JP5888161B2 - 樹脂組成物、並びにこの樹脂組成物からなるフィルム及び容器 - Google Patents
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成分(X):水素化ビニル芳香族重合体ブロックAと、イソブチレンを主体とする重合体のブロックBとを有する水素化ブロック共重合体
成分(Y):エチレンと環状オレフィンの共重合体(y1)、及び環状オレフィンの開環重合体の水素添加物(y2)から選ばれる非晶性ポリオレフィン
成分(X):水素化ビニル芳香族重合体ブロックAと、イソブチレンを主体とする重合体のブロックBとを有する水素化ブロック共重合体(以下、「水素化ブロック共重合体(X)」と称す場合がある。)
成分(Y):エチレンと環状オレフィンの共重合体(y1)、及び環状オレフィンの開環重合体の水素添加物(y2)から選ばれる非晶性ポリオレフィン(以下、「非晶性ポリオレフィン(Y)」と称す場合がある。)
本発明の樹脂組成物に含まれる成分(X)の水素化ブロック共重合体(X)は、水素化ビニル芳香族重合体ブロックAと、イソブチレンを主体とする重合体のブロックBとを有する水素化ブロック共重合体である。この水素化ブロック共重合体(X)は、水素化ビニル芳香族重合体ブロックAの2以上と、イソブチレンを主体とする重合体のブロックBとを有することが好ましい。即ち、水素化ブロック共重合体(X)は、ブロックAの2以上と少なくとも1つのブロックBを有する水素化ブロック共重合体であることが好ましい。また、その重量平均分子量は10000以上200000以下であることが好ましい。
ただし、水素化ブロック共重合体(X)中の他のブロックCの含有量が多過ぎると、水素化ビニル芳香族重合体ブロックAとイソブチレンを主体とする重合体のブロックBとを含有することによる水素化ブロック共重合体(X)の効果が低下する傾向にあるため、水素化ブロック共重合体(X)が他のブロックCを含有する場合、その含有量は、水素化ブロック共重合体(X)の全重量に対して40重量%以下、特に20重量%以下であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物に含まれる成分(Y)は、エチレンと環状オレフィンの共重合体(y1)(以下、「共重合体(y1)」と称す場合がある。)、及び環状オレフィンの開環重合体の水素添加物(y2)(以下、「水添開環重合体(y2)」と称す場合がある。)から選ばれる非晶性(すなわち、DSC測定により融点が実質的に観測されない性質)を有するポリオレフィン(Y)である。なお、共重合体(y1)は、エチレンと環状オレフィンとからなる共重合体に限らず、エチレンと環状オレフィンとエチレン以外のオレフィンとの共重合体であってもよい。
共重合体(y1)におけるエチレンの共重合成分の環状オレフィンとしては、例えば、ノルボルネン、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−メチルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5,6−ジメチルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン等のノルボルネン類が挙げられる。これらの環状オレフィンは、更にアルキル基、ハロゲン、エステル、ニトリル、ピリジル等の極性基等の置換基を有していてもよい。これらの環状オレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ノルボルネン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンが好ましい。
水添開環重合体(y2)を構成する環状オレフィンとしては、例えば、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−メチルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5,6−ジメチルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−カルボキシメチルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン等のノルボルネン類などが挙げられる。これらの環状オレフィンは、更にアルキル基、ハロゲン、エステル、ニトリル、ピリジル等の極性基等の置換基を有していてもよい。これらの環状オレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物において、成分(X)の水素化ブロック共重合体(X)と成分(Y)の非晶性ポリオレフィン(Y)の含有割合は、成分(X)の水素化ブロック共重合体(X)が5〜90重量%で、成分(Y)の非晶性ポリオレフィン(Y)が95〜10重量%であることが好ましい。成分(X)の含有割合が上記下限値以上であると、成分(X)を配合することによる柔軟性と透明性、ガスバリア性のバランスが良好となる傾向にあり、成分(X)の含有割合が上記上限値以下であると成分(Y)を配合することによるガスバリア性の向上効果が良好となる傾向にあり、この効果をより良好なものとする観点から、より好ましい含有割合は、成分(X)が5〜80重量%、成分(Y)が95〜20重量%で、特に好ましくは成分(X)が10〜60重量%、成分(Y)が90〜40重量%である。
本発明の樹脂組成物は、成分(X)と成分(Y)を含むものであればよく、必要に応じてこれらの成分以外の他の樹脂成分、各種添加剤などを含んでいてもよい。
本発明の樹脂組成物は、例えば上記の各成分を機械的に溶融混練する方法によって製造することができる。ここで用いることができる溶融混練機としては、例えば単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、ロールミル等を挙げることができる。混練温度の下限は、通常100℃以上、好ましくは145℃以上、より好ましくは160℃以上である。混練温度の上限は、通常350℃、好ましくは300℃、より好ましくは250℃である。混練に際しては、各成分を一括して混練しても、また任意の成分を混練した後、他の残りの成分を添加して混練する多段分割混練法を用いてもよい。
本発明の樹脂組成物は、例えば射出成形(インサート成形法、二色成形法、サンドイッチ成形法、ガスインジェクション成形法等)、押出成形法、インフレーション成形法、Tダイフィルム成形法、ラミネート成形法、ブロー成形法、中空成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法等の成形法により種々の成形体に加工することができる。成形体の形状には特に制限はなく、シート、フィルム、板状、粒子状、塊状体、繊維、棒状、多孔体、発泡体等が挙げられ、好ましくはシート、フィルム、板状である。また、成形されたフィルムは一軸あるいは二軸延伸することも可能である。延伸法としては、ロール法、テンター法、チューブラー法等が挙げられる。さらに、通常工業的に利用されるコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理を施すこともできる。
本発明の樹脂組成物を成形してなる成形体の用途は特に限定されないが、一例として、下記のような用途を挙げることができる。すなわち、電気・電子部品分野における電線、コード類、ワイヤーハーネス等の被覆材料、絶縁シート、OA機器のディスプレイやタッチパネル、メンブレンスイッチ、写真カバー、リレー部品、コイルボビン、ICソケット、ヒューズケース、カメラ圧板、FDDコレット、フロッピーハブ、光学部品分野における光ディスク基板、光ディスク用ピックアップレンズ、光学レンズ、LCD基板、PDP基板、プロジェクションテレビ用テレビスクリーン、位相差フィルム、フォグランプレンズ、照光スイッチレンズ、センサースイッチレンズ、フルネルレンズ、保護メガネ、プロジェクションレンズ、カメラレンズ、サングラス、導光板、カメラストロボリフレクター、LEDリフレクター、自動車部品におけるヘッドランプレンズ、ウインカーランプレンズ、テールランプレンズ、樹脂窓ガラス、メーターカバー、外板、ドアハンドル、リアパネル、ホイールキャップ、バイザー、ルーフレール、サンルーフ、インパネ、パネル類、コントロールケーブル被覆材、エアーバッグ・カバー、マッドガード、バンパー、ブーツ、エアホース、ランプパッキン類、ガスケット類、ウィンドウモール等の各種モール、サイトシールド、ウェザーストリップ、グラスランチャンネル、グロメット類、制震・遮音部材、建材分野における目地材、手すり、窓、テーブルエッジ材、サッシ、浴槽、窓枠、看板、照明カバー、水槽、階段腰板、カーポート、高速道路遮音壁、マルチウォールシート、鋼線被覆材、照明灯グローブ、スイッチブレーカー、工作機械の保護カバー、工業用深絞り真空成形容器、ポンプハウジング、家電、弱電分野における各種パッキン類、グリップ類、ベルト類、足ゴム、ローラー、プロテクター、吸盤、冷蔵庫等のガスケット類、スイッチ類、コネクターカバー、ゲーム機カバー、パチンコ台、OAハウジング、ノートPCハウジング、HDDヘッド用トレー、計器類の窓、透明ハウジング、OA用ギア付きローラー、スイッチケーススライダー、ガスコックつまみ、時計枠、時計輪列中置、アンバーキャップ、OA機器用各種ロール類、ホース、チューブ等の管状成形体、異型押し出し品、レザー調物品、咬合具、ソフトな触感の人形類等の玩具類、ペングリップ、ストラップ、吸盤、時計、傘骨、化粧品ケース、ハブラシ柄等の一般雑貨類、ハウスウェア、タッパーウェア等の容器類、結束バンド、ブロー成形による輸液ボトル、食品用ボトル、ウォーターボトル、化粧品用等のパーソナルケア用のボトル等各種ボトル、医療用部品におけるカテーテル、シリンジ、シリンジガスケット、点滴筒、チューブ、ポート、キャップ、ゴム栓、ダイヤライザー、血液コネクター、義歯、ディスポーザブル容器等、が挙げられ、また、発泡成形による用途にも適用可能である。
上記のうち、特にチューブでは、薬効成分の吸着を防止できる医療用チューブに好適であり、多層チューブの場合は、その内層材または中間層材に最適である。
本発明の樹脂組成物は、特にその優れた耐衝撃性及び透明性とガスバリア性から、上記の各種用途のうち、フィルムの成形材料として有用である。
このようなフィルムは、後述の容器に加工成形するための原反フィルムとして、或いは、電子機器や携帯電話、スマートフォン等の表示面の保護フィルム等として有用であり、その優れた透明性によりフィルム下の表示面の視認性を損なうことがなく、また、その優れた耐衝撃性とガスバリア性から機器類の保護効果に優れたものとなる。
本発明の樹脂組成物は、特にその優れた耐衝撃性及び透明性とガスバリア性から、上記各種用途のうち、容器の成形材料として有用であり、その優れた透明性により内容物を容易に確認することができ、また、その優れた耐衝撃性とガスバリア性により、外部応力や、外気からの透過物、或いは内容物の気散による内容物の劣化や組成変化を防止して内容物を安定に保存することができる。特に、プレフィルドシリンジやアンプル、輸液バッグ等の医薬品容器の接液部材、さらに、それらが多層で構成される積層体の場合は、その内層材、中間層材として最適である。
(1)分子量:
水素化ブロック共重合体又はブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用し、下記条件で標準ポリスチレン換算にて求めた。
装置:日本ウォーターズ(株)製Waters 2690
検出器(RI検出):日本ウォーターズ(株)製Waters 2410
カラム:昭和電工株式会社製Shodex KF−604・KF−603・
KF−602.50の各1本を3本直列に連結したものを用いた。
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.7mL/min
温度:40℃
水素化ブロック共重合体の芳香環の水素化率(モル%)は、1H−NMRスペクトルを測定して算出した。
厚さ0.1mmのフィルムを成形し、このフィルムについて、JIS K7105に基づいて、全光線透過率及び拡散透過率を測定し、ヘーズを以下の式で算出した。ヘーズの値が小さいものほど、全光線透過率が大きいものほど透明性に優れたものと評価される。
[ヘーズ]=〔[拡散透過率]/[全光線透過率]〕×100
JIS K7113に基づき、横方向が測定方向となるように長さ400mm、幅10mm、厚み0.1mmのフィルム試験片を作製し、島津製作所製オートグラフAG−1000を用いて、温度23℃、引張速度1mm/minの条件で引張弾性率の測定を行った。なお、引張弾性率は柔軟性の指標であり、引張弾性率が小さい程柔軟性に優れたものと評価される。
厚さ0.1mmのフィルムを用いて、JIS K7129 B法(MOCON法)に準拠した赤外線センサー法にて水蒸気透過度(g/m2・24h)を求めた。水蒸気透過度の値が小さいものほどガスバリア性に優れたものと評価される。
<水素化ブロック共重合体の製造(ブロック共重合体の水素化)>
攪拌装置を備えたステンレス鋼製オートクレーブに、ポリスチレンブロック含有量が30重量%で、Mw=111000、Mn=82100のスチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体25重量部及びテトラヒドロフラン75重量部からなる溶液と、水素化触媒として5重量%パラジウム担持活性炭触媒4重量部を入れて混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素ガスを供給し、温度170℃、圧力10MPaにて4.5時間水素化反応を行った。
上記で得られた水素化ブロック共重合体15重量部と、前記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマー(R3及びR4がシクロペンチル環構造を形成しており、dは0であり、式(2)の繰り返し単位が前記式(3)で表されるジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物に相当しているもの)であって、前記式(3)で表されるジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物を分子全体の85モル%含む化合物(日本ゼオン社製「Zeonor(登録商標) 1020R」(MFR2.0g/分(230℃、21.2N))85重量部とを、テクノベル社製の、先端に幅150mm、リップ開度0.8mmのコートハンガータイプダイを設置した二軸押出し機KZW15(スクリュー径15mmφ、同方向2軸 L/D=45)にて、設定温度260℃、回転数500rpmで押し出し、150mmφの冷却ロールにてロール温度10℃、ライン速度5m/minで引き取ることで0.1mm厚のフィルムを得た。なお、「Zeonor(登録商標) 1020R」は表−1中、「(Y−1)」と表記した。
得られたフィルムを用いて、前記(3)〜(5)の評価を行い、結果を表−1に示した。
実施例1において、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体を水素化することなく、そのまま「Zeonor(登録商標) 1020R」と溶融混練したこと以外は同様にして樹脂組成物の調製とフィルム成形を行い、その評価結果を表−1に示した。なお、表−1において水素化していないスチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体を「(Z−1)」と表記した。
これに対して、水素化を行っていないブロック共重合体を用いた比較例1では、実施例1に比べて透明性もガスバリア性も劣る。
Claims (9)
- 下記成分(X)及び成分(Y)を含む樹脂組成物。
成分(X):水素化ビニル芳香族重合体ブロックAと、イソブチレンを主体とする重合体のブロックBとを有する水素化ブロック共重合体
成分(Y):エチレンと環状オレフィンの共重合体(y1)、及び環状オレフィンの開環重合体の水素添加物(y2)から選ばれる非晶性ポリオレフィン - 前記成分(X)の重量平均分子量が10000以上200000以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記成分(X)が、水素化ビニル芳香族重合体ブロックAを2以上有することを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
- 前記水素化ビニル芳香族重合体ブロックAが、芳香族環を水素化した水素化ポリスチレンブロックであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記水素化ビニル芳香族重合体ブロックAの芳香族環の水素化率が50モル%以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記イソブチレンを主体とする重合体のブロックBが、単量体成分として、イソブチレンを70重量%以上含有するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記成分(X)の含有量が5〜90重量%で前記成分(Y)の含有量が95〜10重量%であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなるフィルム。
- 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる容器。
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