら基板平面に対して垂直に林立(垂直配向)していることを意味する。
このように化学気相成長によって高密度で垂直配向させたカーボンナノチューブの集合体は、カーボンナノチューブフォレスト(carbon nanotube forest)、或いは、カーボンナノチューブの垂直配向構造体等と呼ばれる。化学気相成長によって形成されるカーボンナノチューブの高さ(長さ)は、平均で100μm以上であればよく、好ましくは150μm以上であり、カーボンナノチューブの層数は、1層以上であればよく、好ましくは1〜40層である。
本発明に用いるカーボンナノチューブは、例えば、カーボンナノチューブを形成するための原料ガスを用いて化学気相成長法を行うことにより基板上に高密度かつ高配向の状態で製造できる。
化学気相成長時の温度はいずれの温度で行ってもよいが、特に高温で行うことが好ましく、例えば、680〜800℃程度で行うことが好ましい。また、気相成長時の圧力は限定的でないが、通常、大気圧で行えばよい。
原料ガスは、炭素を含んでいればよく、通常はアセチレン等の炭化水素を使用すればよい。原料ガスとしては、アセチレンが好ましい。原料ガスを搬送するためのキャリアガスとして、ヘリウム等の希ガス又は不活性ガスを用いてもよい。キャリアガスを用いる場合、全気体流量に対する原料ガス流量の割合は、3〜7vol%程度、好ましくは4.5〜6vol%程度である。
反応時間は、製造条件により応じて適宜設定できるが、例えば、2〜5分間程度とすればよい。
カーボンナノチューブの集合体から、引き出し具を用いてカーボンナノチューブを引き出し、得られたカーボンナノチューブ糸に撚りを掛けてカーボンナノチューブ撚糸を形成する。カーボンナノチューブ糸に撚りを掛ける方法として、カーボンナノチューブ集合体自体を回転させて撚り掛けてもよいし、カーボンナノチューブ糸を把持したローラー等を回転させて撚り掛けてもよい。得られるカーボンナノチューブ撚糸の直径が0.1〜1,000μm、且つ、撚り角度が5〜50°になるまで、撚り掛けを行うことが好ましい。
カーボンナノチューブ撚糸の強度は、直径及び撚り数(撚り角度)と関係がある。カーボンナノチューブ撚糸の直径が細いほど強度は高まるが、細すぎると、強力(破断荷重)が小さくなり、ハンドリング性が低下するため、直径が1〜1,000μmにすることが好ましい。また、撚り角度は撚り数に応じて0°〜90°となるが、撚り角度が小さすぎても、大きすぎても、糸強度は低下するため、撚り角度が5〜50°程度、より好ましくは10〜40°程度になるように撚り数(糸1mあたりの撚り回数:T/m)を1,000〜200,000T/m程度の範囲内で調整することが好ましい。
上記の工程により、長さ1m以上、糸径が0.1〜1,000μm程度、撚り角度が5〜50°程度、撚り数が1,000〜200,000T/m程度のカーボンナノチューブ撚糸を形成することができる。
本発明では、例えば、上記のようにして形成したカーボンナノチューブ撚糸に、液体中で500kgf/cm以上の圧力を作用させる。これにより、カーボンナノチューブ撚糸を構成するカーボンナノチューブバンドルが効率よく凝集し、カーボンナノチューブバンドル間の相互作用(ファンデルワールス力、摩擦力等)が強くなる。その結果、カーボンナノチューブ撚糸の力学特性を向上させることができる。
カーボンナノチューブ撚糸を浸す液体は、速乾性に富むという観点から揮発性の高い液体(易揮発性液体)が好ましい。易揮発性液体として、水、炭素数が1〜5の低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール)、アセトン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。又は、水溶液であってもよい。液体として、安全性(毒性や引火性)の観点から水がより好ましい。
上記のカーボンナノチューブ撚糸を浸す液体には、架橋剤を添加することが好ましい。液体に架橋剤を添加することにより、カーボンナノチューブバンドル間の相互作用をさらに高めることができる。
架橋剤として、架橋性基を分子内に1個以上有する化合物を用いることができる。架橋性基として、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、メタクリルアミド基、ビニルエーテル基、ビニルアミノ基等のエチレン性不飽和基;シクロプロピル基、シクロブチル基、エポキシ基、グリシジル基、オキセタン基、ジケテン基、エピスルフィド基等の小員環を有する架橋性基等が挙げられる。
これらの架橋性基の中で、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基が好ましい。
アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を分子内に1個含む単官能架橋剤として、例えば、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、ノナンジオールアクリレート、ブタンジオールアクリレート、ヘキサンジオールアクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、3−フェノキシ−2−プロパノイルアクリレート、等が挙げられる。アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を分子内に2個含む二官能架橋剤として、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ノナエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、ノナプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、1,6−ビス(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−ヘキシルエーテル等が挙げられる。アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を分子内に3個以上含む多官能架橋剤として、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールにε−カプロラクトンを付加したポリオールにアクリル酸を反応させたカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)のKAYARAD(登録商標)DPCAシリーズ)、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(メタアクリロイルアルキレンジオキシ)シクロトリホスファゼン、トリス(アクリレートエチル)イソシアヌル酸等が挙げられる。
アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を分子内に2個含み、グリシジル基を分子内に1個含む多官能架橋剤として、例えば、N,N’−ビス(アクリレートエチル)−N”−グリシジルイソシアヌル酸等が挙げられる。
架橋剤として、上記のような架橋性基を分子内に1個含む単官能架橋剤、2個含む二官能架橋剤、3個以上含む多官能架橋剤のいずれを用いてもかまわない。架橋性基(C=C結合等)が1個だけの場合、カーボンナノチューブ又はそのバンドルが架橋性基(C=C結合等)の極近傍に2個以上存在しなければ、架橋構造は形成されないが、架橋性基(C=C結合等)を分子内に2個以上含んでいる場合、1個の架橋性基の周りに同時に2つのカーボンナノチューブが存在していなくてもよいため、架橋性基を分子内に2個含む架橋剤が好ましい。例えば、架橋剤分子の両末端に架橋性基が存在する場合、それだけ遠く離れて存在するカーボンナノチューブ同士を架橋することができる。同様の理由で、架橋剤分子内に3個以上の架橋性基を含む場合、あらゆる場所に存在するカーボンナノチューブ間を架橋する確率が高まることになる。
明確なデータはないが、通常、バンドル間は10オングストローム程度離れていると予想される。この程度離れたカーボンナノチューブ間に入り込んで有効に作用するためには、架橋性基間の距離が5オングストローム程度離れていること、すなわち架橋剤の分子サイズが、長径又は短径のいずれかが5オングストローム(5×10−10m)以上あることが望ましい。
これらの架橋剤は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
液体に架橋剤を添加する場合、液体として架橋剤を溶解させる溶媒を用いることが好ましい。すなわち、架橋剤を含む液体は、架橋剤が液体に溶解した溶液の状態であることが好ましい。溶液中の架橋剤濃度は、通常0.1〜10wt%であり、好ましくは0.1〜5wt%である。架橋剤の濃度を0.1〜10wt%にすれば、架橋剤が含浸しやすい粘度となり、効率よく架橋剤をカーボンナノチューブ撚糸中に含浸させることができる。液体に架橋剤が溶解しない場合には、適量の分散剤等を用いて液体中に分散させればよい。
液体に浸したカーボンナノチューブ撚糸に圧力を作用させる処理は、例えば、等方加圧装置を用いて行うことができる。作用させる圧力は、通常500kgf/cm程度以上であり、好ましくは500〜5000kgf/cm程度、より好ましくは、1000〜4000kgf/cm程度である。500kgf/cm程度以上の圧力を加えることにより、カーボンナノチューブバンドルを凝集させてカーボンナノチューブバンドル間の相互作用を強め、得られるカーボンナノチューブ撚糸の強度を高くすることができる。加圧時間は、1秒間〜1日間程度、より好ましくは、1分間〜1時間程度である。
圧力を作用させた後、カーボンナノチューブ撚糸を液体から取り出し、乾燥して液体を除去する。乾燥処理は減圧下で行ってもよい。減圧乾燥処理は、例えば、減圧乾燥器において、圧力を、10〜1Pa程度、好ましくは、10〜1Pa程度として行うことができる。また、減圧乾燥時間は、1時間〜3日程度とすればよい。
高圧液体処理したカーボンナノチューブ撚糸に、さらに撚りを掛けることが好ましい。追加の撚り掛けを行うことにより、カーボンナノチューブバンドルをさらに凝集することができ、カーボンナノチューブバンドル間の相互作用が高まるため、得られるカーボンナノチューブ撚糸の強度がさらに高くなる。撚り掛けを行う回数は、1回以上であれば特に制限はないが、得られるカーボンナノチューブ撚糸の撚り角度が5〜50°程度、より好ましくは10〜40°程度になるように、撚り数を1,000〜5,000T/m程度の範囲内で調整することが好ましい。また、撚り掛けの追加は、減圧乾燥処理の前後、どちらに行ってもよい。
また、架橋剤を添加した液体中で圧力を作用させた場合には、その後にカーボンナノチューブ撚糸に電子線照射を行うことが好ましい。電子線照射を行うことで、さらに力学特性に優れたカーボンナノチューブ撚糸を製造することが可能になる。電子線照射は、圧力を作用させた後であればどの段階で行ってもかまわない。例えば、減圧乾燥処理の前後、追加の撚り掛けの前後のいずれかで行うことができる。
電子線を照射する場合、通常50〜600kGy、好ましくは50〜400kGyの照射量が達成されればよい。電子線源としては、例えば、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いればよい。雰囲気条件は、窒素雰囲気下で照射を行うことが好ましい。
カーボンナノチューブ撚糸に高圧液体処理を施す前に、撚糸を液体で処理してもよい。カーボンナノチューブ撚糸の表面に予め液体を付着させ、乾燥しておくことにより、カーボンナノチューブ撚糸の表面近傍のカーボンナノチューブバンドルがあらかじめ凝集するため、得られるカーボンナノチューブ撚糸の強度をさらに高くすることができる。
液体は、速乾性に富むという観点から揮発性の高い液体(易揮発性液体)が好ましい。易揮発性液体として、水、炭素数が1〜5の低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール)、アセトン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。又は、水溶液であってもよい。液体として、安全性(毒性や引火性)の観点から水がより好ましい。
上記液体に、架橋剤を添加してもかまわない。架橋剤は、上記の高圧液体処理において、液体に添加する架橋剤と同様のものを使用することができる。この場合も、架橋剤を添加する液体は、架橋剤を溶解させる溶媒であることが好ましく、架橋剤を含む液体が、架橋剤が液体に溶解した溶液の状態である場合には、溶液中の架橋剤濃度は、通常0.1〜10wt%であり、好ましくは0.1〜5wt%である。液体に架橋剤が溶解しない場合には、適量の分散剤等を用いて液体中に分散させればよい。
液体による処理は、液体を撚糸に付着させることができる任意の方法を用いることができる。例えば、噴霧装置を用いて撚糸に霧状の液体を噴霧してもよいし、容器に満たした液中に撚糸を通過させてもよい。
以下、基板上に化学気相成長させたカーボンナノチューブの集合体からカーボンナノチューブを引き出し、撚りを掛けて撚糸を形成したのち、液体中で500kg/cm以上の圧力を作用させてカーボンナノチューブ撚糸を製造する方法について、添付図面を参照して説明する。
図1は、カーボンナノチューブ撚糸製造方法に用いることができるカーボンナノチューブ撚糸製造装置の基本構成の一例を示す概略構成図である。
カーボンナノチューブ撚糸製造装置1は、基板上に化学気相成長させたカーボンナノチューブの集合体からカーボンナノチューブの撚糸を製造する装置であって、図1は、基板固定手段2、撚り掛け手段3、及び巻き取り手段4を備えた製造装置1を示す。
基板固定手段2は、化学気相成長させたカーボンナノチューブの集合体cが形成された基板Zを固定する固定台21であり、例えば、基板Zを市販の適当な両面テープで接着することにより当該基板を固定している。基板Zに形成されたカーボンナノチューブ集合体cは、先に説明した化学気相成長方法によって、カーボンナノチューブが高密度かつ高配向に成長した集合体である。カーボンナノチューブ集合体の嵩密度は30mg/cm以上であり、高さは150μm以上である。
この基板Z上に高密度・高配向で成長したカーボンナノチューブの一部を把持してカーボンナノチューブの集合体から引き離すことにより、カーボンナノチューブはカーボンナノチューブ糸Yの状態で基板Z上から連続的に引き出される。
引き出しは、基板Zからカーボンナノチューブをカーボンナノチューブ糸Yの状態で引き出すための装置(引き出し具)を用いて行われ、例えば、図2に示すような極細軸状部51を有する引き出し具5を用いることができる。ここで、カーボンナノチューブ糸Yとは、基板Zに形成されたカーボンナノチューブの集合体cから引き出されたカーボンナノチューブが一方向に配列して連続的につながっているものを指し、例えば、幅1μm〜1m、厚さ10nm〜1cmのシート状態を形成しているものでもかまわない。
撚り掛け手段3として、撚り掛け装置31を用いる。撚り掛け装置31は、基板固定手段2の固定台21と直結しており、基板固定手段2の固定台21に固定された基板Zを、カーボンナノチューブ糸Yの引き出し方向(図中において、矢印Aで示す方向をいい、以下「A方向」という)と同じ回転軸周りに回転駆動させるモーター(図示せず)を備えている。撚り掛け装置31のモーターを回転させることにより、基板Zから引き出されたカーボンナノチューブ糸Yに撚りが掛かり、カーボンナノチューブ撚糸Xが製造される。
巻き取り手段4は、カーボンナノチューブ撚糸Xが巻回される巻き取りボビン41と、この巻き取りボビン41を回転駆動する駆動モーター(図示せず)とを備えている。巻き取りボビン41の回転軸は、基板Zから引き出されるカーボンナノチューブの引き出し方向(A方向)と直交する軸線と平行となるように設定されている。巻き取りボビン41が回転してカーボンナノチューブ撚糸Xを巻き取るのと同時に、基板Zからカーボンナノチューブ糸Yを引き出す。なお、長尺のカーボンナノチューブ撚糸Xを巻き取る為に、巻き取りボビン41をトラバース駆動させることが好ましい。巻き取り時の滑りを防止するために、巻き取りボビン41の表面に滑り防止加工が施されてもよい。滑り防止加工の方法は限定されるものではなく、例えば、ゴムライニングや樹脂コーティング、梨地、エンボスを施す方法等が挙げられる。
次に、カーボンナノチューブ撚糸Xに液体中で500kgf/cm以上の圧力を作用させる。このとき、例えば、図3に示すように、高圧液体処理具6のチューブ61にカーボンナノチューブ撚糸Xを通し、液体L1を注いで、カーボンナノチューブ撚糸Xを液体L1に浸し、チューブの両端に栓62をしたものを用いる。この高圧液体処理具6を、等方加圧装置に設置してカーボンナノチューブ撚糸Xに500kgf/cm以上の圧力を作用させる。チューブ61の材質は、シリコン、ゴム、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、テフロン(登録商標)などが好ましいが、柔軟性及び耐薬品性の観点からシリコンがより好ましい。
カーボンナノチューブ撚糸を浸す液体L1は、速乾性に富むという観点から揮発性の高い液体(易揮発性液体)が好ましい。易揮発性液体として、水、炭素数が1〜5の低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール)、アセトン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。又は、水溶液であってもよい。液体として、安全性(毒性及び引火性)の観点から、水を用いることが特に好ましい。
上記液体L1には、架橋剤を添加することが好ましい。架橋剤として、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、メタクリルアミド基、ビニルエーテル基、ビニルアミノ基等のエチレン性不飽和基;シクロプロピル基、シクロブチル基、エポキシ基、グリシジル基、オキセタン基、ジケテン基、エピスルフィド基等の小員環を有する架橋性基等の架橋性基を分子内に1個以上有する化合物を用いることができる。本実施形態では、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を分子内に1個含む単官能架橋剤(例えば、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、ノナンジオールアクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、3−フェノキシ−2−プロパノイルアクリレート等)、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を分子内に2個含む二官能架橋剤(例えば、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ノナエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、ノナプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、1,6−ビス(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−ヘキシルエーテル)、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を分子内に3個以上含む多官能架橋剤(例えば、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールにε−カプロラクトンを付加したポリオールにメタアクリル酸を反応させたカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)のKAYARAD(登録商標)DPCAシリーズ)、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(メタアクリロイルアルキレンジオキシ)シクロトリホスファゼン、トリス(アクリレートエチル)イソシアヌル酸等)、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を分子内に2個含み、グリシジル基を分子内に1個含む多官能架橋剤(N,N’−ビス(アクリレートエチル)−N”−グリシジルイソシアヌル酸等)等を使用する。架橋剤を含む液体L1が、架橋剤が液体L1に溶解した溶液の状態である場合には、溶液中の架橋剤濃度は、通常0.1〜10wt%であり、好ましくは0.1〜5wt%である。
液体に浸したカーボンナノチューブ撚糸に、圧力を作用させる処理は、例えば、等方加圧装置において、圧力を、500kgf/cm程度以上、好ましくは500〜6000kgf/cm程度、より好ましくは、1000〜4000kgf/cm程度とし、加圧時間を、1秒間〜1日間程度、より好ましくは、1分間〜1時間程度とする。
圧力を作用させた後、カーボンナノチューブ撚糸を液体から取り出し、乾燥して液体を除去する。乾燥処理は減圧下で行ってもよい。減圧乾燥処理は、例えば、減圧乾燥器において、圧力を、10〜1Pa程度、好ましくは、10〜1Pa程度として行うことができる。また、減圧乾燥時間は、1時間〜3日程度とすればよい。
このようにして得られたカーボンナノチューブ撚糸X1は、高圧液体処理が施されているので、カーボンナノチューブ撚糸を構成するカーボンナノチューブバンドルが効率よく凝集してカーボンナノチューブバンドル間の相互作用が高まるために力学特性に優れる。
高圧液体処理したカーボンナノチューブ撚糸に、さらに撚りを掛けることが好ましい。カーボンナノチューブ撚糸X1に追加の撚りを掛けるために、例えば、図4に示すカーボンナノチューブ撚糸固定手段7及び撚り掛け手段8を用いる。カーボンナノチューブ撚糸固定手段7の固定台71にカーボンナノチューブ撚糸X1の一端を固定する。撚り掛け手段8の撚り掛け装置81は、スピンドルと、それを回転駆動させるモーター(図示せず)とを備えている。撚り掛け装置81のスピンドルに、カーボンナノチューブ撚糸X1のもう一端を固定し、モーターを駆動させて、カーボンナノチューブ撚糸X1に撚りを追加する。撚り掛けを行う回数は、1回以上であれば特に制限はないが、得られるカーボンナノチューブ撚糸の撚り角度が5〜50°程度になるように、撚り数を1,000〜5,000T/m程度の範囲内で調整することが好ましい。また、追加の撚り掛けは、減圧乾燥処理の前後、どちらに行ってもよい。
また、架橋剤を添加した液体中で圧力を作用させた場合には、その後にカーボンナノチューブ撚糸に電子線照射を行うことが好ましい。例えば、図5に示すように、カーボンナノチューブ撚糸固定手段7’の固定台72に両端を固定されたカーボンナノチューブ撚糸Xを、電子線照射手段10の具備された電子線照射装置内の試料室に設置し、電子線を照射することができる。この際、固定台72へのカーボンナノチューブ撚糸Xの固定には、市販の適当な両面テープや液状の接着剤を用いればよい。電子線照射装置として、照射部と電源部とからなる装置を用いることができる。照射部は、電子線を発生する部分である。真空チャンバー内のフィラメントで生じた熱電子をグリッドで引き出し、さらに高電圧を印加して電子を加速する。電源部は、高電圧電源及びフィラメント電源からなる。真空チャンバー内は通常10−2〜10−5Paに保たれる。カーボンナノチューブ撚糸は、不活性気体、一般的には窒素で満たされた試料室内において電子線を照射される。試料室内は、通常20〜100℃、より好ましくは20〜60℃に保たれる。電子線照射は、圧力を作用させた後であれば、減圧乾燥処理の前又は後、あるいは追加の撚り掛けの前又は後のどの段階で行ってもかまわない。
図6は、カーボンナノチューブ撚糸製造方法に用いることができるカーボンナノチューブ撚糸製造装置の基本構成の他の一例を示す概略構成図である。この装置を用いることにより、カーボンナノチューブ糸に撚りを掛け、巻き取る途中で、液体処理を行うことができる。
カーボンナノチューブ撚糸製造装置1’は、図6に示すように、基板固定手段2、撚り掛け手段3、巻き取り手段4、及び液体通過手段9を備えている。基板固定手段2、撚り掛け手段3及び巻き取り手段4は、図1のものと同様である。基板固定手段2および撚り掛け手段3と、巻き取り手段4との間に、液体通過手段9を配置することにより、カーボンナノチューブ撚糸Xが巻回される前に、液体L2を通過する。このことにより、カーボンナノチューブ撚糸Xの表面近傍のカーボンナノチューブバンドルがあらかじめ凝集し、高圧液体処理に適したカーボンナノチューブ糸が作製される。上記液体L2に、架橋剤を添加してもかまわない。架橋剤は、上記の高圧液体処理において、液体に添加する架橋剤と同様のものを使用することができる。
カーボンナノチューブ撚糸製造装置1を用いてカーボンナノチューブ撚糸を製造し、得られたカーボンナノチューブ撚糸に、液体中で超高圧を作用させる方法について、以下説明する。
最初に、基板Zに形成されるカーボンナノチューブを引き出して、当該カーボンナノチューブを製造装置1にセッティングする方法について説明する。
まず、化学気相成長させたカーボンナノチューブの集合体cが形成された基板Zを図1の基板固定手段2に固定する。
次に、例えば、図2に示す引き出し具5を用いて、基板Z上に形成されるカーボンナノチューブの集合体cの側面からカーボンナノチューブを引き出す。この引き出し具5は、極細軸状部51を有しており、その素材は、鉄、アルミニウム、ステンレス、プラスチック、木材、ガラス等であり、特に制限されるものではない。引き出し具5はカーボンナノチューブに対して適度な摩擦抵抗を有していれば良く、引き出し具5に摩擦を生じさせるために、引き出し具5の表面に、溝の形成および/または、エンボス加工により微細な突起を形成することが望ましい。引き出し具5の極細軸状部51の直径は基板Z上に成長させられたカーボンナノチューブの平均高さに依存して決まる。カーボンナノチューブの平均高さの約1/3以下の直径であることが好ましい。カーボンナノチューブの約1/3以下の直径であれば、基板Z上のカーボンナノチューブの集合体の中で引き出し具5が1回転した時に極細軸状部51の周りにほぼ1周以上捲きついてくる。高確率でカーボンナノチューブを引き出すには1周以上捲きついていることが大事である。刃径0.03mm以上のマイクロドリルが市販されており、これを引き出し具5に用いることもできる。
このような構造を有する引き出し具5を用いて、基板Z上に形成されるカーボンナノチューブの集合体cの側面からカーボンナノチューブを引き出すには、まず、引き出し具5の極細軸状部51を基板Z上に成長しているカーボンナノチューブcの側面に突き刺して進入させる。この進入深さは0.01mm以上であることが望ましい。引き出し具5の極細軸状部51を突き刺す高さ位置は基板Z上に成長しているカーボンナノチューブcの平均高さの1/2以下の高さが好ましい。この進入時に引き出し具5は回転していても、回転が停止していてもよい。引き出し具5の極細軸状部51が0.01mm以上進入したところで進入を停止させる。この場所に引き出し具5が留まった状態で引き出し具5を1秒間〜5分間、1〜1,000rpmで回転させて、カーボンナノチューブを把持した後、回転を止め、引き出し具5を後退させて、巻き取り手段4である巻き取り装置の巻き取りボビン41上まで移動させ、カーボンナノチューブ糸を巻き取りボビン41に固定する。
次いで、撚り掛け手段3(撚り掛け装置31)、巻き取り手段4(巻き取りボビン41)を駆動させることにより、カーボンナノチューブ撚糸の紡糸を開始する。
撚り掛け手段3の回転数は、例えば、100〜10,000rpmの間で調整できる。回転数が小さすぎると、カーボンナノチューブ撚糸に付与できる撚り数が少なすぎることによって、カーボンナノチューブ撚糸の糸強度が不足してしまうため好ましくない。一方回転速度が速すぎると、カーボンナノチューブ糸に付与する撚り数が多すぎることによって糸強度が低下するため、好ましくない。
撚り掛け手段3によって、撚り掛けられたカーボンナノチューブ撚糸Xは、巻き取り手段4の巻き取りボビン41により巻き取られる。巻き取り手段4の回転速度は、例えば、0.005〜30m/分の間で調整することができる。巻き取り速度が小さ過ぎては生産性が乏しく、実用的でない。一方、巻き取り速度が大き過ぎると途中で糸切れを起こす可能性があるため好ましくない。
この方法により、直径が0.1〜1,000μm程度、撚り角度が5〜50°程度の連続したカーボンナノチューブ撚糸Xを作製することができる。
次に、カーボンナノチューブ撚糸に液体中で500kgf/cm以上の圧力を作用させるために、シリコンチューブにカーボンナノチューブ撚糸Xを通し、液体を注いで、カーボンナノチューブ撚糸Xを液体に浸し、チューブの両端に栓をした高圧液体処理具6を用いる。この高圧液体処理具6を、水圧を利用する等方加圧装置に設置してカーボンナノチューブ撚糸Xに液体中で超高圧を作用させる。圧力は500〜6000kgf/cm程度とし、加圧時間は1分〜1時間程度とする。
圧力を作用させた後、カーボンナノチューブ撚糸を液体から取り出し、乾燥して液体を除去するが、減圧乾燥器において、圧力は10〜1Pa程度、時間は1時間〜3日間程度減圧乾燥する。
液体中で500kgf/cm以上の圧力を作用させたカーボンナノチューブ撚糸に、追加の撚り掛けを行うことにより、カーボンナノチューブバンドルをさらに凝集することができ、カーボンナノチューブバンドル間の相互作用が高まるため、得られるカーボンナノチューブ撚糸の強度が向上する。撚り掛けを行う回数は、1回以上であれば特に制限はないが、得られるカーボンナノチューブ撚糸の撚り角度が5〜50°程度になるように、撚り数を1,000〜5,000T/m程度の範囲内で調整することが好ましい。また、追加の撚り掛けは、減圧乾燥処理の前後、どちらに行ってもよい。
また、撚り掛け手段3によって撚り掛けられたカーボンナノチューブ撚糸Xに対し、架橋剤を含む液体中で500kgf/cm以上の圧力を作用させ、その後に電子線照射を行うことにより、カーボンナノチューブバンドル間の相互作用がさらに高まり、カーボンナノチューブ撚糸の力学特性がさらに向上する。電子線照射は、好ましくは窒素雰囲気下、50〜400kGy程度の量の電子線を照射する。電子線照射は、圧力を作用させた後であればどの段階で行ってもかまわない。
以上、本発明に使用することができるカーボンナノチューブ撚糸製造装置1と、カーボンナノチューブに液体中で500kgf/cm以上の圧力を作用させる方法の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な構成は上記実施形態に限定されない。例えば、カーボンナノチューブ撚糸を製造する時に、カーボンナノチューブ糸に撚りを掛ける方法として、カーボンナノチューブ集合体自体を回転させて撚りを掛けてもよいし、カーボンナノチューブ糸を把持したローラーやスピンドル等を回転させて撚りを掛けてもよい。
また、図6に示すようにカーボンナノチューブ撚糸を巻き取りボビンに巻き取る前に、液体にカーボンナノチューブ撚糸を通過させて、あらかじめカーボンナノチューブ撚糸を収縮させ、強度を高めておいてもよい。
また、図3に示すようにカーボンナノチューブ撚糸をチューブに通したのち液体を注いで栓をしたものに500kgf/cm以上の圧力を作用させたが、カーボンナノチューブ撚糸に液体中で500kgf/cm以上の圧力を作用できるなら、等方加圧装置の仕様により、チューブに通さなくてもよいし、栓をしなくてもよい。また、巻き取りボビン41に巻かれた状態で作用させてもよい。
また、カーボンナノチューブ撚糸Xに適切に電子線を照射できるなら、電子線照射装置の仕様により、図5に示すような固定台72にカーボンナノチューブ撚糸Xを固定せずに、巻き取りボビン41に巻かれた状態で電子線を照射してもよい。また、図7に示すように、片方の巻き取りボビン41からカーボンナノチューブ撚糸X5を解舒しながら、電子線照射手段10によりカーボンナノチューブ撚糸X5に連続的に電子線を照射し、もう片方の巻き取りボビン41に巻き取ってもよい。
本実施形態に係るカーボンナノチューブ撚糸の製造方法は、カーボンナノチューブ集合体から引き出したカーボンナノチューブ糸に撚りを掛けて作製したカーボンナノチューブ撚糸に、液体中で500kgf/cm以上の圧力を作用させることにより、カーボンナノチューブ撚糸を構成するカーボンナノチューブバンドルを効率よく凝集することができる。この結果、カーボンナノチューブバンドル間の相互作用が強まるため、力学特性が向上する。さらに、架橋剤を含む液体を用い高圧液体処理を行い、その後、カーボンナノチューブ撚糸に電子線照射を行えば、カーボンナノチューブバンドル間の相互作用がさらに高まり、カーボンナノチューブ撚糸の力学特性をさらに向上させることができる。
以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例中の物性値は、以下の方法により測定した。
カーボンナノチューブ集合体の高さは、カーボンナノチューブ集合体の断面を300倍で撮影したSEM写真において、基板表面から集合体表面までの高さを測定した(図8参照)。
カーボンナノチューブ集合体の嵩密度は、合成の前後で基板重量を電子天秤にて測定し、その重量差からカーボンナノチューブ集合体の重量を算出し、この重量と、上記方法で測定した集合体高さから嵩密度を算出した。
撚糸の直径は、日本電子社製の走査電子顕微鏡「JSM−7401F」を用いて、SEM写真を撮影して糸径を測定した。
撚り角度は、日本電子社製の走査電子顕微鏡「JSM−7401F」を用いて、SEM写真を撮影し、例えば、図9に示すように、巻き付いたカーボンナノチューブの配向方向と撚糸の中心軸がなす角度を撚り角度として測定した。
引張り強度は、日本計測システム(株)製の自動荷重試験機「MAX−1KN−S」を用いて、糸長10mm、引張り速度1mm/分で引張り試験を行い、カーボンナノチューブ撚糸が破断したときの荷重及び糸の断面積を測定し、下式:
引張り強度(Pa)=破断荷重(N)÷糸断面積(m
に従って、カーボンナノチューブ撚糸が破断したときの荷重を糸の断面積で除して求めた。測定は、複数回(2〜8回)行い、その平均値を引張り強度とした。
伸び率は、引張り強度と同様の条件で引張試験を行い、カーボンナノチューブ撚糸が破断したときに伸びた長さを測定し、下式:
伸び率(%)=100×伸びた長さ(mm)÷初期糸長(10mm)
に従って、カーボンナノチューブ撚糸が破断したときに伸びた長さを初期糸長(10mm)で除して求めた。測定は、複数回(2〜8回)行い、その平均値を伸び率とした。
実施例1
(1)カーボンナノチューブ撚糸の製造
まず、熱CVD法を用いて、以下のようにカーボンナノチューブ集合体を合成した。
カーボンナノチューブ合成装置のガス配管及び反応容器内を不活性ガス(ヘリウム)で充填し、その後真空にするパージ作業を繰り返し行うことにより、反応容器内のガス置換を行った。次いで、カーボンナノチューブ合成用鉄触媒を厚み20nm以下に塗布した酸化膜付シリコンウエハ基板を反応装置内に設置し、再度反応容器内をパージした。次いで、不活性ガス(ヘリウム)を一定流量で流しながら、触媒層を750℃まで加熱し、この温度で一定時間保持した。その後、アセチレンガスとヘリウムガスの混合ガス(アセチレンガス3〜7vol%)を反応容器フランジ部に設置したガス導入孔より導入して、触媒と2〜5分間反応させることにより、基板上にカーボンナノチューブ集合体を形成した。その後、カーボンナノチューブ集合体が形成された基板を反応管より取り出し、室温に冷却した。基板上に成長させたカーボンナノチューブ集合体の高さは175μm、嵩密度は45mg/cmであり、高密度かつ高配向で形成されていた。
マイクロナイフ(フェザー安全剃刀製マイクロサージカルブレードK−715、先端角15°)を用いて、上記のようにして得られたカーボンナノチューブ集合体の一部に幅6mmの直線状の部分を形成、画定することで、一定幅で直線状のカーボンナノチューブ集合体(カーボンナノチューブ基板Z)を作製し、これらを図1に示す基板固定手段2に保持させた。
図1の基板固定手段2に保持されたカーボンナノチューブ基板Zについて、カーボンナノチューブ基板Zを構成するカーボンナノチューブ集合体の側面から、図2に示すように引き出し具5(マイクロツールINC製マイクロドリル1−254 先端直径30μm)の極細軸状部51を深さ0.1mm突き刺し、次に1,000rpmで1秒間回転させてカーボンナノチューブを絡め付け、さらに引き出し具5を回転させることなくカーボンナノチューブ基板Zから離反させることで、カーボンナノチューブ基板Zからカーボンナノチューブを連鎖的に連続して引き出し、カーボンナノチューブ糸Yを形成した。
引き出し具5を後退させることで、カーボンナノチューブ糸Yを巻き取り手段4の巻き取りボビン41上まで移動させ、カーボンナノチューブ糸Yを巻き取りボビン41に固定した。
次に、撚り掛け手段3の撚り掛け装置を1,000rpmで回転させながら、巻き取り手段4の巻き取りボビン41をトラバースさせながら回転させることで、カーボンナノチューブ糸Yが撚り掛けられて得られるカーボンナノチューブ撚糸Xを10cm/分の巻き取り速度で巻き取った。このときのカーボンナノチューブ撚糸Xの撚り数は、10,000T/mである。
この方法により、直径が18μm、撚り角度が25°のカーボンナノチューブ撚糸Xを作製した。以上の工程を経て作製したカーボンナノチューブ撚糸Xについて引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.19GPa、伸び率は10%であった。
(2)高圧液体処理
次に、巻き取りボビン41からカーボンナノチューブ撚糸Xを解舒し、長さ100mmのシリコーンチューブ(内径6mm、外径8mm)にカーボンナノチューブ撚糸Xを通し、シリコンチューブの一端にPTFE製の栓(外径8mm、長さ30mm)を差し込んで栓をしたのち、水を注いてカーボンナノチューブ撚糸Xを水に浸し、シリコンチューブのもう一端にも栓をし、高圧液体処理具6を用意した。これを、水圧を用いる等方加圧装置(株式会社山本水圧工業所製超高圧試験カプセル R7K−3.5−15−15)に設置し、5,000kgf/cmの圧力で、1時間処理を行った。処理後、シリコンチューブからカーボンナノチューブ撚糸X1を取り出し、減圧乾燥庫(アズワン株式会社製成型真空デシケーター MVD−100)に設置し、真空ポンプ(株式会社ケー・エヌ・エフ・ジャパン製 N810.3FT.18)により、10Paで3日間減圧乾燥した。
この方法により、直径が15μm、撚り角度が20°のカーボンナノチューブ撚糸X1が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X1について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.30GPa、伸び率は10%であった。
実施例2
実施例1(1)と同じ方法でカーボンナノチューブ撚糸Xを形成した後、チューブに注入する液体をアセトンとしたこと以外は実施例1(2)と同じ方法で、カーボンナノチューブ撚糸Xに高圧液体処理を行った。
この方法により、直径が13.7μm、撚り角度が30°のカーボンナノチューブ撚糸X1が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X1について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.30GPa、伸び率は8%であった。
実施例3
実施例1(1)と同じ方法でカーボンナノチューブ撚糸Xを形成した後、チューブに注入する液体をジクロロメタンとしたこと以外は実施例1(2)と同じ方法で、カーボンナノチューブ撚糸Xに高圧液体処理を行った。
この方法により、直径が15μm、撚り角度が15°のカーボンナノチューブ撚糸X1が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X1について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.27GPa、伸び率は9%であった。
実施例4
実施例1(1)と同じ方法でカーボンナノチューブ撚糸Xを形成した後、チューブに注入する液体をジエチルエーテルとしたこと以外は実施例1(2)と同じ方法で、カーボンナノチューブ撚糸Xに高圧液体処理を行った。
この方法により、直径が15μm、撚り角度が20°のカーボンナノチューブ撚糸X1が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X1について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.23GPa、伸び率は8.5%であった。
実施例5
実施例1(1)と同じ方法で、直径が24μm、撚り角度が25°のカーボンナノチューブ撚糸Xを作製した。作製したカーボンナノチューブ撚糸Xについて引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.18GPa、伸び率は11%であった。
カーボンナノチューブ撚糸Xに作用させる圧力を500kgf/cmとしたこと以外は実施例1(2)と同じ方法で、カーボンナノチューブ撚糸Xに高圧液体処理を行った。
この方法により、直径が22μm、撚り角度が24°のカーボンナノチューブ撚糸X1が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X1について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.22GPa、伸び率は10%であった。
実施例6
実施例5と同じ方法でカーボンナノチューブ撚糸Xを形成した後、カーボンナノチューブ撚糸Xに作用させる圧力を1,000kgf/cmとしたこと以外は実施例1(2)と同じ方法で、カーボンナノチューブ撚糸Xに高圧液体処理を行った。
この方法により、直径が21μm、撚り角度が22°のカーボンナノチューブ撚糸X1が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X1について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.24GPa、伸び率は9%であった。
実施例7
実施例5と同じ方法でカーボンナノチューブ撚糸Xを形成した後、カーボンナノチューブ撚糸Xに作用させる圧力を2,000kgf/cmとしたこと以外は実施例1(2)と同じ方法で、カーボンナノチューブ撚糸Xに高圧液体処理を行った。
この方法により、直径が20μm、撚り角度が22°のカーボンナノチューブ撚糸X1が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X1について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.26GPa、伸び率は10%であった。
実施例8
実施例5と同じ方法でカーボンナノチューブ撚糸Xを形成した後、カーボンナノチューブ撚糸Xに作用させる圧力を4,000kgf/cmとしたこと以外は実施例1(2)と同じ方法で、カーボンナノチューブ撚糸Xに高圧液体処理を行った。
この方法により、直径が18μm、撚り角度が20°のカーボンナノチューブ撚糸X1が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X1について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.32GPa、伸び率は10%であった。
実施例9
実施例5と同じ方法でカーボンナノチューブ撚糸Xを形成した後、カーボンナノチューブ撚糸Xに作用させる圧力を6,000kgf/cmとしたこと以外は実施例1(2)と同じ方法で、カーボンナノチューブ撚糸Xに高圧液体処理を行った。
この方法により、直径が20μm、撚り角度が20°のカーボンナノチューブ撚糸X1が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X1について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.32GPa、伸び率は10%であった。
実施例10
実施例1(1)と同じ方法で、直径が26μm、撚り角度が50°のカーボンナノチューブ撚糸Xを作製した。作製したカーボンナノチューブ撚糸Xについて引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.22GPa、伸び率は16%であった。
このカーボンナノチューブ撚糸Xについて、処理時間を1分間としたこと以外は実施例1(2)と同じ方法で、カーボンナノチューブ撚糸Xに高圧液体処理を行った。
この方法により、直径が23μm、撚り角度が30°のカーボンナノチューブ撚糸X1が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X1について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.28GPa、伸び率は13%であった。
実施例11
実施例10と同じ方法でカーボンナノチューブ撚糸Xを形成した後、処理時間を10分間としたこと以外は、実施例1(2)と同じ方法で、カーボンナノチューブ撚糸Xに高圧液体処理を行った。
この方法により、直径が23μm、撚り角度が30°のカーボンナノチューブ撚糸X1が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X1について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.28GPa、伸び率は12%であった。
実施例12
実施例10と同じ方法でカーボンナノチューブ撚糸Xを形成した後、減圧乾燥時間を1日間としたこと以外は、実施例1(2)と同じ方法で、カーボンナノチューブ撚糸Xに高圧液体処理を行った。
この方法により、直径が23μm、撚り角度が30°のカーボンナノチューブ撚糸X1が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X1について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.28GPa、伸び率は15%であった。
実施例13
実施例1(1)と同じ方法で、直径が23μm、撚り角度が25°のカーボンナノチューブ撚糸Xを作製した。作製したカーボンナノチューブ撚糸Xについて引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.19GPa、伸び率は15%であった。
このカーボンナノチューブ撚糸Xについて、実施例1(2)と同じ方法で、カーボンナノチューブ撚糸Xに高圧液体処理を行った。
この方法により、直径が18μm、撚り角度が15°のカーボンナノチューブ撚糸X1が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X1について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.27GPa、伸び率は12%であった。
実施例14
実施例13で得られたカーボンナノチューブ撚糸X1について、その一端をカーボンナノチューブ撚糸固定手段7の固定台71に両面テープで固定し、もう一端を撚り掛け手段8の撚り掛け装置81に装着しているスピンドルに両面テープで固定し、スピンドルをモーター(株式会社ナカニシ製エレクターEmax EL351−IH)で回転させることで、カーボンナノチューブ撚糸X1に撚りを追加し、カーボンナノチューブ撚糸X2を作製した。追加した撚り数は、5,000T/mとした。
この方法により、直径が16μm、撚り角度が20°のカーボンナノチューブ撚糸X2が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X2について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.53GPa、伸び率は17%であった。
実施例15
撚りを追加するのを減圧乾燥前に行ったこと以外は、実施例14と同じ方法で、カーボンナノチューブ撚糸X2を作製した。
この方法により、直径が15μm、撚り角度が20°のカーボンナノチューブ撚糸X2が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X2について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.51GPa、伸び率は16%であった。
実施例16
(1)カーボンナノチューブ撚糸の製造
図6の液体通過手段9(水を満たした直径3cmのガラスシャーレ)を設置し、巻き取りボビン41に巻回される前にカーボンナノチューブ撚糸Xが水中を通過すること以外は実施例1(1)と同じ方法で、カーボンナノチューブ撚糸X3を作製した。
(2)高圧液体処理
次に、カーボンナノチューブ撚糸X3について、実施例1(2)と同じ方法で高圧液体処理を行った後、減圧乾燥を行い、カーボンナノチューブ撚糸X4を作製した。
この方法により、直径が17μm、撚り角度が13°のカーボンナノチューブ撚糸X4が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X4について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.65GPa、伸び率は17%であった。
実施例17
(1)カーボンナノチューブ撚糸の製造
カーボンナノチューブ集合体の一部に形成、画定させた直線状の部分の幅が0.8mmであること、および撚り掛け装置31を4,000rpmで回転させたこと以外は実施例16(1)と同じ方法で、カーボンナノチューブ撚糸X3を作製した。
(2)高圧液体処理
次に、カーボンナノチューブ撚糸X3について、実施例1(2)と同じ方法で高圧液体処理を行った後、減圧乾燥を行い、カーボンナノチューブ撚糸X4を作製した。
この方法により、直径が5.5μm、撚り角度が15°のカーボンナノチューブ撚糸X4が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X4について引張り試験を実施したところ、引張り強度は1.23GPa、伸び率は8%であった。
実施例18
(1)カーボンナノチューブ撚糸の製造
高さが185μm、嵩密度が72mg/cmのカーボンナノチューブ集合体を用いて、巻き取りボビン41に巻回される前にカーボンナノチューブ撚糸Xを通過させる液体を架橋剤(日本化薬株式会社製KAYARAD(登録商標) DPCA―30)の5wt%エタノール溶液としたこと以外は、実施例16(1)と同じ方法で、直径が16μm、撚り角度が25°のカーボンナノチューブ撚糸X3を作製した。作製したカーボンナノチューブ撚糸X3について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.60GPa、伸び率は17%であった。
(2)高圧液体処理
次に、カーボンナノチューブ撚糸X3について、実施例1(2)と同じ方法で高圧液体処理を行った後、減圧乾燥を行い、カーボンナノチューブ撚糸X4を作製した。
この方法により、直径が14μm、撚り角度が25°のカーボンナノチューブ撚糸X4が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X4について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.80GPa、伸び率は15%であった。
(3)電子線照射
次に、カーボンナノチューブ撚糸X4について、糸長が1cmになるように長方形のホルダーに固定して、エリアビーム型電子線照射装置(株式会社NHVコーポレーション製EBC300−60)を用い、2×10−5Paで発生させた電子線を、窒素雰囲気下、30℃で、200kGy照射し、カーボンナノチューブ撚糸X5を作製した。
この方法により、直径が14μm、撚り角度が25°のカーボンナノチューブ撚糸X5が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X5について引張り試験を実施したところ、引張り強度は1.08GPa、伸び率は13%であった。
実施例19
(1)カーボンナノチューブ撚糸の製造
高さが185μm、嵩密度が72mg/cmのカーボンナノチューブ集合体を用いて、実施例1(1)と同じ方法で、直径が20μm、撚り角度が25°のカーボンナノチューブ撚糸Xを作製した。作製したカーボンナノチューブ撚糸Xについて引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.27GPa、伸び率は15%であった。
(2)高圧液体処理
次に、カーボンナノチューブ撚糸Xについて、高圧液体処理時の液体を架橋剤(日本化薬株式会社製KAYARAD(登録商標) DPCA―30)の5wt%エタノール溶液としたこと以外は、実施例1(2)と同じ方法で高圧液体処理を行った後、減圧乾燥を行い、カーボンナノチューブ撚糸X1を作製した。
この方法により、直径が17μm、撚り角度が20°のカーボンナノチューブ撚糸X1が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X1について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.37GPa、伸び率は14%であった。
(3)撚りの追加
カーボンナノチューブ撚糸X1について、実施例14と同じ方法で撚りを追加した。
この方法により、直径が15μm、撚り角度が25°のカーボンナノチューブ撚糸X2が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X2について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.54GPa、伸び率は16%であった。
(4)電子線照射
次に、カーボンナノチューブ撚糸X2について、実施例18(3)と同じ方法で電子線を照射し、カーボンナノチューブ撚糸X5を作製した。
この方法により、直径が15μm、撚り角度が25°のカーボンナノチューブ撚糸X5が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X5について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.90GPa、伸び率は12%であった。
実施例20
(1)カーボンナノチューブ撚糸の製造
実施例16(1)と同じ方法で、直径が16μm、撚り角度が25°のカーボンナノチューブ撚糸X3を作製した。作製したカーボンナノチューブ撚糸X3について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.60GPa、伸び率は17%であった。
(2)高圧液体処理
次に、カーボンナノチューブ撚糸X3について、実施例19(2)と同じ方法で高圧液体処理を行った後、減圧乾燥を行い、カーボンナノチューブ撚糸X4を作製した。
この方法により、直径が14μm、撚り角度が25°のカーボンナノチューブ撚糸X4が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X4について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.85GPa、伸び率は15%であった。
(3)電子線照射
次に、カーボンナノチューブ撚糸X4について、実施例18(3)と同じ方法で電子線を照射し、カーボンナノチューブ撚糸X5を作製した。
この方法により、直径が14μm、撚り角度が25°のカーボンナノチューブ撚糸X5が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X5について引張り試験を実施したところ、引張り強度は1.23GPa、伸び率は10%であった。
実施例21
実施例18(1)と同じ方法で作製したカーボンナノチューブ撚糸X3について、実施例19(2)と同じ方法で高圧液体処理を行った後、減圧乾燥を行い、カーボンナノチューブ撚糸X4を作製した。
この方法により、直径が14μm、撚り角度が25°のカーボンナノチューブ撚糸X4が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X4について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.82GPa、伸び率は15%であった。
次に、カーボンナノチューブ撚糸X4について、実施例18(3)と同じ方法で電子線を照射し、カーボンナノチューブ撚糸X5を作製した。
この方法により、直径が14μm、撚り角度が25°のカーボンナノチューブ撚糸X5が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X5について引張り試験を実施したところ、引張り強度は1.17GPa、伸び率は10%であった。
実施例22
(1)カーボンナノチューブ撚糸の製造
カーボンナノチューブ集合体の一部に形成、画定させた直線状の部分の幅が0.8mmであること、および撚り掛け装置31を4,000rpmで回転させたこと以外は実施例20(1)と同じ方法で、カーボンナノチューブ撚糸X3を作製した。
この方法により、直径が6μm、撚り角度が25°のカーボンナノチューブ撚糸X3が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X3について引張り試験を実施したところ、引張り強度は1.10GPa、伸び率は10%であった。
(2)高圧液体処理
次に、カーボンナノチューブ撚糸X3について、実施例19(2)と同じ方法で高圧液体処理を行った後、減圧乾燥を行い、カーボンナノチューブ撚糸X4を作製した。
この方法により、直径が5μm、撚り角度が20°のカーボンナノチューブ撚糸X4が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X4について引張り試験を実施したところ、引張り強度は1.58GPa、伸び率は8%であった。
(3)電子線照射
次に、カーボンナノチューブ撚糸X4について、実施例18(4)と同じ方法で電子線を照射し、カーボンナノチューブ撚糸X5を作製した。
この方法により、直径が5μm、撚り角度が20°のカーボンナノチューブ撚糸X5が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X5について引張り試験を実施したところ、引張り強度は2.02GPa、伸び率は6%であった。
実施例23
(1)カーボンナノチューブ撚糸の製造
カーボンナノチューブ集合体の一部に形成、画定させた直線状の部分の幅が0.8mmであること、および撚り掛け装置31を4,000rpmで回転させたこと以外は実施例18(1)と同じ方法で、カーボンナノチューブ撚糸X3を作製した。
この方法により、直径が6μm、撚り角度が25°のカーボンナノチューブ撚糸X3が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X3について引張り試験を実施したところ、引張り強度は1.10GPa、伸び率は10%であった。
(2)高圧液体処理
次に、カーボンナノチューブ撚糸X3について、実施例19(2)と同じ方法で高圧液体処理を行った後、減圧乾燥を行い、カーボンナノチューブ撚糸X4を作製した。
この方法により、直径が5μm、撚り角度が20°のカーボンナノチューブ撚糸X4が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X4について引張り試験を実施したところ、引張り強度は1.60GPa、伸び率は8%であった。
(3)電子線照射
次に、カーボンナノチューブ撚糸X4について、実施例18(4)と同じ方法で電子線を照射し、カーボンナノチューブ撚糸X5を作製した。
この方法により、直径が5μm、撚り角度が20°のカーボンナノチューブ撚糸X5が得られた。このカーボンナノチューブ撚糸X5について引張り試験を実施したところ、引張り強度は2.04GPa、伸び率は6%であった。
比較例1
実施例1(1)と同じ方法により、カーボンナノチューブ撚糸Xを作製したが、実施例1(2)の高圧液体処理を行わなかった。
この方法により作製したカーボンナノチューブ撚糸Xは、直径が18μm、撚り角度が25°であった。また、このカーボンナノチューブ撚糸Xについて引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.19GPa、伸び率は10%であった。
比較例2
実施例1(1)と同じ方法で、直径が25μm、撚り角度が25°のカーボンナノチューブ撚糸Xを作製した。作製したカーボンナノチューブ撚糸Xについて引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.18GPa、伸び率は10%であった。
カーボンナノチューブ撚糸Xに作用させる圧力を大気圧(約1kgf/cm)としたこと以外は実施例1(2)と同じ方法で、カーボンナノチューブ撚糸Xに高圧液体処理を行った。
この方法により作製したカーボンナノチューブ撚糸X1は、直径が24μm、撚り角度が20°であった。また、このカーボンナノチューブ撚糸X1について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.15GPa、伸び率は9%であった。
比較例3
実施例5と同じ方法でカーボンナノチューブ撚糸Xを形成した後、カーボンナノチューブ撚糸Xに作用させる圧力を250kgf/cmとしたこと以外は実施例1(2)と同じ方法で、カーボンナノチューブ撚糸Xに高圧液体処理を行った。
この方法により作製したカーボンナノチューブ撚糸X1は、直径が24μm、撚り角度が25°であった。このカーボンナノチューブ撚糸X1について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.18GPa、伸び率は10%であった。
比較例4
水中を通過させないこと以外は実施例16(1)と同じ方法でカーボンナノチューブ撚糸Xを作製し、さらに、実施例16(2)の高圧液体処理を行わなかった。
この方法により作製したカーボンナノチューブ撚糸Xは、直径が30μm、撚り角度が20°であった。また、このカーボンナノチューブ撚糸Xについて引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.12GPa、伸び率は13%であった。
比較例5
実施例17(1)と同じ方法により、カーボンナノチューブ撚糸X3を作製したが、実施例17(2)の高圧液体処理を行わなかった。
この方法により作製したカーボンナノチューブ撚糸X3は、直径が6μm、撚り角度が15°であった。また、このカーボンナノチューブ撚糸X3について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.76GPa、伸び率は10%であった。
比較例6
実施例19(1)と同じ方法により、カーボンナノチューブ撚糸Xを作製したが、実施例19(2)の高圧液体処理、実施例19(3)の撚りの追加、実施例19(4)の電子線照射を行わなかった。
この方法により作製したカーボンナノチューブ撚糸Xは、直径が20μm、撚り角度が25°であった。また、このカーボンナノチューブ撚糸5について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.27GPa、伸び率は15%であった。
比較例7
比較例6で作製したカーボンナノチューブ撚糸Xについて、実施例19(2)の高圧液体処理および実施例19(3)の撚りの追加は行わずに、実施例19(4)と同じ方法で電子線を照射した。
この方法により作製したカーボンナノチューブ撚糸X5は、直径が20μm、撚り角度が25°であった。また、このカーボンナノチューブ撚糸X5について引張り試験を実施したところ、引張り強度は0.28GPa、伸び率は15%であった。
1、1’ カーボンナノチューブ撚糸製造装置
2 基板固定手段
3 撚り掛け手段
4 巻き取り手段
5 引き出し具
6 高圧液体処理手段
7、7’ カーボンナノチューブ撚糸固定手段
8 撚り掛け手段
9 液体通過手段
10 電子線照射手段

Claims (8)

  1. カーボンナノチューブからなる糸に撚りを掛けた後、液体中で500kgf/cm以上の圧力を作用させる、カーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
  2. 前記圧力が、500〜5,000kgf/cmである、請求項1に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
  3. 前記液体が、水、炭素数が1〜5の低級アルコール、アセトン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル及びテトラヒドロフランからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
  4. 前記液体が、水である、請求項3に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
  5. 液体中で500kgf/cm以上の圧力を作用させたカーボンナノチューブ撚糸に、さらに撚りを掛ける、請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
  6. 追加する撚り回数が、1,000〜5,000T/mである、請求項5に記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
  7. 液体中で圧力を作用させる前に、カーボンナノチューブ撚糸を液体で処理する、請求項1〜6のいずれかに記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
  8. カーボンナノチューブからなる糸に撚りを掛けた後、架橋剤を含む液体中で500kgf/cm以上の圧力を作用させ、その後に電子線照射を行う、請求項1〜7のいずれかに記載のカーボンナノチューブ撚糸の製造方法。
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