以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は本発明の一実施形態に係る繰出容器を示す縦断面図であり、図2は図1の繰出容器を一部断面化して示す分解斜視図である。図1,2に示すように、本実施形態の繰出容器100は、塗布材Mを収容すると共に適宜使用者の操作により押し出し及び引き戻し可能とするものである。
この塗布材Mとしては、例えば、リップスティック、リップグロス、アイライナー、アイカラー、アイブロー、リップライナー、チークカラー、コンシーラー、美容スティック、ヘアーカラー等を始めとした種々の棒状化粧料、筆記用具等の棒状の芯等を用いることが可能であり、特に、非常に軟らかい(半固体状、軟固形状、軟質状、ゼリー状、ムース状、及びこれらを含む練り状等の)棒状体を用いるのが好適である。また、外径が1mm以下の細径棒状物や10mm以上の太めの棒状体が使用可能である。
繰出容器100は、塗布材Mが充填される充填領域1xを内部に備え吐出口1aを先端に有する先筒1と、その前半部に先筒1の後半部を内挿して該先筒1を軸線方向及び軸線回り回転方向(以下、単に「回転方向」ともいう)に係合し一体となるように連結する本体筒2と、この本体筒2の後端部に相対回転可能にして軸線方向に連結された操作筒3と、を外形構成として具備し、先筒1及び本体筒2により容器前部が構成されると共に、操作筒3により容器後部が構成されている。なお、「軸線」とは、繰出機構100の前後に延びる中心線を意味し、「軸線方向」とは、軸線に沿った方向を意味する(以下、同じ)。
この繰出容器100は、その内部に、回転止筒4、移動螺子筒5、移動体(移動部)6及びピストン(移動部)7を概略備えている。回転止筒4は、本体筒2に対し相対回転可能にして軸線方向に係合する。移動螺子筒5は、本体筒2に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合すると共に、回転止筒4に第1の螺合部(繰出機構)8を介して螺合する。移動体6は、操作筒3に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合すると共に、移動螺子筒5に第2の螺合部(繰出機構)9を介して螺合する。ピストン7は、移動体6の前端(先端)部に装着されて充填領域1xの後端を形成する。また、本実施形態の繰出容器100は、先筒1に対し軸線方向に摺動可能に内挿されて収容されたパイプ部材10と、パイプ部材10を所定付勢力Fsで前方へ付勢するバネ部材14と、を備えている。
この繰出容器100では、初期状態において本体筒2(先筒1でも可)と操作筒3とが一の回転方向である一方向に相対回転されると、移動螺子筒5が前進(軸線方向の一方側へ移動)し、移動体6が移動螺子筒5に伴われて前進すると同時に移動螺子筒5に対し単独でも前進する。これにより、先筒1及びパイプ部材10に対しピストン7が前進する。そして、移動螺子筒5が前進限に達した後に本体筒2と操作筒3とがさらに同方向に相対回転されると、移動体6が移動螺子筒5に対し単独で前進し、先筒1及びパイプ部材10に対しピストン7が引き続き前進する。
他方、本体筒2と操作筒3とが一方向と反対の回転方向である他方向に相対回転されると、移動螺子筒5が後退(軸線方向の他方側へ移動)し、移動体6が移動螺子筒5に伴われて後退すると同時に移動螺子筒5に対し単独でも後退する。これにより、先筒1に対しピストン7及びパイプ部材10がともに後退する。そして、移動螺子筒5が後退限に達した後に本体筒2と操作筒3とがさらに同方向に相対回転されると、移動体6が移動螺子筒5に対し単独で後退し、先筒1に対しピストン7及びパイプ部材10がともに引き続き後退し、その後、パイプ部材10の後退が停止し、先筒1及びパイプ部材10に対しピストン7が後退する。
図1に示すように、本体筒2は、例えばABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの共重合合成樹脂)で成形され、円筒状に構成されている。本体筒2は、その軸線方向中央部の内周面に、先筒1及び移動螺子筒5を回転方向に係合するものとして、周方向に多数の凹凸部が並設されて当該凹凸部が軸線方向に所定長延びてなるローレット2aを有している。また、本体筒2の前端部の内周面には、先筒1を軸線方向に係合するための環状凹凸部(凹凸部が軸線方向に並ぶもの)2bが設けられている。
この本体筒2の内周面でローレット2aの後側には、回転止筒4を軸線方向に係合するものとして、内周面に沿って周方向に延在する円弧状凸部2cが互いに対向するように一対形成されている。さらにまた、本体筒2の内周面で円弧状凸部2cの後側には、操作筒3を軸線方向に係合するものとして、内周面に沿って周方向に延在する円弧状凸部2dが、互いに対向するように一対形成されている。これら円弧状凸部2c,2dは、軸線方向視において互いに重ならないように、周方向に間欠的(ズレて)に設けられている。また、本体筒2は、その前端部に円筒部材21を有している。
図3は、図1の繰出容器の操作筒を示す分解斜視図である。図3に示すように、操作筒3は、本体部31と、本体部31の後端部に外挿された有底円筒状の尾栓部38と、尾栓部38内に設けられた円柱状の錘部39と、を含んで構成されている。本体部31は、例えばABS樹脂で成形され、前方に開口する有底円筒状に構成された筒部31xと、前端側に向かうように筒部31xの底部中央に立設された軸体31yと、を有している。
筒部31xの外周面の前部には、本体筒2に軸線方向に係合し且つ回転止筒4の後端に突き当たる環状凸部32が設けられている。また、筒部31xの外周面の中央には、本体筒2の後端面に当接するためのものとして、円環状の鍔部33が設けられている。さらにまた、筒部31xの後端部には、尾栓部38を軸線方向に係合するための凸部34と、尾栓部38を回転方向に係合するための溝部35が設けられている。
この筒部31xは、ラチェット歯を構成する複数の凸部36を有している。凸部36は、回転止筒4の凸部44(後述)と係合するものとして、筒部31xの外周面の前側において径方向外側に向かって突設されている。ここでの凸部36は、周方向に鋸歯形状を呈し、外周面において周方向八等配の位置に設けられている。
これら凸部36における周方向の一方側(本体筒2と操作筒3とを他方向に相対回転したときに回転止筒4の凸部44と当接する側)の側面36aは、山型になるように外周面に対し傾斜している。一方、凸部36における周方向の他方側(本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときに回転止筒4の凸部44と当接する側)の側面36bは、外周面に対し側面36aと同じ方向に傾斜し、周方向内側に入り込むように構成されている。
軸体31yは、非円形の外形を有する構成とされている。具体的には、軸体31yは、円柱体の外周面に、周方向六等配の位置に径方向外側に突出するよう配置されて軸線方向に延びる突条37を備えた横断面非円形形状とされている。
尾栓部38は、例えばABS樹脂で成形され、本体部31の後部を覆うように該本体部31に同期回転可能且つ軸線方向移動不能に装着されている。錘部39は、金属で形成され、尾栓部38に覆われるよう本体部31と尾栓部38との間に配置されている。この錘部39によって、繰出容器100全体に対し重量感を与えることができ、高級感を高めることが可能となる。
図1,3に示すように、本体部31、尾栓部38及び錘部39からなる操作筒3は、その本体部31の前側が本体筒2に内挿され、その鍔部33が本体筒2の後端面に突き当てられると共に、本体部31の環状凸部32が本体筒2の円弧状凸部2dに軸線方向に係合することで、本体筒2に相対回転可能にして軸線方向に連結され装着されている。このとき、径方向における本体部31と本体筒2との間にOリングRが介在されており、これにより、本体筒2と操作筒3との相対回転に適度な回転抵抗が付与される。
図4は図1の繰出容器の回転止筒における軟質部を示す斜視図、図5は図1の繰出容器の回転止筒における硬質部を示す斜視図である。図4,5に示すように、回転止筒4は、軟質部104と、軟質部104の前側に外挿されて固定される硬質部105と、を含んで構成されている。
図4に示すように、軟質部104は、その前側に位置する円筒状の小径部104xと、該小径部104xの後側に段差面104pを介して連続する円筒状の大径部104yと、を有している。小径部104xの内周面において前側には、リード12mmでピッチ2mmの第1の螺合部8の一方を構成する雌螺子としての突条41が複数設けられている。これら突条41は、内周面に沿って螺旋状を成して延びると共に、隣接する突条41の端部同士は、軸線方向に互いにズレて離間している。また、突条41は、軸線方向視において互いに重ならないように間欠的に6つ設けられている。
大径部104yは、ラチェット歯を構成する複数の凸部44を有している。凸部44は、操作筒3の凸部36と周方向に係合するものとして、大径部104yの内周面の後側にて径方向内側に向かって突設されている。ここでの凸部44は、周方向に鋸歯形状を呈し、内周面において周方向四等配の位置に設けられている。
これら凸部44における周方向の他方側(本体筒2と操作筒3とを他方向に相対回転したときに操作筒3の凸部36と当接する側)の側面44aは、山型になるように外周面に対し傾斜している。一方、凸部44における周方向の一方側(本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転したときに操作筒3の凸部36と当接する側)の側面44bは、外周面に対し側面44aと同じ方向に傾斜し、周方向内側に入り込むように構成されている。
この軟質部104は、移動螺子筒5及び操作筒3よりも軟らかいものとされている。具体的には、軟質部104は、移動螺子筒5の材質であるPOM(ポリアセタール)よりも軟らかく、且つ、操作筒3の材質であるABS樹脂よりも軟らかい材質で成形されており、ここでは、熱可塑性エラストマでインジェンクション成形されている。なお、熱可塑性エラストマとしては、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、等の何れのものを用いることができる。
図5に示すように、硬質部105は、筒状を呈しており、その内径が軟質部104の小径部104xの外径と等しくされている。硬質部105の外周面の後端部には、本体筒2に軸線方向に係合するための環状凸部106が設けられている。また、硬質部105の内周面の前端部には、軟質部104に対する挿入方向を規制する(つまり、前後方向が逆にならないようにする)ためのものとして、環状凸部107が設けられている。
この硬質部105は、軟質部104よりも硬いものとされている。具体的には、硬質部105は、POM、ABS樹脂又はHDPE(高密度ポリエチレン)でインジェンクション成形されており、軟質部104よりも硬度が大きいものとなっている。そして、硬質部105は、図1に示すように、その環状凸部107が前側に位置する状態にして、その後端面105a(図8参照)が段差面104pに当接するまで軟質部104の小径部104xに外挿され、嵌合されて装着(固定)されている。
図1,4,5に示すように、軟質部104及び硬質部105からなる回転止筒4は、その前側から本体筒2に内挿され、その環状凸部106が本体筒2の円弧状凸部2cに軸線方向に係合している。また、回転止筒4は、その後側が操作筒3の本体部31に外挿され、その後端面が環状凸部32(図4参照)に突き当てられている。これにより、回転止筒4は、軸線方向に挟持され、本体筒2に対して相対回転可能にして軸線方向に係合され装着される。
これと共に、回転止筒4は、軟質部104の凸部44が操作筒3の凸部36に当接し、回転方向(周方向)に係合している。これにより、凸部44と凸部36との間には、例えば軟質部104の柔軟性に起因した弾性力(可撓性)等によって、所定係合力が生じることとなる。その結果、操作筒3と回転止筒4とは、一方向に相対回転される場合に同期回転可能となり、また、他方向に相対回転される場合、小回転力が加わると同期回転可能となると共に大回転力が加わると相対回転可能となる(詳しくは後述)。
図6は、図1の繰出容器の移動螺子筒を示す斜視図である。図6に示すように、移動螺子筒5は、例えばPOMで成形され、筒状を呈している。移動螺子筒5の前端部5xは、前端から軸線方向に所定長延在し対向するよう一対形成されたスリット51によって、径方向外側に拡開可能に構成されている。前端部5xの外周面の前側においてスリット51に近接する位置には、前端部5xの外径を調整するためのものとして、複数(ここでは4つ)の凸部52が設けられている。
また、前端部5xの内周面において前端から所定長後方に亘る領域には、第2の螺合部9の一方を構成する雌螺子53が設けられている。なお、ここでの第2の螺合部9のピッチは、第1の螺合部8のピッチより細かいものとされており、第1の螺合部8のリード(本体筒2と操作筒3との相対回転一回転当たりの推進量)が第2の螺合部9のリードよりも大きく設定されている。
また、移動螺子筒5の中央部の外周面における後側には、円環状の鍔部54が設けられている。鍔部54の外周面には、本体筒2のローレット2a(図1参照)に係合するものとして、軸線方向に沿って延びる突条55が複数設けられている。また、移動螺子筒5の後端部の外周面には、第1の螺合部8の他方を構成する雄螺子としての突条56が設けられている。これら突条56は、外周面おいて軸線を挟んで対向する一対の対向部分に設けられている。つまり、かかる対向部分にのみ螺旋状を成して延在するように、間欠的に設けられている。
図1,6に示すように、この移動螺子筒5は、本体筒2に内挿され、その突条55が本体筒2のローレット2aに係合することで、本体筒2に対し回転方向に係合し且つ軸線方向移動可能に装着されている。また、移動螺子筒5は、操作筒3の軸体31yに外挿されると共に、その後端部の突条56が回転止筒4の軟質部104の突条41と螺合するように構成されている。ここでは、軟質部104が軟らかいことから、第1の螺合部8の螺合作用を充分に発揮させるべく、複数の突条56が複数の突条56に同時に係合するようになっている。
図1に示すように、移動体6は、例えばPOMで成形され、先端側に鍔部6aを有する円筒状に構成されている。移動体6は、その鍔部6aより後側から後端部に亘る外周面に、第2の螺合部9の他方を構成する雄螺子6bを備えている。この移動体6の内周面において周方向六等配の位置には、操作筒3に回転方向に係合するものとして、放射状に突出し軸線方向に延びる突条6cが設けられている。この移動体6は、その後端側から、操作筒3の軸体31yと移動螺子筒5との間に外挿されている。このとき、移動体6は、その雄螺子6bが移動螺子筒5の雌螺子53と螺合すると共に、その突条6cが軸体31yの突条37,37間に進入し回転方向に係合することで、操作筒3に対し同期回転可能且つ軸線方向移動可能に装着されている。
ピストン7は、例えばPP(ポリプロピレン)、HDPE、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)等で成形されている。ピストン7は、前端に向けて先細りとされた釣り鐘形状を呈しており、後端面に凹設された凹部7aの内周面には、移動体6に対し軸線方向に所定長だけ移動可能にして係合する環状突部7bが設けられている。このピストン7は、移動体6に外挿され、その環状突部7bが移動体6に軸線方向に係合することで、移動体6に対し同期回転可能且つ軸線方向に一定量相対移動可能(所定の範囲内を移動可能)に装着されている。これら移動体6及びピストン7は、第3摺動抵抗力F3でもって軸線方向に互いに摺動可能とされている。
図7,8は図1の繰出容器の先筒を示す斜視図、縦断面図であり、図9,10は図1の繰出容器のパイプ部材を示す斜視図、縦断面図である。図7,8に示すように、先筒1は、円筒形状を成し、その前端の開口が塗布材Mを出現させるための吐出口1aとされている。この先筒1は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PCTA(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)樹脂やABS樹脂等で成形されている。吐出口1aは、軸線方向に対し所定角度で傾斜する傾斜角度面により形成されている。なお、吐出口1aは、軸線方向の垂直面で形成するフラット形状とする場合や山形形状とする場合もある。
また、先筒1の外周面には、本体筒2の環状凹凸部2bに軸線方向に係合するための環状凸凹部1bが設けられている。また、先筒1の外周面において環状凸凹部1bより後側には、本体筒2のローレット2aに回転方向に係合するものとして、軸線方向に延びる突条1gが設けられている。
この先筒1の軸線方向に貫通する筒孔11においては、先端の吐出口1aから所定長後側の領域に、塗布材Mのみを進退させるための塗布材孔11aが形成されている。また、筒孔11では、塗布材孔11aから後側の領域に、パイプ部材10を塗布材Mとともに進退させるためのパイプ部材孔11bが形成されている。
パイプ部材孔11bは、塗布材孔11aよりも大径とされ、パイプ部材10を軸線方向に摺動可能に内挿し収容する。このパイプ部材孔11bの後端部には、パイプ部材10に対し回転方向に係合するものとして、径方向に貫通し且つ軸線方向に延びる孔部12xと軸線方向に延びる溝部12yとが、互いに対向するように設けられている。
これら塗布材孔11a及びパイプ部材孔11bの間には、パイプ部材10の前進を停止させるものとして、パイプ部材10の先端面に軸線方向に係合する段差面11cが形成されている。段差面11cは、パイプ部材10の先端に対応する面形状を成し、ここでは、吐出口1aに対応する角度(上記所定角度)で傾斜する傾斜角度面により形成されている。
また、パイプ部材孔11bにおける軸線方向中央部には、パイプ部材10の肉厚を確保しつつ成形性を安定させるための段差面11dが形成されている。段差面11dは、周方向に延在し、且つ軸線方向に対し後側が拡径するよう傾斜する環状傾斜面とされている。これにより、パイプ部材孔11bでは、段差面11dよりも後側の孔径が該段差面11dよりも前側の孔径に対し若干大きくなっている。
図1に示すように、パイプ部材10は、円筒形状を成し、その前端の開口は、吐出口1aと同様に、上記所定角度で傾斜する傾斜角度面により形成されている。パイプ部材10は、その内部に充填領域1xを備えている。すなわち、パイプ部材10においては、塗布材Mが充填されて装填され、その内部に塗布材Mが軸線方向に摺動可能に密着している。パイプ部材10及び塗布材Mは、第2摺動抵抗力F2でもって軸線方向に互いに摺動可能とされている。
このパイプ部材10の内径は、先筒1の塗布材孔11aの内径と等しくされている。これにより、パイプ部材10が先筒1のパイプ部材孔11b内に収容にされたとき、パイプ部材10の内周面と先筒1の塗布材孔11aの内周面とが面一とされている。一方、パイプ部材10の外径は、先筒1のパイプ部材孔11bの内径に対し僅かに(例えば15/100mm)小さくされている。これにより、パイプ部材10が先筒1のパイプ部材孔11b内に収容にされたとき、径方向においてパイプ部材10と先筒1との間に所定クリアランスが形成され、その結果、パイプ部材10が先筒1に対し軸線方向に摺動可能とされる。
図9,10に示すように、このパイプ部材10の外周面において軸線方向中央部の前側には、パイプ部材孔11bの段差面11d(図8参照)に対応するものとして、段差面10aが形成されている。この段差面10aは、段差面11dと同様な環状傾斜面とされている。すなわち、段差面10aは、周方向に延在し、且つ軸線方向に対し後側が拡径するよう傾斜している。これにより、パイプ部材10では、段差面10aよりも後側の外径が該段差面10aよりも前側の外径に対し若干大きくなっている。
また、パイプ部材10の外周面において軸線方向中央部の後側には、パイプ部材孔11bの孔部12x及び溝部12yそれぞれに対し回転方向に係合するものとして、軸線方向に短尺に延びる一対の突条10x,10yが互いに対向するように設けられている。パイプ部材10の外周面において突条10x,10yの後側には、径方向外側に突出し且つ周方向に沿って延在する突部としての鍔部10bが設けられている。
鍔部10bは、バネ部材14の前端面に当接されて所定付勢力で前方へ付勢されるものであり、ここでは、円環形状の外周面に二平面部10c,10cを対向して設けた形状に構成されている。また、パイプ部材10における鍔部10bの後側には、組付けの際に充填領域1x内のエアを外部へ排出するためのものとして、断面円形状で径方向に貫通するエア排出孔10dが設けられている。エア排出孔10dは、互いに対向するように一対形成されている。
図1,7〜10に示すように、先筒1では、そのパイプ部材孔11bにパイプ部材10が内挿されて収容され、パイプ部材10が先筒1に対し軸線方向に摺動可能とされている。このとき、孔部12xに突条10xが回転方向に係合されると共に、溝部12yに突条10yが回転方向に係合され、これにより、先筒1に対するパイプ部材10の相対回転が規制されている。
このようにパイプ部材10が組み付けられた先筒1は、その後側から本体筒2と移動螺子筒5との間に挿入され、その環状凸凹部1bに本体筒2の環状凹凸部2bが軸線方向に係合すると共に、その突条1gに本体筒2のローレット2aが回転方向に係合することで、本体筒2に軸線方向及び回転方向に係合されて装着され、当該本体筒2と一体化されている。
また、先筒1のパイプ部材10内の後端部には、ピストン7が気密に密着するようにして内挿されている。具体的には、ピストン7は、パイプ部材10に内挿されて該パイプ部材10内における塗布材Mの後側に位置する共に、パイプ部材10に対し気密になるよう密接し、第1摺動抵抗力F1でもってパイプ部材10に対し軸線方向に摺動可能とされている。
図11は、図1の繰出容器のバネ部材を示す斜視図である。図11に示すように、バネ部材14は、円筒コイルバネであり、その弾性力によって軸線方向に所定付勢力Fsを付与する。バネ部材14は、パイプ部材10を前方へ付勢する。また、このバネ部材14は、移動螺子筒5が一定量前進して第1の螺合部8の螺合作用が解除されたとき、第1の螺合部8が螺合復帰するよう移動螺子筒5を後方へ付勢する。所定付勢力Fsは、バネ部材14の伸縮度合いに応じて、その値(大きさ)が変化するものである。
このバネ部材14としては、例えば、POMやPP(ポリプロピレン)等の樹脂を利用し一部を切り欠いた円筒形状を射出成形で製造した樹脂バネや、ステンレス製線材をコイル状にしたスプリングを採用することができる。なお、ここでいう「螺合復帰」は、第1の螺合部8の雄螺子としての突条56が、雌螺子としての突条41の螺子山の側面に当接するまで戻る段階を意味している(以下、同じ)。
ここで、バネ部材14の所定付勢力Fsは、下式(1)に示すように、パイプ部材10及びピストン7間の上記第1摺動抵抗力F1と、パイプ部材10及び塗布材M間の上記第2摺動抵抗力F2との合計よりも小さい値とされている。これにより、バネ部材14は、パイプ部材10を前方へ所定付勢力Fsで付勢することで、塗布材Mが充填された後には、ピストン7の進退に応じてパイプ部材10を先筒1に対し進退させる。
Fs < F1+F2 …(1)
或いは、所定付勢力Fsは、少なくともパイプ部材10が前進限に位置するとき、下式(1)’に示すように、上記第1摺動抵抗力F1よりも大きくされ、且つ、上記第1摺動抵抗力F1と上記第2摺動抵抗力F2との合計よりも小さい値とされている。ここでは、所定付勢力Fsは1.8Nとされ、上記第1摺動抵抗力F1が1.3Nとされ、上記第1摺動抵抗力F1と上記第2摺動抵抗力F2との合計が2.6Nとされている。これにより、バネ部材14は、パイプ部材10を前方へ所定付勢力Fsで付勢することで、充填領域1xに塗布材Mが充填される前には、ピストン7の移動によらずパイプ部材10を先筒1に対し前進させて前進限に常に位置させる一方、塗布材Mが充填された後には、ピストン7の進退に応じてパイプ部材10を先筒1に対し進退させる。
F1 < Fs < F1+F2 …(1)’
特に、本実施形態の所定付勢力Fsは、下式(2)に示すように、上記第1摺動抵抗力F1と上記第2摺動抵抗力F2とピストン及び移動体6間の上記第3摺動抵抗力との合計よりも小さい値とされている。或いは、所定付勢力Fsは、下式(2)’に示すように、上記第3摺動抵抗力F3よりも大きくされ、且つ、上記第1摺動抵抗力F1と上記第2摺動抵抗力F2と上記第3摺動抵抗力との合計よりも小さい値とされている。
Fs < F1+F2+F3 …(2)
F3 < Fs < F1+F2+F3 …(2)’
図1に示すように、このバネ部材14は、パイプ部材10の後端部に外挿され、その前端面がパイプ部材10の鍔部10bの後面に当接されていると共に、その後端面が移動螺子筒5の鍔部54(図7参照)の前面に当接されて装着されている。これにより、バネ部材14は、鍔部10b,54によって軸線方向に挟持され、その圧縮の弾性力によりパイプ部材10を前方へ所定付勢力Fsで付勢すると共に、移動螺子筒5を後方へ所定付勢力Fsで付勢する。
次に、繰出容器100の動作の一例について、図12〜図15を参照しつつ説明する。
例えば図1,12(a)に示す初期状態の繰出容器100にあっては、先筒1の塗布材孔11aとパイプ部材10の内周面とピストン7とに塗布材Mが密着して装填された状態にある。そして、パイプ部材10は、前進限の状態(パイプ部材10の先端面が先筒1の段差面11cに当接する状態)とされており、その後端面が移動螺子筒5の鍔部54よりも前側に離れて位置し、先筒1に対して後退可能な状態とされている。
この初期状態の繰出容器100において、使用者によりキャップC(図1参照)が取り外されて本体筒2と操作筒3とが繰り出し方向である一方向に相対回転されると、図12(b)に示すように、回転止筒4の凸部44が操作筒3の凸部36に当接して回転方向に係止(強固に係合)され、操作筒3と回転止筒4とが同期回転する。これにより、移動螺子筒5と操作筒3及び回転止筒4とが相対回転し、移動螺子筒5の突条56及び回転止筒4の突条41により構成された第1の螺合部8の螺合作用が働き、移動螺子筒5の突条55と先筒1の突条1g(図7参照)とで構成された回止め部との協働により、移動螺子筒5が前進し、これに伴って移動体6が前進する。
これと同時に、先筒1及び移動螺子筒5と移動体6とが相対回転し、移動螺子筒5の雌螺子53及び移動体6の雄螺子6bにより構成された第2の螺合部9の螺合作用が働き、操作筒3における軸体31yの突条37と移動体6の突条6cとで構成された回止め部との協働により、移動体6が前進する。すなわち、移動体6が移動螺子筒5に伴われて前進すると同時に移動螺子筒5に対し単独でも前進する。
その結果、移動体6がピストン7に対し所定量前進し、移動体6がピストン7の後端面に当接してピストン7を前方に押圧し、先筒1及びパイプ部材10に対しピストン7が前進する。よって、先筒1及びパイプ部材10内で塗布材Mが繰り出され(前進され)、塗布材Mが吐出口1aから出現する。
続いて、一方向の相対回転が続けられると、移動螺子筒5の突条56が回転止筒4の突条41の前端から外れ、第1の螺合部8の螺合作用が解除され、移動螺子筒5が前進限に達する。よって、一方向の相対回転がさらに続けられると、バネ部材14の縮小の弾性力により螺合復帰するよう第1の螺合部8が付勢されながら第2の螺合部9の螺合作用のみが作用し、先筒1及びパイプ部材10に対しピストン7が前進し、塗布材Mがゆっくり前進する。
なお、第2の螺合部9の螺合作用のみが働きピストン7がさらに前進するときには、螺合解除された第1の螺合部8がバネ部材14の付勢力で螺合復帰する方向に付勢されていることから、突条41,56同士の係合及び係合解除が繰り返され(つまり、一対のクリック突起として突条41,56が互いに当接したり離れたりするのが繰り返され)、かかる係合及び係合解除の度に使用者にクリック感が付与され、塗布材Mの押出しが使用者に感知される。このとき、上述したように、突条41が突条56よりも軟らかくされている(柔軟性を有している)ため、生じるクリック感のクリック音(音量)が小さくされると共に、該クリック音が低音域で重厚なものとされる。
ちなみに、移動螺子筒5の前進限のときには、バネ部材14の縮小の弾性力により移動螺子筒5が後方へ付勢されていることから、繰戻し方向である他方向へ本体筒2と操作筒3とが相対回転された場合、移動螺子筒5の突条56が回転止筒4の突条41における回転方向隣の先端に直ちに進入し、第1の螺合部8が直ちに螺合復帰する。
次に、この状態から、本体筒2と操作筒3とが他方向へ相対回転されると、図13(a)に示すように、操作筒3及び回転止筒4に小回転力が加わり、回転止筒4の凸部44の側面44a(図4参照)が操作筒3の凸部36の側面36a(図3参照)に当接して所定係合力で周方向に係合され、操作筒3と回転止筒4とが同期回転することから、移動螺子筒5と操作筒3及び回転止筒4とが相対回転し、第1の螺合部8の螺合作用が働いて移動螺子筒5が後退し、これに伴って移動体6が後退する。これと同時に、先筒1及び移動螺子筒5と移動体6とが相対回転し、第2の螺合部9の螺合作用が働いて移動体6が後退する。すなわち、移動体6は、移動螺子筒5に伴われて後退すると同時に移動螺子筒5に対し単独でも後退する。
その結果、移動体6がピストン7に対し所定量後退し、移動体6の先端部がピストン7環状突部7bに係合してピストン7を後方に引っ張り、先筒1に対しピストン7が後退すると共に、パイプ部材10がピストン7と一体的に後退する。よって、パイプ部材10の後退に伴われて塗布材Mも先筒1に対して繰り戻される(つまり、先筒1に対しパイプ部材10が塗布材Mとともに後退される)。
先筒1に対しパイプ部材10が後退するときには、先筒1の孔部12x及び溝部12yに突条10x,10yが回転方向に係合されていることから、先筒1に対するパイプ部材10の後退を案内(ガイド)でき、パイプ部材10を周方向に回転させずにそのまま真っ直ぐ後退させることができる。よって、パイプ部材10が移動する際、パイプ部材10の先端側の開口における傾斜角度面が、吐出口1aの傾斜角度面と常に略平行な状態にされる。
続いて、他方向の相対回転が続けられると、図13(b)に示すように、移動螺子筒5の鍔部54が回転止筒4の前端面に当接し、第1の螺合部8の螺合作用が停止され、移動螺子筒5が後退限に達する。そして、第1の螺合部8における螺合作用の停止前よりも大きい操作回転力で本体筒2と操作筒3とが他方向へ相対回転され、操作筒3及び回転止筒4に大回転力が加わると、凸部44が凸部36の側面36aを駆け上がるように摺動して凸部36を乗り越え、操作筒3と回転止筒4とが相対回転(いわゆる「空回転」)される。その結果、第2の螺合部9の螺合作用のみが作用し、先筒1に対しパイプ部材10がピストン7の後退に伴って塗布材Mとともにゆっくり後退し、その後、先筒1の孔部12xの後端面にパイプ部材10の突条10xが当接する。これにより、先筒1に対するパイプ部材10の後退が停止する(パイプ部材10が後退限に達する)。
続いて、他方向の相対回転が引き続き続けられると、第2の螺合部9の螺合作用のみが引き続き作用し、停止したパイプ部材10に対してピストン7が後退し、先筒1内の減圧作用(密閉状態を保つ作用)によりピストン7の後退に従って塗布材Mが先筒1内で引き戻されて後退(つまり、先筒1及びパイプ部材10に対し塗布材Mが後退)する。
なお、第2の螺合部9の螺合作用のみで移動体6がさらに後退する際に回転止筒4の凸部44が操作筒3の凸部36を乗り越えるとき、クリック感が生じる。すなわち、移動体6がさらに後退するに際して、凸部44,36同士の係合及び係合解除(噛合及び噛合解除)が繰り返され、かかる係合及び係合解除の度に使用者にクリック感が付与される。これにより、相対回転1回転当り8回のクリック感が生じ、ピストン7及び移動体6の後退が感知される。このとき、上述したように、凸部44が凸部36よりも軟らかくされている(柔軟性を有している)ため、生じるクリック感のクリック音が小さくされると共に、該クリック音が低音域で重厚なものとされている。
次に、この状態から、本体筒2と操作筒3とが一方向へ再び相対回転されると、図14(a)に示すように、操作筒3と回転止筒4とが同期回転し、移動螺子筒5と操作筒3及び回転止筒4とが相対回転し、第1の螺合部8の螺合作用が働いて移動螺子筒5が前進し、これに伴って移動体6が前進する。これと同時に、先筒1及び移動螺子筒5と移動体6とが相対回転し、第2の螺合部9の螺合作用が働いて移動体6が前進する。すなわち、移動体6が移動螺子筒5に伴われて前進すると同時に移動螺子筒5に対し単独でも前進する。
その結果、先筒1及びパイプ部材10に対しピストン7が前進すると共に、パイプ部材10の先端面が先筒1の段差面11cよりも後側に離れて位置し、パイプ部材10が先筒1に対し前進可能な状態であるため、パイプ部材10がピストン7と一体的に前進する。よって、パイプ部材10の前進に伴われて塗布材Mも先筒1に対して繰り出される(つまり、先筒1に対しパイプ部材10が塗布材Mとともに前進される)。このとき、前述のように、先筒1の孔部12x及び溝部12yに突条10x,10yが回転方向に係合されていることから、パイプ部材10を周方向に回転させずにそのまま真っ直ぐ前進させることができる。
続いて、一方向の相対回転が続けられると、第1の螺合部8の螺合作用が解除され、移動螺子筒5が前進限に達した後、螺合復帰するよう第1の螺合部8がバネ部材14で付勢されながら第2の螺合部9の螺合作用のみが作用し、先筒1に対しパイプ部材10がピストン7の前進に伴って塗布材Mとともにゆっくり前進する。そしてその後、図14(b)に示すように、先筒1の段差面11cにパイプ部材10の先端面が軸線方向に係合し、先筒1に対するパイプ部材10の前進が停止する(パイプ部材10が前進限に達する)。
続いて、一方向の相対回転が引き続き続けられると、図15(a)に示すように、螺合復帰するよう第1の螺合部8がバネ部材14で付勢されながら第2の螺合部9の螺合作用のみが引き続き作用し、停止したパイプ部材10内においてピストン7により塗布材Mが押し出されて前進(つまり、先筒1及びパイプ部材10に対し塗布材Mが前進)する。その後、移動体6及びピストン7が前進限に達する。
ちなみに、移動体6及びピストン7の前進限の状態では、移動体6の突条6cが操作筒3の突条37から外れているものの第2の螺合部9が螺合されたままであることから、第2の螺合部9及び移動螺子筒5を介して移動体6がバネ部材14で後方に引っ張られる。そのため、かかる前進限の状態にて本体筒2と操作筒3とが他方向へ相対回転された場合、突条6c,37同士が直ちに係合して回止め部が働き、移動体6及びピストン7が直ちに後退する。
次に、この状態から、本体筒2と操作筒3とが他方向へ再び相対回転されると、図15(b)に示すように、操作筒3と回転止筒4とが同期回転し、移動螺子筒5と操作筒3及び回転止筒4とが相対回転し、第1の螺合部8の螺合作用が働いて移動螺子筒5が後退し、これに伴って移動体6が後退する。これと同時に、先筒1及び移動螺子筒5と移動体6とが相対回転し、第2の螺合部9の螺合作用が働いて移動体6が後退する。すなわち、移動体6は、移動螺子筒5に伴われて後退すると同時に移動螺子筒5に対し単独でも後退する。
その結果、上述した図13(a)に示す状態と同様に、移動体6が後退し、先筒1に対しピストン7が後退すると共に、パイプ部材10がピストン7と一体的に後退する。よって、パイプ部材10の後退に伴われて塗布材Mも先筒1に対して繰り戻される。
なお、移動体6の後端が操作筒3の本体部31の底面に近接し、移動体6の鍔部6が移動螺子筒5の前端部5xの端面に当接すると、移動体6及びピストン7が後退限に達する。この後退限の状態では、その後に他方向に相対回転されて過大な回転力が第2の螺合部9に加わっても、スリット51(図6参照)によって前端部5xが拡開されて第2の螺合部9の螺合作用が解除される。
以上に説明した繰出容器100において、充填領域1xへの塗布材Mの装填は、通常、溶融した塗布材Mを先筒1の先端側から充填領域1x内へ注入して冷却固化することで実現される。ここで、上述したように、パイプ部材10がバネ部材14により前方へ所定付勢力Fsで付勢されているため、塗布材Mの充填前においては、パイプ部材10が先筒1に対し後退することが抑制される。ここでのパイプ部材10は、塗布材Mの充填前において、バネ部材14により前方へ所定付勢力Fsで付勢されることにより所定位置に位置しており、当該所定位置よりも後退不能とされている。
例えば、塗布材Mの充填前には、パイプ部材10は、前方へ所定付勢力Fsで付勢され、先筒1に対し所定位置(例えば、前進限から1mm後方の位置)まで前進した位置にある。そして、ピストン7は、パイプ部材10及びピストン7間の第1摺動抵抗力F1によりパイプ部材10の前進に伴って前方へ付勢され、一定量範囲内で移動体6に対し前進した位置にある。
この状態において、本体筒2と操作筒3とが一方向へ相対回転されると、まず、パイプ部材10が停止した状態で、移動体6がピストン7に対して第3摺動抵抗力F3により摺動しつつ前進する。その後、移動体6及びピストン7が一体的に前進し、これに伴って、第1摺動抵抗力F1によりパイプ部材10が先筒1に対し前進する。
また、本体筒2と操作筒3とが他方向へ相対回転されると、まず、パイプ部材10が停止した状態で、移動体6がピストン7に対して第3摺動抵抗力F3により摺動しつつ後退する。その後、パイプ部材10が前方へ所定付勢力Fsで付勢されていることから、バネ部材14が一定量縮小して所定付勢力Fsが第1摺動抵抗力F1以上となるまで、移動体6及びピストン7が一体的に後退するのに伴って、第1摺動抵抗力F1によりパイプ部材10が先筒1に対し後退する。そして、所定付勢力Fsが第1摺動抵抗力F1以上となったとき(ここでは、パイプ部材10が上記所定位置に位置するとき)、本体筒2と操作筒3とが他方向へそれ以上相対回転されても、先筒1に対しパイプ部材10が後退することなくピストン7がパイプ部材10に対し後退し、パイプ部材10が後退不能とされる。
或いは、パイプ部材10が前進限に位置する際の所定付勢力Fsがピストン7及びパイプ部材10間の第1摺動抵抗力F1よりも大きいと(上式(1)’のとき)、パイプ部材10は、ピストン7が後退してもこれに伴われて移動せず、常に前進限まで前進した位置にある。つまり、塗布材Mの充填前には、本体筒2及び操作筒3を他方向に相対回転されても、パイプ部材10は後退せずに前進限に常に配置されることとなる。
なお、所定付勢力Fsや摺動抵抗力F1〜F3の関係でパイプ部材10が前進限よりも後退した位置に配置されたとしても、本体筒2と操作筒3とを少なくとも1クリック(クリック感が1度生じる回転量)一方向に相対回転することにより、パイプ部材10を構造上確実に(機構的に)前進限に配置させることができる。
一方、塗布材Mの装填後においては、パイプ部材10及び塗布材M間に第2摺動抵抗力F2がさらに発生する。この点、上式(1)に示すように所定付勢力Fsは第1摺動抵抗力F1と第2摺動抵抗力F2との合計よりも小さい値とされている。或いは、上式(2)に示すように所定付勢力Fsは第1摺動抵抗力F1と第2摺動抵抗力F2と第3摺動抵抗力F3の合計よりも小さい値とされている。そのため、パイプ部材10はピストン7の摺動とともに移動可能(ピストン7の後退に伴われて移動可能)とされることとなる。よって、図12〜15に例示する繰出容器100の動作が好適に実現される。
すなわち、例えば塗布材Mの装填後には、本体筒2と操作筒3とが一方向へ相対回転されると、上述したように、まず、パイプ部材10が停止した状態で、移動体6がピストン7に対して第3摺動抵抗力F3により摺動しつつ前進する。その後、移動体6及びピストン7が一体的に前進し、これに伴って、第1摺動抵抗力F1及び第2摺動抵抗力F2によりパイプ部材10が先筒1に対し前進する。また、本体筒2と操作筒3とが他方向へ相対回転されると、上述したように、パイプ部材10が停止した状態で、移動体6がピストン7に対して第3摺動抵抗力F3により摺動しつつ後退する。その後、移動体6及びピストン7が一体的に後退し、これに伴って、第1摺動抵抗力F1及び第2摺動抵抗力F2によりパイプ部材10が先筒1に対し後退する。
以上、本実施形態の繰出容器100では、先筒1に対しパイプ部材10がバネ部材14により所定付勢力Fsで前方へ付勢されていることから、例えば振動やその他の衝撃等が加わりパイプ部材10が後退しようとしても、この所定付勢力Fsでもって当該後退を抑制することができる。すなわち、パイプ部材10に塗布材Mを装填する前において、パイプ部材10が先筒1に対して後退するのを抑制可能となる。特に本実施形態では、パイプ部材10を先筒1に対し前進させ、パイプ部材10をその前進限の位置に配置可能となる。
その結果、塗布材Mを充填領域1xに適正に装填させることができ、塗布材Mの形状品質が低下するのを抑制することが可能となる。例えば、塗布材M装填時において、パイプ部材10の先端面が先筒1の段差面11cから離れて位置し、充填領域1xの内面に段差が形成されるということを防止することができ、これにより、装填された塗布材Mに当該段差に応じた凹凸が形成されてしまうのを抑制することが可能となる。また、パイプ部材10を前進させた位置に配置できるため、塗布材Mを適正に装填させるべくパイプ部材10の繰出し操作等を行う必要性を低減できる。
また、本実施形態では、上述したように、所定付勢力Fsで前方へ付勢されたパイプ部材10が、塗布材Mの装填前には所定位置より後退不能とされていると共に、塗布材Mの装填後には移動体6及びピストン7の前進及び後退に伴って先筒1に対し進退可能とされている。よって、塗布材Mの装填前にパイプ部材10が後退するのを好適に抑制できるのに加え、塗布材Mの装填後には、パイプ部材10を好適に進退させることが可能となる。
また、本実施形態では、上述したように、ピストン7及び移動体6が軸線方向に一定量相対移動可能に係合されている。そして、塗布材Mの装填前、ピストン7は、パイプ部材10及びピストン7間の第1摺動抵抗力F1により、パイプ部材10が前方へ付勢されることに伴って前方へ付勢されている。この場合、塗布材Mの装填前において、パイプ部材10が前方へ付勢されて前進したとき、当該前進に追従するようにピストン7も一定量範囲内で確実に前進させることができる。よって、塗布材Mの装填前、パイプ部材10の先筒1に対する前進がピストン7の存在で阻害される(パイプ部材10の前進を停止させるようにピストン7が作用してしまう)のを抑制できる。
また、本実施形態の所定付勢力Fsは、上述したように、第1摺動抵抗力F1と第2摺動抵抗力F2との合計よりも常に小さくされている。この場合、塗布材Mの装填後にパイプ部材20をピストン7の進退に伴って進退させる上記作用効果を、好適に発揮することができる。
また、上述したように、クリック機構として第1の螺合部8が利用されており、第1の螺合部8がバネ部材14で付勢され、突条41,56同士の係合及び係合解除によってクリック感が生じている。このように、本実施形態では、パイプ部材10を前方へ付勢するバネ部材14を、突条41,56が互いに係合するよう付勢するクリック機構の弾性部材として共用することが可能となる。
また、上述したように、第1の螺合部8の螺合作用が解除された状態(移動螺子筒5の前進限の状態)において、バネ部材14により移動螺子筒5が後方側へ付勢されることから、本体筒2と操作筒3とが他方向へ相対回転されると、第1の螺合部8が直ちに螺合復帰される。このように、本実施形態では、パイプ部材10を前方へ付勢するバネ部材14を、第1の螺合部8を螺合復帰するよう付勢する弾性部材としても共用することが可能となる。
ちなみに、本実施形態では、以下の作用効果も奏される。
すなわち、繰出し始め又は繰戻し始め(初期操作時)からパイプ部材10の移動が停止するまでの初期段階で、第1及び第2の螺合部8,9の螺合作用が協働して作用するため、例えば第1又は第2の螺合部8,9に異常が生じても、パイプ部材10及び塗布材Mの移動順に係る誤作動が発生するのを抑制することができる。よって、初期操作時においては、塗布材Mと接触面積が大きいパイプ部材10を先筒1に対して確実に移動させることができ、その結果、塗布材Mは、パイプ部材10に連れられて一定量確実に移動されることとなる。
また、本体筒2と操作筒3とを一方向に相対回転することで、先筒1に対しパイプ部材10を、第1及び第2の螺合部8,9の螺合作用ですばやく前進させた後、第2の螺合部9の螺合作用のみでゆっくり前進させることができる。また、他方向に相対回転することで、先筒1に対しパイプ部材10を、第1及び第2の螺合部8,9の螺合作用ですばやく後退させた後、第2の螺合部9の螺合作用のみでゆっくり後退させることができる。
また、繰出容器100における通常の使用では、パイプ部材10の後退限以上に塗布材Mを繰り戻すこと必要性が低く、よって、パイプ部材10の後退によって塗布材Mが後退される用いられ方が多い。そのため、繰出容器100では、温度条件等に起因して塗布材Mが収縮しパイプ部材10に対する密着性ひいては上記減圧作用が低下したとしても、塗布材Mが確実に後退されることとなる。
また、突条41が突条56よりも軟らかくされているため、生じるクリック感のクリック音を小さくしつつ(緩和しつつ)該クリック音を重厚なものとすることができる。よって、クリック音を高級感溢れる付加価値の高いものにすることができ、高級感を有するクリック感を生じさせることが可能となる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係る繰出容器は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
例えば、上記実施形態では、本体筒2と操作筒3とが相対回転されると、第1及び第2の螺合部8,9の螺合作用によって先筒1に対しパイプ部材10が塗布材Mとともに移動し、第1の螺合部8の螺合作用が解除又は停止して第2の螺合部9の螺合作用のみによってパイプ部材10が塗布材Mとともに引き続き移動し、そして、パイプ部材10の前進が停止し、その後、第2の螺合部9の螺合作用のみによってパイプ部材10に対し塗布材Mが移動しているが、第1の螺合部8の螺合作用の解除タイミング又は停止タイミングは、これに限定されるものではない。
具体的には、第1及び第2の螺合部8,9の螺合作用によって先筒1に対しパイプ部材10が塗布材Mとともに移動した後、パイプ部材10の移動が停止し、その後、第1の螺合部8の螺合作用が解除又は停止して第2の螺合部9の螺合作用のみによってパイプ部材10に対して塗布材Mが前進してもよい。
また、上記実施形態では、繰出機構として第1及び第2の螺合部8,9による回転式のものを採用しているが、これに限定されず、例えばノック式等の機械的な押出機構や、スクイーズ式の押出機構を採用することも可能である。また、上述した雄螺子及び雌螺子は、螺子山や螺子溝だけでなく、間欠的に配される突起群、又は螺旋状且つ間欠的に配される突起群のように螺子山や螺子溝と同様な働きをするものであってもよい。
また、上記実施形態のバネ部材10は、塗布材Mの装填前にはパイプ部材10が前進限に常に位置し且つ塗布材Mの装填後にはパイプ部材10がピストン7の進退に伴って進退するように、上式(1)に基づく所定付勢力Fsでパイプ部材10を前方へ付勢しているが、これに限定されるものではない。例えば、バネ部材10としては、パイプ部材10を前方へ付勢できる弾性部材であれば、種々のものを用いることができる。また、バネ部材14で前方へ付勢されたパイプ部材10が塗布材Mの装填前に前進限に常に位置し且つ塗布材Mの装填後にピストン7の進退に伴って進退できれば、その他の構成を採用してもよい。
また、塗布材Mとして、例えば、リップグロス、リップ、アイカラー、アイライナー、美容液、洗浄液、ネールエナメル、ネールケア溶液、ネールリムーバー、マスカラ、アンチエイジング、ヘアーカラー、頭髪用化粧料、オーラルケア、マッサージオイル、角栓ゆるめ液、ファンデーション、コンシーラー、スキンクリーム、マーキングペン等の筆記用具等のインク、液状の医薬品、泥状物等を始めとした液状の塗布材を用いた繰出容器に対しても勿論適用可能である。
なお、上記において、「螺合作用の解除」とは、雄螺子と雌螺子との螺子山同士(突条41,56)の係合が外れ、螺合作用が働かなくなることを意味し、「螺合作用の停止」とは、雄螺子と雌螺子との螺子山同士(突条41,56)が係合し噛み合った状態で当接して螺合が働かなくなることを意味している。