以下、本発明の一側面に係る用紙搬送装置、重送判定方法及びコンピュータプログラムについて図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
図1は、イメージスキャナとして構成された用紙搬送装置100を示す斜視図である。
用紙搬送装置100は、下側筐体101、上側筐体102、用紙台103、排出台105及び操作ボタン106等を備える。
下側筐体101及び上側筐体102は、樹脂材料で形成される。上側筐体102は、用紙搬送装置100の上面を覆う位置に配置され、用紙つまり時、用紙搬送装置100内部の清掃時等に開閉可能なようにヒンジにより下側筐体101に係合している。
用紙台103は、用紙を載置可能に下側筐体101に係合している。用紙台103には、用紙の搬送方向と直行する方向、すなわち用紙の搬送方向に対して左右方向に移動可能なサイドガイド104a及び104bが設けられている。サイドガイド104a及び104bを用紙の幅に合わせて位置決めすることにより用紙の幅方向を規制することができる。
排出台105は、矢印A1で示す方向に回転可能なように、ヒンジにより下側筐体101に係合しており、図1のように開いている状態では、排出された用紙を保持することが可能となる。
操作ボタン106は、上側筐体102の表面に配置され、押下されると、操作検出信号を生成して出力する。
図2は、用紙搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
用紙搬送装置100内部の搬送経路は、第1用紙検出部110、給紙ローラ111、リタードローラ112、マイクロフォン113、第2用紙検出部114、超音波送信器115a、超音波受信器115b、第1搬送ローラ116、第1従動ローラ117、第3用紙検出部118、第1撮像部119a、第2撮像部119b、第2搬送ローラ120及び第2従動ローラ121等を有している。
下側筐体101の上面は用紙の搬送路の下側ガイド107aを形成し、上側筐体102の下面は用紙の搬送路の上側ガイド107bを形成する。図2において矢印A2は用紙の搬送方向を示す。以下では、上流とは用紙の搬送方向A2の上流のことをいい、下流とは用紙の搬送方向A2の下流のことをいう。
第1用紙検出部110は、給紙ローラ111及びリタードローラ112の上流側に配置される接触検出センサを有し、用紙台103に用紙が載置されているか否かを検出する。第1用紙検出部110は、用紙台103に用紙が載置されている状態と載置されていない状態とで信号値が変化する第1用紙検出信号を生成して出力する。
マイクロフォン113は、用紙搬送路の近傍に設けられ、用紙が搬送中に発生する音を集音し、集音した音に応じたアナログの信号を出力する。マイクロフォン113は、給紙ローラ111及びリタードローラ112の下流側に、上側筐体102内部のフレーム108に固定されて配置される。用紙が搬送中に発生する音をより的確にマイクロフォン113が集音できるように、上側ガイド107bのマイクロフォン113に対向する位置には穴109が設けられている。
第2用紙検出部114は、給紙ローラ111及びリタードローラ112の下流側、かつ第1搬送ローラ116及び第1従動ローラ117の上流側に配置される接触検出センサを有し、その位置に用紙が存在するか否かを検出する。第2用紙検出部114は、その位置に用紙が存在する状態と存在しない状態とで信号値が変化する第2用紙検出信号を生成して出力する。
超音波送信器115a及び超音波受信器115bは、超音波信号出力部の例であり、用紙の搬送路の近傍に、搬送路を挟んで対向するように配置される。超音波送信器115aは超音波を送信する。一方、超音波受信器115bは、超音波送信器115aにより送信され、用紙を通過した超音波を検出し、検出した超音波に応じた電気信号である超音波信号を生成して出力する。以下では、超音波送信器115a及び超音波受信器115bを総じて超音波センサ115と称する場合がある。
第3用紙検出部118は、第1搬送ローラ116及び第1従動ローラ117の下流側、かつ第1撮像部119a及び第2撮像部119bの上流側に配置される接触検出センサを有し、その位置に用紙が存在するか否かを検出する。第3用紙検出部118は、その位置に用紙が存在する状態と存在しない状態とで信号値が変化する第3用紙検出信号を生成して出力する。
第1撮像部119aは、主走査方向に直線状に配列されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)による撮像素子を備える等倍光学系タイプのCIS(Contact Image Sensor)を有する。このCISは、用紙の裏面を読み取ってアナログの画像信号を生成して出力する。同様に、第2撮像部119bは、主走査方向に直線状に配列されたCMOSによる撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISを有する。このCISは、用紙の表面を読み取ってアナログの画像信号を生成して出力する。なお、第1撮像部119a及び第2撮像部119bを一方だけ配置し、用紙の片面だけを読み取るようにしてもよい。また、CISの代わりにCCD(Charge Coupled Device)による撮像素子を備える縮小光学系タイプの撮像センサを利用することもできる。以下では、第1撮像部119a及び第2撮像部119bを総じて撮像部119と称する場合がある。
用紙台103に載置された用紙は、給紙ローラ111が図2の矢印A3の方向に回転することによって、下側ガイド107aと上側ガイド107bの間を用紙搬送方向A2に向かって搬送される。リタードローラ112は、用紙搬送時、図2の矢印A4の方向に回転する。給紙ローラ111及びリタードローラ112の働きにより、用紙台103に複数の用紙が載置されている場合、用紙台103に載置されている用紙のうち給紙ローラ111と接触している用紙のみが分離されて、分離された用紙以外の用紙の搬送が制限される(重送の防止)ように動作する。給紙ローラ111及びリタードローラ112は、用紙の分離部として機能する。
用紙は、下側ガイド107aと上側ガイド107bによりガイドされながら、第1搬送ローラ116と第1従動ローラ117の間に送り込まれる。用紙は、第1搬送ローラ116が図2の矢印A5の方向に回転することによって、第1撮像部119aと第2撮像部119bの間に送り込まれる。撮像部119により読み取られた用紙は、第2搬送ローラ120が図2の矢印A6の方向に回転することによって排出台105上に排出される。
図3は、用紙搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
用紙搬送装置100は、前述した構成に加えて、第1画像A/D変換部140a、第2画像A/D変換部140b、音信号出力部141、駆動部145、インターフェース部146、記憶部147及び中央処理部150等をさらに有する。
第1画像A/D変換部140aは、第1撮像部119aから出力されたアナログの画像信号をアナログデジタル変換してデジタルの画像データを生成し、中央処理部150に出力する。同様に、第2画像A/D変換部140bは、第2撮像部119bから出力されたアナログの画像信号をアナログデジタル変換してデジタルの画像データを生成し、中央処理部150に出力する。以下、これらのデジタルの画像データを読取画像と称する。
音信号出力部141は、マイクロフォン113、アナログフィルタ部142、増幅部143及び音A/D変換部144等を含んでいる。フィルタ部142は、マイクロフォン113から出力されたアナログの信号に対して、予め定められた周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタを適用し、増幅部143に出力する。増幅部143は、フィルタ部142から出力された信号を増幅させて音A/D変換部144に出力する。音A/D変換部144は、増幅部143から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、中央処理部150に出力する。以下、音信号出力部141が出力する信号を音信号と称する。
なお、音信号出力部141は、これに限定されない。音信号出力部141は、マイクロフォン113のみを含み、フィルタ部142、増幅部143及び音A/D変換部144は、音信号出力部141の外部に備えられてもよい。また、音信号出力部141は、マイクロフォン113及びフィルタ部142のみ、あるいはマイクロフォン113、フィルタ部142及び増幅部143のみを含んでもよい。
駆動部145は、1つ又は複数のモータを含み、中央処理部150からの制御信号によって、給紙ローラ111、リタードローラ112、第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ120を回転させて用紙の搬送動作を行う。
インターフェース部146は、例えばUSB等のシリアルバスに準じるインターフェース回路を有し、不図示の情報処理装置(例えば、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末等)と電気的に接続して読取画像及び各種の情報を送受信する。また、インターフェース部146にフラッシュメモリ等を接続して読取画像を保存するようにしてもよい。
記憶部147は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、記憶部147には、用紙搬送装置100の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、例えばCD−ROM(compact disk read only memory)、DVD−ROM(digital versatile disk read only memory)等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部147にインストールされてもよい。さらに、記憶部147には、読取画像が格納される。
中央処理部150は、CPU(Central Processing Unit)を備え、予め記憶部147に記憶されているプログラムに基づいて動作する。なお、中央処理部150は、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)等で構成されてもよい。
中央処理部150は、操作ボタン106、第1用紙検出部110、マイクロフォン113、第2用紙検出部114、超音波センサ115、第3用紙検出部118、第1撮像部119a、第2撮像部119b、第1画像A/D変換部140a、第2画像A/D変換部140b、音信号出力部141、駆動部145、インターフェース部146及び記憶部147と接続され、これらの各部を制御する。
中央処理部150は、駆動部145の駆動制御、撮像部119の用紙読取制御等を行い、読取画像を取得する。また、中央処理部150は、制御部151、画像生成部152、音ジャム判定部153、位置ジャム判定部154及び重送判定部155等を有する。これらの各部は、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールである。なお、これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。
図4は、用紙搬送装置100の全体処理の動作の例を示すフローチャートである。
以下、図4に示したフローチャートを参照しつつ、用紙搬送装置100の全体処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶部147に記憶されているプログラムに基づき主に中央処理部150により用紙搬送装置100の各要素と協働して実行される。
最初に、中央処理部150は、利用者により操作ボタン106が押下されて、操作ボタン106から操作検出信号を受信するまで待機する(ステップS101)。
次に、中央処理部150は、第1用紙検出部110から受信する第1用紙検出信号に基づいて用紙台103に用紙が載置されているか否かを判定する(ステップS102)。
用紙台103に用紙が載置されていない場合、中央処理部150は、ステップS101へ処理を戻し、操作ボタン106から新たに操作検出信号を受信するまで待機する。
一方、用紙台103に用紙が載置されている場合、中央処理部150は、駆動部145を駆動して給紙ローラ111、リタードローラ112、第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ120を回転させて、用紙を搬送させる(ステップS103)。
次に、制御部151は、異常発生フラグがONであるか否かを判定する(ステップS104)。この異常発生フラグは、用紙搬送装置100の起動時にOFFに設定され、後述する異常判定処理で異常が発生したと判定されるとONに設定される。
異常発生フラグがONである場合、制御部151は、異常処理として、駆動部145を停止して、用紙の搬送を停止させるとともに、不図示のスピーカ、LED(Light Emitting Diode)等により、異常が発生したことを利用者に通知し、異常発生フラグをOFFに設定し(ステップS105)、一連のステップを終了する。
一方、異常判定フラグがONでない場合、画像生成部152は、搬送された用紙を第1撮像部119a及び第2撮像部119bに読み取らせ、第1画像A/D変換部140a及び第2画像A/D変換部140bを介して読取画像を取得する(ステップS106)。
次に、中央処理部150は、取得した読取画像をインターフェース部146を介して不図示の情報処理装置へ送信する(ステップS107)。なお、情報処理装置と接続されていない場合、中央処理部150は、取得した読取画像を記憶部147に記憶しておく。
次に、中央処理部150は、第1用紙検出部110から受信する第1用紙検出信号に基づいて用紙台103に用紙が残っているか否かを判定する(ステップS108)。
用紙台103に用紙が残っている場合、中央処理部150は、ステップS103へ処理を戻し、ステップS103〜S108の処理を繰り返す。一方、用紙台103に用紙が残っていない場合、中央処理部150は、一連の処理を終了する。
図5は、異常判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
以下に説明する動作のフローは、予め記憶部147に記憶されているプログラムに基づき主に中央処理部150により用紙搬送装置100の各要素と協働して実行される。
最初に、音ジャム判定部153は、音ジャム判定処理を実施する(ステップS201)。音ジャム判定部153は、音ジャム判定処理において、音信号出力部141から取得した音信号に基づいてジャムが発生したか否かを判定する。以下、音ジャム判定部153が音信号に基づいて発生の有無を判定するジャムのことを音ジャムと称する場合がある。音ジャム判定処理の詳細については後述する。
次に、位置ジャム判定部154は、位置ジャム判定処理を実施する(ステップS202)。位置ジャム判定部154は、位置ジャム判定処理において、第2用紙検出部114から取得した第2用紙検出信号と、第3用紙検出部118から取得した第3用紙検出信号とに基づいてジャムが発生したか否かを判定する。以下、位置ジャム判定部154が第2用紙検出信号及び第3用紙検出信号に基づいて発生の有無を判定するジャムのことを位置ジャムと称する場合がある。位置ジャム判定処理の詳細については後述する。
次に、重送判定部155は、重送判定処理を実施する(ステップS203)。重送判定部155は、重送判定処理において、超音波センサ115から取得した超音波信号に基づいて用紙の重送が発生したか否かを判定する。重送判定処理の詳細については後述する。
次に、制御部151は、用紙搬送処理に異常が発生したか否かを判定する(ステップS204)。異常判定処理の詳細については後述する。
制御部151は、用紙搬送処理に異常が発生した場合、異常発生フラグをONに設定し(ステップS205)、一連のステップを終了する。一方、用紙搬送処理に異常が発生していない場合、特に処理を行わず、一連のステップを終了する。なお、図5に示すフローチャートは、所定の時間間隔ごとに実行される。
図6A及び図6Bは、カードが搬送される場合について説明するための図である。
図6Aは、プラスチック等の剛性の高いカードCが、ちょうど、給紙ローラ111及びリタードローラ112の間に挟持された状態を示している。図6Aの状態から、さらにカードCが搬送されると、図6Bの状態に移行する。
上側ガイド107b及び下側ガイド107aが湾曲して配置されているため、カードCは、給紙ローラ111及びリタードローラ112の間に挟持された状態で、更に、第1搬送ローラ116及び第1従動ローラ117にも挟持されると、その弾性により変形する。そのため、図6Bに示すように、カードCの後端が給紙ローラ111とリタードローラ112から離れた時に、カードCは変形された状態から元の状態に戻ろうとするために、下側ガイド107aと点Pで接触して衝撃音を発する場合がある。カードCが下側ガイド107aと接触して発生した衝撃音は、マイクロフォン113で集音されてしまう。
音ジャム判定部153は、上記の集音された衝撃音によりジャムが発生したと誤って判定する可能性がある。なお、図6A及び図6Bは、搬送ローラから離れた時に、衝撃音を発する搬送路の一例であって、これに限定されるものではない。また、プラスチックカード以外でも、剛性の高い厚紙であれば、プラスチックカードと同様に衝撃音を発する可能性がある。さらに、搬送路が湾曲していず、平面である場合でも、ローラの段差によって衝撃音が発生する可能性もある。
図7は、音ジャム判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
図7に示す動作のフローは、図5に示すフローチャートのステップS201において実行される。
最初に、音ジャム判定部153は、第2用紙検出部114で用紙の先端が検出されたか否かを判定する(ステップS301)。音ジャム判定部153は、第2用紙検出部114からの第2用紙検出信号の値が、用紙が存在しない状態を表す値から存在する状態を表す値に変化すると、第2用紙検出部114の位置において用紙の先端が検出されたと判定する。
次に、音ジャム判定部153は、第2用紙検出部114で用紙の先端が検出されたと判定すると、その時刻を先端検出時刻として記憶部147に記憶する(ステップS302)。一方、音ジャム判定部153は、第2用紙検出部114で用紙の先端が検出されていないと判定すると、特に処理を行わず、ステップS303へ処理を移行する。
次に、音ジャム判定部153は、音信号出力部141から音信号を取得する(ステップS303)。
図8Aは、音信号の例を示すグラフである。図8Aに示すグラフ800は、音信号出力部141から受け取った音信号を表す。グラフ800の横軸は時間を示し、縦軸は音信号の信号値を示す。
次に、音ジャム判定部153は、音信号出力部141から受け取った音信号について絶対値を取った信号を生成する(ステップS304)。
図8Bは、音信号の絶対値を取った信号の例を示すグラフである。図8Bに示すグラフ810は、グラフ800の音信号の絶対値を取った信号を表す。グラフ810の横軸は時間を示し、縦軸は音信号の信号値の絶対値を示す。
次に、音ジャム判定部153は、音信号の絶対値を取った信号の外形を抽出する(ステップS305)。音ジャム判定部153は、音信号の絶対値を取った信号の外形として包絡線を抽出する。
図8Cは、音信号の絶対値を取った信号の外形の例を示すグラフである。図8Cに示すグラフ820は、グラフ810の音信号の絶対値を取った信号の包絡線821を表す。グラフ820の横軸は時間を示し、縦軸は音信号の信号値の絶対値を示す。
次に、音ジャム判定部153は、音信号の絶対値を取った信号の外形について、第1の閾値Th1以上である場合に増大させ、第1の閾値Th1未満である場合に減少させるカウンタ値を算出する(ステップS306)。音ジャム判定部153は、所定の時間間隔(例えば音信号のサンプリング間隔)ごとに、包絡線821の値が第1の閾値Th1以上であるか否かを判定し、包絡線821の値が第1の閾値Th1以上である場合、カウンタ値をインクリメントし、第1の閾値Th1未満である場合、カウンタ値をデクリメントする。
図8Dは、音信号の絶対値を取った信号の外形について算出されたカウンタ値の例を示すグラフである。図8Dに示すグラフ830は、グラフ820の包絡線821について算出されたカウンタ値を表す。グラフ820の横軸は時間を示し、縦軸はカウンタ値を示す。
次に、音ジャム判定部153は、カウンタ値が第2の閾値Th2以上であるか否かを判定する(ステップS307)。音ジャム判定部153は、カウンタ値が第2の閾値Th2未満であれば音ジャムは発生していないと判定し(ステップS308)、一連のステップを終了する。一方、音ジャム判定部153は、カウンタ値が第2の閾値Th2以上であれば音ジャムが発生したと判定する(ステップS309)。
図8Cにおいて、包絡線821は、時刻T1で第1の閾値Th1以上となり、その後、第1の閾値Th1未満となっていない。したがって、図8Dに示すように、カウンタ値は時刻T1から増大していき、時刻T2で第2の閾値Th2以上となり、音ジャム判定部153は、音ジャムが発生したと判定する。
次に、音ジャム判定部153は、音ジャムが発生したと判定した場合、音信号が所定タイミングで発生したか否かを判定する(ステップS310)。音ジャム判定部153は、カウンタ値が0から1に変化した時刻が、ステップS302で記憶部147に記憶した先端検出時刻から所定時間経過した時刻である場合、音信号が所定タイミングで発生したと判定する。この所定時間は、予め定められ、クレジットカード、キャッシュカード等のカード媒体と略同一サイズのカードが搬送された場合に、カードの先端が第2用紙検出部114を通過してから後端が給紙ローラ111とリタードローラ112の間を通過するまでの時間とすることができる。
クレジットカード、キャッシュカード等のカード媒体のサイズはJIS(Japanese Industrial Standards)規格で定められおり、長辺は85.6cmであり、短辺は54.0cmである。このカード媒体と略同一サイズのカードには、クレジットカード、キャッシュカード等とサイズがわずかに異なる定期券、テレフォンカード等が含まれる。
カード媒体は、長手方向に搬送される場合、先端が第2用紙検出部114を通過してから後端が給紙ローラ111とリタードローラ112の間を通過するまでに、長辺の長さから給紙ローラ111とリタードローラ112のニップ位置と第2用紙検出部114の間の距離を引いた長さだけ移動する。したがって、所定時間は、カード媒体の長辺の長さから給紙ローラ111とリタードローラ112のニップ位置と第2用紙検出部114の間の距離を引き、搬送速度で割った値を中心とする所定幅を持つ時間とすることができる。同様に、カード媒体が短手方向に搬送される場合を考慮して、所定時間に、カード媒体の短辺の長さから給紙ローラ111とリタードローラ112のニップ位置と第2用紙検出部114の間の距離を引き、搬送速度で割った値を中心とする所定幅を持つ時間も含めてもよい。所定幅は、音信号を検出するタイミングに誤差が生じることを考慮して定められ、例えば搬送速度が60ppmの場合、100msecとすることができる。
次に、音ジャム判定部153は、音信号が所定タイミングで発生した場合、タイミングフラグをONに設定し(ステップS311)、所定タイミングで発生していない場合、タイミングフラグをOFFに設定し(ステップS312)、一連のステップを終了する。
なお、ステップS305において、音ジャム判定部153は、音信号の絶対値を取った信号の外形として、包絡線を求める代わりに、音信号の絶対値を取った信号についてピークホールドを取った信号(以下、ピークホールド信号と称する)を求めてもよい。例えば、中央処理部150は、音信号の絶対値を取った信号の極大値を一定のホールド期間だけホールドし、その後一定の減衰率で減衰させることによりピークホールド信号を求める。
図9A及び図9Bは、音信号からピークホールド信号を求めて音ジャムが発生したか否かを判定する処理について説明するための図である。
図9Aに示すグラフ900は、グラフ910の音信号の絶対値を取った信号についてのピークホールド信号901を表す。グラフ900の横軸は時間を示し、縦軸は音信号の信号値の絶対値を示す。
図9Bに示すグラフ910は、グラフ900のピークホールド信号901について算出されたカウンタ値を表す。グラフ910の横軸は時間を示し、縦軸はカウンタ値を示す。ピークホールド信号901は、時刻T3で第1の閾値Th1以上となり、時刻T4で第1の閾値Th1未満となり、時刻T5で再度第1の閾値Th1以上となり、その後、第1の閾値Th1未満となっていない。したがって、図9Bに示すように、カウンタ値は時刻T3から増大し、時刻T4から減少し、時刻T5から再度増大し、時刻T6で第2の閾値Th2以上となり、音ジャムが発生したと判定される。
なお、ステップS310において、音ジャム判定部153は、カウンタ値が0から1に変化した時刻でなく、カウンタ値が0から1に変化してから第2の閾値Th2以上となるまでの間の時刻が、先端検出時刻から所定時間経過した時刻と重なっている場合に、音信号が所定タイミングで発生したと判定してもよい。
また、音ジャム判定部153は、カウンタ値が0から1に変化した時刻が、中央処理部150が駆動部145を駆動して給紙ローラ111及びリタードローラ112の回転を開始した時刻から所定時間経過した時刻である場合に、音信号が所定タイミングで発生したと判定してもよい。その場合、給紙ローラ111及びリタードローラ112の回転を開始した時点でカード媒体の先端はそのニップ位置に位置するので、所定時間は、カード媒体の長辺の長さを搬送速度で割った値と短辺の長さを搬送速度で割った値とをそれぞれ中心とする所定幅を持つ時間とすることができる。
あるいは、音ジャム判定部153は、複数の用紙が搬送される場合、二枚目以降の用紙については、カウンタ値が0から1に変化した時刻が、直前に搬送された用紙の後端が、第2用紙検出部114で検出されてから所定時間経過した時刻である場合に、音信号が所定タイミングで発生したと判定してもよい。
また、音ジャム判定部153は、第2用紙検出部114からの第2用紙検出信号の代わりに、第3用紙検出部118からの第3用紙検出信号に基づいて、音信号が発生したタイミングを判定してもよい。
あるいは、音ジャム判定部153は、超音波センサ115からの超音波信号に基づいて、音信号が発生したタイミングを判定してもよい。その場合、音ジャム判定部153は、定期的に超音波センサ115から超音波信号を取得し、取得した超音波信号の信号値が所定閾値以上から所定閾値未満に変化したときに、用紙の先端が超音波センサ115を通過したと判定する。そして、音ジャム判定部153は、カウンタ値が0から1に変化した時刻が、用紙の先端が超音波センサ115を通過してから所定時間経過した時刻である場合に、音信号が所定タイミングで発生したと判定する。
図10は、位置ジャム判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
図10に示す動作のフローは、図5に示すフローチャートのステップS202において実行される。
最初に、位置ジャム判定部154は、第2用紙検出部114で用紙の先端が検出されるまで待機する(ステップS401)。位置ジャム判定部154は、第2用紙検出部114からの第2用紙検出信号の値が、用紙が存在しない状態を表す値から存在する状態を表す値に変化すると、第2用紙検出部114の位置、すなわち給紙ローラ111及びリタードローラ112の下流、かつ第1搬送ローラ116及び第1従動ローラ117の上流において用紙の先端が検出されたと判定する。
次に、第2用紙検出部114で用紙の先端が検出されると、位置ジャム判定部154は、計時を開始する(ステップS402)。
次に、位置ジャム判定部154は、第3用紙検出部118で用紙の先端が検出されたか否かを判定する(ステップS403)。位置ジャム判定部154は、第3用紙検出部118からの第3用紙検出信号の値が、用紙が存在しない状態を表す値から存在する状態を表す値に変化すると、第3用紙検出部118の位置、すなわち第1搬送ローラ116及び第1従動ローラ117の下流、かつ撮像部119の上流において用紙の先端が検出されたと判定する。
第3用紙検出部118で用紙の先端が検出されると、位置ジャム判定部154は、位置ジャムは発生していないと判定し(ステップS404)、一連のステップを終了する。
一方、第3用紙検出部118で用紙の先端が検出されていないと、位置ジャム判定部154は、計時を開始してから所定時間(例えば1秒間)が経過したか否かを判定する(ステップS405)。所定時間が経過していなければ、位置ジャム判定部154は、ステップS403へ処理を戻し、再度、第3用紙検出部118で用紙の先端が検出されたか否かを判定する。一方、所定時間が経過した場合、位置ジャム判定部154は、位置ジャムが発生したと判定し(ステップS406)、一連のステップを終了する。なお、用紙搬送装置100において位置ジャム判定処理が必要でない場合には、省略してもよい。
なお、中央処理部150は、第3用紙検出部118からの第3用紙検出信号により、第1搬送ローラ116と第1従動ローラ117の下流において用紙の先端を検出すると、次の用紙が送り込まれないように、一端駆動部145を制御して給紙ローラ111及びリタードローラ112の回転を停止させる。その後、中央処理部150は、第2用紙検出部114からの第2用紙検出信号により、給紙ローラ111とリタードローラ112の下流において用紙の後端を検出すると、再度駆動部145を制御して給紙ローラ111及びリタードローラ112を回転させて、次の用紙を搬送させる。これにより、中央処理部150は、複数の用紙が搬送路内で重なることを防止している。そのため、位置ジャム判定部154は、中央処理部150が給紙ローラ111及びリタードローラ112を回転させるように駆動部145を制御した時点で計時を開始し、所定時間以内に第3用紙検出部118で用紙の先端が検出されなかった場合に位置ジャムが発生したと判定してもよい。
図11は、重送判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
図11に示す動作のフローは、図5に示すフローチャートのステップS203において実行される。
最初に、重送判定部155は、超音波センサ115から超音波信号を取得する(ステップS501)。
次に、重送判定部155は、取得した超音波信号の信号値が、重送判定閾値未満であるか否かを判定する(ステップS502)。
図12は、超音波信号の特性について説明するための図である。
図12のグラフ1200において、実線1201は単数の用紙が搬送されている場合の超音波信号の特性を示し、点線1202は用紙の重送が発生している場合の超音波信号の特性を示す。グラフ1200の横軸は時間を示し、縦軸は超音波信号の信号値を示す。重送が発生していることにより、区間1203において点線1202の超音波信号の信号値が低下している。そのため、超音波信号の信号値が重送判定閾値ThA未満であるか否かにより用紙の重送が発生したか否かを判定することができる。
一方、実線1204は、用紙よりも厚い、プラスチック製のカードが一枚だけ搬送されている場合の超音波信号の特性を示す。カードが搬送されている場合、超音波信号の信号値は重送判定閾値ThAより小さくなるため、重送判定部155は、用紙の重送が発生したと誤って判定する。なお、十分に厚く、剛性の高い厚紙が搬送された場合もプラスチック製のカードが搬送された場合と同様の特性を持つ超音波信号が検出されるため、重送判定部155は用紙の重送が発生したと誤って判定するおそれがある。
重送判定部155は、超音波信号の信号値が重送判定閾値未満である場合、用紙の重送が発生したと判定し(ステップS503)、一方、超音波信号の信号値が重送判定閾値以上である場合、用紙の重送は発生していないと判定し(ステップS504)、一連のステップを終了する。
図13は、異常判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
図13に示す動作のフローは、図5に示すフローチャートのステップS204において実行される。
最初に、制御部151は、位置ジャム判定部154により位置ジャム発生と判定されたか否かを判定する(ステップS601)。位置ジャム判定部154により位置ジャム発生と判定されていた場合、制御部151は、ジャムが発生しており、異常が発生したと判定し(ステップS602)、一連のステップを終了する。
位置ジャム判定部154により位置ジャム発生と判定されていない場合、制御部151は、重送判定部155により重送発生と判定されたか否かを判定する(ステップS603)。重送判定部155により重送発生と判定されていた場合、制御部151は、用紙の重送が発生しており、異常が発生したと判定し(ステップS604)、一連のステップを終了する。
重送判定部155により重送発生と判定されていない場合、制御部151は、音ジャム判定部153により音ジャム発生と判定されたか否かを判定する(ステップS605)。
音ジャム判定部153により音ジャム発生と判定されていた場合、制御部151は、タイミングフラグがONに設定されているか否かを判定する(ステップS606)。タイミングフラグがONに設定されていない場合、制御部151は、ジャムが発生しており、異常が発生したと判定し(ステップS607)、一連のステップを終了する。
一方、タイミングフラグがONに設定されていた場合、制御部151は、カードまたは厚紙が搬送されたことにより、音ジャム判定部153により音ジャム発生と判定されたと判定する。この場合、制御部151は、ジャムが発生しなかったものと見なして正常状態と判定し(ステップS609)、一連のステップを終了する。
また、ステップS605において、音ジャム判定部153により音ジャム発生と判定されていない場合、制御部151は、ジャムが発生しておらず、正常状態と判定し(ステップS609)、一連のステップを終了する。
以上詳述したように、用紙搬送装置100は、図4、図5、図7、図11及び図13に示したフローチャートに従って動作することによって、用紙が搬送中に発生した音に基づいてジャムが発生したと判定した場合であっても、その音が所定のタイミングで発生した場合にはカード又は厚紙が搬送されたと見なすので、カードまたは厚紙が搬送された場合のジャムの発生の判定誤りを抑制することが可能となった。
図14は、異常判定処理の動作の他の例を示すフローチャートである。
このフローチャートは、用紙搬送装置100において、前述した図13に示すフローチャートの代りに実行することが可能である。図14に示すフローチャートでは、図13に示すフローチャートと異なり、制御部151は、重送判定部155が重送が発生したと判定した場合であっても、所定のタイミングで音が発生した場合にはカードまたは厚紙が搬送されたと見なす。図14に示すステップS701〜S703、S707〜S711の処理は、図13に示すステップS601〜S603、S605〜S609の処理と同じであるため、説明を省略し、以下では、ステップS704〜S706の処理についてのみ説明する。
ステップS703において重送判定部155により重送発生と判定されていた場合、制御部151は、音ジャム判定部153により音ジャム発生と判定され、且つタイミングフラグがONに設定されているか否かを判定する(ステップS704)。
音ジャム判定部153により音ジャム発生と判定されていない場合、又はタイミングフラグがONに設定されていない場合、制御部151は、用紙の重送が発生しており、異常が発生したと判定し(ステップS705)、一連のステップを終了する。
一方、音ジャム判定部153により音ジャム発生と判定され、且つタイミングフラグがONに設定されている場合、制御部151は、カードまたは厚紙が搬送されたことにより、重送判定部155により重送発生と判定されたと判定する。この場合、制御部151は、用紙の重送が発生しなかったものと見なして正常状態と判定し(ステップS706)、一連のステップを終了する。
以上詳述したように、用紙搬送装置100は、図4、図5、図7、図11及び図14に示したフローチャートに従って動作することによって、超音波信号に基づいて重送が発生したと判定した場合であっても、所定のタイミングで所定の音が発生した場合にはカードまたは厚紙が搬送されたと見なす。したがって、用紙搬送装置100は、カードまたは厚紙が搬送された場合の重送の発生の判定誤りを抑制することが可能となった。