以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.現金自動預払機の全体構成]
図1に外観を示すように、現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関等に設置され、顧客との間で入金取引や出金取引等の現金に関する取引を行うようになされている。
筐体2は、その前側に顧客が対峙した状態で紙幣BLの投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所、すなわち前面の上部から上面に渡る部分が斜めに切り落とされたような形状となっており、この部分に接客部3が設けられている。
接客部3は、顧客との間で現金や通帳等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになされており、カード入出口4、入出金口5、操作表示部6、テンキー7、及びレシート発行口8が設けられている。
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。
入出金口5は、顧客が入金する紙幣BLが投入されると共に、顧客へ出金する紙幣BLが排出される部分である。また入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになされている。因みに紙幣BLは、例えば長方形の紙で構成されている。
操作表示部6は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額等を入力するタッチパネルとが一体化されている。
テンキー7は、「0」〜「9」の数字等の入力を受け付ける物理キーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられるようになされている。
レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。因みにレシート発行口8の奥側には、レシートに取引内容等を印字するレシート処理部(図示せず)が設けられている。
以下では、現金自動預払機1のうち顧客が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した顧客から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
筐体2内には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、紙幣BLに関する種々の処理を行う紙幣入出金機10等が設けられている。
主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等の種々の処理を行うようになされている。
また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部9Aを有しており、この記憶部9Aに種々の情報を記憶させるようになされている。
因みに筐体2は、前面側やその後面側等の一部の側面が開閉可能な扉により構成されている。すなわち筐体2は、顧客との間で現金に関する取引を行う取引動作時には、図1に示したように各扉を閉塞することにより、紙幣入出金機10内に収納している紙幣BLを保護する。一方筐体2は、作業者等が保守作業を行う保守作業時には、必要に応じて各扉を開放することにより、内部の各部に対する作業を容易に行わせ得るようになされている。
紙幣入出金機10は、図2に側面図を示すように、紙幣入出金機筐体12の内部に、長方形の紙葉状でなる紙幣BLに関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。また紙幣入出金機10の各部分は、紙幣制御部11により制御されるようになされている。
紙幣制御部11(図1)は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、紙幣BLの搬送先を決定する処理等、種々の処理を行うようになされている。
紙幣制御部11は、例えば顧客が紙幣BLを入金する入金取引を行う場合、操作表示部6を介して所定の操作入力を受け付けた後、入出金口5のシャッタを開いて入出金部13内へ紙幣BLを投入させる。
入出金部13は、図示しない収容器に紙幣BLが投入されると、入出金口5(図1)のシャッタを閉じて当該収容器から紙幣BLを1枚ずつ取り出し、搬送F部14へ受け渡す。搬送F部14は、紙幣BLを短辺方向に沿って進行させ、認識部15へ搬送する。
認識部15は、その内部で紙幣BLを搬送しながら、光学素子や磁気検出素子等を用いて当該紙幣BLの金種及び真偽、並びに損傷の程度等を認識し、その鑑別結果を紙幣制御部11へ通知する。これに応じて紙幣制御部11は、取得した鑑別結果に基づいて当該紙幣BLの搬送先を決定する。
このとき搬送R部16は、認識部15において正常紙幣と鑑別された紙幣BLを一時保留部17へ搬送する等して一時的に保留させる一方、取引すべきでないと鑑別されたリジェクト紙幣を入出金部13へ搬送して顧客に返却する。
その後紙幣制御部11は、操作表示部6(図1)を介して顧客に入金金額を確定させ、一時保留部17に保留している紙幣BLを搬送R部16により認識部15へ搬送してその金種及び損傷の程度等を認識させ、その鑑別結果を取得する。
そして紙幣制御部11は、紙幣BLの損傷の程度が小さければ、これを再利用すべき紙幣BLとして搬送F部14及び搬送M部18により搬送させてその金種に応じた紙幣カセット19に収納させる。因みに紙幣入出金機10には、4個の紙幣カセット19が前後方向に整列されている。
また紙幣制御部11は、紙幣BLの損傷の程度が大きければ、これを再利用すべきでない紙幣BLとして搬送F部14、搬送M部18及び搬送R部16によりリジェクトカセット20へ搬送して収納させるようになされている。
また紙幣制御部11は、例えば顧客が紙幣BLを出金する出金取引を行う場合、操作表示部6(図1)を介して所定の操作入力を受け付けた後、出金すべき金額に応じた紙幣BLを紙幣カセット19から繰り出させ、搬送M部18及び搬送F部14を介して認識部15へ搬送させる。
続いて紙幣制御部11は、この紙幣BLを認識部15により認識させた上で入出金部13へ搬送し、入出金口5(図1)のシャッタを開いて紙幣BLを顧客に取り出させる。
ところで紙幣入出金機10は、内部の保守作業等の効率を高めるべく、図2に示したように各部分が互いに連結された運用可能な状態から、各部分を一時的に切り離して移動や回転等させ得るようになされている。
例えば紙幣入出金機10では、下側の搬送M部18及び紙幣カセット19をまとめて下部ユニット21としており、図3に示すように、紙幣入出金機筐体12に対し下部ユニット21前方へ引き出すように移動させることができる。
この下部ユニット21は、下部ユニット筐体22内に4個の紙幣カセット19が装着されており、その上部に搬送M部18が取り付けられている。
搬送M部18は、図4(A)及び(B)に示すように、右下端の回動部18Xを介して下部ユニット筐体22に取り付けられており、当該回動部18Xを回動中心として下部ユニット筐体22に対し右上方へ持ち上げるよう回動するようになされている。
下部ユニット21では、下部ユニット筐体22に対し紙幣カセット19を着脱し得るようになされている。具体的に下部ユニット21では、搬送M部18を開放した状態(図5)において、紙幣カセット19を上方へ持ち上げれば下部ユニット筐体22から取り外すことができ、また下部ユニット筐体22と位置を合わせて紙幣カセット19を下方へ降ろせば装着することができる。
[2.紙幣カセットの外観構成]
紙幣カセット19は、図5(A)に示すように、全体として直方体状に構成されており、内部に収容する紙幣を保護するべく、紙幣カセット筐体30により前側面を除いた各外側面が覆われている。
紙幣カセット筐体30の前側は、図5(B)に示すように大きく開口されており、この開口部分の左枠部分における下方には、レバー操作孔30Aとロック保持孔30Bとが上下に並ぶように穿設されている。
また紙幣カセット筐体30の前側には、図5(A)及び(B)に示したように、右側に設けられた扉支持部30Cを介して、当該開口部分を閉塞又は開放する前扉31が開閉自在に取り付けられている。
前扉31は、紙幣カセット筐体30の前側を閉塞する際には、開口部分と共にレバー操作孔30Aも閉塞し、紙幣カセット筐体30の前側を開放する際には、開口部分と共にレバー操作孔30Aも開放するようになされている。
また前扉31の左寄りには、錠31Aが設けられている。この錠31Aは、図示しない鍵によって施錠又は解錠されることにより、紙幣カセット筐体30に対し前扉31を固定し、又はその固定を解除するようになされている。
このため紙幣カセット19は、前扉31が閉塞され錠31Aが施錠されると、前扉31を開放することができなくなるため、紙幣カセット筐体30の内部及びレバー操作孔30Aに対するアクセス(紙幣の装填や取出、或いは各種操作)を禁止することになる。
一方紙幣カセット19は、錠31Aが解錠されると、前扉31を開放することができるようになるため、紙幣カセット筐体30の内部及びレバー操作孔30Aに対するアクセスを許可することになる。
さらに前扉31の後面左下におけるロック保持孔30Bと対応する位置には、周囲よりも突出したロック保持突起31Bが突設されている。このロック保持突起31Bは、前扉31が閉塞されたときにロック保持孔30B内に挿入されるよう、その位置や高さ等が最適化されている。
このように紙幣カセット19は、錠31Aの施錠状態に応じて前扉31の開閉を許可又は禁止することにより、紙幣カセット筐体30の内部及びレバー操作孔30Aに対するアクセスも許可又は禁止するようになされている。
ところで紙幣カセット筐体30には、下部ユニット筐体22に装着された際に紙幣の受け渡しや駆動力の伝達等を行うために、種々の孔が穿設されている。
すなわち紙幣カセット筐体30の上面には、搬送M部18(図2)との間で紙幣を受け渡すための左右に細長い受渡口30Dが穿設されている。
また紙幣カセット筐体30の背面には、図6に示すように、左上側にピッカローラ駆動孔30Eが穿設され、左下側にステージ駆動孔30Fが穿設されている。
さらに紙幣カセット筐体30の底面には、図7に示すように、左前側に第1ロック解除孔30Gが穿設され、左後側に第2ロック解除孔30Hが穿設されている。
このように紙幣カセット19は、錠31Aの施錠状態にかかわらず、受渡口30D、ピッカローラ駆動孔30E、ステージ駆動孔30F、第1ロック解除孔30G及び第2ロック解除孔30Hを介してその内側の一部を外部に露出させるようになされている。
[3.紙幣カセットの内部構成]
紙幣カセット筐体30の内部は、図8に示すように、骨格を形成するフレーム32を中心に構成されている。因みに図8では、紙幣カセット筐体30内に設けられる各部品同士の関係を明らかにするべく、隠れる部品も実線で表現する等、模式的に表している。
フレーム32は、背面板32A、左側板32B、右側板32C及び底面板32Dにより集積空間32Sを形成しており、当該集積空間32S内において平板状のステージ33を上下方向に移動させ得るようになされている。
集積空間32Sには、図8に示したように、ステージ33の集積面側としての上側に、紙幣BLが上下方向に揃えて集積された状態で収納されるようになされている。
このためステージ33は、上側に紙幣BLを集積している場合、上方向に移動されれば、紙幣BLに対する押付力を強めるため、集積された紙幣BLが崩れることを防止できる。一方ステージ33は、下方向に移動されれば、紙幣BLに対する押付力を弱めるため、集積された紙幣BLを崩れ易くすることになる。
集積空間32Sの上端近傍には、ピッカローラ34が設けられている。ピッカローラ34は、円筒状に構成されると共にその外周面の一部にゴム等の摩擦係数の高い材料が取り付けられており、軸34を中心に回転することにより、集積された紙幣BLを1枚ずつに分離し、又は集積済の紙幣BLに新たな紙幣BLを重ねて収納するようになされている。
さらにフレーム32における集積空間32Sの左外側、すなわち左側板32Bと紙幣カセット筐体30の左側面との間(以下これを左空間32Lと呼ぶ)には、ステージ33及びピッカローラ34を駆動する機構、及びこれらをロックする機構がそれぞれ組み込まれている。
[3−1.駆動機構の構成]
左空間32Lの後側下方には、ステージギア41が設けられている。ステージギア41は、円板の周側面に歯(ギア)が形成されており、軸41Xを中心に自在に回転し得るようになされている。
またステージギア41は、背面のステージ駆動孔30Fを介して後方にその一部を露出させており、紙幣カセット19が下部ユニット筐体22(図2)に装着された際、当該下側ユニット筐体22に設けられている所定のギアと歯合して駆動されるようになされている。
左空間32Lの下部中央及び上部中央には、回転軸42Xを中心に自在に回転する下側ギア42と、回転軸44Xを中心に自在に回転する上側ギア43とがそれぞれ設けられている。
またステージギア41と下側ギア42との間には、内周面に歯が形成された伝達ベルト44が架け渡されており、下側ギア42と上側ギア43との間には、内周面に歯が形成されたステージベルト45が架け渡されている。さらにステージベルト45には、固定部材33Aを介してステージ33が固定されている。
かかる構成により紙幣カセット19は、ステージギア41が集積回転方向である時計方向R1へ回転駆動されると、伝達ベルト43、下側ギア42及びステージベルト45を介してステージ33を下方向へ駆動し、またステージギア41が反時計方向R2へ回転駆動されるとステージ33を上方向へ駆動することができる。
また紙幣カセット19は、外力によりステージ33が下方向へ駆動されると、ステージギア41を時計方向R1へ回転させ、ステージ33が上方向へ駆動されると、ステージギア41を反時計方向R2へ回転させることになる。
一方、左空間32Lの後側上方には、ピッカローラギア47が設けられている。ピッカローラギア47は、ステージギア41と同様、円板の周側面に歯(ギア)が形成されており、軸47Xを中心に自在に回転し得るようになされている。
またピッカローラギア47は、背面のピッカローラ駆動孔30Eを介して後方にその一部を露出させており、紙幣カセット19が下部ユニット筐体22(図2)に装着されて搬送M部18が閉塞された際、当該搬送M部18に設けられている所定のギアと歯合して駆動されるようになされている。
ピッカローラギア47の軸47Xとピッカローラ34の軸34Xとの間には、伝達ベルト48が架け渡されている。
かかる構成により紙幣カセット19は、ピッカローラギア47が時計方向R1へ回転駆動されると、伝達ベルト48を介してピッカローラ34を時計方向R1へ回転させて紙幣BLを外部へ繰り出し、ピッカローラギア47が反時計方向R2へ回転駆動されると、ピッカローラ34を反時計方向R2へ回転させて紙幣BLを内部へ取り込むようになされている。
また紙幣カセット19は、外力により紙幣BLが繰り出されピッカローラ34が時計方向R1へ回転すると、ピッカローラギア47も時計方向R1へ回転させ、外力により紙幣BLが取り込まれてピッカローラ34が反時計方向R2へ回転すると、ピッカローラギア47も反時計方向R2へ回転させることになる。
ピッカローラ34は時計方向へ回転されると、図示しないローラと連動することにより、集積されている紙幣BLを1枚ずつに分離して後方へ送り出し、紙幣カセット筐体30の上面に設けられた受渡口30Dを介して搬送M部18(図2)へ受け渡すことができる。
またピッカローラ34は、搬送M部18から受渡口30Dを介して紙幣BLが受け渡されたときに反時計方向へ回転されると、当該紙幣BLを集積空間32S内へ取り込み、集積済の紙幣BLと重ねて収納することができる。
[3−2.ロック機構の構成]
ところで、左空間32Lにおけるステージギア41の前方には、3本の腕部を持ち左右方向から見て略Y字状に形成されたステージロック51が設けられている。ステージロック51は、回動軸51Xを中心として左側から見て時計方向R1又は反時計方向R2へ自在に回動し得るようになされている。
ステージロック51の後側における上下2本の腕部の間には、周囲よりも後方へ向けて突出したロック爪51Aが設けられている。ステージロック51は、反時計方向R2へ回動されると、ロック爪51Aをステージギア41と歯合させることにより、当該ステージギア41の回転を阻止してステージ33の上下方向への移動を制限する。以下これをロック状態と呼ぶ。
またステージロック51は、時計方向R1へ回動されると、ロック爪51Aをステージギア41から引き離すことにより、当該ステージギア41の回転を許容してステージ33の上下方向への移動を許容する。以下これをロック解除状態と呼ぶ。
ステージロック51の前方に伸びた腕部の前端には、上下方向に薄いつまみ状に形成されたレバー51Bが設けられている。レバー51Bは、紙幣カセット筐体30の前左下部に穿設されたレバー操作孔30Aの真後に位置しており、作業者等の指先により下方向へ押し下げられることにより、回動軸51Xを中心にステージロック51全体を時計方向R1へ回動させること、すなわちロック解除状態とすることができる。
ステージロック51におけるレバー51Bの後下部には、周囲よりも下方へ突出した突出部51Cが形成されており、その前方及び後方に退避空間51D及び51Eが形成されている。
一方、突出部51Cの下方には、上下に細長い立体形状でなるロック保持体52が設けられている。ロック保持体52は、その下端近傍に設けられた回動軸52Xを中心に時計方向R1又は反時計方向R2へ自在に回動するようになされると共に、図示しないスプリングにより時計方向R1に付勢されている。
ロック保持体52は、その上端に周囲よりも上方へ突出した上当接部52Aが形成され、また前面の上寄りの箇所に前当接部52Bが形成されており、さらに前当接部52Bの下方には前下方を向いた斜面でなる傾斜部52Cが形成されている。
一方、前扉31は、閉塞されているとき、ロック保持突起31Bを紙幣カセット筐体30のロック保持孔30B内に挿入させている。
このときロック保持体52は、前当接部52Bがロック保持突起31Bと当接することにより、時計方向R1へ回動しようとする力が受け止められて静止する。以下、このときのロック保持体52の位置を保持位置と呼ぶ。
保持位置にあるロック保持体52は、上当接部52Aをステージロック51の突出部51Cの真下に位置させる。因みにロック保持体52は、保持位置にあるとき、上当接部52Aを回動軸52Xのほぼ真上に位置させるよう設計されている。
このためステージロック51は、保持位置にあるロック保持体52により時計方向R1への回動が規制され、ロック爪51Aをステージギア41に歯合させてその回転を阻止するロック状態を保持する。
またステージロック51は、ロック保持体52が時計方向R1又は反時計方向R2へ回動されて保持位置から外れたときには、ロック爪51Aをステージギア41から引き離してその回転を許容する(詳しくは後述する)。
ところで、ステージロック51の後下方へ伸びた腕部における先端部の下側には、下当接部51Fが形成されている。一方、下当接部51Fの直下には、略直方体状のロック解除体53が設けられている。
ロック解除体53は、その上面に上当接部53Aが形成されると共に、その下面に下当接部53Bが形成されている。またロック解除体53は、その中央に上下に長い長孔53Xが左右方向に貫通するように穿設されている。
長孔53Xには、2本のガイドポスト53Pが挿通されている。2本のガイドポスト53Pは、上下に並ぶようにフレーム32の左側面に固定されており、またそれぞれの外径が長孔53Xにおける前後方向の孔幅よりも僅かに小さくなっている。
このためロック解除体53は、長孔53Xをガイドポスト53Pに摺動させながら、上方向U1又は下方向U2へ移動する。実際上ロック解除体53は、外力が加えられることにより上方向U1へ移動されると、上当接部53A及び下当接部51Fを介してステージロック51を時計方向R1へ回動させることができる。
また、ステージロック51の後上方へ伸びた腕部の上面には、上当接部51Gが形成されている。一方、上当接部51Gの直上には、上下に細長い棒状の連動体54が設けられている。
連動体54は、その下面に下当接部54Aが形成されると共に、その上面に上当接部54Bが形成されている。また連動体54は、その上端近傍及び下端近傍に、それぞれ長孔53Xと同様に上下に長い長孔54X及び54Yが左右方向に貫通するように穿設されている。
長孔54X及び54Yには、ガイドポスト53Pと同様のガイドポスト54P及び54Qがそれぞれ挿通されている。ガイドポスト54P及び54Qは、ガイドポスト53Pと同様、フレーム32の左側面における上下に離れた箇所に固定されており、またそれぞれの外径が長孔54X及び54Yにおける前後方向の孔幅よりも僅かに小さくなっている。
このため連動体54は、長孔54X及び54Yをガイドポスト54P及び54Qにそれぞれ摺動させながら、上方向U1又は下方向U2へ移動することができる。
また連動体54の前側中央付近には、前方向に向けて突設された取付部54Cが突設されており、当該取付部54Cに対し、コイルばねでなるスプリング55における上側の端部が取り付けられている。スプリング55は、下側の端部がフレーム32の取付部32Cに取り付けられることにより、自然長から伸長された状態となっている。
このためスプリング55は、収縮して自然長に戻ろうとする復元力を発生させ、フレーム32に対し連動体54を下方向U2へ付勢する。このとき連動体54は、下当接部54A及び上当接部51Gを介してその力をステージロック51へ伝達し、当該ステージロック51を反時計方向R2へ付勢する。
また、連動体54とピッカローラギア47との間には、2本の腕部を持ち左方向から見て逆L字状に形成されたピッカローラロック56が設けられている。
ピッカローラロック56は、2本の腕部の接合部付近に挿通された回動軸56Xを中心として、左側から見て時計方向R1又は反時計方向R2へ自在に回動し得るようになされており、さらに図示しないスプリングにより反時計方向R2へ回動するよう付勢されている。
ピッカローラロック56の前上方へ伸びる腕部の先端には、上後方へ向けて突出したロック爪56Aが設けられている。ピッカローラロック56は、反時計方向R2へ回動されると、ロック爪56Aをピッカローラギア47と歯合させることにより、当該ピッカローラギア47の回転を阻止してピッカローラ34の回転を制限する。以下これを、ステージギア41の場合と同様にロック状態と呼ぶ。
またピッカローラロック56は、時計方向R1へ回動されると、ロック爪56Aをピッカローラギア47から引き離すことにより、当該ピッカローラギア47の回転を許容してピッカローラ34のいずれの方向への回転も許容する。以下これをロック解除状態と呼ぶ。
一方、ピッカローラロック56の後方へ伸びた腕部における先端部の下側には、連動体54の上当接部54Bと当接する下当接部56Bが形成されている。
かかる構成によりピッカローラロック56は、外力が何ら加えられない自然状態では、反時計方向R2へ回動してロック爪56Aをピッカローラギア47と歯合させてロック状態とし、その回転を阻止する。
一方ピッカローラロック56は、連動体54が上方向U1へ移動し上当接部54Bを介して下当接部56Bに上方向へ向かう外力が加えられると、時計方向R1へ回動してロック爪56Aをピッカローラギア47から引き離してロック解除状態とし、当該ピッカローラギア47の回転を許容する。
このように紙幣カセット19は、ステージロック51のロック爪51A及びピッカローラロック56のロック爪56Aをステージギア41及びピッカローラギア47とそれぞれ歯合させ、又は引き離すことにより、ステージ33の移動及びピッカローラ34の回転を禁止又は許容するようになされている。
[3−3.ギアに対する回転の制限]
ところでピッカローラロック56は、ロック爪56Aがピッカローラギア47と歯合したロック状態において、上述したように、当該ピッカローラギア47の回転を制限し、ピッカローラ34の回転を禁止する。
しかしながらピッカローラギア47は、上述したように紙幣カセット筐体30のピッカローラ駆動孔30Eから外部に露出されているため、例えば紙幣カセット19から不正に紙幣BLを取り出す目的で、当該ピッカローラギア47に回転方向の比較的大きな力が加えられる可能性がある。
ここで図9(A)に示すように、ピッカローラギア47にピッカローラ56のロック爪56Aが歯合している状態で時計方向R1、すなわち連動するピッカローラ34により紙幣を外部へ繰り出す方向に力が加えられた場合を想定する。
ピッカローラギア47は、時計方向R1への回転する力を基に、ロック爪56Aとの当接点K1において力F1をロック爪56Aに作用させる。
この力F1の作用する方向は、ピッカローラギア47の回転中心Pを中心として当接点K1を通る仮想的な円を想定したとき、この円の当接点K1おける接線に沿った方向となる。すなわち力F1の作用する方向は、回転中心P及び当接点K1を通る仮想的な直線αと当接点K1において直交する接線βに沿った方向となる。
一方、ピッカローラロック56は、上述したように軸56Xを中心に回動する。このためロック爪56Aについては、その回動中心Qを中心とした円における接線方向に作用する力が、当該ロック爪56Aを移動(回動)させる力となる。
ここで、ピッカローラロック56の回転中心Q及び当接点K1を通る仮想的な直線γと、当接点K1を通り直線γと直交する仮想的な直線δとを定義し、また直線γ及び直線δに沿った方向をそれぞれγ方向及びδ方向と呼ぶ。
図9(A)の一部を拡大した図9(B)に示すように、力F1をγ方向成分F1γとδ方向成分F1δとに分解すると、δ方向成分F1δは、ピッカローラギア47の回転中心Pの近傍へ向かう方向、換言すればピッカローラロック56の回動中心Qから見て反時計方向R2に近い方向となる。
すなわちピッカローラロック56は、ピッカローラギア47からロック爪56Aを介して反時計方向R2へ向かう力、いわば歯合する方向の力を受けることになり、ギアとロック爪56Aとを一段と噛み込ませ、ピッカローラギア47の回転をより強力に阻止することになる。この結果、ピッカローラ34は、紙幣BLを繰り出す方向には回転しないことになる。
この場合、このような力の作用する方向の関係は、ロック爪56Aの移動可能な方向に応じて、すなわちピッカローラギア47に対するピッカローラロック56の回転軸56Xの位置に応じて定まっている。
次に、図10(A)に示すように、ピッカローラギア47にピッカローラ56のロック爪56Aが歯合している状態で半時計方向R2、すなわち連動するピッカローラ34により紙幣を内部へ取り込む方向に力が加えられた場合を想定する。
ピッカローラギア47は、半時計方向R2への回転する力を基に、ロック爪56Aとの当接点K2において力F2をロック爪56Aに作用させる。この力F2の作用する方向は、図9の場合と同様に当接点K2おける接線βに沿った方向となるが、図9の場合とはピッカローラギア47の回転方向が反対であるため、力の作用する方向も反対となる。
また図9の場合と同様に、ピッカローラロック56の回転中心及び当接点K2を通る仮想的な直線γと、当接点K2を通り直線γと直交する仮想的な直線δとを定義する。
ここで図10(A)の一部を拡大した図10(B)に示すように、力F2をγ方向成分F2γとδ方向成分F2δとに分解すると、δ方向成分F2δは、ピッカローラギア47の回転中心Pから離れる方向、換言すればピッカローラロック56の回動中心Qから見て時計方向R1に近い方向となる。
すなわちピッカローラロック56は、ピッカローラギア47からロック爪56Aを介して時計方向R1へ向かう力、いわば引き離す方向の力を受けることになり、ギアとロック爪56Aとの歯合を緩め、さらにはロック爪56Aがギヤを乗り越えてピッカローラギア47を反時計方向R2に回転させることになる。この結果、ピッカローラ34は、紙幣BLを取り込む方向に回転することになる。
このようにピッカローラロック56は、ロック爪56Aをピッカローラギア47に歯合させているとき、ピッカローラ34について、紙幣BLを繰り出す方向の回転を制限する一方で、紙幣BLを取り込む方向への回転を許容するようになされている。
またステージロック51のロック爪51Aは、ピッカローラロック56のロック爪56Aと同様、ステージギア41の時計方向R1への回転を制限すると共に、当該ステージギア41の反時計方向R2への回転を許容するようになされている。
これによりステージロック51は、ロック爪51Aをステージギア41に歯合させているとき、ステージ33について、下方向、すなわち集積された紙幣BLに対する押付力を弱める方向への移動を禁止すると共に、上方向、すなわち集積された紙幣BLに対する押付力を強める方向への移動を許容することができる。
このようにステージロック51及びピッカローラロック56は、ロック爪51A及び56Aをステージギア41及びピッカローラギア47とそれぞれ歯合させたロック状態であるとき、時計方向R1への回転を制限する一方、その反対方向である反時計方向R2への回転を許容するようになされている。
[4.紙幣カセットの形態]
紙幣カセット19は、上述したように、下部ユニット22に装着された形態(以下これを装着形態と呼ぶ)、下部ユニット22から取り外され前扉31が閉塞及び施錠された形態(以下これを閉塞形態と呼ぶ)、又は下部ユニット22から取り外され前扉31が開放された形態(以下これを開放形態と呼ぶ)、といった形態をとり得る。
以下では、各形態におけるステージ33の移動の制限及びピッカローラ34の回転の制限について、それぞれ説明する。
[4−1.開放形態]
紙幣カセット19は、開放形態にあるとき、図8に示したように、スプリング55の収縮により連動体54に対し下方向U2の力を作用させ、この力を下当接部54Aからステージロック51の上当接部51Gに伝達する。
これによりステージロック51は、反時計方向R2へ回動されるため、ロック爪51Aをステージギア41に歯合させたロック状態とする。このときステージギア41は、時計方向R1への回転が阻止される一方、反時計方向R2への回転が許容される。
これによりステージ33は、特に外力が加えられなければ現在の位置を保持し、また外力が加えられた場合には、下方向へは移動できない一方、上方向へは移動することができる。
またピッカローラロック56は、図示しないスプリングの作用により反時計方向R2へ回動され、ロック爪56Aをピッカローラギア47に歯合させたロック状態とする。このためピッカローラギア47は、時計方向R1への回転が阻止される一方、反時計方向R2への回転が許容される。
これによりピッカローラ34は、ピッカローラギア47やピッカローラ34等に外力が加えられなければ現在の位置を保持し、また外力が加えられた場合には、紙幣BLを外部へ繰り出す方向である時計方向R1へは回転せず、紙幣BLを内部へ取り込む方向である反時計方向R2へは回転することができる。
ところで紙幣カセット19は、開放形態にあるとき、前扉31が開放されることによりロック保持突起31Bがロック保持体52から引き離されている。
このためロック保持体52は、図示しないスプリングにより時計方向R1に付勢され、保持位置(図8)から時計方向R1に回動し、図11に示すように、上当接部52Aをステージロック51の突出部51Cの前方にある退避空間51Dの真下に位置させる。以下、このときのロック保持体52の位置を第1許容位置と呼ぶ。
また紙幣カセット19は、前扉31が開放されているため、紙幣カセット筐体30の前左下部に穿設されたレバー操作孔30Aからステージロック51のレバー51Bを露出させている。
ステージロック51は、図11に示したように、作業員等によりレバー51Bに下方向へ押し下げる力が加えられると、ロック保持体52の上当接部52Aを退避空間51Dに逃がしながら時計方向R1へ回動される。
このときステージロック51は、ロック爪51Aをステージギア41から引き離すことによりロック解除状態となり、当該ステージギア41のいずれの方向への回転も許容する。このためステージ33は、レバー51Bが下方向へ押し下げられている間、上方向U1及び下方向U2のいずれにも自由に移動することができる。
またステージロック51は、上当接部51Gを介して連動体54に対し上方向U1へ向かう力を加える。連動体54は、スプリング55による下方向U1への力よりもステージロック51から加えられる上方向U1への力が大きくなると上方向U1へ移動し、上当接部54Bを介してピッカローラロック56の下当接部56Bに対し上方向へ向かう力を加える。
ピッカローラロック56は、連動体54からの上方向へ向かう力により時計方向R1へ回動され、ロック爪56Aをピッカローラギア47から引き離してロック解除状態とする。このためピッカローラギア47と連動するピッカローラ34は、時計方向R1又は反時計方向R2のいずれにも自由に回転することができる。
このように紙幣カセット19は、開放形態において何ら操作がされないときには、ステージロック51及びピッカローラロック56をロック状態とすることによりステージ33の移動及びピッカローラ34の回転を規制し、外力が加えられるとステージ33の上方向への移動及びピッカローラ34の反時計方向R2への回転のみを許容するようになされている。
さらに紙幣カセット19は、開放形態においてレバー51Bが押し下げられたときには、ステージロック51及びピッカローラロック56をロック解除状態とすることにより、ステージ33の上下双方向への移動及びピッカローラ34の双方向への回転を許容するようになされている。
[4−2.閉塞形態]
紙幣カセット19は、閉塞形態にあるとき、開放形態においてレバー51Bが押し下げられていないときとほぼ同様となる。
すなわち紙幣カセット19は、スプリング55の収縮に起因して連動体54が下方向へ力を作用させることにより、ステージロック51を反時計方向R2へ回動させ、ロック爪51Aをステージギア41に歯合させてロック状態とする。このときステージギア41は、時計方向R1への回転が阻止される一方、反時計方向R2への回転が許容される。
これによりステージ33は、特に力が加えられなければ現在の位置を保持し、また力が加えられた場合には、下方向へは移動できない一方、上方向へは移動することができる。
またピッカローラロック56は、図示しないスプリングの作用により反時計方向R2へ回動され、ロック爪56Aをピッカローラギア47に歯合させたロック状態とする。このためピッカローラギア47は、時計方向R1への回転が阻止される一方、反時計方向R2への回転が許容される。
これによりピッカローラ34は、ピッカローラギア47やピッカローラ34等に外力が加えられなければ現在の位置を保持し、また外力が加えられた場合には、紙幣BLを外部へ繰り出す方向である時計方向R1へは回転せず、紙幣BLを内部へ取り込む方向である反時計方向R2へは回転することができる。
ところでロック保持体52は、図示しないスプリングにより時計方向R1に付勢されているものの、この閉塞形態においては前扉31のロック保持突起31Bが前当接部52Bに当接するため、保持位置(図8)に回動される。
このため紙幣カセット19は、ステージロック51の回動を阻止し、ロック爪51Aをステージギア41に歯合させたロック状態に保持する。すなわち紙幣カセット19は、閉塞形態である場合、ステージ33の下方向への移動を一切許容しないことになる。
このように紙幣カセット19は、閉塞形態においてロック保持体52を保持位置とすると共に、開放形態において何ら操作がされないときと同様、ステージ33の移動及びピッカローラ34の回転を規制し、外力が加えられるとステージ33の上方向への移動及びピッカローラ34の反時計方向R2への回転のみを許容するようになされている。
[4−3.装着形態]
下部ユニット筐体22(図3)には、紙幣カセット19における筐体30の底面と対応する箇所に、細長い棒状の解除ポスト22A及び22Bが上方向へ向けて立設されている。因みに解除ポスト22Aは、解除ポスト22Bよりも長くなっている。
紙幣カセット19は、下部ユニット筐体22に装着されると、図12に示すように、解除ポスト22A及び22Bが筐体30の底面に穿設されたロック解除孔30G及び30H(図7)にそれぞれ挿入される。
このとき紙幣カセット19は、まず長い方の解除ポスト22Aがロック解除孔30Gに挿入され、ロック保持体52の傾斜部52Cと当接することにより、当該ロック保持体52を反時計方向R2へ回動させる。
これによりロック保持体52は、上当接部52Aをステージロック51の突出部51Cの後方にある退避空間51Eの真下に位置させる。以下、このときのロック保持体52の位置を第2許容位置と呼ぶ。
次に紙幣カセット19は、短い方の解除ポスト22Bがロック解除孔30Hに挿入され、ロック解除体53の下当接部53Bと当接することにより、当該ロック解除体53を上方向U1へ移動させ、上当接部53Aを介してステージロック51の下当接部53Fに上方向へ向かう力を作用させる。
ステージロック51は、ロック保持体52の上当接部52Aを退避空間51Eへ逃がすことにより時計方向R1に回動され、ロック爪51Aをステージギア41から引き離したロック解除状態とする。すなわち紙幣カセット19は、開放形態においてステージロック51のレバー51Bが下方向へ押し下げられたときと同様の状態となる。
このためステージ33は、上方向U1及び下方向U2のいずれにも自由に移動することができるようになり、またピッカローラ34は、時計方向R1及び反時計方向R2のいずれにも自由に回転することができるようになる。
このように紙幣カセット19は、装着形態においてロック保持体52を第2許容位置に回動させると共にステージロック51を時計方向R1へ回動させることにより、当該ステージロック51及びピッカローラロック56をロック解除状態として、ステージ33に対する移動の制限及びピッカローラ34に対する回転の制限をいずれも解除するようになされている。
[5.動作及び効果]
以上の構成において、現金自動預払機1の紙幣カセット19は、ステージロック51にステージギア41と歯合するロック爪51Aを設け、軸51Xを中心に当該ステージロック51を時計方向R1又は反時計方向R2へ回動させるようにした。
ステージロック51は、スプリング55の復元力が連動体54を介して加えられることにより常時反時計方向R2へ付勢されており、このときロック爪51Aをステージギア41に歯合させてロック状態とし、ステージ33の移動を制限する。
またステージロック51は、紙幣カセット19の開放形態においてレバー51Bが下方向へ押し下げられたとき、及び装着形態においてロック解除体53が上方向U1へ押し上げられたときに、時計方向R1へ回動してロック爪51Aをステージギア41から引き離しロック解除状態として、ステージ33を自由に移動させる。
これによりステージロック51は、開放形態においてレバー51Bが操作されていないとき及び紙幣カセット19が閉塞形態であるときに、ステージ33の移動を制限してその位置を保持することができる。
このときステージ33は、ピッカローラ34との間に紙幣BLが整然と集積され、且つ上方向へ押し付けられて紙幣BLを圧縮した状態であれば、当該紙幣BLを整然と集積した状態に保つことができる。
またステージロック51は、紙幣カセット19の開放形態においてレバー51Bが押し下げられることにより、当該ステージ33を上下方向に自由に移動させることができる。特に紙幣カセット19では、レバー操作孔30Aを前扉31により覆う位置に設けたため、前扉31が閉塞されて錠31Aが施錠されるだけで、集積空間32S内に対するアクセスとレバー51Bに対する押下操作とを同時に制限することができる。
ところで従来の紙幣カセットのなかには、上述したようにスプリング等により紙幣BLを圧縮する方向にステージを付勢しているものがある。この紙幣カセットでは、作業員が紙幣BLを装填する際、例えば当該ステージを一方の手で押さえながら、他方の手で紙幣BLを装填する必要があった。
この点において本発明の紙幣カセット19は、開放形態において、ステージ33を現在の位置に保持し、上下方向のいずれに対しても付勢しない。このため紙幣カセット19は、作業員により紙幣BLを装填させる際、まずレバー51Bを押し下げながらステージ33を所望の位置まで移動させておくことにより、その後ステージ33を押さえる必要がなく、両手を使って紙幣BLを装填させることができるので、作業性を格段に向上することができる。
またステージロック51は、ロック爪51Aをステージギア41に歯合させたロック状態においても、当該ステージギア41とステージロック51の回動中心との位置関係により、当該ステージギア41の反時計方向R2への回転、すなわちステージ33の上方向への移動のみを許容する(図9、図10)。
このためステージロック51は、作業員にレバー51Bを操作させなくとも、ステージ33に上方向への力を加えさせるだけで、当該ステージ33を上方向へ移動させることができる。
これにより紙幣カセット19では、例えば作業員によりステージ33が最下部へ移動されてから紙幣BLが装填された状態で、当該紙幣BL同士の間に隙間が形成されていたとしても、当該ステージ33に上方向へある程度の力を加えさせるだけで、当該ステージ33を上方向へ移動させて紙幣BLを圧縮させる、といった極めて容易な作業を順次行わせることにより、紙幣BLに上下方向から比較的強い力を加えた状態、すなわち崩れ難い状態とすることができる。
また紙幣カセット19は、ロック保持体52を保持位置(図8)、第1許容位置(図11)又は第2許容位置(図12)のいずれかに切り換え、且つスプリングにより時計方向R1に付勢するようにした。
ロック保持体52は、紙幣カセット19の閉塞形態において保持位置とされ、上当接部52Aをステージロック51の突出部51Cの真下に位置させる。これにより紙幣カセット19は、仮に閉塞形態において落下され、或いは異物と衝突する等して一時的に大きな衝撃が加えられたとしても、この衝撃によりステージロック51に回転モーメントが発生して時計方向R1へ回動することを阻止できる。
特にロック保持体52は、保持位置にあるとき、仮にステージロック51が衝撃等により時計方向R1へ回動しようとした場合、突出部51Cにより上当接部52Aに対しほぼ真下へ向かう力を加えるものの、当該突出部51Cを回動中心である回動軸52Xのほぼ真上に位置させるため、この力を当該回動軸52Xにより受け止めることができ、不用意に回動してしまうことがない。
また紙幣カセット19は、閉塞形態において衝撃が加えられることにより、仮にロック保持体52が反時計方向R2へ回動すると共にステージロック51が時計方向R1へ回動すれば、ステージギア41に対するロック爪51Aの歯合が外れてしまう。しかしながら、両者の回動方向が互いに反対であるため、衝撃により両者に互いに反対方向の回転モーメントが同時に発生する可能性は極めて低い。
すなわち紙幣カセット19は、ロック爪51Aをステージギア41に歯合させたロック状態に維持してステージ33の移動を防止できるので、紙幣BLを圧縮して整然と集積した状態に維持することができる。
またロック保持体52は、図示しないスプリングにより時計方向R1に付勢されると共に閉塞形態において前扉31のロック保持突起31Bにより保持位置に遷移するようにした。このためロック保持体52は、当該前扉31が開放されるだけで、第1許容位置に回動することができ、ステージロック51のレバー51Bに対する押し下げ操作を許容することができる。
さらにロック保持体52は、装着形態において解除ポスト22Aを傾斜部52Cと当接させることにより、第2許容位置に回動することができるので、下部ユニット筐体22に対する紙幣カセット19の装着作業が行われるだけで、他の作業を必要とせずに、ステージロック51に対する回動の制限を解除することができる。
このときロック保持体52は、前扉31が閉塞されていることからロック保持突起31Bにより第1許容位置に回動することができないものの、第1許容位置と異なる第2許容位置が設けられたことにより、前扉31が閉塞されていながらステージロック51に対する回動の制限を解除することができる。
さらにロック保持体52は、時計方向R1へ付勢されているため、紙幣カセット19が下部ユニット筐体22から取り外されるときに、解除ポスト22Aと傾斜部52Cとの当接が解消されることにより、時計方向R1へ回動して自動的に保持位置に遷移する。このためロック保持体52は、やはり何ら作業を必要とせずに、ステージロック51のロック爪51Aをステージギア41に歯合させたロック状態に保持することができる。
また紙幣カセット19は、ピッカローラロック56にピッカローラギア47と歯合するロック爪56Aを設け、軸56Xを中心に当該ピッカローラロック56を時計方向R1又は反時計方向R2へ回動させるようにした。
ピッカローラロック56は、スプリングにより反時計方向R2へ付勢されることにより常時反時計方向R2へ付勢されており、このときロック爪56Aをピッカローラギア47に歯合させてロック状態とし、ピッカローラ34の回転を制限する。
またピッカローラロック56は、紙幣カセット19の開放形態においてレバー51Bが下方向へ押し下げられたとき、及び装着形態において連動体54が上方向へ押し上げられたときに、時計方向R1へ回動され、ロック爪56Aをピッカローラギア47から引き離してロック解除状態とし、ピッカローラ34を自由に回転させる。
これによりピッカローラロック56は、開放形態においてレバー51Bが操作されていないとき及び紙幣カセット19が閉塞形態であるときに、ピッカローラ34の回転を制限してその位置を保持することができる。
またピッカローラロック56は、紙幣カセット19の開放形態においてステージロック51のレバー51Bが押し下げられると、連動体54により時計方向R1へ回動してロック解除状態となるため、ピッカローラ34を自由に回転させることができる。
さらにピッカローラロック56は、ロック爪56Aをピッカローラギア47に歯合させたロック状態においても、当該ピッカローラギア47の反時計方向R2への回転、すなわちピッカローラ34の外部から紙幣BLを取り込む反時計方向R2への回転のみを許容する(図9、図10)。
このためピッカローラロック56は、開放形態においてレバー51Bが押し下げられていなくとも、ピッカローラギア47やピッカローラ34について一方向への回転を許容しているため、紙幣カセット19に対する保守作業、例えば清掃作業や交換作業等が行われる際に、作業効率を高めることができる。
またピッカローラロック56は、仮に紙幣カセット19の閉塞形態においてピッカローラ駆動孔30Eを介したピッカローラギア47に対する不正な操作がなされたとしても、ピッカローラ34を反時計方向R2のみしか回転させることができないため、紙幣カセット筐体30の受渡口30D(図5)から紙幣BLを繰り出すことが無く、紙幣BLに対するセキュリティを確保することができる。
さらに連動体54は、ステージロック51の回動に連動してピッカローラロック56を回動させるようにした。
これにより紙幣カセット19は、開放形態においてステージロック51のレバー51Bが押し下げられるだけで、当該ステージロック51のロック爪51をステージギア41から引き離してロック解除状態とすると共に、ピッカローラロック56のロック爪56Aもピッカローラギア47から引き離してロック解除状態とすることができる。
また紙幣カセット19は、装着形態において解除ポスト22Bがロック解除孔30Hに挿入されてロック解除体53が上方向U1へ移動されたときにも、同様にステージロック51及びピッカローラロック56の双方についてロック解除状態とすることができる。
以上の構成によれば、ステージロック51は、反時計方向R2へ付勢されてロック爪51Aをステージギア41と歯合させ、ステージ33の移動を制限する。またステージロック51は、時計方向R1へ回動されるとロック爪51Aをステージギア41から引き離してステージ33を自由に移動させる。さらにステージロック51は、ロック爪51が歯合した状態においてステージギア41の反時計方向R2への回転のみ許容してステージ33の上方向への移動を可能とした。これにより紙幣カセット19は、レバー51Bを押し下げてステージ33を下方へ移動させてから、紙幣BLが収納された後に当該ステージ33を上方へ移動させるだけで、当該紙幣BLを整然と且つ圧縮した状態で集積でき、また衝撃が加えられてもステージ33を下方向へ移動させることがない。
[6.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、ピッカローラロック56のロック爪56Aがピッカローラギア47に歯合する箇所の近傍における当該ロック爪56Aの移動方向を、適切に定めることにより、ロックした状態においてピッカローラギア47の時計方向R1への回転を制限しながら反時計方向R2への回転を許容するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えばトルクリミッタを組み込むことにより、ロックした状態においてピッカローラギア47の時計方向R1への回転を制限しながら反時計方向R2への回転を許容するようにしても良い。
また上述した実施の形態においては、ピッカローラロック56を回動させることにより、ロック爪56Aをピッカローラギア47に歯合させ又は引き離すようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば所定の直線方向に沿ってのみ移動する移動体にロック爪56Aを設け、当該ロック爪56Aをこの直線方向に沿って移動させる等、種々の手法によりロック爪56Aをピッカローラギア47に歯合させ又は引き離すようにしても良い。
この場合、図9に示したように、ピッカローラギア47の回転を制限したい方向への回転により接線βの方向に生じる力F1のうち、ロック爪56Aの移動方向を表すδ方向の成分であるδ方向成分F1δが、ピッカローラギア47の回転中心Pへ向かう方向に作用し、且つ図10に示したように、ピッカローラギア47の回転を許容したい方向への回転により接線βの方向に生じる力F2のδ方向成分F2δが、ピッカローラギア47の回転中心Pから離れる方向に作用すれば良い。ステージロック51のロック爪51Aについても同様である。
さらに上述した実施の形態においては、ロック保持体52を回動させることにより保持位置、第1許容位置又は第2許容位置に遷移させるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば所定の移動機構によりロック保持体52を前後方向に移動させることにより各位置に遷移させるようにしても良く、また前扉31の閉塞時及び紙幣カセット19の下部ユニット筐体22への装着時にいずれも共通の許容位置に遷移させることができる場合に、この許容位置又は保持位置の2通りに遷移させるようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、ロック保持体52を保持位置とすることにより閉塞形態においてステージロック51の時計方向R1への回動、すなわちロック解除状態への遷移を防止するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えばスプリング55の復元力が比較的強い場合等に、ロック保持体52を省略するようにしても良い。この場合、ロック保持突起31B及び解除ポスト22A等も省略することができる。
さらに上述した実施の形態においては、紙幣カセット19の外部から駆動されるステージギア41の回転駆動力をステージベルト44等によって伝達することにより、ステージ33を上下方向に移動させるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えばギアや螺旋状の溝が刻まれ回転されるシャフト等、又はこれらの組み合わせにより、ステージギア41の回転駆動力をステージ33に伝達して上下方向へ移動させる等、周知の種々の動力伝達手段を用いるようにしても良い。この場合、ステージギア41の回転とステージ33の移動とが互いに直接的に連動すれば良い。
さらに上述した実施の形態においては、ピッカローラロック56のロック爪56Aをピッカローラギア47に歯合させることによりその回転を制限するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えばピッカローラギア47が紙幣カセット筐体30の外部から容易に回転されないような構造である場合に、ピッカローラロック56及びロック爪56Aを省略しても良い。
さらに上述した実施の形態においては、連動体54によりステージロック51の回動に連動してピッカローラロック56を回動させるようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば連動体54を省略し、ステージロック51の回動とピッカローラロック56の回動とを完全に独立させるようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、紙幣カセット19を下部ユニット筐体22に装着した際に、解除ポスト22A及び22Bを紙幣カセット筐体30内に挿入することによりステージロック51及びピッカローラロック56をそれぞれ回動させてロックを解除するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば搬送M部18側にロック解除ポストを設けておき、紙幣カセット19が下部ユニット筐体22に装着された後、搬送M部18が回動されて閉塞されることによりロック解除ポストが紙幣カセット筐体30内に挿入されるようにしても良く、或いは紙幣カセット19内にソレノイドを組み込み、紙幣カセット19が下部ユニット筐体22に装着され電源が供給されたときにソレノイドを動作させることにより、ステージロック51及びピッカローラロック56をそれぞれ回動させる等、種々の手法により紙幣カセット19の装着と同時又はその後に各ロックを解除するようにしても良い。
さらには、各ロックの解除を紙幣カセット19の装着と連動させなくても良く、例えば紙幣カセット19にロック解除用の錠を設けておき、所定の鍵を用いてこの錠を解錠することによりロックを解除してから紙幣カセット19を下部ユニット筐体22へ装着するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、金融機関等において顧客との間で現金に関する取引を行う現金自動預払機1の紙幣入出金機10において、下部ユニット筐体22に装着された紙幣カセット19に媒体としての紙幣を収納するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば金融機関等において職員が現金に関する各種処理を行うための出納システムにおいて、所定の筐体に装着される紙幣カセットに適用するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、紙幣の入金処理や出金処理等を行う紙幣入出金機10において、下部ユニット筐体22に装着した紙幣カセット19に媒体としての紙幣を収納するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば債権、証書、商品券、金券や入場券等のような種々の紙葉状の媒体を取り扱う種々の装置において、媒体を集積して収納したカセットを所定の筐体に装着して運用するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、筐体としての紙幣カセット筐体30及びフレーム32と、ステージとしてのステージ33と、ステージ移動制限部としてのステージギア41及びステージロック51とによって媒体収納装置としての紙幣カセット19を構成する場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる筐体と、ステージと、ステージ移動制限部とによって媒体収納装置を構成するようにしても良い。