(各実施形態の内容に至る経緯)
先ず、本開示に係るアンテナ切換装置の各実施形態を説明する前に、各実施形態の内容に至る経緯として、上述した特許文献1及び特許文献1における課題について説明する。
特許文献1では、基幹用スイッチ側の通信装置(以下、「第1通信装置」という)と、ネットワーク端末側の通信装置(以下、「第2通信装置」という)とが無線LANを用いて通信する。
第1通信装置は、送信時と同じ旋回方向の電波を受信可能な複数のアンテナ装置を有する。第2通信装置は、第1通信装置の各アンテナ装置と同じ旋回方向の円偏波を送受可能な第1アンテナ装置と、第1アンテナ装置とは旋回方向の異なる円偏波を送受信可能な第2アンテナ装置とを有する。即ち、第2通信装置は、円偏波において2種類の指向性を調整可能なアンテナ装置を有する。
この結果、第1通信装置と第2通信装置との間に形成される通信経路は、第1アンテナ装置を用いた円偏波の直接波又は円偏波が複数回反射された反射波による通信経路と、第2アンテナ装置を用いた円偏波が奇数回反射された反射波による通信経路との2種類に区別できる。これにより、第1通信装置と第2通信装置とは、直接波を用いた通信が困難となった場合又は第1通信装置と第2通信装置との間の通信経路に障害物が混入した場合でも、円偏波が奇数回反射された反射波に切り換えることで、マルチパスの影響を抑圧して通信できる。
しかし、特許文献1では、第1通信装置と第2通信装置との間の通信特性が変化した場合は考慮されていないと考えられる。例えば第1通信装置と第2通信装置とがミリ波帯の高周波信号を用いて無線通信する場合、第2通信装置が移動し又は第1通信装置と第2通信装置との間に障害物(例えば人間の手)が混入すると、第1通信装置と第2通信装置との間の無線通信が遮断され易くなる。
実際に、第1通信装置と第2通信装置との間の無線通信が遮断すると、無線通信を開始する前に、第1通信装置と第2通信装置との間における通信特性を取得する必要がある。具体的には、第1通信装置及び第2通信装置は、複数回の試行通信によって互いの通信相手との間の通信特性を取得し、アンテナが放射する電波(偏波)を、良好な通信特性に応じた偏波(例えば、円偏波又は直線偏波)に切り換える。
このため、第1通信装置と第2通信装置との間の無線通信が遮断すると、第1通信装置及び第2通信装置における試行通信の回数が増大するので、第1通信装置及び第2通信置装置における消費電力が増大するという課題があった。
そこで、以下の各実施形態では、定期的に又は通信が遮断した場合に、通信相手としての他の無線通信装置との間の通信特性を取得し、アンテナが放射する偏波を、良好な通信特性に応じた偏波に簡易に切り換えるアンテナ切換装置の例を説明する。
次に、本開示に係るアンテナ切換装置の各実施形態について、図面を参照して説明する。以下、本開示に係るアンテナ切換装置の一例を、通信相手としての他無線通信装置との間において無線通信する端末装置として説明し、説明を簡単にするために、他無線通信装置は移動しない据置機(例えばTV装置)とする。各実施形態の端末装置は、例えば60[GHz]のミリ波帯の電波(偏波)を用いて無線通信する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、端末装置60は、例えば60[GHz]のミリ波帯の左旋回方向の円偏波と、右旋回方向の円偏波とを切り換えて放射することで、通信相手としての他無線通信装置50にミリ波のパケット送信信号を送信する。
図1は、各実施形態の端末装置60の内部構成を示すブロック図である。図1に示す端末装置60は、アンテナ部61と、送信部62と、受信部63と、通信制御部64と、アンテナ検出部65と、アンテナ切換部66とを含む。
アンテナ部61は、他無線通信装置50との無線通信において、アンテナ切換部66が生成したアンテナ切換制御信号に応じて、円偏波の旋回方向(左旋回方向、右旋回方向)及びビーム方向を切り換え、左旋回方向又は右旋回方向の円偏波を用いてパケット送信信号を送信し、更に、左旋回方向又は右旋回方向の円偏波を用いて送信されたパケット受信信号を受信する。
送信部62は、通信制御部64が生成した通信特性取得要求に応じて、例えば他無線通信装置50との間の通信特性(例えばSN:Signal to Noise ratio、信号対雑音比、以下同様)を要求するためのパケット送信信号を生成してアンテナ部61に出力する。
受信部63は、他無線通信装置50が返信したパケット受信信号がアンテナ部61から入力され、パケット受信信号を復調し、パケット受信信号の復調結果を通信制御部64又はアンテナ検出部65に出力する。
通信制御部64は、端末装置60が他無線通信装置50に無線通信する場合に、例えば他無線通信装置50との間の通信特性(例えばSN)を要求するための通信特性取得要求を生成して送信部62に出力する。
通信制御部64は、円偏波の旋回方向及びビーム方向の切り換えをアンテナ切換部66に指示し、更に、受信部63におけるパケット受信信号の復調結果を基に、他無線通信装置50との間の通信特性を取得する。通信制御部64は、受信部63が復調したパケット受信信号の復調結果をメモリ(不図示)に保存する。
アンテナ検出部65は、受信部63が復調したパケット受信信号の復調結果をメモリ(不図示)に保存し、更に、パケット受信信号の復調結果、即ち他無線通信装置50との間の通信特性を基に、他無線通信装置50のアンテナ形状が円偏波アンテナ又は直線偏波アンテナのどちらであるかを特定する。即ち、アンテナ検出部65は、他無線通信装置50のアンテナが放射する偏波の種別が円偏波又は直線偏波のどちらであるかを特定する。
アンテナ検出部65は、他無線通信装置50のアンテナ形状が円偏波アンテナであると特定した場合に、円偏波アンテナが放射する円偏波の偏波面の旋回方向が左旋回方向又は右旋回方向のどちらであるかを特定する。アンテナ検出部65は、円偏波の偏波面の旋回方向の特定結果を通信制御部64又はアンテナ切換部66に出力する。
アンテナ切換部66は、通信制御部64の指示又はアンテナ検出部65における偏波の種別の特定結果に応じて、円偏波の偏波面の旋回方向及びビーム方向を切り換えるためのアンテナ切換制御信号を生成してアンテナ部61に出力する。即ち、アンテナ切換部66は、円偏波の偏波面の旋回方向と、円偏波の主ビームの方向を示すビーム方向を、アンテナ部61に切り換えさせる。
図2は、アンテナ部61の回路構成を示す図である。図2(A)は、送信部62が出力したパケット送信信号を送信する場合のアンテナ部61Aの回路構成を示す図である。図2(B)は、受信部63にパケット受信信号を出力する場合のアンテナ部61Bの回路構成を示す図である。
図2(A)に示すアンテナ部61Aは、複数の円偏波アンテナ71Aと、複数のアンプ(増幅器)72と、複数の可変移相器73とを含む。各可変移相器73には、送信部62が生成したパケット送信信号が分配されて入力される。なお、アンテナ部61Aは、図2(A)以外の構成であってよく、複数の円偏波アンテナ71A、複数のアンプ(増幅器)72、複数の可変移相器73以外の要素を用いて構成してもよい。また、アンテナ部61Aで主ビーム方向を切り換えているが、RF(無線周波数帯)ではなく、ベースバンド帯にて位相を変化させて円偏波アンテナ71Aと接続し、主ビーム方向を切り換える構成でも良い。
図2(B)に示すアンテナ部61Bは、複数の円偏波アンテナ71Bと、複数のアンプ(増幅器)74と、複数の可変移相器75とを含む。受信部63には、各可変移相器75の出力としてのパケット受信信号が合成されて入力される。なお、アンテナ部61Bは、図2(B)以外の構成であってよく、複数の円偏波アンテナ71B、複数のアンプ(増幅器)74、複数の可変移相器75以外の要素を用いて構成してもよい。また、アンテナ部61Aで主ビーム方向を切り換えているが、RF(無線周波数帯)ではなく、ベースバンド帯にて位相を変化させて円偏波アンテナ71Bと接続し、主ビーム方向を切り換える構成でも良い。
図2(A)に示すアンテナ部61Aでは、例えば4素子の円偏波アンテナ71Aが設けられ、円偏波アンテナ71Aと同数のアンプ72及び可変移相器73が設けられる。同様に、図2(B)に示すアンテナ部61Bでは、例えば4素子の円偏波アンテナ71Bが設けられ、円偏波アンテナ71Bと同数のアンプ74及び可変移相器75が設けられる。
各可変移相器73は、アンテナ切換部66が生成したアンテナ切換制御信号に応じて、送信部62が出力した各パケット送信信号に異なる位相量を付与して各アンプ72に出力する。これにより、アンテナ部61Aは、各円偏波アンテナ71から放射されるパケット送信信号を送信するための送信ビーム方向を切り換えできる。
各アンプ72は、各可変移相器73が異なる位相量を付与したパケット送信信号を増幅して各円偏波アンテナ71Aに出力する。
円偏波アンテナ71Aは、各アンプ72が増幅したパケット送信信号の電力を給電し、アンテナ切換部66が生成したアンテナ切換制御信号に応じて、左旋回方向又は右旋回方向の円偏波を放射することでパケット送信信号を送信する。
円偏波アンテナ71Bは、アンテナ切換部66が生成したアンテナ切換制御信号に応じて、左旋回方向又は右旋回方向の円偏波として送信されたパケット受信信号を受信して各アンプ74に出力する。
各アンプ74は、各円偏波アンテナ71Bが受信したパケット受信信号を増幅して各可変移相器75に出力する。
各可変移相器75は、アンテナ切換部66が生成したアンテナ切換制御信号に応じて、各アンプ74が増幅したパケット受信信号に異なる位相量を付与して受信部63に出力する。これにより、アンテナ部61Bは、例えば他無線通信装置50が送信したパケット受信信号を受信するための受信ビーム方向を切り換えできる。なお、以下の説明では、送信ビーム方向と受信ビーム方向とを含めて、単にビーム方向と記載する。
図3は、第1の実施形態における各円偏波アンテナ71A,71Bの回路構成を示す図である。図3に示す円偏波アンテナ71A,71Bは、例えば2点給電型円偏波パッチアンテナであり、2端子給電型円偏波アンテナ91と、90度移相器92と、180度ハイブリッド93とを含む。
2端子給電型円偏波アンテナ91は、給電用端子としての2つの入出力端子91a,91bを有し、各入出力端子91a,91bに位相差90度の2信号の電力が給電された場合に、左旋回方向又は右旋回方向の円偏波を放射する。
180度ハイブリッド93は、アンプ72が増幅したパケット送信信号が入力端子93aに入力されると、パケット送信信号を180度の位相差、1/2倍の振幅とする2つのパケット送信信号を生成して一対の入出力端子93c,93dに出力する。180度ハイブリッド93は、一対の入出力端子93c,93dに位相差0度の2つのパケット受信信号が入力されると、2つのパケット受信信号を合成し、合成後のパケット受信信号を、出力端子93bを介してアンプ74に出力する。
90度移相器92は、180度ハイブリッド93の入出力端子93dと2端子給電型円偏波アンテナ91の入出力端子91bとの間に接続される。90度移相器92は、アンテナ切換部66が生成したアンテナ切換制御信号に応じて、180度ハイブリッド93の入出力端子93dと2端子給電型円偏波アンテナ91の入出力端子91bとの間の信号の位相を90度進め、又は遅らせる。
図3に示す円偏波アンテナ71Aにおいてパケット送信信号が送信される場合、入力端子93aを介して180度ハイブリッド93に入力されたパケット送信信号の信号電力は、2つの信号電力に振り分けられる。一方の信号電力は2端子給電型円偏波アンテナ91の入出力端子91aに給電され、他方の信号電力は90度移相器92を介して入出力端子91bに給電される。
2端子給電型円偏波アンテナ91の2つの入出力端子91a,91bに給電された信号電力の位相差は90度である。従って、2端子給電型円偏波アンテナ91は、アンテナ切換部66が生成したアンテナ切換制御信号に応じて、90度移相器92において位相差90度の極性(例えば−90度又は+90度)を切り換えることで、左旋回方向又は右旋回方向の円偏波を放射する。
例えば、円偏波アンテナ71Aは、2端子給電型円偏波アンテナ91に入力された2つの信号の位相差が−90度であれば左旋回方向の円偏波を放射し、2つの信号の位相差が+90度であれば右旋回方向の円偏波を放射する。
一方、図3に示す円偏波アンテナ71Bにおいてパケット受信信号が受信される場合、2端子給電型円偏波アンテナ91の入出力端子91a,91bから、他無線通信装置50がパケット受信信号の送信時の旋回方向と同じ旋回方向、即ち同じ位相差90度の極性(例えば−90度又は+90度)を有する2信号が出力される。
一方の信号は180度ハイブリッド93の入出力端子93cに入力され、他方の信号は90度移相器92を介して180度ハイブリッド93の入出力端子93dに入力される。180度ハイブリッド93は、入出力端子93c,93dに入力された2つの信号の位相差を0度となるように合成して出力端子93bに出力する。
なお、円偏波アンテナ71A,71Bは、図3と異なる構成でもよく、送信する場合であれば入出力端子91a,91bの位相関係が適切になれば、また、受信する場合であれば93c,93dの位相関係が適切になれば、入出力端子2端子給電型円偏波アンテナ91、90度移相器92、180度ハイブリッド93以外の要素を用いて構成してもよい。
図4は、端末装置60と他無線通信装置50との間に形成される通信経路を示す図である。図4(A)は、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信経路における通信特性が変化しない場合を示す。
図4(A)では、端末装置60と他無線通信装置50とは、対向して配置される。図4では、説明を簡単にするために、端末装置60及び他無線通信装置50は、4つのビーム方向を順次切り換え、各ビーム方向を図中の上から順に「1,2,3,4」と記載する。
図4(A)に示す通信経路51aは、直接波を用いた通信経路である。例えば図4(A)に示す直接波を用いた通信経路51aにおいて、最も良好な通信特性が得られるビーム方向は、端末装置60と他無線通信装置50とが見通し通信、即ち直接波が届く通信が可能なビーム番号2に対応するビーム方向である。
図4(A)に示す通信経路51bは、反射波を用いた通信経路である。例えば図4(A)に示す反射波を用いた通信経路51bにおいて、最も良好な通信特性が得られるビーム方向は、ビーム番号4に対応するビーム方向である。
図4(B)は、端末装置60が図4(B)中の上方に移動した場合の端末装置60と他無線通信装置50との間の通信経路を示す。図4(B)に示す通信経路52aは、直接波を用いた通信経路であり、端末装置60がビーム番号3に対応するビーム方向を用い、他無線通信装置50がビーム番号1に対応するビーム方向を用いた場合に最も良好な通信特性が得られる。
図4(B)に示す通信経路52bは、反射波を用いた通信経路である。例えば端末装置60がビーム番号4に対応するビーム方向を用い、他無線通信装置50がビーム番号4に対応するビーム方向を用いた場合に最も良好な通信特性が得られる。
図4(C)は、障害物54が混入した場合の端末装置60と他無線通信装置50と間の通信経路を示す。端末装置60と他無線通信装置50との間に障害物54(例えば人間の手)が混入すると、端末装置60からの直接波は他無線通信装置50には届かない(図4(C)に示す通信経路51a参照)。
図4(C)では、反射波を用いた通信経路51bには、障害物54が混入しない。従って、図4(C)に示す通信経路51bにおいて、端末装置60がビーム番号4に対応するビーム方向を用い、更に他無線通信装置50がビーム番号4に対応するビーム方向を用いた場合に、最も良好な通信特性が得られる。
図5は、端末装置60のアンテナが放射する偏波と、他無線通信装置50のアンテナが放射する偏波と、通信特性との関係を示すテーブルである。
図5に示すパターン1,4のように、端末装置60のアンテナ部61及び他無線通信装置50のアンテナが直線偏波を放射する場合、各直線偏波の偏波面(例えば水平偏波、垂直偏波)が一致していれば、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性は良好である。例えば、端末装置60及び他無線通信装置50が垂直偏波を用いる場合には、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性は良好である。
一方、図5に示すパターン2,3のように、各直線偏波の偏波面が90度異なる場合、端末装置60と他無線通信装置50とは通信不良となる。例えば、端末装置60が垂直偏波を放射し、他無線通信装置50が水平偏波を放射する場合には、端末装置60と他無線通信装置50とは通信不良となる。
また、図5に示すパターン5,6,7,8のように、端末装置60のアンテナ部61及び他無線通信装置50のアンテナの一方が直線偏波を放射し、他方が円偏波を放射する場合、受信電力は半分(1/2)となるが、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性は他無線通信装置50、端末装置60が回転しても良好である。例えば、図5に示すパターン5のように、端末装置60が垂直偏波を放射し、他無線通信装置50が右旋回方向の円偏波を放射する場合には、端末装置60と他無線通信装置50との間の信号電力は半減するが、通信特性は他無線通信装置50、端末装置60が回転しても良好である。
また、図5に示すパターン9,12のように、端末装置60のアンテナ部61及び他無線通信装置50のアンテナも円偏波を放射する場合、各円偏波の旋回方向(例えば左旋回方向又は右旋回方向)が一致していれば、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性は良好である。例えば、端末装置60及び他無線通信装置50の各アンテナが右旋回方向の円偏波を用いる場合には、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性は良好である。
一方、図5に示すパターン10,11のように、各円偏波の旋回方向が異なる場合、端末装置60と他無線通信装置50とは通信不良となる。例えば、端末装置60が右旋回方向の円偏波を放射し、他無線通信装置50が左旋回方向の円偏波を放射する場合には、端末装置60と他無線通信装置50とは通信不良となる。
(端末装置60の通信動作手順)
次に、本実施形態の端末装置60における通信動作手順について、図6を参照して説明する。図6は、第1の実施形態の端末装置60における通信動作手順を説明するフローチャートである。図6の説明では、端末装置60のアンテナ部61は、左旋回方向又は右旋回方向の円偏波を放射するとして説明する。
図6において、通信制御部64は、端末装置60と他無線通信装置50との間の無線通信が開始される前に、他無線通信装置50のアンテナ形状、即ち他無線通信装置50のアンテナが放射する偏波の種別を特定する(図7参照)。具体的には、通信制御部64は、アンテナ部61が放射する円偏波の旋回方向及びビーム方向をアンテナ切換部66に切り換えさせ、両旋回方向の円偏波におけるビーム方向毎の通信特性を取得する(S1)。
(他無線通信装置50のアンテナ形状の特定動作手順)
図7は、図6に示すステップS1の他無線通信装置50のアンテナ形状の特定動作手順を説明するフローチャートである。
図7において、通信制御部64は、例えばアンテナ部61が放射する円偏波の旋回方向を右旋回方向に切り換え、更に右旋回方向の円偏波のビーム方向を切り換える指示をアンテナ切換部66に出力し、更に、他無線通信装置50との間の通信特性を要求するための通信特性取得要求を生成して送信部62に出力する。
アンテナ切換部66は、通信制御部64の指示に応じて、アンテナ部61が放射する円偏波の旋回方向を右旋回方向に切り換え、更に右旋回方向の円偏波のビーム方向を切り換えるためのアンテナ切換制御信号を生成してアンテナ部61に出力する。
送信部62は、通信制御部64が生成した通信特性取得要求に応じて、例えば他無線通信装置50との間の通信特性を要求するためのパケット送信信号を生成してアンテナ部61に出力する。アンテナ部61は、アンテナ切換部66が生成したアンテナ切換制御信号に応じて、右旋回方向の円偏波を用いて、送信部62が生成したパケット送信信号を全てのビーム方向毎に送信する(S11)。
他無線通信装置50は、右旋回方向の円偏波を用いて送信されたパケット送信信号を受信すると、ビーム方向毎の通信特性を示す情報を含むパケット受信信号を端末装置60に返信する。
端末装置60は、他無線通信装置50からパケット受信信号を受信した場合(S12、YES)、パケット受信信号を、アンテナ部61を介して受信部63に出力する。受信部63は、アンテナ部61が出力したパケット受信信号を復調し、パケット受信信号の復調結果をアンテナ検出部65に出力する。
アンテナ検出部65は、受信部63のパケット受信信号の復調結果を基に、他無線通信装置50との間の通信特性を示す情報をビーム方向毎にメモリ(不図示)に保存する(S13)。即ち、アンテナ検出部65は、右旋回方向の円偏波を用いた場合の全てのビーム方向毎の通信特性を示す情報を保存し、通信制御部64に次の動作、即ち左旋回方向の円偏波を用いた場合の全てのビーム方向毎の通信特性を示す情報の取得を指示する。
なお、他無線通信装置50が、最も良好な通信特性が得られたビーム方向の通信特性を示す情報、又は最も良好な通信特性が得られたビーム方向の情報をパケット受信信号に含めて返信した場合、アンテナ検出部65は、最も良好な通信特性が得られたビーム方向の通信特性を示す情報、又は最も良好な通信特性が得られたビーム方向の情報を保存しても良く、以下の各実施形態においても同様である。
一方、端末装置60がビーム方向毎にパケット送信信号を送信してから一定時間が経過しても他無線通信装置50から返信が無い場合には(S12、NO)、アンテナ検出部65は、返信が無い、即ち未受信である旨の情報を該当するビーム方向毎に保存し(S14)、通信制御部64に次の動作、即ち左旋回方向の円偏波を用いた場合のビーム方向毎の通信特性を示す情報の取得を指示する。
次に、通信制御部64は、アンテナ部61が放射する円偏波の旋回方向を左旋回方向に切り換え、更に左旋回方向の円偏波のビーム方向を切り換える指示をアンテナ切換部66に出力し、更に、他無線通信装置50との間の通信特性を要求するための通信特性取得要求を生成して送信部62に出力する。
アンテナ切換部66は、通信制御部64の指示に応じて、アンテナ部61が放射する円偏波の旋回方向を左旋回方向に切り換え、更に左旋回方向の円偏波のビーム方向を切り換えるためのアンテナ切換制御信号を生成してアンテナ部61に出力する。
送信部62は、通信制御部64が生成した通信特性取得要求に応じて、例えば他無線通信装置50との間の通信特性を要求するためのパケット送信信号を生成してアンテナ部61に出力する。アンテナ部61は、アンテナ切換部66が生成したアンテナ切換制御信号に応じて、左旋回方向の円偏波を用いて、送信部62が生成したパケット送信信号を全てのビーム方向毎に送信する(S15)。
他無線通信装置50は、左旋回方向の円偏波を用いて送信されたパケット送信信号を受信すると、ビーム方向毎の通信特性を示す情報を含むパケット受信信号を端末装置60に返信する。
端末装置60は、他無線通信装置50からパケット受信信号を受信した場合(S16、YES)、パケット受信信号を、アンテナ部61を介して受信部63に出力する。受信部63は、アンテナ部61が出力したパケット受信信号を復調し、パケット受信信号の復調結果をアンテナ検出部65に出力する。
アンテナ検出部65は、受信部63のパケット受信信号の復調結果を基に、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性を示す情報をビーム方向毎にメモリ(不図示)に保存する(S17)。即ち、アンテナ検出部65は、左旋回方向の円偏波を用いた場合の全てのビーム方向毎の通信特性を示す情報を保存する。これにより、図7に示す他無線通信装置50のアンテナ形状の特定動作手順は終了し、端末装置60の通信動作手順は図6に示すフローチャートのステップS2に復帰する。
一方、端末装置60がビーム方向毎にパケット送信信号を送信してから一定時間が経過しても他無線通信装置50から返信が無い場合には(S16、NO)、アンテナ検出部65は、返信が無い、即ち未受信である旨の情報を該当するビーム方向毎に保存する(S18)。これにより、図7に示す他無線通信装置50のアンテナ形状の特定動作手順は終了し、端末装置60の通信動作手順は図6に示すフローチャートのステップS2に復帰する。
なお、図7では、端末装置60は、最初に右旋回方向の円偏波を放射し、次に左旋回方向の円偏波を放射したが、旋回方向の順序は左旋回方向及び右旋回方向のどちらが先でも良い。
図6において、アンテナ検出部65は、右旋回方向の円偏波を用いた場合のビーム方向毎の通信特性を示す情報と、左旋回方向の円偏波を用いた場合のビーム方向毎の通信特性を示す情報とを比較する。
アンテナ検出部65は、右旋回方向の円偏波を用いた場合のビーム方向毎の通信特性を示す情報と、左旋回方向の円偏波を用いた場合のビーム方向毎の通信特性を示す情報との比較結果を基に、他無線通信装置50のアンテナ形状が円偏波アンテナ又は直線偏波アンテナのどちらであるかを特定する(S2)。
図8は、4つのビーム方向を順次切り換える端末装置60が円偏波を用いた場合に他無線通信装置50のアンテナが放射した偏波毎の通信特性の比較結果を示すテーブルである。図8では、端末装置60が左旋回方向及び右旋回方向の各円偏波を用い、他無線通信装置50が直線偏波及び円偏波を用いてビーム方向を切り換えた場合に、最も良好な通信特性が得られたビーム方向の比較結果が示される。図8に示す数値(例えば2、4)は、最も良好な通信特性が得られたビーム方向のビーム番号を表す(図4参照)。
具体的には、アンテナ検出部65は、左旋回方向及び右旋回方向の各円偏波を用いた場合の端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性の差分が所定範囲内である、又は、最も良好な通信特性が得られたビーム方向のビーム番号が同一である場合(図8に示す列501参照)、他無線通信装置50のアンテナ形状が直線偏波アンテナであると特定する。
これは、円偏波が直線偏波にて受信された場合又は直線偏波が円偏波にて受信された場合には理論的には電力が半減するが(図5参照)、右旋回方向の円偏波と左旋回方向の円偏波とは同じ通信特性として受信されるためである。
また、直接波(図4の通信経路51a参照)又は反射波(図4の通信経路51b参照)を用いた通信では、直線偏波は壁又は地面に反射しても偏波面は変わらない。このため、他無線通信装置50のアンテナ形状が直線偏波アンテナであれば、右旋回方向の円偏波と左旋回方向の円偏波とのどちらが放射されても同じ通信特性が得られる。
一方、アンテナ検出部65は、左旋回方向及び右旋回方向の各円偏波を用いた場合の端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性の差分が所定範囲内でない、最も良好な通信特性が得られたビーム方向のビーム番号が異なる(図8に示す列502参照)、又は左旋回方向又は右旋回方向の円偏波の放射に対する返信が無かった場合、他無線通信装置50のアンテナ形状が円偏波アンテナであると特定する。
これは、円偏波が壁又は地面にて一度反射すると、旋回方向が変化するためである。例えば、左旋回方向の円偏波は一度の反射によって右旋回方向の円偏波に変化し、右旋回方向の円偏波は一度の反射によって左旋回方向の円偏波に変化する。なお、円偏波は、偶数回、壁又は地面に反射した場合には旋回方向が元の旋回方向に戻る。
例えば他無線通信装置50のアンテナ形状が右旋回方向の円偏波を放射する円偏波アンテナであり、端末装置60が右旋回方向の円偏波を放射した場合、他無線通信装置50は、直接波(図4の通信経路51a参照)又は偶数回反射された反射波を受信できる。他無線通信装置50は、直接波又は偶数回反射された反射波の通信特性を含むパケット送信信号を返信できる。他無線通信装置50は右旋回方向の円偏波を放射するので、端末装置60は、直接波又は偶数回反射された反射波を受信できる。
また、端末装置60が左旋回方向の円偏波を放射した場合には、他無線通信装置50は、右旋回方向の円偏波を受信可能なため、左旋回方向の円偏波は受信困難だが、奇数回反射された反射波を受信できる。他無線通信装置50は、奇数回反射された反射波の通信特性を含むパケット送信信号を返信できる。他無線通信装置50は右旋回方向の円偏波を放射するので、端末装置60は、奇数回反射された反射波を受信できる。
これにより、アンテナ検出部65は、他無線通信装置50のアンテナ形状が円偏波アンテナ又は直線偏波アンテナであるか、即ち他無線通信装置50のアンテナが放射する偏波が円偏波又は直線偏波であるかを簡易に特定できる。なお、他無線通信装置50が右旋回方向の円偏波を放射する円偏波アンテナを有する場合を想定して説明したが、左旋回アンテナを有する場合も同様である。
アンテナ検出部65は、他無線通信装置50のアンテナ形状を特定した後、特定結果を通信制御部64に出力する。通信制御部64は、他無線通信装置50のアンテナ形状の特定結果に応じて、円偏波の旋回方向及びビーム方向の切り換えをアンテナ切換部66に指示し、端末装置60と他無線通信装置50との間において通信を開始する。
なお、ステップS1におけるアンテナ形状の特定動作手順は、端末装置60と他無線通信装置50との通信開始の前でなくても、例えばスリープ中に定期的に行われても良く、以下の各実施形態においても同様である。
(他無線通信装置50が直線偏波アンテナを有する場合の通信動作手順)
端末装置60と他無線通信装置50との通信中に通信特性が変化する場合とは、例えば端末装置60が移動する場合(図4(B)参照)、又は端末装置60と他無線通信装置50との間に障害物54が混入する場合が考えられる(図4(C)参照)。
なお、以下の説明を簡単にするために、端末装置60が移動する場合を説明するが、他無線通信装置50が移動する場合又は端末装置60及び他無線通信装置50の両方が移動する場合も同様である。
通信制御部64は、他無線通信装置50のアンテナ形状が直線偏波アンテナであると特定した場合に(S2、YES)、アンテナ部61が放射する円偏波の旋回方向を、ステップS1において最も良好な通信特性が得られた円偏波の旋回方向(例えば右旋回方向)に切り換え、更に右旋回方向のうち最も良好な通信特性が得られた円偏波のビーム方向に切り換える指示をアンテナ切換部66に出力し、通信を開始する(S2−1)。
その後、ステップS3においては、図4に示すように、他無線通信装置50と端末装置60との間の通信特性の変化を考慮して、所定の時間間隔をおいて、通信制御部64は、他無線通信装置50との間の通信特性を要求するための通信特性取得要求を生成して送信部62に出力する。
なお、ステップS3においては、アンテナ切換部66は、通信制御部64の指示があった場合でも、アンテナ部61が放射する円偏波の旋回方向の切り換えは行わない。他無線通信装置50が直線偏波であるため、旋回方向による通信特性の変化が無いためである。
送信部62は、通信制御部64が生成した通信特性取得要求に応じて、例えば他無線通信装置50との間の通信特性を要求するためのパケット送信信号を生成してアンテナ部61に出力する。
アンテナ部61は、アンテナ切換部66が生成したアンテナ切換制御信号に応じて、ステップS2−1において通信していた同じ旋回方向である右旋回方向の円偏波を用いて、送信部62が生成したパケット送信信号を全てのビーム方向毎に送信する。
次に、ステップS4において、他無線通信装置50は、端末装置60が移動した場合には通信経路52a,52b、又は端末装置60と他無線通信装置50との間に障害物54が混入した場合には通信経路51bによって、端末装置60が送信したパケット送信信号を受信する。
他無線通信装置50は、右旋回方向の円偏波を用いて送信されたパケット送信信号を受信すると、ビーム方向毎の通信特性を示す情報を含むパケット受信信号を端末装置60に返信する。
端末装置60は、端末装置60が移動した場合には通信経路52a,52b、又は端末装置60と他無線通信装置50との間に障害物54が混入した場合には通信経路51bによって、他無線通信装置50が送信したパケット送信信号を受信する。
端末装置60は、他無線通信装置50から受信したパケット受信信号を、アンテナ部61を介して受信部63に出力する。受信部63は、アンテナ部61が出力したパケット受信信号を復調し、パケット受信信号の復調結果を通信制御部64に出力する。
通信制御部64は、受信部63のパケット受信信号の復調結果を基に、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性を示す情報をビーム方向毎に取得してメモリ(不図示)に保存することで、ビーム方向毎のSNを取得する。取得したSNより良好なビーム方向にアンテナを切り替える指示をアンテナ切換部66に出力する。アンテナ切換部66はアンテナ切替指示に基づいて、アンテナ部61を制御する。
その後、通信制御部64は、ステップS3及びステップS4の各動作を繰り返す。
これにより、通信制御部64は、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性を監視でき、パケットロスを回避できる。また、端末装置60は、他無線通信装置50のアンテナ形状が直線偏波アンテナであると特定できるので、他無線通信装置50との間の通信特性を取得するためのパケット送信信号を、ステップS1において最も良好な通信特性が得られた円偏波の旋回方向(左旋回方向又は右旋回方向のいずれか)についての円偏波を送信すれば良い。
なお、通信に用いるビーム方向は、通信特性が最も良好な方向以外にも、良好であれば、選択できる。
従って、端末装置60は、端末装置60と他無線通信装置50との間において通信を開始する場合に、左旋回方向及び右旋回方向の両旋回方向の円偏波に切り換えて他無線通信装置50との間の通信特性を取得する必要が無いので、他無線通信装置50との間の通信特性の取得に要する消費電力を低減でき、他無線通信装置50との間の通信を簡易に開始できる。
なお、通信制御部64は、一定時間毎に、通信特性の劣化又はパケットロスを検出した場合に、通信特性を取得するためのパケット送信信号を、ビーム方向毎に通信中の旋回方向と同じ旋回方向の円偏波を用いて送信しても良い。
図9は、他無線通信装置50が直線偏波アンテナを有する場合に、通信中において定期的に得られたビーム方向毎の通信特性の結果の一例を簡易に示すテーブルである。なお、図9では、ビーム方向を16方向とした場合について記載する。なお、ビーム方向は、図4に示す4方向、図9に示す16方向に限らず、任意の数を用いることができる。
図9では、現在から所定時間前の通信中において、両旋回方向の円偏波のビーム方向がビーム番号1〜16まで切り換えられた(走査された)結果を示しており、両旋回方向の円偏波のビーム番号1のビーム方向における通信特性が最も良好であった(図9に示す矢印左側参照)。
図9において、端末装置60は、他無線通信装置50のアンテナ形状が直線偏波アンテナであると特定できるので、現在、所定時間前の通信中において最も良好な通信特性が得られた右旋回方向及びビーム方向に切り換えて、他無線通信装置50との間の通信特性を取得する。図9では、右旋回方向の円偏波を用いたビーム番号15に対応するビーム方向の通信特性が最も良好であった(図9に示す矢印右側参照)。
円偏波の旋回方向が変わらずに最も良好な通信特性が得られたビーム方向が異なるので、端末装置60は、端末装置60自身の移動を検知でき、両旋回方向ではなく、片旋回方向(例えば図9では右旋回方向)の円偏波におけるビーム方向を走査する。
これにより、端末装置60は、他無線通信装置50のアンテナ形状が直線偏波アンテナであると特定できるので、両旋回方向ではなく、片旋回方向(例えば図9では右旋回方向)の円偏波のビーム方向を走査することで、他無線通信装置50との間の通信特性の取得に要する消費電力を低減できる。
(他無線通信装置50が円偏波アンテナを有する場合の通信動作手順)
1.端末装置60が移動した場合
先ず、端末装置60と他無線通信装置50との通信中に、端末装置60が移動した場合(図4(B)参照)の端末装置60の通信動作手順を説明する。以下、他無線通信装置50のアンテナは、例えば右旋回方向の円偏波を放射するとして説明する。
通信制御部64は、他無線通信装置50のアンテナ形状が円偏波アンテナであると特定した場合に(S2、NO)、
アンテナ部61が放射する円偏波の旋回方向を、ステップS1において最も良好な通信特性が得られた円偏波の旋回方向(例えば右旋回方向)に切り換え、更に右旋回方向のうち最も良好な通信特性が得られた円偏波のビーム方向に切り換える指示をアンテナ切換部66に出力し、通信を開始する(S2−2)。
その後、ステップS5においては、図4に示すように、他無線通信装置50と端末装置60との間の通信特性の変化を考慮して、所定の時間間隔をおいて、通信制御部64は、他無線通信装置50との間の通信特性を要求するための通信特性取得要求を生成して送信部62に出力する(S5)。
なお、ステップS5においては、アンテナ切換部66は、通信制御部64の指示があった場合でも、アンテナ部61が放射する円偏波の旋回方向の切り換えは行わない。他無線通信装置50が円偏波であるため、旋回方向による通信特性の変化が存在するが、通信遮断の原因によっては、ビーム方向の走査回数(旋回方向の切替)を減少できるためである。
送信部62は、通信制御部64が生成した通信特性取得要求に応じて、例えば他無線通信装置50との間の通信特性を要求するためのパケット送信信号を生成してアンテナ部61に出力する。アンテナ部61は、アンテナ切換部66が生成したアンテナ切換制御信号に応じて、ステップS2−2において通信していた同じ旋回方向である右旋回方向の円偏波を用いて、送信部62が生成したパケット送信信号を全てのビーム方向毎に送信する。
次に、ステップS6において、他無線通信装置50は、端末装置60が移動した場合には、通信経路52aによって、端末装置60が送信したパケット送信信号を受信する(図4(B)参照)。
しかし、説明を簡単にするために、他無線通信装置50のアンテナは、右旋回方向の円偏波を放射する円偏波アンテナとしているため、他無線通信装置50は、端末装置60が移動した場合には、通信経路52aによって、端末装置60が送信したパケット送信信号を受信できる。通信経路52bでは、右旋回方向の円偏波は地面に一度反射すると左旋回方向の円偏波に変化し、他無線通信装置50のアンテナでは受信困難となるためである。
他無線通信装置50は、右旋回方向の円偏波を用いて送信されたパケット送信信号を受信すると、ビーム方向毎の通信特性を示す情報を含むパケット受信信号を端末装置60に返信する。
なお、端末装置60は、端末装置60が移動した場合には、通信経路52aによって、他無線通信装置50が送信したパケット受信信号を受信する(図4(B)参照)。
しかし、他無線通信装置50のアンテナは、右旋回方向の円偏波を放射する円偏波アンテナとしているため、端末装置60は、端末装置60が移動した場合には、通信経路52aによって、他無線通信装置50が送信したパケット受信信号を受信できる。
端末装置60は、他無線通信装置50から受信したパケット受信信号を、アンテナ部61を介して受信部63に出力する。受信部63は、アンテナ部61が出力したパケット受信信号を復調し、パケット受信信号の復調結果を通信制御部64に出力する。
通信制御部64は、受信部63のパケット受信信号の復調結果を基に、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性を示す情報を全てのビーム方向毎に取得してメモリ(不図示)に保存することで、ビーム方向毎のSNを取得する。
次に、ステップS7において、通信制御部64は、全てのビーム方向毎の通信特性を示す情報を取得した後、端末装置60と他無線通信装置50との間において通信可能なビーム方向が存在するか否かを判定する。通信制御部64は、端末装置60と他無線通信装置50との間において通信可能なビーム方向が存在すると判定した場合(S7、YES)、アンテナ部61が放射する円偏波のビーム方向を、最も良好な通信特性が得られたビーム方向に切り換えて、他無線通信装置50との間の通信を継続する。
通信制御部64は、例えばタイマを用いて、アンテナ部61が放射する円偏波のビーム方向を、最も良好な通信特性が得られたビーム方向に切り換えてから一定時間経過したか否かを判定する(S9)。一定時間が経過していない場合には(S9、NO)、端末装置60の通信動作手順はステップS5に戻る。
一方、一定時間が経過した場合には(S9、YES)、端末装置60の通信動作手順はステップS1に戻る。ここでは、端末装置60の通信動作手順がステップS1に戻るための条件は、ステップS9において一定時間が経過した場合として説明しているが、例えば端末装置60がパケットロスを検出したタイミングにおいて、ステップS1の通信動作順を実行しても良い。
ここで、ステップS9において一定時間が経過した場合に、ステップS1の通信動作手順、即ち他無線通信装置50のアンテナ形状を特定する通信動作手順に戻る理由は、次の通りである。
具体的には、他無線通信装置50のアンテナ形状の特定動作手順が実行される時点において、端末装置60と他無線通信装置50との間に障害物54(図4(C)参照)が混入した場合、端末装置60と他無線通信装置50とは、反射波を用いて通信する(図4(C)に示す符号51b参照)。
本来、通信特性が最も良好な直接波(図4(A)に示す通信経路51a参照)を用いて通信することが望ましいが、反射波を用いた通信が継続すると、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性が直接波と比較して劣化する。
そこで、ステップS9において一定時間が経過した場合に、ステップS1の通信動作手順、即ち他無線通信装置50のアンテナ形状を特定する通信動作手順に戻るのは、反射波(図4(C)に示す通信経路51b参照)を用いた通信が継続していた場合でも、例えば障害物54が取り除かれる場合を想定し、端末装置60と他無線通信装置50とは直接波(図4(A)に示す通信経路51a参照)を用いた通信に切り換える機会を得るためである。
なお、ステップS9において一定時間が経過した場合に、ステップS1の通信動作手順、即ち他無線通信装置50のアンテナ形状を特定する通信動作手順に戻らなくても良い。例えば、通信制御部64は、ビーム方向毎に通信中の旋回方向と逆方向の旋回方向の円偏波を用いて、通信特性を取得するためのパケット送信信号をアンテナ部61から送信させても良く、以下の各実施形態においても同様である。
これにより、通信制御部64は、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信中に端末装置60が移動した場合でも、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性をリアルタイムに監視でき、端末装置60が移動した場合のパケットロスを回避できる。
2.端末装置60と他無線通信装置50との間に障害物54が混入した場合
次に、端末装置60と他無線通信装置50との通信中に、端末装置60と他無線通信装置50との間に障害物54が混入した場合(図4(C)参照)の端末装置60の通信動作手順を説明する。
端末装置60と他無線通信装置50とが通信経路51a(図4(A)参照)を用いて通信していた場合に障害物54が混入すると、端末装置60が送信したパケット送信信号は他無線通信装置50に届かない(図4(C)参照)。
従って、通信制御部64は、図6に示すステップS7において、端末装置60と他無線通信装置50との間において通信可能なビーム方向が存在しないと判定する(S7、NO)。
通信制御部64は、ステップS5において切り換えられた右旋回方向の円偏波を用いたパケット送信信号の送信を中断する。更に、通信制御部64は、アンテナ部61が放射する円偏波の旋回方向を逆方向の左旋回方向に切り換え、更に左旋回方向の円偏波のビーム方向を切り換える指示をアンテナ切換部66に出力し、更に、他無線通信装置50との間の通信特性を要求するための通信特性取得要求を生成して送信部62に出力する。
アンテナ切換部66は、通信制御部64の指示に応じて、アンテナ部61が放射する円偏波の旋回方向を左旋回方向に切り換え、更に左旋回方向の円偏波のビーム方向を切り換えるためのアンテナ切換制御信号を生成してアンテナ部61に出力する。
送信部62は、通信制御部64が生成した通信特性取得要求に応じて、例えば他無線通信装置50との間の通信特性を要求するためのパケット送信信号を生成してアンテナ部61に出力する。アンテナ部61は、アンテナ切換部66が生成したアンテナ切換制御信号に応じて、左旋回方向の円偏波を用いて、送信部62が生成したパケット送信信号をビーム方向毎に送信する。
他無線通信装置50は、端末装置60と他無線通信装置50との間に障害物54が混入した場合には通信経路51bによって、端末装置60が送信したパケット送信信号を受信する。
他無線通信装置50は、右旋回方向の円偏波を用いて送信されたパケット送信信号が地面にて1回反射されて左旋回方向の円偏波に切り換わったパケット送信信号を、通信経路51bによって受信する。他無線通信装置50は、右旋回方向の円偏波を用いて、ビーム方向毎の通信特性を示す情報を含むパケット受信信号を端末装置60に返信する。
端末装置60は、右旋回方向の円偏波を用いて送信されたパケット送信信号が地面にて1回反射されて左旋回方向の円偏波に切り換わったパケット送信信号を、通信経路51bによって受信する。
端末装置60は、他無線通信装置50から受信したパケット受信信号を、アンテナ部61を介して受信部63に出力する。受信部63は、アンテナ部61が出力したパケット受信信号を復調し、パケット受信信号の復調結果を通信制御部64に出力する。
通信制御部64は、受信部63のパケット受信信号の復調結果を基に、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性を示す情報を全てのビーム方向毎に再取得してメモリ(不図示)に保存する(S8)。通信制御部64は、左旋回方向の円偏波のビーム方向を、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性が最も良好なビーム方向に切り換えて、他無線通信装置50との間の通信を継続する。なお、ステップS8以降の端末装置60の動作は上述した説明と同一のため、説明を省略する。
これにより、通信制御部64は、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信中に障害物54が混入した場合でも、直接波ではなく反射波を用いることで、通信特性が最も良好なビーム方向に切り換えて通信を継続できる。
図10(A)は、他無線通信装置50が円偏波アンテナを有する場合に、通信中において定期的なビーム方向毎の通信特性の結果の一例を簡易に示すテーブルである。なお、図10では、ビーム方向を16方向とした場合について記載する。なお、ビーム方向は、図4に示す4方向、図10に示す16方向に限らず、任意の数を用いることができる。
図10(A)では、現在から所定時間前の通信中において、両旋回方向の円偏波のビーム方向がビーム番号1〜16まで切り換えられた(走査された)結果を示しており、右旋回方向の円偏波のビーム番号1に対応するビーム方向における通信特性が最も良好であった(図10(A)に示す矢印左側参照)。
図10(A)において、端末装置60は、他無線通信装置50のアンテナ形状が右旋回方向の円偏波アンテナであると特定できるので、現在、所定時間前の通信中において最も良好な通信特性が得られた右旋回方向及びビーム方向に切り換えて、他無線通信装置50との間の通信特性を取得する。図10(A)では、右旋回方向の円偏波を用いたビーム番号15に対応するビーム方向の通信特性が最も良好であった(図10(A)に示す矢印右側参照)。
円偏波の旋回方向が変わらずに最も良好な通信特性が得られたビーム方向が異なるので、端末装置60は、端末装置60自身の移動を検知でき、両旋回方向でなく、片旋回方向(例えば図10(A)に示す右旋回方向)の円偏波におけるビーム方向を走査する。
これにより、端末装置60は、他無線通信装置50のアンテナ形状が右旋回方向の円偏波アンテナであると特定できるので、両旋回方向ではなく、片旋回方向(例えば図10(A)では右旋回方向)の円偏波のビーム方向を走査することで、他無線通信装置50との間の通信特性の取得に要する消費電力を低減できる。
図10(B)は、他無線通信装置50が円偏波アンテナを有する場合に、通信遮断後のビーム方向毎の通信特性の結果の一例を簡易に示すテーブルである。
図10(B)では、障害物54が混入する前、即ち通信遮断前には、両旋回方向の円偏波のビーム方向がビーム番号1〜16まで切り換えられた(走査された)結果、右旋回方向の円偏波のビーム番号1に対応するビーム方向における通信特性が最も良好であった(図10(B)に示す矢印左側参照)。
図10(B)において、端末装置60は、他無線通信装置50のアンテナ形状が右旋回方向の円偏波アンテナであると特定できるので、現在、所定時間前の通信中において最も良好な通信特性が得られた右旋回方向及びビーム方向に切り換えて、他無線通信装置50との間の通信特性を取得する。図10(B)では、右旋回方向の円偏波を用いたビーム方向の通信特性は、いずれも良好ではなかった(図10(B)に示す矢印右側参照)。
そこで、端末装置60は、円偏波の旋回方向を左旋回方向に切り換え、同様に他無線通信装置50との通信特性を全てのビーム方向毎に取得する。図10(B)では、左旋回方向の円偏波を用いたビーム番号15に対応するビーム方向の通信特性が最も良好であった(図10(B)に示す矢印右側参照)。
つまり、図10(B)では、ステップS1において通信特性が最も良好であった円偏波(右旋回方向)及びビーム方向(ビーム番号1)と全く異なる円偏波(左旋回方向)及びビーム方向(ビーム番号15)における通信特性が最も良好であった。このため、端末装置60は、障害物54が混入したと検知でき、両旋回方向の円偏波におけるビーム方向を走査する。
図11は、従来技術と第1の実施形態とにおける、通信遮断後に通信特性を取得するためにビーム方向を走査する回数の比較図である。図11では、片旋回方向の円偏波が放射されるビーム方向は16方向である。なお、ビーム方向は、図4に示す4方向、図11に示す16方向に限らず、任意の数を用いることができる。
本実施形態では、直線偏波アンテナを有する他無線通信装置50と円偏波アンテナを有する端末装置60との通信が、端末装置60が移動した場合及び障害物54が混入して通信が遮断した場合のいずれも、端末装置60におけるビーム方向の走査回数は16回であり、従来技術の32回に比べて半減する。
これは、端末装置60が円偏波であり、他無線通信装置50が直線偏波である組み合わせでは、端末装置60の円偏波の旋回方向による通信特性の差異は無いため、左右いずれかの旋回方向についてビーム方向の走査を行えばよいためである。
また、円偏波アンテナを有する他無線通信装置50と円偏波アンテナを有する端末装置60との通信が、障害物54が混入して通信が遮断した場合では、端末装置60におけるビーム方向の走査回数は32回と従来技術と変わらないが、端末装置60が移動した場合の端末装置60におけるビーム方向の走査回数は16回であり、従来技術の32回に比べて半減する。このように、端末装置60におけるビーム方向の走査回数が減った分、端末装置60における消費電力が低減する。
なお、図6のフローチャートは、端末装置60の動作について主に記載したが、ステップS1の前、ステップS1の後またはステップS2の後に、他無線通信装置50がビーム方向毎のSNを取得する動作を行ってもよい。
例えば、他無線通信装置50は、図6のS1の後に、端末装置60が他無線通信装置50に対して行ったステップS1の動作を行う。
これにより、端末装置60と他無線通信装置50とが、それぞれ、最適なビーム方向を知ることができる。
以上により、本実施形態の端末装置60は、定期的又は通信が遮断した場合に、通信相手としての他無線通信装置50のアンテナ形状を特定し、他無線通信装置50のアンテナが放射する偏波を考慮して、偏波及びビーム方向を切り換えて他無線通信装置50との間の通信特性を取得する。
これにより、端末装置60は、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信において、最も良好な通信特性が得られた偏波及びビーム方向に切り換えて通信を継続できる。また、端末装置60は、端末装置60が移動した場合又は障害物54が混入した場合でも、偏波及びビーム方向の切り換えに要する動作を簡易化できるので、他無線通信装置50のアンテナ形状が円偏波アンテナでなければ、端末装置60における消費電力を低減できる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、端末装置60は、他無線通信装置50のアンテナ形状を特定する場合に、左旋回方向の円偏波と右旋回方向の円偏波とを用いて放射し、他無線通信装置50との通信においても円偏波を用いて放射した。
第2の実施形態では、端末装置60は、他無線通信装置50のアンテナ形状を特定する場合に、直線偏波(例えば垂直偏波及び水平偏波)を用いて放射し、他無線通信装置50のアンテナ形状に応じて、直線偏波と円偏波とを切り換えて放射する。
本実施形態の端末装置60は、図1に示す端末装置60と同一の構成を有するので、第1の実施形態の端末装置60と同一の構成要素については同一の符号を用いることで、説明を省略又は簡略化し、異なる内容について説明する。
アンテナ検出部65は、他無線通信装置50のアンテナ形状が直線偏波アンテナであると特定した場合に、直線偏波アンテナが放射する直線偏波の種別が水平偏波又は垂直偏波のどちらであるかを特定する。アンテナ検出部65は、直線偏波の種別の特定結果を通信制御部64又はアンテナ切換部66に出力する。
なお、アンテナ検出部65は、他無線通信装置50のアンテナ形状が直線偏波アンテナであると特定した場合は、端末装置60は、円偏波を用いるため、他無線通信装置50が、水平偏波又は垂直偏波のどちらであるかの特定は省略することができる。
図12は、第2の実施形態における偏波アンテナ71Cの回路構成を示す図である。図12に示す偏波アンテナ71Cは、2端子給電型円偏波アンテナ91と、90度移相器92と、180度ハイブリッド93と、スイッチ95とを含む。
第1の実施形態では、90度移相器92は、アンテナ切換部66が生成したアンテナ切換制御信号に応じて、位相差90度の極性(例えば+90度又は−90度)を切り換えて、円偏波の旋回方向を切り換えた。本実施形態では、円偏波の旋回方向の切り換えは必要ない、即ち端末装置60は円偏波を放射する場合には左旋回方向又は右旋回方向の円偏波のどちらを用いても良いので、90度移相器92は、位相差90度の極性をどちらか一方の極性(例えば+90度)を用いる。
スイッチ95は、スイッチ95aと、スイッチ95bとを含む。スイッチ95aは、2端子給電型円偏波アンテナ91の入出力端子91aと180度ハイブリッド93の入出力端子93cとの間の接続をオン又はオフに切り換える。スイッチ95bは、2端子給電型円偏波アンテナ91の入出力端子91bと90度移相器92との間の接続をオン又はオフに切り換える。
図12に示す偏波アンテナ71Cは、スイッチ95a,95bをオン又はオフに切り換えることで、アンテナ部61が放射する偏波を円偏波又は直線偏波に切り換えできる。
具体的には、偏波アンテナ71Cは、スイッチ95a,95bの両方がオンである場合、第1の実施形態と同様に、2端子給電型円偏波アンテナ91から左旋回方向又は右旋回方向の円偏波を放射する。
偏波アンテナ71Cは、スイッチ95aがオン、スイッチ95bがオフの組合せ、又はスイッチ95aがオフ、スイッチ95bがオンの組合せにおいて、2端子給電型円偏波アンテナ91から直線偏波を放射する。
2端子給電型円偏波アンテナ91では、パッチアンテナの中心から同じ距離離れたx軸とy軸上の各位置が給電される。このため、偏波アンテナ71Cは、スイッチ95aがオン、スイッチ95bがオフの組合せと、スイッチ95aがオフ、スイッチ95bがオンの組合せとでは、各入出力端子91a,91bから放射される偏波方向が互いに90度ずれ、垂直偏波又は水平偏波として放射する。
なお、偏波アンテナ71Cは、直線偏波と円偏波との切換えが可能であれば、図12以外の構成でもよく、2端子給電型円偏波アンテナ91、90度移相器92、180度ハイブリッド93、スイッチ95以外の要素を用いて構成してもよい。
(端末装置60の通信動作手順)
次に、本実施形態の端末装置60における通信動作手順について、図13を参照して説明する。図13は、第2の実施形態の端末装置60における通信処理手順を説明するフローチャートである。図13の説明では、端末装置60のアンテナ部61は、直線偏波の垂直偏波と水平偏波とを放射する。
図13において、通信制御部64は、端末装置60と他無線通信装置50との間の無線通信が開始される前に、他無線通信装置50のアンテナ形状、即ち他無線通信装置50のアンテナが放射する偏波の種別を特定する(図14参照)。具体的には、通信制御部64は、アンテナ部61が放射する直線偏波の偏波面(垂直偏波又は水平偏波)及びビーム方向をアンテナ切換部66に切り換えさせ、両偏波面の直線偏波におけるビーム方向毎の通信特性を取得する(S31)。
(他無線通信装置50のアンテナ形状の特定動作手順)
図14は、図13に示すステップS31の他無線通信装置50のアンテナ形状の特定動作手順を説明するフローチャートである。
図14において、通信制御部64は、例えばアンテナ部61が放射する直線偏波を垂直偏波に切り換え、更に垂直偏波のビーム方向を切り換える指示をアンテナ切換部66に出力し、更に、他無線通信装置50との間の通信特性を要求するための通信特性取得要求を生成して送信部62に出力する。
アンテナ切換部66は、通信制御部64の指示に応じて、アンテナ部61が放射する直線偏波を垂直偏波に切り換え、更に垂直偏波のビーム方向を切り換えるためのアンテナ切換制御信号を生成してアンテナ部61に出力する。
送信部62は、通信制御部64が生成した通信特性取得要求に応じて、例えば他無線通信装置50との間の通信特性を要求するためのパケット送信信号を生成してアンテナ部61に出力する。アンテナ部61は、アンテナ切換部66が生成したアンテナ切換制御信号に応じて、垂直偏波を用いて、送信部62が生成したパケット送信信号を全てのビーム方向毎に送信する(S41)。
他無線通信装置50は、垂直偏波を用いて送信されたパケット送信信号を受信すると、ビーム方向毎の通信特性を示す情報を含むパケット受信信号を端末装置60に返信する。
端末装置60は、他無線通信装置50からパケット受信信号を受信した場合(S42、YES)、パケット受信信号を、アンテナ部61を介して受信部63に出力する。受信部63は、アンテナ部61が出力したパケット受信信号を復調し、パケット受信信号の復調結果をアンテナ検出部65に出力する。
アンテナ検出部65は、受信部63のパケット受信信号の復調結果を基に、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性を示す情報をビーム方向毎にメモリ(不図示)に保存する(S43)。即ち、アンテナ検出部65は、垂直偏波を用いた場合の全てのビーム方向毎の通信特性を示す情報を保存し、通信制御部64に次の動作、即ち水平偏波を用いた場合の全てのビーム方向毎の通信特性を示す情報の取得を指示する。
一方、端末装置60がビーム方向毎にパケット送信信号を送信してから一定時間が経過しても他無線通信装置50から返信が無い場合には(S42、NO)、アンテナ検出部65は、返信が無い、即ち未受信である旨の情報を該当するビーム方向毎に保存し(S44)、通信制御部64に次の動作、即ち水平偏波を用いた場合のビーム方向毎の通信特性を示す情報の取得を指示する。
次に、通信制御部64は、アンテナ部61が放射する直線偏波を水平偏波に切り換え、更に水平偏波のビーム方向を切り換える指示をアンテナ切換部66に出力し、更に、他無線通信装置50との間の通信特性を要求するための通信特性取得要求を生成して送信部62に出力する。
アンテナ切換部66は、通信制御部64の指示に応じて、アンテナ部61が放射する直線偏波を水平偏波に切り換え、更に水平偏波のビーム方向を切り換えるためのアンテナ切換制御信号を生成してアンテナ部61に出力する。
送信部62は、通信制御部64が生成した通信特性取得要求に応じて、例えば他無線通信装置50との間の通信特性を要求するためのパケット送信信号を生成してアンテナ部61に出力する。アンテナ部61は、アンテナ切換部66が生成したアンテナ切換制御信号に応じて、水平偏波を用いて、送信部62が生成したパケット送信信号を全てのビーム方向毎に送信する(S45)。
他無線通信装置50は、水平偏波を用いて送信されたパケット送信信号を受信すると、ビーム方向毎の通信特性を示す情報を含むパケット受信信号を端末装置60に返信する。
端末装置60は、他無線通信装置50からパケット受信信号を受信した場合(S46、YES)、パケット受信信号を、アンテナ部61を介して受信部63に出力する。受信部63は、アンテナ部61が出力したパケット受信信号を復調し、パケット受信信号の復調結果をアンテナ検出部65に出力する。
アンテナ検出部65は、受信部63のパケット受信信号の復調結果を基に、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性を示す情報をビーム方向毎にメモリ(不図示)に保存する(S47)。即ち、アンテナ検出部65は、水平偏波を用いた場合の全てのビーム方向毎の通信特性を示す情報を保存する。これにより、図14に示す他無線通信装置50のアンテナ形状の特定動作手順は終了し、端末装置60の通信動作手順は図13に示すフローチャートのステップS32に復帰する。
一方、端末装置60がビーム方向毎にパケット送信信号を送信してから一定時間が経過しても他無線通信装置50から返信が無い場合には(S46、NO)、アンテナ検出部65は、返信が無い、即ち未受信である旨の情報を該当するビーム方向毎に保存する(S48)。これにより、図14に示す他無線通信装置50のアンテナ形状の特定動作手順は終了し、端末装置60の通信動作手順は図13に示すフローチャートのステップS32に復帰する。
なお、図14では、端末装置60は、最初に垂直偏波を放射し、次に水平偏波を放射したが、直線偏波の放射順序は垂直偏波及び水平偏波のどちらが先でも良い。
図13において、アンテナ検出部65は、垂直偏波を用いた場合のビーム方向毎の通信特性を示す情報と、水平偏波を用いた場合のビーム方向毎の通信特性を示す情報とを比較する(S32)。
アンテナ検出部65は、垂直偏波を用いた場合のビーム方向毎の通信特性を示す情報と、水平偏波を用いた場合のビーム方向毎の通信特性を示す情報との比較結果を基に、他無線通信装置50のアンテナ形状が円偏波アンテナ又は直線偏波アンテナのどちらであるかを特定する(図15参照)。
図15は、端末装置60が直線偏波を用いた場合に他無線通信装置50のアンテナが放射した偏波の比較結果を示すテーブルである。図15では、端末装置60が直線偏波の垂直偏波及び水平偏波を用い、他無線通信装置50が直線偏波及び円偏波を用いてビーム方向を切り換えた場合に、最も良好な通信特性が得られたビーム方向の比較結果が示される。図15に示す数値(例えば2)は、最も良好な通信特性が得られたビーム方向のビーム番号を表す(図4参照)。
具体的には、アンテナ検出部65は、垂直偏波及び水平偏波を用いた場合の端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性の差分が所定範囲内である、又は、最も良好な通信特性が得られたビーム方向のビーム番号が同一である場合(図15に示す列504参照)、他無線通信装置50のアンテナ形状が円偏波アンテナであると特定する。
これは、水平偏波が円偏波にて受信された場合も垂直偏波が円偏波にて受信された場合も理論的には電力が半減するが(図5参照)、水平偏波と垂直偏波とのどちらでも同じ通信特性として受信されるためである。
一方、アンテナ検出部65は、垂直偏波及び水平偏波を用いた場合の端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性の差分が所定範囲でない、最も良好な通信特性が得られたビーム方向のビーム番号が異なる(図15に示す列503参照)、又は垂直偏波又は水平偏波の放射に対する返信が無かった場合、他無線通信装置50のアンテナ形状が直線偏波アンテナであると特定する。
これは、端末装置60と他無線通信装置50との直線偏波の偏波面が異なると、通信特性が大きく異なり、互いに通信不良となるためである(図5参照)。
なお、他無線通信装置50が、最も良好な通信特性が得られたビーム方向の情報を含むパケット受信信号を端末装置60に返信する場合、他無線通信装置50が直線偏波アンテナ及び円偏波アンテナのどちらを用いても、最も良好な通信特性が得られたビーム方向が同一であると、端末装置60は、他無線通信装置50のアンテナ形状を特定することが困難な場合がある。
そこで、端末装置60は、RSSI(受信信号強度:Received Signal Strength Indication)を用いて受信電力を計測し、直線偏波を用いて送信されたパケット受信信号の受信電力と円偏波を用いて送信されたパケット受信信号の受信電力とが異なる場合に、他無線通信装置50のアンテナ形状を直線偏波アンテナと特定する。
端末装置60は、直線偏波を用いて送信されたパケット受信信号の受信電力と円偏波を用いて送信されたパケット受信信号の受信電力とが同じである場合に、他無線通信装置50のアンテナ形状を円偏波アンテナと特定する。これにより、端末装置60は、他無線通信装置50のアンテナ形状を容易に特定できる。
アンテナ検出部65は、他無線通信装置50のアンテナ形状を特定した後、特定結果を通信制御部64に出力する。通信制御部64は、他無線通信装置50のアンテナ形状の特定結果に応じて、偏波(円偏波、直線偏波)及びビーム方向の切り換えをアンテナ切換部66に指示し、端末装置60と他無線通信装置50との間において通信を開始する。
(他無線通信装置50が直線偏波アンテナを有する場合の通信動作手順)
通信制御部64は、ステップS31での処理より、他無線通信装置50のアンテナ形状が直線偏波アンテナであると特定した場合に(S32、YES)、端末装置60のアンテナ部61が放射する偏波を直線偏波から円偏波に切り換える。なお、使用する旋回方向は、他無線通信装置50が直線偏波アンテナであるため、左右のどちらでもよい。
なお、アンテナ偏波を切り換えても、ビーム方向毎のSNは変化しないため、使用するビーム方向は、ステップS1において求めた方向を使用してもよいが、円偏波の場合、図5より、受信電力は半分に減ることによる通信不良を考慮して、再度、ビーム方向毎にSNを測定する。
即ち、端末装置60は、アンテナ部61が放射する偏波を直線偏波から円偏波に切り換え、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性を全てのビーム方向毎に取得し、最も良好な通信特性が得られたビーム方向を用いて、他無線通信装置50との通信を開始する(S32−1)。なお、端末装置60は、円偏波アンテナに切り換えたことで通信可能なビームが無くなった場合は、ステップS31の結果を考慮して、水平偏波、垂直偏波のうち、通信特性が良好な偏波を用いて通信を開始する(S32−1)。
なお、端末装置60と他無線通信装置50との通信中に、端末装置60が移動する場合(図4(B)参照)、又は端末装置60と他無線通信装置50との間に障害物54が混入する場合(図4(C)参照)の端末装置60の通信動作手順である、ステップS33及びS34の動作は、図6に示すステップS3及びS4の動作と同一であるため、説明を省略する。
(他無線通信装置50が円偏波アンテナを有する場合の処理)
通信制御部64は、他無線通信装置50のアンテナ形状が円偏波アンテナであると特定した場合に(S32、NO)、ステップS31の結果を考慮して、水平偏波、垂直偏波のうち、通信特性が良好な偏波を用いて通信を開始する。
例えば、アンテナ部61が放射する直線偏波の偏波面を水平偏波に切り換え、更に水平偏波のビーム方向を切り換える指示をアンテナ切換部66に出力し、通信を開始する(S32−2)。
次に、端末装置60と他無線通信装置50との通信中に、端末装置60が移動した場合(図4(B)参照)又は障害物54が混入した場合(図4(C)参照)の端末装置60の通信動作手順を説明する。
他無線通信装置50との間の通信特性を要求するための通信特性取得要求を生成して送信部62に出力する。
アンテナ切換部66は、通信制御部64の指示に応じて、アンテナ部61が放射する直線偏波の偏波面を垂直偏波に切り換え、更に垂直偏波のビーム方向を切り換えるためのアンテナ切換制御信号を生成してアンテナ部61に出力する。
送信部62は、通信制御部64が生成した通信特性取得要求に応じて、例えば他無線通信装置50との間の通信特性を要求するためのパケット送信信号を生成してアンテナ部61に出力する。アンテナ部61は、アンテナ切換部66が生成したアンテナ切換制御信号に応じて、垂直偏波を用いて、送信部62が生成したパケット送信信号を全てのビーム方向毎に送信する(S35)。
他無線通信装置50は、端末装置60が移動した場合には通信経路52a,52bによって、端末装置60が送信したパケット送信信号を受信する。また、他無線通信装置50は、端末装置60と他無線通信装置50との間に障害物54が混入した場合には通信経路51bによって、端末装置60が送信したパケット送信信号を受信する。
他無線通信装置50は、垂直偏波を用いて送信されたパケット送信信号を受信すると、ビーム方向毎の通信特性を示す情報を含むパケット受信信号を端末装置60に返信する。
端末装置60は、端末装置60が移動した場合には通信経路52a,52bによって、他無線通信装置50が送信したパケット送信信号を受信する。また、端末装置60は、端末装置60と他無線通信装置50との間に障害物54が混入した場合には通信経路51bによって、他無線通信装置50が送信したパケット受信信号を受信する。
端末装置60は、他無線通信装置50から受信したパケット受信信号を、アンテナ部61を介して受信部63に出力する。受信部63は、アンテナ部61が出力したパケット受信信号を復調し、パケット受信信号の復調結果を通信制御部64に出力する。
通信制御部64は、受信部63のパケット受信信号の復調結果を基に、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性を示す情報をビーム方向毎に取得してメモリ(不図示)に保存する。
通信制御部64は、アンテナ部61が放射する垂直偏波のビーム方向を、最も良好な通信特性が得られたビーム方向に切り換えて、他無線通信装置50との間の通信を継続する(S36)。
通信制御部64は、例えばタイマを用いて、アンテナ部61が放射する垂直偏波のビーム方向を、最も良好な通信特性が得られたビーム方向に切り換えてから一定時間経過したか否かを判定する(S37)。一定時間が経過していない場合には(S37、NO)、端末装置60の通信動作手順はステップS35に戻る。
一方、一定時間が経過した場合には(S37、YES)、端末装置60の通信動作手順はステップS31に戻る。
ここで、ステップS37において一定時間が経過した場合に、ステップS31の通信動作手順、即ち他無線通信装置50のアンテナ形状を特定する通信動作手順に戻る理由は、次の通りである。
具体的には、他無線通信装置50のアンテナ形状を特定する通信動作手順が実行される時点において、端末装置60及び他無線通信装置50の各位置によっては、他無線通信装置50のアンテナ形状が直線偏波アンテナであるにも拘わらず、端末装置60は、他無線通信装置50のアンテナ形状を円偏波アンテナと特定することがあるためである。
例えば、端末装置60と他無線通信装置50とが対向した位置に存在せずに、水平方向に対して45度ずれた方向に存在する場合、端末装置60は、円偏波アンテナを有し、他無線通信装置50から垂直偏波及び水平偏波のいずれによって放射された場合でも、受信電力が半減したパケット受信信号を他無線通信装置50から受信する。
従来技術では、端末装置60は、一旦、他無線通信装置50のアンテナ形状が円偏波アンテナと特定すると、再度、他無線通信装置50のアンテナ形状を特定しないので、ステップS33以降の直線偏波を用いた通信動作手順を実行困難である。
以上により、本実施形態の端末装置60は、他無線通信装置50との間の通信特性を監視でき、パケットロスを回避できる。端末装置60は、他無線通信装置50が円偏波アンテナを有すると特定した場合には直線偏波を用いて放射するので、他無線通信装置50との間における障害物54の混入の有無に拘わらずに通信特性を取得できる。
これにより、端末装置60は、通信特定を要求するためのパケット送信信号を片方の偏波面の直線偏波(例えば垂直偏波又は水平偏波)を送信すれば良いので、偏波及びビーム方向の切り換えに要する消費電力を低減できる。
図16は、従来技術と第2の実施形態とにおける、通信遮断後に通信特性を取得するためにビーム方向を走査する回数の比較図である。図16では、片旋回方向の円偏波が放射されるビーム方向は16である。
本実施形態では、直線偏波アンテナを有する他無線通信装置50と端末装置60との通信が、端末装置60が移動した場合及び障害物54が混入して通信が遮断した場合のいずれも、端末装置60におけるビーム方向の走査回数は16回であり、従来技術の32回に比べて半減する。
また、円偏波アンテナを有する他無線通信装置50と端末装置60との通信が、端末装置60が移動した場合及び障害物54が混入して通信が遮断した場合のいずれも、端末装置60におけるビーム方向の走査回数は16回であり、従来技術の32回に比べて半減する。
このように、端末装置60におけるビーム方向の走査回数が減った分、端末装置60における消費電力が低減する。
以上により、本実施形態の端末装置60は、定期的又は通信が遮断した場合に、通信相手としての他無線通信装置50のアンテナ形状を特定し、他無線通信装置50のアンテナが放射する偏波を考慮して、偏波及びビーム方向を切り換えて他無線通信装置50との間の通信特性を取得する。
以上、図面を参照して各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば上述した各実施形態では、2端子給電型アンテナが4素子である場合を説明したが、素子数は4素子に限定されない。また、円偏波アンテナとして、図2に示す2端子給電型円偏波パッチアンテナを例に挙げたが、これに限定されない。
また、上述した各実施形態において、アンテナ部61は、各アンテナ素子に、左旋回方向用又は右旋回方向用の各円偏波アンテナを割り当て、アンテナ切換部66が生成したアンテナ切換制御信号に応じて、所望のアンテナ素子を用いても良い。
また、端末装置60は、例えばユーザが携帯可能な移動機であるスマートフォン、タブレット端末、リモコンが挙げられる。なお、端末装置は据置機でも良い。また、他無線通信装置50は、据置機であるTV、ディスプレイ装置、PC(Personal Computer)が挙げられる。なお、無線通信装置は、使用者が携帯可能な移動機であってもよい。
更に、上述した第1の実施形態において、端末装置60は、右旋回方向の円偏波を用い、ビーム方向を順次切り換えて、端末装置60と他無線通信装置50との間の通信特性を取得する場合、例えばビーム方向の数が最大16であれば(図9参照)、16回のビーム方向を走査(切り換え)の終了前に、最も良好な通信特性が得られた時点において、通信特性の取得要求を中止し、最も良好な通信特性が得られたビーム方向に切り換えて通信を継続しても良い。
これにより、端末装置60は、ビーム方向の走査(切り換え)に要する消費電力を更に低減できる。