以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。図1は本発明の実施形態としての燃料電池10を構成する単セル15を断面視して概略的に示す説明図、図2はMEAの構成部材の接合の様子をその寸法状態と合わせて模式的に示す説明図である。本実施形態の燃料電池10は、図1に示す構成の単セル15を対向するセパレーター25、26で挟持して、この単セル15を複数積層したスタック構造の固体高分子型燃料電池である。
単セル15は、電解質膜20の両側にアノード21とカソード22の両電極を備える。電解質膜20は、固体高分子材料、例えばフッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜であり、湿潤状態で良好な電気伝導性を示す。アノード21およびカソード22は、例えば白金、あるいは白金合金等の触媒を担持した導電性の担体、例えばカーボン粒子(以下、触媒担持カーボン粒子と称する)を、プロトン伝導性を有するアイオノマーで被覆して形成された電極触媒層であり、電解質膜20の両膜面に接合され電解質膜20と共に膜電極接合体(MEA)を形成する。通常、アイオノマーは、電解質膜20と同質の固体高分子材料である高分子電解質樹脂(例えばフッ素系樹脂)であり、その有するイオン交換基によりプロトン伝導性を有する。
この他、単セル15は、電極形成済みの電解質膜20を両側から挟持するアノード側ガス拡散層23とカソード側ガス拡散層24とセパレーター25,26を備え、両ガス拡散層は、対応する電極(アノード21またはカソード22)に接合されている。アノード側ガス拡散層23とカソード側ガス拡散層24は、ガス透過性を有する導電性部材、例えば、カーボンペーパやカーボンクロス等のカーボン多孔質体や、金属メッシュや発泡金属等の金属多孔質体によって形成される。本実施形態では、電解質膜20とアノード21およびカソード22で形成されるMEAを、アノード側ガス拡散層23とカソード側ガス拡散層24で挟持した状態で単セル15の基幹部位を製造する。よって、MEAに上記の両ガス拡散層を含めた物をMEGA(Membrane-Electrode&Gas. Diffusion Layer Assembly)と、適宜、称する。
図2に示すように、アノード21は、電解質膜20とほぼ同寸法の矩形形状とされ、カソード22は、アノード21より縦横とも短くされている。アノード側ガス拡散層23とカソード側ガス拡散層24は、ほぼ同寸法の矩形形状とされ、アノード側ガス拡散層23は、アノード21より縦横とも同寸もしくはやや短くされている。カソード側ガス拡散層24は、アノード側ガス拡散層23とほぼ同寸法とされている。アノード21、アノード側ガス拡散層23等は上記のようにその寸法が相違するが、単セル15としての組み付け状態では、これらはその周囲において図示しないシール部材にて気密にシールされる。なお、アノード21の図2において上下に延びる短辺を電解質膜20の幅より広くしてもよく、こうするには、後述のアノードシート21Sの幅を電解質膜シート20Sより広くして、矩形形状に裁断すればよい。
セパレーター25は、アノード側ガス拡散層23の側に、水素を含有する燃料ガスを流すセル内燃料ガス流路47を備える。セパレーター26は、カソード側ガス拡散層24の側に、酸素を含有する酸化ガス(本実施形態では、空気)を流すセル内酸化ガス流路48を備える。なお、図には記載していないが、隣り合う単セル15間には、例えば、冷媒が流れるセル間冷媒流路を形成することができる。これらセパレーター25,26は、ガス不透過な導電性部材、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボンや、焼成カーボン、あるいはステンレス鋼などの金属材料により形成されている。
図1では図示していないが、セパレーター25,26の外周近傍の所定の位置には、複数の孔部が形成されている。これらの複数の孔部は、セパレーター25,26が他の部材と共に積層されて燃料電池10が組み立てられたときに互いに重なって、燃料電池10内を積層方向に貫通する流路を形成する。すなわち、上記したセル内燃料ガス流路47やセル内酸化ガス流路48、あるいはセル間冷媒流路に対して、燃料ガスや酸化ガス、あるいは冷媒を給排するためのマニホールドを形成する。
本実施形態の燃料電池10は、セパレーター25のセル内燃料ガス流路47からの水素ガスを、アノード側ガス拡散層23で拡散ししつつ、アノード21に供給する。空気については、セパレーター26のセル内酸化ガス流路48からの空気を、カソード側ガス拡散層24で拡散ししつつカソード22に供給する。こうしたガス供給を受けて、燃料電池10は、発電し、その発電電力を外部の負荷に与える。
次に、燃料電池10の製造方法について説明する。図3は燃料電池10の製造手順を示す説明図である。図示するように、燃料電池10を製造するに当たっては、まず、その構成単位である単セル15を作製する。
単セル15の作製に当たり、その構成部材を巻き取り済みの電解質膜シートロール20Rとアノード支持シートロールARとカソード支持シートロールCRを準備する(ステップS100)。図4は電解質膜シート20Sとこれを巻き取り済みの電解質膜シートロール20Rの準備の形態を模式的に示す説明図、図5はアノード支持シートAsとこれを巻き取り済みのアノード支持シートロールARの準備の形態を模式的に示す説明図、図6はカソード支持シートCsとこれを巻き取り済みのカソード支持シートロールCRの準備の形態を模式的に示す説明図である。
図4に示すように、電解質膜シート20Sは、電解質膜20の上記の高分子電解質樹脂を用いて、電解質膜形成装置20Mにて、バックシートBsのシート面に長尺状に形成される。バックシートBsは、電解質膜シート20Sから剥離可能とされ、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ETFE(4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂)等のポリエステル系、ポリスチレン等の高分子シートによって、電解質膜シート20Sとほぼ同じ幅で形成される。その後、電解質膜シート20Sが形成済みのバックシートBsにダミーシートDSを継ぎ、その継ぎ箇所表裏面をテープTにて接着する。この継ぎ作業は、電解質膜形成装置20Mから得られた電解質膜シート20Sの先端を、バックシートBsに接合した状態で図示しない作業台で支持し、ダミーシートDSの端部に継ぐことで済む。よって、テープTによる継ぎ箇所の接着に当たり、電解質膜シート20Sを不用意に指や治具にて触れないようにできる。また、電解質膜シート20Sの先端をバックシートBsから剥がすことも無用なため、テープTによる継ぎ箇所の接着に当たり、電解質膜シート20Sの先端周辺でのしわや折れが起き難い。
ダミーシートDSは、ダミー支持シートDBsとダミー膜シートD20Sを積層した層状シートとされ、ダミー支持シートDBsはバックシートBsに継がれ、ダミー膜シートD20Sは電解質膜シート20Sに継がれる。ダミー支持シートDBsは、バックシートBsと同じ厚みもしくは当該シートより若干薄いPEN製の高分子シートであり、バックシートBsと同じ幅とされている。ダミー膜シートD20Sは、電解質膜シート20Sと同じ厚みもしくは当該シートより若干薄いPET製の高分子シートであり、電解質膜シート20Sと同じ幅とされている。ダミー支持シートDBsとダミー膜シートD20Sは、その界面に、接着剤層Dbとセパレーター層Dsとを介在させて積層される。接着剤層Dbは、アクリル系の接着剤からなり、日本工業規格JIS Z0237に準じた剥離強度試験にて規定される2N程度の粘着力を備える。セパレーター層Dsは、アクリル系、フッ素系の樹脂粉からなり、接着剤層Dbと協働して、ダミー支持シートDBsとダミー膜シートD20Sとの接着維持および剥離性確保を図る。これにより、ダミーシートDSは、電解質膜シート20SおよびバックシートBsに続いて後述のMEA製造装置100に送り出される際、電解質膜シート20Sが形成済みのバックシートBsの挙動を再現する。具体的には、ダミーシートDSは、電解質膜シート20Sが形成済みのバックシートBsとほぼ同じ軌跡でMEA製造装置100において搬送され、ダミー膜シートD20Sからのダミー支持シートDBsの剥離についても、これを、電解質膜シート20SからのバックシートBsの剥離とほぼ同じように起こす。なお、接着剤層Dbをダミー支持シートDBsの側に、セパレーター層Dsをダミー膜シートD20Sの側としてもよい。
上記のダミーシートDSは、MEA製造装置100における電解質膜シートロール20Rから後述のMEA巻取ローラー123に到るまでの電解質膜シート20Sのシート搬送経路長20FLより長いシート長SLで準備され、既述したように電解質膜シート20SおよびバックシートBsに継がれる。そして、電解質膜シートロール20Rの巻取コア20Rcを回転させて、既述したように継がれたダミーシートDSを最初に巻き取る。次いで、巻取コア20Rcの回転を継続することで、ダミーシートDSに継がれた電解質膜シート20SをバックシートBsと共に巻き取ることで、電解質膜シートロール20Rが準備される。この電解質膜シートロール20Rは、電解質膜シート20Sが形成済みのバックシートBsに続いて、ダミーシートDSを送り出す。
図5に示すように、アノード支持シートAsは、触媒担持カーボン粒子とアイオノマーとを分散させた触媒インクを適宜な塗工機器にてシート表面に連続的に塗工される。その後の乾燥を経て、長尺状のアノードシート21Sがアノード支持シートAsに形成される。アノードシート21Sは、図中の側面断面視に示すように、アノード支持シートAsのシート幅より狭くされ、上記した寸法関係で形成される。アノード支持シートAsは、シート状に連続形成済みのアノードシート21Sに対して剥離可能であり、アノードシート21Sが未形成の領域をダミーアノード支持シートDAsとする。アノード支持シートAsおよびダミーアノード支持シートDAsは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PET、PEN、ETFE等のポリエステル系、ポリスチレン等の高分子シートによって、電解質膜シートロール20RにおけるダミーシートDSとほぼ同寸に形成され、ダミーアノード支持シートDAsは、シート搬送経路長20FLを超えるシート長SLを有する。そして、アノード支持シートロールARの巻取コアARcを回転させて、ダミーアノード支持シートDAsを最初に巻き取る。次いで、巻取コアARcの回転を継続することで、ダミーアノード支持シートDAsに継がれたアノード支持シートAsをアノードシート21Sと共に巻き取ることで、アノード支持シートロールARが準備される。このアノード支持シートロールARは、アノードシート21Sが形成済みのアノード支持シートAsに続いて、ダミーアノード支持シートDAsを送り出す。
図6に示すように、カソード支持シートCsは、一方のシート面に、カソード22を点在させて備え、カソード22の点在形成済みの状態でロール状に巻き取られ、カソード支持シートロールCRとして準備される。カソード22は、上記の触媒インクを適宜な塗工機器にてカソード支持シートCsに間欠的に塗工し、その後の乾燥を経て形成される。カソード22の点在形成に当たっては、図示するようにマスクMを用いて、カソード22の矩形形状を確定する。カソード支持シートCsは、点在形成済みのカソード22に対して剥離可能であり、カソード22が未形成の領域をダミーカソード支持シートDCsとする。カソード支持シートCsおよびダミーカソード支持シートDCsは、PTFE、PET、PEN、ETFE等のポリエステル系、ポリスチレン等の高分子シートによって、電解質膜シートロール20RにおけるダミーシートDSとほぼ同寸に形成され、ダミーカソード支持シートDCsは、シート搬送経路長20FLを超えるシート長SLを有する。そして、カソード支持シートロールCRの巻取コアCRcを回転させて、ダミーカソード支持シートDCsを最初に巻き取る。次いで、巻取コアCRcの回転を継続することで、ダミーカソード支持シートDCsに継がれたカソード支持シートCsをカソード22と共に巻き取ることで、カソード支持シートロールCRが準備される。このカソード支持シートロールCRは、カソード22が点在形成済みのカソード支持シートCsに続いて、ダミーカソード支持シートDCsを送り出す。なお、カソード22の形成対象は、後に剥離除去されるカソード支持シートCsであることから、マスクMの使用に伴う表面損傷はMEAに影響を与えない。カソード22にあっても、図中の側面断面視に示すように、カソード支持シートCsのシート幅より狭くされ、上記した寸法関係で形成される。また、カソード支持シートCsおよびアノード支持シートAsにあっては、ダミーカソード支持シートDCsやダミーアノード支持シートDAsを有しない形態とすることもできる。
このように電解質膜シート20Sやアノードシート21S或いはカソード22を形成しながら上記の各シートロールを準備するほか、電解質膜シート20Sが形成済みでロール状に巻き取られた電解質膜シートロール20Rや、アノード支持シートロールARおよびカソード支持シートロールCRを購入準備し、各ローラーに対応したダミーシートを継いだ上で、ダミーシートから巻き直すようにしてもよい。なお、アノード側およびカソード側の拡散層については、導電性で多孔質の基材、例えばカーボンクロスを上記の矩形サイズで一枚ずつ準備される(図示略)。セパレーター25、26については、それぞれセル内燃料ガス流路47、48を有する形態で準備される(図示略)。
上記のステップS100に続いて、電解質膜シート20Sが形成済みのバックシートBsと、アノードシート21Sが形成済みのアノード支持シートAsおよびカソード22が間欠形成済みの積層済みカソード支持シートCsとを転写対象シートとして、MEAを作製する(ステップS110)。本実施形態では、シート状のMEAを作製すべく、MEA製造装置100を用いた。図7はMEA製造装置100の概略構成をローラー交換前後でのシート継ぎの様子と合わせて模式的に示す説明図である。このMEA製造装置100は、アノード転写機構部110と、カソード転写機構部120と、制御装置200とを備える。なお、電解質膜シート20Sは、バックシートBsに形成済みであるが、図7では、電解質膜シート20SとバックシートBsとを、図示の都合から、離間させている。他のシートについても同様である。
アノード転写機構部110は、その上流側から、電解質膜シートロール20Rと、アノード支持シートロールARと、第1転写ローラー112と、第1剥離ローラー113と、第2剥離ローラー114とを備える。電解質膜シートロール20Rは、制御装置200の制御を受けて回転し、図示しないローラー下流の案内ローラーおよび駆動ローラーと協働して、電解質膜シートロール20RをバックシートBsと共に第1転写ローラー112に送り出す。アノード支持シートロールARは、制御装置200の制御を受けて回転し、図示しないローラー下流の案内ローラーおよび駆動ローラーと協働して、アノードシート21Sをアノード支持シートAsと共に第1転写ローラー112に送り出す。こうしたシート送り出しの際、電解質膜シートロール20Rとアノード支持シートロールARは、既述した案内ローラーによるシート案内により、電解質膜シート20Sとアノードシート21Sとが接合するよう、バックシートBsとアノード支持シートAsとを第1転写ローラー112に送り出す。
第1転写ローラー112は、対向して回転する一対の転写ローラーとして構成されて両ローラーの接合箇所を転写圧着箇所とし、一方の転写ローラーにて押圧力を付与する。第1転写ローラー112を構成する両ローラーは、制御装置200の制御を受けて逆向きに回転し、バックシートBsとアノード支持シートAsとを、電解質膜シート20Sとアノードシート21Sとが接合した状態のまま転写圧着箇所に引き込んで、電解質膜シート20Sにアノードシート21Sを転写し、下流に搬送する。押圧力を付与する側のローラーは、良伝熱性の金属製のローラー、例えばニッケル系の金属ローラーとして構成され、図示しない熱源からの熱を受けて発熱する。そして、この押圧力付与ローラーは、バックシートBsから電解質膜シート20Sおよびこれに接合したアノードシート21Sを加熱しつつ、他方の転写ローラー(押圧案内ローラー)の側に向けて転写押圧力を付与する。押圧力付与ローラーの発熱状況や付与する転写押圧力は、制御装置200により制御される。押圧案内ローラーは、軽量な金属製のコアローラーの表面を耐熱性のゴム表皮層で被覆して構成され、押圧力付与ローラーの及ぼす転写押圧力を受け止める。
第1剥離ローラー113は、制御装置200の制御を受けて回転し、アノードシート21Sを電解質膜シート20Sに転写済みの積層状シートからアノード支持シートAsを剥離して、当該支持シートを図示しない回収ローラーに送り出す。第2剥離ローラー114は、制御装置200の制御を受けて回転し、積層状シートからバックシートBsを剥離して、このバックシートを図示しない回収ローラーに送り出す。このため、アノード転写機構部110は、電解質膜シート20Sとアノードシート21Sとが積層しただけの積層状シート(以下、アノード転写済みシートAsと称する)を、カソード転写機構部120に送り出す。なお、上記した各剥離ローラーの前後には、テンションを掛けつつ積層シートを下流側に搬送する図示しない搬送ローラーが適宜、配設されている。
カソード転写機構部120は、アノード転写機構部110の下流側に配設され、カソード支持シートロールCRと、第2転写ローラー122と、MEA巻取ローラー123とを備え、当該巻取ローラーに到るシート搬送経路の適宜箇所に、テンションを掛けつつ積層シートを下流側に搬送する図示しない搬送ローラーを有する。カソード支持シートロールCRは、制御装置200の制御を受けて回転し、カソード22をカソード支持シートCsと共に第2転写ローラー122に送り出す。こうしたシート送り出しの際、カソード支持シートロールCRは、カソード支持シートCsが第2転写ローラー122の図における上方側の押圧案内ローラーの表面に接合し、カソード22が露出するよう、カソード支持シートCsを第2転写ローラー122に送り出す。そして、カソード22は、第2転写ローラー122における転写圧着箇所の手前で、積層状シートの電解質膜シート20Sと接合し、その状態のまま、第2転写ローラー122に引き込まれる。
第2転写ローラー122は、既述した第1転写ローラー112と同様、一方を押圧力付与ローラーとし、他方を押圧案内ローラーとして両ローラーを対向して備え、この両ローラーの接合箇所を転写圧着箇所とする。押圧力付与ローラーと押圧案内ローラーの両ローラーは、制御装置200の制御を受けて逆向きに回転し、カソード支持シートロールCRからのカソード支持シートCsとアノード転写済みシートAsとを、カソード22が電解質膜シート20Sに接合した状態のまま転写圧着箇所に引き込んで、電解質膜シート20Sにカソード22を転写する。このカソード転写により、電解質膜20の表裏面にアノード21(詳しくは、アノードシート21S)とカソード22とを接合したシート状のMEAが得られる。第2転写ローラー122によるこうしたシート引き込みと転写は、第1転写ローラー112と同様になされ、アノードシート21Sが押圧力付与ローラーのローラー表面の側に位置し、カソード支持シートCsが押圧案内ローラーのローラー表面の側に位置するようにして行われる。この場合、図における下方側の押圧力付与ローラーは、第1転写ローラー112における押圧力付与ローラーと同様、アノードシート21Sから電解質膜シート20Sおよびこれに接合したカソード22を加熱しつつ、押圧案内ローラーの側に向けて転写押圧力を付与する。押圧力付与ローラーの発熱状況や付与する転写押圧力は、制御装置200により制御される。本実施形態では、アノード転写機構部110とカソード転写機構部120とにおける電極転写に当たり、転写温度を100〜180℃とし、押圧力付与に基づく転写圧力を面圧換算で0.1〜10MPaとした。ダミーシートDSのダミー膜シートD20Sおよびダミー支持シートDBsは、こうした熱転写に対して耐性を有する。
第2転写ローラー122は、カソード22を転写済みのシート状のMEAを、MEA巻取ローラー123に搬送し、MEA巻取ローラー123は、シート状のMEAを巻き取る。こうして巻き取られたシート状のMEAは、図2に示す矩形形状に裁断したMEAとしてMEGAの作製に用いられるほか、シート形態のままMEGAの作製に用いることもできる。また、MEA巻取ローラー123に巻き取った半製品のシート状のMEAとして、燃料電池製造ラインに出荷することもできる。
制御装置200は、論理演算を実行するCPUや、ROM、RAMを有するコンピューターとして構成され、図示しない各種スイッチやセンサーの入力を受けつつ、既述した各ローラーの回転速度を調整制御するほか、第1転写ローラー112と第2転写ローラー122における押圧力付与ローラーの発熱状態についても、これを制御する。
上記機器構成のMEA製造装置100にて、一つの電解質膜シートロール20Rに巻き取り済みの電解質膜シート20Sに対してのアノードシート21Sおよびカソード22の転写が終了する転写終盤では、電解質膜シートロール20Rは、電解質膜シート20Sが形成済みのバックシートBsに続いてダミーシートDSを送り出す。このダミーシートDSの送り出し開始時では、図7のJ1に示すように、テープTにて電解質膜シート20SとバックシートBsに継がれたダミーシートDSが、電解質膜シート20Sの搬送経路に沿って下流に送り出される。アノード支持シートロールARは、ダミーシートDSの送り出しとほぼ同じタイミングで、アノードシート21Sが形成済みのアノード転写済みシートAsに続いてダミーアノード支持シートDAs(図5参照)を送り出す。
電解質膜シート20Sが形成済みのバックシートBsとダミーシートDSの送り出しが継続すると、電解質膜シート20Sが形成済みのバックシートBsについては、カソード22の転写を経てシート状のMEAとしてMEA巻取ローラー123に巻き取られる。ダミーシートDSは、カソード転写機構部120を通過した後に、図7のJ2に示すように、シート状のMEAに続いてMEA巻取ローラー123に巻き取られ、電解質膜シートロール20RからMEA巻取ローラー123に到るシート搬送経路に沿って延在する。カソード支持シートロールCRは、ダミーシートDSがカソード転写機構部120の第2転写ローラー122に到達するタイミングで、カソード22が間欠形成済みのカソード支持シートCsに続いてダミーカソード支持シートDCs(図6参照)を第2転写ローラー122に送り出す。
図8は電解質膜シートロール20RからMEA巻取ローラー123に到るシート搬送経路に沿って延在するダミーシートDSの状況を模式的に示す説明図である。この図8は、シート搬送とシート接合、並びにシート形態の様子を模式的に示しており、実際のダミーシートDSやダミーカソード支持シートDCs等の厚みや縦横サイズを反映したものではない。図示するように、電解質膜シートロール20Rの下流では、ダミーシートDSは単独で搬送されつつあり、第1転写ローラー112の下流では、ダミーシートDSは、そのダミー支持シートDBsにダミーアノード支持シートDAsが重なった状態で搬送される。アノード支持シートロールARは、既述したように電解質膜シートロール20RからのダミーシートDSの送り出しとほぼ同じタイミングで、アノードシート21S未形成のダミーアノード支持シートDAs(図5参照)を送り出すので、ダミーシートDSには、第1転写ローラー112でアノードシート21Sが転写されない。なお、アノード支持シートAsがダミーアノード支持シートDAsを有しない形態であれば、ダミーシートDSにアノードシート21Sが転写されるが、ダミーシートDSの送り出しに支障は無い。
ダミーシートDSは、第1剥離ローラー113にてダミーアノード支持シートDAsが剥離されて、第2剥離ローラー114に搬送され、第2剥離ローラー114にてダミー支持シートDBsが剥離される。よって、第2剥離ローラー114の下流では、ダミー膜シートD20S単独となり、シート面の接着剤層Dbをダミーカソード支持シートDCsの側に向けて、第2転写ローラー122に搬送される。そして、第2転写ローラー122の下流では、ダミーシートDSにおけるダミー膜シートD20Sにダミーカソード支持シートDCsが接着剤層Dbにて接着して重なった状態で搬送される。カソード支持シートロールCRは、既述したように第2転写ローラー122へのダミーシートDSの到達タイミングで、カソード22未形成のダミーカソード支持シートDCs(図6参照)を送り出すので、ダミーシートDSのダミー膜シートD20Sには、第2転写ローラー122でカソード22が転写されない。なお、カソード支持シートCsがダミーカソード支持シートDCsを有しない形態であれば、ダミー膜シートD20Sにカソード22が間欠転写されるが、ダミー膜シートD20Sの送り出しに支障は無い。
上記の様にしてシート搬送経路に沿って延在するダミーシートDSは、やがてダミーシート末端が巻取コア20Rcの外周に位置するようになるまで送り出され、この時点で、図7のJ3に示すように、新旧の電解質膜シートロール20Rの交換タイミングとなる。この交換タイミングでは、新たな電解質膜シートロール20RがMEA製造装置100にセットされ、この新たな電解質膜シートロール20Rの最外周の電解質膜シート20SおよびバックシートBsが、作業者により、ダミーシートDSの末端とテープTにて継がれる。これにより、新たな電解質膜シートロール20Rは、ダミーシートDSに続いて、これと継がれた電解質膜シート20SをバックシートBsと共にアノード転写機構部110に向けて送り出す。こうして送り出された電解質膜シート20Sは、アノード転写機構部110とカソード転写機構部120とでの電極触媒層の転写を経てシート状のMEAとされ、図7のJ4に示すように、ダミーシートDS、詳しくは、ダミー膜シートD20Sとダミーカソード支持シートDCsに続いてMEA巻取ローラー123に巻き取られる。
既述したように、アノード転写機構部110とカソード転写機構部120とでの電極触媒層の転写を経てシート状のMEAが得られると、図3のステップS120にて、シート状のMEGAを作製する。本実施形態では、シート状のMEGAを作製すべく、MEGA製造装置300を用いた。図9はMEGA製造装置300の概略構成をダミー膜シートD20Sの搬送の様子と合わせて模式的に示す説明図である。このMEGA製造装置300は、シート剥離機構部310と、拡散層接合機構部320と、制御装置400とを備える。
シート剥離機構部310は、その上流側から、MEA巻取ローラー123と、シート巻取回収ローラー311と、搬送ローラー312と、剥離案内ローラー313と、回収案内ローラー314と、剥離ローラー315とを備える。MEA巻取ローラー123は、既述したMEA製造装置100から搬入される。このため、MEA巻取ローラー123は、カソード支持シートCsに接合済みのシート状のMEAおよびこれに継がれたダミーカソード支持シートDCsに接合済みのダミー膜シートD20Sを交互に巻き取り済みである。そして、このMEA巻取ローラー123は、搬送ローラー312および剥離案内ローラー313と共に制御装置400の制御を受けて回転して、剥離案内ローラー313に、カソード支持シートCsに接合済みのシート状のMEAおよびこれに継がれたダミーカソード支持シートDCsに接合済みのダミー膜シートD20Sを送り出す。剥離ローラー315は、制御装置400の制御を受けて回転し、剥離案内ローラー313と協働して、シート状のMEAからカソード支持シートCsを、ダミー膜シートD20Sからダミーカソード支持シートDCsを剥離する。シート巻取回収ローラー311は、制御装置400の制御を受けて回転し、剥離ローラー315が剥離したカソード支持シートCsおよびこれに続くダミーカソード支持シートDCsを、回収案内ローラー314と協働して、巻き取る。これにより、シート剥離機構部310は、シート状のMEAおよびこのMEAの電解質膜シート20Sに継がれたダミー膜シートD20Sを単独で拡散層接合機構部320に送り出す。
拡散層接合機構部320は、シート剥離機構部310の側から、第1案内ローラー321と、第2案内ローラー322と、拡散層接合ローラー323と、MEGA巻取回収ローラー324と備える。第1案内ローラー321と第2案内ローラー322は、カソード支持シートCsが剥離済みのシート状のMEAおよびこのMEAの電解質膜シート20Sに継がれたダミー膜シートD20Sを、テンションを掛けつつ拡散層接合ローラー323に搬送する。拡散層接合ローラー323は、例えば、対向して回転する一対の接合ローラー対として構成され、ローラー上流において、アノード側ガス拡散層23とカソード側ガス拡散層24の供給を受ける。そして、この拡散層接合ローラー323は、供給を受けたアノード側ガス拡散層23とカソード側ガス拡散層24とを、シート状のMEAの表裏面に接合してシート状のMEGAを作成し、当該MEGAをMEGA巻取回収ローラー324に送り出す。拡散層接合ローラー323でのガス拡散層の接合は、両ローラーを加熱した上で押圧するホットプレス等の手法でなされる。MEGA巻取回収ローラー324は、送り出されたシート状のMEGAを巻き取る。こうして巻き取られたシート状のMEGAは、図2に示す矩形形状に裁断したMEGAの作製に用いられるほか、MEGA巻取回収ローラー324に巻き取った半製品のシート状のMEGAとして、燃料電池製造ラインに出荷することもできる。
制御装置400は、論理演算を実行するCPUや、ROM、RAMを有するコンピューターとして構成され、図示しない各種スイッチやセンサーの入力を受けつつ、既述した各ローラーの回転速度を調整制御するほか、拡散層接合ローラー323における発熱状態や押圧状態についても、これを制御する。この場合、制御装置400は、図示しない光学センサー等にて、拡散層接合ローラー323へのカソード22の到達状況を把握し、カソード22が拡散層接合ローラー323を通過する際に限って、拡散層接合ローラー323へのガス拡散層の供給を行う。これにより、ダミー膜シートD20Sが拡散層接合ローラー323を通過する際には、拡散層接合ローラー323へのガス拡散層の供給は行われない。
上記したMEGA製造装置300により得られたシート状のMEGAは、ガス拡散層の矩形形状に倣って切断され、MEAをその両側でアノード側ガス拡散層23とカソード側ガス拡散層24で挟持した矩形状のMEGAとされる。なお、シート状のMEGAを切断しないまま、或いは切断した状態のMEGAを、燃料電池製造ラインに出荷することもできる。
次いで、このMEGAをセパレーター25とセパレーター26とで挟持して単セル15を作製し(ステップS130)、所定数の単セル15を積層してスタック状に組み立て、これを積層方向に締結する(ステップS140)。これにより、図1に示した燃料電池10が得られる。
以上説明した構成を備える本実施形態のMEA製造装置100は、電解質膜シート20SをバックシートBsと共に巻き取り済みの新旧の電解質膜シートロール20Rの交換時において、MEA作製のためにアノード転写機構部110以降に電解質膜シート20Sを搬送済みの旧の電解質膜シートロール20Rの側では、電解質膜シート20SとバックシートBsに継がれたダミーシートDSをシート末端とする。これにより、新たな電解質膜シートロール20Rのシート先端である電解質膜シート20SとバックシートBsの継ぎ対象は、旧の電解質膜シートロール20Rのシート末端のダミーシートDSとなる。よって、新たな電解質膜シートロール20Rの側の電解質膜シート20Sの先端の側だけでしか、電解質膜シート20Sに指先や治具が触れないようにできる。この結果、本実施形態のMEA製造装置100によれば、新旧の電解質膜シートロール20Rの交換に伴うシート継ぎ作業において、電解質膜シート20Sのしわや折れが起き得る領域を狭くできる。このことは、電解質膜シート20Sを無駄なくMEA作製に用いることができることを意味するので、歩留まりを向上できる。
本実施形態のMEA製造装置100は、電解質膜シート20SおよびバックシートBsに継がれるダミーシートDSのシート長SL(図4参照)を、シート搬送経路長20FL(図8参照)を超える長さとした。このシート搬送経路長20FLは、電解質膜シート20Sの表裏面にアノードシート21Sとカソード22とが転写済みのシート状のMEAを巻き取るMEA巻取ローラー123に電解質膜シート20Sが電解質膜シートロール20Rから到る経路長である。よって、次の利点がある。
新旧の電解質膜シートロール20Rの交換に伴うシート継ぎ作業は、電解質膜シートロール20RとMEA巻取ローラー123を備えるMEA製造装置100の製造ラインにおいて、最上流の電解質膜シートロール20Rの近傍でなされる。そうすると、電解質膜シートロール20RからMEA巻取ローラー123に到るシート搬送経路では、バックシートBsに接合してはいるものの、アノードシート21Sとカソード22の両電極触媒層または一方の電極触媒層が未転写の電解質膜シート20Sと、電極触媒層が転写済みの電解質膜シート20Sとが残存する。具体的には、第1転写ローラー112より上流側のシート搬送経路では、両電極触媒層とも未転写の電解質膜シート20Sが残存し、第1転写ローラー112と第2転写ローラー122との間のシート搬送経路では、カソード22の未転写の電解質膜シート20Sが残存し、第2転写ローラー122より下流のシート搬送経路では、両電極触媒層とも転写済みの電解質膜シート20Sが残存する。よって、シート継ぎ作業に時間が要すると、電極触媒層が未転写の電解質膜シート20Sのシート表面の乾きにより、シート継ぎ作業完了後に行われる電極触媒層の転写において転写不良が起きることが危惧される。また、シート継ぎ作業の開始時点でシート搬送経路にある電解質膜シート20Sの領域は、シート継ぎ作業完了後に電極転写を受けてMEA巻取ローラー123に巻き取られるものの、シート継ぎ作業の開始時点で既にMEA巻取ローラー123に巻き取り済みの電解質膜シート20Sの領域と異なる環境に置かれるので、MEAとしての均質化が損なわれる可能性がある。しかしながら、本実施形態のMEA製造装置100によれば、シート継ぎ作業において、シート搬送経路にはダミーシートDSしか残さず、電極触媒層が転写済みの電解質膜シート20Sの領域を全てMEA巻取ローラー123に巻き取り済みとするので、MEAとしての均質化を図ることができる。
本実施形態のMEA製造装置100は、ダミーシートDSを、バックシートBsに継ぐダミー支持シートDBsに電解質膜シート20Sに継ぐダミー膜シートD20Sを積層した層状シートとした。よって、本実施形態のMEA製造装置100では、ダミーシートDSが電解質膜シート20Sのシート搬送経路に沿って搬送される間におけるシート送り状態を、バックシートBsに接合した電解質膜シート20Sの送り状態、具体的には電解質膜シートロール20R等の各ローラーの回転速度をさほど変える必要がない。よって、本実施形態のMEA製造装置100によれば、シート送り状態を調整するいわゆる段取り作業の不要化もしくは簡便化が可能となり、コスト低減を図ることができる。
本実施形態のMEA製造装置100では、ダミーシートDSを上記の様に層状シートとするに当たり、ダミー支持シートDBsを、バックシートBsと同じ厚みもしくは当該シートより若干薄いPEN製の高分子シートとし、ダミー膜シートD20Sを、電解質膜シート20Sと同じ厚みもしくは当該シートより若干薄いPET製の高分子シートとした。その上で、ダミー支持シートDBsとダミー膜シートD20Sの界面に、接着剤層Dbとセパレーター層Dsとを介在させて、ダミー膜シートD20Sからのダミー支持シートDBsの剥離についても、これを、電解質膜シート20SからのバックシートBsの剥離とほぼ同じように起こすようにした。よって、ダミーシートDSが電解質膜シート20Sのシート搬送経路に沿って搬送される間におけるシート送り状態は、バックシートBsに接合した電解質膜シート20Sの送り状態により近似する。このことは、段取り作業の不要化もしくは簡便化に寄与する。
本実施形態のMEA製造装置100では、ダミーシートDSのダミー支持シートDBsをPEN製の高分子シートとしたので、このダミー支持シートDBsの硬さをバックシートBsと同程度とし、ダミー支持シートDBsを不用意に硬くしない。また、ダミー膜シートD20SをPET製の高分子シートとしたので、このダミー膜シートD20Sについても、これを電解質膜シート20Sに比して柔らかくしない。よって、本実施形態のMEA製造装置100によれば、上記したシート搬送経路におけるダミーシートDSの搬送や、電解質膜シートロール20Rの巻取コア20RcへのダミーシートDSの巻取に、特段の支障はない。
本実施形態のMEA製造装置100では、アノードシート21Sが形成されるアノード支持シートAsと、カソード22が間欠形成されるカソード支持シートCsについても、これらにダミーアノード支持シートDAs、ダミーカソード支持シートDCsを継ぎ、そのシート長SLを電解質膜シート20Sのシート搬送経路長20FLを超える長さとした(図5、図6参照)。よって、ダミーシートDSが搬送される間において、このダミーシートDSにアノードシート21Sやカソード22を転写しないので、本実施形態のMEA製造装置100によれば、アノードシート21Sやカソード22を電解質膜シート20Sに無駄なく転写できる。
本実施形態のMEGA製造装置300では、アノード側ガス拡散層23とカソード側ガス拡散層24をMEAの表裏面に接合する拡散層接合機構部320において、ダミー膜シートD20Sが拡散層接合ローラー323を通過する際には、拡散層接合ローラー323へのガス拡散層を供給しない。よって、本実施形態のMEGA製造装置300によれば、アノード側ガス拡散層23とカソード側ガス拡散層24をMEAに無駄なく接合できる。
次に、他の実施形態について説明する。図10は他の実施形態において準備する電解質膜シート20Sとこれを巻き取り済みの電解質膜シートロール20Rの準備の形態を模式的に示すである。
図示するように、この実施形態では、ダミーシートDSを、電解質膜シート20Sの形成されていないバックシートBsのシート面に、ダミー膜シートD20Sを電解質膜シート20Sに継いでダミー膜シートD20Sを積層した層状シートとした。つまり、電解質膜形成装置20Mは、ダミーシートDSのシート長SLに相当する範囲に亘って、電解質膜シート20Sを形成しないままバックシートBsを送り出す。そして、この送り出されたバックシートBsに、接着剤層Dbを有するダミー膜シートD20Sを積層し、ダミー膜シートD20Sを電解質膜シート20Sに継いで、その継ぎ箇所をテープTにて接着する。この実施形態によっても、既述した効果を奏することができる。
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、或いは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
上記した実施形態では、電解質膜シート20SをバックシートBsと共にダミーシートDSに継いだ上で電解質膜シートロール20Rに巻き取ったが、これに限らない。つまり、電解質膜形成装置20MにてバックシートBsに形成済みの電解質膜シート20Sの一方のシート面に、既述した触媒インクを適宜な塗工機器にて電解質膜シート20Sにカソード22を間欠的に塗工し、その後の乾燥を経てカソード22を形成する。こうして、アノード21が間欠形成済みの電解質膜シート20Sを、ダミーシートDSに継いだ上で、バックシートBsと共に電解質膜シートロール20Rに巻き取るようにしてもよい。或いは、電解質膜シート20Sに長尺状のアノードシート21Sを連続形成し、アノードシート21Sが形成済みの電解質膜シート20Sを、ダミーシートDSに継いだ上で、バックシートBsと共に電解質膜シートロール20Rに巻き取るようにしてもよい。こうすれば、MEA製造装置100では、アノード転写機構部110或いはカソード転写機構部120のいずれかを省略できる。
この他、ダミーシートDSを巻取コアCRcの側に巻き取った上で、これに続いて巻き取られた電解質膜シート20Sの巻き取り側末端、即ちシート送り出し側先端に、更に、ダミーシートDSを継ぐようにしてもよい。こうすれば、ローラー交換に際しては、ダミーシートDSとダミーシートDSとの継ぎ作業を行えばよいので、継ぎ作業に際しては電解質膜シート20Sに指等を触れないようにできる。