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JP5833301B2 - ワイヤグリッド偏光板及びワイヤグリッド偏光板の製造方法 - Google Patents

ワイヤグリッド偏光板及びワイヤグリッド偏光板の製造方法 Download PDF

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JP5833301B2 JP2010271492A JP2010271492A JP5833301B2 JP 5833301 B2 JP5833301 B2 JP 5833301B2 JP 2010271492 A JP2010271492 A JP 2010271492A JP 2010271492 A JP2010271492 A JP 2010271492A JP 5833301 B2 JP5833301 B2 JP 5833301B2
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Description

本発明は、ディスプレイの光源装置などに用いられるワイヤグリッド偏光板、及びワイヤグリッド偏光板の製造方法に関する。
近年のフォトリソグラフィー技術の発達により、光の波長レベルのピッチを有する微細構造パターンを形成することができるようになってきた。このように非常に小さいピッチのパターンを有する部材や製品は、半導体分野だけでなく、光学分野において利用範囲が広く有用である。
例えば、金属などで構成された導電体線が特定のピッチで格子状に配列してなるワイヤグリッドは、そのピッチが入射光に比べてかなり小さいピッチ(例えば、2分の1以下)であれば、導電体線に対して平行に振動する電場ベクトル成分の光をほとんど反射し、導電体線に対して垂直な電場ベクトル成分の光をほとんど透過させるため、単一偏光を作り出すワイヤグリッド偏光板として使用できる。ワイヤグリッド偏光板は、透過しない光を反射し再利用することができるので、ディスプレイの光源装置などの用途では、光の有効利用の観点からも望ましいものである。
このような光源装置では、光を拡散させる機能も兼備することが必要とされる場合が多いが、光源装置に拡散板を追加した場合、光源装置のサイズが大きくなるうえ光量にもロスを生じるので好ましくない。
光源装置の小型化と光量のロスの低減の観点から、ワイヤグリッド偏光板の露光表面に模様構造を形成させた反射偏光デバイスが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1記載の反射偏光デバイスにおいては、ワイヤグリッド偏光板の露光表面に模様構造を形成することにより、ワイヤグリッド偏光板自体に光拡散性を付与することで反射偏光デバイスの小型化を図っている。
しかしながら、特許文献1に記載の反射偏光デバイスは、液晶ディスプレイの前表面と内表面から反射される光線間の干渉を防止することによってカラーの帯や縞の発生を妨げるものである。このため、ワイヤグリッド偏光板の模様構造の周期間隔は、ヒトの肉眼の分解能よりも小さい0.5μm〜10μmの範囲であり、ディスプレイの光源装置に用いた場合においては、充分な光拡散性能及び偏光特性を発現しない。
また特許文献1には、露光表面に模様構造が形成されたワイヤグリッド偏光板の製造方法として、基板表面にエンボス加工などによって模様構造を設け、この基板表面上に金属を直接被着させた後にホログラフィ式リソグラフィによってパターン化する製造方法が提案されている。しかしながら、この製造方法においては、基板表面に十分な光散乱性能を発現するほどの最大高さを有する起伏構造を形成した場合には、金属のパターン化に用いるレジスト膜厚みを均一に塗布することが困難となる問題があった。また、基板表面の起伏構造の曲率に応じて基板の表面が歪曲して光を不規則に屈折させるためにワイヤグリッド偏光板として十分な偏光性能が得られるパターンを形成することは不可能であった。
さらに、特許文献1には、ポリマーフィルム上に金属ワイヤを平行に設けた後にエンボス加工によって模様構造を設ける製造方法が提案されている。しかしながら、この製造方においては、ポリマーフィルム表面の微細な金属ワイヤを破損することなく、エンボス加工(押圧)によってフィルム全体を変形させることは不可能であり、金属ワイヤの剥離によって偏光性能を局所的に喪失したり、金属ワイヤの破断や変形によって偏光性能を著しく損なったりする問題があった。
特許第4326154号公報
このように、従来のワイヤグリッド偏光板においては、表面に起伏構造を有するワイヤグリッド偏光板を得ることが困難であり、十分な偏光性能と光拡散機能とを兼備したワイヤグリッド偏光板を実現することは困難であった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、優れた偏光性能と光拡散機能とを兼備したワイヤグリッド偏光板及びワイヤグリッド偏光板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは検討の結果、特定の基材上に特定の樹脂層を形成し、この樹脂層上に導電体を形成してなるワイヤグリッド偏光板においては、樹脂層と基材及び導電体とが強固に接着され押圧を加えることなく起伏構造を形成できること、及び偏光性能を大きく損なうことなく起伏構造を形成できることを見出した。また、本発明者らは、起伏構造の最大高さ及び山谷平均間隔を制御することにより、偏光性能をほとんど損なわずに所望の光拡散機能を発現させることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下の通りのものである。
本発明のワイヤグリッド偏光板は、基材と、前記基材上に形成された樹脂層と、前記樹脂層上に形成された導電体とを具備するワイヤグリッド偏光板であって、前記樹脂層の表面は、起伏が繰り返された起伏構造を有し、当該起伏構造は、最大高さが1μmから1000μmの範囲であって、前記樹脂層の面方向における山谷平均間隔が3μmから2000μmの範囲であり、前記樹脂層の表面には、前記起伏構造に沿って、前記基材の面方向に間隔を空けて複数の凸部が形成されており、前記凸部の側面に前記導電体が形成されており、前記凸部間のピッチは、前記起伏構造の前記山谷平均間隔よりも小さいことを特徴とする。
本発明のワイヤグリッド偏光板の製造方法は、基材上に樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の表面、前記基材の面方向において間隔を空けて複数の凸部を形成し、前記凸部の側面に導電体を形成して起伏構造形成前の偏光板を製造する導電体形成工程と、前記起伏構造形成前の偏光板の前記基材を、少なくとも特定の面方向の長さについて少なくとも0.5%収縮させて、前記樹脂層の表面に起伏構造を形成し、前記起伏構造の山谷平均間隔を、前記起伏構造に沿う前記凸部間のピッチよりも大きくする工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明のワイヤグリッド偏光板の製造方法は、基材上に樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の表面、前記基材の面方向において間隔を空けて複数の凸部を形成し、前記凸部の側面に導電体を形成して起伏構造形成前の偏光板を製造する導電体形成工程と、前記起伏構造形成前の偏光板の前記基材を折り曲げ加工して、前記樹脂層の表面に起伏構造を形成し、前記起伏構造の山谷平均間隔を、前記起伏構造に沿う前記凸部間のピッチよりも大きくする起伏構造形成工程と、を含むことを特徴とする。本発明のワイヤグリッド偏光板の製造方法においては、前記樹脂層に使用される光硬化性樹脂としては、1分子中に3以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を含有する1種以上の単量体を20質量%〜60質量%の範囲で含有し、光硬化反応によって結合して固形となる成分が98質量%以上であって、25℃における粘度が10mPa・s以下であることを特徴とする。
本発明によれば、優れた偏光性能と光拡散機能とを兼備したワイヤグリッド偏光板及びワイヤグリッド偏光板の製造方法を提供することができる。
本発明の実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板の断面模式図である。 本発明の実施例に係るワイヤグリッド偏光板のレーザー顕微鏡での観察結果を示す写真である。
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
本発明に係るワイヤグリッド偏光板は、基材と、基材上に形成された樹脂層と、樹脂層上に形成された導電体とを具備する。本発明に係るワイヤグリッド偏光板において、樹脂層は、基材の収縮率と、樹脂層の収縮率と、の間の差を少なくとも0.5%以上になるようにして収縮させて形成した繰り返し構造からなる起伏構造を有する。この起伏構造は、最大高さが1μmから1000μmの範囲であって、樹脂層の面方向における山谷平均間隔が3μmから2000μmの範囲である。また、本発明に係るワイヤグリッド偏光板において、起伏構造は、折り曲げ加工により形成してもよい。
以下、図1を参照して本発明の一実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板の構成について詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板の断面模式図である。なお、図1においては、樹脂層12の凹凸構造の延在方向に対する垂直断面の模式図を示している。
図1に示すように、本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板は、樹脂材料を主成分とする基材11と、この基材11上に設けられた樹脂層12(樹脂被膜)と、この樹脂層12上に設けられた導電体13(金属ワイヤ)とを具備する。樹脂層12は、面方向において所定の周期で繰り返される起伏構造を有する。また、樹脂層12は、表面に一方向(図1の奥行き方向)に向けて延在し、基材11の面方向において所定のピッチP1で周期的に設けられる凹凸構造を有する。導電体13は、樹脂層12の凹凸構造の凸部の一方の面に偏在するように、所定のピッチP2で設けられる。
(基材)
本発明に係るワイヤグリッド偏光板を構成する基材11としては、透明で屈曲性を有し、厚みの均一な樹脂材料(フィルム材料)が好ましい。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、シクロオレフィン(COP)樹脂、シクロオレフィンコポリマー(COC)樹脂、ポリスチレン(PST)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、トリアセテートセルロース(TAC)樹脂などが価格や性能の点で好ましく、加工性や強度、耐熱性に優れる点でPET、PC、COP、COC、TACがより好ましい。
基材11の厚みには特に制限が無く、通常4μm〜2mmの範囲のものが使用できるが、製造の容易さや取り扱いの点で8μm〜500μmの範囲のものが好ましい。また、ワイヤグリッド偏光板の連続生産性の観点から、15μm〜100μmの範囲のものが特に好ましい。
基材11表面には、樹脂層12との接着性を向上させる表面処理を予め施しておくことが好ましい。基材11の表面処理としては、例えば樹脂層12を接着させる接着面に樹脂層12との化学結合処理や、浸透などの樹脂層12との物理的結合のための易接着コーティング、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、高エネルギー線照射処理、表面粗化処理、多孔質化処理などを施すことが好ましい。導電体13を形成しない基材11の裏面は無処理でもよいが、光の利用効率を改善するため誘電体薄膜やモスアイ構造を形成することも好ましい。
本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板においては、基材11の収縮率と樹脂層12の収縮率との差を用いて形成された樹脂層12の起伏構造を有する。起伏構造の形成のためには、樹脂層12よりも基材11の方が面方向における長さの収縮率が大きいことが好ましい。
基材11を収縮させる方法としては、基材11を加熱して加熱収縮させる方法や、基材11中の化合物の一部を除去して体積収縮させる方法がある。加熱収縮させる方法としては、例えば、基材11を構成する樹脂材料のポリマー分子が、基材11の厚み方向(高さ方向)よりも面方向により多く分子配向された基材11を用いてワイヤグリッド偏光板を製造し、このワイヤグリッド偏光板を加熱して面方向に加熱収縮させる方法が挙げられる。また、体積収縮させる方法としては、予め可溶性又は揮発性の化合物が添加された基材11を用いてワイヤグリッド偏光板を製造し、このワイヤグリッド偏光場の基材11中の可溶性又は揮発性の配合物を抽出除去又は揮発除去することで体積収縮させる方法が挙げられる。
基材11の収縮率と樹脂層12の収縮率との差は、樹脂層12の表面に起伏構造を形成できる範囲であれば特に制限は無いが、収縮率の差が0.5%以上であれば、より僅かな押圧で起伏構造を形成できるので好ましい。収縮率の差が1%以上であれば、収縮応力のみを利用して押圧無しに起伏構造を形成できるので特に好ましい。
基材11としては、必要に応じて可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、難燃剤、ガスバリア機能を有する樹脂材料を用いることが好ましい。また、基材11としては、粘着剤などを配合、あるいは積層体として複合化した樹脂材料を使用することも好ましい。
樹脂層12は、光硬化性樹脂を含んでなる成形体であり、樹脂層12表面からの高さH1が0.01μm〜20μmの範囲であって、少なくとも面方向の一方向におけるピッチP1が0.01μm〜20μmの範囲である規則的な凸凹構造を表面に有する。また、樹脂層12の厚みは、0.01μm〜3μmの範囲である。
樹脂層12は、最大高さH2が0.5μmから1000μmの範囲であって、山谷平均間隔Lが3μmから2000μmの範囲である繰り返しの起伏構造を有する。この起伏構造により、本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板においては、優れた偏光性能と光拡散機能とが発現する。
本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板において、偏光性能と光拡散機能とを発現するためには、起伏構造の最大高さH2、及び山谷平均間隔Lが重要となる。ここで、起伏構造の最大高さH2とは、基材11表面に対する垂直断面の断面視における起伏構造の輪郭曲線において、基板11表面からの高さH3が最も高い山部(図1の点S1参照)と、基板11表面からの高さH4が最も低い谷部(図1の点S2参照)と、の間の差を求めたものである。
本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板において、樹脂層12の起伏構造の好ましい最大高さH2は1μmから1000μmの範囲である。また、樹脂層12の起伏構造の最大高さH2は、所望の光分布制御に応じて適時選択することができる。樹脂層12の起伏構造の最大高さH2は、実用的な光拡散の効果を得るためには1μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることが特に好ましい。
他方、ワイヤグリッド偏光板の厚みは薄いことが好ましいため、樹脂層12起伏構造の最大高さH2は1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。また、光の利用効率の点からも樹脂層12の起伏構造の最大高さH2は、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。また、ここでいう山谷平均間隔Lとは、基板11表面の垂直断面における樹脂層12の輪郭曲線の山部(図1のS1参照)と谷部(図1のS2参照)との間の山谷間隔Lの樹脂層12中における平均値である。
本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板において、好ましい山谷平均間隔Lは3μmから2000μmの範囲であって、所望の光分布制御に応じて適時選択することができる。十分な光拡散性能を得るには、山谷平均間隔Lが、3μmから2000μmの範囲であることが好ましく、5μmから1000μmの範囲であることがより好ましく、10μmから500μmの範囲であることが特に好ましい。
本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光子においては、樹脂層12の起伏構造は、最大高さH2や、山谷平均間隔Lが面内で一様であることが好ましい。また、樹脂層12の起伏構造は、特定の方向または部位に偏って、異なる大きさの起伏構造の最大高さH2や、異なる大きさの山谷平均間隔Lの起伏構造が分布しているものも好ましい。また、異なる複数の大きさの起伏構造の最大高さH2や、異なる複数の大きさの山谷平均間隔Lの起伏構造が重ねあった状態で分布しているものも好ましい。
導電体層13は、樹脂層12の凹凸構造の一方の側面に偏在するように設けられる。本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板においては、導電体13のピッチP2が、対象とする光の波長の4分の1以下である時に十分な偏光性能が得られ、さらにピッチP2が小さくなるほど偏光性能が向上する。
樹脂層12表面の凸凹構造のピッチP1及び導電体13のピッチP2が、20μm以下であればテラヘルツ帯域の偏光特性を発現できる。また、ピッチP1、P2が、150nm以下であれば可視域までの偏光特性も発現できるため好ましい。さらに、ピッチP1、P2が、120nm以下であれば400nm近傍の短波長光までの偏光特性が発現できるためさらに好ましい。また、ピッチP1、P2が、10nm程度であると紫外領域までの偏光特性を併せもつことができるので特に好ましい。このようにピッチP1、P2を小さくするに応じていずれの波長域での消光比も向上するので、より好ましい。
樹脂層12の表面の凸凹構造の高さH1は、光学性能を向上させるために導電体13の周囲の空気を含む層を構成する観点、及び導電体13の間隔を一定に強固に保持させるために十分な強度をもたせる観点から、凸凹構造のピッチP1の0.5倍〜2.0倍の範囲、特に1.0倍〜2.0倍の範囲であることが好ましい。
樹脂層12表面の凸凹構造の断面形状には制限はなく、台形、矩形、方形、プリズム状や、半円状などの正弦波状であってもよい。ここで、正弦波状とは凹部と凸部の繰り返しからなる曲線部をもつことを意味する。曲線部は湾曲した曲線であればよく、例えば、凸部にくびれがある形状も正弦波状に含める。また、樹脂層12の凸部及びその側面の少なくとも一部を後述する誘電体層が覆いやすくするため、凹凸構造の形状の端部又は頂点、谷は緩やかな曲率をもった湾曲形状にすることが好ましい。
本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板において、樹脂層12の厚みは、0.01μm〜3μmの範囲であれば特に制限されないが、樹脂層12の厚みが薄い方が好ましい。樹脂層12の厚みが薄ければ薄いほど樹脂層12での光の吸収を抑えることができ、透過率が向上する。また、樹脂層12中の揮発成分の残留量が減少するので、ブリードなどによる汚染を防ぐことができる。さらに、樹脂層12の厚みが薄い場合には、樹脂層12を構成する光硬化性樹脂の硬化収縮により発生するカールを小さくし、ワイヤグリッド偏光板の平面性を向上させることができる。
本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板は、基材11上に樹脂層12が形成されているため屈曲性を有する。樹脂層12の厚みが薄ければ、樹脂層12の屈曲性が向上し、ワイヤグリッド偏光板を変形させたときのクラックの発生を抑制できると共に、樹脂層12が充分薄ければ基材11の収縮率と樹脂層12の収縮率との差を利用してワイヤグリッド偏光板に起伏構造を形成することができ、この際のクラックの発生も抑制できる。さらに、樹脂層12の厚みが薄ければ、温度や湿度の変化により基材11や導電体13との層間に発生する応力ストレスへの追従性が向上し、信頼性が増すため好ましい。
その反面、ナノインプリント技術により樹脂層12の厚みを薄くして転写物を製造しようとすると、樹脂層12を構成する光硬化性樹脂に混入している微小異物や、生産設備の周囲に浮遊している微小異物が転写面に混入したとき、異物の周囲にレンズ状欠陥が発生する頻度が高くなる。また、塗り筋や、液ハジキなどの不具合により光硬化性樹脂を基材11に均一に塗工することが困難で、転写欠陥が発生する頻度が高くなる。さらに、光硬化性樹脂が酸素による硬化反応の阻害を受け易くなり、未反応成分が残留して転写欠陥が発生する頻度が高くなるなど、歩留まりが低下する問題がある。また、極度に樹脂層12が薄い場合、基材11の収縮率と樹脂層12の収縮率との差を利用する方法では起伏構造を安定して形成することが困難になる。
本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板においては、特定の光硬化性樹脂の組成と、転写プロセスの最適化によって、樹脂層12の厚みを0.01μm〜3μmの範囲に調整して製造できる。ワイヤグリッド偏光板の樹脂層12に起伏構造を形成したときの品質低下を低減するためには、導電体13を支持する樹脂層12の厚みが3μm以下と薄いことが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。
また、基材11の収縮率と樹脂層12の収縮率との差を利用してワイヤグリッド偏光板に起伏構造を効率よく安定に形成する観点からは、樹脂層12の厚みが1μm以下であることがさらに好ましく、樹脂層12の厚みが0.5μm以下と充分薄いことが特に好ましい。
一方、極度に樹脂層12が薄い場合には、基材11の収縮率と樹脂層12の収縮率との差を利用する方法では起伏構造を安定して形成することが困難になる問題がある点から、樹脂層12の厚みは、0.01μm以上あることが好ましい。
樹脂層12の厚みを薄くし、且つ転写欠陥の発生を少なくするためには、使用する光硬化性樹脂の粘度が低く、スタンパからの離型性が良く、基材11との接着性が良いことが求められる。
このように本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板は、曲げや収縮応力などのストレスに強い。また裁断することも容易であり、裁断線の周囲についても樹脂層12の割れや折れが広がらないので、任意の形状や数ミリ角の小片に切り分けることも可能である。また樹脂層12の厚みを薄くできることで、本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板は、温度や湿度の変化に対しても高い信頼性を有する。一般に材料の非表面積が増加する場合には信頼性は低下する傾向があるが、本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板においては、樹脂層12の厚みを薄くしたことで基材11や導電体13との層間に発生する応力ストレスへの追従性が向上した結果、逆に信頼性が増したと推測される。
本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板において、樹脂層12に使用される光硬化性樹脂としては、1分子中に3以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を含有する1種以上の単量体を20質量%〜60質量%の範囲で含有し、光硬化反応によって結合して固形となる成分が98質量%以上であって、25℃における粘度が10mPa・s以下であることを同時に満たす光硬化性樹脂であることが好ましい。
さらに、樹脂層12として使用される光硬化性樹脂としては、N−ビニル化合物である単量体を5質量%〜40質量%の範囲で含有し、アクリル基及び/又はメタクリル基を含有するシリコン化合物を0.1質量%〜10質量%の範囲で含有し、粘性の調整及び硬化物の諸物性を調整するためさらに別の単量体を配合することがより好ましい。また、光硬化性樹脂としては、光重合開始剤の配合比が0.1質量%〜5.0質量%の範囲であることが好ましい。また、光硬化性樹脂としては、異物(パーティクル)が、ろ過などの方法で除去されているものが好ましい。この場合、捕捉できる最小粒子径が1μm以下のフィルターを使用してろ過することが好ましく、樹脂層12を薄くしたときの歩留まりを向上させるには0.5μm以下のフィルターを使用してろ過したものがさらに好ましい。いずれの最小粒子径でも、フィルターの捕捉効率は99.9%以上であることが好ましい。
光硬化性樹脂組成物には、本発明の効果が得られる範囲で必要に応じて他の従来の添加物、例えば流動調整剤、レベリング剤、有機及び無機の染料及び顔料、増量剤、可塑剤、潤滑剤、補強剤、酸化防止剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、沈降防止剤、消泡剤、耐磨耗性付与剤、摩擦低減剤、帯電防止剤、防曇剤等を含むことができる。
樹脂層12は、ロールプロセスでの光ナノインプリント技術により成形することが好ましく、例えば、樹脂層12表面の凸凹構造の反転形状となる凹凸構造を有するモールドに光硬化性樹脂を流し込み、光硬化させることで成形することができる。光硬化性樹脂をモールドに流し込む方法としては、基材11に光硬化性樹脂を薄膜状に塗布した後で、モールドと接触させてモールドの凹凸構造と基材11との間に充填する方法や、モールドの表面に光硬化性樹脂を薄膜状に塗布した後、基材11と接触させることでモールドの凹凸構造と基材11との間に充填する方法が挙げられる。
光硬化性樹脂の塗布方法には特に制限は無く、例えば、ロールコーター法、(マイクロ)グラビアコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ナイフコーター法、ロッドコーター法、カーテン(フロー)コーター法、キスコーター法、ビードコーター法、キャストコーター法、ロータリースクリーン法、浸漬コーティング法、スロットオリフィスコーター法、バーコード法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、押出コーター、ファウンテンコーター法などが挙げられる。
いずれの塗布方法にせよ、モールドの凹凸構造内に気泡を混入させないこと、及びモールドと基材11間に保持した光硬化性樹脂の厚みむらを小さくすることが重要である。
モールドの温度は25℃〜100℃の範囲で一定に調節されていることが好ましい。モールドの温度が25℃以上であると光硬化性樹脂の流動性が向上すると共に、樹脂層12と基材11との接着力が向上し、樹脂層12の硬化反応後のモールドからの離型性が向上するので好ましい。また、モールドの温度が100℃以下であると基材11の熱変形が減少するので好ましい。モールドの温度は、30℃〜80℃の範囲がより好ましく、35℃〜70℃の範囲がさらに好ましく、40℃〜65℃の範囲が特に好ましい。樹脂層12の厚みは、モールドへの光硬化性樹脂の充填量と、基材11とモールドを押し当てる圧力によって調整することができる。
また、転写設備周辺のクリーン度はクラス10000以上であることが好ましく、クラス1000以上であることがより好ましく、クラス100以上であることがさらに好ましく、クラス10以上であることが特に好ましい。
樹脂層12と導電体13との密着性を向上させるために、導電体13を形成する前に誘電体層を樹脂層12表面の凸部及び、その側面部の少なくとも一部を覆うように設けておくことが好ましい。誘電体層を構成する誘電体としては、樹脂層12及び導電体13を構成する金属との密着力が強い材料が好ましく、例えば、珪素(Si)の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体又はその複合物や、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、イットリウム(Y)、ジルコニア(Zr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バリウム(Ba)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、銅(Cu)などの金属の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体又はそれらの複合物(誘電体単体に他の元素、単体又は化合物が混ざった誘電体)を用いることができる。
導電体13を構成する金属としては、特に制限は無く、例えば、アルミニウム(Al)、銀又はそれらの合金で構成されていることが好ましい。コストと耐久性の観点からAl又はその合金で構成されていることがより好ましい。
導電体13を樹脂層12の上、又は誘電体層の上に形成する方法としては特に制限は無く、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的蒸着法が好ましく、これらの中でも、金属を凸部に選択的に、又は凸部の一方の側面に偏って選択積層できる真空蒸着法がより好ましい。
導電体13の幅は、光学特性及びワイヤグリッドの構造強度の観点から樹脂層12の表面の凸凹構造のピッチP1の0.2倍から0.6倍の範囲であることが好ましい。また、導電体13の高さH5は、ワイヤグリッド偏光板の光学特性及び、ワイヤグリッドの構造強度及び、導電体13と凸凹構造との密着力を考慮すると、20nmから220nmの範囲であることが好ましく、50nmから200nmの範囲であることがより好ましい。
本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板においては、汚れ防止とクリーニング性を持たせるため、導電体13を保護膜によって被覆することが好ましい。保護膜には特に制限はなく、例えば導電体13表面を樹脂などで表面コーティングした保護膜、別の樹脂フィルムと導電体13表面とを粘着材や接着材で貼りあわせた保護膜などが挙げられる。保護膜の材質としては、導電体13に対し腐食性の小さなものが好ましい。また保護膜の表面に、光反射率を制御するため、誘電体薄膜やモスアイ構造を形成することも好ましい。
(ワイヤグリッド偏光板の製造方法)
次に、本発明の一実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板の製造方法について詳細に説明する。本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板の製造方法は、基材11上に樹脂層12を形成する樹脂層形成工程と、樹脂層12上に導電体13を形成して起伏構造形成前の偏光板を製造する導電体形成工程と、樹脂層12の表面に起伏構造を形成する起伏構造形成工程とを含む。本実施の形態に係るワイヤグリッドの製造方法においては、起伏構造形成工程において、起伏構造形成前の偏光板の基材11を樹脂層12の面方向において、少なくとも0.5%以上収縮させて起伏構造を形成する。この樹脂層12の起伏構造により、ワイヤグリッド偏光板に偏光特性及び光拡散性を付与する。または、本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板の製造方法においては、起伏構造形成工程では、折り曲げ加工により起伏構造を形成してもよい。
樹脂層形成工程では、上述した各種塗布方法により基材11上に光硬化性樹脂を塗布して樹脂層12を設ける。なお、樹脂層形成工程においては、基材11上に樹脂層12を設けることができれば特に限定されず、従来公知の各種方法を適用可能である。
導電体形成工程では、上述した真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的蒸着法などによって導電体13を設ける。なお、導電体形成工程においては、樹脂層12上に導電体13を形成できる方法であれば特に限定されず、従来公知の各種方法を適用可能である。
起伏構造形成工程において、樹脂層12表面に起伏構造を形成する方法としては、起伏構造形成前の偏光板を構成する基材11とともに、基材11上の樹脂層12と樹脂層12上の導電体13とを共に折り曲げ加工する方法、基材11の収縮率と樹脂層12の収縮率との差を利用して樹脂層12及び基材11の寸法変化に伴う波紋状の変形を利用する収縮加工する方法、折り曲げ加工により形成する方法、または折り曲げ加工と収縮加工とを組み合わせた方法が挙げられる。
折り曲げ加工としては、樹脂層12の表面に所望の起伏構造が形成されるものであれば特に限定されない。折り曲げ加工の具体例としては、例えば、所望の起伏構造を有する型と起伏構造形成前の偏光板とを重ねた状態で押圧を加える方法や、起伏構造形成前の偏光板の基材11側の表面に突起物または微小な球体をランダムに突き当てて、ランダムな微小変形により起伏構造を樹脂層12の表面に一様に形成する方法や、所望の起伏構造と吸引口を有する型と起伏構造形成前の偏光板とを重ねた状態で、吸引によって型の起伏形状を起伏構造形成前の偏光板に転写する方法や、変形可能な型と起伏構造形成前の偏光板とを吸引または接着により一体化した後で、型とともに起伏構造形成前の偏光板を変形させて樹脂層12表面に起伏構造を形成する方法などが挙げられる。
収縮加工においては、基材11を樹脂層12の面方向において、少なくとも0.5%以上収縮させて樹脂層12表面に起伏構造を形成する。収縮加工としては、樹脂層12の表面に所望の起伏構造が形成されるものであれば特に限定されないが、例えば、加熱収縮を用いた収縮加工や、体積収縮を用いた収縮加工が挙げられる。
加熱収縮を用いた収縮加工としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、樹脂材料のポリマー分子が厚み方向よりも面方向により多く配向された基材11を用いて起伏構造形成前の偏光板を製造する。次に、基材11の面内に適度の張力を加えた状態で起伏構造形成前の偏光板を加熱して基材11を面方向に収縮させる。この加熱によって、基材11の収縮率と樹脂層12の収縮率との差に応じて、樹脂層12と基材11との間に寸法変化が生じる。この寸法変化によって樹脂層12表面が波紋状に変形して樹脂層12表面に起伏構造が形成される。
上記加熱収縮を用いた収縮加工の具体例においては、さらに、樹脂層12及び基材11の面方向の長さの収縮率の差が、全ての面方向にわたり一様になるように基材11の樹脂材料の分子配向、及び加熱加工時の張力や加熱時の温度勾配を一様に調節して、全方向に一様に起伏構造を形成してもよい。また、樹脂層12及び基材11の面方向の特定の一方向における長さの収縮率の差が、別の一方向における長さの収縮率の差よりも大きくなるように基材11の樹脂材料の分子配向、加熱加工時の張力、及び加熱時の温度勾配の一つ以上が特定の一方向に偏るように調節して、特定の一方向に偏った起伏構造を形成してもよい。
体積収縮を用いた収縮加工としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、樹脂材料中の可溶性物質又は揮発性物質の抽出除去又は揮発除去により体積収縮しうる基材11を用いて起伏構造形成前の偏光板を製造する。次に、基材11の樹脂材料の可溶性物質又は揮発性物質を除去することにより、基材11の収縮率と樹脂層12の収縮率との差に応じて、樹脂層12と基材11との間の寸法変化が生じる。この寸法変化により、樹脂層12表面が波紋状に変形して樹脂層12表面に起伏構造が形成される。
また、体積収縮を用いた収縮加工の他の例としては、以下の方法が挙げられる。まず、膨張性物質を吸収することで膨張する樹脂層12を用いて起伏構造形成前の偏光板を製造する。次に、樹脂層12に所定の膨張性物質を吸収させることにより、基材11の収縮率と樹脂層12の収縮率との差に応じて、樹脂層12と基材11との間に寸法変化が生じる。この寸法変化により、樹脂層12が波紋状に変形して樹脂層12表面に起伏構造が形成される。
さらに、体積収縮を用いた収縮加工の他の例としては、以下の方法が挙げられる。まず、樹脂層12よりも低ヤング率の樹脂材料を含む基材11を用いて起伏構造形成前の偏光板を製造する。次に、この起伏構造形成前の偏光板を他の収縮性の基板に粘着固定し、収縮性の基板を起伏構造形成前の偏光板の基材11より大きく収縮させることにより、樹脂層12と基材11との間に寸法変化が生じる。この寸法変化により、樹脂層12が波紋状に変形して樹脂層12表面に起伏構造が形成される。これらの体積収縮を用いた方法によっても、上記加熱収縮を用いた方法と同様に、面方向に一様な起伏構造、あるいは面方向の特定の一方向に偏った起伏構造を形成することができる。
このような収縮加工をする際、基材11の面内に適度の張力を加えることで起伏構造の形状を制御すると共に、ワイヤグリッド偏光板全体の反りや歪みを防止し、安定した品質で、優れた偏光性能と光拡散機能とを兼備したワイヤグリッド偏光板を製造することができる。
張力を加える方法としては、特に制限は無いが、例えばロールプロセスを利用してロール間の張力で調整する方法や、可動式のテンター装置を利用して調整する方法や、特性の弾性率を有する基板に起伏構造形成前の偏光板を固定して、基板の収縮を調整する方法などが挙げられる。上記収縮加工においては、導電体13と他の部材とが接触することなく起伏構造を形成できるため、ワイヤグリッド偏光板の本来の優れた偏光性能をほとんど損なわずに所望の光拡散機能を発現させることができるので特に好ましい。
上記折り曲げ加工及び上記収縮加工においては、加工を容易にし、又は起伏構造を安定させるため、可塑化効果を有する水分や有機溶剤を起伏構造形成前の偏光板に吸収させてから加工する方法や、起伏構造形成前の偏光板を加熱して可塑性を増してから加工し、次いで冷却により構造を固定する方法や、起伏構造を形成させた後で、起伏構造形成前の偏光板に構造を固定する結合性材料を吸収又は接着させる方法などを組み合わせて加工することがより好ましい。
このように、本発明に係るワイヤグリッド偏光板の製造方法においては、起伏構造形成前の偏光板の基材と樹脂層との間の収縮差を利用して熱収縮することにより、型などを用いずに樹脂層に所望の起伏構造を付与することが可能である。これにより、上記偏光分離及び光拡散性能を有するワイヤグリッド偏光板を安定した品質で安価に製造することが可能となる。
さらに、本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光板の製造方法においては、ロールプロセスでのナノインプリント技術により、押圧を用いることなく樹脂層12表面の起伏構造を形成できるので、高品位かつ信頼性に優れ、大面積を有するワイヤグリッド偏光板を安価に提供できる。このようなワイヤグリッド偏光板を使用することで、軽量コンパクトで、光の利用効率の優れたディスプレイの光源装置を実現できる。
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した。
<粘度の測定>
E型粘度計(東機産業社製、型番RE550L)を用い、試料量1.0mlで評価した。粘度の測定は全て25℃で行った。
<起伏構造の解析>
実施例、及び比較例のワイヤグリッド偏光板について、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、型番VK−9500)を用い、起伏構造の最大高さと山谷平均間隔を測定した。
<光拡散特性>
実施例、及び比較例のワイヤグリッド偏光板をスクリーンから5cmの距離にスクリーンに対して平行に保持し、ワイヤグリッド偏光板に対してスクリーンとは反対側の面から、ビーム径が2mmの赤色レーザーポインターによってワイヤグリッド偏光板越しにレーザー光をスクリーンに投影したときのレーザー光の広がりを計測した。
<透過率、偏光度の測定>
実施例、及び比較例のワイヤグリッド偏光板について、分光光度計(V−7100 日本分光社製)を用いて偏光度及び光線透過率を測定した。ここでは、直線偏光に対する平行ニコル、直交ニコル状態での透過光強度を測定し、偏光度、光線透過率は下記式(1)、下記式(2)より算出した。また、測定波長は550nmとした。
偏光度=[(Imax−Imin)/(Imax+Imin)]×100 %…(1)
光線透過率=[(Imax+Imin)/2] %…(2)
ここで、Imaxとは平行ニコル時の透過光強度であり、Iminは直交ニコル時の透過光強度である。
(実施例1)
<起伏構造形成前の偏光板1の製造>
三官能以上のアクリレート化合物である単量体としてトリメチロールプロパントリアクリレートを32質量%、N−ビニル化合物である単量体としてN−ビニル−2−ピロリドンを32質量%、その他の単量体として1,9−ノナンジオールジアクリレートを33質量%、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドを2質量%、及びシリコンジアクリレートを1質量%配合したものをろ過して光硬化性樹脂を調整した。この光硬化性樹脂の粘度は7.9mPa・sであった。
基材としては、TAC樹脂フィルムを用いた。厚み80μm、幅250mm、長さ200mのロール状のTAC樹脂フィルム上に連続的に上記光硬化性樹脂を塗布し、微細格子パターンを表面に有するロールスタンパと接触させながら紫外線を照射して光硬化性樹脂を硬化させて微細格子パターンを連続的に転写して樹脂層を形成した。この転写フィルムの断面を電子顕微鏡により観察したところ微細格子パターンの形状はロールスタンパの正確な反転形状になっており、ピッチが140nm、高さが150nmのライン&スペース構造であることが確認できた。樹脂層の厚みは0.4μmであった。
連続製膜装置によって、転写フィルムの転写面側に誘電体層としての窒化珪素薄膜を形成した。次いで、窒化珪素薄膜の上に導電体としてのアルミニウムのワイヤを形成することで起伏構造形成前の偏光板1を製造した。
<起伏構造の形成(A)>
起伏構造形成前の偏光板1を205℃にて、30分間加熱加工し、基材の収縮率と樹脂層の収縮率との差を利用して、樹脂層と基材との寸法変化に伴う波紋状の変形を利用して起伏構造を形成した。
実施例1では基材の収縮を調整する方法として、透過軸方向の寸法が75mmであって、反射軸方向の寸法が25mmである長方形の起伏構造形成前の偏光板1の基材の面に、厚みが30μmで、剪断力が110N/4cmであるノンキャリア両面粘着テープ(日栄化工社製、30WF)の一方の面を貼り合せ、粘着テープのもう一方の面をガラス板に貼り合せることで、粘着テープの弾性を利用して基材の収縮を調整した。このようにして偏光性能と光拡散性能とを兼備したワイヤグリッド偏光板Aを製造した。ワイヤグリッド偏光板Aにはピンホールや、キズや、金属ワイヤの剥離といった外観上の欠点は全く認められなかった。
ワイヤグリッド偏光板Aは透過軸方向には2.6%、反射軸方向には7.7%収縮しており、面内には一様に波紋状の変形が見られ、これらの起伏構造の最大高さH2は2.0μmであり、反射軸方向の山谷平均間隔は12μmであり、透過軸方向の山谷平均間隔は70μmであった。ワイヤグリッド偏光板Aの平面視におけるレーザー顕微鏡での観察結果の写真を図2に示す。
ワイヤグリッド偏光板Aの光拡散特性を評価したところ、反射軸方向の光の広がりは4cm以上であり、透過軸方向の光の広がりは0.5cm以上であり、ワイヤグリッド偏光板Aは、偏光性を有していた。以上の結果を、起伏構造形成前の偏光板1及びワイヤグリッド偏光板Aの透過率、偏光度の測定結果等とともに下記表1に示す。
<起伏構造の形成(B)>
起伏構造形成前の偏光板の基材上の樹脂層と樹脂層上の金属ワイヤとを共に折り曲げ加工して起伏構造を形成した。
ここでは最大高さが100μmであって、一方向の山谷平均間隔が500μmであるレンチキュラーレンズ形状の起伏構造を有する、一辺が5cmである正方形の金属製の型(SUS製)と起伏構造形成前の偏光板1とを重ねた状態で押圧を加える方法を用いた。金型の雄型と雌型の間に、起伏構造形成前の偏光板1の透過軸方向とレンチキュラーレンズの稜線方向が直交するようにして起伏構造形成前の偏光板1を挿入し、70℃で10分間予熱した後、50kgf/cmの圧力で、70℃で30分間プレスした後、20℃に冷却することで偏光性能と光拡散性能とを兼備したワイヤグリッド偏光板Bを製造した。このものにはピンホールや、樹脂層の剥離といった欠点は認められなかったが、折り曲げ部での亀裂や、表面に細い擦過傷などの欠点がわずかに確認された。ワイヤグリッド偏光板Aと同様に評価した結果を下記表1に示す。
表1から分かるように、ワイヤグリッド偏光板A、Bにおいては、最大高さH、及び山谷平均間隔(μm)が所定範囲内の起伏構造が形成されているので、光拡散性能が起伏構造形成前の偏光板1に対して大幅に向上していることが分かる。また、起伏構造を形成した場合においても、偏光特性が低下していないことが分かる。
(比較例1)
<起伏構造形成前の偏光板2の製造>
光硬化性樹脂を市販の光硬化性樹脂(PAK−01、東洋合成社製)に代えて、実施例1と同様にしてワイヤグリッド偏光板の製造を試みた。この光硬化性樹脂の粘度は72.0mPa・sであった。しかしながら連続転写の工程において、光硬化性樹脂の塗布厚みが不均一なうえロールスタンパと接触させたときに気泡が入りやすく、転写を開始した直後からロールスタンパが光硬化性樹脂の付着残留物で汚染されてしまった。このため、連続プロセスによる製造は断念した。
次に、あらためて厚み80μm、幅200mm、長さ200mmの正方形のTAC樹脂フィルム上に、バーコータを用いて光硬化性樹脂(PAK−01)を塗付し、微細格子パターンを表面に有する幅100mm、長さ100mmの平板状のスタンパと接触させながら紫外線を照射して光硬化性樹脂を硬化させることで、微細格子パターンを転写したが、部分的にスタンパに樹脂の付着残留物が発生した。
得られた転写フィルムの断面を電子顕微鏡により観察したところ、微細格子パターンの形状は概ねロールスタンパの反転形状を有しており、ピッチが140nm、高さが150nmのライン&スペース構造が確認できた。しかしながら、スタンパに樹脂の付着残留物が発生した箇所においては平均径が50μm〜500μmの微細格子パターンの無い領域が多数存在した。また樹脂層の厚みには若干のむらがあり5μm〜8μmの範囲であった。この転写フィルムを回分式の製膜装置を使用した以外は実施例1と同様にして、転写フィルムの転写面側に誘電体層としての窒化珪素薄膜を形成した。次いで窒化珪素薄膜の上に導電体としてのアルミニウムのワイヤを形成することで起伏構造形成前の偏光板2を製造した。
<起伏構造の形成(A)>
起伏構造形成前の偏光板2を用いた以外、実施例1と同様にして基材の収縮率と樹脂層の収縮率との差を利用して、樹脂皮膜と基材との寸法変化に伴う波紋状の変形を利用する方法で起伏構造の形成を試みた。このとき基材の収縮率は実施例1と同等であり、波紋状に変形する傾向が認められたものの、上記の微細格子パターンの無い領域を起点に樹脂層に亀裂や剥離が発生し、実用的な偏光板は得られなかった。
本発明は、優れた偏光性能と光拡散機能とを兼備したワイヤグリッド偏光板を実現できるという効果を有し、特に、ディスプレイの光源装置などの用途に好適に用いることができる。
11 基材
12 樹脂層
13 導電体

Claims (4)

  1. 基材と、前記基材上に形成された樹脂層と、前記樹脂層上に形成された導電体とを具備するワイヤグリッド偏光板であって、前記樹脂層の表面は、起伏が繰り返された起伏構造を有し、当該起伏構造は、最大高さが1μmから1000μmの範囲であって、前記樹脂層の面方向における山谷平均間隔が3μmから2000μmの範囲であり、
    前記樹脂層の表面には、前記起伏構造に沿って、前記基材の面方向に間隔を空けて複数の凸部が形成されており、前記凸部の側面に前記導電体が形成されており、前記凸部間のピッチは、前記起伏構造の前記山谷平均間隔よりも小さいことを特徴とするワイヤグリッド偏光板。
  2. 基材上に樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の表面、前記基材の面方向において間隔を空けて複数の凸部を形成し、前記凸部の側面に導電体を形成して起伏構造形成前の偏光板を製造する導電体形成工程と、前記起伏構造形成前の偏光板の前記基材を、少なくとも特定の面方向の長さについて少なくとも0.5%収縮させて、前記樹脂層の表面に起伏構造を形成し、前記起伏構造の山谷平均間隔を、前記起伏構造に沿う前記凸部間のピッチよりも大きくする工程と、を含むことを特徴とするワイヤグリッド偏光板の製造方法。
  3. 基材上に樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層の表面、前記基材の面方向において間隔を空けて複数の凸部を形成し、前記凸部の側面に導電体を形成して起伏構造形成前の偏光板を製造する導電体形成工程と、前記起伏構造形成前の偏光板の前記基材を折り曲げ加工して、前記樹脂層の表面に起伏構造を形成し、前記起伏構造の山谷平均間隔を、前記起伏構造に沿う前記凸部間のピッチよりも大きくする起伏構造形成工程と、を含むことを特徴とするワイヤグリッド偏光板の製造方法。
  4. 前記樹脂層に使用される光硬化性樹脂としては、1分子中に3以上のアクリル基及び/又はメタクリル基を含有する1種以上の単量体を20質量%〜60質量%の範囲で含有し、光硬化反応によって結合して固形となる成分が98質量%以上であって、25℃における粘度が10mPa・s以下であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のワイヤグリッド偏光板の製造方法。
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