以下、本発明の実施の形態によるサスペンション制御装置を、例えば4輪自動車に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図中、1は車両のボディを構成する車体で、該車体1の下側には、例えば左,右の前輪と左,右の後輪(以下、総称して車輪2という)が設けられ、該車輪2はタイヤ3を含んで構成されている。このとき、タイヤ3は、路面の細かい凹凸を吸収するばねとして作用する。
4は車両のばね上となる車体1とばね下となる車輪2との間に介装して設けられたサスペンション装置で、該サスペンション装置4は、懸架ばね5(以下、ばね5という)と、該ばね5と並列になって車体1と車輪2との間に設けられたショックアブソーバとしての減衰力調整式緩衝器(以下、緩衝器6という)とにより構成されている。なお、図1中では1組のサスペンション装置4を、車体1と車輪2との間に設けた場合を例示している。しかし、サスペンション装置4は、例えば4輪の車輪2と車体1との間に個別に独立して合計4組設けられるもので、このうちの1組のみを図1では模式的に図示している。
ここで、サスペンション装置4の緩衝器6は、減衰力調整式の油圧緩衝器を用いて構成される。この緩衝器6には、発生減衰力の特性(減衰力特性)をハードな特性(硬特性)からソフトな特性(軟特性)に連続的に調整するため、減衰力調整バルブ、ソレノイド等からなるアクチュエータ7が付設されている。そして、緩衝器6は、アクチュエータ7への指令電流(後述の指令電流値I)に応じて減衰力特性を調節可能としている。
なお、減衰力調整用のアクチュエータ7は、減衰力特性を連続的でなくとも、2段階又は複数段階に調整可能なものであってもよい。また、緩衝器6は、減衰力を切換えられればよく、空圧ダンパや電磁ダンパであってもよい。
8は車体1に設けられたばね上加速度センサで、該ばね上加速度センサ8は、車両のばね上側となる車体1側で上,下方向の振動加速度を検出するため、例えば緩衝器6の近傍となる位置で車体1に取付けられている。そして、ばね上加速度センサ8は、上,下方向の振動加速度を検出し、その検出信号を後述のコントローラ10に出力する。
9は車両の車輪2側に設けられたばね下加速度センサで、このばね下加速度センサ9は、車両のばね下側となる車輪2側で上,下方向の振動加速度を検出し、その検出信号を後述のコントローラ10に出力するものである。
10はマイクロコンピュータ等により構成される制御手段としてのコントローラで、該コントローラ10は、その入力側が加速度センサ8,9等に接続され、出力側が緩衝器6のアクチュエータ7等に接続されている。また、コントローラ10は、ROM、RAM等からなる記憶部10Aを有しており、この記憶部10Aには、図3〜5に示す後述の処理プログラムに加えて、後述の閾値K1、閾値K2、規定時間Tm1、ばね上速度V1と目標減衰力Fとの関係を示すゲインマップ、目標減衰力F、補正相対速度V2ofsと指令電流値Iとの関係を示す減衰力マップ等が格納されている。
ここで、コントローラ10は、図2に示すように、積分器11,12、減算器13、目標減衰力算出部14、相対速度補正部15、制御信号出力部16等を備えている。そして、コントローラ10の積分器11は、ばね上加速度センサ8からの検出信号を積分することによって、車体1の上,下方向に対する速度となるばね上速度V1を演算する。このため、ばね上加速度センサ8と積分器11とによって上下速度検出部が構成されると共に、積分器11は、車体側上下速度となるばね上速度V1を出力する。
一方、減算器13は、ばね上加速度センサ8からの検出信号からばね下加速度センサ9からの検出信号を減算し、ばね上加速度とばね下加速度との差分を演算する。このとき、この差分値は、車体1と車輪2との間の相対加速度に対応する。そして、積分器12は、減算器13から出力された相対加速度を積分し、車体1と車輪2との間の上,下方向の相対速度V2を演算する。このため、ばね上加速度センサ8、ばね下加速度センサ9、減算器13および積分器12によって相対速度検出部が構成されると共に、積分器12は、相対速度V2を出力する。
目標減衰力算出部14は、ばね上速度V1に基づいて緩衝器6に発生させる目標減衰力Fを算出するものである。ここで、目標減衰力算出部14は、例えば、ばね上速度V1と目標減衰力Fとの関係を示すスカイフック制御理論によるゲインマップ等により構成されている。具体的には、目標減衰力算出部14は、例えば、目標減衰力Fがばね上速度V1に比例して増加または減少するように、ばね上速度V1にゲインを乗算した値を目標減衰力Fとして出力するように構成する。そして、目標減衰力算出部14は、ばね上速度V1を変換して目標減衰力Fを出力すると共に、この目標減衰力Fをばね上速度V1に応じてリアルタイムに変更する。
相対速度補正部15は、相対速度V2を入力値として補正相対速度V2ofsを出力するものである。ここで、相対速度補正部15は、後述の図5に示す相対速度補正処理を実行することにより、相対速度V2を補正相対速度V2ofsに変換し、該補正相対速度V2ofsを指令値として後述の制御信号出力部16に出力する。
具体的には、相対速度V2の周波数が高周波と判断されるときには補正相対速度V2ofsとして所定の値(例えば、直前の制御周期の補正相対速度V2ofs_Z)を維持し、相対速度V2の周波数が低周波と判断されるときには相対速度V2の符号(正負)の切換わりに応じて補正相対速度V2ofsの符号(正負)も切換わるように構成している。これにより、相対速度補正部15から制御信号出力部16に出力される指令値(補正相対速度V2ofs)が、高周波のときはその符号(正負)が切換わらない(正側指令値または負側指令値が維持される)ようにし、低周波のときには相対速度V2の符号(正負)の切換わりに応じてその符号(正負)が切換わる(正側指令値から負側指令値に、または、負側指令値から正側指令値に切換わる)ようにしている。
ここで、相対速度V2の周波数が高周波であるか低周波であるかの判断は、その周波数が所定の周波数以下であるか否か(所定の周波数を超えたか否か)を判定することにより行うことができる。より具体的には、相対速度V2が0ないし0を超えてから(通過してから)次の0まで(0を通過するまで)の間に規定時間Tm1経過したか否かを判定し、規定時間Tm1経過していな場合は高周波、規定時間Tm1経過した場合は低周波と判断する。この場合、所定の周波数ないし規定時間Tm1は、例えば、相対速度補正部15から出力される補正相対速度V2ofsにより緩衝器6の発生減衰力がハードとソフトとの間で頻繁に切換るという問題を抑えることができ、かつ、相対速度V2の変化が緩やかなときに、ハードとソフトとの間の切換えが遅れるという問題を抑えることができる値に適宜設定する。
制御信号出力部16は、減衰力調整式の緩衝器6をスカイフック理論に適合させるように制御するための制御信号(指令電流)を出力する。即ち、制御信号出力部16は、アクチュエータ7への指令電流を制御する指令電流制御手段を構成するもので、目標減衰力Fと補正相対速度V2ofsとに基づいて緩衝器6の減衰力特性を可変に制御する制御信号としての指令電流値Iを出力する。
ここで、制御信号出力部16は、例えば目標減衰力F、補正相対速度V2ofsと指令電流値Iとの関係を示す減衰力マップ等により構成されている。そして、制御信号出力部16は、目標減衰力Fと指令電流値Iとの関係を補正相対速度V2ofsに従って可変に設定するもので、目標減衰力算出部14からの目標減衰力Fと相対速度補正部15からの補正相対速度V2ofsとに基づいて、緩衝器6のアクチュエータ7に制御信号としての指令電流値Iを出力する。
例えば、補正相対速度V2ofsが正側(伸び側)となる場合に、ばね上速度V1が正側(上向き側)となるときには、目標減衰力Fが大きくなるに従って指令電流値Iを大きくして減衰力特性をハードな特性(硬特性)に設定する。これに対して、ばね上速度V1が負側(下向き側)となるときには、指令電流値Iを小さい値にして減衰力特性をソフトな特性に設定する。
一方、補正相対速度V2ofsが負側(縮み側)となる場合に、ばね上速度V1が正側(上向き側)となるときには、指令電流値Iを小さい値にして減衰力特性をソフトな特性に設定する。これに対して、ばね上速度V1が負側(下向き側)となるときには、目標減衰力Fが小さく(マイナス方向に大きく)なるに従って指令電流値Iを大きくして減衰力特性をハードな特性に設定する。
以上により、緩衝器6の発生減衰力は、アクチュエータ7に供給された指令電流値Iに従ってハードとソフトとの間で連続的、または複数段で可変に制御(調整)される。
本実施の形態によるサスペンション制御装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、コントローラ10を用いて緩衝器6の減衰力特性を可変に制御する処理について説明する。
まず、図3に示す制御処理が車両のエンジン始動に伴う電力供給を受けて開始されると、ステップ1でコントローラ10の初期設定を行う。そして、ステップ2では、例えば5〜10ms程度の制御周期に達したか否かを判定し、「NO」と判定する間は制御周期に達するまで待機する。一方、ステップ2で「YES」と判定し、制御周期に達したときには、次なるステップ3に移って緩衝器6のアクチュエータ7を駆動する。
次に、ステップ4ではセンサ値を入力するため、ばね上加速度センサ8からばね上(車体1)側の上,下方向の振動加速度(検出信号)を読込むと共に、ばね下加速度センサ9からばね下(車輪2)側の上,下方向の振動加速度(検出信号)を読込む。そして、次のステップ5では、コントローラ10に設けられた積分器11により、ばね上加速度センサ8による振動加速度の検出信号を積分し、車体1の上,下方向の速度をばね上速度V1として算出する。
次に、ステップ6では、コントローラ10に設けられた目標減衰力算出部14により、ステップ5で算出されたばね上速度V1を、例えばゲインマップを用いて目標減衰力Fに変換する(ばね上速度V1に基づいて目標減衰力Fを算出する)。そして、次のステップ7では、後述の図4および図5の相対速度算出処理、相対速度補正処理に基づいて、補正相対速度V2ofsを算出する。即ち、コントローラ10に設けられた減算器13と積分器12とにより算出された車体1と車輪2との間の上,下方向の相対速度V2を、同じくコントローラ10に設けられた相対速度補正部15で補正することにより、補正相対速度V2ofsを算出する。
そして、ステップ8では、コントローラ10に設けられた制御信号出力部16により、ステップ6で算出された目標減衰力Fとステップ7で算出された補正相対速度V2ofsとに基づいて制御ゲイン(減衰力マップ)の設定を行い、続くステップ9では、制御ゲインの設定値に基づいて、緩衝器6の減衰力特性を可変に制御するための制御信号(指令電流値I)を演算して求める。即ち、スカイフック理論に基づいて、ばね上速度V1の大きさおよび方向(上向き、下向き)に対応する目標減衰力Fと、補正相対速度V2ofsの大きさおよび方向(伸び、縮み)とから、緩衝器6のアクチュエータ7に出力する制御信号としての指令電流値Iを求める。
そして、ステップ9の制御演算で求められた制御信号(指令電流値I)は、前記ステップ2で「YES」と判定される制御周期に達する度毎に、次なるステップ3の処理で、緩衝器6のアクチュエータ7を駆動制御するために用いられる。これにより、緩衝器6の減衰力特性は、スカイフック理論に基づいて、ハードな特性(硬特性)とソフトな特性(軟特性)との間で可変となって連続的に制御されるものである。
次に、図4に示す相対速度算出処理では、ステップ11で相対速度を算出する。即ち、コントローラ10に設けられた減算器13により、ばね上加速度センサ8による車体1側の上,下方向の振動加速度の検出信号からばね下加速度センサ9による車輪2側の上,下方向の振動加速度の検出信号を減算することにより、車体1と車輪2との間の相対加速度を算出し、この相対加速度を積分器12により積分して車体1と車輪2との間の上,下方向の相対速度V2を算出する。そして、続くステップ12で相対速度補正処理を、後述の図5に示す如く実行し、ステップ13でメインルーチン(例えば、図3に示すメインの制御処理)にリターンする。
次に、図5に示す相対速度補正処理について説明する。この図5の相対速度補正処理は、図6に示すように相対速度V2を(実施の形態による)補正相対速度V2ofsに変換して出力するための処理を行うものである。ここで、図5に示す本実施の形態による相対速度補正処理を説明する前に、本実施の形態による相対速度補正処理に先立って考えた、図7に示す第1の比較例による相対速度補正処理と、図9に示す第2の比較例による相対速度補正処理について説明する。
まず、図7に示す第1の比較例による相対速度補正処理は、図8に示すように相対速度V2を補正相対速度V2ofs′に変換して出力するもので、相対速度V2に不感帯をもたせる処理を行うものである。より具体的には、相対速度V2が0以上で閾値K1以下の場合は補正相対速度V2ofs′としてK1を出力し、相対速度V2が0以下で閾値K2以上の場合は補正相対速度V2ofs′としてK2を出力するものである。相対速度V2が閾値K1よりも大きい場合と閾値K2よりも小さい場合は、補正相対速度V2ofs′としてそのまま相対速度V2を出力する。
なお、閾値K1は例えば0以上の所定の値とし、閾値K2は例えば0以下の所定の値としている。そして、これら閾値K1,K2は、0付近での相対速度V2の微小な変化を有効に抑える(丸める)ことができる値に設定されるものである。
図7に示す第1の比較例による相対速度補正処理では、まず、ステップ101で相対速度V2が0以上であるか否かを判定する。即ち、ステップ101では、図4に示す相対速度算出処理のステップ11で算出された相対速度V2が0以上であるか否かを判定する。そして、ステップ101で、相対速度が0以上であると判定された場合には、ステップ102に進み、相対速度V2が閾値K1以上であるか否かを判定する。このステップ102で、相対速度V2が閾値K1以上であると判定された場合には、ステップ103に進み、補正相対速度V2ofs′は図4のステップ11で算出された相対速度V2とする(補正相対速度V2ofs′=相対速度V2)。そして、続くステップ104で、メインルーチン(例えば、図4に示すメインの制御処理)にリターンする。これに対して、ステップ102で、相対速度V2が閾値K1未満であると判定された場合には、ステップ105に進み、補正相対速度V2ofs′は閾値K1とする(補正相対速度V2ofs′=閾値K1)。次いで、ステップ104で、メインルーチン(例えば、図4に示すメインの制御処理)にリターンする。
一方、ステップ101で、相対速度が0未満であると判定された場合には、ステップ106に進み、相対速度V2が閾値K2以下であるか否かを判定する。このステップ106で、相対速度V2が閾値K2以下であると判定された場合には、ステップ107に進み、補正相対速度V2ofs′は図4のステップ11で算出された相対速度V2とする(補正相対速度V2ofs′=相対速度V2)。そして、ステップ104で、メインルーチン(例えば、図4に示すメインの制御処理)にリターンする。これに対して、ステップ106で、相対速度V2が閾値K2よりも大きいと判定された場合には、ステップ108に進み、補正相対速度V2ofs′は閾値K2とする(補正相対速度V2ofs′=閾値K2)。次いで、ステップ104で、メインルーチン(例えば、図4に示すメインの制御処理)にリターンする。
このような図7に示す第1の比較例による相対速度補正処理を行うと、例えば車両の微振動やノイズ等に伴って、相対速度V2が0付近で正の値(プラス)と負(マイナス)の値とに頻繁に切換った場合に、補正相対速度V2ofs′も正の値と負の値との間で頻繁に切換る。
即ち、図6に示す第1の比較例による補正相対速度V2ofs′の特性線に表されるように、補正相対速度V2ofs′が正の値と負の値との間で頻繁に切換る。そして、このような補正相対速度V2ofs′を用いて、図3のステップ8、9で緩衝器6のアクチュエータ7に出力する制御信号(指令電流値I′)を求めると、この指令電流値I′は、図6に示す第1の比較例による指令電流値I′の特性線として表されるように、補正相対速度V2ofs′の正負の切換りに応じてその値が頻繁に切換わる。
このような指令電流値I′に基づいて、図3のステップ3でアクチュエータ7を駆動すると、緩衝器6の発生減衰力がハードとソフトとの間で頻繁に切換り、振動や異音の発生原因となる。そこで、このような振動や異音の発生原因となる指令電流値I′のチャタリングを防止すべく、次に、図9に示す第2の比較例による相対速度補正処理を考えた。
この図9に示す第2の比較例による相対速度補正処理は、図10に示すように、相対速度V2を補正相対速度V2ofs″に変換して出力するもので、相対速度V2にヒステリシスをもたせる処理を行うものである。より具体的には、相対速度V2が閾値K1よりも小さく閾値K2よりも大きい範囲では、補正相対速度V2ofs″として正負が反転しない(0を跨がない)値を出力するものである。
図9に示す第2の比較例による相対速度補正処理は、図7に示す第1の比較例による相対速度補正処理にステップ118以降の処理を追加したものである。即ち、図9に示す第2の比較例による相対速度補正処理のステップ111ないしステップ117は、上述の図7に示す第1の比較例による相対速度補正処理のステップ101ないしステップ108(ステップ104を除く)と同様である。このため、以下、ステップ118以降の処理を中心に説明する。
図9のステップ113、ステップ114、ステップ116、ステップ117の何れかで、補正相対速度V2ofs″を求めたら、何れもステップ118に進む。このステップ118以降の処理が、補正相対速度V2ofs″にヒステリシスを設けるための処理、即ち、補正相対速度V2ofs″の正負が反転しないようにするための処理となる。
ステップ118では、直前の(1つ前の制御周期の)相対速度V2が閾値K2よりも大きいか否か、または、閾値K1以上であるか否かを判定する。具体的には、ステップ118では、直前の相対速度判定係数S_zが0より大きいか否か(S_zが1か−1かの何れであるか)を判定する。このとき、現在の制御周期が最初の制御周期である(直前の制御周期がない)場合は、直前の相対速度判定係数S_zは、例えば仮の値として1(または−1)とする。このステップ118で、直前の相対速度判定係数S_zが0より大きい、即ち、相対速度判定係数S_zが1である(直前の相対速度V2が閾値K2よりも大きい、または、閾値K1以上である)と判定された場合には、ステップ119に進み、現時点の(現在の制御周期の)相対速度V2が閾値K2よりも大きいか否かを判定する。
そして、ステップ119で、現時点の相対速度V2が閾値K2よりも大きいと判定された場合には、ステップ120に進み、相対速度判定係数Sを1に設定する(S=1)。これに対して、ステップ119で、現時点の相対速度V2が閾値K2以下であると判定された場合には、ステップ121に進み、相対速度判定係数Sを−1に設定する(S=−1)。
一方、ステップ118で、直前の相対速度判定係数S_zが0以下である、即ち、相対速度判定係数S_zが−1である(直前の相対速度V2が閾値K2以下である、または、閾値K1よりも小さい)と判定された場合には、ステップ122に進み、現時点の(現在の制御周期の)相対速度V2が閾値K1よりも小さいか否かを判定する。
そして、ステップ122で、現時点の相対速度V2が閾値K1よりも小さいと判定された場合には、ステップ123に進み、相対速度判定係数Sを−1に設定する(S=−1)。これに対して、ステップ122で、現時点の相対速度V2が閾値K1以上であると判定された場合には、ステップ124に進み、相対速度判定係数Sを1に設定する(S=1)。
上述のように、ステップ120、ステップ121、ステップ123、ステップ124の何れかで、相対速度判定係数Sを設定したならば、何れもステップ125に進む。このステップ125では、直前の相対速度判定係数S_zと現時点の相対速度判定係数Sが同じか否かを判定する。そして、このステップ125で、直前の相対速度判定係数S_zと現時点の相対速度判定係数Sが同じであると判定された場合には、ステップ126に進み、上述のステップ113、ステップ114、ステップ116、ステップ117の何れかで求めた現時点の補正相対速度V2ofs″の絶対値に相対速度判定係数Sを乗算することにより、現時点の補正相対速度V2ofs″を更新する。
次いで、ステップ127で、メインルーチン(例えば、図4に示すメインの制御処理)にリターンする。この場合は、図5に示す相対速度補正処理により算出される補正相対速度V2ofs″は、ステップ126で更新された補正相対速度V2ofs″となる。
一方、ステップ125で、直前の相対速度判定係数S_zと現時点の相対速度判定係数Sが同じでないと判定された場合には、ステップ128に進み、直前の相対速度判定係数S_zを現時点の相対速度判定係数Sに更新する。そして、ステップ126に進み、上述のステップ113、ステップ114、ステップ116、ステップ117の何れかで求めた現時点の補正相対速度V2ofs″の絶対に相対速度判定係数Sを乗算することにより、現時点の補正相対速度V2ofs″を更新する。
このような図9に示す第2の比較例による相対速度補正処理を行うと、図6に示す第2の比較例による補正相対速度V2ofs′の特性線に表されるように、第1の比較例に比べ、補正相対速度V2ofs″が正の値と負の値との間で頻繁に切換ることを低減することができる。
ところで、このような図9に示す第2の比較例による相対速度補正処理を行うと、例えば相対速度V2の変化が緩やかなときに、緩衝器6の発生減衰力の切換えが遅れる、即ち、ハードとソフトとの間の切換えが遅れる虞がある。そこで、本発明者は、このような緩衝器6の発生減衰力の切換えが遅れることを防止すべく、図5に示す本実施の形態による相対速度補正処理を考えた。
以下、図5に示す本実施の形態による相対速度補正処理を説明する。なお、図5に示す本実施の形態による相対速度補正処理のステップ21ないしステップ27は、上述の図7に示す第1の比較例による相対速度補正処理のステップ101ないしステップ108(ステップ104を除く)と同様であるため、ステップ21ないしステップ27の説明は省略し、ステップ28以降の処理を中心に説明する。
図5のステップ23、ステップ24、ステップ26、ステップ27の何れかで、補正相対速度V2ofsを求めたら、何れもステップ28に進む。このステップ28では、カウント手段としての監視タイマのカウントTmをアップする(カウントを1プラスする)。このステップ28で、監視タイマのカウントTmをアップしたならば、ステップ29に進み、補正相対速度V2ofsが正の値(+値)から負の値(−値)に変化したか否かを判定する。この判定は、直前(1つ前)の制御周期の補正相対速度V2ofs_Zと現在の制御周期の補正相対速度V2ofsとから判定する。このステップ29で、補正相対速度V2ofsが正の値から負の値に変化した、即ち、直前(1つ前)の制御周期の補正相対速度V2ofs_Zが正の値で現在の制御周期の補正相対速度V2ofsが負の値と判定された場合は、ステップ30に進み、監視タイマのカウントTmが規定時間Tm1以内か否かを判定する。
このステップ30は、相対速度V2の周波数が高周波であるか低周波であるかを判定するもので、監視タイマによるカウントTmが規定時間Tm1以内であれば高周波、監視タイマによるカウントTmが規定時間Tm1を経過している(超えている)ときには低周波と判断する。このようなステップ30で、監視タイマのカウントTmが規定時間Tm1以内である、即ち、相対速度V2の周波数が高周波である場合は、ステップ31に進み、上述のステップ23、ステップ24、ステップ26、ステップ27の何れかで求めた現時点の補正相対速度V2ofsを、直前(1つ前)の制御周期の補正相対速度V2ofs_Zに更新する。これにより、相対速度V2の周波数が高周波であるときは、補正相対速度V2ofsとして所定の値、即ち、直前の制御周期の補正相対速度V2ofs_Z(正の値、正側指令値)を維持できる。
ステップ31で補正相対速度V2ofsを(1つ前)の制御周期の補正相対速度V2ofs_Zに更新したならば、ステップ32で、(1つ前)の制御周期の補正相対速度V2ofs_Zを現在の補正相対速度V2ofsに更新する。次いで、後述するステップ36ないしステップ39で監視タイマのカウントTmをリセットするか否かの処理を実行してから、ステップ40で、メインルーチン(例えば、図4に示すメインの制御処理)にリターンする。この場合、図5に示す相対速度補正処理により算出される補正相対速度V2ofsは、ステップ31で更新された補正相対速度V2ofsとなる。
一方、ステップ30で、監視タイマのカウントTmが規定時間Tm1を超えている、即ち、相対速度V2の周波数が低周波である場合は、ステップ31に進むことなくステップ32に進む。そして、このステップ32で、(1つ前)の制御周期の補正相対速度V2ofs_Zを現在の補正相対速度V2ofsに更新し、後述するステップ36ないしステップ39で監視タイマのカウントTmをリセットするか否かの処理を実行してから、ステップ40で、メインルーチン(例えば、図4に示すメインの制御処理)にリターンする。
この場合、図5に示す相対速度補正処理により算出される補正相対速度V2ofsは、上述のステップ23、ステップ24、ステップ26、ステップ27の何れかで求めた現時点の補正相対速度V2ofsとなる。これにより、相対速度V2の周波数が低周波であるときは、相対速度V2の符号(正負)の切換わりに応じて補正相対速度V2ofsの符号(正負)も切換わる、即ち、補正相対速度V2ofsが正の値(正側指令値)から負の値(負側指令値)に切換わる。
一方、ステップ29で、補正相対速度V2ofsが正の値から負の値に変化していないと判定された場合は、ステップ33に進み、補正相対速度V2ofsが負の値(−値)から正の値(+値)に変化したか否かを判定する。この判定は、直前(1つ前)の制御周期の補正相対速度V2ofs_Zと現在の制御周期の補正相対速度V2ofsとから判定する。
このステップ33で、補正相対速度V2ofsが負の値から正の値に変化した、即ち、直前(1つ前)の制御周期の補正相対速度V2ofs_Zが負の値で現在の制御周期の補正相対速度V2ofsが正の値と判定された場合は、ステップ34に進み、監視タイマのカウントTmが規定時間Tm1以内か否かを判定する。
このステップ34は、上述のステップ30と同様に、相対速度V2の周波数が高周波であるか低周波であるかを判定するもので、監視タイマによるカウントTmが規定時間Tm1以内であれば高周波、監視タイマによるカウントTmが規定時間Tm1を経過している(超えている)ときには低周波と判断する。このようなステップ34で、監視タイマのカウントTmが規定時間Tm1以内である、即ち、相対速度V2の周波数が高周波である場合は、ステップ35に進み、上述のステップ23、ステップ24、ステップ26、ステップ27の何れかで求めた現時点の補正相対速度V2ofsを、直前(1つ前)の制御周期の補正相対速度V2ofs_Zに更新する。これにより、相対速度V2の周波数が高周波であるときは、補正相対速度V2ofsとして所定の値、即ち、直前の制御周期の補正相対速度V2ofs_Z(負の値、負側指令値)を維持できる。
ステップ35で補正相対速度V2ofsを(1つ前)の制御周期の補正相対速度V2ofs_Zに更新したならば、ステップ32で、(1つ前)の制御周期の補正相対速度V2ofs_Zを現在の補正相対速度V2ofsに更新する。次いで、後述するステップ36ないしステップ39で監視タイマのカウントTmをリセットするか否かの処理を実行してから、ステップ40で、メインルーチン(例えば、図4に示すメインの制御処理)にリターンする。この場合、図5に示す相対速度補正処理により算出される補正相対速度V2ofsは、ステップ35で更新された補正相対速度V2ofsとなる。
一方、ステップ34で、監視タイマのカウントTmが規定時間Tm1を超えている、即ち、相対速度V2の周波数が低周波である場合は、ステップ35に進むことなくステップ32に進む。そして、このステップ32で、(1つ前)の制御周期の補正相対速度V2ofs_Zを現在の補正相対速度V2ofsに更新し、後述するステップ36ないしステップ39で監視タイマのカウントTmをリセットするか否かの処理を実行してから、ステップ40で、メインルーチン(例えば、図4に示すメインの制御処理)にリターンする。
この場合、図5に示す相対速度補正処理により算出される補正相対速度V2ofsは、上述のステップ23、ステップ24、ステップ26、ステップ27の何れかで求めた現時点の補正相対速度V2ofsとなる。これにより、相対速度V2の周波数が低周波であるときは、相対速度V2の符号(正負)の切換わりに応じて補正相対速度V2ofsの符号(正負)も切換わる、即ち、補正相対速度V2ofsが負の値(負側指令値)から正の値(正側指令値)に切換わる。
一方、ステップ33で、補正相対速度V2ofsが負の値から正の値に変化していないと判定された場合は、直前(1つ前)の制御周期の補正相対速度V2ofs_Zと現在の制御周期の補正相対速度V2ofsとで符号(正負)が換わらないので、ステップ30やステップ34で相対速度V2の周波数が高周波か低周波かを判定することなくステップ32に進む。そして、このステップ32で、(1つ前)の制御周期の補正相対速度V2ofs_Zを現在の補正相対速度V2ofsに更新し、後述するステップ36ないしステップ39で監視タイマのカウントTmをリセットするか否かの処理を実行してから、ステップ40で、メインルーチン(例えば、図4に示すメインの制御処理)にリターンする。
この場合、図5に示す相対速度補正処理により算出される補正相対速度V2ofsは、上述のステップ23、ステップ24、ステップ26、ステップ27の何れかで求めた現時点の補正相対速度V2ofsとなる。なお、この補正相対速度V2ofsの符号(正負)は、直前(1つ前)の制御周期の補正相対速度V2ofs_Zの符号(正負)と同じである(正負は切換わらない)。
次に、ステップ36ないしステップ39の処理、即ち、監視タイマのカウントTmをリセットするか否かの処理を説明する。この処理は、相対速度V2が0ないし0を超えてから(通過してから)次の0まで(0を通過するまで)の間を計測するために、相対速度V2が0ないし0を超えたときに、監視タイマのカウントTmをリセットし、0からカウントを開始できるようにするものである。
ステップ32で、(1つ前)の制御周期の補正相対速度V2ofs_Zを現在の補正相対速度V2ofsに更新したならば、続くステップ36で、相対速度V2が0か否かを判定する。即ち、ステップ36では、図4に示す相対速度算出処理のステップ11で算出された相対速度V2が0であるか否かを判定する。このステップ36で、相対速度V2が0であると判定された場合は、ステップ37に進み、カウント手段としての監視タイマのカウントTmをリセットする。そして、このステップ37で監視タイマのカウントTmをリセットしてから、ステップ40に進み、メインルーチン(例えば、図4に示すメインの制御処理)にリターンする。この場合は、次の制御周期のステップ28で、監視タイマのカウントTmが0から1プラスされる。
一方、ステップ36で、相対速度V2が0ではないと判定された場合は、ステップ38に進み、相対速度V2が正の値(+値)から負の値(−値)に変化したか否かを判定する。この判定は、直前(1つ前)の制御周期の相対速度V2と現在の制御周期の相対速度V2とから判定する。このステップ38で、相対速度V2が正の値から負の値に変化した、即ち、直前(1つ前)の制御周期の相対速度V2が正の値で現在の制御周期の相対速度V2が負の値と判定された場合は、ステップ37に進み、監視タイマのカウントTmをリセットする。そして、このステップ37で監視タイマのカウントTmをリセットしてから、ステップ40に進み、メインルーチン(例えば、図4に示すメインの制御処理)にリターンする。
一方、ステップ38で、相対速度V2が正の値から負の値に変化していないと判定された場合は、ステップ39に進み、相対速度V2が負の値(−値)から正の値(+値)に変化したか否かを判定する。この判定も、直前(1つ前)の制御周期の相対速度V2と現在の制御周期の相対速度V2とから判定する。このステップ39で、相対速度V2が負の値から正の値に変化した、即ち、直前(1つ前)の制御周期の相対速度V2が負の値で現在の制御周期の相対速度V2が正の値と判定された場合は、ステップ37に進み、監視タイマのカウントTmをリセットする。そして、ステップ37で監視タイマのカウントTmをリセットしてから、ステップ40に進み、メインルーチン(例えば、図4に示すメインの制御処理)にリターンする。
一方、ステップ39で、相対速度V2が負の値から正の値に変化していないと判定された場合は、相対速度V2が0ないし0を超えた(通過した)ときではないと判断できるから、ステップ37に進むことなくステップ40に進み、メインルーチン(例えば、図4に示すメインの制御処理)にリターンする。この場合は、次の制御周期のステップ28で、監視タイマのカウントTmが、直前の制御周期のカウントTmに1プラスされる。
以上のように、本実施の形態によれば、コントローラ10の相対速度補正部15で、図5に示す相対速度補正処理が行われることにより、図6に特性線図を示すように、入力値としての相対速度V2が補正相対速度V2ofsに変換されて出力される。
即ち、上述した図5の相対速度補正処理が行われることにより、相対速度V2が0付近で正の値(プラス)と負(マイナス)の値とに頻繁に変化しても、この相対速度V2の周波数が高周波と判断される場合には、相対速度補正部15からは、この高周波の変化が無視された補正後の補正相対速度V2ofsが出力される(補正相対速度V2ofsとして所定の値が維持される)。このため、入力値としての相対速度V2が0付近で頻繁に変化しても、目標減衰力Fと補正相対速度V2ofsとに基づいて制御信号出力部16から出力される緩衝器6の制御信号(指令電流値I)が頻繁に切換る(チャタリングする)ことを抑えられる。
より具体的に説明すると、図6に示すように、相対速度V2が5回目に0を通過するときに、タイマ(監視タイマのカウント)Tmが規定時間Tm1以内になり、それ以降の補正相対速度V2ofsが、直前の制御周期の補正相対速度V2ofs_Zである閾値K1(ないし閾値K1以上の値)に保持される。これにより、補正相対速度V2ofsが0付近で頻繁に変化することを低減でき、この補正相対速度V2ofsと目標減衰力Fとに基づいて制御信号出力部16から出力される緩衝器6の制御信号(指令電流値I)も、頻繁に切換る(チャタリングする)ことを低減できる。
この結果、緩衝器6の発生減衰力がハードとソフトとの間で頻繁に切換ることを低減でき、振動や異音の発生を抑えられる。また、緩衝器6の発生減衰力を調節するアクチュエータ7の切換回数を少なくできるため、このアクチュエータ7の耐久性の向上も図ることができる。また、制御信号(指令電流値I)の切換を少なくできるため、電気的なノイズが発生することも抑えられる。
図11は、本実施の形態による相対速度補正処理により相対速度V2を補正した場合と、第1の比較例による相対速度補正処理により相対速度V2を補正した場合の、実車試験の結果を示している。この図11からも明らかなように、本実施の形態によれば、制御信号出力部16から出力される緩衝器6の制御信号(指令電流値I)が頻繁に切換る(チャタリングする)ことを低減できる。
また、本実施の形態によれば、相対速度V2の周波数が低周波と判断される場合には、相対速度補正部15からは、直前の制御周期の補正相対速度V2ofs_Zとは正負が相違する現在の補正相対速度V2ofsが迅速に出力される。即ち、図6に示すように、相対速度V2の周波数が低周波と判断される場合、より具体的には、相対速度V2が0を通過する1回目から4回目までの場合は、タイマ(監視タイマのカウント)Tmが規定時間Tm1を超えるため、補正相対速度V2ofsの符号(正負)が切換わる。このため、第2の比較例のように、相対速度V2が閾値K1よりも小さく閾値K2よりも大きい範囲で正負が反転しない補正相対速度V2ofs″を出力するように構成した場合に比べ、制御信号(指令電流値I)の遅れを低減することができる。この結果、乗り心地を向上することができる。
図12は、本実施の形態による相対速度補正処理により相対速度V2を補正した場合と、第2の比較例による相対速度補正処理により相対速度V2を補正した場合の、実車試験の結果を示している。この図12からも明らかなように、本実施の形態によれば、制御信号出力部16から出力される緩衝器6の制御信号(指令電流値I)が遅れることを低減できる。
さらに、本実施の形態によれば、相対速度V2が0を超えてから次の0までの間に、監視タイマのカウントTmが規定時間Tm1を経過したときに、低周波であると判定する構成としている。このため、相対速度V2の周波数が低周波であるか否かを簡素な構成で安定して判定することができる。
なお、上述した実施の形態では、図5に示すステップ28,30,34,36,37,38,39の処理が本発明の構成要件である周波数検出手段、即ち、相対速度の周波数を検出すると共に相対速度の周波数が高周波か低周波かを判断する周波数検出手段の具体例を示している。
上述した実施の形態では、図5に示すステップ28,36,37,38,39の処理が本発明の構成要件である計測手段、即ち、相対速度が0を超えてから次の0までの間を計測する計測手段の具体例を示している。
上述した実施の形態では、図5に示すステップ28,30,34の処理が本発明の構成要件であるカウント手段、即ち、相対速度が0を超えてからの規定時間をカウントするカウント手段の具体例を示している。
上述した実施の形態では、ばね上加速度センサ8および積分器11を用いて上下速度検出部を構成したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、車体1側の上,下方向の速度(ばね上速度V1)を直接的に検出するばね上速度センサを用いて上下速度検出部を構成してもよい。
上述した実施の形態では、ばね上加速度センサ8、ばね下加速度センサ9、減算器13および積分器12を用いて相対速度検出部を構成した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、ばね上速度センサ、ばね下速度センサおよび減算器を用いて相対速度検出部を構成してもよく、車体1と車輪2との間の相対速度V2を直接的に検出する速度センサを用いて相対速度検出部を構成してもよく、車体1と車輪2との間の相対変位を検出する変位センサと微分器にて相対速度検出部を構成してもよい。
上述した実施の形態では、ばね上加速度センサ8、ばね下加速度センサ9を用いて車体1の上,下方向の速度(ばね上速度V1)、車体1と車輪2との間の相対速度V2を求める場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば車体の高さを検出する車高センサ等、他の挙動を検出するセンサを用いて車体の上,下方向の速度(ばね上速度)、車体と車輪との間の相対速度を求める構成としてもよい。
上述した実施の形態では、相対速度の補正を行う閾値K1、閾値K2、規定時間Tm1の値をそれぞれ一定とした(可変でない)場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、相対速度の補正を行う閾値K1、閾値K2、規定時間Tm1を車速、路面推定状況等に応じて可変としてもよい。また、例えば車両センサや操舵安定性制御処理から得られる車両に関する他の情報を用いて、相対速度の補正を行う閾値K1、閾値K2、規定時間Tm1を可変とするように構成してもよい。このように車速、路面状況等を含む各種車両に関する情報を用いて閾値K1、閾値K2、規定時間Tm1を可変にする構成を採用した場合には、車両状況、路面状況等に応じた適切な制御効果と振動、異音の低減効果とを得ることができる。
上述した実施の形態では、指令電流値Iが小さくなると減衰力特性がソフトになり、指令電流値Iが大きくなると減衰力特性がハードになる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、指令電流値Iが小さくなると減衰力特性がハードになり、指令電流値Iが大きくなると減衰力特性がソフトになる構成としてもよい。
さらに、上述した実施の形態では、スカイフック理論に基づいてサスペンション装置4の緩衝器6を制御するコントローラ10に適用した場合を例に挙げて説明したが、ロールフィードバック制御やピッチフィードバック制御を行うコントローラに適用する構成としてもよい。
以上の実施の形態によれば、相対速度の周波数が高周波と判断されるときには、指令値である補正相対速度は所定の値(例えば、直前の制御周期の補正相対速度)に維持される構成としている。このため、相対速度が0付近で頻繁に(高周波で)変化しても、アクチュエータへの指令電流値が頻繁に切換る(チャタリングする)ことを低減できる。この結果、ショックアブソーバ(緩衝器)の発生減衰力がハードとソフトとの間で頻繁に切換ることによる振動や異音の発生を抑えることができる。
しかも、実施の形態によれば、相対速度の周波数が低周波と判断されるときには、相対速度の符号(正負)の切換りに応じて指令値である補正相対速度の符号(正負)も切換わる(正側指令値と負側指令値とに切換わる)構成としている。このため、相対速度の変化が緩やかな(低周波の)ときには、相対速度の符号(正負)の切換りに応じて補正相対速度も迅速に符号(正負)が切換わり、アクチュエータへの指令電流値が遅れることを低減できる。この結果、乗り心地を向上することができる。
さらに、実施の形態によれば、相対速度が0を超えてから次の0までの間に規定時間を経過したときに低周波であると判定する構成としているので、低周波であるか否かを簡素な構成で安定して判定することができる。